ドールメイカー・カンパニー2 (7)

(7)呼び出し

 とあるマンション、その7階の1室での出来事だった・・・

 この部屋の住人、山下絵理は食卓にドンと音を立てて大皿を置いた。

「ふぅ~、お待たせぇ!重かったわぁ。夕ご飯の出来上がりよ」

 夫の真一はその言葉に置かれた皿を覗き込み、そして目を丸くした。

「おいおい、こりゃぁちょっとばかり・・・」

 思わずそう呟いた真一だったが、途端に絵理の表情に気が付き、口篭もった。

「え~?なによぉ。あなた私の料理が気に入らないの?」

 絵理は可愛らしくほっぺたをプッと膨らませた。

「えっ、いや、そんなことないよ。すっごく美味しそうだよ、このスパゲッティ。俺ボンゴレって大好物だし。ただ・・・」

 真一は絵理のご機嫌をとるように言い繕ったのだが・・・

「ただ?ただ何よ?」

「いや、量がさ・・・多すぎない?」

 テーブルの上には大皿が3つも並んでいる。
 スパゲッティは500gくらい有りそうだし、それ以外にもソーセージが山盛り、サラダがテンコ盛り・・・

「え・・・?あ、量のこと?あぁ・・・ま、すこ~し多かったかもね」

 絵理は微妙に視線をずらして応えた。

 新婚旅行から帰ってきて1週間。
 OLを辞め専業主婦として家事を張り切って始めた絵理だったが、それまで親元で暮らしてきていたため料理に関しては殆ど経験なし。毎食、本とにらめっこしながら奮闘しているのだった。
 けれど、センスが良いのか味は真一の舌を満足させる出来栄えとなっていた。しかし、量が一定しないようだった。

「これ5人分は有るぜ。大食いバトルでも始める気かい?」

 真一は苦笑いをしながら言った。

「だってぇ~・・・」

 絵理は手を後に組んで、小首を傾げてからソッポを向いた。
 小柄だが均整のとれたスタイル、丸顔につぶらな瞳、エプロン姿のそんな絵理が拗ねている様子を真一は目尻をさげて見詰めた。

 (カッ、カワイイ!)

 思わず後から抱きしめたくなった真一だったが、丁度その時思いがけない邪魔が入った。

 ピンポ~ン・・・ピ~ンポ~ン

 玄関の呼び鈴が鳴ったのだ。

 真一は時計を見上げる。
 午後8時10分・・・

「誰だろう?今時分」

 真一は絵理に問い掛けた。

「知らないわ。回覧版かしら?」

「あぁ、そうかもね」

 真一は席を立つと玄関に向った。
 この賃貸マンションに山下夫婦は1週間前に入居してきたのだった。

 玄関の扉を開ける音がして、それから真一の声が聞こえてきた。
 しかし相手の声はくぐもっていてよく聞こえない。
 絵理は気になって耳をそばだてた。
 すると不意に真一の声がボリュームアップした。
 妙に上機嫌そうである。
 そして絵理が手持ち無沙汰で待っているダイニングへすぐに戻ってきたのだ。

「あら、何だったの?」

 問い掛ける絵理に、真一は悪戯そうに微笑むと、さっと脇に下がりその背後を絵理の視線に晒した。
 するとそこには真一の後から続いて男が一人ついて来ていたのだった。

「あ、こんばんわ。奥さん」

「あら、祐介くんじゃない」

 絵理は男を見てちょっと驚いていた。
 マンションの隣の部屋に入居している学生で、水嶋祐介という名前の青年だった。引越しの挨拶に行ってからの知り合いなのでまだ1週間足らずの面識なのだが、人当たりが良く、それに色々マンションのルールを丁寧に教えてくれるので、2人はすっかりこの青年を気に入っていた。

「絵理~、救いの神の登場だぞぉ」

 戻ってきた真一は妙に嬉しそうにしているが、絵理にはその理由がよく飲み込めなかった。

「え?なに?なんのこと?」

「何って、この育ち盛りの祐介くんの胃袋が絵理の料理に挑戦してくれるってことさ」

「あ・・・あらぁ、随分タイミングがよかったわねぇ」

 絵理は一瞬、夫の無神経に腹を立てたが、笑顔を作って取り繕った。

 (何考えてるのよっ!余ったって良いじゃない。私は貴方と二人っきりでお食事したかったのにぃ!)

 しかし世話になっている祐介を追い返す訳にも行かない。
 絵理は(察してほしいなぁ)と思いながら祐介に視線を向けた。
 その視線に気付いた祐介は絵理にニコッと笑いかけると・・・・・・

 絵理は片手をテーブルに着いて、咄嗟に身体を支えた。
 一瞬奇妙な眩暈が絵理に訪れたのだった。

 (あら・・・?えっと・・・何を考えていたんだったっけ?)

 目を瞬(しばた)いて視線を上げると祐介のちょっと困惑した表情にぶつかった。

「あの・・・やっぱりお邪魔じゃないですか?」

「なに言ってるの。“渡りに船”ってやつだよ。なあ、絵理」

「ほんと。ちょ~ど良いタイミングだったのよぉ。あたしったら作りすぎちゃって、このままじゃ全部私達夫婦の皮下脂肪になっちゃうところだったんだから。お願い、助けると思って食べていって」

 絵理は満面に笑みを浮べて、心から祐介を食事に誘った。

「助けるだなんて・・・。俺のほうこそ助かります。じゃあ、お言葉に甘えて、ご一緒させていただきます」

 祐介はそう言って食卓についた。
 絵理も先ほどのわだかまりを忘れてしまったかのように、楽しげにテーブルの用意を始めた。

 そして、それから3人の夕食は和やかに小一時間ほど続いたのだった。

「あ~美味しかったぁ。満腹、満腹」

 真一が腹を撫でながら椅子の上で伸びをした。

「ほんと、美味かったです。絵理さんて上手ですよね、料理」

 祐介も食後のコーヒーを味わいながらにこやかに絵理に語り掛けた。

「どう致しまして。お粗末さまでした。でも、よっく食べたわねえ。祐介くんって細いのに見掛けによらないわぁ」

 絵理は綺麗に片付いた皿を見渡して感心したように言った。

「ホントホント。祐介1人で3人分は食ってたぞ」

 晩酌のビールで赤くした顔を祐介に向けて真一はからかった。既に呼び捨てになっている。

「あ、はぁ・・・。どうもスミマセン、俺、遠慮が無くって。あ、それじゃあ、お返しって訳じゃないけど、ちょっと俺がデザートを用意しますよ」

 祐介は急に思いついたように手をポンと打つと、2人にそう言った。

「あら、冗談よ。そんなこと気にしないで」

 絵理がエプロンを着けながら、祐介を振り返って言った。

「あ、いえ、ホント大した物じゃないからお口に合うか判らないけど・・・。良かったら召し上がりません?」

「へえ。で・・・いったい何?デザートって」

 真一が何気なく尋ねる。
 甘いものが大好物の絵理も何気に聞き耳を立てている。

「“なまもの”なんですけど・・・ネ」

 祐介が勿体つけてヒントを与えると、すぐに絵理が反応した。

「もしかして・・・シュークリーム?」

 目がキラキラしている。

「う~ん・・・近い!でも、若干違ってる」

「エクレア?」

「違う。ちょっと離れた」

「え~・・・。生クリーム系なの?」

「う~ん。クリームっていうよりミルクっぽいかな」

「わかった。ミルクゼリーでしょ!」

「ぶっぶ~。残念でした」

「え~っ。判んないわよ。何なの?」

 いつの間にか絵理が身を乗り出して祐介に詰め寄っている。

「じゃあ、絵理さんも席に着いてください。これから出しますけど、その前にちょっとしたパフォーマンスが 必要なんです。ちょっと協力してもらえますか?」

 祐介にそう切り出されると、絵理は不思議そうに目を瞬(しばた)いた。

「いいけど・・・。何をするの?」

 怪訝な表情で席に着いた絵理に祐介は自分の掌をゆっくりと晒した後、いきなりサッと絵理の目の前に手を差し伸べたのだった。
 ビックリしたようにその手に注目した絵理は、しかし次の瞬間弾けるような笑顔になった。
 いつの間にか祐介の指先に一輪の薔薇の花が摘ままれていたのだ。

「わぁっ、すぅごぉ~いっ」

 素直に感心する絵理に祐介はニッコリと微笑むとその薔薇を頭上にさし上げた。
 するとその途端、ピシッという異音とともに薔薇の花はステッキへと変わっていったのだ。

「おぉ~っ!凄い、すごいっ。祐介、やるねぇ」

 これには真一も思わず拍手をした。
 しかし祐介のパフォーマンスはこれで終わりではなかった。
 そのまま出現したステッキをバトンのように指の間でクルクルと廻し始めたのだった。
 その見事な指使いに2人の観客は視線を吸い寄せられる。
 そんな2人の視線の動きをじっと監察していた祐介は、小さく小さく微笑むと、不意に手にしたステッキで真一の頭をポンの叩いたのだった。
 勿論、まったく力を加えていない軽い悪戯で、横でバトンの行方を目で追っていた絵理はプッと軽く微笑んだのだが、しかしすぐに訝しげな表情となった。
 絵理同様、楽しげにバトンを目で追っていた真一が、その途端、まるで凍りついたように動きを止めてしまったことに気付いたのだ。

「真一さん?どうしたの・・・」

 状況が飲み込めず、絵理は思わずパフォーマンスを続ける祐介に尋ねるような視線を向けた。

「ね、祐介くん・・・真一さんになにかしたの?」

 しかし祐介はその問いに無言のまま優しく微笑んでいるだけだった。
 そして絵理が尚も言葉を重ねようとしたその時、再び回転を始めたステッキが真一の時と全く同じように絵理の頭上にポコンと当たったのだった。

 物理的な衝撃は全く無い。
 しかしその瞬間、まるで雷に打たれたような衝撃が絵理の全身に走ったのだった。
 そして絵理はまるで心のフューズが跳んだように体の制御を放棄し、ただ見開いた目に映る光景だけを呆然と眺めていた。

 そして、その視界にはいつの間にはステッキを両手に持った祐介が現れ、硬直している2人にこう言ったのだった。

「真一さん、絵理さん・・・さ、デザートの時間ですよ。お二人の『バックドア、オープン・・・セサミ』」

 祐介の口から不思議なフレーズが滑り出たその瞬間、二人の表情に変化が生じた。
 ちょうどステッキの衝撃によりビックリしたような表情で固まっていた2人の顔から全ての表情が抜け落ち、ただ虚ろな視線だけがゆっくりと宙を彷徨い出したのだ。

 そんな中、一人祐介だけが相変わらずにこやかなまま二人に語りかけている。

「では、絵理さん。貴女はしばらく眠っていてください。次に僕が貴女の額に触れて話し掛けるまで、周りの音は何も聞こえませんよ」

 そう言って祐介が指をパチンと鳴らすと、絵理は静かに目を閉じて机に突っ伏したのだった。

「さあ、それでは真一さん。貴方の記憶を整理してあげましょう。僕の言葉を良く聞くのです。そしてそれを繰り返して言ってみるのです。すると貴方は、それが自分の記憶であることを“思い出す”でしょう・・・」

 そう言って、祐介は真一の虚ろな視線に語りかけ始めた。

「貴方は・・・独身です。一人暮らしをしています・・・」

『俺は・・・独身・・・一人暮らしをしている・・・』

 生気の無い、うわ言のような声が真一の口から漏れ出てきた。
 祐介はその声を確認すると、いっそう笑みを深くして話を続けた。

「貴方は、ペットを飼っています。大型の犬です。貴方が一生懸命に躾たとっても賢い犬です」

『俺は・・・犬を・・・大型犬を飼っている・・・とても賢い・・・』

「でも、その犬は最近子犬を5匹産みました。このマンションはペットを1匹しか飼えない決まりです。犬を誰かに譲らないと、保健所に引き取られて薬殺されてしまいます」

『子犬が・・・5匹・・・生まれた・・・あげないと・・・殺されちゃう・・・』

「4匹は貰い手が見つかりました。でも、貴方の手元には親犬と子犬が1匹ずつまだいます。今晩中にあと1匹の貰い手を探さないと、明日には保健所に引き渡さなければなりません」

『今晩中に・・・貰い手を探さないと・・・犬が・・・殺されてしまう・・・』

「今晩は、隣の住人が遊びに来ています。最後のチャンスです。子犬は育てられそうも有りませんが、よく躾られた親犬なら貰ってくれるかもしれません。断られたら、犬は保健所に引き取られるしかないのです。なんとしても売り込みましょう・・・」

『お・・・親犬を・・・隣人に・・・貰ってもらう・・・絶対に・・・』

 祐介はそんな真一の反応を満足そうに観察した後、仕上げに幾つかの“記憶”を追加し真一の“バックドア”をクローズした。
 そして次に机に伏している絵理の額に手を当てると、ゆっくりと頭を起こしたのだ。

「絵理、それでは貴女の記憶を整理してあげましょう・・・」

 祐介の言葉が再び新たな世界を作り出していった。
 そして、この世界の住人となった二人には、全能の神の言葉に逆らうすべは無かったのだった。

                    *

 頭の奥でパチンと音が鳴った気がして、真一は目を開けた。
 一瞬呆然としていた頭が次第に落ち着いていく。
 そして気が付くと目の前に若い男がいて、真一の顔をじっと覗き込んでいた。

「真一さんっ。目、覚めました?俺、そろそろ自分の部屋に戻りますから・・・」

 その言葉で真一はようやく状況を思い出した。

「あ・・・祐介・・・。俺・・・、寝てた?」

「飲みすぎですって。いくら気ままな一人暮らしだからって、このまま酔いつぶれちゃったら風邪引きますよ」

「あぁ。悪りぃ。そんな飲んだつもりは無かったんだけどなぁ・・・」

 真一は祐介の“一人暮らし”という言葉に何の違和感も覚えていないようだ。

「何言ってんですか。凄いピッチだったじゃないですか。何かすごい深刻な顔しながらさ」

「え・・・深刻・・・?」

 真一はその言葉に引っ掛かりを感じて、記憶を辿ってみた。すると・・・

「あぁっ!そうだっ、今晩が期限だったんだっ。俺、飲んでる場合なんかじゃないのにぃ・・・」

 一瞬後悔に顔を歪めた真一だったが、すぐにハッと気付き祐介の顔を覗き込んだ。

「ゆ・・祐介さあ・・・。お前、お前も一人暮らしだったよなぁ」

「え?えぇ、そうっすけど・・・」

「だよなぁっ!でさ・・・ペットは飼ってないよな?」

 真一の表情は真剣だった。
 それに引き換え祐介の表情はあっけらかんとしている。

「えぇ。別に飼ってないですけど」

 真一はその答えを聞くと大きく息を吐いた。
 そして行儀良く椅子に座っている“絵理”をチラッと確認してから言い辛そうに口を開いた。

「実はさあ、祐介にちょっと相談があるんだけど・・・。こいつをサ、“絵理”を貰ってくれないかなぁ」

 そう言って真一は“絵理”に顎を杓った。

「ええっ!?嘘でしょ?真一さん、“絵理”のことあんなに可愛がってたのにっ」

 祐介はわざとらしくビックリした表情を作った。

「いや・・・本当なんだよ。話したっけ、こいつに5匹子犬が生まれたって。それでさぁ、一生懸命貰い先を探したんだけど、どうしても4匹分しか見つからないんだよ」

「あぁ。このマンションではペットは1匹って決まってるからか・・・」

 祐介は真一の話に調子を合わせて頷いている。

「そうなんだ。それでどうしてもあと1匹の貰い手を探さなきゃならないんだけど、明日には保健所が確認に来ちゃうんだよっ!」

「それで“絵理”ちゃんを俺に譲るってことですか・・・」

「そのとおり。頼むよ。祐介が貰ってくれないと、“絵理”は明日保健所で薬殺されちゃうんだよ」

 真一のこの言葉を聞いて表情を変えたのは、他ならぬ“絵理”だった。
 心配そうな表情で二人の顔を見比べている。

「え~・・・どうしようかなぁ・・・」

 祐介はわざと、迷ったような表情をした。

「“絵理”は真一さんには良く懐いてるけど、俺には懐いていないでしょ。ちょっと飼っていく自信ないなぁ」

 それを聞いて真一は勢い込んだ。

「大丈夫だって。“絵理”は人懐っこいから。誰にでもすぐに懐くさ。ほら、こっちに来て試してごらんよ」

 その言葉を待っていた祐介は、いそいそと立ち上がり“絵理”の傍らに立った。
 そして艶やかに輝く“絵理”のショートヘアを優しく撫でた。
 “絵理”はうっとりした表情で、祐介を見上げている。

「ほら、全然大丈夫だろ?今度は手を差し出してみて。大丈夫、絶対噛まないから」

 祐介はその言葉に従い“絵理”の顔の前に掌を差し出した。すると“絵理”は待ち構えていたように舌で掌を舐めまわし始めたのだった。
 綺麗なピンクの舌を伸ばして懸命に自分の掌を舐めまわしている人妻を祐介は楽しそうに見下ろした。
 股間が敏感に反応を見せ始めた。

「へぇ。本当だ。随分人懐っこいですね」

 祐介のその言葉に真一の表情も緩んだ。しかし・・・

「でも、やっぱり飼う自信ないなぁ。とっても真一さんみたく“絵理”に金掛けられないもん。凄いですよね、ナンカ人間並みに服まで着せちゃって。俺、まだ学生だし、真一さんみたいにペットにこんな贅沢させられないっすよ」

 それを聞いて真一はムキになって否定した。

「違う、違うよっ!今日はちょっとシャレでこんな格好させてるだけで、いつもは服なんか着させてないよ。金持ちババアの犬じゃないんだからさ、そんなことするわけないじゃん」
「あ、そうなんだ。ま、確かに変だとは思ってたけどね、真一さんの趣味かなって思って黙ってたんだ。じゃあさ、もうこの“悪趣味な扮装”は取っちゃってよ。犬は犬らしくしてるのが一番さ。それに、毛並も見たいし・・・」

 そう言って祐介はニンマリと笑った。
 しかし真一にはその笑顔の邪悪さは読み取れない。
 『OK~っ』と軽く言ってすぐに“絵理”から洋服を剥し始めたのだ。
 もともと絵理は夫の真一に夕食を作っていただけなので、当然着飾ったりしていない。薄ピンクのスエットの上下にエプロンをしただけの格好である。
 真一は腰の後ろのエプロンの結び目を解き、スエットの上と一緒に頭から引っこ抜いた。
 当然その下は素肌にブラジャーをしただけの格好である。
 しかしそれを見てぎょっとしたのは他ならぬ真一自身だった。

「うわっ。ブラジャーまでしてる・・・」

 意識の上では“絵理”は犬にされているため当然服を1枚脱がせば裸になると思っていたところ、下から予想外にブラジャーが出てきて戸惑ってしまったのだ。

「うわ~、真一さん芸が細かい」

 祐介が横から合いの手を入れると、真一は赤面した。

「あはは・・・、ちょっと凝りすぎたかなぁ。自分で忘れてて、自分で驚いちゃったよ」

「犬用のブラなんてよく売ってますよね。ちょっとみて良いですか?」

 祐介はそう言って“絵理”の背中に指を伸ばすとホックを外しブラジャーを取り去った。
 85センチ、Dカップの乳房が無造作に晒され、祐介の目の前でプルプルと震えた。
 しかし真一も“絵理”自身も、その事態に何の違和感も抱いていない様子だった。それどころか、ようやく不自然な格好から開放されたといった安心感まで表情に浮べていた。
 独り祐介だけが隣に住む人妻の乳房を鑑賞して、薄笑いを浮べている。

「なかなかおとなしいですね。やっぱり主人が誰なのか判っているのかなぁ。試しに俺がアトの洋服を取っても良いですか?」

「あぁ、かまわないよ。こいつは誰の言うことでも聞くよう躾てあるから大丈夫サ」

 真一はそう言って、あっさりと場所を空けた。

「へへへ。じゃあ“絵理”ちゃん、大人しくしていて下さいね。ここじゃ、ちょっとズボンを取りにくいから・・・テーブルに載っけちゃいましょうか。良いですよね、真一さん?」

 祐介はそう言って一応真一の了解をとったあと、“絵理”をテーブルに上げた。無論、完全な四つん這いである。
 祐介の目の前に新妻の柔らかそうな乳房が重力に引かれて重たげに揺れている。そして膝を伸ばして尻を高く掲げているため、丁度祐介の目線の高さに“絵理”の股間が来ている。
 祐介は手を伸ばして尻の肉の手触りを確認した。88センチのたっぷりした肉の手ごたえに祐介の股間が更に硬くなる。
 そして真一の表情をチラチラと確認しながら、“絵理”のスエットのゴムに指を掛け、ショーツと一緒にゆっくりと引き下げていった。
 小麦色の背中からは想像がつかないほど真っ白な尻が姿を現し、すぐに秘められた人妻の股間が祐介の目に晒される。
 祐介ははやる心を抑え、落ち着いてスエットとショーツを足首まで下ろすと靴下ごと足から引き抜いた。ついに一糸まとわぬ姿のままテーブルの上で四つん這いになった人妻ペットが完成した。

「うん、確かに真一さんがいうとおり大人しくしていますね。さすがに良く躾てあるんですねぇ。じゃあちょっと毛並を見させて下さいね。それから病気を持っていないかも確認しますよ」

 祐介は真一にそう断ると、当人の目の前でその妻の身体を自由に触り始めた。
 しっとりとしたきめ細かい肌の手触りを両手で堪能し、目の前に突き出されている尻を撫でまわす。そして無造作に尻の肉を割り開くと、その奥に息づくアヌスをダイニングの明るい光に晒してじっくりと観察した。更に当然ながらその下に位置する女の淫裂には念入りに指を這わせ、押し開き、夫の真一でさえ一度も見たことがない肉洞の奥にまで視線を這わせた。
 “絵理”はそんな祐介の指使いに敏感に反応し、股間にはたっぷりと蜜を分泌し、口からはメス犬に相応しく“クゥ~ン・・・クゥ~ン・・・”と泣き声を洩らしていた。

「真一さん。なかなか良いメス犬ですねぇ。さすがは真一さんが手塩に掛けて躾ただけのことは有りますね」

 祐介が“絵理”の股間に手を突っ込んだまま真一にそう声を掛けると、真一は夢から覚めたようにハッとして祐介を見た。
 その顔は汗にまみれ目は血走り、口も渇いてしまったようで中々声が出ない。2,3度咳払いをした。

「あ・・・ああ。そ、そうだろ?すっごく良い犬なんだ・・・」

「あれ?どうしたんです、真一さん。もしかして俺に譲るの惜しくなったんじゃないですか?」

 祐介は意地悪そうにそう声を掛けた。

「えっ?そ、そんなこと無いよ。だってさっきも言ったじゃないかっ、祐介に貰ってもらえないと明日保健所に引き渡すほか無いんだって」
「ああ、そうでしたね。それじゃあ、今度は“絵理”のお腹を確認したいんで、スミマセンが真一さん、こいつに仰向けになるよう命令してくれませんか?」

 祐介はニヤッと笑い真一に言った。

「あ・・仰向け・・・か。わ、わかった。ちょっと待ってくれよ」

 真一はもう一度唾を飲み込むと“絵理”に向った。

「“絵理”、“絵理”・・・いい子だ、さあ、仰向けになるんだ。さあ、お腹を出すんだ」

 真一はそう言って“絵理”の肩に手を置き、テーブルの上に仰向けに寝そべるよう体勢を変えさせた。
 すっかり犬になり切っている“絵理”は、仰向けになっても両手足を伸ばすことなく、丁度新生児のように両手は肘から曲げて両耳の横に置き、両足は“M”字型に広げたままにしていた。
 100%無防備な体勢である。テーブルが丁度腰の高さになっているため、割り開かれた股間に移動し腰を突き出すだけで“絵理”の体内に肉棒を打ち込むことが出来るのだ。
 無論、ここまで来てそれを躊躇う男はいない。
 祐介は“絵理”の股間に向き合う位置に移動すると、両手を伸ばして“絵理”の腹からゆっくりと両手を滑らせて行き、両方の乳房に指を食い込ませた。そして我が物顔でその豊かでスベスベした乳房を揉みコリコリと硬くなっている乳首を指で転がした。
 “絵理”もその愛撫に反応しテーブルの上に小さな水溜りを作り出し始めていた。
 そろそろ、頃合が良いタイミングだ。

「真一さん・・・それじゃあ、あとは“メス犬の機能確認”だけなんだけど・・・どうすれば良いんでしたっけ?」

 祐介は、顔を真っ赤にして二人を見つめている真一に“キーワード”を含んだ言葉を投げ掛けた。
 その言葉に真一は感電したかのように身体を震わせると、うめくように言った。

「め・・・メス犬の・・・き、機能確認は、お、男が・・・じ、自分の器官で・・・確認するんだ」
「え~とぉ・・・自分の器官って何の事でしたっけ?」

 祐介のアッケラカンとした声が部屋に響く。

「自分の器官・・・っていうのは、ペニスのことだ。メス犬に突っ込んでみて確かめるんだ」
「えっ、あ、そうでしたっけね。忘れてましたよ。じゃあ、ちょっと確認をしちゃいますよ」

 祐介はそう言うと真一の前で悠々とズボンを下ろし、赤黒く勃起したペニスを視線に晒した。
 そして自分の右手でペニスを掴むと“絵理”の濡れ濡れの淫裂に亀頭をこすり付けた。ニチャッ、ヌチャッと湿った音が真一の耳にもハッキリと届く。
 祐介はそんな真一の表情を観察しながら“絵理”の体内にゆっくりと自らの肉棒を沈めていった。
 “クゥ~ン・・・クゥ~ン・・・”と発情したメス犬の声が再び漏れ始める。
 真一の喉仏がゴクリと動き、祐介の腰が次第にスピードを上げながら往復運動を開始した。

 ギシギシ・・・ギシギシ・・・

 テーブルが軋み音をたてる。

 ぬちゃぬちゃ、ちゃぷちゃぷ・・

 ぬかるんだような、湿った音が続き、暖かく生臭い匂いが鼻腔を刺激する。

「はあはあ、あぁぁぁああああんん、くうぅぅぅんん、はあんん、っはあはあ」

 そして人とも獣とも判別がつかない喘ぎ声が引っ切り無しに続いていた。
 そんな中、祐介は“絵理”の両足を脇の下に抱え込み、人妻の絡みつく媚肉の感触を堪能していた。

 (くぅ~っ、良い味してるよ絵理ちゃん。それに真一さんの表情もグッド。やっぱ、人妻で遊ぶ時には旦那さんは必須だねっ。じゃ、そろそろ思いっきり中出ししちゃおっかな)

 祐介がそう思って腕に力を入れかけた時だった。

 ぶ~ん、ぶ~んっ、ぶ~んっ・・・

 祐介のシャツで不意に携帯が振動を始めたのだった。

「あ、着信」

 そして何気ない表情で反射的に胸ポケットに手をやった祐介だったが、同時に鳴り始めたメロディに気付いた途端、その表情を一変させた。
 流れ出したメロディ、そのタイトルは童謡『こぎつね』だった。

「真一さんっ。ちょっと悪いんですが、“絵理”の両足、持っててくれませんか?俺、ちょっと電話ですんで・・」

 祐介はそう言って呆然としている真一に“絵理”の両足を持たせると、携帯を耳に当てた。
 しかしゆっくりとした腰の往復運動は止まっていなかった。

「もしもし・・・」

 探るような祐介の声が携帯に吸い込まれる。
 しかし電話の相手の声は、めいっぱい明るかった。

『あ、もしもし、“きつね”くんですか?“くらうん”ですっ」

 その声を耳にして、祐介の表情もいっぺんに変わった。

「あぁ、社長っ。どうも、お久しぶりで~すっ」

 “祐介”ことドールメイカー“きつね”くんは、3ヶ月ぶりに聞く“くらうん”の声を確認すると、顔をパッと輝かせたのだ。

『元気そうですね。学校の方はどうですか?』

 “きつね”くんは社長の声を聞きながらも、腰の動きは止めず“絵理”の股間を抉っている。
 “絵理”は全身をピンクに染め、最後の絶頂の訪れを待ち構えていた。

 ぐっちょ、ぐっちょ、ぐっちょ・・・

「もう年内の講義は大体終了です。で、とりあえず俺は今週から自主的に冬休みにしちゃってます」

『あぁ、そうだったんですか。それはナイスなタイミングですね。いまちょっとお話できますか?』

 ねちゃ、ぬちょ、ねちょ・・・

「えぇ・・・。あ、ちょっと待ってもらえます?」

 “きつね”くんはそう言うと、この時だけ腰の動きを止め、目の前で“絵理”の両足をV字型に伸ばして押さえている真一の両目にサッと掌を当て、上から下へ優しく撫でるように下ろしていった。
 すると、それだけで“きつね”くんの手の動きに導かれた真一の両目はしっかりと閉じられてしまっていた。
 “きつね”くんは、まるでマネキンのように突っ立ったまま“絵理”の両足を支えるポーズで固まった真一を確認すると、また腰の動きを再開した。

 ぐちょっ、にゅちゅ、ぐちょっ・・・

「あ、どうぞ。お待たせしました~」

『いえいえ。どうも、ごめんなさいね。今取り込み中だったんですか?』

 にゅっちゃ、にゅっちゅ、にちゃ・・・

「いいえ、別に。ちょっと暇つぶしをしてただけです」

 “きつね”くんは軽く答えたが、しかし“くらうん”はその微妙なトーンを聞き漏らさなかった。

『“きつね”くんが暇つぶし・・・ねぇ。ふうん、道理でさっきから、ネチャネチャと変な音がしてると思った』

 意外に鋭く“くらうん”が突っ込んできた。

「ははは、うそでしょ?聞こえるわけ無いじゃないですか」

 “きつね”くんはそう言いながらも、驚いて腰の動きを止めた。

『ってことは、図星だったのですね。相変わらずですねぇ~。じゃ、あんまり焦らすのも意地悪だから、手短に話すけど、至急対応をお願いしたいんですよ。最初の期限は1週間。レベルはベイシックで良いけどターゲットは2名』

「うわっ、キツウ!1週間で2人ですか・・・。体制は?」

『言いにくいんだけど、貴方の単独作業です。勿論、私がバックアップしますけどね』

 “くらうん”のその言葉に、“きつね”くんは上を向いて肩を竦めた。

「そうですか・・・。最終期限は?俺、1月下旬からまた講義が始まっちゃうんだけど」

『4週間ってとこかな。だから順調なら何の問題もなし。どお?引き受ける?』

「う~ん・・・、とりあえず話を聞かさせてもらいます。明日、出社しますよ」

『出来れば、今から来れないかなぁ』

「へえ・・・本当に至急なんですね。わかりました、じゃ1時間したら出社します」

 そう言って“きつね”くんは電話を切り、携帯を胸ポケットに仕舞ったのだった。
 そしてようやく空いた両手で“絵理”の腰を掴むと、止まっていた腰の動きを再開させ思いっきりスパートをかけて行った。

 ぱんっ、ぱんっ、ぱんっ、ぱんっ・・・・

 肉を打つ音が次第に早くなり二人の呼吸も荒くなってきた。

「さ、“絵理”さん、待望のデザートですよ~。たっぷり召し上がれっ・・・それっ!」

 その声とともに“きつね”くんの肉棒から熱い粘液が“絵理”の体内に勢いよく噴き出した。

 びゅうっ!どくどくどくどく・・・

 そして“絵理”の肉体も、体内に注がれる“きつね”くんのザーメンに呼応するように最後の痙攣を起こし、快楽の頂点へ駆け登っていった。

「っくぅ~っ!!!くぅぅぅううううううう~~~~っん!!・・・・・」

「ふぅ~・・・」

 たっぷりと人妻に中出しした“きつね”くんは満足そうに溜息を吐いた。

「いや、いや、なかなか良い味でしたよ、絵理さん・・・。本当は2,3日持ち帰ってペットに調教をしちゃおうと思ってたんだけど、また今度ね。お仕事が一段落したら続きをしてあげるからね。それまでは真一さんとのセックスで我慢するんですよ」

 “きつね”くんはベトベトの自分のペニスを当り前のように絵理に舐めとらせながら、絵理の額に手を置いて話し掛けた。
 そして絵理の無防備な股間には真一が取り付き、ピチャピチャと音を立てながら二人の分泌したミックスジュースを舐め取っていた。

「さあ、二人とも聞きなさい。今から僕はこの部屋を出ていきます。貴方たちは玄関のドアが閉まる音を合図に、2匹の野性の犬となって目覚めます。お互いに発情した犬同士・・・遠慮は要りません、思いっきり交尾しましょう。かつて経験したことの無い野性のセックスの快感を味わうことができますよ。でも激しい快感の代わりに、今夜の出来事は一つ一つ全て消えていきます。けれども記憶など惜しくはありません、この快感に比べれば・・・。さぁ、記憶のある限りセックスをし続けましょう。そうすれば明日の朝、爽やかに目覚めることが出来ますよ。いいですね、全ての記憶を快感へ変えるのですよ。少しでも覚えていると天国の快感を味わえなくなりますからね」

 “きつね”くんはそう言うと、虚ろな視線を向けている2人の額をチョンと突っついた。
 すると忽ち2人はその場で昏倒する。
 そんな2人を見下ろしながら“きつね”くんは悠々と自分の服装を整え、“こぎつね”のメロディを口笛で吹きながら2人を残しゆっくりと部屋を後にした。

「バイバ~イ、暇になったらまた遊ぼうね~」

 最後にそう声を掛けると、“きつね”くんは玄関のドアを閉めたのだった。

< つづく >

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