邪剣士帖 其の一 淫牙怨報

其の一 淫牙怨報

 一人の浪人が河川敷で佇んでいる。彼の名は美濃部狂八。武家社会においては無名だが、闇社会ではそこそこ名は通っている。彼はそこで『邪剣士』と呼ばれている。由来には幾つかの理由があるのだが、最大の原因は武士道を完全に無視しているからだろう。
 武士の魂、信念といったものを彼は鼻先で笑いとばしているのである。不意討ち闇討ちは当たり前、騙まし討ちを成功させては喜んでいるのである。それ故、彼本来の実力は完全に無視され、恨みを買う事山の如しという有様である。今此処にいるのも、仇討ちと称して決闘を申し込まれたのである。ちなみに彼が一人でいるのは決して早く来たからではない。自分以上に敵が来るのが遅かったのだ。約束の時間はすでに一時間以上過ぎている。自分が使う手を相手に使われている。
(こんなケースは初めてだな。こりゃ、オレの事を調べてると見て、間違いねえか。まあいざとなりゃ、『アレ』を使うだけだがな)
 彼は自分が負けるとは微塵も思っていない。それは彼の特殊能力を持っているからだ。
(にしても、早く来いよあの女ァ)
 決闘を申し込んできた美人を思い浮かべた。本来、仇討ちを馬鹿にしている彼が足を運んだのはひとえに彼女のためである。見事に返り討ちにして後で楽しもうと思っていたので、流石の彼も少々苛立ってきた。
 ザザザザザザザザザッ
 複数の足音がしたと思いきや、六人の男女が姿を現した。助っ人を頼んだのは明白である。彼が真っ先に眼を遣ったのはもちろん、目当ての女である。パチッとした大きな眼、透き通るような白い肌、鼻はさほど高くないが朱をさしたかのように赤いふっくらとした唇。
 十分に水準を上回っている。
(やっぱりいい女だなあ。・・・武士道を力説してた割に情けないやつだが。でもそこがまた可愛いよなあ)
 彼は決闘の事も忘れ、自分の世界へとトリップしかけている。
「おいっ!美濃部、こっちを向け!」
 彼の態度に苛立ちを覚え、男は声を掛けたのだが、彼の方も無理矢理現実に引き戻された為にムッとなった。
「父の敵、取らせてもらうぞ!」
 熱く語る若い男に対して彼・・・狂八は疑問を口にする。
「・・・・・・お前は誰だ?」
 男はズッコけそうになったが、狂八の記憶の中に目の前の男は存在していないのである。
「き、貴様、決闘を受けておきながら私の事を覚えてないというのかっ!?」
「いや、あの女は覚えているぞ」
 と、顔を曇らせている女へ顎をしゃくった。
「い、妹の燕しか覚えていないだと?ふざけるなっ!!」
「・・・わざわざ丁寧な説明どうも。ついでに燕ちゃんはいくつだ?」
「き、貴様あっ!!」
 全身を痙攣させ、今にも飛び掛りそうな男に対して、狂八は至極冷静である。ついでに言えば、かなり馴れ馴れしい。すでに『ちゃん』付けしているのだから・・・
「貴様貴様って他にしゃべれねえのか、き・さ・ま?」
 半分は相手をおちょくっているのだが、半分は地である。
「兄さんっ!」
 女・・・燕は怒りを沸騰させている兄に冷水を浴びせるような声を飛ばした。それを聞いた男はハッと我に返り、咳払いをした。
「す、すまん。で、私の事は思い出せたのか?」
 ・・・結構しつこい男である。
「うん?ああ・・・お前みたいなのもいたな・・・」
 狂八はやっと男の事を思い出した。正確には妹の燕の方しか眼中に無かったのだが、いちおうぼんやりとは、男の顔を見ていたのである。
「で、何処の誰の敵なんだ?悪いがいちいち覚えていないんでな」
「貴様の卑怯な不意討ちに倒れた父・彦井宗右衛門の敵だ、覚悟!」
 そう言って刀に手をかける男を狂八は止めた。
「ちょっと待て。不意討ちって何だ?」
「とぼける気か?父は貴様の卑劣さの前に命を落としたのだぞ」
「いや、オレがやったのは不意討ちじゃねえ。『騙まし討ち』だ!」
「もっと卑怯ではないか!」
 男が怒るのも無理ないが、これが美濃部狂八である。狂八は三度の飯よりも卑怯が好きな、『卑怯大好き人間』であった。
「そんな事を言うお前も決闘に人を連れて来るとは『卑怯』じゃねえのか?」
「うるさいっ!貴様相手にはこんな手がお似合いだ。第一、貴様に言われたくないわっ!」
 至極もっともな事だ。内心、狂八でさえ頷いた程である。
「あ~、もう分かったからさっさと名乗れ。先に進まんだろうが」
「全て貴様の所為だろうがっ!・・・私は彦井秀之進だ」
「彦井宗右衛門に彦井秀之進・・・」
 突如狂八がぶつぶつと言い始める。
「今度は一体何だ?」
「いや、随分と酷いネーミングセンスだと思ってな・・・」
「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!」
 再び秀之進のこめかみがピクピクし始めた。
「貴様っ!真面目にやる気があるのかっ!?それに貴様の名前も十分酷いだろうが!美濃部狂八だと?ふざけるなっ」
「何だと?お前の名前よりマシだろうが!それに名字はともかく、名前は気に入ってんだよ!」
「「「「いい加減にしろおおおおおおぉぉぉぉーーーーーーーーっっっっっっ!!!!!」」」」
 不毛な口論が勃発しそうになった時、絶妙のタイミングで男四人のハモリが河川敷に響いた。遂に彼等もブチ切れたのだろう。全員が顔を紅潮させている。
「まあ冗談はこれくらいにしておくか」
 どこまでも人を食った男だ。秀之進達もつっこむ気力が消えている。やっと、秀之進が抜刀し、他の四人も次々とこれに習う。
「五人がかりか?随分舐められたもんだ」
「何を言う!卑怯しか取り柄がない分際で!死ねっ!」
 五人が同時に突っ込むのと同時に、狂八は思いっ切り地面を蹴った。当然の如く、小石が五人の顔を襲った。
「がっ・・・」
「くっ・・・」
 相手方が苦鳴をあげ、怯んだ隙に一番近くにいた男を斬って捨てた。
「卑怯だぞ貴様っ!」
「オレが卑怯なのは百も承知だろう?」
 当然と言えば当然の抗議を狂八は涼しい顔して受け流す。
「この邪剣士があっ!」
 タイミング良く、四人同時に掛かってきたところを、またしても石を蹴り飛ばす。しかし、今度は予測していたので悉く防いだのが、それをする事によって腹部に隙が出来た。狂八はそこをついてまた一人斬って捨てた。
「お前等は馬鹿か?そんな防ぎ方をしたら、隙が出来るのは当たり前だろうが」
 呆れかえった口調で言われ遂に全員が逆上した。
「おのれぇぇっっ!!」
 あまりにも自然に卑怯な技を繰り出してくるので、全員の眼に怒りと憎悪が宿っている。対して狂八は相手が自分の術中に嵌った上に、好きな方法で二人倒したので単純に喜んでいた。繰り返して言うが、彼は『卑怯大好き人間』である。子供でも思い付くような事、武士どころか『普通の大人』さえしない事をやって喜んでいる、『馬鹿』なのである。
 だが、今度の敵は少し違った。
「落ち着け!奴のペースに飲まれるな」
 という声でも分かるように少しは冷静な奴がいる。そして憤りを努めて抑え、間合いをとろうとしている。だが、それも無駄な事であった・・・
「悪いと少しは思うんだがな、いい加減に嫌になってきてな・・・」
 と、狂八はさっきまでとはうって変わって重々しい、含みのある口調になった。
「さっさと終わらせてもらうぞ」
 そう言い放つと同時に眼を閉じた。
「何の真似だ?」
 当然ながら秀之進達にはさっぱりわからない。狂八はそれに答えず、『命令』した。
《刀を持つ力を抜き、前進せよ》
「な・・・何だ?」
 勝手に右手がだらりと下がり前に進み始めるという、不可思議な現象に全員が戸惑いを隠せない。
「止まれ」
 目を開き、命令した狂八の言葉通り、三人の歩みが止まる。
「何が起こっている・・・?貴様、何をした?」
 かすかな怯えを含んだ詰問を無視し、狂八は次々と斬り捨てた。
「がっ・・・」
「うっ・・・」
「ぐっ・・・」
 ドサドサッと倒れた男達を尻目に、真っ青になっている燕に近寄る。
「あ・・・あなた・・・何をしたの?」
 声を震わせながらも、気丈に振舞おうとする燕の姿を見てニヤリと笑う。
「あいつらの体を『支配』したのさ。オレが『念操力』と呼んでいる能力でな」
「そ、そんな事・・・物語じゃあるまいし・・・で、出来る訳が無いじゃない・・・」
「お前もその目で見たろ?・・・ついて来い」
 橋の下へ向かって歩く狂八の後、驚愕と恐怖を美しい顔に浮かべ、唇を震わせながら燕はついていく。
(う、嘘・・・か、体が・・・勝手に・・・いやっ、行きたくないっ・・・止まって・・・お、お願いだから・・・)
 そんな思いも虚しく、狂八の前で立ち止まる。本来なら、命令を口にする必要性は全く無いのだが、その方が効果的だろうと狂八は考えているのである。
「こ、こんな所で何するのよ・・・」
「何って男と女がする事に決まってるだろ」
 何を当たり前の事を、という口調での返答に燕の顔つきが変わる。
「何ですって!そんなの嫌に決まってるでしょうっ!誰がっ!あなたなんかとっっ!!」
 怒りのあまり、さっきまで感じていた恐怖さえも忘れてしまったらしい。
(ヤレヤレ・・・案外単純なんだな。もっと思慮深いと思ったのに)
 なんて事は思っても、口には出さない。
「お前が嫌がるってコトくらい、分かってんだよ」
「じゃあどうするつもり・・・!!ま・・・まさかっ!?」
 何やら思い当たる節があったらしい。てゆーか、この場合気付かない方がどうかしていると言える。
「・・・て、どうするの?」
 だが、例外いたようだ・・・流石の狂八も、ズッコケてから立ち直るのに数秒の時を必要とした。
(こ、こんな天然ボケ娘だったのか?)
 ・・・かなり失望している狂八。
(な、何か急速にやる気が・・・っていかんいかん、折角此処まできたんだ。後もう一息で、オレの念願が叶うんだ)
 以外と狂八もメゲない、執着心の強い男だった。
「何の為にオレの能力があると思ってるんだ?」
 そう言いつつ、唇をいきなり奪った。
「んん~~~っっっ!!!」
(い、いやあっ・・・)
 どれ程拒絶しようとも、体が全く動かせない。狂八は娘の息を吸い込み、本格的に口腔を犯し始める。ゆっくりと歯の表、歯茎、歯の裏側を舐める。
「ん・・・ん・・・・・・ん・・・」
 諦めずに抵抗しようとしているが、一人の意思は完全に無視されたまま二つの舌は絡み合った。思う存分楽しんだ狂八はやっと離れた。
「ハァ・・・ハァ・・・・・・ハァ・・・・・・」
 肩で息をしながらも、狂八を睨み付ける目は怒りと屈辱で満ちている。そんな事は意に介せず、狂八は次の指示を出す。
「さあ、仰向けになって足を開け」
 唇を噛み締めながらも、燕の体は命令通りになる。
(こんな・・・こんな事を・・・させるられるなんてっ)
 狂八が裾を捲り上げ、白い太腿が露になる。
「ほう、これがお前の聖地か・・・」
 感心したような呟きに燕は自分がどんな格好をしているかに気付いた。
「!!い、いやあああああああああああーーーーーーーーーーっっっっっっっっっっ!!!み、見ないでえええぇぇぇーーーっっっっ!!!!」
 燕の恥じらいも絶叫も虚しい効果しかない。狂八は笑みを浮かべながら秘所を触ると、ピチャッと音がした。
「何だ・・・もう濡れているじゃねえか。ホントは興奮してたんだな」
「ち、違うっ・・・」
 羞恥心が力を奪ったらしく、声も弱々しいものになっている。精一杯の否定するが、狂八はニヤついたまま、唇を秘所に這わせる。
「はああ・・・」
 ピクッと体が震わせ(そこまで封じていない)、僅かだが声をもらした。今度はツッコミを入れず、ピチャピチャと音をさせて舐め始める。
(い、嫌っ・・・父と兄の敵に・・・で、でもこの感覚はな、何なの?)
 頭の中では首を振り、拒絶し続ける燕だが、同時に自分を襲う未知の感覚に戸惑いを覚えていた。彼女は十七になるが、自慰の経験さえなかったのである。そんな彼女の体が敏感に反応するのは、ひとえに狂八の能力に依る。・・・狂八の責める場所は、割れ目からクリトリスへと移っていく。小さな核を舐め、舌で包み、その全てを刺激する。
「あん・・・ああっ・・・んっ・・・はぁ・・・はぁ・・・あぁ・・・んっ」
 その快感に燕はいつしか抵抗を忘れ、身を委ねていた。
「ああぁっ・・・」
 低く小さい叫び声をあげると、全身を痙攣させた。
「達したな・・・」
 そう呟くと、視線を喘いでいる女の方へ遣る。
「敵にイカされた気分はどうだ?」
 燕は喘いだまま、何も答えようとしない。
「もっとして欲しいのか?」
 その言葉にビクッと体を震わせた。
「お、お願い・・・もうやめて」
 目に涙を浮かべ哀願するように言った。
「ヤダね。とにかく、オレを満足させてもらうぜ」
 言い放つと同時に自分の固い棒を取り出した。
「ひ・・・」
 初めて目にするその立派さに燕の表情が強張る。
「心配すんな。痛くはしねえよ」
 燕は今、思考以外は全て狂八の支配下にあるのだ。
(そういう問題じゃないわ・・・)
 燕の心はまだ、ギブアップしていない。こんな状況下なのに、大したモノである。狂八が知っていれば少しは見直しただろう。狂八は膣内の抵抗を一切無視し、一気に貫いた。
「ああっ・・・」
 太くて硬い物で貫かれた女はすすり泣くような声を出した。狂八の支配を受け、痛覚が完全に麻痺していたのが幸いだった。
(嫌・・・こ、こんな・・・所で・・・こんな男に・・・うっ・・あっ・・・あーっ)
 女はかなり諦めが悪かったが、狂八がピストン運動を始めた所為で、全身に快感の電流が駆け巡り、考えるどころでなくなった。全裸に剥かれ、乳房に口を吸い付けられた。
「はあん、あん・・・あん・・・あん・・・」
(ああっ・・・へっ変に・・・変になるぅー)
 胸を弄ばれ、秘所を貫かれ、二箇所同時に与えられる快感は本来よりもさらに増幅されてく。無意識の内に思うのが限界で、あっと言う間に二度目の絶頂を迎えた。
「流石にオレも限界だな・・・」
 そう呟くとともに、棒を引き抜いた。ここまで一度も射精していない狂八も流石に限界であった。
「も、もう・・・いい・・・の?」
 二度達した所為か、頭まで痺れた顔をした燕が気だるそうに尋ねるが、それを無視して抱き起こし、命令した。
「しゃぶれ」
 言うが早く、口の中に棒を押し込んだ。
「うぐぐ・・・」
 彼女が何かを思うよりも早く、口が勝手に動き始める。狂八が支配している為に、初めての筈のフェラも手慣れたものとなっている。
「全部飲めよ」
 そう言った後、低く唸ると、液体を女の口腔へ発射した。ゴク、ゴク、とジュースを飲み干すかの様な音がしなくなったのを確認して抜く。
「四つん這いになれ」
 溢れる愛液で指を濡らしながら命じる。遂に諦めたのか、あっさりと命令通りにした。初めて見た、燕の肛穴に濡らした指を差し込む。
「あっ、そ、そこは駄目!」
 うろたえる女とは対照的に、冷静に指を動かす。
「や、やめて・・・き、汚いから・・・」
 消え入りそうな抗議の声を気にもとめず、指を抜き、棒を差し込んだ。
「ああーーっっ」
 思わず声が出る。狂八のおかげで痛みはないが、それでも違和感を感じてしまう。一方の狂八も、予想以上の締め付けにピンチだった。
(お、思った以上にいい締まりをしてやがる・・・くっ・・・)
「うっ・・・くっ・・・あ・・・はあっ・・・」
(そ、そんなトコを・・・あっ・・・)
 じわじわと女を快感が襲い始める。だが、それ以上に狂八は焦っていた。
(ま、まさかこんなにすごいなんて・・・このままじゃヤバイ・・・)
 女の尻の締め付けでさっき射精したばかりなのに再び限界が近づいてきたのである。立場上、自分が先に達するのはヤバイ。そしてこの事を女に悟られるのも非常にマズイ。
(し、仕方ない・・・)
 非常手段として狂八は、燕に全神経で快感を感じる様に命令した。たちまち、女は本格的に嬌声をあげ始める。
「え?あっ・・・あん・・・ああん・・・あん、あん・・・」
 顔を歪めながらも狂八は責めをゆるめようとはしない。
「あっああーーっっい、いいーーっっ」
「ど、どこがいいんだ?」
 尋ねる方も苦しくなってきている。
「お、お尻っ、お尻がいいのっあっああーーっっい、イクーーー」
「うおぉぉ・・・・・」
 男は二度目、女は三度目の絶頂を同時に迎えた。・・・橋の向こうでは何時の間か、沈もうとしている。そんな事さえ知らない二人の営みは当分続くだろう・・・

< つづく >

 今回の話は「何故時代劇の中に超能力は出てこないのか?」という疑問から生まれました。
 主人公は本来、もっと違ったキャラになる筈だったのですが、いつの間にか上の様になりました。
 よって、彼は別名は『暴走車二号君』です(笑)。今後は出来るだけこんな事がない様に気をつけたいです(本当です)。
 ・・・今回改めて性的描写が下手くそだと思いました(メインになる筈なのに・・・)。
 最後になりましたが、御意見があれば遠慮無くどうぞ。

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