闇の脱走者 第二話 従わせる者

第二話 従わせる者

「んはぁっ、あんっ、はぁんっ」

 彩が俺の上で体を揺らす。それに伴い胸や髪が動き回り、彩はさらに乱れていく。
 下から手を伸ばし、彩の胸を揉み上げる。適度に柔らかく、弾力もある。あまり大きくない事を除けば、その胸はトップクラスの美しさだろう。

「ひぎっ・・・ぁっ・・・かはっ!!」

 俺がもむのにあわせて、彩の声が途切れ途切れになる、その声に連動するように膣の締まりも強くなる。
 最大級に膣が締まったのにあわせて、俺の白濁液を彩の中に叩きつける。その瞬間、彩は人形のように固まったが、その一瞬後、俺に向かって倒れ込んできた。
 彩を受け止め、ベッドに横にする。
 安らかそうに目を閉じている彩を眺め、口の端を持ち上げる。
 こいつはすでに俺の虜だ。
 これでとりあえずの住処は確保した。
 ここはそれなりに広く、二人ですむには十分だった。
 あとはこいつに働かせ、俺はここに一日中隠っていればおそらくは俺の安全は確保出来るだろう。
 だが、それは確実とは言い切れず、絶対安全とは言い切れない。
 その対策を考えている内にいつしか俺は寝入ってしまった。

 ちゅん、ちゅん・・・・

「・・・・さま。かずい様」

 彩に揺すられ、俺は目を覚ます。
 開いた俺の目に飛び込んできたのは昨夜と同じ、スーツ姿の彩だった。

「おはようございます、かずい様。私、そろそろ仕事に行かないといけませんので・・・」
「ああ、行ってこい」

 彩の言葉を遮り俺は言う。そんな事はどうでもよかった。

「は、はい、ありがとうございます。ご飯の方はテーブルの上に用意させて頂きましたので」

 ぺこりと頭を下げ、彩は急いで部屋を出た。もしかすると、本当は遅刻ぎりぎりだったのかも知れない。

「そんなことはどうでもいい・・・」

 呟くと、俺は彩の用意してくれた飯を腹に入れる。
 することもなく、そのまま床の上に横になった。

「・・・・・暇だ」

 何もする事がないのがこんなに退屈な事だとは思わなかった。
 そのまま惚けていられる訳もなく、俺は起きあがった。
 暇すぎて、退屈に耐えられなくなった俺は新たな駒のための獲物を探す事にした。

 外へ出る。マンションの廊下で一人の女とすれ違った。ぼーっとした目にぼさぼさの髪。いかにも寝起きですといったその女は眠たそうに目をこすりながら、いきなり俺に振り返った。

「・・・・あんた誰?」

 女は俺に向かい、そう聞く。
 確かに見た事ないやつがいたら気になるだろうが、今時マンションの近所なんて知らない人なんじゃないのだろうか?
 そんな事を考えながら、微塵も漏らさず愛想笑いをつくる。

「はじめまして、僕は唯咲 かずいっていいます」

 それで得心がいったのか、女は「あー」とかいっている。

「お隣さんの? 唯咲さん、弟がいたんだぁ」
「はい、ちょっとした事情がありまして、姉の元に住まわせてもらう事になったんです。あの・・・」
「あ、名前? ああ、ああ。ごめん。あたしは律子。宇都宮 律子。よろしくねかずいくん」
「あ、はい。こちらこそよろしくお願いします」

 ぺこりと頭を下げる俺に笑いかけて、律子は彩の隣の部屋へと入っていった。
 隣か・・・
 俺は律子を見送りそんな事を考えていた。髪はぼさぼさで眠たそうな顔。いかにも堕落してますという感じの女ではあるが素地は十分にいい女だった。

 街へ出て獲物を探そうと思い、そしてとどまった。
 施設の連中がどこで目を光らせているか分からない。この状況で外に出て行くというのは自殺行為に等しかった。
 やむを得ず、彩の部屋へと戻り、部屋に寝転がった。
 退屈で仕方なかったが、眠っていれば良いかと目を閉じた。

 どれだけ眠っていただろうか。
 目を覚まし、体を伸ばす。固まっていた筋肉がほぐれ、ぽきぽきと間接が鳴る。
 視界がオレンジに染まっていた。
 まあ、何をしなくても彩が総ての段取りをつけてくれるだろうが、それでも今はやれるだけやって、戦力を整えなければならない。そして今、俺にできる事はすくない。

「やれやれ・・・」

 頭を掻きながら、部屋を出た。『宇都宮』と表札が出ている前に立ち、戸を叩いた。

「誰~? 新聞ならいらないよ」

 しばらく待つと戸が開き、朝見たまんまの宇都宮 律子が顔を出した。
 その瞬間を狙って、俺は律子に口づけをした。
 律子が驚いた隙に舌を差し入れる。間髪入れず唾液を流し込む。

「んむっ、ちょっとなにすんのよっ!!」

 律子は力任せに俺を引っぺがして、突き飛ばす。

「なんなのよあんたっ、信じられないっ」

 吐き捨てるようにそう言って、荒々しく戸を閉めようとした。俺は足を挟んで、戸を閉めさせない。

「ちょっ、なにやってんのよっ。あんたいい加減にしなさっ・・・いっ・・・・」

 律子は不意に体をもじもじさせ、辛そうに俺を見下ろしている。
 やはり、直接入れると効果が早いな。
 
「あ・・・・あんた・・・・なに・・・やったの・・・・よ・・・・・」
「俺の体液には強力な媚薬効果がある。俺の体液なら血だろうと、汗だろうと、涙だろうと総てに効果がある。味覚と嗅覚に作用し、人間を発情させる。男だろうと女だろうと関係なくな」

 律子の足はガクガクと震え、その開きっぱなしの口からは涎がこぼれ落ちている。それでも、何とか戸を閉めようとぐいぐいと引っ張っている。

「おやおや、がんばるねぇ。大変な事になってるってのに」
「あ・・・う゛・・・・あ・・・ぁ・・・・」

 もはや、声は言葉を示さず、瞳に焦点はなく、戸を引く力ももはやないに等しい。
 俺は戸に足を挟んだまま立ち上がり、力任せに戸を開いた。

「きゃっ」

 簡単に戸が開く。ノブを掴んだままの律子は戸に引かれ、俺に寄りかかった。
 俺は律子を抱きしめる。

「ちょっ・・・・やっ・・・・・あ・・・・・」

 何とか、俺から離れようと暴れる律子だが、体中に力が入らないらしく、その行動は何の抵抗にもならない。
 ズボン越しに性器を刺激し、耳に軽く歯を立てる。
 それで、抵抗はなくなった。律子は脱力し、俺に体を預けている。
 俺は律子の部屋へと上がり込む。律子の部屋は彩の部屋とは違い、ブランドものと思われるバックやら何やらがたくさんある。これまでたくさんの男に貢がせてきたのだろうか。

「んん・・・くふぅ・・・・」

 気づくと、律子はすでに一人で始めていた。ベッドの上で体を丸め、恥ずかしそうに股間を弄くっている。
 俺は律子の腕を手に取り、体全体で両手両足を抑える。

「なに勝手にやってるんだよ」
「あ゛・・・・あ゛・・・・や・・・・いや・・・・・」

 律子は頭を横に振り、懇願の瞳で俺を見上げる。弱々しく俺を見る。

「どうしてほしい?」

 ほくそ笑みながら律子に向かって俺は言う。何をして欲しいのか分かっている。それをこの女の口から言わせたいだけだ。
 もう我慢出来ないといった感じの律子はその質問に間髪入れずに答えた。

「入れてっ、あたしをぐちゃぐちゃに犯してっ、どろどろに溶かしてぇっ!!」

 ぬぷっ。
 律子が叫んだ瞬間に俺は突っ込む。切羽詰まった律子の顔が快楽にとろけていく。

「はぁぁぁぁぁぁ・・・・・・」

 悦びの声とともに体中の力が抜け、再び力が入る。男を何度もくわえこんでいる律子の膣は彩よりも具合がよく、彩の時のような余裕は俺の方にはなかった。
 何とか主導権を死守するので精一杯だ。
 入り口は奥へ奥へと俺のモノを誘い、奥では俺のモノを搾り取ろうとうねうねと刺激する。
 律子の手は俺の体を撫で回し、口は首や耳を這い回り、そこかしこを刺激する。
 そんな律子の手管に負けじと、律子の体を撫で回し、なめ回す。汗腺からしみ出している汗の味に顔をしかめながらも俺は続けた。
 律子の動きも俺の動きも互いに心を溶かし、俺の理性をとばし、目的を忘れさせていく。
 快楽におぼれかけた自らの心に活を入れ、律子の体へ挑む。
 耳をはみ、乳房を揉み、乳首に爪を立てる。

「あああっ」

 律子は軽く達し、肩で息を整える。休ませるつもりなどない。
 耳たぶや乳首を弾く。いまの律子はどんな刺激も快感へと変わる。

「ひぎぁあぁぁぅ」

 足や手の先がピンと伸び、体が反る。その反動で俺の体を浮かせるほどだ。

「いっ、やっ・・・・あ゛っ・・・あ゛っ・・・・」

 律子は涙や涎を流し、体を痙攣させている。その瞳はすでに何も映しておらず、その言葉も何の意味も持ち得ない。
 俺は律子の涙を舐めあげる。塩の味が舌を刺激する。
 その味を堪能し、その成分を分析する。
 分析は一瞬で終わり、合成に入る。

 俺のもう一つの能力。相手の体液を取り込む事により、相手の遺伝子情報を分析。そして、俺の命令に絶対服従という指令を含ませた俺の精液を体内に取り込む事により、DNAレベルで俺に服従させる事ができる。
 たとえどんな相手だろうとこの能力から逃れる事は不可能らしい。
 少なくとも、今までの実験や彩など俺が犯してきた相手は全て俺の虜になっていた。無論、彩と何ら変わるところのない律子に逃れられる訳がない。
 俺はビクッビクッと間欠的に痙攣を繰り返す律子の膣にたっぷりと俺の精液をなじませていった。
 これによってどういう変化があるかは個人差があるので、俺には何とも言えない。だが、俺を愉しませてくれる事だけは確かだろう。
 律子の頬を叩き、律子を起こす。

「おい、起きろ」
「ん・・・・あっ、ちょっ、な、なにやってるのよっ。はなれなさいっ」

 律子は状況を認識するなり俺の体をひっぺがした。
 ベッドの端へと移動し、シーツを引き寄せてその場に陣取った。その瞳には最初の強い意志が戻り、こちらを睨んでいる。

「ちょっと、あんた。なにやったのかわかっているの」
「あんたを犯した」

 俺を睨む視線に力が入る。だが、そんなことはなんでもない。

「そんなことをして、どうなるかわかってるの!」
「どうなるの?」

 俺の質問に、一層律子の殺気が増幅した。大きく手を振りかぶり、俺に向かって振り下ろす。

「こうなるのっ・・・・」
「動くな」

 律子の声を遮るように命令を下す。振り下ろされた律子の手は俺の頬の直前でぴたりと止まった。 
 律子の顔が驚愕に染まる。

「なっ・・・なに。なにしたのっ!!」
「別に。ただ、律子が俺のモノになっただけさ。律子の心も体も俺の意のままに動く」

 心もというのは半分はったりだが、俺にはそれなりの自信があった。精神の働きも突き詰めれば肉体の反応により起こるもの。つまり、体を自由に動かせるという事は心も自由にできるのではないかと思う。
 どちらにせよ、もう律子は俺のモノだ。ぴたりと止まっている律子の手を下ろし、顔に手を這わせる。

「律子。職業は?」
「何であんたなんかにそんな事答えなきゃなんないのよっ!!」

 瞳に力を入れ直し、律子は俺を睨む。無駄だというのに。

「答えろ」
「しょ、職業・・・はっ・・・水商売・・・」

 律子の口は本人の意志に反し、動き始める。そして、それに比例するように律子の顔はどんどん恐怖に歪んでいった。

「体は売っているのか?」
「は・・い・・・・いやぁぁぁぁぁっっ!!」

 律子は突っ伏し、声を上げた。恐怖に耐えきれなかったのか、体は小刻みに震えている。

「ふん。お前はその世界でトップになれ。偉いじじいどもの相手をしろ。そして、機密情報を聞き出せ。そして、お前は俺の事を誰にも伝える事はできない」

 俺の言葉が律子の体に染み渡り刻み込まれていく。律子はそれに抗えず、その心を残したまま従っていく。やがて壊れるかも知れないが、その時にはこいつの役割は終わっている。
 俺を愉しませるという役割は。

「―――――く」

 思わず、笑みが零れた。

< 続く >

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