Ring of Marionette 第三話

「なんだい、今度の依頼は女子供のお守り付きか?」

 開口一番、そんな愚痴ともとれる感想を述べてくれたのは、今回の仕事をあたしとともに引き受けた男……名前は確かロバートとか言ったか。

 あたしだって、こんな仕事は引き受けたくはない。お宝探しが生業のあたしにとって、時間や行動を極端に縛られるうえに、腕っ節の強さが優先される護衛・傭兵の類は、どうにも勝手が違ってやりにくいからだ。

 だが、今回ばかりはそうも言っていられなかった……

第三話 『誘惑は宿の中で』

 ことの発端は冒険者登録証の再発行手続きに行ったときのことだった。

 この国……ディアナ王国で冒険者を志すものは、王室直属の『冒険者管理局』に行き、『冒険者登録証』を発行してもらう必要がある。

 そしてこの登録証を持つことによってはじめて、王室公認の『冒険者』として活動できるのだ。

 無論、登録した人間は管理局によってある程度の管理を受け、様々な義務・制約を課せられる。

 しかし、冒険者としての身分を保証し、証明する唯一の手段である登録証を持っていないと、町を自由に出入りすることもできないし、冒険者にあてがわれる仕事の斡旋一つすら受けられず……要するにまともに生活することさえままならない。

 つまり、登録証はこの国で冒険者として生きていくための必需品なのだ。

 ところが今のあたしはその登録証を持っていない。あの遺跡で遭難した際に落としたのだ。このままでは町を出ていけないので、この町の管理局で登録証の再発行をしてもらうことにした。

 手続き自体は結構煩わしかったが、顔と名前が割とよく知られていることもあって、あたしの身元確認作業はあっけなく終わり、紛失届も登録証の再発行申請も簡単に受理してくれた。もっとも、正式な再発行はあたしの本拠地であるディアナシティに戻ってしなければならないのだが。

 再発行までの期間だけ使える仮の登録証を受け取り、管理局を出ていこうとしたとき……

「……ところでシーナさん、今年の更新手続きはどうされましたか?」

「えっ? あ……」

 言われてそのことを思いだしたあたし。登録証は一度もらえば永久に使える、というものではなく、毎年必ず更新手続きをしなければならない。そしてあたしは今、ちょうどその更新時期にあたっていたのだ。

 あたしは頭を抱えた。更新自体は別に大したことじゃないのだが……お金がかかるのだ。

 手持ちのお金はマリアと一緒にディアナシティに帰るために必要だし、かといってディアナシティに帰ってお金を稼いでからでは、更新に間に合わず取り消しになる可能性がある。となると……

「ねえ、なんかいい仕事ない?」

 というわけであてがわれたのがこの仕事。ディアナシティまで行く商隊の護衛、というやつである。

 ここからディアナシティまでは割と大きな街道が通っており、本来なら護衛など必要としないほど安全な道である。

 だが、この商隊は途中で小さな村をいくつか回って荷を降ろすついでに行商をするらしく、その間に通る森などで護衛をしてほしい、とのことだった。

 確かに手軽にお金を稼げるし、商隊の必要経費でディアナシティまで帰ることが出来るのだから、一石二鳥と言える。護衛というのがちょっと気にくわないが、背に腹は代えられない。

 仕方なしにと引き受けて、マリアを連れてその商隊が泊まっている宿で依頼を受けると告げたとき、最初にかかった声がそれだった。

 いかにも傭兵してます、という出で立ち……動き重視の軽鎧に長袖、足もしっかりと服で被い、靴も飾り気のない実用重視のものを使用、得物は左腰に付けた長剣といったところか……実力の程はさておき、基本はきちんと押さえているようだ。

 あたしより頭二つ分は確実に高い長身に金髪を長くのばし、顔は……世間一般の基準に当てはめれば『美形』と言って差し支えはない。ただ、どことなく軽薄そうな雰囲気は第一声での偏見か。

 女子供とはあたしとマリアのことを指しているのだろうが……『子供』扱いしてくれるのは気にくわない。

 確かにあたしは標準的な女性よりは小柄だ。頭一つ以上高いマリアと比べればその小ささはなおさら際だってしまう。だが、見た目だけで子供扱いとはどういう了見か。

 こういう奴をそのままで済ますほどあたしはおとなしくない。

「へえ……じゃあ助平なおじさん傭兵なら仕事が勤まる、と?」

 ことさらに『助平』と『おじさん』を強調して問い返してやる。

 あからさまに顔が引きつっているのが見て取れる。それでもその表情を無理矢理笑顔に戻して、

「こんな好青年を捕まえて『おじさん』呼ばわりはひどいなあ、お嬢ちゃん」

「おじさん呼ばわりをやめてほしけりゃ、まず人を子供扱いするのをやめておくことね」

「まあまあ、お二人とも落ち着いてください」

 割って入ったのはいかにも商人という顔をした中肉中背の男。

「本日は私たちの依頼を受けて頂きありがとうございます……ロバート=ジェニングスさんにシーナ=アースティアさん、それからマリア=ミスティーナさんですね」

 どうやらこの男が今回の依頼主ということらしい。

「もう少しすれば出発の準備が整います。それまでこちらでおくつろぎください……飲み物ぐらいなら私たちの方でお支払いしますので」

 と言われて、あたしたちは宿の食堂に通される……むげに断るわけにもいかず、促されるままに椅子に座る。適当に飲み物を注文したあと、依頼主は準備のために戻っていってしまった。

「ところで……」

 しばらく無言で過ごしたあと、最初に口を開いたのはロバートだった。おもむろにマリアの方を向き、その手を握る。

「あなたが『ディアナの蒼猫』、シーナ=アースティアさんですね?」

 ……はい?

 いきなり飛び出したその言葉に呆然とするあたしとマリア。

「いやあ、噂に違わぬ凛々しいお姿だ。あなたと共に仕事できることを光栄に思いますよ」

「あの……シーナさんはあちらの方で……」

 困った表情を浮かべつつあたしの方を見るマリア。

「この餓鬼が? 嘘だろ?」

 あからさまに軽蔑のまなざしを向けるロバート。

「人を餓鬼扱いするようじゃ、あんたの実力なんてたかが知れているわね」

「そう言うおまえの実力も、たいしたことないんじゃないのか?」

「見かけだけかっこつけちゃって、中身が伴ってなきゃ間抜けなだけよ」

「おまえの名声なんか、どうせ他人の上前はねてるだけだろ?」

 この不毛な口げんかは、出発するまで続くことになる。

 旅はきわめて順調に進んでいた……まあ、順調ならそれに越したことはない。退屈ではあるが、危険の連続で心身共に参ってしまうよりはましだ。

 もっとも、こんなところで出てくるのは盗賊気取りのごろつき風情か、でなければさほどに強くない魔物程度だろう。用心に越したことはないが、気張る必要もない。

 たまにはこういうのんびりした旅もいいかな……と思いながら歩いていると、ふと何かの気配を感じる。どうも、そうそうのんびりだけは味合わせてもらえないらしい。

「さあて、怪我したくなければ、金目のものをよこすんだな」

 そんな月並みな台詞を吐いたのは、曲刀を構えたひげ面のおやじ。他もひげ面はげ面十数人……きょうびこんなお約束な盗賊などいやしないぞ。

「断る……といったらどうするかな?」

 挑発的な態度をとって相手を威嚇するのはロバート。その右手はすでに長剣の柄にかけられている。お手並み拝見、といきますか。

 そう言えば、マリアが戦うところを見るのも初めてよね……その実力、気になるところである。

「もちろん……痛い目に遭わせて奪うまでさ!」

 頭らしきひげ面男の一声で一斉に飛びかかる盗賊連中。ま、適当にあしらって終わりにしますか。

「ふっ……無駄なことを!」

 そう言ってロバートは右手を一閃させる。次の瞬間……どう、という音を立ててくずおれたのは頭らしきひげ面。抜刀の瞬間を見せないとは、少なくとも見かけ倒しではなさそうである。

 頭が倒れたことで動揺したか、他の連中の動きが一瞬止まる……それを見逃すほどあたしたちは甘くない。

 目の前にいるはげ面の懐に飛び込むと、短剣の腹で右手首を打ち据えて曲刀を落とさせる。痛がっている間に後ろに回り込んで膝を素早く払い、倒れてきたところへ眉間に肘を入れてそのまま昏倒させる。

 ふと横目でロバートとマリアの様子を確認する。ロバートは抜いた長剣を振るい、二人目を袈裟懸けに斬って捨てたあと、三人目を横薙ぎで倒す。その流れるような動きは、手慣れた作業という感じを与える。

 そしてマリアは……速い!

 目にもとまらぬ速さで敵の懐に飛び込んでは、的確な動きでみぞおちに拳を当てていく。マリアが拳を振るうたび、男が一人、確実に倒れる。そのなめらかで正確な攻撃は、先ほど見たロバートの動きさえぎこちないものに感じさせるほどである。

 見る間にその数を減じていく盗賊連中。あっさりと半分を切ったところで残りはちりぢりになって逃げ出す。深追いは必要ないだろう。

「ふっ……歯応えのない奴らだな」

 言って鞘に剣を収めるロバート。

 結局あたしが一人倒す間にロバートは三人、マリアは五人を打ち倒していた。

「しかし……」

 おもむろにマリアの方を向くロバート。

「マリアさん、だったか……さすがに強いね君は。君にこそ『ディアナの蒼猫』の名がふさわしい」

「は……はあ……」

「それに引き替え、そっちの実力はたいしたことなさそうだ。どうせ噂が流れる段階で名前を取り違えたんだろうな」

 鼻で笑うロバート。なんとでも言うがいい。あたしの本職はあくまで遺跡探索、こういう荒事に向いていないだけだ。あんたのような腕力馬鹿と一緒にしないでほしい。

 ……と、心の中では思っていても、口には出さない。どうせ今言い出したところで、言い訳と切り返されるのは目に見えている。

 再びマリアの方を見るロバート。またもやその手を両手で握ると、

「ところでどうですマリアさん、今日は僕の部屋ですばらしい夜を過ごしませんか?」

 思いっきり歯の浮くような台詞を投げかけるロバート。しかも今度はお誘いの言葉だ。

 ははぁ……さてはこいつ、マリアに惚れたか?

「あ、あの……私は……」

「おおそうか、僕としたことが突然夜の営みに誘うとは失礼なことを……今夜は二人だけどこかへ行ってお食事を……」

「ええと……」

 視線だけを動かしてあたしを見遣るマリア。どうやらあたしの助け船を待っているようだ。本来ならこんな馬鹿の相手などしたくもないが、このまま一人の世界へ暴走して行ってもらってはこっちの仕事が進まない。

「あのねえ、お仕事の途中で抜け出して食事はまずいでしょうが」

「静かにしていたまえ、おちびちゃん。今とっても大事なところなんだから」

 今度はおちび扱いか……いい加減にしろ、この男。

「この程度で照れるとは、君はなんと奥ゆかしい人なんだ……分かった、とりあえずこのまま手を握り続けるだけでも……」

 ごす。

 その辺で拾って投げた石は、鈍い音を立ててロバートのこめかみを直撃した。

 その後も護衛の旅はおおむね順調に進んでいった……毎日のようにロバートがマリアを誘い、そのたびマリアが困惑してあたしがロバートをこづき倒す。出発の頃と違うのはそれぐらいなものである。

 そして、旅も終わりに近づいたある夜のこと。いつものように立ち寄った村の宿で……

「マリアさん、今夜僕の部屋に来てくれるかい? 旅もそろそろ終わりに近づいてきたことだし、君との間に大切な思い出を作りたいんだ」

「あの、私は……」

「いや、答えは態度だけでいいんだ。もし君が僕のことを受け入れてくれるなら、僕の部屋に来る。ただそれだけで……じゃあ」

 いつものように勝手に話を進めては一人得心するロバート。

 その様子を呆然と見送るあたしとマリア、という光景も半ば日常化していた。

「まったく、懲りないわねえ、あの男も……」

「どうしたらいいでしょうか、シーナさん?」

「どうしたら、と言われてもねえ……」

 しばし考え込むあたし。左手をあごに当てたとき、何か堅いものに触れた。その手に輝く指輪……リング・オブ・マリオネット。

「そう言えばさマリア、この指輪って男にも使えるの?」

「対象が人間並みの知能を持っているなら人間でなくても使えますし、男女の別は関係ないかと」

「ふうん、なるほどねえ……」

 指輪を眺めながら、あたしはちょっとしたいたずらを思いついた。

 その夜、ロバートの部屋の扉が静かに開く……

「マリアさん……」

「失礼いたします……」

 そのまま静かにロバートのそばへと近づくマリア。

「僕を受け入れてくれるんだね、マリアさん」

「はい……」

 マリアはそばに寄り添うと、その場にしゃがみ込み、ロバートの服を脱がしはじめる。

「えっ、マリアさん……?」

「期待……しているんでしょ?」

 妖艶に微笑むマリア。その間も手は休めない。

「期待って……」

「とぼけちゃって……男と女が夜の閨ですることと言えば決まっているのに……」

 ロバートの服を脱がせ終わると、今度は自らの服を脱ぎ捨てていく。

 ロバートの喉がつばを飲み込んで鳴っているのが分かる。

「本当に、いいのか……?」

「まあ、そう焦らない……今夜はまだ長いのだから、ね?」

 最後の一枚が落ち、一糸まとわぬ姿となるマリア。

 再びロバートの前に跪くと、そこにある肉棒を愛おしげに触る。

「ふふ……立派なものね……あなたのここ……」

 ゆっくりと、丹念に指を這わせる。少しずつ大きくなる肉棒。その先端をほんのちょっとだけなめる。

「うっ!」

「あら、敏感ねえ……じゃあまずは胸で気持ちよくしてあげるから……」

 言うと、肉棒を胸の谷間へと導く。両手で乳房を肉棒へと寄せ、そのまま挟み込む。

「どう、女の人の胸は……柔らかいでしょ?」

「うう……柔らかい……気持ちいい……」

 ゆっくりと乳房を回すように揉みしだく。それにつられて胸の中で踊る肉棒。再び先を舐めあげる。

「うおっ!?」

「あら、もう我慢できなくなったのかしら……駄目よ、こんなに早く出しちゃ。これからが本番なんだから」

 胸から肉棒を解放するマリア。すぐに立ち上がってロバートの両肩をつかみ、そのまますっと押し倒す。絶妙な愛撫を受け、すっかり力を抜いてしまっていたロバートは、なすすべ無く寝床へと倒れ込む。

「なっ……!?」

「じゃあ、はじめますか」

 押し倒した体勢のまま体重をかけていく。

 続いて秘部に肉棒をあてがい、ゆっくりと腰を上下に動かす。しかし決して膣の中には入れない。

「あう、あう……」

「あらら、情けない声を上げるのね……」

 さて、そろそろいいかしら……

 あたしは音を立てないように扉を開けて中に入ると、できる限りマリアの影になるようにしてロバートに近づく。

「! おまえは!?」

 あたしの姿に気付き、体を起こそうとするロバート。だが、マリアとの行為で力が抜けてしまった上で押さえつけられては、どうすることもできまい。

 よけいなことを言われる前にロバートの眉間に指輪を押しつける!

「あんたはもう動けない! 声も出せない!」

 瞳はうつろになり、動きも止まる。何かを言おうとした口もぱくぱくと動くだけ。

 ふっふっふ……これでよし。今までさんざあたしを虚仮にした報い、たっぷりと受けることね。

 もうおわかりだろう。あたしがマリアに与えた命令……それは『ロバートに色仕掛けで迫り、骨抜きにした上で押さえ込め』というもの。

 いくらリング・オブ・マリオネットが、眉間に指輪を当てただけで効力を発揮できるとはいえ、相手はそれなりの戦闘能力を持った人間である。ましてやあたしをあれだけ嫌っているのだ。あたし相手にそうそう隙を見せるとも思えない。

 そこでロバートがマリアを部屋に誘う、という状況を利用したのだ。ロバートほどの男でも、脱力しきった状態で上から押さえ込んでしまえば、眉間に指輪を当てることなど造作もないことだ。

 とはいえ、ここまでうまくいくとは思わなかった……内心ほくそ笑みながら、人形になったロバートとマリアに指示を与えていく。

「う……んん……」

 やっとお目覚めのようである。

「ふふっ……おはよう、ロバートおぢさん」

「ん……んな、なんだ……!?」

 驚いた表情を浮かべしばし硬直するロバート。無理もない、目の前に女の裸が二つ、それも互いに相手の秘部を舐め合っているのだから。

「お、おまえ……いったいマリアさんに何をした!?」

「何をしたといってもねえ、マリア……」

「はい……ぺちょ……私は……ぴちょ……ご主人様の命令に従い……くちゅ……ご主人様の大切なところを……ぺちゅ……舐めているだけです……ぴちゅ……」

 答えながらもあたしの秘部を下からゆっくりと舐め続けるマリア。

「ご……ご主人様!? 何を言っているんだい、マリアさん!」

「聞いての通りよ、この子……マリアはね、あたしのお人形さんなの。あたしの言うことなら何でも聞いてくれる……ね」

「貴様が何かしたのか!」

「何もしていないわよ、この子が勝手にあたしを『ご主人様』って呼んで慕っているだけだもの」

 ……ほぼ間違いはないはずだ、うん。

「この……マリアさんから離れ……うっ!?」

「残念ね。首から上と肘から先しか動かないようにしているから、もがいても無駄よ。ちなみに叫び声も駄目だからね」

 その間も休むことなくあたしの秘部を舐め続けるマリア。

「あん……もう、そんなにあたしのここがいいのかしら、マリア?」

「はい……とっても美味しいです、ご主人様……」

「マリアさん……」

「そんな情けない声出しちゃって……あんたもマリアとしたいくせして」

「な……ぐっ!?」

「証拠にほら、あなたの息子はしっかりと大きくなっているじゃない」

 天に向かって大きくそそり立つロバートの肉棒。もう今すぐにでも出てしまいそうなぐらいふくらんでいる。

「ぐあっ!! ……ぐうぅ……ぬあっ!?」

「ふふっ、我慢は毒よ。あたしたちの姿をおかずにして自分の息子を弄ってもいいのよ」

「そ……そんなこと……」

 否定の言葉を吐きながら、その手は確実に肉棒に向かって伸びていく。そして触れた瞬間、激しい勢いでしごきはじめる。

「さて、そっちが一人でしている間、こっちは二人で楽しみますか……マリア、あなたの大切なところ、舐めてあげる……嬉しいでしょ」

「はい……ありがとうございます、ご主人様」

 その返答に満足したあたしは、マリアの秘部を激しく舐めはじめた。

「はうっ!?」

「ほら、お休みは駄目でしょ、マリア」

「は、はい……」

 卑猥な音が空間を支配する。その音が互いの性感を高めあい、行為を加速させる。

「い……いく……イッちゃう……」

「だ……だめよ、マリア……イク時はあたしと一緒、いいわね?」

「は、はい、ご主人様……ああっ!」

「い……いいわ、もう少し、もう少し頑張りなさい、マリア」

「はい、はい、はい!」

「あ……いい、そろそろイクわ……ふあ、あ、ああああああっ!!」

「!!!!!!!」

 あたしの命令通り、共にイッたマリア。その上に倒れ込むあたし。

 再び目を覚ましたとき、低いうめき声が聞こえてくる。

 あ、そう言えばあいつのことを忘れてた。

「あら、まだやってたの?」

「うう……抜けない……どうしても抜けないんだよ……」

 半分涙目であたしに訴えかけるロバート。その間も手は肉棒を擦り続けている。

 そりゃそうだろう、ロバートには言ってなかったが、あたしの許可がなければ射精できないよう命じているのだ。目の前でああいう光景を見せつけられ、しかもずっと手でしごいているにもかかわらず、一度も抜けないのでは、いい加減精神が狂ってきてもおかしくない。

「どうしたの? あたしなんか見て……あんたはマリアだけに用があるんじゃないの?」

「……これも、あんたの仕業なんだろ……頼むよ……イカせてくれよ……」

「……それが人にお願いするときの態度? お願いするにはそれなりの礼儀というものがあるでしょう?」

「……お、お願いです……お願いですからイカせてください……」

「……まだ、不十分ね。あたしの名前が抜けているわよ」

「お願いです、イカせてください、シーナ様ぁぁぁぁぁっ!!」

 最後は泣き叫ぶように言葉を吐くロバート。

「いいわよ、イッてしまいなさいな!」

「うああああぁぁぁぁっ!!!!!!」

 言うが早いか、あっという間に頂点に達する。それと共に勢いよく飛び出す精液。それはロバートが気絶するまで続いた。

「おはよう……」

 だるそうな声と共に現れたロバート。その表情は何故そんなに疲れているのか見当が付いていないように見える。

 無論のことながら、ロバートからは昨日の夜の記憶を奇麗さっぱりと消してしまっている。マリアが自分の部屋を尋ねたことさえも忘れているはずだ。

 ただし……

「ところでマリアさ……ん!?」

 マリアに声をかけようとしたところで突如として凍り付く。マリアに関わろうとしたとき、あの時の記憶が瞬間的に蘇るようにしているのだ。

「どうかしましたか?」

「いや……なんでもないです……」

 もっとも、あれだけさんざいぢめたのだ。こんな小細工をしなくても、あの行為が心の傷として残ったとしてもおかしくない。ひょっとしたらこれから先、女性とまともにつきあえないかもね……

 その後、目的地のディアナシティに着くまで、ロバートがあたしたちに手を出すことはなかった。

< つづく >

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