帝国軍特別女子収容所 FILE 3

FILE 3

「リノ地区なんて辺境の情報を、吐かせろと言った覚えはないぞ」
 ワッツ将軍は不機嫌そうに言った。
「お言葉ですが、リノ地区は文化の街、芸術の街と言われてます。あそこの活発なレジスタンスが若者を引き込んでいるわけで、看過できない場所だと思いますが」
「そうかもしれんが……、もっとこう、はっきりした情報を期待していた」
 たぶんワッツ将軍は、レジスタンス指導者のフィリップ=ガウアーとか、右腕と言われているテオ=ルッシュの居場所がわかると思ったのだろう。
 しかしたった1日で、そう簡単にいくわけがない。
「もう少し時間が必要です。焦れば取り返しのつかないことになる。とりあえずリノ地区の方をお願いします。できればまた捕虜を捕まえてほしいですね」
「ふう……。わかった」
 ため息をついてワッツ将軍は後ろを向いてしまった。
 ガラスの向こうに尋問室のある中央刑務所が見える。占領軍司令部はその隣になっている裁判所にあった。刑務所が裁判所の隣にあるなんて、この国はなかなか効率重視の都市設計である。
 今、刑務所にはエミリアを始めとする重要な政治犯ばかり、20名ほどが拘留されている。もちろん警備は厳重だ。
「あの機械さえ、なければな。全くレジスタンスめ」
 拷問した方がよほど速いと言いたいのだろう。今まで何度となく皮肉られてきたから、今更気分を害したりしなかった。
「それでは、今日の尋問を始めます。ああ、リノ地区の掃討は、あの女からの情報であることはバレないようにしてくださいよ。せっかく聞き出しても、情報が古くなっては意味がありませんから」
「お前に言われんでもわかっとる」
 結局、ワッツ将軍は最初から最後まで不機嫌そうな顔だった。

 刑務所地下の尋問室にやってきた。
 今日は昨日の部屋でなく、別にあつらえた特別室だ。なんとちゃんと壁紙が張ってあり、中央には大きなベッドが鎮座している。そのベッドでエミリアが手錠をつけたまま、こんこんと眠っていた。
 俺はベッドのエミリアににじり寄る。
 エミリアは反応しない。麻酔が効いている。
「さて、無粋なもんを脱いでもらうか」
 エミリアの手錠をはずし、囚人服を脱がす。
 美しい裸体だった。妙齢の女性というよりは、美術の教科書に出ている彫刻のようである。足は長く、腰のクビレから脇にいたるラインが素晴らしい。
 そして仰向けになっても全く崩れない、見事な双丘。その中央で、ツンと上を向いて自己主張している乳首。今までそれなりにいろんな身体を見てきたが、この女の身体は完璧だった。
 ただ1点を除いては。

 胸の谷間に、縦一文字の大きな傷があった。

 自白剤で作動する機械を、移植したときの傷に間違いない。
「女の身体に、これほど大きな傷を残す手術をするなんて……」
 俺はどう理解していいのかわからなくて、呆然としてしまった。
「う、うん……」
 時間通りにエミリアが目覚める。
 俺は手錠を左手だけに付け直した。手錠は鎖でベッドのフレームにつながっている。
「おはよう。エミリア」
 しばらくぼーっとした顔で、俺の顔を見ていた。頭の回転が上がらなくて、誰だか把握できないらしい。同時に昨日と違う雰囲気が、混乱に拍車をかけているのだろう。
「きゃ! ふ、服は?」
 自分の姿に気付いて悲鳴をあげる。
「今日は、なしだ。それよりその傷は、機械を移植したときのだな?」
「! ……そうよ」
 憮然とした表情で顔を逸らす。
「それよりここはなんなの? とても尋問する部屋に見えないんだけど?」
 言いながらシーツが新しいか確認している。俺はじっとエミリアを見てから言った。
「消えないぞ、その傷。せっかく綺麗な身体を……」
「わかってるわ! だから私は女を捨てたと言ってるのよ!」
 爆発するようにエミリアは叫んだ。炎のような決意。この女の意思の力に圧倒されないものはいないだろう。レジスタンスのリーダーになれるわけだ。
「お前は純粋だな」
「え?」
 思わず俺は本音を言ってしまった。
「な、なによ。急に」
 動揺するエミリアを見ながら思考する。
 昨日、エミリアは媚薬で我を失っていたとはいえ、「お願い」してしまった。
 明らかにレジスタンス失格である。
 しかしこの女は、抵抗活動のために身体に傷が残るのをわかった上で機械を埋め込み、拷問の訓練で仲間に処女を捧げてさえいる。
「女を捨てた」と言うのは、誇張でもなんでもなかった。
 今日は「お願い」辺りから崩すつもりだったが、これだけ純粋に抵抗活動に没入しているのに「レジスタンス失格」の烙印を押すと、たぶんこの女は壊れる。
 情報を聞き出すために、壊すかどうか?
 ダメだ。俺の主義に合わない。

 俺は即行でプランを変更した。トレーに用意しておいた朝飯を取り出す。
「ま、とにかく飯を食え。脱出するためにも体力は必要だろ?」
 エミリアは皿にのった朝飯のピラフを一目見るなり、鼻で笑う。
「どうせ、昨日みたいな薬が入ってるんでしょ?」
「避妊剤が入ってる。俺の子供を生みたいなら別だが」
「う……」
 そう言われて、食べないわけにはいかない。結局警戒しつつも、ピラフをもそもそ食べ始める。左手だけ手錠をかけて、右手を自由にしてあるのはこのためだ。
 もちろんエミリアの予想通り、避妊剤だけでなく微量ながら媚薬も入っているのだが。
「今日の未明、逃亡していたレジスタンスを何人か捕まえた。今他の連中が尋問してるが、どうもお前が考えるほど、周りの気持ちは徹底されてなかったようだな。お前のことをサハ地区リ-ダーとしてより、女としてみる奴もいたくらいだ」
 我ながら変な話だ。一度逃がしたレジスタンスをもう一度次の日捕まえるなんて、あり得ない話である。
「……だから?」
「女を捨て、リーダーとしてあろうとするお前を、真の意味で理解するのは、数人しかいなかったんだろ?」
「違うわ!」
「なら、なんで胸に視線を送る? 尻を眺める?」
「それは……男だから……」
「嘘つけ。性欲があるのは男も女も同じだろう。お前はわかっていたはずだ。口では従っていても、ただのお飾り、広告塔としか見ていない奴。女としか見ない奴。女のリーダーなんて屈辱だと思う奴」
「!」
 一瞬エミリアの表情が強張った。たぶん本当に女性差別する奴がいたのだろう。それも幹部クラスで。
 俺の脳裏に昨日見たジェイムズ=マクファーの顔が浮かんだ。
「お前はそういう奴らに自分を認めさせるため、ますます女を捨て、自分を捨て、戦いに走った。しかし、結局仲間に裏切られて裸になってここにいる」
 俺の言葉に悔しそうな顔をする。
「……そんな手には乗らないわ。私も仲間を売るとは思わないことね」
「そんな手もこんな手もあるか! お前が帝国と戦う前に、仲間と戦ってたのは確かだろうが!」
「……」
 唇を噛み締めつつも、エミリアはついに黙った。
「ここにいる以上、結局お前は大多数の仲間に理解されなかったんだ。これほど女を捨ててきたのにな」
「……私は……」
「俺以上におまえ自身がそれをわかってる。それでもお前は戦い続けるだろう。だから俺は感心したんだ。純粋だなってな」
「……」
 沈黙が降りる。
「……だから、なによ。私はレジスタンスに誇りを持ってる。それで十分だわ」
「そうだな。哀しいことだ」
「……」
――孤独を認めたな。今まで誤魔化してきたんだろうに。
 俺はそう思いながら、エミリアが食べた食器を片付けた。

「1つ情報をやろう。今占領政策を指揮しているワッツ将軍は無能だ。戦闘指揮を執ったリッテヘル将軍とは月とスッポンだよ」
「……いいの? 嘘でもそんな悪口言って」
「お前が言わなければバレないさ。ここは完全防音だからな」
「ふーん、そう」
 エミリアが用心深く部屋を見渡す。
「俺を殺しても他の奴にわからんわけだ。もっとも殺しても外に出られんがな」
「どうして?」
「中尉の官職の女は、この司令部にいない。服を失敬してもすぐバレる。男にバケれば大丈夫だが、ま、お前には無理だろう」
 俺はジロジロと視線を這わせた。エミリアは顔を赤くして、身体を隠そうとする。
「なんだ、いまさら」
「い、いいでしょ。別に」
 いくら女を捨てても、裸になれば嫌でも女を認識せざるをえない。
「ま、とにかくここで何か起きても、誰にもわからないってことだ」
 俺は言いながら、ひょいと手を伸ばして乳首に触れた。
「あはぁっ!」
 ビクビクと身体を震わせて悶えるエミリア。
「くっ! やっぱりさっきのご飯に何か入ってたのね!」
「と言うより、昨日の薬がまだ残ってるな。可愛かったぞ、今のお前」
「黙れ!」
 恥ずかしさと怒りで顔が真っ赤になっている。
「そう怒るな。さっきも言ったとおり、お前がどんなに可愛くなっても、この部屋の外の奴にはわからないよ」
「あんたに見られるのが嫌なのよ!」
「俺は昨日、散々見たぞ。だってアレの掃除だってしたし」
「アレ?」
 俺はちょっと周りに視線を送ってから、囁いた。
「……こ」
「え?」
 心配そうな表情でエミリアが顔を寄せてくる。
「だから……おしっこ」
「…………ええぇっっっ!!!???」
「耳元で怒鳴るなよ」
 口をパクパクさせるエミリア。
「う、嘘でしょ?」
「覚えてなかったのか」
「……う、うそ……」
 言いながらも、ちょっと思い出したらしい。
「まぁ、俺は誰にも言ってないから」
「当たり前よ!」
「とにかく、お互いいまさらカッコつけてもしょうがないってことだ」
 俺はパッと抱き寄せてキスをする。
「んぅっ!? んふぅっ!?」
 エミリアはバタバタ暴れるが、かえって俺の服に乳首がこすれて、快感を生み出す。
「んっ、んっ、んふぁ、んふうぅぅん……」
 舌を挿し入れても抵抗はわずかだ。やろうと思えば噛み切ることもできるのだが、そこまでの反抗意識は消えているらしい。
 くちゅ、ちゅく……。
「んむっ、むっ、ふぅぅん……」
 ついばむようにしたり、ねっとりと絡めたり、ディープキスを堪能する。

 いつしかエミリアの身体の動きも、うねるように押し付けるものに変わってきた。ざらついた軍服にこすられるのが気持ちいいに違いない。
「ぷふぁあぁ、んく、んく、ごくん」
 唾液を送り込むとすんなり飲み込んだ。俺はキスを続けながら、片手で器用に服を脱ぐ。
「くっ、あ、あんたこんなことばっかり、してていいわけ? 評価がかかってるんでしょう?」
 なんとか口を引き離して、エミリアが睨んでくる。俺が裸になって自分のしていることに気がついたのだろう。
「嬉しいね。俺の心配してくれるのか」
「違うっ!」
「じゃあ昨日みたいに乱れるのが怖いのか?」
「そ、そ、そんなんじゃないわ!」
「それじゃやっぱり俺が心配なんだ」
「違うっっ!!」
「お前わかりやすいなぁ」
「な、な、なにがよっ!」
 真っ赤になって怒るエミリアを見て俺は苦笑いした。

 根本的に嘘がつけないタイプなのだ。愛情のある家庭でまっすぐに育ったのだろう。そして、その家庭を蹂躙した帝国に怒りを燃やしている。
「純粋だ」という俺の印象は、極めて正しかったわけである。
 しかし鉄壁だったエミリアの自我に、俺は硬軟取り混ぜて杭を打ち込み続けている。
 特に昨日の快楽は、エミリアにとって相当ショックだったことは想像に難くない。自分が「快楽に流される」なんてことがあると思わなかったのだろう。
 だから逆に、快楽に対する本能的に感じた恐怖を取り除いてやれば、エミリアは崩れる。

 首筋や耳の愛撫に移ろうと、手を伸ばした。
「本当に綺麗なおっぱいだな」
「う、うるさい!」
 心底怒った声に眼を上げる。ちょっと言葉の選択を失敗した。
「傷を皮肉ったわけじゃない。本当に綺麗だと思ったんだ」
「お世辞は結構よ!」
「俺は心を見るのが仕事だ。見た目が綺麗かどうかなんて、俺には関係ない。エミリア、俺にはお前がこの傷に込めた心がよくわかるんだ」
 俺は傷をゆっくりと撫でた。
「お前がどんな決意でこの傷を受け入れたかわかるんだよ。だから最初に言ったろ? お前は純粋だって」
「……」
 眉を顰めて怒った風を装ってるが、その眼は戸惑っていた。

 エミリアが純粋なのは真実だし、その純粋さがこの傷を受け入れる原動力になったのも真実だ。
 でもレジスタンスの中じゃ誰もそんなことを言ってくれなかったのだろう。だから俺の言葉が心に染み込んでしまう。

「だが、俺は『女を捨てた』というお前の言葉が気に食わない。レジスタンスは女を捨てなきゃできないものなのか? 男でなきゃ戦えないのか? はっきり言って、それじゃ帝国と言ってることが同じだぞ」
「ち、違うわ」
「さっき中尉に女がいないといったろ? これだけ大きな部隊で、女の仕官は数えるほどしかいない。帝国が『女は戦えない』と考えてるせいだ。レジスタンスじゃ女も子供も戦ってる。それなのに、なぜお前はことさら女を捨てようとしたんだ? それがおかしいと周りの奴は言わなかったのか?」
「私はリーダーだから……」
「なんでリーダーだと女を捨てるんだ? お前だって、それがおかしいと心の中では思ってたろ?」
「……」
「お前は女だよ。今も昔も、たとえ傷があっても立派に女だ。俺が保障する」
「女……」
 じっとその言葉を考えるエミリア。俺は手を伸ばしてエミリアの頬にかかった髪を掻き揚げた。
「そうだ。だから感じるんだ」
 顔を上げたエミリアと視線が絡む。
「それが嫌なら、この部屋の中でだけ女に戻れ。ここには俺とお前しかいないんだからな」
「……」
「昨日の快感も、お前が女だから感じたんだ。試しにもう一度感じてみろ。俺の言ってることがよくわかるはずだ」
「あれは、媚薬のせいよ……」
 乱れたことを恥じているのだろう。
「もちろん媚薬のせいだ。今日もまだ残ってるしな。全部媚薬のせいだよ。昨日のあの快感もな」
 エミリアが無意識に唇を舐めた。昨日味わった悦楽が蘇って来たに違いない。
「とにかく今だけだ。この部屋にいるときだけ、俺に任せろ」
 それは逆に言えば、この部屋では俺を受け入れるということだ。

 エミリアは目を泳がせた。彼女の葛藤が手に取るようにわかる。
 乱れても媚薬のせい。自分のせいではない。
 女なら誰でも感じる。女だからこそ感じる。
 帝国軍人が悪口を平然と言えるほどの完全防音。たとえどんなに乱れても、この部屋にいる限り、他の人間に見られることはない……。

 いくつも免罪の札をちらつかせてから、俺はもう1押しした。
「嫌なら今日1日だけでいい。明日からまた女を否定したレジスタンスに戻ればいいんだ。明日嫌だって言ったら、俺はもう手を出さないよ」
「……本当に?」
 エミリアが聞き返してくる。遂にエミリアの心が折れたのだ。
 帝国軍人が捕虜と約束するなんてありえない。エミリアだって、それはわかっている。
 だが、自分を納得させるためには質問しなければならないのだ。俺はエミリアが欲しい答えを与えるだけである。
「もちろん本当だ。だが今日はダメだ。たっぷりと昨日の何倍も快感を感じてもらう。何度も何度も何度もな」
「……帝国軍人って、最低ね……」
 眼を逸らしてエミリアは悪態をついた。
「そうだな」
 最初のころのように、炎のような眼で悪態をつかれることは、もうないのかもしれない。それはそれで、ちょっと残念だ。

 俺は眼を逸らしたままのエミリアに、ゆっくりと口付けする。
 今度は全く抵抗がなかった。

 くちゅ……、ちゅく、ちゅく……
 まるで熱い恋人同士のように、ねっとりとキスをする。歯ぐきに舌を這わせ、唾液を絡めあい、互いの舌を堪能する。
 ゆっくりとエミリアが受け入れていくのがわかる。それと同時に喘ぎ声が出るようになっていく。
「むふぅん、んふぅ、ちゅ、ちゅ、んはあぁ……」
 どのくらい時間が経っただろうか? 俺はゆっくりと口を話した。2人の間に唾液の橋ができ、ゆっくりと壊れていく。
「……ふう。どうだ? 本当の男と女のキスは?」
「はぁ、すごい。こんなにすごいの?」
 うっとりとした表情でつぶやくエミリア。
「もっともっとすごくなる」
 俺は豊かな双丘に手を伸ばした。触るとはっきり熱を持っているのがわかる。
「うっ、ふっ……んっ」
 さわさわと触っているだけで、エミリアは反応する。

 食事に混ぜた媚薬は、まだ効いていないはずだ。直接注射するのと違って効きは遅く、効果も薄い。
 だから昨日の薬がまだ残ってるとしても、ここまで感じるのはエミリアが本当に欲情しているからだろう。

 乳首も含めた胸全体を愛撫してやる。
 耳を舌で愛撫し、首をねぶる。
「あっふぁ、すごい。ああぁ、本当に、こんな……」 
 あのキツい光を常に宿していたエミリアの瞳が、次第に溶けていく。
 俺はもう潤いつつある秘部に手を伸ばした。
 くちゅり……
「あっ、あっ……」
 昨日よりぜんぜん感度がいい。もともと女盛りの身体なんだから、一度快感を覚えればスポンジのように吸収するのだろう。
「もっと自分を解放するんだ。お前が自分の女を認めないでどうする?」
「くっ、あっ、あああああああ……」
 乳首に舌を這わせて転がすように愛撫する。
 右手で媚肉を愛撫し、左手でもう片方の乳首をコリコリと刺激する。
「そうだ。もっと解放して! もっと!」
「いっあっ! 来るっ! 来るっ!」
「イクだ。イクと言うんだ!」
 くちゅ、ぬっちゅん、くちゅくちゅくちゅくちゅ。
 エミリアの身体が跳ねる。
「あああ、ダメ! ダメ!」
「イクだ! イクと言え!」
「イク! イク! ああっ、イクぅ!」
 指を挿し入れた蜜壷がきゅーっと絞られる。
「いっくうぅぅぅっっっっ!!!」
 エミリアは絶頂を駆け上った。

「ふう。いいぞ。エミリア」
 昨日イキ癖をつけたのが効いていた。
 俺は髪をすいて、軽くキスをする。エミリアの方からも積極的に舌を伸ばしてくる。
 これで初めて自分から女を認めて、快楽を味わったのだ。
 媚薬で強制的に感じさせられた時とは、まるで違う充実感がエミリアの表情に漂っている。
「それじゃ、ゆっくりいくからな」
 俺はペニスを十分にほぐれた媚肉に押し当て、ずぶずぶと押し込んでいった。
「あはあぁ、入ってくるぅ。入ってくるのぉ」
 膣はまだキツい。だが昨日と比べて、かなりほぐれ方が速い。
 俺はゆっくり円を描くように腰を動かす。
「くうぅ、いいっ、いいのぉっ!」
 嬌声が上がった。
 腰を自ら振って、エミリアが自分から快感を貪る。
 俺はエミリアにキスをしながら、段々動きを速くしていった。
 ぐちゅっ、ずちゅっ、ぬちゅっ、ずちゅっ
「あっ、あっ、あっ、すごいすごい、すごいぃぃっっ」
「くっ、どう凄い?」
「なかっ、中っ、暴れてっ、んはっ、こすれるっ、ああっ、すごい気持ちいいぃっっっ!!」
 エミリアの足が俺の身体に巻きついた。身体の動きが制限されそうになるのを、力づくで動く。
 こっちも昨日とは比べ物にならない気持ちよさだ。
「きっ、昨日より、すごく気持ちいいぞっ、エミリアっ」
「ああっ、いいっ、いいっ、ホントにすごい!」
 まるで情熱的に愛し合う恋人のように、俺とエミリアは互いの身体をぶつけ合う。
 ぐちゅっ、ずちゅっ、ぬちゅっ、ずちゅっ
「あっ、イクっ、イクっ、イっちゃうっ!」
「そうだっ! イクって言うんだっ!」
 快感がせり上がってくる。
 汗と愛液を飛び散らせて、エミリアが喘ぐ。
「すごいイクっ! すごいイクっ! ああっダメっ! ホントにスゴイのが来るっ!」
「イクぞっ! エミリアっ!!」
「イクっ! イクっ! イっくうううぅぅぅっっっっ!!!!」
 まるで腰から下を飲み込むように膣が脈動して、ペニスを吸い込んだ。
 俺はその動きに合わせて全てを開放する。
 ドクっ! どくんっ!! どくどくっ!!!
「くぅっ!!」
 眼の裏が明滅するほどの快感が駆け抜けた。エミリアが身体をブリッジをするかのように、のけぞらせる。
「おああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!」
 長い絶叫を残して、盛大にエミリアはイッた。

「まだまだ」
 俺はエミリアの大きな胸を堪能する。
「ああ、くすぐったい……」
 ゆっくりとだが、性感が芽生えてきている。この胸全体で感じるころには、エミリアはさぞかし妖艶な女になっていることだろう。
 俺はエミリアの片足を抱え上げ、ねじるように腰を動かす。
「んはっ、もう、もう大きくなってきたぁ」
「エミリアの身体がエッチだからだ。俺はお前の身体に感じてるよ」
 身体を伸ばして、キスをした。エミリアも甘く喘ぎながら、答えてくる。
 くちゅ、ちゅ、ちゅ、んちゅ。
 たっぷりと唾液の交換をした。
「昨日もやった体位だ。覚えてるか?」
「敏感なところにぶつかる……」
「そうだ。ここだな」
 俺は恥骨をクリトリスに押し付ける。
「あふぅぅぅん! き、気持ちいいっ!」
「そうだ。昨日より気持ちいいぞ」
 腰をねじ込むように動かす。
「うあっ、あっ、あっ、んあはっ」
「どうだ、エミリア! 昨日と比べて!」
「いいっ! いいっ! ホントにいいっ!!」
「もっと女を解放しろ! そうすればもっとよくなる!」
「ああ、怖い! 怖いの!」
 エミリアは涙目で訴えてきた。
「大丈夫! 俺が一緒だ! さあもっと解放しろ!」
 ぐちゅっ! ぬちゅっ! ずちゅっ! ぬちゅっ!
「ああ、す、ご、いっ! す、ご、いっ! しゅ、ご、いっ!」
「もっとだっ! もっと感じろっ!」
 俺はスパートをかけた。
 エミリアの腰を逃げないように抱えて、リズミカルに叩き込む。
 エミリアも自分から腰を振りながら、よがりまくる。
「くあはぁっっ!! イクぅっっ!! しゅごいイクぃっっ!! らメ、らメぇっ! やらぁっっ!!」
「昨日よりどうだ? 昨日と比べて!」
「ひゅごいぃぃっっっ!!! ひゅごすぎるうぅぅぅっっっ!!! いひいぃぃぃぃっっっっ!!!!!」
 エミリアの身体がビクビクと痙攣し始めた。絶頂が近い。
「いいかっ、イクぞ! エミリア! イッたらコレが癖になるぞっ! 絶対癖になるっ!」
「いやあぁぁぁっっっ!!! くせやだあぁぁぁっっっ!!! くへはぁぁっっ!! くへはああぁぁぁっっっ!!!」
「いくぞぉっっ!!!」
「あひゃあああああああぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!」
 完全に白目を剥いて、絶頂するエミリア。
 俺は2度目の精液を、エミリアの奥深くにたっぷりと放った。
 どくん、どく、どく、どくん。
「あはぁぁぁんん、くせになるうぅぅぅ、くへになっちゃううぅぅぅ……」
 恍惚の表情で、エミリアは絶頂の海を漂っていた。

 抱き合ったまま余韻を楽しむ。
「んふぅん。うふ……」
 顔をなでるようにキスを繰り返していると、明らかに甘えてきた。こんなふうに、包まれて抱かれたことはないに違いない。
「昨日より良かっただろ?」
「ああ、本当に……。なんでかしら? 媚薬の熱に浮かされたような感じはないのに」
「お前が自分の女を認めたからだ。もっと認めれば、もっと気持ちよくなるぞ」
「まさか」
 苦笑するエミリア。
「嘘ついてどうする。昨日一瞬あったが、もっと感じると子宮が降りてきて、ペニスの先とぶつかる。すると身体の芯から揺さぶられて、もっと凄い快感になるぞ」
「本当に?」
「本当だ」
 ごくっとエミリアが唾を飲み込んだ。快楽に果てはない。求めれば求めるほど大きな快感を感じることができる。
「で、でも私は……」
 唐突に自分の立場を思い出したらしい。
 俺はそのエミリアの気持ちを打ち消すように言った。
「だが残念だな。このままでは、レジスタンスは壊滅する」
 エミリアの表情が険しくなった。
「どういう意味よ?」
「このまま抵抗運動が長引けば、ワッツ将軍は左遷だ」
「結構なことだわ」
「ばか。そんなことになれば、次は第9軍が出てくるぞ」
 俺の言葉にエミリアは戦慄した。
「その顔は知ってる顔だな」
「『虐殺部隊』でしょ?」
「そうだ。2年前ティナゲート攻略戦で、ナハレル自治区は文字通り瓦礫の山と化した。70万人の都市で、生存者は100名足らずだ。第9軍が来れば、この国は徹底的に蹂躙される。こんなもんじゃ済まない」
 開放式に参加する軍団の序列に第9軍も入っていた。2ヵ月後開放式が行われなければ、第9軍はそのまま蹂躙戦に入るつもりであることは間違いない。帝国の面子を汚すものは、抹殺しかありえないのだ。
「哀れレジスタンスは、無能なワッツを更迭した代償に、第9軍に殲滅されるわけだ。ある意味ワッツと心中だな」
「……」
 エミリアはじっと考えている。その顔の鋭さは、既にレジスタンスのリーダーの顔だった。
「さて、シャワーを浴びるか。この尋問室が特別製だっていう一番の理由だ」
「シャワーがあるの!?」
 エミリアが表情を一変させて、嬉しそうに聞き返す。
「あるんだな。これが」

 俺はエミリアの手錠をはずし、自分の左手につけてからシャワー室に案内した。
 ヒト1人入れば、いっぱいなってしまうような簡単なシャワー室だが、ちゃんとお湯も出る。
「ここを出たら、牢屋に戻すことになる。続きはまた明日だ。いいな。エミリア」
「わかったわ」
 端から見ると妙だが、素直にエミリアは頷いた。昨日あれだけの啖呵をきった女とは思えない。
 今日のあの絶頂で、なにか彼女の中のスイッチが切り替わったのだろう。

「よし。さてお仕事だ、エミリア。『シェッテゴールの光は満ちた』」
「え?」

 次の瞬間、エミリアの瞳は力を失い、ぼうっとして焦点の定まらなくなった。
 昨日エミリアに仕掛けたキーワードが発動したのである。
『シュッテゴール』とは神話に登場する魔物だ。聖神アスハーンの天斬の斧によって駆逐されることになっているのだが、もし逆なら世界は闇に陥ちているはずである。『闇に陥ちる』はずが、『光に満ちる』わけだから、なかなか皮肉の効いたキーワードだ。

 あっちこっちつついたりして、催眠の掛かり具合をテストする。
 やはり、かなり解けているようだ。自立心の強い人間ほど、早く解けていく。
 催眠術は洗脳と最初の導入のところが似ているので研究を続けてきたが、あまり芳しくない。
 人を催眠状態に維持し続けるということが無理なのだ。
 本来その人の持つ倫理観は、育った環境、人間関係、学校の教育などなど、深い年月を積み上げて成り立っている。それを催眠だけでどうにかするには、『弱すぎる』のだ。
 今のところ、思考誘導の補助的な役割でしか、使えない状況である。

 テストの後、もう1度いくつか深化させる作業を経てから、エミリアに指示を与える。
「エミリア。お前は今日、自分の女を認めた。そうだな?」
「はい」
「お前は、女だ。そのことになんら恥じる必要はない」
「はい」
 自分で到達した答えだから、返答も速い。ここまでは単なる『明確化』の作業で簡単である。問題はここからだ。
「だからお前は、自分を女として扱わない者を憎み、女として扱う者に親しみを感じるようになる。わかったな?」
「はい」
「女を認めない組織はおかしい。レジスタンスがそういう組織なら、変えなければならない。帝国に勝つためにも、レジスタンスは完璧な組織でなければならない。そうだな?」
「はい。完璧でなければなりません」
「よし。このことを、お前は1人になる度に考えるようになる。レジスタンスの未来のために考えるんだ。わかったな?」
「はい。考えます」
「レジスタンスの未来のために力をつくせ」
「はい。力を尽くします」
 エミリアにとっても求める内容のはずだから、拒否反応はほとんどなかった。
 ほっとして俺は息をつく。これがどのように作用するかは、明日以降のお楽しみだ。

 その夜、リノ地区のレジスタンス拠点が保安隊によって急襲された。
 レジスタンスは地区リーダーを含め、全員壮絶な銃撃戦の後、死亡。
 捕まえたのは、倉庫の奥に隠れていた女、ただ1人である。
 セシル=トレクス。年齢19歳。
『リルダールの歌姫』と言われ、周辺諸国にもファンが多く、帝国に公演に来たこともあるオペラ歌手であった。

< つづく >

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