闇の脱走者 第六話 産みし者

第六話 産みし者

 しかし、まずいことになった。
 とりあえず、0070に簡単な処理をしたが、いつ解けるかもわからない。
 今はまだ、俺がここにいることは知られていないが、それも時間の問題だ。
 一刻も早く手を打たなければならない。
 夜。俺はリビングで0070の写真とにらみ合っていた。
 羽沢へと送られてきた資料のコピーではあるが、現住所やら緊急連絡先やらが載っている。
 だが、おそらく書いてあるのはでたらめなものだろう。

「ただいま戻りました・・・あら、かずい様。何を見ていらっしゃるんですか?」

 彩はバッグをテーブルに置くと、俺の横から資料を覗く。

「小野七緒・・・・次のターゲットですか?」
「ちがう。こいつは組織の者だ。しかも、俺の能力が効かない」
「ふうん・・・・そうなんですか・・・・つまり、この子がかずい様がもっとも警戒しなければならない相手なんですね」
「ああ・・・・」

 くそ。どうする。0070をどうにかしなければ俺には未来なんてない。
 がしがしと頭をかく。そんな俺の横で控えめに彩が声を出した。

「あの、かずい様。『将を射んと欲すればまず馬を射よ』という諺を知っていますか?」

 そして、彩の手には大きめの封筒があった。

「ここか・・・・・」

 律子に渡されたと言っていた封筒には写真と資料が入っていた。その資料に載っていた住所、今俺はそこにいる。
 そして、一緒に入っていた写真。そこには見知った顔があった。忘れもしないその顔。水槽越しに見たその顔。

「・・・・諏訪」

 俺の開発主任、諏訪 直子の住居に俺は来ていた。
 既に調べ上げられているキーコードを打ち、エントランスの自動ドアを開く。中へ侵入すると諏訪の部屋の前へ行く。インターホンを鳴らし、留守なのを確認すると合い鍵を使って中へとはいる。
 暗闇の中、待つこと数時間。ガチャガチャと鍵を開ける音が響く。
 俺は音を立てないように物陰に体を隠すと諏訪が入ってくるのを待つ。

「ただいまーって、いっても誰もいないんだけどね」

 着替えるためか、鞄を置いて隣の部屋へと入っていく。俺はそっと出ると、諏訪の後を追っていった。
 半開きになったドア。そこから中の様子を窺う。てきぱきと流れるような動作で服を着替えていく。かっちりとしたスーツからゆったりとしたワンピースへ着替えると諏訪はうーんとのびをした。
 首をコキコキとならし、肩をとんとん叩く。ふぅと諏訪の口からため息にもにた息が漏れた。

「さて、ご飯にしなきゃ」

 諏訪がこちらへと歩いて来る。
 今だ。
 俺の唾液を詰めた霧吹きの小瓶を取り出し、ドアが開かれた瞬間を狙って吹きかけた。

「きゃっ」

 諏訪は怯み、たたらを踏む。ぶんぶんと頭を振ると、諏訪は俺を見て愕然とした。

「な、No.0069!? じゃあ、今のは!」
「もちろん、俺の体液だよ諏訪博士」
「なっ・・・・あぅ」

 がくっと体を崩して、諏訪は倒れ込む。
 ハアハアと息を乱し、弱々しい眼差しで俺を見上げる。

「0069・・・・どうやって・・・・」

 内側から蝕んでいく衝動に体を震わせ、気丈にも俺を睨む。
 しかし、その頬は徐々に赤く染まっていき、瞳は潤んでいく。

「0070が俺のいる近くまで来てね。0070には俺の能力は全て効かない・・・・だから、俺も焦っているんだよ」

 しゃがみこみ、諏訪の顎を押さえて顔を固定する。そして、のぞき込むように諏訪を見た。

「どうだ? 俺の体液は? あんたが開発したものだぜ」
「くぅ・・・・・」

 ぎりと音が聞こえるほどに歯を食いしばる。

「無駄なことを。0070以外に俺の能力を避けるすべはない。そんなことは作ったあんたが一番わかっているだろう」

 ぐいと顎を引き上げ、唇を奪う。押しのけようと体の間に差し込まれる手を押さえ、閉じられた口の上から歯茎を舐め上げる。
 ふるふると諏訪の体が震える。必死に閉じていた口がゆるゆると開いていく。そこから舌を差し込み唾液をたっぷりと流し込み、同時に諏訪の唾液を飲み込む。
 ビクン。
 諏訪の体が大きく震える。そして、俺と自分の体を一つにしようかと言うくらいぐいぐいと体を押しつけてくる。
 その体を引きがはずと、諏訪の体が床に崩れた。
 その体はビクビクと痙攣し、わずかに開かれた口からはとろとろと涎が垂れる。
 呼吸は荒く、その瞳は焦点があっていない。
 諏訪をごろりと仰向けにし、服を剥ぎ取っていく。

「ぁぁ・・・あぁぁぁ・・・・」

 茫然と俺を見る諏訪。すでに濡れていたその秘裂に堅くなっているものを突き入れる。

「ああああああああああああああぁっ!!!」

 己の中へ入ってくる感覚に諏訪は絶叫を上げる。俺の体の下で諏訪の体がビクビク震える。
 諏訪の胸を揉み上げ、腰を前後させる。

「あああ、ああああっ!!」

 送り込まれてくる快感に諏訪は悶え、ぶんぶんと頭を振った。
 ぐいと諏訪を引き上げて、騎乗位へと変位する。既に状況を見失っている諏訪は自ら腰を動かし始めた。

「いい、いいのっ! これが、これが気持ちいい!!」

 諏訪は俺の腹に手を当て、腰を振る速度を上げる。二人の結合部はじゅぶじゅぶと白い泡が立っていた。
 俺のものが奥を突く度に諏訪は声を上げ、頭を振る。

「ああ、あああ、あああああっ!!!」

 何度も何度も絶頂へと持ち上げられて、ガクガクと体を震わせる。ひくひくと収縮し、諏訪の体が俺を求める。
 その中に解析・調合の終わった精液をたっぷりと流し込んでやる。

「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 諏訪は体を大きく反らし、次の瞬間、がくっと糸が切れた操り人形の様に崩れ落ちた。
 俺の上でびくっびくっと間断的に震える諏訪の体。中に入っている俺のものを引き抜き、諏訪の体を俺の上からどかす。
 立ち上がり、震えている諏訪を足で仰向けにする。

「おい、起きろ」
「う・・・・・ん・・・・・・」

 足で諏訪の頭を揺らすと、呻き声と共に瞼が震えた。
 頭を押さえながら起きあがり、頭を振る。

「おい」

 ビクン。
 俺の声に反応し、諏訪の体が震える。
 諏訪は顔を上げると、陶然とした表情で俺を見た。

「な、No.0069・・・・いえ・・・ご主人様」
「いまはかずいだ」
「はい・・・かずい様」
「よし。これからお前には組織のデータを流してもらう。研究所の場所、規模、配置されている研究員、責任者の所在」
「はい・・・・」

 ふっと媚びるように笑う諏訪。
 その姿を見て、俺はにやりと笑みを零した。

「そして、No.0070への対処。あいつの能力を無効にしろ。これが最優先だ」
「はい、御命令とあらば」

< 続く >

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