Shadow Twins 第5話 『願望』

第5話『願望』

『あやかし』……それは、太古の昔より存在せし『人ならざるもの』の呼称……人により『妖怪』とも『幽霊』とも、あるいは『悪魔』『鬼』『邪神』などとも呼ばれてきたものたちのこと……

 それは、時として人々の生活に害をなしてきた。普通の人間には決して出来ないさまざまな超常現象を引き起こし、あるいは人の身体を傷つけ、あるいは人の心を惑わせ、人の築き上げたささやかな社会を打ち壊す。
 人は一致団結して対抗するが、それでも人は『あやかし』が持つ圧倒的な力を前に翻弄され続けてきた。

 そんな時、人々の中から『あやかし』に対抗しうる力を持つ人間が現れた。
 人はそれを畏敬の念を持って呼ぶ……人を護りし人、すなわち『護り人』と。
『護り人』は、人々を護るためにその力を持って『あやかし』に立ち向かい、そして打ち払ってきた。『護り人』の活躍により『あやかし』は数を減らし、人は安定を取り戻していった。

 数こそ少なくなった『あやかし』だが、それを補うかのように新たなる『あやかし』もまた生まれ続けた。
 また『あやかし』が減ったといっても、単に弱い『あやかし』が淘汰されただけ、という面もある。より強き『あやかし』は『護り人』たちの隙をうかがい、より大きな害を人々に与えるようになる。
 しかしその一方で、人との共存を望む『あやかし』も少なからずいた。そのものたちは『護り人』に庇護を求め、『護り人』と契りを結ぶことで人の生活に溶け込んでいった。『護り人』もまた、『あやかし』の力を得ることにより、より強き『あやかし』に対抗しうる力を蓄えていった。
『あやかし』と『護り人』の戦い……それは、長き歴史の中でいつ終わるともしれず続いてきた。

 真田の一族……すなわち双子の祖先たちもまた、『護り人』として『あやかし』から人々を護ってきた。それと同時に人との共存を望む『あやかし』を積極的に受け入れ、自らの力として取り込んでいった。
 だが、長き時の中で人は、『護り人』を次第に敬遠……さらには嫌悪し始めた。『あやかし』と同化したことで化け物じみた力を持つようになった『護り人』は、人の目には『あやかし』と同じように映ったのかも知れない。
『護り人』という存在が人間社会に受け入れられなくなったとき、ある者は人としての生活を捨て、陰なる存在として『あやかし』と戦い続ける道を選んだ。またある者は、『護り人』であることを捨て、普通の人間として人間社会に溶け込む道を選んだ。

 真田の一族が選んだのは……人として生活する道だった。
 その理由は定かではない……『あやかし』との戦いに疲れたのか、あるいは『人との共存』を望んだ『あやかし』の遺志が働きかけたのか……いずれにしろ、真田の一族が『護り人』として生きる道を捨てたのは確かなことだ。
 ゆえに、その末裔として生まれた双子は、『護り人』のことも『あやかし』のことも知らずに育ってきた……『あやかし』としての力に目覚め、その事実を曾祖母から教えられるまでは……

「はあ……」

 美影と影美から語られる『あやかし』の真実を、由紀はただ呆然と聞くだけだった。

 影美が帰宅するのを待って、二人は由紀とあゆみに『あやかし』の事を話し始めた。もともと美影も影美もその話をするために二人を呼び寄せたのだから、由紀が『あやかし』について聞いてきたのは願ったりであった。
 ところが、それこそどこかの御伽噺か、でなければアニメやマンガのような突拍子もない話を前に、由紀の思考回路はオーバーヒートを起こしていた。
 結果、話の内容自体は頭の中にきちんと残ってはいるものの、その意味を理解するのに忙殺されて呆然となってしまったのだ。

「まあ、全部理解しろとは言わないよ……あたしらだって全部は理解してないんだから」

 とは影美の言葉。実際、曾祖母から聞かされたこれらの話すべてが真実かどうかは、彼女たち自身にも分からない事なのだ。自分たちの『力』のことや『護り人』のことなど、この話によって初めて説明がつく部分も多いから、信憑性の高い話であることは確かなのだが。

「とにかく……先輩たちが『あやかし』らしい、ということはなんとなく分かりました」

 しばらくしてなんとか整理できたのか、二人の話をそう結論付ける由紀。
 なんとなく分かった頭で感じた疑問を二人にぶつけてみることにした。

「で、それがわたしにどうかかわってくるんでしょうか? わたしが『あやかし』と言われる理由って……」
「それに関しては、『あやかし』が持つ能力を説明しないとね……」

 説明を再開する美影。

「多くの『あやかし』にはある共通した能力があるの。それは精気のやり取りをした人間を、自らの忠実な『しもべ』にしてしまう力……まあ、世に言うところの『ヴァンパイア』とか『サキュバス』のイメージを想像してもらったらよく分かると思うわ」
「えーと、吸血鬼に首筋噛まれて血を吸われたら、顔面蒼白になって吸血鬼の仲間になっちゃうとかって……あれですか?」
「そ、ほとんどイメージはあのままよ。風間さん、初めてこの家に来たとき、影美から何か吸い取られたような気がしなかった?」
「そういえば……」

 視線を天井に向けて、あのときの事を思い返す由紀。ついでに影美とのなれ初めも思い出して思わず顔が赤くなる。

「やだ、美影先輩ったら……」
「それが精気のやり取り。そして影美に精気を吸い取られたことで、風間さんは影美の『しもべ』になってしまったのよ」
「どっかの誰かさんがいらん事をしてくれたおかげでな」
「影美、まだあのときのこと根に持ってるの?」
「今回の事態を招いたのも、そもそもそれが原因だろ!」
「お、お二人とも落ち着いてください」

 いきなり口げんかが始まったもので、あわてて止めに入る由紀。

「あ……ごめんごめん」
「ごめんなさいね……ともかく風間さんが影美の『しもべ』になったのは、疑いようのない事実。そして『しもべ』もまた、『あやかし』の力を持つようになるの」
「じゃあ、昨日あの人がわたしを『あやかし』と言ったのは……」
「そう、あたしと交わったことで由紀ちゃんに備わった『あやかし』の力を感知したからさ。あたしらは『あやかし』の力を隠していたからあいつに気づかれなかったんだけど……」
「風間さんは『力』の隠し方を知らなかったから……向こうの勘がよかったのも確かだけどね」
「そうですか……私が影美先輩の『しもべ』……」

 ゆっくりと、かみ締めるように反芻する由紀。

「ごめんな、由紀ちゃんにそういうことをするつもりはなかったんだけど……」
「そんなことないですよ。むしろ先輩の秘密を知ることができて嬉しいぐらいです」

 そうは言ってもなあ……
 由紀が浮かべる屈託のない笑顔を見ながら、内面複雑な心境の影美。
 この回答は影美にとって予測の範疇である。なぜなら由紀は影美の『しもべ』なのだから。
『しもべ』にとって主である『あやかし』を否定することは、自分自身を否定することに他ならない。
 ゆえに由紀は影美に対して負の感情を抱くことはないし、影美のすべての発言を好意的に解釈してくれる。由紀がこう発言するのもごく自然なことなのだ。
 無論、部活などで少なからず由紀と付き合っていて、彼女の性格や気質はある程度理解しているつもりである。その理解から推測すれば、たとえ『しもべ』でなくても彼女ならこう答えたであろうとは思っている。
 思ってはいても……影美はその言葉を額面どおりには受け取れない。その発言には影美の『しもべ』というフィルターがかかっているのでは、と考えてしまうのである。

「それで……これからどうすればいいのですか?」

 ……どこからともなく聞こえてきた声の主を探して3人は周囲を見渡す。
 見ればあゆみが3人のほうを向いて質問していた。

「あ……」

 由紀はあゆみの存在を失念していた事を知ると同時に、疑問を感じる。
 今までの話を全部聞いていたなら、どうしてそんなに冷静でいられるのだろうか。自分も先輩たちも『人』じゃないって話が飛び交っていたのに……

「工藤さん……今の話、聞いていて驚かなかったの?」
「どうしてですか?」
「いやだって、わたし、化け物なんだよ? 先輩たちもそうなんだよ? そんな話聞いていてなんとも思わないの?」
「思いませんよ。会長たちが『あやかし』なのは知ってましたし、風間さんが『しもべ』なのも大体分かってましたから」
「へ?」
「だって私も、風間さんと同じですから……」

 その言葉を聞いて、由紀ははたと気づいた。
 美影は『あやかしについて説明するために呼んだ』と言った。
 あゆみは『美影先輩に呼ばれて』ここに来たと言った。
 そのあゆみが、由紀を見て『自分と同じだ』と言った。それはすなわち……

「もしかして、工藤さんも……」
「はい、私は美影お姉さまの『しもべ』です」

 ……その告白は、あるいは先ほどの『あやかし』の話よりも衝撃としては大きかったかもしれない。
 はっきり言って、影美や美影が人外の存在だと言われてもそう驚きはしなかった。むしろ、普通の人だと言われるほうが納得がいかないぐらいに人並みはずれた人たちだから。
 しかし、あゆみが美影の『しもべ』だと言うのは正直意外という感が先に立つ。傍目で見て、両者はあくまで学園執行部の会長と書記であり、それ以上深い関係にあるとは想像だにしていなかったのだ。

「私は以前、川に身投げしたことがありました。そのとき美影お姉さまは、身を挺して私を救ってくださったばかりか、私に精気を与えて『しもべ』にまでしてくださったのです。お姉さまたちの秘密もそのときに教えていただきました」

 その話をするあゆみの表情は、心なしか嬉しそう……というよりもうっとりしているように見える。
 工藤さんって、こんな表情もするんだ……それが由紀の正直な感想だった。
 その顔と、陶酔したように『美影お姉さま』と呼ぶその口調と声色……由紀はそこにあゆみの美影に対する信頼、さらに言えば両者の間にある絆の強さを感じるのだった。
 自分もいつか、影美先輩とそんな関係になれるのかな……由紀はあゆみと美影の関係に憧れにも似た気持ちを抱く。

「だから、今日あなたに出逢えて、私……嬉しく思いました」
「えっ?」
「だって、あなたは私にとって大切なお友達。お姉さまたちの『しもべ』として、すべての秘密を共有できるかけがえのない仲間なんです。これほど嬉しいことはありません」

 確かにそうかもしれない……秘密を共有し合い、喜びも悲しみも分かち合える人間が目の前にいることが、どれだけ幸せなことか……それは今の由紀自身が強く感じていることでもある。

「工藤さん……」
「名前で呼んでいいですよ、『あゆみ』で……お友達同士で苗字で呼び合うのはよそよそしいじゃないですか」
「あゆみ……ちゃん?」

 照れくさそうに名前で呼ぶ由紀。

「はい、風間さん」
「自分だけ苗字はずるいですよ、私も『由紀』って呼んでください」
「由紀ちゃん?」
「はい!」

 そう言ってお互いに微笑みあう。

「それはさておき、これからのことですね……」

 美影が話を戻す。

「二人には『力』のコントロールを学んでいただこうと思います。私たちと違って『力』は小さいですから、慣れればすぐにコントロールできるようになりますよ。『力』を効果的に使えるようになれば、万一のときの護身にも役に立ちますしね」
「そだね。じゃあ……あたしが由紀ちゃんを、美影があゆみちゃんをマンツーマンで教えるってことにしようか。二人ともそれでいいね?」
「はい、よろしくお願いします!」
「……お願いします……」

 こうして、由紀とあゆみの特訓は始まった……と言っても、別に滝に打たれたり断食をしたりするわけではない。
 要は自分が持っている『力』の特性を認識し、その加減の仕方を身体に覚えこませるのだ。そういう意味ではスポーツの練習なんかと本質は変わらない。違いは、その『力』が由紀やあゆみにとって未知なるものだ、ということ。
 最初は二人ともどうすればいいのかと戸惑うばかりであった。それでも手探り状態ながら、美影と影美の助力を得て少しずつ、着実に『力』のコントロールをマスターしていく二人。

 そして夜もだいぶ更けた頃……二人の『力』のコントロールはかなり上達していた。これならばそうそう『護り人』たちに感づかれたりすることもあるまい。
 実は、本来であれば日が暮れる前に二人を帰すつもりだった。ところが今日は帰らない、泊まって行きたいと由紀が嘆願してきたのだ。用意周到にも泊まるための着替えまで持ってきているという。
 これに反応したのはあゆみ。由紀が泊まるなら自分も泊まりたいと言い出してきた。
 そんな二人の熱意に押される形で、結局『試験勉強をする』という建前のもと、二人を泊めることにしたのだ。

「じゃあ、今日のところはここまでだな……二人ともお疲れさん」
「ふうぅぅぅ……」
「はあぁぁぁ……」

 影美の打ち切り宣言と共に二人は深い息をつく。それだけで内容の濃さをうかがい知ることができる。

「二人ともよくがんばったわ……たいしたものよ、ここまでできるなんて」

 美影が二人の労をねぎらう。その言葉に二人は満足げな微笑を浮かべる。

「ここまでがんばったのだから、なにかご褒美を二人にあげたいところですが……」
「ご、ご褒美ですか……えーと……」
「でしたら……また遊んでください、美影お姉さま……」

 悩んでいる由紀を横目に、あっさりとご褒美を決めるあゆみ。
 由紀はちょっと驚いた。あゆみがここまではっきりとものを言うタイプだとは思わなかったのだ。

「由紀ちゃんもそれでいい?」
「は、はい! 由紀も影美先輩と遊びたいです!」

 影美に聞かれてあわてて答える由紀。

「じゃあ、遊んじゃいましょう……でも、どうせ遊ぶなら今日はちょっと趣向を変えてみましょうか」

 そう言って目配せをする美影。影美はその意味を悟りあゆみの前に立つ。
 もっとも、以心伝心の二人にとっては意思を伝えるのに目配せの必要さえもない。それをあえてしたのは、由紀とあゆみに『何かあるぞ』と匂わすためである。
 実際、由紀もあゆみも、その思わせぶりな態度を見て胸が高鳴っていた。
 影美と入れ替わるようにして美影が由紀の前に立つ。

「今日は私が由紀ちゃんを……」

 美影の右手が眼鏡にかかる。

「そして、あたしがあゆみちゃんを……」

 影美の左手がカチューシャにかかる。

『心ゆくまで楽しませてあげる』

 そして美影と影美の声が重なり合い、眼鏡とカチューシャが外される。
 どちらかがタイミングを合わせたわけでもないのに、見事なまでに重なり合ったその声は、美しいハーモニーとなって由紀とあゆみの心に届く。
 その共鳴は、由紀とあゆみをこれまで味わったことのない境地へと導く。

『はあああああぁぁぁぁぁ……』

 由紀とあゆみが発するため息もまた、美しいハーモニーを奏でる。

「どう、気分のほどは?」
「最高です……」
「こんなの、初めて……」
「嬉しいわ、二人とも喜んでくれて……じゃあ、始めましょう」

 その声と共に服を脱ぎ出す由紀とあゆみ。別に脱げと言われたわけではない。しかし、二人にとってはそうすることが当たり前。なぜなら、心に伝わる声がそれを望んでいると教えてくれたから。
 まもなく一糸まとわぬ姿となる由紀とあゆみ。その表情はまさにこれからの行為に対する期待感に満ちあふれていた。
 そして美影も影美もまたその場に服を脱ぎ捨てた。4人の裸体が部屋に微妙な暖気を与える。

「由紀ちゃん、私のここ、舐めてみる?」
「はい、美影先輩……」

 美影に促され、跪いて股間に顔を近づける由紀。
 その一方で影美はあゆみの後ろに回りその胸を揉みしだく。

「あ……影美お姉さま……」
「あら、反応鈍いわね……やっぱり美影の方がいいのかしら?」
「いえ、そんなことは……」

 ふくらみの小さな胸をゆっくり揉みつつ、影美は指先で小さな突起をくりっと弄る。

「あん!」
「おっ、雰囲気出てきたねえ……」

 その反応に気をよくしたのか、胸を揉むスピードを次第に速くする影美。

 一心不乱に美影の股間を舐め続ける由紀。
 その舌は最初は秘部の周囲を……次第に中心を舐めていく。そのうち美影の秘部がほんのりと湿りを帯び始める。それと共にぴちゃぴちゃという濡れた音が聞こえはじめる。

「んん……いいわ由紀ちゃん……あ、もっとそのあたりを念入りに……」
「……こうですか、美影先輩?」

 一度口を離して聞いたあと、舌先を秘部の割れ目につっこみ、くすぐるように舌を動かしていく。

「あん! そう、なかなか上手じゃない……」

 美影にそう褒められたのが嬉しいのか、無言のままさらに積極的に舌を動かしていく由紀。

 影美は手を胸から離すと、あゆみの左胸にしゃぶりついた。そして弄ったことで立ってきた乳首を舌でこね回しはじめる。

「あっ、影美お姉さま……」

 そんな声を気にすることなく、影美はなお舌であゆみの胸を弄ぶ。強く胸を吸い出して刺激を与え、乳首を前歯で軽く噛んでみる。

「きゃん!」

 その刺激の強さに驚きの声を上げてしまうあゆみ。

「こら影美、あんまりあゆみをいぢめちゃだめよ」
「そう言う美影だって、由紀ちゃんと結構楽しんでるじゃないか」

 美影の戒めに対し、由紀とのお楽しみを茶化す影美。
 そう言ってお互いに笑い合ったあと、また行為に没頭する二人。

 そんな会話のさなかもずっと秘部を舐め続けてきた由紀。
 その由紀の舌が、美影のクリトリスにかかる。

「ひゃん!」

 驚きの声を上げる美影。そこが敏感な部分と見て取ったのか、積極的にクリトリスを弄りはじめる由紀。

「ああ、由紀ちゃん、あんまりつよ……くぁん!」

 由紀を止めようと声を上げようとした美影だったが、激しくなる由紀の舌使いに思わず甘い声を上げてしまう。

 一方で影美はあゆみの胸に吸い付きながら、左手をあゆみの秘部に這わせる。

「え、影美お姉さま、そこは……」

 そんな声に答えることなく指を動かしはじめる影美。積極的な胸への刺激が効いたのか、あゆみの秘部はすでに音が鳴るぐらい濡れていた。

「ふふっ、結構濡れているじゃない……誰のことを考えて濡らしたのかなあ?」
「あん、そんないぢわるなこといわないでく……むっ!」

 なお言葉を紡ごうとしたあゆみの口を影美の口がふさぐ。そして口の中を舌で蹂躙しながら、左手は休まず秘部を弄り、右手は背中からあゆみのお尻へ伸びていく。
 ゆっくりと、くすぐるようにお尻を撫でていく。

「むむむむむ!!」

 今までの行為で全身の感覚神経が鋭敏になっているせいか、お尻を撫でられただけでも過敏に反応してしまうあゆみ。驚きの声を上げようとするが、影美の口に塞がれ、くぐもった声しか出せない。
 その右手の動きがだんだんと早くなり、一カ所を集中的に撫でていくようになる……それは、あゆみのお尻の穴。

「んむむむむむ!!!」

 何をしようとしているのかを直感的に悟ったあゆみだったが、影美の積極的な愛撫を前になすすべ無く身を任せていた。
 そして影美は中指をあゆみのお尻の穴に埋め込んでいく。

「!!!!!」

 ほぼ同じ頃、由紀にクリトリスを弄られ、昂ぶってきた美影。

「ゆ、由紀ちゃん……もうそろそろイきそう……」

 その言葉を聞いた由紀はラストスパートにはいる。舌の動きをさらに激しくし、クリトリスに間断なく刺激を与えていく。さすがの美影もこれには耐えきれず、身体が痙攣を起こしはじめる。
 そして、由紀がクリトリスを軽く噛んだ瞬間、美影の昂ぶりは頂点に達する。

『あああああぁぁぁぁぁっ!!』

 その声は、美影とあゆみから同時に上げられた。

 しばらく休んだ後、美影と影美は、それぞれあゆみと由紀に命令を下した。

「さあ、由紀ちゃんと遊んでらっしゃい……」
「あゆみちゃんとたっぷりと遊んできな……」

 のっそりと身体を起こした二人は、どちらからともなく近づいて手を背中に回し、そして口づけをする。
 それからしばらく、二人の様子を観察する美影と影美。

「由紀ちゃん……ほら、アソコがこんなに濡れてますよ……舐めてみます?」
「やん、あゆみちゃん恥ずかしいよ……」

 面白いのは、この行為の中で積極的にリードしているのがあゆみだということ。『しもべ』の先輩としての貫禄か、はたまた実はあゆみのほうが、性的な場面において積極的な性格をしているのか……そのあたりは定かではないが、積極的に絡んでくるあゆみに由紀はちょっととまどっているようだ。

 見ているうちに二人の体勢はあゆみを上にしたシックスナインへと移っていく。
 ぴちゃ……ぺちゃ……
 卑猥な音があたりに響き渡る。あゆみはもちろん、由紀もその音を気にすることなく行為に没頭する。
 その音は次第に大きくなり、そして……

『あああああぁぁぁぁぁっ!!』

 二人同時に大きな声を上げ、折り重なるようにして倒れ込む。

 こうして、4人揃っての初めての夜は過ぎていった……

 仕事を終え、マンションに帰宅する立花七海。
 帰宅したあと、何も言わずにすべての服を脱ぎ捨て、裸のままで部屋を出る。そして階段を上がって最上階にあるマンションオーナー・白河未沙希の自室へと向かう。
 ドアを開ける。鍵はかかっていない。無言のまま部屋に入り、リビングへと向かう。

 そこには男がいた。そして多数の女が裸で絡み合っていた。
 ある者は深い口付けをしあい、ある者はシックスナインの体勢で互いの秘所を舐めあい、ある者はイミテーションの男根を腰に付けて別の女の尻を犯す……そこには考えられる限りのあらゆる淫靡な光景が広がっていた。

 マンションのオートロックを男が把握したことにより、外部からの侵入を防ぐはずのシステムは、マンションに入った女を逃さぬための檻と化した。
 その中で女が一人、また一人と男に捕らえられ、奴隷となっていく。ある程度増えると今度は奴隷となった女が集団となって別の女を捕まえ、男に差し出すようになる。七海が帰宅する頃には、マンション住人のほぼすべてが男の奴隷となった。
 男が最初に住人に命じたこと……それは『マンションの中では裸でいること』だった。ゆえに七海もその命令に従い、帰宅すると同時に服を脱いだのだ。

 男のそばに寄り、手短に報告する七海。

「何人かの学園生に目を付けて、私のコントロール下に置きました。呼び出しはいつでも可能です。ただ……現状における世間の目を考慮すると、差し出せるのは週末に限られると思われます」
「分かった……それに関してはお前に任せよう」
「はい」
「俺の意図をくんでここまで気を回すとはな……お前は聡い奴だ」
「その言葉、恐悦至極に存じます」
「本来なら獲物を連れてくるまでは、と思っていたが……今日は特別にお前の労をねぎらって褒美をやることにしよう」
「あ、ありがとうございます!」

 その言葉に瞳を輝かせる七海。
 男は七海の前に手のひらを差し出す。それをじっと見つめるうち、輝いていた七海の目が虚ろになっていく。
 手のひらを閉じ、そのまま下を指差す。

「たっぷりと舐めるがいい」
「アリガトウゴザイマス……」

 そう言うと七海は男の前に跪き、男のズボンのファスナーを下ろして、その中から肉棒を取り出す。
 そして唾液をたっぷりとまぶして肉棒をおいしそうに頬張る。
 頭を大きく上下に動かし、舌を積極的に絡ませ、男の肉棒を余すところなく舐め尽くす。
 不意に男の肉棒から精液が飛び出す。七海は恍惚とした表情でそれを飲み下す。

 この部屋から湧き上がる精気を余す所なく吸収する男。力が全身に行き渡り、みなぎっていくのが分かる。
 男は力を欲していた。自らの野望……すべての存在を完全支配するために必要なだけの力を。
 まずはこの街を支配下に置き自らの力とする。次は日本、そして世界……男の野望は果てなく続く。
 その前にまずはこの淫靡な世界にひと時浸るとするか……男は目の前に広がる光景を見ながらほくそえんでいた。

「くそっ!」

 とある古びたアパートの一室……そこに右の拳を畳に叩きつけながら悔しがる真澄の姿があった。

 ……まるで全てを見透かされたかのようだった……自分たちの正体も、自身の経験のなさも……

 永瀬真澄は『守護者協会』の英才教育によって鍛え上げられた、言うならば『護り人』のエリート的存在。だが、一人で『あやかし』と戦うのは、実は今回が初めてだった。その緒戦でいいように翻弄されたあげくに自分の得物である竹刀を叩き折られた……彼女の心中は穏やかではなかった。
 しかし、彼女の冷静な部分は、己の経験不足と相手の狡猾さを素直に認めていた。それこそが実戦、言い訳など通用しない世界なのだ、と痛感する。

 そして、その冷静な部分が影美の言葉をじっくりと反芻する……
 自分たちの態度を『杓子定規の対応』と言ったこと、あくまでも交戦を拒もうとする態度……
 自分たちが譲歩すれば、彼女たちと戦う必要はないのでないか……

 いや、それを判断するのは自分ではない。
 奴らは『あやかし』だ。それこそが甘言なのかもしれないのだ。騙されてはいけない。
 彼女自身、『あやかし』のせいで不幸になった人間の存在を知っている。そして、『あやかし』に騙され、その身を滅ぼした人間の話も先輩から聞かされている。
 だからこそ、自分の独断で動くわけにはいかない。情に流されることなく、『あやかし』を倒し、人を『あやかし』から護ること……それが彼女の存在理由であり、そして彼女自身の望みなのだから。

「真田影美……次こそは必ず……」

< 続く >

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