BLACK DESIRE #22-3

7.

 成り行きで宮子を抱く事を承知したけど、改めて裸で浴槽の中に立って微笑んでいる少女を前に、僕はすっかり腰が引けていた。だって、その表情は少し赤らんではいるけどいつも僕に向けられていた親しみのある笑い顔で、その裸身はバランス良く整って滴る水滴が光を反射し、眩しく神々しい姿だったからだ。そして、僕はその内に気高く孤高の強さを秘めた魂が瑞々しく息付いている事も知っている。僕程度の矮小な魂の虫けらじゃ、とてもとてもそれを汚す事なんて烏滸がましい。
 そんな風に僕が怖じ気付いていると、宮子は僕の手を取ったまま励ますように口を開いた。

「どうすればいいかなんて、考えなくて良いですよ」
「へ? う、うん……」
「私の事より、達巳君らしく興味にまかせて、いつも他の娘にしてたようにしてみてください」
「……いいの?」
「もちろんです」

 宮子の勧めにここは素直に従っておこう。となると……せっかく女の子と一緒にお風呂のシチュエーションなんだし、アレかな? エッチな事には切り替えが早いのが僕の良いところだ。自画自賛。

「じゃあさ……洗いっこしない?」
「お互いに相手の身体を洗うんですか?」
「っていうか、僕に安芸島さんの身体を洗わせて欲しいな」
「……えっちですね、達巳君」

 わーい、褒められましたよー?
 いい加減身体も熱くなって浴槽の中に居続けるのもしんどくなってきた事だし、ここからは洗い場の方へ移ろう。ちょうどここの浴室は壁と同じ色の清潔で柔らかいマットを敷いているし、色々やるにもちょうど良さそうだ。僕は宮子と一緒にそっちにあがると、「座って座って」と彼女をイスに座らせた。鏡に向かって内股気味に膝を付けてすとんとお尻を降ろす宮子。その後ろに立ち、ドキドキしながらボディーソープを手に取った。

「じゃあ、背中からするから髪を上げてくれる?」
「わかりました」

 両手を首後ろにやって髪を持ち上げてくれる。少女の細いうなじから滑らかな背中にかけてが露わになり、浴室の照明を反射して眩しく光っている。僕は泡立てた両手をそーっとそのうなじの辺りに伸ばした。

「いくよー?」
「はい」

 コクリと首が動くのが見えたので、僕はぺたりと少女の肌に手を触れた。一瞬ピクリと肩が震えるのが見えたけど、そのままするすると泡を伸ばすように下へ下へと手を動かして彼女の背中を撫でていった。柔らかい肌の下に彼女の肩胛骨や背骨のとがりが感じられる。だけどそれは男の僕の凸凹した感じと違い、指先に心地よいまろやかな色気の様なアクセントを僕に与えてきた。こんなところまで女の子って優しいんだな、とちょっと感動する。
 腰骨の上まで泡だらけにして、さらにその下へ。イスに乗った宮子のお尻の背中に近い方をふよふよと撫でていく。2つの膨らみの間のへこみに指先をちょっと滑り込ませると、宮子は声こそ上げなかったが「ん……」と艶っぽく鼻を鳴らした。ちょっとびっくりしたのかな?
 お尻を離れ、今度はわき腹から上に向かっていく。少女の肋骨を辿るように手の平を滑らせ、敏感な腋の下へ。筋と筋の間の窪みに指を入れ、丁寧に洗ってあげる。今まであんまり意識したこと無かったけど、この部分も股下と同じくらい女の子のあまり見られないチャームポイントの1つなんだよなぁ。

「……良し! じゃあ次……前、やるよ?」
「は、はい」

 あれ? 宮子の声が上擦ってる? もしかして、腋の部分を撫でられて感じちゃったのかな? まさか宮子のウィークポイントだったのかな。それなら……。
 僕は敢えて宮子の前に回らず、そのまま背中から腋の下を通して手を彼女の胸に伸ばした。そして、まずは彼女の乳房を持ち上げるように手を添える。

「達巳君……?」
「ああ、手はもう下ろしていいよ」

 戸惑った様子の宮子に構わず、僕は両手の柔らかい膨らみを優しく揉んでいく。下から上へ、揉み上げて離し、ふるんふるんと弾けさせたり、指先で触れるか触れないかのソフトタッチで表面を撫でたり、親指と人差し指の間に掴んで先端部へと軽くしごくようにスライドさせたり。更に先ほど判明した宮子の弱点である腋の下を腕の方でさすさすと。たまらず、少女は熱い吐息を漏らした。

「あっ……はぁっ……」

 耳のすぐ側の場所からのその声に背筋にゾクゾクと震えが走る。宮子の首筋に赤みが差し、触れている背中の体温が更に高くなったようだ。……興奮、してる? 僕はいい塩梅と感じて宮子の胸を揉んだ両手のまま、人差し指を持ち上げてその先端部に軽く触れた。

「あんっ……!」

 ピンと張り詰めた感触と同時に、間違いなく宮子が喘ぎ声を漏らした。その声にズキッと痛みを感じるくらい股間が反応する。こ、これは……ヤバい、女の子を感じさせるって、こんなに気持ちいいものだったんだ……! 声だけで射精してしまいそうなくらい、僕の感覚は宮子に向けて研ぎ澄まされている。かつて三繰によって早坂と接続された時くらい、今の僕は宮子の感じている快感と同調している。
 しばらく、夢中になって宮子の胸の先端部だけをいじり続ける。堅くなったそこを人差し指でこねくり回し、親指も使って摘み、扱き、さらには伸ばす様に引っ張ってみる。調子に乗って痛みを感じそうな事までしているのに、宮子は小さく喘ぎ声を上げながら僕にされるがままにしている。そして、ついに耐えきれなくなったのか手を僕の手に乗せて押さえ、身を屈めて背中を離した。

「あぁっ……はぁ……はぁ……た、達巳君……」
「……」

 身体を丸め、息を切らせながら僕の名前を呼ぶ宮子。僕はそんな彼女を見下ろしながら、その膝が緩んで太股の間が開いている事に気が付いていた。「こっちも……いい?」と言いながら、了承を待たずに胸から手を下ろしてその部分へ片手を侵入させる。さらっとした細い茂みの感触の直後に、ぬるっとした熱くて柔らかい割れ目の膨らみの感触が指先に感じられた。

「あんっ……!」

 割れ目に指先を含ませるように押し入れると、すぐに小さな粒がちょん、とそこに触れた。女の子の一番敏感なところだ、たまらず宮子が今までで一番大きな声で鳴く。イスに座って身体を前に倒しているからそれ以上、奥まで指を進めることができない。しかし、僕は構わずその突起を指先でつるつると撫で回した。「ひぅっ」と喘ぎとも違う小さな悲鳴のような声を上げて少女の腰が跳ね、ほんのちょっと隙間が空く。これ幸いと親指も一緒に入れ、その部分をくりっと摘んでみた。とたん、「ゃんっ……!」と声を上げ、宮子は膝を閉じて僕の手を押さえ込んだ。

「ま……待って! 達巳君、待って下さいっ……!」

 眉根を寄せ、何かに耐えるようにしながら必死に僕に呼びかける宮子。全身の肌がピンク色に染まり、内から吹き出そうとする衝動にぷるぷると震えている。しかし、手を押さえつけられていたって指先は自由に動く。僕はなおも執拗に彼女の敏感な突起部をいじり続けた。

「あっ! はぅ……だ、だめっ! お願いです、止まって下さい!」
「……イキそうなの?」

 かくかくと顎を動かし、肯定する。そして、必死の様子で声を張り上げた。

「お願いっ……! 最初は、達巳君と一緒がいいですっ……!」
「……あ」

 その哀願に、思わず手が止まった。少女の身体を背中から捕らえていた手が緩み、宮子はくたくたと力が抜けるようにイスから滑り落ちた。マットの上に女の子座りで両手を付き、はぁはぁと息を荒げている。額に浮いた汗が顎を越え、喉を滑り、胸の膨らみを辿ってその先端部からぽたぽたと雫になって落ちていった。背中側もびっしょりと汗に濡れている。

「ご、ごめん……」

 思わず出た謝罪の言葉に、宮子は顔を上げ、潤んだ瞳だけで笑ってくれた。そして、上半身を捻って僕の方を見つめたまま壁に手をつき、ゆっくりとお尻を持ち上げて膝立ちの状態になる。

「私だけじゃなくて……達巳君も、一緒に気持ち良くなって下さい」

 その言葉と、僕の方へ向けて突き出された彼女の下半身の光景にごくりと喉が鳴った。
 臀部の2つの丘の中央にある窄まりは彼女の身体の欲求に沿って、さっき見た時より僅かに解れて緩んでいるように見える。座っていたときに前から垂れてきたのか、どろっとした液体でそこは十分に潤って光を反射していた。そしてそこが、少女の少し荒い呼吸に合わせて僕を誘うようにひくついている。
 更にそこから下には、ねっとりと彼女自身の体内からこぼれた粘液で張り付いた恥毛に守られた宮子の秘部が。こちらも同じく呼吸するように動き、内に秘められた襞が僅かに見え隠れしている。そして、その隙間からはとろとろと透明な愛液が今も溢れ続け、太股の内側を通って膝からマットにまで垂れ落ちていた。

 びくりと股間のモノが僕の意志と関係無く主張する。この娘を、いや、この雌を、早く味わせてくれ。この少女の体内に、お前という楔を刻み込んでやれ、と。僕の理性は、もはやその声に抗うだけの正気を保つ事は不可能だ。

「安芸島さん……挿れるよ」
「はい……達巳君っ……!」

 片手でお尻の膨らみを掴み、親指で中央部をぐいっと外側に押し開いた。感じた通りそこは柔らかく解れ、鮮やかな内部を僕に晒す。膝立ちのまま膝を擦って前に進み、空いている手で僕のモノの先端部を開いたその場所にあてがった。粘膜と粘膜が触れ合いそれだけで腰が震えるほどの感触が脳を直撃する。
 宮子の方も僕の動きに合わせ、膝をもう少し開いて高さを調節してくれた。僕の膝がその間に割り込み、少しだけモノの先端部がお尻の谷間に埋没する。強い抵抗を予想しながら、腰に力を入れて押し出した。

「うぁっ!?」
「あんっ……!」

 ちゅるっと、呆気ない位簡単に僕のモノが宮子のお尻の穴に滑り込んだ。ぐにっとした彼女の熱い肉壁がまるで自ら招き入れる如くそれを引き込み、根本から強く締め付ける。肉棒の中身を丸ごと吸引する様な内向きの圧力に、強制的に尾てい骨の辺りからモノの先端に向けて快感が迸った。

「うっ……ぐっ……何だこれっ! スゴっ……!」

 ビキビキと先端のカリの部分が膨らんでいくような錯覚を覚える。先端の鈴口も大きく開いて濁液を吐き出したがっている。ただ包まれただけなのに、なんて凄まじい快感なんだ!
 たまらず腰を引くと、ぎゅうっと絞られた根本からモノが抜け出るにつれて先端部へと快感が凝縮されていく。ひ、非道い……! 挿れても抜いても気持ち良さの質が変わるだけで何処にも待避できないじゃないか!

 完全に抜こうにも半ばめくれた宮子の尻穴はカリの部分をしっかり握って離さない。そのまま精液を絞り出されそうな感触に、僕は歯を食いしばってもう一度中へとそれを押し込んだ。

「あぁ、はぁ~……」

 再び、モノの全部が熱い体内の感触に包まれる。もはや僕のそれは何時暴発しても良いくらい張り詰め、薄皮一枚のバランスで堅さを保っている。脳内を浸食する快感は思考を白く染め、腰から下がふわふわして感触が無くなってきた。何だか全てがどうでも良くなってきて、このまま何も考えずに放出してしまえば良いんじゃないかと思った。

「た……つみ……くん、気持ち……良いです……か……?」

 その時、切れ切れに少女の声が耳に届いた。あれっ?と眼を瞬かせ、正面の鏡に視線をやると、いつの間にか壁から手を離した宮子は肘を付き、上半身がマットに伏せた姿になっていた。胸が身体の下で押しつぶされて左右にはみ出ている。はぁはぁと荒い息で首を曲げて横目で僕を見上げ、微笑んでくれていた。

「達巳くんが、気持ちいいなら……良かったです……」
「……っ!」

 ずくん、と胸の奥で強い衝動が沸き上がった。居ても立ってもいられず、彼女の腰から手を動かして脇腹を掬い、背後から抱き締める。

「たつ……え!?」

 ぐっと引っ張って宮子の身体を引き起こした。そのまま、マットの上に腰を下ろし、ちょうど僕の股間の上に宮子が座った状態になる。今まで以上にお互いの腰が密着し、まるで宮子の内部に肉の杭を突き立てた様でゾクゾクと快感が走る。

「あ……安芸島さんっ!」

 目の前の首筋に思わず唇を付けた。同時に片手で彼女を抱き留めつつ、もう片方の手を下ろして先ほどの様に股間の茂みの中に埋没させる。さらに、脚を曲げて胡座をかくと身体を揺すって突き刺さった肉棒を上下させた。とにかく、全身全霊をもって彼女を気持ち良くさせなければならないと、今それができるのは世界で僕ただ1人しかいないのだと、強い使命感がぎりぎりの快楽の縁にいる僕を踏ん張らせていた。

「ぅうっ……んくっ……達巳……くん……」

 宮子の方もとろけたような口調で僕に視線を送る。その眼は焦点がはっきりせず、快感に潤んでいる。ふらふらと泳いでいた手が、僕に向かって差し出された。それに応え、僕も手を離してその指に指を絡めて手を握る。

「あっ……はあ……! ダメ……もう……!」
「安芸島さんっ! 僕も……一緒にっ!」
「たっ達巳くんっ! たつみくんっ……!」

 僕の手を握る手にぎゅっと力が込められ、仰け反るように宮子の身体が大きく跳ねた。それを逃がすまいと、僕もしがみつくように腕に力を込めて彼女の中心へとモノを押し込み、全身の快楽をそこから解き放つ。

「あぁ……っ! たっ……つみ……くんっ……!」
「ぐっ……宮子っ!」

 どばっと、まるでダムが決壊したような強烈な感触と共に宮子の体内に僕の精液が噴出する。いつもならびゅーびゅーっといったレベルの射精が、開ききった尿道からどびゅるどびゅると重く粘った振動と共に吐き出されていく。
 痙攣する少女の体内を残さず白濁で埋め尽くすかの如き大量射精。それはあっという間にモノの収まった直腸部を埋め尽くし、しかししっかりとくわえ込んだ口から溢れさせること無くその奥へ奥へと飲み込んでいく。熱い僕の欲望の固まりが新しく彼女の奥底へと侵入する度、宮子は身体を震わせてイキ続けた。

「んぐっ……はぁっ……!」

 どれほどの時間、そうやって宮子の中へ精液を送り込み続けたんだろうか。時間感覚がすっ飛ぶくらいの白熱の快感がようやく過ぎ去り、僕は息をついた。モノはまだ余韻にびくびくと彼女の体内で震えているが、もう新しい濁汁は送られず尿道に残った分をこぼしているだけだ。
 抱き締めていた手が緩み、ふらっと宮子の身体が前に倒れかけた。

「おっと……!」

 僕の方も力の入らない手で支えようとしたが、宮子はなんとかマットに両手を付いて前のめりに身体を支えた。その勢いでお尻が上がり、ぬるるっと彼女のお尻の穴から僕のモノが抜けかける。

「うぅっ……!」
「あぁ……ん……」

 またも、送り込まれる快感。だが、彼女自身に併せてその部分も完全に脱力してしまっているのか、イく前の様な無闇矢鱈と絞り上げるような感触は無い。そのまま半ば堅さを失ったモノをぬぽっと吐き出した。とたん、緩みきったそこからごぽっと白濁液を逆流させる。一瞬、力を失って大きく開いたままの宮子の肛門の内部に僕の精液がたっぷりと詰まっている様子が視界に映り、脳裏に焼き付いた。

「はぁ……はぁ……んくっ……はぁ……」

 宮子は僕から身体を離すとぺたんとお尻を付けた女の子座りで座ってしまったので、そこの様子は見えなくなってしまった。だが、まだ彼女の意志によらない排泄は続いているようでお尻の部分のマットの上にごぽごぽと白い粘液が広がっていく。その光景に、この清純な少女の体内を僕の欲望で汚してやったのだという何とも言えない征服感を味わった。そして、快感の余韻によるものか茫洋とした視線で前を見つめている宮子の横顔に目をやる。

「……っ!?」

 その時、突然宮子の瞳から、ぽろっ、と真珠のような大粒の涙がこぼれ出た。ぎょっとして僕は息を飲む。思考を止めた僕の見つめる先で、ぽろぽろぽろぽろと、少女の涙は後から後から溢れてくる。止まらない涙に僕は狼狽え、少女の前に両手両膝を付いて顔をのぞき込んだ。

「ど、どうしたの!? や、やっぱり嫌だったの!?」
「え……?」

 宮子は僕に言われ、初めて自分の涙に気が付いたとばかりに手で眼をこすった。そして、慌てて顔を背けて涙を拭う。

「あ……ち、違うんです。これは……」
「痛かったの? く、苦しかったんなら言ってくれれば!」
「違うんです、そうじゃないんです。心配しないで、達巳君」
「だ、だって、そんなに涙が……」
「だから、違うんです!」

 宮子はもう、涙を止めることを諦めて僕の方に向き、代わりに泣きながら笑って見せた。赤らんだ顔と、その頬を伝う涙。眼は細められ、そして唇は綺麗な形に微笑んでいる。そのどこか超然とした美しい表情に僕は視線を奪われる。

「違うんです、達巳君……これは、嬉し涙なんです……」
「嬉し……涙?」
「達巳君に抱いてもらったんだ……ちゃんと、愛してもらえたんだって思ったら……涙が、止まらなくなっちゃって……」
「……!」

 ざあっと、強烈な風が僕の中を吹き抜けた。雑多な瓦礫や石くれ、倒木や枯れ枝を吹き飛ばし、そして、その中に芽生えていた1つの若木を陽の光に晒す。その瑞々しく、青々とした新芽が僕の心に新しい感情が根付いた事を知らしめる。思わず、僕は宮子の身体を正面から抱き締めていた。

「宮子……!」
「達巳君……?」

 『愛おしい。』
 『離れたくない。』

 僕はその新しい感情の命じるまま、華奢なその身体を抱き続けた。宮子もまた、やがてそれに応えるように僕の背中に手を伸ばし、抱き寄せる。
 肌と肌を密着させ、お互いの心すら浸透させようとするように抱き合う僕と宮子。やがて、その想いは共通の願いへと昇華していく。

 『……もっと、繋がりたい。』

 抱き合う手を少しだけ緩め、目線を合わせる。宮子は微笑み、ちょっとだけ顔を赤らめながら僕の耳に囁いた。

「……隣に、仮眠室が有るんです」

 僕と宮子は黙ってこくりと頷き、そして二人で抱き合ったまま立ち上がった。

 仮眠室のベッドの清潔なシーツに宮子を横たえると、僕は先ほどの続きとばかりに彼女の全身に口付けしていった。宮子の唇、頬、喉、うなじ、髪、胸、乳首、腋、指先、膝、爪先、ふくらはぎ、お臍、そして彼女の秘部。彼女自身に自分の膝裏を持って股を開いてもらい、割れ目を指で押し開いて突起を口に含み、膣口から新しく溢れる愛液を啜る。さらにはお尻を左右に開いて口を寄せた。

「た、達巳君!? そこはっ……!」
「いいんだ、僕がした事なんだから」

 赤くなっている肛門を引き延ばし、そこに舌を差し入れて内側まで愛撫する。宮子は懸命に指を噛んで耐えていたが、僕の舌先が上の方をちょんちょんとつつくと「うくっ……!」と堪えきれない喘ぎを漏らした。舌を抜くと、僕の唾液か上から垂れてきた愛液かそれとも別の体液か、とにかくねとっとした透明の粘液が僕の舌先と半ば口を開いた宮子の肛門の間に淫靡なアーチを作る。そのまま、少女の身体を折り畳んだ体勢のままで僕は再度自分のモノを彼女のお尻の中に侵入させた。

「あっ、あっ、あっ……たっ、たつみくんっ……!」

 宮子は両脚を自分の身体の左右に振り上げ、自由が利かない。僕がその上に覆い被さってモノを出し入れしたり、円を描くように中をコネると面白いくらい簡単に宮子は高まっていった。シーツを掴む手にぎゅうっと力が込められ、アイロンが掛けられピンとしていたそれを皺くちゃにしてしまう。爪先の指がきゅっと縮み、宮子は潤みきった瞳で手を差し伸ばして僕を求めた。顔を寄せると、首筋にきゅっと手が巻き付いて抱き寄せられる。そして肌を密着させた瞬間、瘧のように宮子の身体が跳ねて絶頂を迎えた。激しく収縮する宮子の肉壁の感覚と、耳元から脳内に直接響きわたる彼女のイキ声にたまらず僕も2回目の射精をしてしまう。

「ああ……達巳君……」

 びゅくっびゅくっと中に出されつつ、イキながら宮子は満足そうに微笑みを浮かべていた。

 その後、放出も収まったので彼女の中から抜こうとすると珍しく慌てた様に宮子がストップをかける。

「ま、待って下さい。もう少しだけ、このままで……」
「? 良いけど……なんで?」

 顔を赤くして俯く宮子。……あ、そうか。今抜いたらまたさっきみたいに大逆流してベッドが使い物にならなくなっちゃうか。

「じゃあ、またお風呂に戻る?」
「……お願いします」

 という訳でまたも僕たちは浴室に戻ってきた。繋がったまま、腰を密着させたまま裸で通路を歩くのはちょっと刺激的で彼女の中で再びむくむくとあれが首をもたげてしまった。それに当然宮子も気が付いて、ちょっと困ったように顔を赤くして笑っていた。調子に乗った僕は宮子に恥ずかしいお願いをしてみる。

「ねえねえ、お尻から精子が出るとこ、じっくり見させて欲しいんだけど?」
「……達巳君、えっちですよ」

 またまた褒められましたぁー!
 宮子が真っ赤な顔で頷いてくれたので、彼女には浴室のマットの上で浴槽の縁に両手を置いてもらい、立ちバック姿勢を取ってもらう。「じゃ、抜くよ」と宮子の背中に声を掛け、コクリと首が頷くのを確認してからぬるりとモノを引き抜いた。

 どぽっ、と空洞を晒す宮子の肛門から僕の流し込んだ精液が勢い良く溢れてきた。筋が伸びきって全く力が入らないのか、縁の部分はふるふると震えるばかりでぽっかりと穴を開いたまま後から後からぼたぼたとマットの上に白い粘液を落とし続ける。

「うわぁ……」

 思わず漏らした感嘆の声に、宮子は更に首筋を赤く染めて俯いた。

 1分くらいそうやってだらしなくお尻から白濁液を漏らした後、宮子のお尻の穴は何度かぱくぱくと収縮を繰り返した後にきゅっと窄まり、オマケの様にぴゅるっと精子を一筋吹き出してから完全に閉じた。ああ、良かった。このまま開きっぱなしになっちゃったらどうしようかと。
 精液排泄を僕にじっくりと観察されてのぼせたように真っ赤な宮子はさておき、僕の股間と悪戯心はすっかり勢いを取り戻しつつあった。大丈夫かな、今ならいけるかな? 僕は今の勢いを逃す訳にはいかないと宮子に更に「お願い」を頼み込む。その要求に対し宮子の反応は。

「……やっぱり、するんですね」
「予知で見えてた?」
「いえ。ただ、達巳君がこの学園の生徒達に行わせた行為は、別の世界においては何時でも私が行う可能性がありました」
「へえ」
「だから、プールに遊びに行くのや、裸で掃除したり、寮の外回りにマーキングしたりするのは私だったかもしれなかったんです」
「……良く知ってる事で」
「『覚えていた未来』を私以外の誰かに置き換えてみただけですから」

 そう言って宮子は風呂の縁にこっち向きに座り、膝を開いた。がに股気味にはしたなく太股を一杯に広げ、僕にその中央部の割れ目を見せつけるようにする。

「そっちの世界での君も見てみたかったな」
「……いいですよ。達巳君が望むなら、いつでも」
「ほんと!? 是非お願いします!」
「ええ。では、また次の機会に」

 顔を赤らめつつ微笑み、宮子は僕に対して両手の指を使って自分の秘部を割り開いた。片手で膣の中が見えるくらい一杯に左右に広げ、さらにもう片方の指を使ってその上の小さな排泄口をきゅっと剥き出しにする。僕はその姿に股間のモノをビンと立てながら宮子の膝の間に割り込んでしゃがんだ。目の前に少女の尿道が口を開いてひくついているのがはっきり見えた。

「……そこだと、かかっちゃいますよ?」
「お風呂だし問題ないよ! ほら、早く早く!」
「もう……そんなに私のおしっこ、見たいんですか?」
「見たいし、音も聞きたいし、匂いも! 全部だよ、全部! 君の全てが知りたいの!」
「ふふ。そんな風に言われたら、仕方ないですね」

 宮子は半分困ったような眉をしたまま僕の好きな微笑みを浮かべ、頷いた。そして割れ目を左右に開いていた指をおしっこの穴の周囲に持ち替え、その部分が更に見えやすい様に上下左右一杯に拡げてくれた。ぱっくりと、それこそ尿道の内部の壁が見えるくらいに大きく口が開く。その光景に僕は拳を握り締めてごくりと唾を飲み込んだ。

「達巳君。私がおしっこを出すところ……見てて下さい」
「う、うん」

 宮子は僕を待たせることなく、すぐに放尿を開始した。ぴゅうーっと拡張された尿口を通って薄く色付いた彼女の尿が一直線に飛び出てくる。それはじょろろろ……と浴室のマットに弾け、幾らかは僕の身体に飛び散った。更に、特有のアンモニアの混ざった匂いが立ち上る。

「わぁっ……すごっ!」

 僕の歓声に宮子は恥ずかしそうに俯きつつ、踵を少し浮かせてさらに脚を水平に近いくらいまで開き、股間部を強調する。そして指先を秘部に強く押し付け、放尿中の尿道をなお一層菱形に押し拡げて僕に見せつけた。小さいが完全にぱっくりと開いたそこは、薄い水流の向こうに内部の粘膜を光らせて僕の視線に晒されている。

「見えますか? 私のおしっこの穴……」
「うんっ! うんっ! 中まで見えているよ!」

 僕はそんな宮子の姿に有頂天になって手を叩かんばかりに興奮していた。

「凄いや! 生徒会長がおしっこするとこ、こんな近くで見ちゃったよ!!」
「ええと……達巳君が喜んでくれて、私も、嬉しいです……」
「うん、ありがとう!」

 お嬢様達の秘密の花園・星漣女学園。その現役最高位の生徒会長、安芸島宮子の放尿姿。しかも、恥ずかしがりながらも観客に見せつける様に自ら股間を開き、おしっこの穴を指で大きく開いて! 更には顔を赤らめて笑顔を見せながら! その感動的な光景は、宮子への愛おしさで静まりつつあった僕の獣性を、再び檻から解き放つに十分なインパクトを持っていた。
 僕はやにわに立ち上がり、宮子の腋の下を持って持ち上げた。

「えっ!? た、たつっ!……まだっ!」
「我慢できないよっ!」

 ほとんどの女の子は放尿を途中で止められないってのは僕も知識と実践的経験で知っている。僕は股間からちょろちょろとおしっこを出し続ける宮子を壁に向けると、さっきまでより一回り大きくなってるんじゃないかってくらいカチカチに堅くなっているモノを彼女の股の間に差し入れた。
 最初の一回はつるりと滑ってその部分を擦り、熱い彼女の尿が竿の部分に降りかかる。一度腰を引いてお尻を掴んで左右に無理矢理開いて狙いを付けると、ためらい無く中央の窄まりに突き挿れた。

「あぅっ……!」

 ぐぬっと若干の抵抗が有ったが、それまでの挿入ですっかり僕のモノのカタチを覚えた宮子のお尻は大して彼女を苦しませることなく根本までそれを飲み込んだ。興奮で自分の心臓が爆発しそうなくらい大きく鼓動しているのを感じつつ、僕は軽く膝を曲げて宮子の脚の裏に手を這わせた。そして、せーので膝裏を持って一気に彼女の身体を持ち上げる。

「きゃぁっ! わっ……あっ……たっ、達巳君!?」
「見て見て、鏡見てよ!」
「あ……きゃあっ!?」

 今の宮子は、火事場ならぬ濡れ場の馬鹿力で僕に持ち上げられ、赤ちゃんにおしっこさせるポーズになっている。しかも、本当におしっこを漏らしながら、さらにお尻を僕に犯されているのだ。宮子は自分の広がりきった肛門に根本まで沈む僕のペニスと、その上で熟れきって淫らに粘液をこぼす秘部、さらにその隙間からちょろちょろと小水を鏡へひっかけている自分の姿に気が付き、真っ赤になって股間を押さえようとした。

「ダメ! 隠さないでさっきみたいに見せつけて!」
「えっ!?……あ、うぅ……わ、わかりました……」

 うはぁ、僕の事を何でも受け入れるとは言ったけど、本当にほんとに言う事を聞いてくれるとは。宮子は僕の指示したとおり、顔を真っ赤にしたまま淫部を手で開き、鏡とそれを見つめる僕へ膣口まで晒して見せた。当然、そのちょっと上からおしっこが出続けているのもばっちり確認できる。モノの先に、少女の小水が流れる微細な振動が腸壁越しに感じられた。
 俄然やる気の出てきた僕は、そのまま腰を上下して彼女の直腸への突き込みを開始する。

「あっ! あんっ! あんっ! ああっ!……」
「はあっ! はあっ! えいっ! うりゃっ!」

 半ば意地の様になって宮子を持ち上げたまま腰を振り続ける。宮子の方も上下動におしっこをそこら中にまき散らしながら深く尻穴の奥を抉られる快感におとがいを反らせ、爪先をきゅっと縮めている。だけど、そんなに乱暴にされているのに宮子は言いつけ通り尿道と膣口を晒す体勢を崩さない。少しきつくなってきた。

「うぅ、うぅうう~~っ!!」

 宮子をべたりと鏡に押し付け、その後ろからのし掛かりつつ遂に限界が来て僕は彼女の中に精液をぶちまけた。びゅっくん、びゅっくんとポンプのようにモノが脈動して彼女の直腸に白濁した粘液を詰め込む。鏡のガラス面にカエルの様に張り付けられた宮子はその動きに合わせてびくんびくんと痙攣し、今だに股間部からはだらだらと黄色く色付いた液体が締まり無く垂れ落ち続けていた。

「……ぷっはぁ~!」

 いつの間にか息を詰めていたため、大きく口を開けて浴室内の空気を体内に取り込む。そこはすでに石鹸の匂いとおびただしい精液の匂いと宮子の小水の匂いが入り交じってものすごい事になっていた。だが、その混合臭は却っていやらしさを増して僕の股間を元気にするだけだ。
 僕は宮子の肛門からモノを抜き、持ち上げていた彼女をすとんとマットに下ろすと、その足首を持ってごろんと仰向けに転がした。「きゃっ!?」と戸惑いの悲鳴を上げる彼女に構わず、宮子の股間に取り付き、先ほどまで放尿を続けていた穴を指で力任せにめいいっぱいに引き延ばした。くぱっと小さいながら奥の方までのぞき込めるくらいしっかり開いたのを見てニヤリと笑いを浮かべ、そこに今だにびゅくびゅくと残滓を吐き出している自分のモノの先端部をあてがう。

「ぐっ……入れぇっ!」
「あ、嫌っ、熱いっ……!」

 お互いの尿道口をくっつけて宮子の体中への射精。僕はそれこそ彼女の膀胱まで精子で一杯にするくらいのつもりでそこへ汚濁を吐き出し続けた。まさかこんなところに僕の精液を入れられるとは思ってなかったのか、宮子は嫌々をするように首を振っているが、それでも手足を使って僕から逃げようとはしない。そのまま、僕にされるがままに最後まで尿道内への射精を受け入れた。

「うっ……ふぅ……はぁー、ふぃー……!」
「……うぅ……」

 出し終えた僕は、宮子を放り出したまま清々しい気持ちで脚を投げ出し手を後ろについて天井を仰ぎ見た。ぴこんと元気なままのイチモツも、いろいろな粘液をまとわりつかせたまま揃って上を見上げている。ああ~、何かもう、すっごい満たされた感じだ。なみなみと溢れるくらい満たしたのは僕の方なのにさ、おかしいね。
 そうやって満足げに僕がもう少しで鼻歌すら歌いそうに良い気分でいたら、突然目の前に影がかかり、腰にずしっとそれなりの重さの物がのし掛かってきた。びっくりして目線を下ろすと、そこには宮子が脚を一杯に広げて跨がっている。

「え!? な、何!?」
「……随分と、達巳君に好きなようにされちゃいましたね」
「は、はあ……」

 宮子は頬を赤らめたまま僕の顔を見つめ、そして股間のモノをぬるぬると緩く上下にしごいている。しかし、その笑みは先ほどまでの「お隣さんモード」の微笑みではなく、事務的な「会長モード」でもなく……僕を礼拝堂で威圧した「魔女モード」のそれだ。きゅうっとつり上がった唇に僕は言いようの無い淫靡な圧迫感を感じ、ゴクリと喉を鳴らした。
 宮子はその表情のまま身体を後ろに反らし、空いている手で割れ目を押し開く。

「見て下さい、ここ……達巳君のせいで、射精してるみたい」
「うっわ……」

 すでにそこは僕の出したもので白くべとべとに汚れていたが、おしっこの穴が在った位置からは更に新しい精液がとろっとろっと溢れ出ている。今更ながら、ちょっと位置を間違ったら……いや、間違えなかったら、か? そうしていたら大変な結果が待っていたかもしれない。

「う、うん。ちょっと、調子に乗っちゃったかな、あは、アハハ……」
「いいんですよ、達巳君。達巳君が気持ち良ければ、私はそれでいいんです」
「あ、ありがたいなぁ。安芸島さんにそう言ってもらえると……」
「さっきみたいに、宮子って呼んでくれないんですか?」
「え?」

 眉根を寄せ、片手を握って拳を口元に置いて目線を反らす。ど、どうしたんだろ? 何か、急に宮子の雰囲気が変わったぞ? 僕は目を白黒させつつ、相変わらずぬるぬると刺激を与えてくる彼女の細い指先の感触にだんだん思考がぼやけ始めていた。

「名前で呼んで下さい、達巳君。2人きりの時くらい、そう呼んでくれてもいいでしょう?」
「う、うん……み、宮子……」
「はい、達巳君。……もう一度、呼んで下さい」
「あ……うくっ……宮子……っ!」
「はい!」

 朗らかに宮子が笑う。そして、腰を浮かせると手に持ったモノを導いて自分のお尻にあてがった。

「……達巳君。今度は私がしてあげます。ホンのちょっとだけ、『もう1人の私』の記憶を使いますから、覚悟してて下さいね」
「え……何て……?」
「じゃあ……挿れますね」
「あっ……くぅっ……!」

 宮子が体重を掛けると、ずぬり、と僕のモノが根本まで沈み込んだ。再び吸い込まれるようなビリビリとした快感が僕の股間部を包み込む。さらに宮子は腰を持ち上げ、モノの半ばまで肛門で扱き上げた。それだけで目も眩むような快感が腰を走り、意識が跳んで暴発しそうになる。だが、宮子の言う「覚悟」が必要なのはここからだった。
 すぅ、はぁとお腹を動かして腰を持ち上げたまま呼吸を整えた宮子は、汗の浮いた顔でこちらに微笑みかけてきた。

「いきます……ね」
「んぅっ!?」

 突然、にゅるりとモノの先端部が何かに包み込まれた。宮子が腰を落とすのに合わせてそれはカリの部分を締め付けながら降りていき、彼女のお尻がぺたりと僕の腰に付く頃には完全にその部分を飲み込んでいた。な、何だこれ……? お尻の奥に、もう1つ肛門が在るような……? ど、どうなってるの?
 宮子は僕の戸惑いを余所に、再度腰を持ち上げ始めた。その途端、根本と先端部の2カ所で先ほどまでの快感吸引が起こり、思わず僕の腰がびくんと跳ねた。

「あっあああっ!? な、何だこれっ!?」
「ふふっ……気持ち良いですか、達巳君?」

 気持ち良い、どころでは無い。腰から爆発する倍加した快感は僕の許容量を遙かに越えてしまっている! 脳味噌まで先端部から吸い出されそうな超絶快感に、僕は意味の無い喘ぎを漏らすことしかできなくなる。ヤバい、自分でも脳内麻薬が廃人レベルでドバドバ出てるのがわかるくらいヤバい。

「大丈夫ですよ、達巳君。好きなだけイって下さい」
「……うぐっ……ぎっ!!」

 正に、三擦り半。もう既に3回は射しているのにも関わらず、たったそれだけ宮子のお尻で扱かれただけで僕のペニスは大爆発を起こした。知らず知らずの内にブリッジするように腰が持ち上がり、断末魔の如くモノと一緒に全身が痙攣する。どぷっ、どぷっと精液が吹き上がる度に、ぶちぶちと脳神経が焼き切れていくような発光が瞼の内で起こる。死ぬ、死ぬ、ほんとに死んでしまうっ!

 いったいどれくらいの時間その快感を浴び続けたのか。もしかしたら失神していたのかも知れない。気が付くと、僕は浴室のマットに大の字で伸びたまま天井の照明を見上げていた。隣には宮子が横向きに寝そべり、片脚を僕の脚に絡めている。その手はまだ僕のモノをゆるゆるとさすり続けていた。

「……気が付きました?」
「……非道い目にあった」
「ごめんなさい。こんなに効果が有るとは思わなかったんです」
「答えたくないなら答えないで良いけど、聞いても良い?」
「何ですか?」

 宮子は腕を付いて状態を起こし、僕の顔をのぞき込んだ。

「今の、『もう1人の君』は良く使ってたの?」

 その質問に彼女は躊躇うように視線を逸らした後、恥ずかしそうに口にした。

「教わった後……3人目くらいにおじいちゃんが心臓発作を起こして……それ以来、仕込んだ人には使ってはダメだと……」

 おっとろしい才能が有ったもんだ。まさか精だけでなく命まで吸い取る魔性のお尻だとは。いや、僕ももう少しであの世が見えるところでしたよ? 天国には行けたけどさ。
 それにしても、あっちの宮子はいったい何をしてたんだ? 性奴隷の様なモノだったのかと思ってたけど色々なテクニックは教わっていたようだし……。聞きたくないような、聞いてみたいような……。

「どうします?」
「ん……そうだな……」

 宮子の問いかけに思考を中断し、身体を起こす。そしてまじまじと彼女の顔を見つめた。「?」と首を傾げて微笑む宮子。……良かった、「魔女モード」は抜けたみたいだ。なら……。

「……やられっぱなしってのは性に合わないな」
「わかりました。また仮眠室に行きます?」
「いーや。こうなったら徹底的に君を貶めてあげないと気が済まない」
「?」
「執務室に行こう」

 そう言って、僕はウインクした。宮子は僕の意図を知ると顔を火照らせ、そして少し笑いながら言った。

「もう……達巳君、やっぱり凄いえっちです」

 その後、裸のままの宮子と2階の執務室に向かう途中で、階段を上る彼女のお尻にむらむらと来て、その場で捕まえてお尻に挿入。吹き抜けを見下ろす2階部分の欄干に捕まらせて立ちバックの姿勢で1回イかせ、僕も1発中出しする。そして、またも繋がったまま歩いて執務室の扉を宮子に開かせて中に入り、生徒会長の執務机に手を付かせた。そのままバックで突いた後、宮子の希望により体位を変え、机に寄りかかった彼女の片足を肩に乗せ、正面からのし掛かって挿入した。唇を合わせ、舌をお互いの口の中で絡めながら腰を振って彼女の中に出し入れする。

「あん……ふぅん……くぅん……」

 口が僕に塞がれているため、鼻息のような喘ぎしか漏れてこない。夢中になって彼女の唾液を啜りつつ、自分のものを彼女の喉に流し込む。それを宮子は自分から吸ってこくこくと胃の中へと落とし込んだ。
 やがて限界が近付き、お互いもう唇を合わせる余裕も無くなってくる。止めどなく喘ぎ声を漏らしながら宮子の両手がさまよっているのに気が付き、僕は何も言われずともその手に自分の手を絡めた。きゅっと安心したようにその手が握り返される。

「た、たつみくん……イって……イってくださいっ……!」
「宮子もっ!……一緒にっ、イってっ……!」
「いっしょ、いっしょに……うっううっ……ああぁああっ!!」
「宮子っ……!」
「たつ……み……くんっ!」

 さあっと宮子の身体が赤みを帯び、僕の身体の下でびくんびくんと絶頂の痙攣を繰り返した。きゅうきゅうとモノはそれに合わせて絞り上げられ、それに逆らうつもりもなく僕は彼女の中に白濁を解き放つ。

「ああっ! ああぁあっ!」
「うっ、ぅう……!」

 宮子の腰の中で僕のモノが弾けて精液を送り込んでいる。それが直接脳の神経を弾いてるかの様に彼女は狂おしく身体を跳ねさせた。視界が霞み、宮子の嬌声が遠ざかり、全てが僕の内の感覚に集約していく。
 脳から腰、ペニスを通って精液となり彼女の中、そして宮子の脳へ。僕と宮子の快感がひと繋ぎになってお互いをしっかり結びつけている事を、はっきりと感じた。身体と一緒に感覚も、気持ちも、心も全てが繋がっていると実感した。2人で1つになっていると、お互いの内宇宙が混ざり合った新しい宇宙になっていると信じられた。……それは、とても幸福な感覚だった……。

 こうして僕は宮子を抱き、抱かれ……そして彼女を自分のモノにした。

8.

 執務室のブラインド越しに窓から差し込む陽光はすっかり強まり、電気の点いていない部屋の中もそれだけで細部が確認できる程度には明るくなっていた。外の木立からは小鳥のさえずりが聞こえてくる。今の時間は何時くらいだろう。もう学校は始まってしまったのだろうか? 他の全てをすっ飛ばす様な快楽体験に時間感覚が完全に消失している。1日経って夜が明けたところって言われても信じてしまいそうだ。

 1日の始まりの日差しの中、静謐な雰囲気で静まっている生徒会執務室。すでに片付けは済み、情事の跡は残っていない。少しだけ開けた窓から涼しい秋の風がすうっと吹き込んで、僅かな残り香も連れて行ってしまう。
 そんな静寂の中、僕のいる執務室周辺には小さくちゅるちゅると濡れた音と、女の子の鼻を鳴らすような吐息が響いていた。熱く、湿ったそれらの音色は執務机の下の方から聞こえてくる。僕は窓から目線を外し、そこの椅子に座ったまま自分の足下に目を向けた。
 そこでは、この学園の生徒会長・安芸島宮子が僕の脚の間にひざまずいて一心不乱に股間のモノを口を使って奉仕を行っていた。

 宮子は片手を制服を着た僕の太股に置き、もう片手で根本の方を摘んでモノを自分の方に向けつつ、舌を使って先端部や竿をねぶって僕に快感を与えようとしてくる。とろとろと垂れた唾液がぽたぽたと彼女のスカートに落ちているが、それも気にならないようだ。太股に置いていた手をやって髪をかきあげ、あーんと開けた口の中にカリの部分を導き入れて口内全体で刺激を与えてくる。思わず身じろぎすると、奉仕を続けながら上目で僕を見つめてきた。
 何も言わずとも、その目が「気持ち良いですか?」と聞いているのがわかる。僕も言葉に出さず、黙って手を上げて彼女の髪をさらさらと梳いてやった。嬉しそうに目を細め、なおいっそう奉仕に熱を込める宮子。

 裸での情事の後、僕らはしばらくずっと抱き合ったままでいたのだが、流石にこのままではいられないので一緒に後片付けを行った。浴室は洗い流して換気し、仮眠室のシーツは新しい物に張り替えて使った物を洗濯機に放り込む。通路や階段に飛び散った体液はその部分だけ用意周到にも宮子が交換用に用意していた30cm四方位の絨毯と張り替える。その間に僕と宮子の制服は乾燥が終わっていたので手早く身に付けた。もうちょっと裸で掃除する宮子を見ていたかったので、少し残念。

 全部終わった後、ちょっと休憩と執務室に戻ると宮子は僕に暖かいミルクを用意してくれていた。じんわりと胃に染み渡る甘さに、そう言えば朝食は全部戻しちゃったんだよなぁと申し訳ない気持ちになった。
 そうやって一息ついて落ち着いたところで、宮子は僕にもう1つ要望を切り出したのだった。

「僕と契約……?」
「はい。達巳君の『能力』の方でも、私をあなたのモノにして欲しいんです」

 それならさっきの間に言ってくれればなぁ、と僕がぼやくと宮子は「私とするのは……嫌ですか?」と視線を逸らす。いやいや、そんな筈が無いでしょう!?

 僕がブラックデザイアの第3能力・アクセプタンスで女の子と契約するには、僕自身の血液や精液をその娘の体内に取り込ませなくてはならない。それは口からでも良いし、アナルセックスのついでにお尻からでも良いって事は以前実験済みだ。まあ、血でも良いから吸血鬼みたく噛みつかれて血を啜られるのもOKなんだけど、僕って痛いの嫌いだからなぁ。
 僕がその条件を宮子に話すと、彼女はもちろん「わかってます」とばかりに頷き、僕を窓際の執務机に誘った。そしてそこの生徒会長席に僕を座らせ、自分は机の下に潜り込み、微笑みながら「始めますね」と、僕のズボンのジッパーに手をやったのだった。
 いやあ、学園の最高権力者の椅子に座って女の子に奉仕させるなんて、夢の様な光景だなぁ! まあ、権力者と言っても生徒会長だから机もそれなり、椅子はただの事務用椅子なんだけど、それでも股の間で一生懸命に頭を動かしている宮子を見てると、充実した支配感を覚えずにはいられない。宮子も、絶対わかってて僕をここに座らせたよね?

 少女の熱心な奉仕によって僕の股間に十分な熱量が集まってきた。僕は「そろそろだよ」というつもりで彼女の頭をぽんぽんとしてやると、宮子も気が付いて僅かに頷く。そして、タイミングを見て口を一杯に開き、喉奥まで僕のモノを導き入れた。

「おぉうっ!?」
「んっ……ぐっ……んんんっ……!」

 こ、これ、喉の奥、首の辺りまで入ってないか!? 僕のモノを……飲み込んだの!?
 宮子の細い喉の前側には僕のモノの形にぽこりと膨らみ、その先端には異物の侵入に痙攣するその部分の感触がひくひくと伝わってくる。完全に喉が塞がってしまっている! 宮子は頬を真っ赤にし、瞳にはうっすらと涙まで浮かんでいる。それなのに、さらに奥に受け入れようと彼女は僕の腰をしっかり掴むとぎゅうっと自分の方に引き寄せた。

「あぁっ……あぁああっ!!」
「んぐっ……!」

 モノ全体に伝わる少女の喉の柔らかさと痙攣の振動に、たまらず白濁液の噴出が始まった。それは喉の半ばまで飲み込まれたペニスの内部を加速し、宮子の胃に直接どぼどぼと汚濁をぶちまけていく。どびゅう、どびゅうと収縮しながら先端から吹き出す様が、宮子の喉を通して外からでも見て取れる。そこまでされながら、宮子はまるで自分が僕専用のオナホールであるかの様に腰をしっかり抱き、離れない。

 やがて、1分以上も続いた射精も残滓を吹き上げるだけになり、宮子の喉の中で柔らかくなり始める。彼女はそれを確認すると、中に残っている精液を扱き出すように唇と舌を使ってモノを抜いていき、最後にちゅぱっと音を立てて唇を先端から離した。

「んんっ……んぐっ……はぁっ!! はぁっ! はぁっ……!」

 口に残った最後の精子を唾と一緒に飲み込み、宮子は爆発するように激しく空気を貪った。ふらっと机の下で横倒しに倒れそうになるのを慌てて屈んで支えてやる。

「はぁっ……はぁっ……はぁっ……」
「無理しすぎだよ! どうしてそこまでっ……!」

 僕が彼女を抱えて絨毯の上に横たえてやると、宮子は虚ろに瞳を少し開き、それでも僅かに笑って見せた。

「はぁ……はぁ……たつみ……くんの……くれるもの……こぼし、たく……なかった……の……」
「っ! も、もう……君って人はっ!」
「ごめん……なさい……もう大丈夫、ですから……」

 何て……何て献身的な娘なんだろう……! 僕は考える前に彼女の手を両手で握り、うんうんと頷いていた。宮子はそれを見て、ほっとしたように笑顔を深くする。そして、ふらつきながら手を付いて上体を起こした。

「あ、まだ……!」
「いいえ……早く、契約……して下さい、達巳君」

 そう言うと、宮子はひざまずいた姿勢でまるでお祈りするかのように胸の前で手を組み、頭を垂れて目を閉じた。慌てて僕もズボンのポケットに手をやり、その中のジッパーから魔法空間に指を差し入れる。

「……!」

 中の黒い欲望の本は、驚くぐらい熱く脈動していた。こんな事、最初の契約の時以来だ。本にも、宮子がこれまでになく強力な資質を秘めた存在であることがわかっているのだろうか。抜き取った指先に宿る銀の光も、今日は一段と輝きが強い。僕は唾を飲み込み、契約の呪文を口にした。

「受諾せよ(アクセプト)」

 その言葉により、宮子の体内に蓄積した魔力が彼女の精神を縛るべく活動を開始し、仄かにその身体から燐光が溢れ始める。それを確認し、僕は呪文を続けた。

「黒き欲望の書の使用者、達巳郁太の名に於いて命じる。汝の名は?」
「……安芸島、宮子です」

 ゆっくりと、しかしはっきりと宮子は自分の名前を口にした。僕は頷き、銀の光の灯った指先を彼女の額に触れた。

「汝、安芸島宮子を我が契約者とする」

 すーっと銀光が走って宮子の額に契約の紋章を形作る。それは一瞬強く光を放った後、静かに彼女の内に沈み込むように消えていった。

 ……。
 …………。
 ………………ついに。

 ついに、宮子と契約したのだ。あの、星漣ナンバー1の権力者、生徒会長の安芸島宮子と。
 ついにやった、という感動と、本当に成功したの? という現実味の無さが同時に僕の中をぐるぐると回る。慌ててポケットの中から黒い本本体を取り出し、指先を震えさせながらページをめくった。

「……在った」

 安芸島宮子。彼女の名が、契約者のページに追加されている。間違いなく、僕は宮子との契約に成功したのだ。
 僕のそんな様子を、宮子は膝を付いたまま、少し首を傾げながら見守っている。

「……それが、達巳君の『本』ですか?」
「う、うん」
「うまくいったんですね」

 ほっとしたように言う宮子。そして、静かに立ち上がった。

「……達巳君」
「ん。何?」

 僕も本を閉じ、立って宮子の方を向いた。先ほどまでの柔らかな感じと違い、ちょっと緊張したように真面目な表情の彼女の様子に少し意表をつかれる。

「どうしたの?」
「あの……達巳君。私には、後1つあなたに伝えなければいけない事が有るんです」
「そうなの?」

 ああ、そう言えば昨日は確か、「あと3つ」とか言って約束したんだったけか。色々有り過ぎてちょっと混乱しているけど、彼女的にはその内重要な2つはもう僕に教えたって事なんだろう。

「それを、今教えてくれるの?」
「はい……ただ……」

 宮子にしては歯切れが悪く、濁すように言葉を止めて悩んでいる。何だろう? そんなに言いにくい事なのかな?

「ただ……何かな? 無理に言わなくても良いよ?」
「いえ。ただ……それを伝えるためには、達巳君に見て貰わなければならない物が有るんです」
「僕が?」
「はい」

 何を? それは今、ここに有るのだろうか? ぐるりと周囲を見渡したが、僕らの持ってきた荷物以外にはいつもの執務室だ。

「何を見ればいいの? どこ?」
「物じゃないんです。私の……記憶、です」
「記憶……え?」

 呆気に取られる僕の前で、宮子は手を胸のところでぎゅっと握り、意を決したように僕の目を正面から見つめた。

「その『本』に私が触れる事で、達巳君には私の『記憶』が見えるはずです。私には、その資質が有ります。それを見た上で、私の言葉を聞いて欲しいのです」

 宮子の言葉に、僕は硬直していた。契約者に本を触れさせることで、その記憶が魔力の眼に映る――それは、その人物がブラックデザイアに選ばれた「黒い欲望」の持ち主である事を意味する。そしてそれは、本の使用者以外の黒い欲望の持ち主であるその人物を、「ガジェット」というモノに変じる事で、本の最終段階の能力発動の鍵となる事も意味していた。
 だが、人間をガジェットに変えるという事は単に新しい能力を付加するだけではない。それは、その人物の人間としての時間の終焉を意味する。黒い本のかつての使用者である魔女は言っていた。

『――ガジェットと成った者に、まともな幸福など有り得ないと思え。死すら、自身の思い通りにならん。……ガジェットはその役目が尽きるまで、永久に運命の奴隷として世界に良いように操られ続ける――』

 そしてその魔女は、僕を彼女自身から身を挺して救ってくれた七魅こそ、そのガジェット候補である事を示唆したのだ。

 そのガジェット候補が、もう1人? それも、よりにもよって宮子が?
 ……確かに、宮子はその「未来記憶」の能力に振り回され、辛い思いをずっとしてきた。それで運命を呪うような状況に陥る未来を見た事も有ったのだろう。だけど、今ここに居る宮子は違うはずだ。そんな未来から逃れ、僕と共に居ることが掛け替えの無い時間だと微笑み、そして手を握って僕のする事を受け入れてくれた、今僕の目の前にいる宮子は!
 僕はその告白が信じられず、呻くように呟くことしかできない。

「君は……僕なんかと違うはずだ。世界を滅ぼしてまで叶えたい欲求なんて……」
「いいえ、達巳君。私にも在るんです。達巳君と同じ様に」

 宮子はきっぱりと言い切った。

「私には、その事しか考えられない。……いいえ、その為に今の私は居る。そんな願いが有るのです。そして、それこそが今日、私があなたに伝えなくてはならない事。だから……達巳君には見て貰わなければならない……私の、その願いの根元となるものを」
「……」

 宮子の気迫に僕は圧倒される。それは、覚悟を決めた者のみが持つ身を賭して物事を為そうとするオーラの様なものだ。僕は目線を合わせぬまま悪足掻きのように尋ねた。

「君は、知っていたの? 僕と契約したら、もしかしたら……君は」
「知っていました。……そして最後に、那由美さんの為に達巳君が私を選択する未来が有る事も」
「……っ!」

 僕は、今日だけで何度この娘に心を揺り動かされたのだろう。その優しさに、その慈悲に、その運命に、その美しさに、その悲哀に、その気高さに。僕なんか、到底辿り着けない高みにこの娘は居るのだ。結局のところ、僕程度の存在がどうこうしようとも、その純白の魂は決して汚れたりくすんだりしたりはしないって事なんだ。

「わかったよ……」

 僕はどうしようもなくなって、沈んだ気持ちで彼女に黒い本を差し出した。宮子はそれを見て、それから僕の顔を見て、少しだけ笑う。

「ありがとう、達巳君……」

 そして、まずは本を持つ僕の手に自分の手を添え……そして、静かに本の表紙に手を乗せた――。

「――あなたが達巳郁太クン? ふうん、近くで見るのは初めてだけど思った通りの女顔ね」

 何だこの人は。僕の顔を見るなりそう言い放った少女に、僕はむっとして眉を寄せた。

「……初対面の人間の外見をいきなり評価するなんてどうかと思いますけど」
「ごめんごめん。こっちは名前と遠くからしか見た姿しか知らなかったから、思わず本音がでちゃった」

 ……それ、弁解になって無いよね? まったく、金髪ツリ目、ツインテールで生意気なお嬢なんてどんだけテンプレ踏襲してんだ。可愛らしく両手を顔の前で合わせてご免なさいポーズをしてるけど、第一印象は最悪だ。僕は大変気分を害していたので「さっさと用件を言ってもらえます?」とお返しにぶっきらぼうに言ってやった。

「自己紹介はいらないかしら?」
「そこは一応しておくべきじゃないですかね。今年度星漣女学園『生徒会長』、早坂英悧さん」
「無駄はなるべく省くようにしてるのよ」

 どの口が。僕はその、執務机に着いて朗らかに笑みを浮かべている人物を睨みつけた。

「何の用で僕をこんなところ(生徒会執務室)まで呼びつけたんですか? 自己紹介するためですか?」
「当然、違うわよ? 達巳君に次の会議に提出する通達の内容を予め教えておこうと思って」
「通達? 僕に何の関係が?」
「関係無きゃ呼ばないわよ」

 そう言って早坂英悧は、机の上に置いてあった1通の書類をこちらに向けてすうっと押し出した。生徒会にどんな関係があるんだよ、とその書類を取って眺めてみれば……。

「はぁ!? 特別役員へ任命!? 僕を!?」
「そういう事」
「な、何でっ!? 転校してきたばっかりの僕が生徒会の仕事なんて出来るはずがないでしょ!」
「別に、私達で出来る事を手伝って貰おうなんて思ってないわよ?」
「じゃあ、何さ?」
「折角の男手じゃない? 他の委員会に取られる前に執行部で貰っちゃおうと思って」
「んな……」

 僕はその他雑用要員かよ! 余りの言い草に呆然としている僕の前で、ニンマリと生徒会長サマは笑みを浮かべて宣言した。

「という訳で、あなたには私直属の『生徒会長付』としてばんばん働いて貰うからね」

 ……これが、僕と英悧の初めての出会いであった。最初からあいつは自分勝手で生意気で、とにかく僕の気に入らない事ばっかりしてくる嫌な奴だった。オマケに生徒会長権限で有言実行とばかりに僕をこき使うし……。

 でも、実はそれは彼女なりの配慮が合っての事だと知ったのは、その1月後の事だった。
 ちょっとした不祥事に僕が絡み、女の子達から非難を受けそうになった僕を守ったのは、生徒会長付という役職名と、会長の英悧自身だったのだ。そしてその時、英悧が僕を側に置いたのは、そういった僕とこの学園との軋轢をなるべく自分のところで受け止めようとする彼女の思惑が有ったからなのだという事を僕は初めて知った。

 ……その頃だったのかもしれない。僕が英悧の事を生意気な金髪ツインテールとしてでは無く、1人の女の子として意識しだしたのは。

 夏祭り。英悧はさんざん自分との約束をすっぽかしたバスケットボール部の主将・春原渚への文句を電話越しに言った後、本当に、ほんと~~~に仕方なく、といった口調で僕を祭り見学に誘ってくれた。
 いつもと違い、金髪を頭の後ろで結って綺麗な浴衣を身につけた英悧の姿。素直に可愛いと思えた。もちろん、口には出来ず「馬子にも衣装」と照れ隠しに放言してしまい、思いっ切り下駄で向こう脛を蹴飛ばされたけど。
 まあ、下駄の鼻緒が切れちゃって、ついでに足を挫いた英悧をおぶって帰るなんてハプニングも有ったけど、概ね楽しい夕暮れだった。……英悧の身体、柔らかかったな。

「まったく、急に降ってくるとは思わなかったわ。ずぶ濡れじゃない」

 鞄を頭の上に掲げて時計塔会館に駆け込んだ僕と英悧は、玄関口を閉めるとぱたぱたと雨粒を払った。だけど、バケツをひっくり返したような雨は薄手の星漣の夏服をすっかり浸透し、下着まで濡れてしまっている。自分の姿に気が付いて英悧は身を庇うように背中を向けた。

「ちょっと、こっち見ないでよ」
「……自意識過剰じゃない? 別に見たくもないし」

 嘘です。ブラが透けてたの、ばっちり見てしまいました。誤魔化すように僕は怒ったフリで彼女に文句を付ける。

「君が体育祭の要項なんて、朝一で登校してやればすぐなんて啖呵を切らなければこんな時間にここに来る必要無かったんだけど……」
「うるさいわね。あなたが全然仕事をやってないのが悪いんでしょ」
「元はと言えば君が突然『運営委員長』なんて僕に振るからじゃないか!」
「期待されたら仕事で応えるのが『会長付』の役目でしょ!」

 やいのやいの、夏休み後はもう周囲の誰も止めなくなった僕と英悧会長の口喧嘩だ。だが、それも今日は2人して同時にくしゃみをすることでいっぺんに収まってしまった。

「はっくしょっ!」
「くちゅんっ!」
「……何それ? くしゃみ?」
「ど、どうだっていいでしょ。それより、やっぱりちょっと寒いわ」
「執務室に暖房入れようか?」
「お願い。んー……それと、下着まで濡れちゃったし乾かしたいわね……」

 鳥肌のたった二の腕をさすりながら英悧は思案する。ややあって、彼女は良い事を思い付いた時(僕にとっては大抵面倒な思い付きだが)の笑顔を浮かべる。

「そうだ。お風呂、入りましょ」
「……はぁ? まだ寝ぼけてるの? それとも風邪で熱が出た?」
「例えそうだったとしてもあんたよりは大丈夫よ」
「ぐへぇ、自分で選んだ会長付に対して何たる言い草」
「だって、頭の方を期待して執行部に入れたんじゃないし」

 いや、まあそれはそうなんだけどね。英悧は僕を女子生徒から隔離する目的で執行部に引き入れた訳で、僕の手腕を期待したからじゃない。女子の側から見れば生徒会に僕が監視されている様に見えるし、実際その通りだったし。でも、そのお陰で僕に対する視線は随分と和らいで、今では普通に挨拶したり、昼ご飯を一緒にするような友達も結構できた。当初の目的は達せられたんじゃないかな。
 ずるずると付き合っている内に体育祭まで手を出す事になっちゃったけど、これが終わったらそろそろ潮時かもしれない。体育会系の英悧は責任感が強いから、途中で放り出すような事は自分からは言い出さないだろうし……ね。

「はいはい、わかったよ。じゃあ僕は執務室で待ってるから早めに上がってよね」

 僕は内心ちょっとしんみりしてしまったのを隠し、早口で半ば怒ったように言った。そのまま英悧の顔を見ないで階段に足を向ける。だが、そんな僕の腕を彼女はぐいっと捕まえて自分の方に向けた。

「何言ってるの? あなたも一緒に入るのよ」
「………………はぁ? 何言ってるの?」

 思わずオウム返しのように英悧の言葉を返してしまう。濡れたから服を着替えるのはわかる。身体が冷えたので風呂にはいるのも、まあわかる。だけど、それでどうして僕と2人で入る事になるのさ? プールか何かと間違えてるんじゃないか?

「一緒に入る理由が全くわからないよ」
「あなただって執行部の一員なんだから。こんなとこで風邪でもひかれたら困るのよ」
「だったら、君の後で良いでしょ」
「時間がもったいないわ。ほら、来なさい!」

 あーれー! 英悧は見かけによらぬ馬鹿力で僕をずるずると引きずって連行していく。何なんだよ、いったい!

 その5分後、僕は英悧の強引さと手早さとついでに僕自身のちょっとしたスケベ心によって、2人で並んで湯の溜められた浴槽の中に居た。もちろん、着るもの1つ無い生まれたままの姿だ。英悧の方も当然そうで、僕は気後れして彼女の方に目をやれず、首を90度反対の方に向けていた。

「……何よ、私の裸見るの、初めてじゃないんでしょ?」
「ぶほっ! 何時の話だよ!?」

 身に覚えが有りませんが!?

「夏休みの旅行の時よ」
「あれは……!」
「まったく、あなたに任せてたら執行部の慰労旅行先が混浴温泉だものね。間違ったって言ってたけど、どうかしら? 確信犯でしょ?」
「そ、そんなわけ無いだろ! 君だって一緒に選んだんじゃないか!」
「せっかく貸し切りだから男女で時間を区切ったのに、なんで女の子の時間にこそこそ隠れて入ってたのよ?」

 僕の名誉のために言わせてくれ。確かに途中で混浴だという事に気が付いてたのに黙っていたのはちょっとした下心が有ったのは認めよう。だけど、僕はみんなで決めた男子入浴時間に風呂に入ったし、入浴前に入り口の表示が「男」になってたのも確認したんだ! それがどういう訳か僕が浴槽に入っている間に「女」に変えられてしまったんだよ!

「だ、だから……僕は間違いなく男子の時間に入ったんだよ!」
「……怪しい。まさか、事故を装って自分で表示を変えたんじゃないでしょうね?」
「そこまで疑う!?」
「隠れてたじゃない」
「だ、だって……」

 みんな先に入り終わったものだと思ってのんびり長湯をしていた僕は、脱衣所から響いてきた執行部のみんなの声に肝を冷やした。例え僕に非が無いにしても、女所帯の慰労旅行メンバーにそんな理屈が通用するはずが無い。慌ててお湯の中に潜って奥に待避した僕は、しかし逆に逃げ場を失ってしまう羽目に陥った。結果、湯船に潜ったり岩の陰に隠れたり、物を投げて注意をそっちに引きつけたり、そうやって特殊潜入工作員並のぎりぎりの奮闘の結果、なんとかみんなには見つからずに最後まで切り抜ける事ができたのだ。……英悧以外には。

「私の身体で、あなたに見られてないところなんてもう無いのよねぇ」
「み、見てないってば」
「わざとじゃなかったとしても、役得だったでしょ?」
「くっ……!」

 正直に白状してしまいましょう。岩影から隙をうかがっている時に湯煙の間からみんなの上半身は見えてしまったし、洗い場の台の下に這い蹲って隠れていたときは、ちょうどそこのシャワー前に座った娘達の太腿の間の様子までばっちり見てしまった。その時は鼻血が流れていきそうになるのを押さえるのが大変だった。
 でもまあ、そのお陰で副会長の初代意(はつしろこころ)がパイパンな事や、やまゆり編集長天乃原などかが隠れ巨乳で左胸の上のところにホクロが有る事がわかったんだけどね。ついでに潜って隠れてる時に「湯船の中に何か変わった台が有る」と女の子数人が背中にお尻を乗せて座ったため、危うく溺死するところだった。役得と言えば役得かもしれないけど、必死だったんだよ!

「そ、それを言うなら僕も言わせて貰うけど、君だって部屋を間違って僕の布団を占領してたじゃないか!」
「んぐっ……1泊しかしないのに部屋の間取りなんて覚えてられないわよ!」
「その上トイレのドア閉めそこなってそのまましちゃうしさ!」
「ばっ……うそっ! 見てたの!?」
「あ……」

 やば、これは黙っとこうと固く誓った内容だった!

 慰労旅行の夜、寝ぼけた早坂は部屋を間違い、それだけじゃなく僕の布団にまで潜り込んできた。そして、夜中にトイレに起きて部屋から出て行ったので、僕はこのまま彼女が戻ってきて布団に入る時に気付かれ、大騒ぎされると命の保証が無いからその隙に逃げようとした。だけど、そこでバスルームの扉が半開きになっている事に気が付いてしまったんだ。どう見ても罠としか思えなかったんだけど、年頃の男子としては女の子の入っているトイレのドアの隙間の誘惑に勝てる奴なんていないよね? ふらふらと誘蛾灯に群がる蛾の様に僕も引き寄せられ、ついつい覗いてしまった。
 早坂はこっくりこっくり船を漕ぎながら便座に座り、膝までパンツを下ろしてちょうどトイレの真っ最中だった。膝は内向きに閉じられていたけど半分寝ていたのでゆるゆるで、僕の居たところから彼女のきらっと光る股間の茂みや、その下の割れ目、そしてその間からちょろちょろと勢い無く伸びる一筋の水流がはっきり見えた。思わずゴクリと唾を飲み込んでしまったよ。
 その後、彼女がトイレットペーパーで股間を拭く様子までばっちり観察した後、玄関側のクローゼットの中に飛び込んで隠れた。心臓はドキドキ、股間はバキバキでどっちも爆発しそうだった。そして、その暗闇の中で、この事は死ぬまで秘密にして墓の中まで持って行こうと堅く決心したのだった。

 だのに、こ、この……うっかり者ぉおおおっ!

「み、見た?」
「いいえ、見てませんっ!」
「正直に答えて……見たの?」
「……隙間から、ちらっと見えただけ」
「~~~っ!!」

 早坂の顔が真っ赤になる。「この変態!」と拳か肘か膝か足が飛んでくる事を覚悟し、僕は思わず目を瞑って短かった人生を儚んだ。紫鶴さん、あなたを残して先に逝く僕をお許し下さい……。

 ……だが、いつまで経っても、3分は経過したと思えるくらい目を瞑っていても何も起こらない。恐る恐る僕は片目を開け、英悧の様子をうかがってみた。
 英悧は、風呂の縁に突っ伏して頭を抱えていた。首筋が真っ赤に染まり、のぼせたようになっている。小声で「うー、うー」と唸り声まであげていた。

「……まさかそんな、寝ぼけてそこまで見せてたなんて計算外よ……うぅぅぅ、そんな事ならカマかけついでに責任取ってもらった方が良かったじゃない……!」
「あ、あの~、英悧さん?」
「わひゃっ!?」

 何かぶつぶつ呟いていた英悧に背中から声を掛ける。彼女は滑稽なくらい驚いて、お湯をばっちゃんばっちゃん盛大に揺らしながら僕に振り返った。

「な、何?」
「んと……のぼせた? 顔が真っ赤だけど」
「そ……そうよ! のぼせたの! ああもう、あんたなんかと一緒に入るから! それにあんな話するから行きたくなっちゃったじゃない!」
「……トイレ?」
「うっさい! 悪いっ!?」

 それって、僕のせいなのか? 慌ててたと思ったら急に怒り出した英悧は勢いよく浴槽から出ようとし、その際僕と反対の脚を上げたためにこっちから丸見えになってしまった。本人が気付いてないのに、うっかり者の僕はまたも余計な事を口走ってしまう。

「あ……見え……」
「え?……あっ!」

 慌てて脚を変えようとしてバランスを崩す英悧。浴槽の中できゅきゅっと爪先が滑って倒れかかる。僕は咄嗟に支えようとして……やっぱり滑ってしまった。

「きゃあっ!?」
「わぎゃっ!」

 さすがは英悧は体育会、しかも乗馬部のエース。残った足でバランス良くジャンプしてすたっとマットの上に着地する。しかし、僕の方はそうもいかない。思いっ切り頭からすっ転び、せっかく無事に降り立った英悧を押し倒してしまった。
 爪先立ちでしゃがんだ状態の着地姿勢の英悧を横合いから押して転ばし、自分の方は無様に縁に脚が引っかかって上半身だけ土下座するように両手をマットに付き、おでこから落ちる。鼻面を強打する事を一瞬覚悟したが、予想に反してむにっと柔らかい物に挟まれた。顎を打ち、一瞬目の中に火花が散った……。

「あ痛たた……何よ、もう……」

 今の英悧は背中をマットに付け、両脚を曲げて少し開いて寝ころんだ状態になっている。ちょうどマットの真ん中で転んだために壁や突起物にぶつかることなく、上手くそれがクッションになってくれた。そのお陰でちょっと腰を打ったくらいで英悧に強い痛みは無い。

「あれ……?」

 頭だけを起こして周囲を見渡し、見慣れた少年の顔が見えない事に気が付く。何処に行ったのだろう? 視界を高くしようとして肘を付いて背中を起こしかけた時、腰の辺りに何か黒い物が在る事に気が付いた。同時に浴槽の縁に引っかかっている何か肌色の2つの膨らみも見える。そこから肌色の坂が自分の方に伸びて、最終地点にその黒く丸い物体が繋がっているのだ。はて?

 その瞬間、その黒い物体がもぞもぞと動いた。同時に英悧の股間の敏感なところからビリッと甘い感覚が下腹部を直撃し、ついでにもごもごとくぐもった声がその辺りから聞こえる。「あんっ」と思わず声を漏らし、英悧はぎゅっと太腿と手でその黒い物を押さえ込んだ。ふさっ、と濡れた毛で覆われた感覚が伝わってくる。
 それは押さえられた事でなおいっそう動きを激しくした。

「あぁん、ちょっと、待って……そこ、だめっ……!」

 雨に打たれて腰が冷えたのと、さっきの転倒の衝撃によるものだろうか。自分で知覚していた以上の量の尿意が急速に高まる。更に、その黒い何かは意志が有るように的確に英悧の尿の出口を刺激してくる。それならそれを解放して離れればいいのに、転んだショックと突然の刺激で混乱した英悧はそこまで頭が回らず、ただ押さえつけて止めようとするばかりだった。

「だ、だめ……でちゃ……あ、あ、あぁあああっ!」

 ぐりぐりと的確に尿道口を刺激され、堪えきれずついに英悧の膀胱は決壊した。ちょろっといったんこぼれると、そこからはもう彼女の意志ではどうすることも出来ない。ちょろ、ちょろ、ちょろちょろろろろろ……と、勢いは無いが途切れる事無くお漏らしは続く。お尻の方に感じる暖かい感触に、やってしまったと情けなくなり英悧の手が緩んだ。

「ぷっはぁっ!」
「きゃぁっ!?」

 突然、英悧の股間から少年が顔を起こした。余りの出来事にしばし英悧の思考が止まる。

 少年は、脚を浴槽の中に残したまま前のめりにぶっ倒れたため、今まで身動きが取れなかったのだ。しかも、倒れた先がちょうど英悧が転んで開いた股の間、そして偶然にもその鼻がちょうど少女の一番敏感な割れ目に埋まるよう、器用に転んでいた。先ほどまで英悧が押さえ込んでいた黒い物体とは少年の黒い髪の生えた後頭部であり、彼女は自分で少年の顔面を股間に押さえつけていたのだった。

 押さえ込まれていた頭が急に解放され、僕は思いっ切り頭を上げて空気を貪った。やばい、死ぬかと思った。完全に酸欠で視界が暗い。浴槽から上半身だけ飛び出たコメディみたいな格好のままぜいぜいと荒く息をつく。が、その途端に鼻先にぴしゃぴしゃとあったかいお湯みたいなものが引っかけられ、僕は目を瞬かせた。

「わぷっ……!」

 何だこれ……ぺっぺっ、しょっぱっ! しぱしぱと目を何度も瞑り、そして懸命に前に目を凝らす。手で顔を拭い、そしてようやく見えてきたのは……。

「……なにこれ?」

 金色っぽい毛で覆われた2つの肌色の膨らみ。その中央部には襞のようなつやつやしたピンク色の物が見えている。そしてそこの下にはちょっと距離を置いて円形に皺の寄った、ちょっと色の違う場所。僕の顔をさっきから濡らしてる暖かいものはその上の方の膨らみの間の割れ目から飛び出てきている。

「何だこれ?」

 もうちょっと距離を離そうと両手をその割れ目の両サイドに置いてぐいっと身体を数センチずらす。生温かく柔らかい感触と共に、その部分が左右に開いて内部の襞が広がり、視界いっぱいをピンク色のつやっとした物体が覆った。
 ふと視界の上の方で金色の何かが動いた気がした。顎を上げ、そっちに目をやるとそこに良く見知った少女の顔。何故かぽかんと口を開けてこっちを見てる。

「あ、そこにいたんだ」

 その良くわからないお湯をちょろちょろ出し続ける割れ目越しに、僕は英悧に声を掛けた。が、その声にはっとした彼女はみるみる顔を赤らめる。

「え、どうしたの……?」

 僕は疑問の声を上げかけ、はた、と口を噤んだ。あれ? 英悧の顔があそこにあって、それでちょっと見えたおっぱいがそこ、そしてその手前にお腹が見えて、そしてこの妙な割れ目がここに。……って事は、つまり、これは。

「え、これ君のっ!?」

 唐突に理解する。目の前ほんの3センチくらいに存在する赤い襞、それが彼女の大事な部分であるという事を。そこは僕の手が左右に置かれて身体を強く押したため、限界まで割り開かれている。金色の茂みが僅かに隠す中、ちょこんと可愛らしく皮を被った突起やぽかっと空洞の空いた中央部の穴も丸見えだ。その中に白っぽい膜の様な物までしっかり見えている。更には、先ほどから僕の鼻頭にひっかかっているものが彼女のお漏らしで、それが突起の下の引き延ばされた部分にぽちっと空いた小さな尿道から飛び出ているところまでしっかりと確認してしまった。

「わっわっ、何でっ!?」
「~~~~~っ!!」

 横合いから英悧の膝が跳んできたのは、その直後だった。

 立ちこめたアンモニア臭にできるだけ気付かないフリをしつつ、僕はシャワーでマットを洗い流していた。その側では英悧が消え入りそうなくらい縮こまって体育座りしている。

「だ、大丈夫? どこか打たなかった?」

 声をかけてみるが、膝の間に俯いたまま頷きもしない。僕は少し困って先ほど英悧に蹴られた頬をポリポリと掻いた。膝が跳んできたと言ってもシャイニングウィザードみたいな物騒な物では無く、単に膝で頬をはたかれた程度なので怪我も無い。ま、一瞬目の前に星は飛んだけどね。

「気にしなくて良いよ。えっと、君の言った事じゃないけど、初めてじゃないんだし……」

 全然、慰めになってないよね、これ。英悧はますます縮こまったように見えた。

 努めて冷静なフリをしているけど、僕の方だって本当のところはいっぱいいっぱいだ。何せ、性格はともかく外見だけならこの学園で1、2を争う美少女である早坂英悧会長と2人きりでお風呂に入ったと思ったら、事故とは言えその股間部を開いて中までのぞき、その上ほんの数センチの超絶マクロ状態でおしっこするところを見てしまったのだから。……やば、言葉にしてるだけで勃ってきた。

 僕はそれに気が付かれない様にさり気なく後ろを向いてシャワーを止めた。後は、2人とも上がった後に換気しておけばオッケーだろう。

「じゃ、先に出るからね? 会長も少し暖まってから出てね?」

 そう言って、英悧の方を向くことなくそのままドアを開けようとした。その直前、低くドスの効いた声が背後から響く。

「待ちなさいよ……」
「は、はい!?」

 ドアのハンドルに手をかけたまま恐る恐る後ろを振り返る。そこでは、顔を上げた英悧が半眼で僕の方を睨んでいた。

「私だけ恥をかかせて逃げようったってそうはいかないわよ……」
「えっ!? 僕のせい!?」
「あんたしかいないでしょうが」

 そんな馬鹿な!? 転んだのは僕のせいとしても、元はと言えば2人でお風呂に入ろうなんて言い出したのは英悧じゃないか!
 だけど、完全に目付きの据わった英悧に理屈は通用しない。身体を起こして四つん這いになると「うりゃっ」と僕の片足を引っ張った。

「あ、あぶ、あぶっ……!」

 また転んだら今度こそ大怪我だ。僕は片足のコサックダンスの様な状態でしゃがみ込み、尻餅をついた。すかさず英悧はその上にのし掛かってくる。僕のお腹を跨いでマウントポジションを取り、さらに両手を押さえつける。仰向けに押さえつけられた僕の頭上に、英悧の前髪からぽたぽたと水滴が落ちてきた。そして彼女は、うっすらと頬を染めながら不適な笑みを浮かべる。

「私に、責任取らせなさいよ」
「……はぁ!?」
「これよ、これ」

 英悧がもぞっと腰を動かすと、そのお尻に当たっていた僕のきかん棒がびくりと震えた。さわっと彼女の茂みがお臍の辺りを擽る。

「ちょ!? 何をおっしゃってるんですかっ!?」
「だから、責任とらせなさいよね」
「立場が逆ですよね!?」
「私がするって言ってるのよ? 文句ばっかり言わないで」

 文句って言うか、これはマズいでしょ! 転んで漏らした衝撃で英悧はどっか頭のネジがぶっ飛んだんじゃないか!? それともやっぱりどこか頭を打っていたとか!? このままじゃ僕の……いやいや、それよりも英悧の貞操がヤバい!!

「……私じゃ嫌なの?」
「嫌じゃないけど……だ、だって、恋人でもないのに……! おかしいでしょっ!!」
「恋人じゃないから、おかしいの?」

 そう言うと、不意に英悧がぐっと身体を僕の方に倒して来た。僕の視界が彼女の綺麗な金色に近いブラウンの瞳や長い睫、形の良い鼻、ピンク色につやつやしている小さな唇、上気して赤くなっている滑らかな頬、などの光景で一杯になる。数秒、それに見とれて動きが止まった、その瞬間。

「こうすれば、もうおかしくないかしら?」
「え?……っ!?」

 突然、柔らかな感触が僕の唇を塞いだ。つ、とすぐに離れた英悧の顔に、僕は何が起こったのか数秒遅れて認識する。

「は!? え!? くち!? え!? 君!? な!?」
「落ち着きなさいよ、みっともない」

 そう言う英悧の顔も真っ赤だ。

「な、何で、キス!?」
「だから、そういう仲になればおかしく無いって事でしょう?」
「そういう仲って!……え?」

 年頃の男女がキスをするような仲……、それこそ、一般的に言って、こ、恋人って言うんじゃなかろうか? え? そういう事?
 英悧は、僕と恋人になろうって言ってるの?

「き、君は……それで良いの? っていうか、僕で良いの!?」
「私の気持ちは、今ので十分だと思うけど?」
「う、うん……それもそうだね」
「それより、私にとってはあなたの方が重要なんだけど」
「え!?」

 英悧が今までで始めてなくらい不安そうに上目で僕を見つめていた。子供みたいに口を尖らせ、眉を寄せて俯いている。いつも自信満々な生徒会長の仮面を脱いだ、女の子としての英悧の姿……。

「……どうなのよ?」
「ぼ、僕は……」

 数秒、逡巡する。ここで肯定すれば、僕はもしかしたら一生この暴君の隣で過ごさなくてはならなくなるのかもしれない。これが、人生の最大で最後の分岐点かもしれないのだ。これからの何十年もの人生設計と、この目の前の不安げな少女を天秤にかけて答えなくてはならない。

 ……。
 …………。
 ………………なんだそれ、考えるまでも無いじゃん。

「……嬉しいよ」
「え、それって……!?」
「だから、君とそうなったら僕は大喜びって事だよ」
「ちゃんと言って!」
「君だって言葉にしては言ってないじゃないか」
「あなたから聞きたいの!」
「わかったよ……」

 ……そして、僕は英悧にお望みの言葉を囁いてあげた。すると英悧は嬉しそうに僕の胸に頬を寄せて抱きついた。お腹の辺りに当たる感触に、僕はドギマギしながら彼女の方を見つめる。

「君が、僕の事そんな風に思ってたなんて知らなかった……」
「もう……やっぱりあなたってニブいのね」

 そう言うと英悧は朗らかに笑い、抗議の言葉を吐こうとする僕の唇をもう一度塞いで黙らせる。その唇が離れたとき、両者の間を唾液の糸が繋いだ。それがぷつん、と切れた後、呟くように英悧が誘う。

「……仮眠室、行かない?」
「急ぎ過ぎじゃないかな……?」
「仕方ないわ、それが私の方針なんだから。ね、会長付さん」

 英悧はそう言うと、ちょん、と僕の鼻を人差し指でつついた。

「無駄は、なるべく省くようにしてるのよ」

 ――今の光景は?

 長い夢から覚めた直後の様に、僕は若干記憶の混乱を感じながら瞳を開けた。
 目の前には、直前と同じく僕の手と、黒い本に手を添えた宮子の姿。しかし、その表情は先ほどまでと違いまるで痛みを堪えているかのように陰が差していた。

「……見えましたか?」

 僕はその問いかけに黙って頷く。そして、見えた光景を思い出し、整理しながら呟いた。

「……見えた光景には、英悧……いや、早坂さんが僕の隣に居たよ」
「ええ。それが、私の見て欲しかった物……私が達巳君から奪った、本来の星漣の可能性です」
「……! そういう……事だったのか……!」

 今までのこの星漣での学園生活内で、どこかで見たような光景。だが、そこに登場する人物が何故か全て早坂に置き換わっていた。7月の生徒総会で僕を助けるために奔走してくれたのはハルの筈だし、夏祭りに行ったのは哉潟姉妹とだ。夏の旅行はハル達「新校則に反対する会」のメンバーとだし、この時計塔会館のお風呂に一緒に入ったも宮子が初めてだ。どうして、それが全部早坂に入れ替わっていたのか不思議だった。
 だけど、そうじゃなかった。逆だったんだ。それは、選択されなかった可能性、実現せず、棄てられた可能性の光景だったのだ。

 宮子が立候補せず、「早坂が生徒会長となった星漣学園」においては、僕の隣のポジションはきっと早坂英悧の物だったのだ。早坂は達巳裁判に提出された新校則の原因となった女子やPTAからの突き上げを、僕を特別役員に任命して執行部の監視下に置く事で躱し、さらには様々なイベントに僕をパートナーに選んで参加させた。それが、本来の星漣の辿る歴史だったのだ。
 しかし、宮子が生徒会長となったために早坂は僕を側に置く強権を発揮せず、そのために7月生徒総会のハルや夏祭りから合宿にかけての七魅のポジション、そして今日、この日に僕と結ばれるというポジションまで知らぬ間に宮子に譲り渡すことになった。全ては、昨年度の生徒会長選挙において宮子が未来を変えたから。

「達巳君に見えたのは、恐らく私の力を通して覗いた喪われた可能性の一端です。達巳君には私と同じ『未来記憶』の力が有りませんから、現在の時間より先に分岐する未来は見えなかったと思います。でも、流れの概要はわかったはずです」
「……うん」

 宮子が見せたかったもの。彼女がブラックデザイアに選ばれるほど強い願望を持つ原因となった光景。それは、僕と早坂英悧が結ばれた、もう1つの星漣学園……。それこそが、そういった世界を破壊してまで宮子が求めるモノを手に入れようと決意した根元。それはつまり……。

「みっともないですよね……その発端が、『嫉妬』だなんて」
「……!」
「達巳君を誰かに渡したくない。達巳君と最初に結ばれたい……例え同じ学校の生徒でも、親しくした同じ女の子だとしても……いえ、だからこそ、絶対にそれが許せない……」

 宮子は僕から手を離して身を引き、生徒会長の椅子の背もたれに手をやってくるりとそれを回した。

「この椅子を早坂さんから奪ったのも、結局はその為だったんです。あの人が達巳君を自分の隣に座らせようとする前に、手を打たなければならなかった。全て、先ほどまで私が最もらしくあなたに伝えた事柄は後付けの理由です」
「……そう、だったんだ」
「ごめんなさい、達巳君……。私は……あなたとあの人の時間を、2人が結ばれる可能性を、自分の能力を使って断りもなく奪いました。全ては、自分が気持ち良くなるために」

 宮子の瞳にうっすらと涙が浮かんでいた。今更、僕は気が付いた。宮子が先ほど僕に初めて抱かれた後に涙をこぼした真の意味。
 それは、決して歓喜だけじゃなかった。僕と早坂との可能性を完全に葬り去った事による安堵、罪悪感、勝利の余韻。そして、ペテロに対するキリストの仕打ちを「狡い」と評した自分が同じ様に早坂を利用した事実に対する、暗い悦び。それらの様々な想いが、あの一瞬に凝縮した涙だったのだ。

 すーっと宮子の涙が落ちる。「それでも私は、」と言って言葉を詰まらせ、懸命に震える唇で言葉を紡ぐ。

「私は、あなたに伝えたい。伝えなくてはならないんです」

 こぼれた涙を拭うことなく、宮子は僕を見上げた。

「達巳君に、今日最後に伝えたかった事……いいえ、本当はこの事を伝えるために、そのためだけに達巳君の気を惹きたくてあなたに行った事の、全ての理由……私の、あなたへの気持ち」
「……!」

 不意に、唇に宮子の唇が重ねられた。先ほどまでのような快楽の為のものではなく、気持ちを伝えるための、小鳥の様な繊細なキス……。
 すぐに宮子の顔が離れる。椅子に片膝を乗せ、反対の靴の踵を浮かせ一杯に背伸びして、僕と身長を合わせていた。赤い顔を伏せ、足を床に下ろして一歩身を引く。そして、ため息のように熱く、胸の内から言葉を紡いだ。

「好きです、達巳君……。ずっと、ずっと……あなたと出会う前から、ずっと……好きでした」

 時計塔会館を出て食堂を回り込み、校舎へ向かうとちょうど中央階段前でハルとばったり出くわした。

「あ、イクちゃんおはよ! 遅いよ!」
「ああ……うん。ちょっと、仕事で」
「そっか、イクちゃん役員だもんね」

 相変わらずのハルは「早く早く、ホームルーム始まっちゃうよ」と僕を中央階段へと追い立てる。何だこいつ、もしかして僕が来るのを階段前で待ってたのか?
 階段を登りきったところで突然ハルが歩みを止め、すん、と鼻を鳴らす。「ん?」と後ろを振り返ると訝しげにハルは僕の首筋の辺りをクンクン匂いを嗅いでいた。

「な、何だよ……?」
「ねえイクちゃん……なんでイクちゃんから安芸島さんの匂いがするの?」
「はあ?」
「どこかで安芸島さんと会ってた? でも、それでどうして匂いがイクちゃんからするの?」

 お前は犬か、と呆れて物を言えなくなる。そして内心「こういう事か」と納得して僕はポケットからある物を出してぽいっとハルに放り投げた。

「わっわわっ!? 何っ!?」
「たぶん、それの匂いだろ」

 僕がハルに渡したのは、先ほど宮子と別れる前に渡された飴玉だ。「お腹が空いたら食べて下さい」と2つほど貰ったのだが、本当はこういう意味が有ったのか。
 ハルの方はその宮子の匂いのする飴玉を包装のまま嗅いで「なーんだ」と納得してるし、ほんと、宮子は何でもお見通しだな。

 教室に入り、みんなと朝の挨拶を交わしつつ一番奥の自分の席に着く。ちょうど、それを見計らったようにホームルーム開始5分前の予鈴が鳴った。それを合図に、出る直前の執務室の光景が思い出される――。

「……はい、お返ししますね」

 宮子に手渡されたのは、彼女に取られていた僕の携帯電話だ。受け取って電源が入る事を確認し、その表示に驚いた。7時40分? なんだ、まだホームルームが始まってもいないじゃないか。はぁ、これもしっかり計算通りって事か。
 宮子は僕の拍子抜けした顔に笑顔を浮かべつつ、「まだ授業、間に合いますよ」と僕の鞄を取って渡してくれた。

「あ、ありがとう」
「……はい」

 しばし、無言で見つめ合う。やがて宮子は、ぽつりと呟くように僕に言った。

「……気にしないで下さい」
「え? 何が?」
「私の気持ちを知っても、達巳君は何も気にしないでいいんです」
「……どういう事?」

 宮子は僕の質問に微笑み、少しだけ首を傾げた。

「達巳君はこれまで通り、あなたのやりたい事をやって下さい。その中で達巳君に好きな娘ができたり……その娘を抱いたりするのに、私の事を意識する必要はありません。今日の事は、全部私の我が儘でやった事です。達巳君に落ち度は有りません」
「宮子……」
「私に対して達巳君の力を使うのも、遠慮しないで良いですからね? 性欲を満たすために私の身体を使いたくなったら、自由にして下さい。……私は、もう達巳君のモノですから……あなたのどんな要求でも受け入れます」
「そんな……それで、君は良いの?」

 余りにも僕に都合の良すぎる申し出に、僕の方が戸惑って確認してしまう。しかし宮子は、相変わらずの静かな微笑を浮かべたまま頷いた。

「私はもう、達巳君に抱いてもらえましたから……この学園の誰よりも早く、愛してもらえましたから……それだけで、十分です」

 宮子はそこでいったん言葉を止め、目線を逸らした。そして瞳を閉じ、僅かな逡巡を押し込め、顔を上げて僕を見つめる。

「あの人に……早坂さんにも、優しくしてあげて下さいね」

 そう言うと宮子は、まるで餞別の様に飴玉を2つ渡して僕を執務室から送り出したのだった。

 能力を使ってか、使わなくても僕の周辺の事ぐらいなら予測が付くのか、何でもお見通しの宮子。僕の事を好きだと言ってくれたのに、それでも恋人になりたいなんて一言も言わなかった宮子。それどころか、僕の好きにしたら良いと身を引いた宮子。早坂に優しくして欲しいと口にする前、僅かに逡巡した宮子。

 未来予知の力で、大きな罪を1人で背負って生きている宮子。僕を救うために様々な選択をして未来を変えてくれた宮子。これからも、見返りを求める事無く僕を守ってくれると約束してくれた宮子。

 優しくて、綺麗で、厳しくて、強くて、そして暖かい宮子。僕の隣で微笑んで一緒に授業を受けていた宮子。生徒会で凛々しく指揮を執っていた宮子。自分の罪の告白のために僕を捕らえた、魔女のような宮子。僕の腕の中で淫らに快感に震える宮子。そして、僕の求めには全て答えると聖女のような微笑みを浮かべた宮子……。

 この数日間で、僕はいろいろな宮子を見た。いや、見つけた。時計仕掛けと言われた冷たい正確さの中に、火傷しそうなくらい熱い愛情が潜んでいた事も知った。それは純粋な驚きを僕にもたらし……そして、その次は僕に、言いようもない新しい感情を芽吹かせてくれた。彼女を……助けたいと、心から願った。

 そう、今こそはっきりと自覚する。僕は――

 ――そんな宮子が、好きなんだ。

< 続く >

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