催眠術師 鋭次01 (4)(5)(6)

(4) 人形

 13時になると、梨華は、銀行の制服の上に薄いセーターを羽織って、向かいのシティホテルに入っていった。梨華のかばんに1000万円を詰めるのは、偶然にも見つからなかった。お昼休みのせいもあって忙しく、お互い隣りの受付席を見ている余裕などなく、どこのレジや金庫の金が無くなったかなど、気にする余裕がないのだ。そういう状況もあり、梨華は誰にも見つからずに1000万円を持ってくることが出来たのである。

 コンコン。1919号室(スイートルーム)のドアがノックされる。
 待っていたかのように鋭次がドアを開く。そこには、梨華が立っていた。さっきまでの可愛い笑顔が少し違っている。可愛いのは同じであるが、目が、とろーんとなっていた。
「入るんだ」
「はい」
 梨華がドアの内に招かれ、ドアロックとドアチェーンがかけられた。
「ベッドの上に座るんだ」
「はい」
 梨華は、返事をすると、部屋の中央にある、丸形のスイートダブルベットに座った。
 そして、鋭次が、梨華に近づくと、かばんから、1000万円を取り出した。
「あの・・・これ・・・」
 1000万円を渡そうとしている梨華の目は、とろーんとなっている。
 そして、鋭次からのご褒美を欲しそうな目になっていた。
「よしよし。いい子だ」
 金を受け取ると、鋭次は、梨華の額にキスをした。キスをされた梨華は、嬉しそうに、その場に立っていた。鋭次の次の指令を待っているのである。
 梨華の姿を見て、鋭次は、楽しそうに、ほくそ笑んでいた。
(指示通りに、銀行の制服のままで来たな。ふっふっふ、では、少し楽しませてもらおうとするか。)
 鋭次は、溢れんばかりの期待で、指令を出すことにする。

「お前は、今から俺の人形になるんだ!!」
 突然、鋭次は梨華に向かって、言い放った。そして、唇にキスをした。
 突然の指令に、普通の女であれば、何を言っているのかと思うであろう。
 また、会ったばかりの男に、唇を奪われるような事は、絶対にないであろう。
 しかし、梨華は違っていた。鋭次に腰に手を回され、抱きしめられると、梨華も鋭次に、軽く抱きついたのである。そして、顎の先を持たれ、唇を奪われそうな体制になっても、鋭次の目を見つめたまま、素直にキスを受けたのである。ゆっくりゆっくりと、鋭次の唇が、自分の唇に近づいてきたが、梨華は、避けるような事はせず、素直にキスを受けたのである。
 まるで、キスをしてもらうのを待っていたかの様である。
 甘いキスが終わると、梨華は、とろーんとなった目で、鋭次に返答した。
「はい・・・梨華はあなたの人形です」
 唇にキスをされた事により、より深い催眠術にかかったのである。
 鋭次の指令を聞いて、キスをされた女は、深い深い催眠術にかかってしまうのである。
 鋭次は、続いて、指令をする。
「お前は、俺に何をされても逆らってはいけない」
「はい・・・梨華は逆らいません」
「俺のされるがままになるんだ」
「はい・・・あなたのされるがままになります」
「よしよし、それでは、可愛がってやるよ」
「梨華を可愛がって下さい・・・」
 梨華は、鋭次の言葉に、従順に返答をしていた。

 鋭次は、ベッドの横に置いてあるテレビのモニターを見た。
「よしよし、ビデオカメラの角度もばっちりだな」
 モニターは、なんと4つもあった。どのモニターにもベッドの上の2人の姿が映っていた。
 部屋の中央にある、丸形のスイートダブルベットを囲むように、数台のビデオカメラが設置されており、また、高性能なカメラも同じように設置されている。
 見たところ、ベッドは撮影所のような雰囲気になっていた。
 普通の女性であれば、このような雰囲気では、危険を察知して、すぐに部屋から抜け出すに違いない。
 しかし、梨華は、この様子に気づいていない感じであった。
 いや、部屋に入った時点で、鋭次の事しか見えなくなっていたのである。
 そして、鋭次の言われるがまま、ベッドに座ったのであった。
 鋭次の人形になるように命じられた梨華は、これからの様子を全て、ビデオに撮影されてしまうのである。そして、銀行員の衣服を脱がされる時や、下着を脱がされる時には、カメラのフラッシュが、容赦なく、梨華に降り注ぐのある。
 梨華は後に、このビデオとたくさんの写真に、泣かされる事になるのである。

 ベッドの中央に梨華が座らされる。
「このセーターは、邪魔だな」
 梨華が羽織っている薄い水色のセーターが脱がされる。
 そうして、ベッドに寝かせると、胸を触り始め、身体全体を弄び始めた。
「きれいなパンティだな」
 今日、梨華は白地に薄いレース付きのパール色のようなパンティをはいていた。
 その上から、鋭次の指がなめくじのように這わされる。梨華は、
「んっ。うーんっ」
 と、身をよじれらせた。その動きに合わせて、追いかけるように指を動かした。
「さて、こっちの方はどうかな?」
 鋭次の手が胸のふくらみにのびる。胸元のリボンが外される。
 鋭次が、カメラのリモコンを押すと、梨華の姿を、いろいろな角度から写真を撮った。
 続いて、ブラウスのボタンが1つ、また1つと外される。
「銀行の制服ってのは、どこのものも脱がしやすくていいぜ」
 鋭次はこれまでにも、何度か銀行員の制服を脱がせたが、どこの銀行の制服も脱がしやすい形になっていた。鋭次は、あっという間に、全てのボタンを外してしまった。
 その姿も、当然の如く、写真に撮られている。
 制服を脱がせると、白いハーフカットタイプのプラが現れた。
「こいつも邪魔なんだよな」
 ブラのひもが肩から降ろされ、ブラのカップを上に押しやった。きれいな肉まんのようなオッパイが見えた。鋭次は、両手ですくうように揉みほぐした。
「あーん。あんっ!」
 梨華は軽く悶えたが、抵抗しなかった。梨華は、人形なのでされるがままになっていた。
 次に、ペロペロといやらしく乳首を舐める。
「やーん・・・あーん・・・」
 身をくねらせて悶えたが、鋭次の舌は、いつまでも感じる所を舐め続けるのだった。
 ビデオのモニターには、悶える梨華の姿が綺麗に写っているのであった。

(5) 恥ずかしい質問

 オッパイを揉みながら、鋭次は言った。
「俺の質問に答えるんだ」
「はい・・・」
 梨華は、朦朧とした意識の中で、鋭次の声を聞いている。
「俺以外のやつと、キスをした事があるか?」
「はい、あります」
 梨華は、恥ずかし気もなく素直に答えた。梨華は、高校2年生の時、1つ年上の先輩とつき合っていて、何回かキスをした事があった。
 しかし、先輩が地方の大学に行ってからは、別の彼女が出来たらしく、彼女には連絡は来なくなった。
「そうか・・・まぁ、キスぐらい、誰でもしてるか・・・」
 鋭次は、特に気にした様子もなく、次の質問をする。
「では、このオッパイのサイズは何センチだ?」
 オッパイを揺らしながら、鋭次は聞いた。 バカ女であれば、堂々と答える奴もいるかもしれないが、普通の女であれば、恥ずかしくて答えられない質問である。しかし、梨華は今、催眠術にかかっている。なんのためらいもなく鋭次の質問に再び答えた。
「81センチです」
「ふーん。そんなもんか。もう少しあるかと思ったが・・・ これから、83、84に、してやるからな。次は、ウエストのサイズだ。ウエストは、いくつだ?」
「56センチです」
「ほおー。そうか。では、最後は、このヒップだ」
 パンティの上から、いやらしく、お尻を撫でる。
「このヒップのサイズは、いくつだ?」
「84センチです」
 梨華が、男に弄ばれながら、質問に次々と答えていく。普通であれば、絶対に答えるはずがない事を答える。少し前に、初めて会った男に、自分のスリーサイズを教えている。
「よしよし。81の56の84だな。覚えておこう」
 鋭次は、梨華の返答に、満足そうであった。

「それでは、俺以外のやつにオッパイを揉まれた事があるか?」
 鋭次は、キスもしているので、たぶん胸も揉まれているだろうと思いつつも、とりあえず質問した。
「いいえ、ありません。あなたが初めてです」
 梨華が、そう答えた。催眠術にかかっているので、嘘は言っていない。
「そうか! 初めてなのか!」
 鋭次は、うれしそうに喜んでいる。梨華の経験は、キスを数回だけであったのである。
「そうか。では、オッパイを舐められたこともないんだな?」
「はい・・・ありません」
(ふっふっふ、そうか・・・ それでは、これからたっぷりと味あわせてやるぜ!!)
 湧き起こる感情を抑えきれずに鋭次は、にやついていた。
「という事は、梨華、お前は”処女”か?」
 感情が浮つったまま、続いて聞いた。
「はい・・・処女です」
 遂に梨華は、答えてはならない重要な質問に答えてしまったのである。
「そうか。そうか」
 鋭次は、喜びを隠せない。
「よしっ!! 決まりだ!!」
 鋭次は、うれしい声で言った。
「今夜は、たっぷりと可愛がってやるよ!! 処女を失う瞬間をきれいに撮ってやるよ!」
 鋭次は、夜が待ち遠しくてたまらないという様子で言った。
「それでは、お前は今日は何時まで仕事だ?」
「18時までです」
(そうか。では、18時30分ごろだな・・・)
「よし。では、今はこれくらいにしておいてやろう」
 服装を直すように言うと、梨華は最初にドアを開けて入ってきた時のように、制服と薄いセーターを身に着けたのだった。

 鋭次は、梨華が制服姿で来たことを確認し、ここで一度、帰らせる前にビデオテープのパッケージ用のいろいろなポーズをさせることにした。ビデオ映像を利用して、写真を作成する事も出来るが、その場合、精細さに欠き、きれいに出来ないからだ。
 鋭次は、高性能なカメラを持ってきて、梨華に、いろいろなポーズをとらせた。
 銀行の制服姿で、1000万円を渡そうとしているポーズ。
 首を少し左に傾けて、おねだりするような可愛いポーズ。
 制服の胸元のリボンに手をかけて、リボンをほどこうとしているポーズ。
 制服のボタンを1つ外し、2つ目を外そうとしているポーズ。
 スカートを持ち上げようとしているポーズ。
 その他、後で役に立つようなポーズをいくつかとらせて、フラッシュが焚かれた。
 もちろん、その様子は、カメラだけではなく、ビデオにも撮られていた。

 写真を撮り終えた鋭次は、帰る前に、重要なキーワードを梨華に導入する事にした。
「西川梨華、こちらに来るんだ!!」
 そう言って、梨華を引き寄せて、腰に手を回し、抱き寄せると、梨華の目がとろーんとなり、鋭次の目から視線を外す事が出来なくなった。
『お前は、俺に、”可愛い梨華ちゃん人形”と言われると、
 身体の動きが止まり、俺の命令を受ける催眠奴隷になるんだ!!』
「はい・・・鋭次様・・・」
「今から行うキスにより、お前は、”可愛い梨華ちゃん人形”と言われると、
 俺の催眠奴隷になる・・・催眠奴隷になる・・・」
「はい・・・鋭次様ぁ・・・梨華は・・・鋭次様の催眠奴隷に・・・なります・・・」
「ふっふっふ。いい子だ。それでは、誓いのキスをしてやろう!!」
「はい・・・鋭次様・・・んーーー!!」
 梨華の目を見つめながら、強い口づけが行われた。
 梨華は、なぜか、鋭次の目から視線を外す事が出来なかった。鋭次の目を見ていると、強い暗示にかかり、一生解ける事のない、催眠術にかかったのである。
「ふっふっふ。これでお前は、俺の命令を何でも聞く催眠奴隷だ!!」
「はい・・・梨華は、鋭次様の催眠奴隷です。何なりとお申しつけ下さい」
「今夜、たっぷりと大事な儀式を行うからな。楽しみにしておけ!!」
「はい・・・鋭次様・・・よろしくお願い・・・致します・・・」
 そう答える梨華の目は、とろーんとなったままであった。

「それでは、お昼休みの記憶を操作させてもらおうか」
 鋭次は、梨華の目を見つめながら、嘘の記憶を植えつける。
「お前はこれから、駅前のルンルン書店に行き、雑誌を立ち読みするんだ」
 ルンルン書店は、駅前の大型書店である。お昼休みには、サラリーマンやOLがたくさん集まる人気の書店である。
「お前は、14時前になるまで、時間を忘れて雑誌を立ち読みするんだ。今、俺と会った事は忘れるのだ。お前は、13時から14時まで、時間を忘れて立ち読みするんだ」
「はい。私は、13時から14時まで、時間を忘れて、雑誌を立ち読みします」
 梨華にキスをして、強い催眠術をかける。鋭次の催眠術は、記憶を植えつける事も出来るのだ。
「それから、もう一つだ。これから、お前に重要な事を言う。よく聞くんだ」
「はい」
「お前は、18時30分になったら、この部屋に来るんだ」
「はい」
「俺に、処女を捧げるために、この部屋に来るんだ。わかったな?」
「はい・・・鋭次様に処女を捧げるために・・・この部屋に来ます・・・」
「よし、では、もう一度、お前に聞く。18時30分になったら、どうするんだ?」
「はい。鋭次様に、処女を捧げるために、この部屋に来ます」
「この部屋に来ることは、誰にも言ってはいけない。わかったな?」
「はい。誰にも言わないように致します」
「よし!それでは、お前は俺にキスをされると、今言った事を実行するようになる! わかったな!」
「はい。んぐっ!! んーうーん!!」
 梨華の唇が激しく吸われた。梨華の目が、とろーんとなった。なぜか鋭次の目から逃れる事が出来なくなった。鋭次に見つめられながらキスを受けると、鋭次の指令を実行する後催眠暗示がかかってしまうのある。重要な指令の為、約一分間程、キスをした。
 再び、梨華には、深ーい深ーい催眠術が、かかってしまったのである。
 唇を離すと、梨華は何事も無かったかのように、ドアを開けて、ルンルン書店に向かうのであった。
 そして、時間を忘れて、雑誌を立ち読みするのであった。
 そして、しばらくして・・・
「いっけない!もう、こんな時間だわ!」
 時計は、14時前を指している。梨華は、慌てて銀行に戻るのであった。
 もちろん、梨華の記憶は、13時から14時まで、ルンルン書店で立ち読みしたことになっている。
(そう言えば、お昼ご飯、食べてないなぁ・・・)

(6) 集計が合わない・・・

 夕方5時。すもも銀行では、今日の入出金の集計がされていた。
「おっかしいなぁ・・・」
 集計係の真由美が言った。
「どうしたの?」
 別の集計係の先輩の智子が尋ねる。
「1番窓口の集計が、どうしても、計算が合わないのよ。1000万円ほど、出金があるはずなんだけど・・・」
 真由美が、口を尖らせて言う。
「どれどれ、私も手伝ってあげる。んーと・・・ふむふむ・・・うーーん?! ホント!!やっぱり、合わないわね!」
 智子が計算しても結果は同じだった。
「まさか?着服?!」
 真由美が目を輝かせて言う。
「いったい誰が・・・でも、やっぱりこれは・・・ 課長!! 集計が合いません!!」
 智子は、課長に報告する事にした。

 銀行で金が無くなることは、そう珍しいことではない。みんな、大金を目の前にして働いているのである。欲しくなるのは、人間として当然であろう。そんなこんなで、どこの銀行でも年に数回は、着服の事件が起きる。たいがいは、調べられてバレることが多いが、犯人が判らず、迷宮入りする事もたまにある。
 課長が、みんなを集めて、話し合いをした。
「1番窓口の集計が合わない!! 1000万円ほど、出金しているはずだが・・・」
 課長が、厳しい声で切り出した。みんなの顔に動揺と緊張が走る。梨華もびっくりしている。なにしろ、梨華は、今日は1番窓口の担当であったからだ。
「今日の1番窓口の当番は誰かね?」
 続いて、落ち着いた声で、課長が言った。
「私と中村さんと西川さんです」
 年輩の山田ひな子が答えた。
 山田ひな子は、年輩のお母さんで、美人で人気も信頼もあり、みんなから「ひなさん」
「ひなさん」と呼ばれている頼れるお母さんだ。
 あと、中村陽子は、梨華とは、また違った可愛いさで、どちらかと言うと、今風の活発な女性で、ハキハキと物を言う元気な娘である。
 梨華と陽子は、よく食事に行ったり、カラオケに行ったりする仲である。
「このオンライン端末の記録によると、昼休み頃に1000万円の出金があるはずなんだが・・・」
 課長が、入出金レジの端末の記録を見て言う。
「今日の昼当番は、誰かね?」
 課長が問う。
「あの・・・私ですけど」
 梨華が、びっくりしたように答える。
 この様子からは、誰も梨華が犯人であるとは、思えないというほどの様子であった。
「今日の昼休みに1000万円ほどの出金はなかったかね?」
 課長が、びっくりした梨華を気遣って、優しく問う。
「いいえ。私が昼休み当番の時には、そんな大金の出金は、ありませんでしたけど」
 今度は、いつものはきはきした声で答えた。
「そうか。となると、昼休み後だな」
 課長が考えた。
「昼からは、誰が1番窓口で対応してたかね?」
「私です」
 今度は、陽子が返事した。
「では、中村くん。昼から1000万円の出金はなかったかね?」
 同じように、課長が問う。
「いいえ、ありませんでしたよ!! そんな大金なら私、覚えてますよー」
 陽子が、ハキハキと答える。
「うーーむ・・・ 八方ふさがりだな。しかたない、それでは、悪いが全員、個人的に聞かしてもらう事にする。気を悪くしないでくれ」

 この銀行では、着服などが起こると、この方法で確認する事が、たびたびあった。
 それは、課長クラスの者が面接官となり、”同時間に全員に個人に聞く”という方法である。最初は、順番に聞いていたが、それだと2人以上が犯人の場合、始めに問われた者と後の者が話を合わせて、バレないようにするからである。
 しかし、この方法だと同時に面接が行われるので、話を合わせられることもない。
 また、話の食い違いから、犯人が以外と判かったりする。というわけで、今回も この方法が用いられたのである。
 梨華は、別の担当の課長との面接であったが、緊張はしていたが、先ほどと同じようにはきはきと答え、自分の知っている事を正直に話した。
「犯人が判かれるといいですね」
 と、協力的に話した。普通、個人的に面接すると、バレることがあるが、本人が1000万円を持ち出した犯人とは思っていないのだから、なおさらバレにくい。
(自分はお昼休みは、ずっと立ち読みをしていたのだ。)
 と、記憶しているので、この様子からは、どう考えても梨華は犯人には見えなかった。

 結局、今回の事件は迷宮入りとなった!!
「これからは、入出金のチェックやセキュリティを強める!!」
 などという話で終わったが、結局、犯人はわからない。課長等は、悔しがったが、次は、捕まえてやる という気迫が感じられた。
 しかし、このような事件はもう起こらないのであろう。この銀行では。
 鋭次は、同じ銀行は二度と狙わないからである。

「いったい、どうやったのかねぇ・・」
 ひなさんが、冗談混じりに言う。
「あなた達がしたようには見えないし、犯人は頭のいいやつだねぇ」
 ひなさんは、感心している。
「明日から、羽振りがいい人いないかねぇ・・・ おごってもらうんだけど・・・
 さあ、今日はこれくらいで帰る時間よ」
 時計の針は、18時前を指している。
「はぁーい」
 陽子が明るい声で返事した。
 こうして、この事件は迷宮入りしたが、鋭次はこのように金の補充をしているのだった。
 実際は、”金の補充だけ”ではないのだが・・・

「あーぁ、疲れちゃった。パァーとカラオケにでも行かない?」
 陽子が、さっきのうやむやを晴らしたいかのように言った。
「ごめん。今日、用事があるから」
 梨華は、普通に明るい声で断った。
「そう。残念ね。じゃあ、彼氏と飲みにでも行こうかな?」
「うん。がんばって!」
「じゃあ、また明日ね!」
 陽子と梨華は、銀行の勝手口で別れ、それぞれ、別の所へ向かうのであった。
 梨華の様子は、いつもどおり明るかったので、この様子からは、とてもこれから・・・

< つづく >

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