悪代官

 この部屋には壁が無い。
 いや!壁が無いという表現は間違いにあたるかもしれない。
 有るには有るのだが壁という壁全部が書物で覆い尽くされているのだ。
 それはどれもこれも最初の数ページで頭が痛くなってきそうな書物ばかりだ。
 今その場所に二人の男が居る。
 一人は40代後半といった感じの男性。もう一人はそれより若く30代前半といったところだ。

「教授!やはりこれは今までの歴史を覆す力を持った大発見でした」

 興奮冷めやらぬ様子で話しているのは歳が若い方の男性で名を篠田と言った。
 ここは大学内にある教授室の一室で彼は助教授の立場にある。

「おお!篠田君遂に解明出来たのかね」

 嬉しそうに話すもう一人の男性は教授で名を松田と言った。
 彼がもちろんこの部屋の主だ。

「はい!教授が睨んだとおり『平助』は希代の怪物でした」

 篠田の言葉に松田は湯飲みに少し残っていた冷め切ったお茶を飲み込み沸き上がる興奮を押さえている。

ガチャッ!

 その時突然ドアが開きその場には不似合いな若い女性が顔を覗かした。

「美由紀!今まだ仕事中だ!」

 松田に言われ一瞬たじろいでいるこの女性は実は教授の一人娘である。
 妻を早くに亡くした為、松田は無骨な男手ひとつでこの娘を育ててきたのだ。
 高校の頃非行に走ったことなどもあったがなんとか卒業した今は以前とは打って変わり真面目で素直ないい娘になっている。
 そして偶然なのだが今美由紀が働いている仕事場はこの大学の近くにあった。
 だから時たま親子二人で打ち合わせ一緒に帰る事があるのだ。

「あっ!ごめんなさ~い」

 少し言葉をのばす癖を覗かしながら美由紀はぺこりと頭を下げた。

「美由紀ちゃん!すぐ話しは終わるので少しだけ待っててね」

 篠田は左手を立てて謝るポーズをとった。

「は~い」

 美由紀は松田、篠田の二人に悪戯っぽく舌を出してからドアを閉めた。
 その後も松田は美由紀が出ていたドアを見つめながら微笑んでいた。
 かわいくてかわいくてしょうがないのだろう。

「良いお譲さんですね」

 左手をまだ立てたままの篠田は松田に微笑みながら言った。

「まだまだ子供で見ていてひやひやするよ」

 そんな事を言いながらも松田は満足気である。
 もっとも篠田から見ればまだまだ子供なのは松田の方だった。
 彼の世界はこの書斎がほとんどを占め世間の事をほとんど知らないと言っても過言ではない。
 その為ひどく我が儘な時もあり嫌な思いをする事も度々であった。

「それはそうと例の件だが」

 松田の表情は先程までとは見事に一変して篠田にせまってきた。

「はい!『平助』の事に関する教授の推測はほぼ当たっていたと断言しても良いと思います」

 篠田は焦らすようにわざとゆっくりした口調で言っている。
 情けない話しだが松田に対しての抵抗はこれくらいしか出来なかったのである。

「歴史は塗り替えられるぞ!先代達がどうしても解明出来なかった謎を私が解いてやるのだ」

 松田はどうやら篠田の存在など無視して自分の世界に浸っているようだ。
 でもこれはいつもの事である。
 今までも松田の研究には必ず篠田の存在があった。
 しかし周囲の賞賛も成功も全て松田の物になっていた。
 篠田が得る事が出来るのは大学側から出ている僅かばかりの賃金しかなかったのである。

(ちっ!この親父!また独り占めするつもりか)

 実は篠田の中にある松田への憎悪は今や押さえられないところまで来ている。

「これが『平助』が残していった資料を解明したものですが」

 篠田は左手に持っていたバインダーから二枚の紙を取り外し松田に差し出した。

「ちょっと待て」

 松田は右手のひらを篠田に突き出してその動きを制止している。

「な、何か?」

 松田の意外な行動にとまどいを見せて篠田は首をかしげた。

「それはちゃんとタイピングしてあるのかね?」

「いえ!すぐにでもお知らせしたかったので・・・・・・・」

 松田はしかめっ面で不快な表情を露骨に出している。
 そして大きく息を吐くと皮肉いっぱいに言い放った。

「馬鹿かね君は!私に君の汚い字が読めるわけないだろ」

 篠田はこんな時自分の顔がひきつっているのをよく知っている。

「しょうがないから君が読みたまえ」

 大学における教授と助教授の差は歴然である。
 まして松田ほど世間の注目を浴びる教授ならなおさらだ。
 たとえそれが半分以上篠田の力があっても。
 篠田はいつもの如く不平ひとつ言わず目を閉じて耳を澄ましている松田に今解明されたばかりの資料を読み始めた。

 後世の人へ

 これが後世の人の目につくかどうかは分からねえが、もし発見されればこの時代にこんなやつも居たんだと思ってもらいたい。
 なお『本当にお前この時代の人間か?矛盾があるぞ』なんて疑問が浮かぶかもしれねえがそれは腹に閉まってくれ。
 『小さい事は気にしない』・・・・・生きていく上でこれは大事な事だぞ。

「おい」

 篠田の声を遮るようにその声は部屋に響き渡っている。

「何か?」

「何かじゃないよ!本当にそれは平助が書いたのかね?」

 もちろんこれには篠田が余計に脚色している箇所が多大に存在しているのである。
 だが篠田はそんな事あくびにもださず平然な顔をして続けた。

「はい!私はただ平助が書いたとおりに翻訳しているので・・・・・」

「まっ!どうせ君の翻訳だからな」

 篠田の顔が再びひきつった。
 こんな時だけ人がやったものだと言っていざという時は全ての手柄を独り占め・・・・これがいつものパターンなのだ。
 流石に毎回やられると慣れてきたと言うのも正直なところ有るがこのままでは一生自分は表舞台に立つ事が出来ないんだという焦りが日につれて大きくなっていた。

「すいません!ともかく先を続けます」

 それにしても最近は米の相場が上がったり下がったりで不安定な世の中になっちまっている。
 まったく米将軍にも困ったもんだ。
 それだけじゃねよ!
 『火事と喧嘩は江戸の華』・・・・・・なんて言葉もあるぐらいなのに『江戸から火事を無くそう』なんて馬鹿げた事言いやがって。
 だいたいなんだ「い組」「め組」なんてよ!
 こういうのを上方では『あほ丸出し』て言うんだろうな。
 まっ!世の中がどうなろうともあっしには関係無いがね。
 ん?なぜかって。
 それはあっしにはある『力』があるからさ。
 もっとも力と言ってもほとんどの人間にとって修得可能な物でこれを読んでいるあんたらにはもう当たり前の事になっているかもしれないがな。
 ともかくこの力のおかげであっしは仕事にもありつけるし女も抱き放題ってわけだ。
 おや?・・・・・仕事の部分では反応しなかったくせに女の部分でびくびくときたね。
 分かってるよ!隠さなくてもいいぜ!男はみんな助平なもんだ。
 時代が変わってもこればっかりは変わってないだろ?
 具体的にはどういう事だって?・・・・・焦るんじゃないよ!
 後でゆっくり説明してやるからな。
 何?・・・・・早く聞きたいだって!
 しょうがねえな!じゃぁちょっとだけやってやるか。

 実はあっしは今仕事に向かう途中なんだ。
 悪代官で有名な『杉谷』のところだよ。
 もっとも今まであっしが働いていたところはどこも悪代官ばかりだったけどな。
 でも全員『世直し侍』なんて世間で言われている野郎にやられちまったよ。
 えっ?その『世直し侍』て何なんだって?
 それはこっちが知りたいぜ。
 どこのどいつだか分からないけど悪代官と世間で言われているやつらをかたっぱしから滅ぼしているんだとよ。
 いったいそんな事をしてあいつに何の得があるのかね?

 おっと!そんな事を言っているうちに娘が前からやってきたぜ。
 んっ?・・・目がくりっとしていてなかなかにあっしの好みじゃないか。
 なかなか育ちも良いんだろうな。
 もっともあの着物の着方だけはなんとかしてほしいが!
 流行らしいがあっしにはどうも理解に苦しむ。
 最近の若いやつらの考えている事は全然分からねえや。
 えっ?いったいあっしは何歳なのかだって!
 歳の事はどうでもいいじゃねえか。
 とにかくあの姉ちゃんの思考とあっしの思考とつなぎ合わせるからちょっと待ってな!

「えっ?」

 はい!繋がったよ!
 見てみろよ!戸惑ってやがるぜ(あっ!見る事は出来ねえな)
 一瞬頭がぼ~とするらしいからしょうがないけどよ。
 ともかくあの娘の頭の中を覗いてみるぜ。

(あれ?どうしたのかしら?・・・・・・頭が急に・・・・・・・そう言えば私何をしようとしてたんだっけ?)

 はは!そんな事は決まってる事だよな。

(え~と・・・・・・・そうだ!港屋さんに行く途中だ!)

 馬鹿かこの女は?
 そんなくだらない事で朝っぱらから外に出るんじゃないぜ。
 若い娘が外出するっていったら男漁りに決まっているだろ。
 ちょっと教育しないとな。

(早く行かなきゃ男漁りに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・えっ?)

 はは!それが正解ってもんだ。

(あれ?港屋さん・・・・えっ?男・・・・港屋?・・・・・男?・・・・港屋?・・・・男!男!)

 おっと!どうやら朝から発情しまくってるようだぜ。
 身体が疼いてしょうがないんだろうな。
 あれこそ雌ってもんだ!良い表情しやがるぜ。
 あんたらに見せてやれないのがホント残念だな。

(男!男欲しい!・・・・・いっぱい気持ち良い事したい)

 ここで当然あっしが助けるわけだ。

(あんっ!我慢出来ない!男!男!・・・・・・・あっ!)

 う~ん!あのくりっとした目良いじゃねえか。
 思わず照れるねえ。
 ホント朝っぱらからじんじんきちゃうぜ。
 もっとも出勤前なんであっしも常識はわきまえてるけどな。
 ともかく姉ちゃん!あんたの理想にぴったりの男が目の前にいるぜ。
 目が離せねえだろ!

(な、なんて素敵な人なの!・・・・・疼く!疼いちゃうよ!)

 いいね!いいね!淫乱な若い娘は大歓迎だ。
 優しいこの平助さんがなんとかしてあげましょ。

「ちょっと!お嬢さん」

 はは!声をかけただけであの嬉しそうな顔!
 まっ!しょうがねえか!こんな良い男から声をかけてもらえるんだからな。

(あっ!まさか私に声をかけてくださってるの?)

「はい!何か?」

 もうこの姉ちゃんへろへろだろうね。

「あん?用がなかったら声はかけてはならねえのかよ」

 はは!焦ってる。焦ってる。

「いえいえ!とんでもないです。あなたのような素敵な方に声をかけていただきまして私は凄く幸せ者です」

「そうだろ!あっしは今から仕事に行かなきゃいけないんで凄く忙しいんだ」

「そんな忙しい中私のような者に声をかけてくだすって・・・・・・・・・・」

 おいおい!泣く事ないだろ。
 あっしは女の涙には弱いんだよ。

「いいって事よ。お前さんはなかなかかわいいから特別に助平な事してやるよ」

「えっ!本当に」

 う~ん!素敵な笑顔だ!

「もちろんだよ!もっとも何回も言うようだが仕事前なんであっしのちんぽはやれねえけどな」

 おいおい!そんな悲しそうな顔するなって。
 まったく喜怒哀楽の激しい娘だな。
 よ~し!とにかく!

ブチュッ!

「あんっ!」

(あぁ!素敵!・・・・このお方の唇!このお方の歯!このお方の舌!このお方の唾!このお方の息使い!今私はこの素敵なお方と接吻しているのね!みんな見て頂戴!このお方は私としてくだすってるのよ)

 んっ?やはり最近の娘は積極的だな!
 向こうから舌入れてきたよ。
 おお!こんなに腰をくねくねさしやがってよ。
 分かったよ!分かったよ!
 でも指で我慢するんだぜ!

くちゅくちゅくちゅくちゅくちゅくちゅ

「はうっ!」

 おいおい!べちょべちょじゃねえか。
 出勤前から右指に臭いがついちゃうな。

「いい!いい!いい!いい!・・・・・・あんっ!気持ち良いよ!」

 いいね!いいね!女のよがる姿はあっし大好きなんでぇ。

「お願い!ちょうだい!ちょうだい!」

 こういう表情で言われると弱いんだよな。
 でも町中であっしの大事な所は見せるわけにはいかねえし今日のところはこれで我慢してくれ。

くちゅくちゅくちゅくちゅくちゅくちゅくちゅくちゅくちゅくちゅくちゅ

「ひぃひぃひぃひぃ!いい!いい!いい!いい!いい!・・・・・・もう駄目!もう駄目!」

 極楽浄土を見せてやるぜ。

「あぅっ!」

びくびくびくびくびくびくびくびくびくびくびくびくびく!

 おぉ!いいね!白目むいてやがるぜ!
 おぼこじゃなかったのがあっしとしては少し残念だけどあんまり贅沢は言ってられないからな。
 ともかくこのあとこの姉ちゃんをどうするかだけど・・・・・ホントどうしようか?
 あっしの女の一人に加えてやってもいいけど流石に身体が持たないからな。
 よし!男は未練を持っちゃならねえ!・・・・・・・・切るところは切らなきゃな!

「おい!娘!よく聞けよ。・・・・・・・お前は今騙されていたんだ。悪代官で有名な杉谷にこんな町中で猥褻な行為をされたんだよ。本当に代官は悪いやつだな」

 はは!今よがりまくってた姉ちゃんがもう泣いているぜ。

「非道い!非道いわ!」

 おっと!忘れちゃいけねえ。

「お前らもよく聞け!今のはみんな代官がやったんだぞ!杉谷は本当に悪いやつだな」

 はは!みんな代官の事を話してるみたいだぜ。
 まっ!代官みたいなものは憎まれてなんぼだからな。

 これでなんとなくあっしの力が分かってもらえたかな?
 とにかく仕事と行きますか!
 と言ってももちろん手ぶらじゃ仕事に行くわけねえぜ。
 考えてみろよ!みっともなくて男一人で職場に行けるわけねえだろ。
 じゃぁ!今の姉ちゃんをだって?
 おいおい!女なんて腐るほど居るんだぜ(実際もう腐っているやつも居るけど)
 さっきのはあくまであんた達に説明する為だ。
 おっ!ほら見てみろ(もっとも何回も言うようだがあんた達には見れねえか)
 言ってるそばから上玉が歩いて来たぜ。
 やっぱりあの様に着こなしはきっちとしないとな。

「あっ!」

 ふふ!ちょろいもんだ。

「いいか!お前は今から悪代官で有名な杉谷に遊ばれなければいけないんだ」

(あたしは今から遊ばれる)

「かわいそうだけど悪い代官だからどうしようもないよな!とにかくすぐそこだからついて来い」

 ううっ!この悲しげな表情良いね。
 妙にそそるぜ。
 それに少し震えてるじゃあねえか!
 どこまであっしを喜ばすんだ。
 とか言ってるうちにあっしの職場である代官所に着いたぜ。

「本当にこの代官所は悪の巣窟と言ったところだな。門番まで悪丸出しの顔をしてやがるぜ」

「あっ!平助殿おはようございます」

 いつもながら礼儀正しいふりをしやがって。
 その顔に似合わねえや!

「馬鹿もの!今のあっしは平助ではない!悪代官の杉谷だ!」

 はは!あわてて土下座してやがる。

「どうか!ご無礼のほどはご容赦を・・・・ご容赦を・・・・・」

「うむっ!いつもの如く儂は今から町で見かけたこの娘を手籠めにする。あまったらお前にも分けてやるからな」

「はは!ありがたき幸せ」

 まっ!たまにはこいつにもやらないとな。
 どうだい!あっしはこんな悪人にも優しいなんてちょっと見直しただろ。
 あっ!そうだ!この女にも仕込まないとな。

「あぁ!私今から悪代官に無理矢理手籠めにされてその後この人にやられちゃうわけね。今日はなんて運の悪い日なんでしょ」

 いいね!この女の怯えた表情は本当にいいぜ。
 仕事がホント楽しみだ!

 代官の部屋と言うのはこの広い屋敷の中でも奥の方にあるんだ。
 もちろん下っ端の役人では入れない所だがあっしは特別だよ。

「あっ!平助殿」

 あっしを見ていきなり自慰行為を始めたのはここの大奥様。
 つまり悪代官の奥方ってわけだ。
 どうもこの奥方はあっしを見ると発情する癖がついちゃったようで昼夜問わずこの有様だ。

「あうっ!あうっ!平助殿」

 宮仕えも大変て事だ。

「奥方綺麗ですよ!でもまだ腰の動きが甘いのでそこを直した方が良いですよ」

 こんな助言はいつもの事だ。
 そして時には実際に身体に覚えさしたりする事まであるんだぜ。
 でも仕事だからこればっかりはしょうがねえな。
 とかなんとか言っているうちにここの主-悪代官-がやってきたぜ。
 みんなあいつの優しそうな顔に騙されるがああいうのが一番悪いんだ。

「おい!悪代官」

「はい!平助殿」

「今からお前はこの娘をいつもの如く手籠めにするんだ」

「はい!いつもの如くですね!」

「そうだ!なんたってお前は悪代官だからな」

「そうですよね!悪代官ですからね」

 いつもながら腰の低い悪代官だぜ。

「だからしっかり見張っていろよ」

「はい!おまかせください」

 悪代官は障子にぴったりくっついてあたりに目を配っている。
 あまり頼りにならないけどな!
 ではたっぷりとこの娘をいただくとするか。

「あぁ!とうとう手籠めにされるのね」

 まず代官と言ったら『独楽回し』だろう。
 そうだ!今読んでいるあんたらの時代には『独楽回し』なんてものがないかもしれないから簡単に説明するぞ。
 あっしらの時代では『独楽』とは主に子供が楽しむ玩具で元旦ではほとんどの子供が遊んでいるんだ。
 木を削って作られた物で丸い形をしていて芯と呼ばれる真ん中に突き刺さった棒を軸にしてくるくると回り出すんだ。
 んっ!どうやって回るのかだって!・・・・・・そいつは教えられないな!
 いろいろ考えてみな。
 話しを元に戻すぞ。
 『独楽回し』と言ってももちろん代官が女と二人で子供の遊びを楽しむわけではないぜ。
 代官の『独楽回し』とはな女の着物の帯の先を持ってだなおもいっきり引っ張るわけだ!
 そうすると!

「あれ~」

 このように逃げようとする女の力も加わって両手を上げたままくるくる『独楽』のように回るわけだ。

「あれ~ご無体な!あれ~」

 はは!くるくる回って楽しい!楽しい!
 これこそ悪代官の醍醐味だ!

「楽しいぞ!どうだ悪代官!凄く楽しいだろ!」

「はい!『独楽回し』はとても楽しいです」

 きっと代官の野郎は今頃この障子の外で大喜びだろうぜ。

「ほうら!この美味しそうなちんちんくわえてみな」

 これだけは言えるが本当にあっしの一物は立派なんだぜ。

(あぁ!そんな恥ずかしい事死んでも出来ない!・・・・・・・・・・て言うか私すでにくわえているし)

 うん!この女なかなか舌使いが上手い。
 気にいったぜ!

うぐっ!うぐっ!ちゅぱちゅぱ!

「美味しいか!美味しいか!悪代官のおちんちんは美味しいか?」

「おいひぃ!おいひぃ!はうるぅ!はうるぅ!」

 ふふ!この娘何を言ってるのかさっぱり分からねえぜ!
 しゃべる時でさえ口を離そうとしないんだもんな。

はうっ!はうっ!はうっ!はうっ!

 ほうら左手がお留守だ!

くちゅくちゅくちゅくちゅ!

「んっんっんっんっんっんっんっんっんっ」

 あぁ!凄いぞこの娘!
 あっしもそろそろ限界ですぜ。

「ひょうだい!ひょうだい!」

 分かりにくいがこの娘『ちょうだい!ちょうだい!』て言ったんだぜ。
 なんて言ってる間に出る!出る!

どびゆーどくどくどくどく・・・・・・んぐんぐんぐ

「残らず飲むんだぜ」

 んっ?早過ぎるだって?
 しょうがねだろ!こればっかりは力を使ってもどうにもならねんだよ!
 でも安心しな体力には自信があるからまだまだいけるぜ。
 もっとも今日の楽しみは夜にとってあるんだがな。
 それにしてもえらい外が騒がしいぜ。
 何があったんだ?

「くせ者め!」

 んっ?悪代官えらく激高してるじゃねえか。
 誰か居るのか?

「名を名乗れ!」

「みゃ、みゃふという猫でぅ」

 何だあいつは?
 歳は20をちょっと超えたくらいだと思うけど、それにしても猫って・・・・・・

「な~んだ!猫か」

 おいおい!

「そうだでよ」

 無茶苦茶だなこりゃ!
 どうやらこの代官も長くはなさそうだぜ。

「猫ちゃん危ないから向こうに行ってなさい」

「ありがとうございますでよ」

 ああ!逃がしやがった。
 恐らくあいつが例の野郎だと思うんだが・・・・・・・

 んっ?・・・・・そんな事より夜の話しを聞きたいだろう!
 分かってるって!
 お聞かせしましょう。
 でもその前に言いたい事があるんだがあっしも仕事はきちっとやってるんだぜ。
 この『お口でご奉仕』の後、門番に娘を引き渡し(早退して帰ったからきっと今頃お楽しみ中だぜ)、奥方とやる事が無い悪代官と一日中交尾さしたんだ。
 なかなかこう見えて気を使ってるんだぜ。

「火のよーじん!パンパン!」

 はは!いきなりでびっくりしたか?
 実はもうお待ちかねの夜なんだ。
 越後屋からの『黄金のお饅頭』もいただいたしあとやる事は庄屋の娘をご馳走になるだけだ。
 実はこの庄屋というのが妙に頑固で悪代官に生意気にも逆らいやがる。
 そこでちょっとお灸をすえるという事でその娘をいただくわけだ!
 この娘というのが庄屋に似合わずなかなかの美人であっしの好みにぴったりという具合だ!

「やめてください!私には清治郎さんという将来を約束した方が・・・・・・」

 この娘えらい甘い事言ってやがるぜ!
 甘やかされて育ってきたのが丸分かりじゃねえか。

「やめてくれて言ったってもう入ってるし」

 そう!時間は持たないが形は良いあっしの一物はすでにこの娘の下半身を貫いているというわけだ!

「あぁん!何かさっきから気持ち良いと思ったらそういう事だったのね・・・・・・・あぁぁん!」

 犬のように四つんばになりながらえらいよがってやがるぜ!

「あんっ!こんな格好恥ずかしい!。。。。。。。」

 そのわりにはよく腰を動かす娘だな!
 ぎゅうぎゅう締まってるしよ。

「清治郎さ~ん!清治郎さ~ん!」

 おいおい!こんな時に野郎の名前なんか出すんじゃねえよ!
 萎えちゃうじゃねえか。

「こら!馬鹿女!こんな時に男の名前なんか出すんじゃねえ!抜いちゃうぞ」

 はは!この娘あきらかに動揺してやがるぜ。

「いやいや!抜いちゃいや~!操られているの分かってるけど抜かないで~」

 おや?かかりが浅かったみたいだな!
 まっ!これはこれで楽しめるってもんだ。

「おい!この淫売がぎゅうぎゅう締めやがって!どうせお前の頭の中は男の事でいっぱいなんだろ!」

「ひ、非道いわ!・・・・・でもそのとおりよ!これからは私淫売として生きていくわ」

 物分かりのいい姉ちゃんだぜ。
 きっとこれは本性なんだろうな!
 だいたい『何とか小町』とかいう物はどうも怪しいもんだ。
 この娘のように一枚皮を剥がしたらこんなもんだ。
 それを今回はあっしがちょっと押してやっただけの話しだ。

「清治郎さんなんかもうどうでもいいわ!弥生はこれから男のちんぽの為に生きるの!あんあんあんあんあん」

 うう!気持ち良いじゃねえか!
 朝にも一発出してるのにもういきそうだぜ。

ぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎし

「あひぃ~!あんっあんっあんっあんっあんっあんっあんっ!もう・・・・もう・・・・・・」

どびゅうー!ぴくぴくぴくぴくぴくぴくぴくぴくぴく!

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!さようなら清治郎さん!悪代官の手に落ちちゃった!・・・・・・・・・・でも気持ち良い!」

 まだひくひくいってるぜ!
 若い娘はいつ抱いても気持ち良いや。
 これで庄屋もおとなしくなるだろ。
 んっ?また外が騒がしいな!

「く、くせ者!」

 またあいつ来やがったぜ。

「大丈夫!慌てるな。これは猫だ!」

「でもお代官様・・・・・・・・」

 まだ言ってやがる。

「ふふふ!実は只の猫ではないだでよ」

「なんだと!」

「世間ではみゃふの事を『世直し侍』と呼んでるでぅ」

 そんな事最初からばればれじゃねえか!

「くそ~騙してたな!出会え!出会え!くせ者だ!」

 何を今更!

「若い娘をかどわかし私腹の限りをつくした悪代官!覚悟するでよ!」

カキーン!カキーン!カキーン!

 あぁ!折角庄屋の娘を手に入れたのにここももう駄目みたいだな!
 次は何処に行くか?
 いっそ大奥でも行ってやるか!

 では最後にもう一回だけ念を押しておくぜ!
 この時代にこんな事はあり得ないとかいう苦情は一切聞かねえからな!
 じゃぁな!ちゃおちゃお!

 篠田は喉の乾きを潤す為冷めた茶を一気に飲み込んでいる。

「この後、平助は事実上幕府を動かす人物になるわけですが・・・・・・・」

 今読み上げたばかりの紙を綺麗に四つに折るとテーブルの上にそっと置いた。

「それはまた別の話と言う事で」

 松田の表情は変わらない。
 まるで鬼のようだ。

「ちゃおちゃお?」

 松田の口から最初に出た言葉がそれである。
 表情は更に厳しさをましている。

「あの時代にポルトガル語が出ているのはなぜなんだ?」

「それに関しましては一切苦情は聞かないという事で」

 松田の顔は今や赤鬼といった具合だ。
 しかし篠田はあらかじめ予想していたかのように平然としている。

「君は私をおちょっくているのかね!」

「いいえ!とんでもない。・・・・・・・・ただですね」

 篠田はわざと芝居かかった口調で言っている。
 正直松田をおちょくるのが快感になっているのである。

「ただ?」

「平助の資料には続きがあるんですよ」

ガチャッ!

 その時ドアを開けたのは美由紀だった。
 あどけない顔で部屋の様子をうかがっている。

「ねえ!まだなの?」

 松田は美由紀に対し右手を立て謝罪のポーズをとっている。

「すまん!もうちょっと遅くなるから我慢してくれ」

 流石の松田も娘にはかたなしといったところだ。

「いや!良いですよ。もう用事はほとんど済んだから」

 一瞬松田は自分の耳を疑った。
 声の主は間違いなく篠田だったのだ。

「な、何を言ってるんだ君は?」

 しかし動揺するのはまだ早かった。
 美由紀は嬉しそうな笑顔を浮かべるとあろう事か篠田に抱きついたのだ。

「ああ!良かった。あれ以上待たされると美由紀変になっちゃってた!・・・・・・・ほら!もう美由紀のあそこびちょびちょよ」

 松田はショックのあまり今にも倒れそうだ。

「し、し、し、し、篠田!これはどういう事だ!」

 動揺する松田とは対照的に篠田は口元に涼しい笑みさえ浮かべながら答えた。

「実は平助の資料の続きにはですね力の修得方法などが詳しく記載されていたんですよ」

「あぁぁん!早くして!して!」

「と、言う事で先ずはあんた達親子を操る事にしました。では娘さんをご馳走になります」

 篠田はあくまでも爽やかな笑顔である。

「そういう事ならしょうがないな!・・・・・・・美由紀!篠田さんにいっぱいかわいがってもらうんだぞ」

 松田は篠田に頭を下げるとチャックから自分の一物をとりだした。

「こっちには飛ばさないでくださいね!・・・・・・では楽しむとしますか」

 篠田は美由紀のはちきれんばかりの胸を鷲掴みにした。

「世直し野郎が来るまで・・・・・・・・・・・・・・」

< 完 >

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