La Hache 後編

後編

「どういう…ことだ?」

 ぴくりとガラドリエルの眉が吊り上がるが、フランツは頭を下げたまま動かない。
 早朝のひんやりとした空気の中、沈黙が部屋を覆う。
 そんな中、のそりと身を起こした者がいた。エファリスだ。

「エファ、起きたか」
「容易ならざる事態のようですので。パフュメがどうとか…」
「そうだ、パフュメだ。フランツ殿、説明していただこうか」

 依然として頭を下げたままのフランツにガラドリエルは視線を送った。
 それに呼応するように、ようやく彼は顔を上げた。彼が見たものは、怒りではなく、表情を消して真剣に彼の言葉を聞こうとしている二人であった。
 フランツは、重い口を開いた。

「では、説明させていただきます…」
「頼む」
「五年前、私は南のナミューに留学に出されました。そこでアカデミーに入学した私は、様々な学問を学びました。その中に、薬学と錬金学がありました。そこで私はこの二つの学問で身に付けた知識を使って、問題のパフュメ『ラ・アッシュ』を作り上げたのです」

 ここでフランツは言葉を切った。ガラドリエルは腕組みをしてその言葉を聞き、エファリスも彼の話の続きを固唾を呑んで待っていた。
 フランツの告白は続いた。

「パフュメとは南の言葉で香水の意味ですが、『ラ・アッシュ』は媚香とでも言うべきものです」
「…ふむ」
「私とて男の端くれ。アカデミーにいた頃は若さもあって、異性にちやほやされたかったのです。このパフュメは千倍に希釈して体に吹きかけると、一晩ぐらいは女性の関心を引きつけられるものでした。逆に男性には何の効き目もない…ない事もないのですが、とにかく誰彼構わず好かれるものではありません。さらに、香りを嗅いだ女性は…」
「我らのようになる、と」

 腕組みしたままのガラドリエルが口を挟んだ。

「…その通りです。そのラ・アッシュを、希釈せずに使いました」
「なぜだ?」
「外交交渉に臨む際に、私に好意を持っていただければ優位に話を進められるだろうと思ったのです。ただ、普通は使者を姫に近づけるような真似はすまいと思い、遠くに離れていてもラ・アッシュの香りが届くように希釈せずに予め体に塗りこんでおいたのです。ところが…」

 時は昨晩にさかのぼる。
 馬を全力で飛ばしてヴィランにフランツたちが入った時には随分と夜更けになっていた。そこで彼は外交使節である事を衛兵に伝え、しかるべき処置を待った。護衛のオルモン家の兄弟とは別々の部屋に案内され、フランツは木の椅子に腰掛けて次の対応を待つこととなった。
 そこにやっていたのは、中年の騎士であった。帯剣こそしているものの鎧は身に着けておらず、少し酒を飲んだ後のようで顔は赤らんでいたが話す言葉はしっかりとしており、そこまで酔っているようには見えなかった。彼が職務怠慢なのではなく、休息時に押し掛けてしまったこちらが悪かったのかな、とフランツはその時は呑気に考えていた。
 事務的に尋問は進んでいたが、やがて様子は急変する。中年騎士が突然立ち上がり、テーブル越しに彼の襟元を捻り上げて力任せに上に持ち上げたのだ。首が絞まって苦しむフランツは、かすれるような声で何とか言葉を発した。

「なっ、何を…!」
「貴様ァ…、短刀を隠し持って姫様の暗殺を企んではおらんだろうなァ!?」

 中年騎士は、先程までの無機質な応対とは打って変わって、怒りの感情をあらわに、そして正気とは思えない眼光でフランツを睨みつけていた。

「そ、そんなことは…!」
「うるさい! 今から俺が調べてやる! 裸にしてでも調べ上げてやるぞ!」

 そう言うなり、騎士は上から下へとフランツの服を乱暴に引き裂いた。そして彼を床に叩き付けると、うめいて動けない彼の服を脱がし、引きはがし、破り捨てた。
 この異変に対し、フランツには一つ思い当たる節があった。ナミューで一度、ラ・アッシュを付けた状態で泥酔した女性と一夜を過ごした事があったが、その時の女性は随分と…乱暴であった。その時は酔っていたからだろうと気にもしなかったが、ラ・アッシュは酒の入った状態で嗅ぐと人の攻撃的・嗜虐的思考を呼び起こすのではないか、と今気がついたのだった。ラ・アッシュはそもそもは男性には効果を発揮しないものだが、希釈していない原液の香りが酒気と結びついて、このような事態を招いてしまったようである。中年騎士も彼を犯そうとしているのではなく、やり方はどうあれ単なる持ち物検査をしていると思っているに違いない。
 フランツは何とか体を起こすと、手を前に突き出して騎士を止めようと叫んだ。既に彼の身には布は殆どまとわれていないに等しい。

「ま、待ってくれ! 武器などない! だから、落ちついてくれ!」
「落ち着けだとぉ? 怪しいな、やはり武器を隠しているのだろう! 姫の暗殺を狙う不届き者め!」

 パフュメの副作用で武器を隠し持っていると短絡的に誤解してしまった騎士は、血走った目でフランツを睨みつけると、帯びていた剣をすらりと抜き放った。対するフランツは文字通り丸腰だ。

「暗殺者めェェ、姫様の御為、この場で貴様を斬る! 覚悟ォ!」

 中年騎士は大きく剣を振りかぶって、フランツを宣言通り切り捨てようとした。
 フランツは精一杯の声で叫んだ。

「待ってくれ! 言っただろう、私はフルハイクの王子だ! だから…」

 その時、扉が大きな音を立てて開かれると、飛び込んできた人物が鞘ごと剣を横に薙いで中年騎士の横腹に強く打ち付けた。その勢いで中年騎士は横に大きく吹き飛び、床に転がって悶絶していた。
 その人物は、大声で廊下にいると思われる兵士に命令を下した。

「この騒ぎはなんだ! 衛兵、ロムンド卿を拘束の上監禁せよ! 詮議は後でする!」

 わらわらと駆けつけた衛兵たちが、ロムンド卿という名が分かった中年騎士の両腕を持って部屋の外へ引きずっていく。部屋に残されたのは、裸に等しい状態のフランツと…、

「大変失礼致しました、使者殿。私はガラドリエル姫の副官を務めております、エファリス・サーガイムと申します」

 彼に頭を下げて非を詫びているエファリスであった。剣こそ持っているが、見るからに美しい…女性である。

「あっ…」

 その事に気づいたフランツはすぐさま彼女を遠ざけようとしたが、もう遅かった。それに、効果を抑えようと服の下に塗っていたラ・アッシュの香りは、裸になってしまった今や遮るものはなく、しかも原液ともなれば…、

「あ、あの…お名前を…教えていただいてもよろしいでしょうか…?」

 先程までの厳めしい女騎士の姿はどこにもなく、まるで初恋の相手に出会えた少女のようにもじもじと立ちすくんでいるエファリスがいただけであった。
 こんなはずではなかったとフランツは内心頭を抱えたが、いずれにせよガラドリエル姫に近づくには彼女を利用するしかない。ラ・アッシュが効いているうちなら、フランツの言う事なら何でもしてくれるはずだ。
 ひとまず、彼は恋する乙女の質問に答える事にした。

「私はフランツ・ウィルム・フルハイク。フルハイク公国の第三王子です」
「まあ、フランツ殿下でいらっしゃいますのね。素敵なお名前…」

 うっとりとした表情で彼を見つめるエファリス。頬は赤く染まり、目は潤んでいる。完全に彼の虜となっているようだ。
 それに、

「あ、あの、殿下…、もっとお側に近寄ってもよろしいですか…?」
「いや、い、今はそんな事をしている場合では」
「ああ殿下…、どうかこのわたくしめにお情けを…。もうわたしくのおまんこは熱くて熱くて、殿下を欲してたまらないのです。ですから、どうか…」

 身をくねらせ、熱い吐息をフランツの耳元に吹きかけ、エファリスが裸のフランツにまとわりつく。軍の高官ではなく、一人の女としてのエファリスが。
 フランツは慌ててエファリスを押し留めようとするが、パフュメによる情欲に支配されたエファリスは、目ざとく彼女が最も欲しい物を見つけてしまい、それを手で優しく刺激した。

「ふふっ、殿下のおチンポもこうして硬くしていらっしゃる…。ああ、早く、早くこのおチンポをくださいませ…」

 フランツのペニスが屹立していたのは、熱っぽくエファリスに言い寄られたからではない。実はヴィラン入城後ずっとこうなっていたのだ。考えられるのはラ・アッシュの原液を体に塗りこんだ事で、パフュメの媚薬作用がフランツの体内を巡っているのではないかと、彼は推測した。実際、エファリスの衣服の上からでもわかる豊満な身体を貪りたくてたまらなくなっている。自分の言いなりになる女の衣服を剥いで、欲望のままに犯せたらどんなに気持ち良いだろうか。
 だが、今でこそ誰もいないが、犯しているところどころかこんな光景すら誰かに見られたら、停戦交渉以前に開戦の口実となってしまう。フランツは理性を総動員して欲望を押さえ込むと、エファリスにガラドリエル姫への会談の手はずと、何か着られる物を持ってくるよう依頼した。その代わりうまくいけば好きなだけ犯して差し上げる、と。その時は口約束のつもりだったが、結果として彼は我慢しきれずその通りとなってしまった。
 フランツの、それもフランツのペニスのためなら国だって売りかねないほどにフランツに熱を上げていたエファリスは、直ちにその言いつけを実行した。ただし、一瞬でも早く「ご褒美」が欲しかった彼女は、その場にたまたまあったマントをフランツに差し出し、さらに姫との面談も正規の手続きを踏まず、最短経路である私室に直接連れて行く、という有様であったが…。

「つまり、お二人が私に対して好意を、好意以上のものを抱いているのは、全て私の作ったパフュメのせいであります…。私を尋問されたロムンド卿に関してもむしろ被害者であります。処罰なさりませんようお頼みいたします。いずれにせよ、貴婦人の心だけでなく体まで踏みにじった事は、命に代えてでもお詫びいたします。ですからフルハイクの領民だけは…」
「そうか」

 平身低頭で謝り続けるフランツに対し、ガラドリエルはそっけない口調で答えた。

「…は?」

 意外すぎる反応に、フランツは調子を崩されて思わず顔を上げて間抜けな声を出した。敵対した者は容赦しない苛烈な性格と聞くガラドリエルが、これほどの事をされて平然としていられる理由が彼にはわからなかった。
 ガラドリエルは腕組みを崩さず、フランツを見据えて言った。

「もう一度聞くが、そのパフュメとやらはそなたが作ったものだな?」
「は、はい、その通りですが…」
「ならば良い。私はそなたの魅力に参ったにすぎぬ。フランツ殿が謝るには至らんよ。ましてや報復に公国を蹂躙するとな? 私はそこまで下劣ではない」

 そう言ってガラドリエルはにやりと笑い、片目をつぶってみせた。
 あまりのありえない事に、思わずフランツは反論を試みてしまう。

「で、ですが、人の心を操る香水などでたぶらかさるという事があっては…」
「剣の腕に長けた者、馬を早く走らせる者、学問に通じた者、容姿が優れた者、美しい詩作を書ける者…、人それぞれに長所があり、女が男に好意を抱く理由も様々だ。ならば、女の心を惹きつける香水を作れる者に惚れたとしても、何の問題もあるまい?」

 こともなげに言ってのけるガラドリエルに、フランツは呆気に取られてしまった。この姫君の懐の異様な広さよりも、別の可能性を彼は即座に考えついた。

「そ、そうか…。ラ・アッシュは原液だったから、まだ効果が…」
「かもしれんな。私はいまだにそなたのパフュメの虜なのかもしれん。だがフランツ殿から離れて効果が消えたとしても、そなたが『私に傷を付けた者』という事実は変わらん。私はもうそなたのものだ、フランツ殿」

 ガラドリエルは寝台の上で体を動かすと、両手を下につけて動く事すらできないフランツの顎をそっと取り、自ら軽く口付けした。
 そして至近距離から彼の目を見据えて言った。まるで心の奥を覗き込むかのように。

「フランツ殿、そなたは私を美しいと言ったな。あれもパフュメが言わせたたわ言か?」

 その真っ直ぐな瞳にフランツは気圧されたようだったが、やがてゆっくりと首を振って答えた。

「…いいえ、あれは私の本心です」
「そうか…。それを聞いて安心したぞ。それだけが不安だったのだ」

 ガラドリエルは安堵の息をつくと、今度は横で静かに事の成り行きを聞いていたエファリスに顔を向けて問うた。

「さて、エファはどうする? そなたがフランツ殿を斬ると言うなら、私はいつでも相手になるぞ? さぞかしいい勝負になるだろうな」
「姫様ご冗談を。私がどうして姫様と戦えましょうか。それに私もフランツ様に純潔を捧げた身です。フランツ様には数多の女性がありましょうが、私にとってはフランツ様は唯一の殿方です」

 胸に手を当て、真剣な顔でガラドリエルと、そしてフランツに語りかけるエファリス。その表情には一片の迷いもない。

「そういうことだ、フランツ殿。そなたが気にやむ必要はない」

 そう言って微笑むガラドリエル。その表情はまるで恋人を慈しむかのようだった。
 そんな二人に対し、フランツはついに決心した。パフュメの力で運命を捻じ曲げ、自らのものとしてしまった二人に対しての責任の取り方を。
 初めて出会ったあの時に目を奪われた、美しい戦女神への自分なりの誠意を。

「姫、エファリス殿…」
「だからガラドリエルと呼べとあれほど言ったではないか」
「わたくしもエファとお呼び下さい、フランツ様」
「ではガラドリエル、エファ…。ありがとうございます」

 再び頭を垂れてしまったフランツに、ガラドリエルが呆れたように言った。

「礼を言う事でもなかろう。愛しい者に何でもしてやりたいのは当然ではないのか? そうだな、今ならフランツ殿が望めば反乱でも何でもできそうだが…、それはともかく、フランツ殿の望みは我が軍の撤退だな。朝の軍議で命令を出すか。まあ、諸侯どもが騒ぎ出すだろうがな…」
「そこは私が押さえ込んでみせます、お任せください」

 軽口を散りばめつつも次々とレディウス軍撤退についての計画を練り始めたガラドリエルに、エファリスがふくよかな胸を張って答えた。
 そこへ、フランツの声が割って入った。

「お待ちください」
「どうした? 何か問題でもあるのか?」
「いいえ、レディウス軍にはこのままシュバイク城まで行っていただきたく思います」
「なんだと!? そなたの目的は停戦であろう? それに弱体化しているとはいえ、あのアルノー砦をどう抜けろと言うのだ?」

 何を馬鹿な事をとでも言いたげなガラドリエルに、フランツは決意を秘めた表情で言い切った。

「ガラドリエル、あなたは先程『愛しい者に何でもしてやりたいのは当然』とおっしゃいましたね」
「ああ、確かに言ったが…」
「それは私も同じです、ガラドリエル、エファ…。アルノー砦は私に任せてください。無傷で明け渡してみせましょう」

 フランツがアルノー砦に戻ったのは、正午過ぎの事であった。
 彼は直ちにガスパルに報告に向かった。臣下の者に案内され、通されたのは昨日ガスパルと面会したあの広間であった。そして、昨日と同じくガスパルは食事中であった。ただし今日は配下の騎士を交えての昼食会であったが。
 テーブルには末端の兵士がとても口にできないであろう、野性的ではあるが戦場にはあるまじき豪華な食事が並び、ワインも一人に一杯ずつ並んでいた。そして、ガスパルは全ての料理の半分を自分ひとりで食べ尽くすかのように、相変わらず乱雑に貪りついていた。
 間が悪かった、とフランツは内心舌打ちしたが、今更引き下がる事はできない。フランツは表情を殺してガスパルに歩み寄り、椅子にどっしりと腰掛けている兄の横にひざまずいた。

「ふん、フランツか。生きておったとはな」

 大事な食事の邪魔をされたガスパルは、見るからに不機嫌そうであった。
 そして手にした骨付きの鶏肉をフランツに突きつけ、いびるように言った。

「して、交渉とやらの成果は? あれだけ大口叩いておったのだから、何の土産もない事はなかろうな?」
「レディウス軍は、停戦に合意いたしました」
「なんだと!?」

 本来なら喜ぶべき報告であったが、ガスパルの機嫌はなぜだかどんどんと悪化していった。フランツに手柄を挙げられたのが不満なのか、それとも何か、ガスパル自身がわからないほどにむかむかと理不尽な怒りに彼は囚われていた。今や彼はフランツが目の前にいる事自体に怒りを感じ始めていた。

「嘘を言うな! お前のような青二才がそんな交渉ができるわけがなかろう!」
「いいえ、事実です。ですが、それには条件があります。手土産の持参です」
「手土産とはなんだ! 言え!」

 ガスパルの顔は怒りで真っ赤に染まっていた。自分の言う通りに交渉に失敗した事を認めない愚弟に対し、自分を出し抜いて成果を挙げようとした憎むべきフランツに対し、わけもわからず怒りを感じていた。
 そして、フランツはガスパルにだけ聞こえる小声で、こう言った。

「兄上の、首です」

 次の瞬間、ガスパルは跳ねるように立ち上がった。その勢いで椅子が後方に倒れ、大きな音を立てる。テーブルの周囲で座っていた騎士たちが、驚いてガスパルの方を見やる。
 ガスパルは傍に置いていた剣を掴むと、フランツに切りかかった。

「キィィィサァァァマァァァァァ!」

 まるで地獄の生き物のような憤怒の表情で、全力で逃げ回るフランツにむやみやたらに斬りつけようとするガスパルの乱心ぶりに、さすがの騎士たちも止めに入った。

「ガスパル殿下、おやめください! 相手は弟君ですぞ!」
「フラァァァァンツゥゥ!」

 狂気のような叫び声を上げてフランツに襲い掛かるガスパルの前に、若い騎士が立ちはだかった。

「ガスパル殿下、お気を確かに…ぎゃあああああ!」

 しかし、ガスパルの振り回す剣がその騎士を袈裟懸けに斬り倒した。胸から腰にかけておびただしい血が溢れ出し、その騎士はもんどりうって倒れた。

「殿下が御乱心めされた!」
「衛兵、殿下を止めろ!」
「医者だ! 医者を呼べ!」

 その場に居合わせた騎士たちが様々に叫び、広間は大混乱となった。そんな中、ガスパルは執拗にフランツを狙い続け、剣を振り回しては様々な調度品や料理を破壊していた。フランツは背中に冷や汗の滝を作りながら、全力で逃げ回るしかなかった。

「フラァァンツゥ! 追い詰めたぞ! 今日こそは殺してやる、貴様の母と同じようになァ!」

 部屋の隅に追い詰められたフランツに、ガスパルが頭上に剣を構えてにじり寄っていく。狂気に支配された兄の後ろには、騎士や兵士たちが兄を止めようと集まってはいたが、先程の惨劇を思うと思い切って飛び掛る事もできなかった。フランツ自身は思い出したくもない光景を思い出さされていたが、今はそれどころではない。逆転の機会が来なければ、待っているのは死だ。
 そもそもの計画では、ラ・アッシュの香りとガスパルの泥酔を利用して兄を激発させ、乱心を引き起こして、騎士たちによる押し込めを狙ったのだが、頼みの騎士たちはガスパルを恐れて周囲でおろおろとするだけであった。
 かくなる上は、やりたくはなかったがやむをえない。フランツは決断した。彼は徐々に迫ってくるガスパルの次の動きを、ジュボンのポケットに手を入れて待った。好機は一度きりしかない。だから、確実に、

「死ねェェェェ!!」

 このラ・アッシュをガスパルにかけなければ!
 フランツは振り下ろされた剣を間一髪で横に転がって避けると、ポケットから取り出した小瓶のコルクを親指で弾き飛ばし、中身の液体をガスパルの顔めがけて振りかけた。

「ぐああああっ、目が!」

 そこまで狙ったわけではないが、目を直撃して顔面全体を濡らしたラ・アッシュは見事にガスパルの視界を奪い、ガスパルは目を襲う痛みに耐えかねて剣を明後日の方向に力任せに振り回した。
 フランツはそれを見届けると、広間の外へと全力で駆け出していく。後ろを振り返らず、とにかく全力で。この後に起こる事を、彼はわかってしまっていたからだ。
 一方、憎むべき弟が目の前からいなくなった事にも気づかず無闇にその場で剣を振り回していたガスパルだったが、やがて流された涙とともに視界が開けてきた。
 そこで彼が見たのは…、剣を手にしてどんよりとした瞳で、しかし眉には怒りを記した騎士たちであった。

「なんだ、貴様ら…。どけ、フランツを殺さなくては…」

 ガスパルは騎士たちをいつものように睨み付けて下がらせようとしたが、どういうわけか騎士は主君の意向には沿わなかった。
 代わりに彼に浴びせられたのは、騎士たちの怨恨の言葉であった。

「自分は死ぬ気もないくせに、兵士たちを簡単に捨てやがって…」
「民は重税に苦しんでいるのに、貴様は贅沢三昧で…」
「お前の、お前のような王族がいるから…」
「お前がいるから、俺たちは死ななければならないんだ…」
「お前がいるから…」
「お前さえ死ねば、俺たちは…」
「そうだ、お前を殺せば…」
「殺せ…殺せ…」
「殺せ、王子を殺せ…!」

 剣を手に包囲を狭めていく騎士たちのただならぬ様子に、ガスパルは始めて恐怖した。普段は這いつくばって彼の理不尽な命令を喜んで受け入れていた者たちの反逆に、心の底から恐怖した。
 ガスパルは震える手で剣を構え直すと、騎士たちに言った。しかしそれは命令でも恫喝でもなく、ただの哀願であった。

「ま、待て貴様ら…、俺はガスパルだ、王子なんだぞ、貴様らとは身分が違うんだぞ、わかってるのか、おい、待て、来るな、来るな、待て、待て………」

 …かくして、『アルノーの反逆』事件は起こった。第二王子ガスパルの遺体は、彼であったと判別が付かないほどに切り刻まれていたという。確かにガスパルは配下の騎士に恨みを買う言動の多かった人物であるが、ガスパル弑逆に参加した騎士の中には、あの時何故主君を殺すほどに怒りが増したのかわからない、と日記で述懐する者がいるなど、謎の多い事件として後世に伝わる事となる。
 ガスパルの死後、アルノー砦の指揮権を引き継いだのは、その場に居合わせていた第三王子フランツであった。フランツは直ちにレディウス軍に対する降伏を決め、早馬で使者を送った。歴史家の中には、フランツが直前にヴィラン駐留のレディウス軍に交渉に向かった直後に事件が起きた事から、フランツがレディウスに内応してガスパルを殺害したと見る者もいるが、フルハイクの歴史書には「フランツ王子は逃げるために手にした液体をガスパル王子に浴びせた」としかなく、フランツがガスパルを殺害するのは無理であったのではないか、というのが大方の見方である。

 翌日、ヴィランを発ったガラドリエル率いるレディウス軍は、白旗を掲げたアルノー砦を敵味方に一人の犠牲も出さずに占領した。その三日後には、大軍に包囲されたシュバイク城が戦端を開く事なく降伏している。
 フルハイクには新たな行政官が赴任し、大胆な、かつ大公の贅沢がなくなる分だけ当然とも言える減税が行われ、より一層東西交易の拡大がなされた。その富は新たな統一帝国を存分に潤したという。旧統治者であった大公ウィルム二世と妻アマンダに対しては、西のサリデス湾に浮かぶ気候の良いフェイクス島の領主、という寛大ともいえる地位が与えられ、夫婦共にそこでひっそりと、贅沢とは無縁に生涯を終える事となった。
 一方、この戦争で唯一生き残ったフルハイク家の王子であるフランツは、捕虜としてレディウス本国に連れて行かれた…。

 こうして百年に及んだ《七大公時代》は、レディウス皇帝レイダスとその娘ガラドリエルによって幕が引かれた。レイダス帝には『統一帝』の名が付けられ、輝かしい新帝国の初代皇帝の地位が待っていた。

 …はずであった。

 新皇帝の戴冠式を前にして、レイダス帝は急死したのである。シュバイク城の陥落から、一ヵ月後の事であった。死因は心臓発作とされている。これにより戴冠式も、同時に行われるはずであった皇女ガラドリエルの婚儀も、全て中止となった。
 また、レイダス帝の後釜を狙って蠢動を始めた彼の子や大貴族たちに対しては、痛烈な一撃が浴びせられた。全軍を掌握していた皇女ガラドリエルが軍を動かし、新帝に成り代わろうとする者を次々と捕縛・処刑・追放したのである。この宮廷革命のあまりの素早さは、ガラドリエルの卓越した能力の証明とされている。誕生したばかりの新帝国の瓦解を防ぎ、外国からの介入の隙を与えず、民衆に被害も出さず、彼女はわずか一月で反乱分子を一掃してみせたのである。
 民衆は噂した。皇女様が旧帝国やレディウスの伝統にない『女帝』となるために軍を動かしたのだと。ガラドリエルは統治政策の確かさとその美しい容姿で特にレディウス以外の「占領地」で人気があり、もはや彼女に敵対する者がいない今、新帝国の象徴として最も相応しい人物であると。誰もがそう思った。

 だが戴冠式当日。城に詰め掛けた民衆も、招待された貴族も仰天した。
 『新皇帝フランツ一世』の戴冠と、そのフランツ一世とガラドリエルの婚儀が同時に行われたのである。民衆は始めは確かに混乱したが、やがて一つの結論に達した。あの皇女様でも伝統を重んじたか。だが代わりに建前として男の皇帝を立てたのだと。実際、皇妃ガラドリエルが政務・軍務全般をつかさどり、夫フランツ一世は後宮であるシュワイゼン荘からほとんど出る事はなかったのである。

 「皇妃ガラドリエルによる」統一新帝国は周辺国に大いなる脅威を与えた。戦の女神とまで言われたガラドリエルに率いられた軍は、五倍の敵をたやすく打ち破ると噂されたほどであるから、新帝国の矛先が自国に向く事を恐れた諸国は、フランツ一世に対して次々と美姫を差し出した。実権がガラドリエルにあろうとも、縁戚関係の者を討つはずがない、という打算からである。皮肉な事に、北のスタラフ家もフランツ一世に対して第四王女シエンシアを差し出している。そしてガラドリエルも、外交戦略上それらを全て受け入れた。
 こうして統一新帝国はガラドリエルのもと、統一戦争の傷跡を癒す絶好の時間を手に入れ、さらなる発展の道を歩み始めた…。

 夕刻。美しく手入れされた広大な庭を抜け、シュワイゼン荘の館の入り口に一台の馬車が止まった。すぐさま駆け寄ったメイドによって扉が開かれると、中から降りてきたのは純白のドレスに身を包み、豪奢なティアラを美しい金髪に飾った皇妃ガラドリエルであった。そして、その後ろからは幾多の勲章で胸を飾った軍服姿のエファリスも付き従う。彼女は第二皇妃の身であるが、軍務大臣も兼務してガラドリエルを補佐している。
 ガラドリエルとエファリスが無言で歩んでいく道筋の両脇には、館に勤めるメイドたちが一列に並んで二人に頭を下げている。彼女らの服装は、一様に濃紺の衣服と白いエプロンからなっていたが、スカートの裾は膝の上にあり、肘もむき出しであった。この事は、館の外とは全く違う常識がこの後宮にはある事を示している。
 人の背丈の三倍はあろうかという大きさの玄関扉が、ガラドリエルたちの歩みを止める事のないようにメイドによって開かれると、ガラドリエルとエファリスは館の中へと入っていった。
 赤い絨毯の敷き詰められた広間に足を踏み入れると、すぐさまメイドが数人近寄ってくる。

「お帰りなさいませ、ガラドリエル様、エファリス様。ではお召し物を…」
「ああ、頼む」
「よろしく」

 皇妃二人はメイドたちに促すと、ドレスや軍服を脱がせ始めた。てきぱきと皇妃の服を脱がせている若いメイドたちは、外にいたメイドと同じなのは白いエプロンと頭を飾るヘッドドレスだけであった。他に衣服は全く身に着けておらず、エプロンの横からこぼれそうな胸も、そもそも隠そうともしていない尻も、全てが露になっている。
 後宮では身分の低い者ほど服を着る、というのがここの新たな慣わしとなっていた。皇帝の目を楽しませるため、というのが第一であるが、武器を隠し持てる余地を減らす、という理由もある。よって、庭で働く事しか許されていない者は、一般的なメイドよりも露出が多いとはいえ服を着込み、館の中で働く栄誉を与えられた者はエプロンのみとなり、

「皇妃様、お待たせいたしました」
「ああ、いつもすまんな」

 皇帝の寵愛を受ける皇妃たちは、髪や首を飾る宝飾品を除いて全ての衣服を身にまとわない、つまり全裸となるのである。そもそも後宮で行われる事の目的を考えれば、着衣自体が無意味なことではあるのだが。
 皇妃となって以後のエファリスの美しさにはより磨きがかかったが、ガラドリエルには別の美しさが備わった。統一戦争の頃からわずかに膨らんだ胸と、同じくわずかに膨らんだ腹である。彼女は懐妊していた。
 逆算すればヴィラン城での一夜で身篭った子であるが、その事実が歴史に記される事はない。皇妃ガラドリエルの第一子は「早産」として世に出ることとなる。

「皇妃様、皇帝陛下がお待ちです。どうぞこちらへ」

 館のメイド長を勤めるセナスが二人の前で一礼した。メイド長の証として、彼女だけは腰から下だけにしかエプロンを着けておらず、エファリスよりも大きく柔らかな胸があらわになっている。皇妃たちよりも五つ年上で、漂う色香の面では皇妃二人を合わせても勝ち目のなさそうな雰囲気を持った女性である。
 セナスはレディウス一の名門であるハディウム家当主の夫人であったが、反ガラドリエル派の筆頭であった当主が宮廷革命で処刑されると、新皇帝に引き合わされ、それ以後「なぜか」フランツ一世に恭順を誓って今の地位を手に入れた。当主が亡くなり夫人が平伏した事で、ハディウム家に組していた貴族は次々と抵抗を諦めてガラドリエルに下ったのだ。ハディウム家の屈服は宮廷革命において多大な影響を与えた事件であり、彼女もまたガラドリエル同様歴史を大きく動かした女性と言える。
 そのセナスに先導され、ガラドリエルとエファリスは赤い絨毯の上を進んでいく。やがて、大きく格調高い扉の前まで来ると、セナスが扉を開けて皇妃たちに入室を促した。二人はセナスに軽く会釈をして入っていく。
 その部屋は、寝室であった。広大な空間には豪華な調度品や美術品が並べられているが、特筆すべきは寝台である。天蓋付きの寝台は十人が横に並んでも軽く眠る事ができそうなほど幅が広く、枕までたどり着くのが面倒なほどに奥に長かった。
 そしてその寝台には今、各国から集められた七人の美しい皇妃たちと、後宮に入る事の許される唯一の男性、フランツ一世がいた。
 フランツは寝台に大の字になって横たわっていた。彼の両手と両腿には彼の皇妃が一人づつ、計四人が膝立ちで皇帝の体を使って快感を味わっていた。

「あんっ、陛下のっ、指、いいっ!」
「陛下ぁぁ…、もっと指で、わたくしを…、昂ぶらせてくださいぃ…!」
「ああ陛下のおみ足…、おまんこがこすれて、あふん、気持ち良うございますぅ…」
「お舐めさせていただきます…、ああ陛下、陛下の何もかもおいしくて…」

 そして、彼の腰の上では第五皇妃シエンシアが上下に体を揺さぶっていた。シエンシアは見かけも実年齢もガラドリエルより幼かったが、その動きは街の娼婦もかくやといったものであった。

「ああんっ、陛下ぁ、シアのおまた、気持ちいいですっ! あん、あんっ、ああんっ」

 そして陛下の直接の寵愛から漏れた二人の皇妃が、お互いの性器をこすり合わせながら順番を待っていた。

「はあん、ああ…いいですわ…っ、んんっ、もっと、こすって…!」
「おまんこ、いいですっ…! ああ、もっと、おまんこっ!」

 宗教家にはとても見せられない光景ではあるが、皇帝にとって最も大事な仕事の最中であり、彼自身には皇妃たちの、そして自分自身の行動を止められない理由があった。
 フランツが塗り込んだラ・アッシュの効果は、減衰こそしたものの結局消えなかったのである。ヴィラン城の一夜以降、フランツから三歩離れた距離に女性が近づくだけで、その女性はフランツの虜となり、訳もわからず体を火照らしてしまったのだ。そしてラ・アッシュの媚薬効果はフランツ自身の男性機能を常に刺激し、寝ている時以外は女人と交わりたくて仕方ないほどに彼の欲望を煽り立てていた。このような状態であるから、フランツ一世が後宮に閉じ篭ったのは自らの決断であったのだ。下手に園遊会に出席して、来場した貴婦人が既婚未婚老若問わず彼に夢中になる事があってはならないのである。

「あっ、陛下っ、シアのちくびっ、らめぇっ、でも、もっと、ああんっ!」

 シエンシアが幼さの残るかん高い声で鳴く。フランツが両手を伸ばして、先端だけがつんと尖った彼女の胸を優しく刺激したのである。こりこりと指を動かすごとに、シエンシアは目を白黒させ、よだれをはしたなくも垂れ流しながら歓喜の声を上げる。

「盛んなことだな」

 その声にフランツが横に視線を向けると、そこにはガラドリエルが座っていた。いとおしそうに少し膨らんだ自らの腹を撫でながら。

「ガラドリエル…」
「責めているのではない。世継ぎなくば国は安定せん。国事は私とエファが取り仕切るゆえ、そなたは安心して子を作れ。一人では心配だから何人もだ。私もこの子の出産が済み次第、すぐさまそなたに孕ませてもらうからな、覚悟しておけ」

 そう言ってガラドリエルはからからと笑った。
 宮廷楽団の代わりに高貴なる娼婦たちの淫声を聞きながら、彼らは話を続けた。
 フランツは皇妃たちを上に乗せたまま、少し表情を曇らせてガラドリエルに言った。

「しかし、作りすぎては僕の兄のように…」
「それは親の教育が悪かったのだろう。だがそなたは違う。そなたの子なら親に似て権力争いにうつつを抜かすような者には育つまいて。信じてるぞ、私の皇帝陛下殿…」

 と、ここでガラドリエルは言葉を切った。切らずにはいられなかった。

「…何をしている、エファ」

 冷ややかな視線とともに、ガラドリエルはエファリスを見た。
 そのエファリスは、大の字に寝そべっているフランツの顔を取って、唇をついばんでいるところだった。元主君の冷気を帯びた声を感じて事の重大さに気づき、エファリスは唇を離して気まずそうに顔を上げた。

「あ、あの…、えっと、その、陛下の唇がお寂しそうだったので、つい…」
「ほう…、それは身重で陛下に構ってもらえぬ私に対する当てつけかの…?」
「い、いえっ、そんなことは…」

 頬を引きつらせて、腕組みしながらも怒気を抑えようと抑えようと努めるガラドリエル。しかし周囲の皇妃たちの上げる艶めかしい声が、彼女の堪忍袋の緒をついに切った。
 皇妃の威厳も何もかもかなぐり捨てて、怒鳴り散らす。

「そこをどけ、シエンシア! そのチンポは元はと言えば私のものだ!」
「やですぅ! あんっ、シアはまだっ、あふんっ、へーかにどぴゅどぴゅって、してもらってないんですぅ…、あはんっ!」
「ガラドリエル様、今は大事な時期です! どうか御自重を!」
「えーいうるさいうるさい! 口でも尻の穴でもどこでもいいからフランツの精をよこせ! 私とて国事さえなければ四六時中フランツといたいのだ! かくなる上は、こやつを玉座に据えて後ろから尻穴を突かれながら国事を…、ふふふ…それもいいな…」
「お気を確かに、ガラドリエル様! そんなことをしたら大事になります! シエンシア様が終わったら、私と一緒にお口でおチンポをお清めいたしましょう。ね、そうしましょう?」
「エファリス様、次はこのわたくしの番ですよ。ねえ、陛下?」
「陛下ぁ、次はこの私にお恵みを~」
「陛下…」「陛下!」「陛下ぁ」「陛下…!」

 情欲を隠そうともせず、雪崩のように身を寄せて次々とねだってくる愛する妻たちの饗宴に苦笑しつつも、フランツはガラドリエルが生き生きとしている事に喜びを感じていた。
 彼女が自由に生きていけるために、彼もまた何でもしたのである。
 たった一目で自分の心を虜にした、金色の戦女神のために。

 統一帝国の初代皇帝フランツ一世は、最終的に十二人の妻と五十人以上の愛妾(いずれも後宮に勤めたメイドである)との間に百人を越える子をもうけた。この事が彼を『傀儡帝』だけではなく『漁色帝』の異名を持たせ、無能な人物であったと誤解されるゆえんであるが、彼の発案で皇妃ガラドリエルが実行した経済政策や学問振興策は帝国の発展に大きく寄与しており、また彼の子には後に人類史における偉大な発見を行った天文学者や物理学者、名作を遺した芸術家が多く、その面だけでも歴史に大きな貢献をした人物と言えるだろう。

 だが、近年になってレイダス帝の遺髪の化学鑑定で毒物が検出され、歴史の再修正の論議が始まったばかりである…。

< 完 >

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