緑色の幸福 03. 痴態

03. 痴態

 ようやく空き室を見つけると、部屋に入るなり彼女は入口に上着を脱ぎ捨て、飢えた狼のようにハアハアと舌と涎を垂らしながら襲いかかって来た。

「お、おいおい、嬉しいけどシャワーくらいは浴びようよ。今日はかなり汗かいちゃったからね」

「だめ!シャワーなんか浴びたらせっかくの主任さんの匂いがなくなっちゃうじゃない!」

 俺はその言葉に異様に興奮しながらも彼女の欲情ぶりに少しいたずら心が起き出した。

「えー!俺は嫌だよ。シャワーも浴びずにするなんて、不潔じゃないか..それならやっぱり俺、帰ろうかな?」

 通常とは逆のシチュエーションに萌えつつ、じっくりと彼女の反応を楽しむのも悪くない。

「そ、そんな!お願いです!主任さんの匂いもっと嗅がせて下さい。あ、私の匂いが嫌なら私だけシャワー浴びてきますから。だから..帰るなんて言わないで。お願いします」

 半分涙を浮べながら頼みこむ彼女はとっても可愛いんだが..まだまだお楽しみはこれからだ。

「だめだよ。俺は自分の汗の匂いが嫌なんだ。よかったら一緒にシャワーを浴びない?」

 もうぼろぼろと涙をこぼしながらも俺の胸で匂いに陶酔しきっている彼女は、まだまだあきらめ切れないようだ。

「だめ!絶対!主任さんの汗と匂いは私の物よ!お願い、なんでもしますから。このまま私と一緒に居て」

「え、ホント?なんでもって..どんな事?」

「あ、ええっと..な、なんでも..です。....何が、お望みですか?」

「うーん.と..そうだねぇ..あ、まずそこでストリップでもして見せるってのはどう?」

 香はやっと出てきた条件に喜びはしたものの、やはり羞恥心はまだ残っているようだ。かなりためらいがちに横を向くと思い切ってブラウスのボタンをゆっくりと外しだした。

「駄目駄目。そんなただ脱ぐだけじゃストリップとは言えないよ。もっと色っぽくやってくれないと、とても僕は満足出来ないね」

「あ、はい..すみません..でもどうすれば..私..よく知らなくて...」

 5秒と匂いを嗅がずにはいられない彼女は、謝りながらもすぐに僕の胸に顔を埋めに来る。

「はーあ、がっかりだねぇ。君なりのいやらしいポーズが見たかったんだけど..結局君は自分の恥ずかしい事はしたくないけど、僕には恥をかかせてもいいと思っているんだ。自分さえ満足出来ればいいんだね?
 なぁんか しらけちゃったし..やっぱり今日はもう帰りたいなぁ」

 そう言いながら彼女の顔を無理やり引きはがし、コートを手に立ち上がった。
 無論こんな所で帰れる程俺は理性的じゃない。液体の効き目がどれほどの物か、極限まで彼女の理性と戦わせてみたかったのだ。
 科学者の好奇心と牡の本能が俺の中でせめぎ合っていた。

「ま、待って!待って下さい!お願い..もう一度やって見ますから..見ていて下さい!お願いします!」

「んー、じゃあもう一度だけな。
 言っとくけど、俺は今君が一番恥ずかしいと感じる格好が見たいんだ。うまいとか下手は関係ないよ。躊躇したり控えめだったりしたらすぐに帰るからね」

 俺はそう言うとコートを羽織り、扉のすぐ前でいつでも帰れるような状態のまま彼女に向き直った。

 俺の態度に彼女はもう後がない事を感じ取ると、自らの羞恥の奥底を探るように目を閉じる。
 次第に頭の中の妄想に羞恥し、欲情し、肩を抱き締めてひとしきり体を震わせた後に開かれた彼女の瞳の中には、羞恥に戸惑う少女と男を惑わす艶女が同居しており、俺の股間を直撃する。

 しずしずと俺に近づくと背中を擦り付けながら後ろ向けに俺を見上げ、胸を反り返した姿勢でブラウスのボタンを外していく...胸の谷間が俺を誘う。
 続いてスカートのホックを外し、その場にストンと落とすと足先で器用に放り投げた。
 そしてゆっくりと振り向き、その足を俺の肩に載せる。
 バレエでも習っていたのだろうか?ほぼ180度開かれた脚の先から付根までをいやらしく指でなぞり、ストッキングの端に辿り着くと、クルクルと丸めながらもう一度足先に戻っていく。
 丸まったそれをそのまま俺の背後に落とすと、足先が俺の耳から首筋、胸を通り、股間で少し遊ばせた後そっと降ろされ、もう片方の足でも同じ様にして脱ぎ去られた。

 その姿勢のまま上半身を大きくのけぞると肩に引っ掛かっていたブラウスが滑り落ち、指先で絡めたそれを先程のスカートの上に重ねられた。

 縦に大きく開かれた彼女の股間にはいやらしい染みがはっきりと浮き出ている。
 もう一度俺の身体を刺激しながら降ろされた彼女の足は俺の股間に割り入れられ、胸を突きだしながら背中のホックをパチンと外す。

 指先がその美しい脇をゆっくりとなぞり上げ、肩まで辿り着くとするっと肩紐を滑らせる。
 のけぞっていても美しく盛上がった乳房の先に僅かに引っ掛かったそれは、彼女の小さな蕾を見せるのにほんの僅かな振動が与えられるのを待っている。
 胸先で固まっている俺の視線をじっとりと見上げながら肩までの茶髪を後ろに掻上げ、もう一度俺の首筋に舌を近づけた。
 その拍子に隠されていたピンク色の蕾がようやく空気に晒されたかと思った瞬間、彼女の妖艶な瞳に割込まれた俺の視線は今度はそれに囚われてしまった。

 その時すでに俺の理性などとうに無くなってしまっていたが、予想以上の彼女の痴態に目は釘付けになり、頭は痺れ、指先一つ動かせず、ただ見とれる事しかできなくなっていた。

 露出した乳房は俺の胸でつぶれて円を描き、俺の股間を膝で擦り上げながらもその視線は外される事無く俺の顔を両手でしっかりと掴み、首筋や顎先を舐め上げ吸付いてくる。
 そしてようやく唇に辿り着くと、じっとりと舌を這わせ奥まで忍び込んできた。
 念願の俺の唾液にようやくありついたそのかわいらしい唇と舌で、俺の口腔内を一方的に蹂躙する。
 その行為はとても接吻などという生優しいものでは無く、口内から全ての体液を吸い出すかの様にこねくり、搾り取っていく。
 俺の唾液を口の中で掻き回し、完全に陶酔しきっている筈の彼女の指先が、少しずつ下がり肩からコートを落し、ネクタイを取去る。
 もどかしく震える指先でワイシャツのボタンを外し、はだけた胸へと舌先を滑らせていく。
 その舌先でひとしきり乳首をころがした後、腋へと潜り込むと はぁはぁ と息を弾ませ汗くさい俺の匂いを胸一杯に吸込んでいった。
 その匂いで完全にトリップしてしまった彼女はもう俺の目を楽しませる事などは頭から消えてしまった様子で、引き毟る様にズボンのベルトを外すと一気に引き降ろす。

 トランクスの上から俺の直立した肉棒の形を辿るように手を添え、頬を摺りつけながら大きな深呼吸で匂いを嗅いでいる彼女を見る内に、彼女が欲しているのは俺ではなく俺の体液だけなのだ と言う事に気が付いた。

 それでも充分嬉しい状況ではあるのだが、まともな思考能力を失っていた俺はそんな彼女に対し何故か悔しいような変な感情が湧いてきた。

「ねえ君、まぁた自分の仕事忘れてない?」

 放心して股間に顔を埋めていた彼女が、急に我に返ったようだ。

「あっ!も、もうしわけありません、主任」

 パンティ以外は素っ裸でおどおどしながら、斜め45度に下げられた頭は正に事務的で、しかも”主任”ときた。
 なんだか社内で繰り広げられる背徳な行為を思わせ、またもや俺の股間を血流が迸る。

「ダメじゃないか”片岡君”仕事はきちんとやってもらわないと、”報酬”は上げられないよ」

 少し調子にのって仕事モードで部下を叱る俺。

「は、はいっ!以後気を付けます」

 あの真剣に謝罪する姿勢、見上げるように俺の顔色を伺う視線、仕事中にミスをしてしまった時の彼女とおんなじだ...服以外は。

「ま、部下のミスを責めるばかりが能じゃ無いけどね。時には技術指導も上司の仕事だ。特に君の様な可愛い部下なら指導にも熱が入ろうというものだよ」

 完全にイメクラのセクハラ上司になりきってしまった俺に合わせた訳じゃないだろうが、彼女は今も真面目にしょげ返っている。

「じゃあまず、その邪魔な布きれを取らないと相手に誠意は伝わらないよ」

「はいっ!分かりました」

 怒られていた俺に優しく指導され、嬉しそうにパンティに手を掛ける香。

「あ、ダメダメ。ゆっくりだよ。いやらしくね」

 目の前で慌てて動き出す彼女を制し、細かく注文を付けていく。

「お尻をこっちに向けて....
 そうそう、君は今接待中なんだからね...
 胸なんか隠しちゃ駄目だよ...
 お尻をもっと振るんだ..もっといやらしく、円を描く様に...
 いいよ随分いやらしい格好だ。
 どうだい?そんな格好で尻を振りたくって恥ずかしく無いかい?会社の連中が見たらびっくりするだろうねぇ...」

「ああ..お願い..言わないで..は、恥ずかしいわ..死にたい位..でも..わたし..もう..主任さんの匂いが無いと..ああ..もう...」

 先程の色情に狂った彼女もいいが、やはり理性を保ったまま羞恥に悶える彼女は最高だ。

「”死にたい”なんて言わないでくれよ。別に俺が無理やりやらせてる訳じゃない。嫌ならいつでもやめてくれて結構だから...」

「あっ..ご、ごめんなさい..嫌じゃないです。どうか私の...恥ずかしい所..も、もっと..見てくだ..さい」

「ふぅん..そんなに言うんなら見てあげてもいいんだけど...一体どこを見て欲しいのさ?」

「あ、あ、あの...香の...あそこ...を...み....だ...さい」

「はぁ?」

 真っ赤な顔で必死に訴える香に、締めつけられるような愛しさを感じながらも、どうしてもこれだけは彼女の口から言わせてみたい。

「かっ、香のっ!お..んこを...見て....ださい」

「あー、片岡君!君ねー、そんないい加減なお願いで相手に誠意が伝わるとでも思っているのかい?もし俺がクライアントならとっくに怒って帰ってる所だよ」

「はっ、はいっ!香のっ...おっ、おっ、おまんこをっ、見て下さいぃっ!」

「あー、まぁいいだろう。そんなに頼むならちょっとだけ見て上げよう。
 さぁ君、後ろを向いて腰を高く掲げたまえ...そしてゆっくりとパンティをずらしていくんだ..丸めるように...」

 ようやく白日の元に晒されたそれは いやらしくひくひくと蠢き、湧き出るネバネバの愛液でねっとりと餅を伸ばしたような糸を紡いでいる。

 夢にまで見た香ちゃんのおまんこを目の前にして俺の肉棒はもう爆発寸前だ。

「あ、ああ、駄目!足を閉じちゃ駄目だよ。もっとお尻の穴までしっかり見せる様に、大きく手で開くんだよ..そうそう尻を抱える様に...」

 今度は俺がその淫裂の匂いをくんくんと嗅ぎながら鼻先を擦り付けてやる。

「どうだい?自分の臭いおまんこを嗅がれるのは恥ずかしくないかい?汗くさい上にいやらしい汁でべちゃべちゃのおまんこだよ」

「ああ..ごめんなさい..恥ずかしいわ..とっても..」

「そうだろう?僕なんか今日はタクシーの中でやられてたんだよ。僕の気持ち分かってくれる?」

「は、はい..すみませんでした..お、お詫びに私の、恥ずかしい所..もっと、み、見てください」

「そうそう、それが”誠意”ってもんだよ」

 俺の目の前ではいまだに自らの指で広げられている香のおまんこがトロトロといやらしい汁を溢れさせている。

 そんな夢の様な光景を眺め、匂いでいる内に、もう頭の中は真っ白になり、俺が何をどうしたいのか、どうしようとしていたのか、考える余裕は全く無くなっていた。

 もう実験や後先の事などどうでもよくなった俺はふらふらと立ち上がり、どさっとベッドに倒れ込むと香に向かって言った。

「も、ダメ....好きにしていいよ...」

「は、はいっ!ありがとうございますっ!」

 俺が離れても姿勢を崩さず、おまんこをくつろげていた香は今までじらされていた反動で一気に俺の上に飛び込んで来た。

 まず一番お気に入りの様子だった俺の腋に顔を埋め、クンクンと匂いを嗅ぎながら腋毛を一杯に口へ含み、チューチューと吸い上げ始めた。
 かなりの時間をかけて、両方の腋から汗と匂いを吸い取ってしまうと、次は乳首に唇を這わせる。
 しかしそれは愛撫と言える代物では無く、口全体で俺の肌をほうばり、吸い上げながら口腔内で自らの唾液と乳首を混ぜ合わせ、舌で撹拌して飲み下す..まるで俺から取ったダシで食事をされている様な感覚だった。

 そうやって鼻の穴から足の指の間まで、俺に付着していた物を全て舐め取ると、最後にはやはり最も匂いの強い部分...俺の股間へと恐る恐る顔を近づけ、鼻を擦り付ける様にして匂いを嗅ぎだした。

「あ、あの..ここも..いいですか?」

 お預けをくらった子犬の様な視線で下から見上げる彼女をもう少し眺めてもいたかったが、俺の我慢はもう限界だ。

「ああ、そこはもう少し丁寧にやってくれよ」

「はいっ!失礼します」

 余程これが欲しかったのだろう。先程から視線が釘付けだったのは俺も知っていたが、彼女がいつ こいつに辿り付くのか楽しみに待つのも悪くなかった。

 フェラチオの経験は殆ど無さそうな稚拙な技巧だったが、彼女なりにこの肉棒が大事な器官だと言う思いがあったのだろう。本当に優しく丁寧に嘗めさすり、愛おしそうに鼻を付けて匂いを嗅いだり、軽くキスをしたりして存分に楽しんでいる様子だ。

 その貴重な牡の匂いがやがて薄れてくる頃には、俺の先走りの汁がじわじわと染み出してくる。
 その極上の味にさらに魅せられた彼女はそれをもっと味わう為にはどうすればいいのかを精一杯考えながら思いつく限りの技巧を尽くしていった。

 そんな彼女の舌技がどんどんと上達していくと、俺の暴発までのカウントダウンが始まった。

「お、おい..もういきそうだ..いいか?」

「ふ、ふぁい。くらはい..おくひにいっはい、くらはい...」

 俺の怒張を口一杯にほうばったまま、出て来る物を一滴もこぼすまいと唇をギュッとすぼめ、頭と舌の動きを加速させていく香。

「ん..む.ぐっ..う.う.んむ...ううううううっ...」

 やがて訪れた爆発の様な射精の瞬間は、俺の視界と思考とそして彼女の口内を真っ白に染め上げていった。

 その宝物の様な極上のスープを口の中に溜め込んだまま、至高の表情で少ししぼんだそれと一緒にうねうねと掻き回している。
 そしてそこからはもう何も出ない事を悟るとようやく チュポン と抜き取った。

 俺の膝の間で惚けたように半目を開き、ザーメンがこぼれないようにやや上を向きながら舌で撹拌していると、その生臭い匂いが辺りに充満し、それと共に彼女の腰がふるふると震え始める。
 やがてたまらなくなった彼女は無意識の様子でそろそろと手を股間に伸ばし、俺のザーメンの匂いをおかずにオナニーを始めてしまった。
 全くの喪心状態でそれに没頭しているにも拘わらず、ザーメンをこぼさない為に喘ぎ声は上げず、喉の奥で んむっんむっ と唸るのみである。

 やがてザーメンが唾液と混ざって増えていき、口内が飽和状態になると、香は思い切った様に一気にそれを飲み込んだ。

「ごくっ、んぐっ、んぐっ、んぐっ、ん、ぐっ、んんんんん、あん、あ、あ、あ、あっ、ああああああああああっ!」

 それが食道を通る感触と共に、自らのクリトリスを指先で圧し潰しながら彼女は壮絶にいってしまった。

 未だに半目を開き、びくびくと体中を痙攣させながら余韻に浸っている彼女を残し、俺はにやける顔を隠そうともせずシャワーを浴びに立ち上がった。

 彼女の唾液でべとべとになった体をようやく流し終え、これからの行為を考えながら鼻歌混じりのご機嫌な調子で浴室を出ると、先程まで彼女が倒れていた所には....誰もいない!?

(っ!!..彼女は..どこだ!?まさか...一人で帰ったのか?)

 慌てて部屋を探すとベッドの奥の隙間に身を屈めて一人啜り泣いている彼女を見つけた。

「ど、ど、どうしたの...?」

 慌てて彼女に駆寄り、肩に手をのばす。

「キャッ!いやーーーっ!来ないで!触らないで!」

 一瞬、何が起ったのか判らず呆然としてしまった俺だが、当然予測出来うる状況だった事に思い当った。

(効果が切れたのか?..まずい..まずいぞ。どうする?)

 あの液体の効果は彼女がイッてしまうと切れてしまうのか?そういえば会社のトイレでもそうだったような...快感に流され、とても科学者とは言えない行きあたりばったりの実験計画に自らの浅はかさを痛感するが、そんな反省は後回しだ。この状況をなんとかしないと最悪 俺は犯罪者になっちまう。
 しかし彼女の様子を見るにつけ、例の液体を飲ませるのは至極難しい。

 とりあえずここは状況を掴むのが先決だ。

「ね、ねえ..急にどうしちゃったの?さっきまであんなに積極的だったのに...」

「わ、私...どうしちゃったの?..あ、あんな..恥ずかしい事するなんて...あんなの私じゃない..もう私..生きて行けないわ...」

「あ、あ、あのさ..もしさっきの事後悔してるのなら、俺は誰にも言わないし、君につきまとったりもしないよ。俺もちょっと調子に乗りすぎちゃって悪かったと思ってるんだ。
 だから、さ ”生きてけない”なんて言わないでよ。俺に出来る事だったらなんでもするからさ」

 打って変わった俺の低姿勢に怯えだけは少し解けたのか、顔を埋めた腕の隙間からそっと俺の方を見ると俺の真意を探る様に見つめている。

「そうだ、まず服を着よう、ね。あ、まず俺からだよね。君、良かったらシャワーを浴びておいでよ。少し落着くから..」

 俺は慌てて自分の服を着ると、彼女の分を拾い集めてベッドの上にそっと置いた。
 濡れてびちょびちょのパンティだけは彼女を刺激しない様にそのままにしておく。

「心配しないで。俺はここで布団をかぶって見ない様にするから。それからゆっくり話合おうよ。..だから..あ、あの..変な気だけは起さないでね」

 少しの思案の後、俺が本当に布団をかぶって動かないのを確認すると、服を抱えて浴室へ走っていった。

 耳の後ろでシャワーの音を聞き、彼女の気配を確認しながら俺はこの後の事を必死に考えていた。

(さっきは動転してたけど、あくまでここに誘い、最後まで主導権を握っていたのは彼女なんだ。その事は彼女も覚えているようだし、液体の存在がばれない限り犯罪者とまでは行かないだろう。
 しかし彼女が自分を傷つけたり、会社を辞めてしまったりされるのも後味の悪い話だ。
 それに彼女を見る事が出来なくなるのもやはり寂しいし、可能なら今度はもう少し旨くやればこんな事態を招かずに洗脳出来るかもしれない。
 その為にもここはなんとかうまく切抜けなければ...)

 肉まで削り取ってるかと思う程長く続いていたシャワーの音がようやく止り、浴室から彼女が出て来る気配を感じると丁寧に声を掛ける。

「もう出てもいいかい?」

「.............はい」

 出来ればずっと出て来るなと言う感じの間があったものの、俺はそろそろと布団を捲り、彼女を見上げた。

「少し..落着いた?」

 そのまま彼女は何も言わず、俺から部屋の反対側にある椅子に腰掛ける。

「あ、あのさ..さっき君がどうしてあんな態度を取ったのか、俺にもよく判らないけど、ちょっと精神的に不安定だったのかもしれない。あの..お互いにね。
 だから..君にはつらいのかもしれないけど..今日の事は無かった事にしてさ..明日からまた..あ、いや..明日は休むといいよ。俺が旨くやっておくから......どう?」

 しばらく目を閉じ考え込んでいた彼女だったが、不意に頭を上げるとそっとつぶやいた。

「ほんとに..誰にも言いませんか?」

「言わない言わない!こんな事社内で知れたら俺もやばいからさ。ね、すぐに昨日までと同じって訳にはいかないだろうけど、ばりばり仕事やってたらその内忘れちゃうって!」

 彼女は俯いたままゆっくりと立上がると、俺に向って頭を下げた。

「じゃあ、よろしくお願いします。あの、それと..今日は、すみませんでした」

「なぁに謝ってんの!俺の方は全然嬉しかったん..あ、いやごめん...」

 俺のおどけた様子にも、彼女の表情が動く気配は全く無かった。

< つづく >

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