key 番外編2

番外編2

(注・この話はKey2章の6、7のネタバレが含まれます。読み進める上では6>番外編2(コレ)>7の順番で読まれるとよろしいかと思われます)

 その日、ボクはカミサマに逢った。
 不幸なボクをカミサマは選んでくれた。
 そう、ボクは、選ばれた人間だったんだ―――

 ボクの名前は白鷺 聖人、頭脳明晰で成績はもちろんトップクラス。
 聖人のようになりますように、そう名づけられ、今まで育ってきた。
 それでいて性格もどちらかというと、うん、気さくな方だ。

 …だけど、一つ問題がある。
 容姿だ。
 体系は肥満体型、ストレートにいってしまえばデブ。
 それだけならまだよかった。
 顔は子供たちが1メートル以内に近づいただけで泣いてしまうほどにブサイクだった。
 無数にある吹き出ものと顔にも貯まった脂肪、そして何を考えているのか分からなさそうな、目元。
 結果、誰もボクとは口をきいてくれなくて、自然と口下手、というかどもるようになってしまった。

 そんなヤツはいつだってイジメられる。
 異端で、しかもこんな容姿だ。誰も助ける気なんて起こさない。
 今日も親の財布から最近変わったばかり、でも描かれている人物は変わらなかった御札を取ってこさせられた。
 先生…海鵜先生は気付いていない。
 あの先生のことだから気付けば咎めるだろうけど、そんなコトになればますますイジメはエスカレートする。
 だからそんなコト相談できるハズもない。

 例外がいるとすれば同じクラスの御嘉神さんと朱鷺乃さん、烏くん、それにここ数日休んでいた外乃宮さんという女子くらい。
 彼等だけはボクの事を避けようとはしないし、イジメてこない。
 だけど烏くんはまだしも、みんなで団結して女子には近づかせないようにしている。
 例えば、朱鷺乃さんは気軽に声をかけてくれるけどみんなそのことを無視して強引に朱鷺乃さんと会話を始める。
 ……まるでボクなんかいないかのように。
 だけど烏くんの場合、みんな止めようとしなかった。いや、止められないだけかもしれない。
 彼は何か困った事があってそれがボク向きな用であれば僕に聞きに来るし、何より彼はいつだって一人でいるのにいつだって周りに人が集まってくる。

 周りの連中はテレビの中に偶像を追い求めるけど、ボクの理想はボクの側にあったんだ―――

 そんなある日、ボクは―――カミサマに逢った。
 なんとカミサマは最初、行き倒れていたんだ。
 それはとても綺麗なヒトの形をした人形のようだと思ったよ。
 昨日、読んだ美少女マンガから抜け出たような、そんな美女。
「あ、あぁあ、あのぅ…」
 大丈夫ですか、そう言おうとして、のどに詰まった。
 すると少しだけ、伸ばされた手がぴくり、と動いた。
「わっ、わっ」
 少しだけびっくりした。
 だけど動かなかったらもっとびっくりしていたかもしれない。
「―――み…みず……それに食べ物も…・」
 カミサマは随分とひもじい思いをしていたようだった。
 ボクは持ってこさせられたお金を使って食べ物を買ってきてカミサマにあげた。
 おかげで今日は殴られたりイジメられたりすると思う。でも仕方ない事だと思う、うん。
 さすがに自分が放っておいてそれで死なれでもしたら夢見が悪いだろうから。
 それに、こんなことでもないとこんなキレイな人と喋る機会なんてないだろうし。

 なにより、本当に困った時に指し延べられる手の暖かさを知っていたから。

 落ち着いたとたん逃げられるかもしれない、だけどそれでも近くにいられるだけで満足だった。

「ぷは、くったくった。
 って毎回こんなコトやるってのも考え物ね…ネタを変えようかしら…」
「あ、あぁあ、あの…」
「ん?あぁ、ありがと、それじゃ―――」

―――あなたの願いかなえてあげる―――

 そしてボクは指環を手に入れた。

 あれから2週間が経った。
 カミサマのトランクの中に残っていた3環の指輪は全てボクの手に収まっていた。
 もちろん、指輪に封じられていた魔神たちとは全て契約した。
 自分以上の尋常はばかられる存在である彼らはあっけなくボクとの契約に応じてくれた。
 彼ら曰く、
「おもしろそう」
 だからだそうだった。
 そして今のボクは完全に昔のボクではなかった。
 歩くたび、誰もが振り返る。
 しかもそれは嫌悪の視線ではなく、好奇の視線。
 長身痩躯で眉目にして秀麗。
 2週間前、ボクは交通事故にあったということで学校にウソをつき、家にこもり指輪の力を使い、自分自身を[改造]した。
 部屋から出たとき、ママはボクだと分からず卒倒し、入院してしまった。
 …そう、ボクは選ばれて生まれ変わったんだ。
 そう、自由自在に姿を変えられるシリアルナンバー1の東方王・バールの力によって―――

 あれからバカなことをする必要はなくなった。
 誰かに媚びへつらう事も。
 イジメられても泣き寝入りする事も。
 そして、誰かに親切にすることも。

 今やそんなことする必要はなくなっていた。
 ホント、そんなのバカバカしくてやってられない。
 だってボクは誰よりも選ばれた存在なのだから。
 
 今は―――見下す側。
 今は―――選ぶ側。
 そして――支配する側、なのだから。

 イジメてくれていた連中はみんな次の日から病院に行くか身内に不幸があって学園にこなくなっている。
 あんな連中がどうなったかは知らない、というより仕返しが終わった相手には既に興味はなかった。

 影でボクをバカにしていた女達もいても目障りなだけだから、いつか一部の上玉以外はほとんど消していく予定だ。
 少しずつ、少しずつ。
 急すぎる変容はいつだって誰かの目を引く。
 幸い、今は学園祭の準備期間で立て続けに6人ほど手にかけてしまったけど警察も動いていないようだ。まぁ、証拠なんか残らないように仕掛けたから警察は[事故]として処理するだろう。
 そういえば警察の代わり、と言ってはなんだけどカラス君が来た。だけど代わったボクを当然のように受け入れてくれた。少し残念だったけどそれよりも流石、という意志の方が強かったよ。
 だけど―――それじゃダメなんだ。
 カミサマは言っていた。
 ボクと同じような力を持ったヤツが他にもいる、と。
 そして他の連中の指環を奪って頂点に立ちなさい、と。
 だからいつまでも他人の後塵を拝んでいるワケにはいかない。もっと人の上に立つようにならなきゃ。

 つい先日も指環を持っていた女がいたんで襲って犯して2環の指環を奪った。
 そう、ボクにとっては他人から指環を奪う事はいとも容易く、あんな簡単にできるのだ。他人にすがる必要なんかない。
 あれ以来、カミサマの言っていた他の指環に対する興味はほとんどなくなっていた。
 それよりも今は城創りに専念すべきだ。
 2週間ぶりに見る学園の前に立ち一人ごちる。
 ボクにとっての、ボクだけの為の牙城を、この学園を城にする―――

 そして今。
 ボクは女子トイレの個室の中にいた。
 なんてコトない。せっかく魔法のような力を手に入れたのだ。
 王になるのもいいけど、それよりも今は手に入れたこの力で楽しませてもらう。
 個室にはボクと―――見も知らない女の子。
 同じクラスじゃない。
 確かにウチのクラスにも可愛い子は何人もいる。
 前にも言ったボクに話し掛けてきてくれた朱鷺乃さんや御嘉神さんに、外乃宮さん、他にも相良さんは彼女達はテレビのタレントと同じかそれよりも可愛い。
 実際、隣のクラスにはアイドルをやっている女の子もいるけど彼女たちも彼女と遜色ない。
 だけど身に付いた苦手意識か罪悪感からか同じクラスの女子達にはいまいち手を出す気にはなれなかった。
 とりあえず、女の子に対する苦手意識を克服する為、この身体になってから街で何人かの女の子を味見していた。学園内で女の子を犯すのは初めてだがまぁ、何とかなる、と思う。
 今日の女の子は綺麗、というよりはかわいい部類だ。スタイルもモデル張りに出るトコはでていた。じゃなきゃ一緒にいるワケがない。

 肩口まで切りそろえられたショートの茶髪に膝上に程よく発育した胸、それにくびれたお腹が引き立つように引き上げられ張ったヒップ。顔も普通にグラビアを飾るような女子と同じかそれより可愛い。
 女の子はしゃがみこみ、いそいそとスカートの中に手を入れ薄青色のパンティをずり下げた。
 剥き出しになった秘部はまだ毛が生えていなかった。

 ここまでしていても彼女はボクに気づいた様子はない。無理もない。彼女はとある事情でボクが見えていない。
 そして―――同じく見えていないフタの開いたミネラルウォーターの入ったペットボトルを持って指輪を静かに熾す。

 熾きろ―――フォルネウス

「!」

 女の子が目を見開く。
 無理もない、ボクの持ったペットボトルの中に入った水が意思を持ったかのように空中から姿を現し女の子の口の中に入っていく!
「んんっ!ん~~~~っ!」
 必死にもがいて逃げようとするがいかんせん狭い個室の中でしゃがんでいる為、身動きが取れずにそのまま水の浸入を許していく。
「ごほっごほごほっ…っ!」
 何事かわからずにとりあえず酸素をむさぼる。
 そして―――
「………」
 何事もなかったかのように再び腰をおろす。
 そして―――
「ん…っ」
 両手を差し延べ、突然姿を現した(ように見える)ボクを気にする事なく、おろしたての制服のズボンからぶるんっ、と弾き出されるように突き出したペニスを大事そうに持ってしゃぶりだす。

 これがボクの指環、No.30 水霊大候フォルネウスの能力。
 意のままに水を操るだけじゃない、その水に念を込めて対象に飲ませるとその対象の精神を操れる。

 この能力には触媒となる飲ませる量や効果時間など細かい取り決めがあるのだけれど今の所、問題ない。
 なんせ飲めなければ今のように水を操って無理やりにでも飲ませてしまえばいいのだから。

「んっ、ン……ちゅく、れろっ、は、ふぅ、ふ、んんん、んっ、はぶ、ちゅっ」

 そうそう、[トイレではまず目の前に肉棒がある場合、奉仕することから始まる]んだよね。

「ん…っ、れろぉっ、んっ、ぷっ、は、んん、ちゅ、ちゅぅ……! ふ、はふ、ん、んぅ…ふぁっ!やだ…このおチンポ様美味しいよう…っ!」

 そう[女の子は誰でも男子のペニスが大好物なんだからペニスをおチンポ様と呼んで美味しそうに、愛しそうにしゃぶる]のが普通なんだ。

 次に、[おチンポ様にしゃぶりながら目の前に現れたカメラに笑いかけてそのまま下半身が良く見えるよう腰を突き出して自分がしたい方の穴を中が見えるよう弄ってみせる]こと。
 じゃなきゃいつまで経ってももよおしてこない。
 だから自分がしたい方―――今回はオシッコだったらしい、無毛の自分の陰唇をペットボトルとは反対側の手に持たれたビデオカメラにむけて広げて尿道口をゆっくり[マッサージして便意を高めていく]それが正しいトイレのマナーだ。

「んっ、はっ、オシッコするだけなのに…っ。なんでこんなにキモチいいのぉ…っ?」

 自分は当たり前の事をしているだけなのにこれまでしてきたどんな排泄よりも。キモチイイ!

 それもそうだ。この[水]にはもう一つの指環の力を混ぜてある。
 それがNo.3 予言の貴公子、ヴァサーゴの持つ。開淫能力。
 この指輪の導きにより身体のどんな器官であろうとも、個人によって異なる感じるスポットを明確に刺激させ、性感帯に開発してしまえる。

「はっ、ふっふんんぅっ!こ…こんなキモチいいのに…っ、なんでイけないのぉ…っ!?」

 決まってる。それは口に入ってるおチンポ様への奉仕が足りてないからだ。
 女子もようやくそれに気付いたらしく、亀頭のえらの部分を唇の内側に引っ掛け、舌のザラついた表面を使って自分が弄っているのと同じ、こちらの尿道口を強弱をつけてマッサージしてくる。

「ちゅっ、にゅるっ、ちゅぷっ、にゅるるっ、ちゅぱっ、ぬりゅうっ!」

 次に、その状態で徐々に口内の空気を抜いておチンポ様の中で徐々に駆け上がりつつある白濁液を無理矢理吸い上げてくる。

「んふぅ…っ、おチンポ様びくびくしてるぅ…っ♪、出る……ぅ? ちゅるっ、ん、ちろ、ぺろっ、出るのぉ?」

 ちゅっ、ちゅうっ、ちゅるるっ!ちゅぷっ、にゅるるっ、ちゅぱっ、ぬりゅうっ!

「…っ!」

 びゅくんっ!びゅる、びゅっ!ぴゅぴゅっ!ぴゅっ…ぴゅくっ

「あ…っ、でるっ!くるっ、でるっ、くるっ、でるでるっくるっくるくるッ!おしっこぉっ、オシッコでキちゃうううぅっ!」

 ぶしゃあぁぁっ!びゅ―――っ!びゅるっ!ぴゅぴゅっ!

 よほど我慢していたのか勢いよく放尿し、それと同時に口に溜まったザーメンを嚥下しながら絶頂し、腰をビクつかせて自分の淫液をはしたなく便器に撒き散らす少女。

「んんっ」

 ぴゅっぴゅっ

 尿道に残った黄金水が飛ぶ。
 そしてボクはそれをペットボトルとは反対の手に持っていたビデオカメラで余すことなく撮影していた。

 そして―――

「んうぅ―――きゃっ!」

 両手の荷物を邪魔にならない場所に置きくと絶頂に達して放心状態の少女を普段通りに意識に戻してそのまま押さえつける。
 突如、意識が戻り、知らず知らずの内に小便が終わっていたところに手足に圧迫感を感じ体の自由が効かなくなり小さな悲鳴をあげる。
 だが、ボクは彼女の声を[奪]ってある。と言っても声を出せなくした訳じゃない。
 場所が場所なだけにある一定以上の大きい声や音を出すことに対して制約を課したのだ。

「―――!…ッ!」

 トイレの壁に手を付かせるとボクは少女の縦すじを何度も自分の肉棒で丹念にすりあげた。
 女の子は未知と未視の感覚による恐怖に壁を叩いて助けを求めようとし、ドアを開けようとするが身体がすんでの所で腕を止めてしまう。

「うっ…ふぅっ・・ひあぁあっ!な…っ、なんでぇっ!?」

 当然、助けを求める行為も禁則事項として課してある。
 そんな感じで続けていると次第に股間が二種類の液体から一種類になり、湿り気と粘性を帯びてきた。
 それに伴い、少女の息もだんだん荒く、甘いものに変わっている。
 それどころか―――

「…んっ、はぁ…っ!」

 自分から腰を動かしている。
 そして唯一、自由の効く右手で自分の胸を愛撫しだした。
 ははは、未知の恐怖から抜け出す為に快楽を選んだか。
 協力してあげる。まぁ、恐怖を与えているのはボクなんだけど。
 ボクは少女の足の開度を少しだけ増やしてマンコに顔を近づける。
 女子特有の匂いとむん、とした少女の匂いが鼻につき、その濃度が上がるにつれ、少女の性器がボクに近づいてくる。
 そして―――剥き出しにされた下半身の溝に舌を這わせる。

「!…っ!」

 ビクンッと少し肢体を反射させ、びっくりしたもののそれが少しずつ自分の感じる部分に近づいてくる事を知ると少女の顔は期待に満ちた顔になった。
 心なしか自分の感じる部分を押し付けてきている気がする。
 この歳までで知らないほうがおかしいけど肉欲が十分に身体に浸透しているらしいね。
 ほんの少しまでしていた尿のアンモニア臭としょっぱい味とともに愛液特有の粘り気と形容しがたい薄い味が口の中に広がってきた。
 それをかきだすように丹念に舌でかき回す。
 毛が生えていないため、秘部は丸見えでテラついていて薄暗いながらも少女の淫裂は中まで見えている。

「…っ!っ!」

 顔を激しく上下して絶頂が近いことを見えていないボクに伝える。
 ―――分かったよ、一度イカせてあげる。
 ボクは舌の代わりにマンコに指を入れるとさらに奥まで弄くりだし、空いた口で淫核の皮を剥いてかるく噛んだ。

「っっっ!」

 ぴゅっぴゅっぴゅぴゅっ

 トイレの壁とボクの口、指に容赦なく汐がかかる!
 同時に絶頂して脱力したのか少しずつ少女がずり落ちてくると特有の柔らかさを持つ胸を揉みしだきそのままなんとか支える。
 っと、あぶないあぶない…
 一回イったくらいで済んだと思われちゃ困るな。

 だって―――本番はこれからなんだから。
 ボクは自分のさっきから怒張している自分のモノをあてがうと少女の秘裂を貫いた!

 ぬっ…ちゅぅっ…くぽっ……んちゅうぅっ…

「あああぁっ!」

 潤んだ秘所はボクのモノを抵抗なく受け入れる。
 声は喘ぎ声に関して制約は課していない。だが、耳をこらせばきちんとトイレ内には響く程度の音量にはなっている。
 幸い今、このトイレの中は彼女一人だけ。だけど誰かが入ってきたら―――どうなるのかな。
 実際、この娘もそれに気付いたらしい。トイレ内に響く自分の喘ぎ声を聞いてきゅうっと自分の性器を締め上げてきた。

 じゅぼっ、ちゅぶっ、ぐちゅぅっ、ぬちゅんっ!

「だめッ!やぁっ、まだだめなのぉっ!イったばかりで感じすぎちゃうのおっ!
 こぇ…抑えなきゃいけないのにぃ…っ!ふぁっ、でちゃうぅっ!」

―――まぁ、そんなコト、ボクには関係ないからね。

 ボクは自分に都合のいいように挿入を繰り返す。
 一回イかせた所為かスムーズに注挿ができる。

「やぁっ、ダメ、ふとい…っ、コレぇっ、ふとくてかたくておおきいよぉっ!」

 ちなみにボクはチンポのサイズは変えていない。
 その為、ボクのチンポは包茎だったが今では完全に剥けあがり、サイズは元から太く、大きいままだった。
 味わった事のない大きさのチンポによる挿入に困惑しているのか?

「やぁ、ダメ、ダメだけどいいのっ!おチンポ様がぁっ、彼のより太くて大きいのが…イイのぉっ!」

 悦んでいるのか次第に向こうも腰を動かしだす。
 …この女、根っからの淫乱かもしれない。
「あぁっ、もっとっ!もっともっとぉ…っ!もっとおチンポさまぁんっ!!」
 そんなコトをあられもなく喚きながら自分から腰をひねる!
 それだけじゃ―――ない。
 自分からクリトリスを愛撫しながら自分の乳首に吸い付き、こねくり回して愛撫している。
「あぁ、いい、いいっ、イイのっ!っはぁんっ!イくっ、またイクぅっ!」

 ビクンッビクビクッ

 粘着質を伴った挿入の後、締まるマンコが余すことなくボクのチンポをシゴきあげる!

 っで!出―――でるっ!

 ビュルッビュルビュルッビュルルルッ!ビュルッ!ビュルビュルビュル!

「あぁ…出てる…
 コレぇ…おチンポ様ミルク、膣でぴゅっぴゅって出てる…っ、気持ちいいよぉ…」

 ―――…
 ボクは内心舌打ちした。
 女の子を怯えなさせながら犯すほうが支配感が増すっていうのになんだかこれじゃ肉欲を満足させたようなものだ。

 まぁ、いいか。
 ここでのコレは準備運動みたいなものだし。
 それに―――オマエが満足しようが知ったこっちゃない。ボクが満足するまでいい声で、鳴け。

 ずっ

「きゃっ!ま…まだするの?冗談でしょ?もう私は十分…」

 だから、オマエの要望なんか、聞いてないし、何回イこうが知ったこっちゃない。

 第一、ボクが一度や二度の射精で満足するワケが無いだろう。
 女子の顔に期待と怯えが走るのをよそにボクは再び無秩序に注挿を開始する。
 
 じゅぼっ、ちゅぶっ、じゅぼっ、ちゅぶっ、ぐちゅぅっ、ぬちゅんっ!

「ひっ!あっああぁぁぁっ!ら…っ!らめえェっ!おチンポ様っ!おチンポさますごしゅぎてっ、オマンコっ!オマンコがヒくのとまらにゃいいぃッ!」

 じゅぼっ、ちゅぶっ、じゅぼっ、ちゅぶっ、ぐちゅぅっ、ぬちゅんっ!

「…っ!なぁ…っ!くる!くるくるくるくるくる大きいの来るぅッ!」

―――ようやく効いてきたか。
 フォルネウスの力が及ぶのは何もこの手に在る水だけじゃ、ない。
 ボクのスペルマにもその力は及ぶ。
 しかもこれは遅行性な分、強力な力を備える。
 これで完全に姿を隠す必要性はなくなった。
 女の瞳が今まで無意識に捉えられなかったボクの顔をその眼で捉える。
 その瞬間―――

「…っ!あっ、あっ!あっ!ご…ご主人様あぁぁぁぁぁぁっっ!!イ…っ!イキますぅぅ…っ!」

 きゅううううううううううぅぅぅっ!

 ボクを見つけると同時に女の子の膣道がまるでボクの巨根を逃さないように、その根の中に流れる白濁液を求めるように締め付けてくる!

「ご主人さまぁ…っ、ご主人さまぁ…っ、ああぁぁっ!」

 あまりの喜びに涙を流す。
 …そう、これがその効果―――絶対王権。
 僕のザーメンを体内に含んだ者は自動的にボクの従僕になる。
 しかもこの方法で従僕にした場合、水を飲ませた場合のようにタイムリミットは無い。しかもそれだけじゃない―――

「かっからだが…っ!」

 そう、相手の肉体をボクの思うがままに操れる―――!

 痙攣したように全身が微振動し、その上、ヒップが円運動を始める。

「かっからだがぁ…っ!?らめぇっ!感じすぎちゃうのに…っ、かってに腰動いちゃ…っあっ、あっ、あぁぁっ!こんこんってぇ…っ、しきゅっ!子宮降りて来ちゃってるぅッ!
 こっ…これで射精されちゃったら妊娠しちゃうぅ…っ!、ダメっ、ダメダメっ、らめなのぉっ!ごひゅじんしゃまおチンポしゃまミユクっ、欲しひけどラメらのぉッ!」

 既に膣中に射精した精液が女子のおマンコの中に塗りたくられ、おチンポ様が入った容量だけかき出されていく。
 まぁ、安心するといい。
 かき出てしまった分はいくらでも補充してあげる。
 ほら、そんなにキツく生き物のように断続的に締め上げてこなくてもちゃんと射精してあげるからさぁっ!
 前立腺が奮え、そこから一気に自分の裏筋を通ってこみ上げてくる!

「んはぁっ!くるぅ…狂っちゃうぅぅ…こんな状態でご主人様のおチンポ様ザーメンびゅるびゅるって出されたらおチンポしゃま中毒になっちゃうウゥゥっ!」

 じゃあ、狂え。

「んふぁっ!ひぃンっ!ごひゅじんさまの・・・っ、おおき…大きくなって震えてるぅっ!でっでちゃっ…でちゃうのぉ…ッ!?
 きぃてゅのなら…っ、も…ッ、ゅうしてぇっ!」

 だから、おまえの、いけんなんて、きいて、ないっ!ボクが…ッ、選ぶッ!

 降りてきた子宮口に無理矢理ボクの亀頭を挿れてシゴいてその中に―――っ!

「ひあぁっ!いくイくっ!ああああぁぁぁぁああああああああ―――っ!

 どぷっ、どぼぉっ!びゅぶっ!どくっ!どぷどぷどぷっ!どくどくどくどくんっ!

「溶けちゃうっ!溶けちゃうっ!気持ひよふいよぉぉぉっ!ひイっちゃうぅぅぅ!」

 どさ、と名も知らない女子が倒れる。
 結局、狂うところまで精神は飛ばなかった、その前に失神したからしばらくすれば意識も戻るだろう。
 そしてごく当たり前のように自分の後処理をしてここであったことを忘れる。
 だが、再びボクが目の前に現れれば…どうなるかは分かってる。
 そんなことよりも―――未だ屹立する自分の肉棒。そう、まだ足りてない。
 自分が満足する前に相手が使い物にならなくなった。まったく…話にならないね。

 でもいい。コレは準備運動。
 そう、重要なのは、本来のターゲットを相手にするのはこのあとのことなのだから―――
 

 2週間ぶりの教室は驚愕と好意によってボクを受け入れた。
 みんなまるで今までのことが無かったかのようにボクに接しようとし、ボクもそれに笑顔で答える。
 …だが、忘れるものか。オマエ達のしたことを。ボクの味わった痛みを。

 …そう、忘れるものか。オマエ達のしたことを。ボクの味わった痛みを。

 そんな思いにふけっている中、いつもと変わらない声がボクを現実に引き戻した。
「遅いぞ、午後から来るっつってたのに何やってたんだ」
 呆れるようなカラス君の声。
 彼は何も変わらない。そんな毅然とした心地よさを感じている中、そこにここぞとばかりにポイントを稼ごうとする周りの女子たちが仲裁に入ってくる。
 ふん、現金なモンだ。容姿が変わるだけでこうも対応が変わるとは…
 だが、それをおくびにも出さない、みんなにありがとう、と微笑むと黄色い歓声が上がった。
 カラス君はというとあっそ、と既に興味無さそうに次の作業に取り掛かっていた。
 朱鷺乃さんの丁寧だけど容赦ない指示に従ってテキパキと仕事を片付けていく様は絵になるというか長年付き添ってきたパートナーじゃないかというくらいだった。
 時折、カラス君がこちらに聞こえないような小声で朱鷺乃さんに何か囁くと彼女が引きつった笑いを少し浮かべてまたいつもの笑顔に戻っていた。
 …見ていて微笑ましい。と、カラス君がそんなこちらを見つけると少しばつが悪そうに話し掛けてきてくれた。
「悪ぃ、白鷺、そっちもってくれ」
 テーブルの端をもつよう声がかけられる。
「あ、うん」
 正直、嬉しかった。
 そう、こんな時間がくることを願ってた。
 …だけど、それもこれでお仕舞い。
「…………」

 …分かってる。
 もう、戻れない。
 もどりたくも、ない。
 
 だから、そろそろ本来のターゲットを手に入れる。
 本来のターゲット。
 それは―――

 がららっ

 っと、標的が教室に姿を現した。
「おにいちゃんっ」
「おやか…ラス先輩、こんにちは」
 一年下の烏くんの妹の雪花さんに遼燕寺 佐乃さん。
 二人とも前々からいいと思っていたんだけど今の僕になら彼女達を手に入れられる。
 そして都合のいいことにボクが休んでいた内に二人とも仲良しになって兄であるカラスくんの所にやって来るようになったらしい。
 実に都合がいい。
 カラスくん、いや、カラスには悪いが運が悪かったというしかない。
 まぁ、生まれ変わったボクが相手なのだから彼も彼女達も嫌な顔はしないだろう。
 あとはタイミングを見計らおう。
 コレだけ大人数の人間がいる場所では考えないに力は振舞えない。
 なによりこの容姿になったおかげで少なからず監視、と呼ばれるようなくらい人に見られる立場になってしまった。
 だが、ボクも間を空けるほどガマンなんかできるワケがない。
 今日中に、ボクのモノにしてやる。
 そんな想いを笑顔の裏に隠し、ボクはカラス君の今後の予定を聞きだす事にする。
「カラス君、放課後どうかな、一緒に帰れない、かな」
「…悪いな。オレはこのあと、下校時間になるまで第2図書館で司書の真似事をしなきゃいけないんだ。
 つーか、そもそも家そのものオマエが休んでる間に引っ越したからかなり離れた」
「そ、そうなんだ…」
 さも残念そうな顔をする。が、内心ほくそ笑む、むしろ好都合だよ。
 司書である以上、いる場所は固定される。いきなりあの二人を手に入れる絶好のチャンスだ。
 あの二人を手に入れる過程を想像しただけでボクの獣心がいきり立つ。

 放課後になってみんなが帰る中、ボクはカラスが第2図書館に行ったのを確認するとトイレの個室に入った。
 他には誰もいない上にトイレの外には追っかけになった女子たちが遠巻きに見つめている。
 まったくもって、鬱陶しい。
 奴らを巻くには、そして、ターゲットに警戒されることなく近づくにはどうしたらいいか。

 そしてなにより、どうやってボクはこの体型になったのか。

 答えはこの指輪の中にある―――!

 そう、シリアルナンバー2の指輪を嵌めて起動しながらボクはイメージする。
「頼む―――アガレス」
 すると―――次の瞬間、身体に激痛が走る!
「うっ、おおおぉぉぉっ、あぁぁぁぁ!」
 気が触れそうになるくらいの激痛。
 だが、これがボクの望んだ結果。
 骨格が、皮膚が、変質していく!
「ああああああああああああぁぁぁぁぁっ!」
 目の前に火花が走る!
 だけど!分かる!変わってる!

「ふうっ!はぁ、はぁっ!はぁ…っ!」

 きぃっ、と音を立ててトイレの中から肩で息をする身体が出てきて洗面台の蛇口を思い切り捻り水を出す。
 水が飛沫を上げ、熱っぽくなったボクの肌から熱を奪っていく。
 次第に落ち着いて息、目の前にあった鏡を見る。
 そこに映っていたのは黒髪に所々、メッシュのように蒼色の混じった髪型を持つ少年―――

 そう、ボクは今、烏 十字になっている―――!

 無作法に整えられていない髪をかきあげるとそこにはキレイな風貌が佇んでいた。
 ついさっきのボクの顔と遜色ないか同じくらい、整った顔だった。
 普段から纏っている空気が隠しているのか彼がボクと同じように騒がれているのは見たことがなかった。
 コレに気付いているのは数えるほどしかいないだろう。
 ちなみに僕は気付いていた。さっきまでのあの顔も所々彼に似せたものだ。

「フンッ」

 だが、もうそれもどうでもいいことだ。
 口をゆがませるとこれ以上ないくらい凄惨な笑みが出た。
 ボクはアイツじゃない。それが唯一にして絶対の現実だ。
 だから、そう、だから。

 一番アイツにとって屈辱的な方法で一番大事なモノを奪ってやる―――

 トイレから出ると期待から落胆、そして揶揄するような視線を浴びせられる。
 ふん、オマエらは一生、男子トイレ前で出待ちしてるのがお似合いだよ。
 冷ややかな視線を浴びせると早速、あの二人を探す為に校内を散策することにする―――と、突然、後ろから声がかけられた。

「あら、カラス君…?」

―――ッ!?
 ふり向くとそこには見たことも無い上級生がいた。
 上級生と言うのもネームプレートの色を判断しただけなのだが。
 …マズい。彼の人脈まで把握しきれてないし、なにより、この学園に義務教育の期間を含めて10年以上もいるのに僕はこのヒトを見たことが、ない。こんな綺麗なヒトなら見たことがあれば必ず覚えているのに。
 …どう対応する?そんなことを考えていると―――
「―――…あらあら、違いますねぇ、人違いでした、すいません~」
 そう言って上級生はそのまま頭の学校指定の帽子が落ちるんじゃないかと思うくらい深いお辞儀をしてそのまま背を向けた。
 …ちょっと、待て。
「違う、オレはカラス―――烏 十字だ。人違いなんかじゃ、ない」
 少し怒気を含んでいるかもしれない。だが、それくらいの本気を込めて僕は言った。
「中が、違いますよ~?」
「なっ!?」
 なんで、わかるっ?
「そんな訳ですから、失礼しますね~」
 混乱するボクをよそにそのセンパイは背を向けて去っていく。
 ―――どうする?襲うか?
 即座に否定する。
 …得体が知れない。そんな相手が背を向けて去っていくのだ。そのまま放置しておけばいい。
 なにより彼女が向かう先は第2図書館とは反対の方角。ボクがカラスの偽者だと知ってもヤツに知らせるつもりは無いらしい。
 なら今後、機会があれば接触を持てばいい。
 それよりも今は―――彼女の向こうに現れた二人組をボクの目が捉えた。

「探したぞ、二人とも」
「あ、お兄ちゃん」
「カラス先輩」
 そう、今は得体の知れない彼女とすれ違いざまに現れた彼女達をボクのモノにする。
 幸い、階段を降りて視界から消えていく彼女と違い、二人ともボクを彼だと認識してくれた。
 そう、これが普通なんだ。
「二人とも、話があるんだ。ちょっと付いてきてくれ」
「…!うんっ」
「…はい」
 なんの疑いも無く二人ともボクのいうことに従う。
 あとは人気の無い校舎裏まで連れて行けばいい。そこでひとまず水を飲ませ、言うことを聞かせてから本物がいるこの学園から離れた方がいいだろう。
 昇降口を出て下履きに履き替え、思惑通り、二人とも裏庭まで連れて行くことが出来た。
 普段、ここは不良の吹き溜まりになっているがそんなのはこの姿になる前にとっとと片付けた。
 水を飲ませる必要なんか無い。
 アガレスの暴力の片鱗を見せつけるとほうほうの体で逃げ出した。
 これで戻ってくるようなら今度は有無を言わさずフォルネウスの能力を使って精神を崩壊させる。

「……」
 何も言わず歩いていくボクに何の違和感もなく妹がしゃべりかけてくる。
「そういえばお兄ちゃん、ケガは大丈夫なのっ?」
 ケガ?ケガなんてしてたのか…微塵もそんな素振りもなかったのに…
「あ、あぁ、大丈夫だ。もうなんともない」
 そういうと丁度、裏庭につく。
「…そっか、じゃ、ここに来たっていうことは…お兄ちゃんっ」
 そう言って雪花さんが制服の帯止め―――腰のリボンを取ると制服をはだけさせる。
「…っ!せっか、なにを―――!?」
 さすがに動揺する。ボクは何もしていないのになんでこんなこと―――
「遼燕寺さんも!早く止めて!」
「無理をしないでください、せんぱい」
「あー…、りょうえんじ…さん?」
「…さん?どうしたのですか?お館さま」
 遼燕寺さんが少し怒ったかのように言ってくる。
「…おやかた―――様…?」
 おやかたさま?この娘も一体なにを言っているんだ?
「おや…」
「え?あ…佐乃ちゃん、なにか、このお兄ちゃん、ヘン―――」
 三度目に何か言いかけた際の妹の囁きに彼女は気付いたようだった。
「まさかっ!?お主、お館さまでは―――!」

 っ―――!

 バレた!
「姫っ!お下がりください!
 このモノ、お館さまではありません!」
「えっえっ?」
「お館様の言っていた通り―――!それにしてもここまで酷似するとは…ぬかった。がっ!」
 そう言って遼燕寺さん…いや、遼燕寺が背負っていた木刀を流れるような動作で以って構える!
 が、ボクは応戦するつもりもなく、きびすを返して脱兎のごとく逃げ出す!
「なっ!逃げるかっ!」
 そう言って追いかける…が、どうやら遼燕寺の最優先項目は雪花の方の様でボクを追いかけてくるのに少しタイムラグができた。
 この差なら無事、逃げ…

「待てぇッ!」

「―――っ!?なぁっ!」
 さっきまで開いていた彼女との距離はいまやもう半分まで縮まっていた。
 速すぎる!
 あの小さな身体のどこにそんな推進剤が在るというのか。小気味良く揺れる胸に目が行きそうになるが直感―――そう呼ぶしかない閃きと共に僕の視線はムネでも殺気を放つ刀身ではなく、それを持つ彼女の指に目がいった。
 そこには僕に指は待っているものと寸分違わぬものがそこに、あった。
 まさかアイツも指環使い―――!?
「お館さまを姿を騙るとは許さん!この場で叩っ斬る!」
 木刀が音速を突き破りそうな勢いを持って近づいてくる!
 それは何も闘う手段を持っていないボクにはそれがいかばかりの恐怖を伴って写ったか―――!
 曲がり角を曲がって遼燕寺の死角に入ると同時にボクはもう一つの指環の能力を覚醒させる!
「―――!」
 
 遼燕寺が曲がり角を曲がると同時にボクを見失う。
 いや、正確に言えばボクの姿は見えなかった。

 何故なら、これがボクが奪い、契約した指輪の能力。
 31位 フォラス
 51位 バラム
 この2柱に加え、更に、1位であるバールの力を借りた混合能力。
 これがさっき女子トイレに入っても騒がれなかった理由。
 そして、イジメていた連中を証拠もなく破壊し、遭遇した指輪使いを踏破した原動力。

 完全なる空間迷彩

 この力は姿どころか気配まで消せる。
 これで向こうにはこちらは見えていない。
「そんな………どこに消えた?」

 ……………きみの、うしろだよ。

 水が入ったペットボトルは既に手にしている。すかさずフタを外そうと―――

 きゅっ

「―――っ!そこっ!」

 しゅばっ!

「―――!」
 位置を違えずにボクに刃が振るわれた!
 だが、それはボクの頭上50センチ。
 …ふぅ、四つん這いになっていなかったら間違いなく昏倒していた。
「ちっ、逃したか」

 なんて―――女だ。

 今、わずかな音を頼りに視覚や気配ではなく、昔、読んだ本の中にあった第六感による目標の捕捉、いわゆる心眼でも持っているかのように攻撃してきた。
 僕は内心、舌打ちをした。
 だが実際にはできない。この魔術は視覚と気配を完全迷彩するが音まで殺すことはできない。
 それ故、水を取り出すことも出来ないのだ。舌打ち、いや、靴音はおろか呼吸のかすかな音でも立てればこの女は瞬く間にボクを両断してしまうに違いない。

 ちぃ!

 だが、まだ、まだだ。
 高速で思考する。
 心眼なんてそんなワケのワカラナイモノに相手が頼っている分、こっちに分がある。
 しかもカラスの妹を姫と呼び庇った。ということは護衛役のハズ。
 おそらく高速で動けば的確な補足はできず、最優先事項―――烏 雪花を護ることを優先するに違いない。
 仕方ない。いま遼燕寺から指輪を取り上げるのは諦めよう。
 ボクは覚悟を決めるとペットボトルを数メートル離れた場所に投げると同時に脱兎の如く逃げ出す!

 がんっ!

「―――!」
 思ったとおりだ。
 こちらに何かある、そう感じたのはいいものの、それがどんなモノか、どれくらいの速度で動くのかは向こうも把握しきれていない為、身構えた!
 こちらになにか在るのは分かったのだろう、だが、その判断も投げつけたペットボトルの出現によって気をそらされる。
 それもそのはず、あの本によれば心眼は究極の集中力の一つ。
 あくまで自分の間合いを制する為の手段だ。
 モノを視る、という事の為にそれを使うのは才能では埋めきれない、経験によってのみ培われる次元の話。

 だから攻撃しようとしなければ、逃げるだけならばどうにか、なる。

 チクショウ、覚えてろ。
 オマエを、オマエらを犯して犯して嬲って嬲りぬいて肉奴隷にしてやる―――!

 裏門まで逃げてくるとボクも走るのを止め、ようやく徒歩になる。
 姿もカラスのままだが自分の姿に戻す必要も無い。というより、戻せないし、もう姿も隠せない。
 今日は久しぶりの学園でハイテンションだったらしい。考えなしに魔力を使ってしまった。
 極めつけがあの透明化だ。3環同時に使うあの迷彩はとにかく魔力を食う、今では底を尽きかけている。
 仕方ない、このまま学校を出て―――
「―――白鷺」

 !―――
 突然、ボクは名前を呼ばれ立ち竦んだ。
 ボクはおそるおそる声のした方に振り返るとそこには裏門に寄りかかった、[彼]がいた。
 そんな、ボクはカラスのままだ。自分の姿に戻ってない―――!
 ………なのに[彼]の眼は間違いなく、ボクを、白鷺 聖人を捕捉していた。
 ましてやいきなり自分が目の前に現れたのだ。驚き、何も言えないのが普通だろう。ダイエットが成功して別人のようになるのとはワケが違うのだ。
 …そう、声の主は今ボクが毒牙にかけようとした相手の兄。
 烏 十字。
 僕が驚きの顔で見るとくっくっくと笑い、口をゆがめた。
「一つ忠告しといてやるよ。オレのモノに手を出すと後悔するぜ?」
 そういう烏の指に光るのは自分の指環に光る物と同じ………

 妹の常軌を逸した行動におやかたさま…

 …そうか、この学園はもう…

「どうする?やりあうか?」
「―――…」
 ボクは答えない。
 ただ歯を食いしばって内心の怒りをあらわにする…強く食いしばった為か、口の中に鉄の味が広がった。
 やりあうか、そう聞いたってコトは取り合いになるってコトはないのか…?
「…あぁ、やりあうつもりはない」
「!」
 今、ボクは口に出していない―――!
「どうだっていいだろ、そんなコト。
 そんなコトよりも今はやりあうつもりもないし、オマエも無条件でオレに指環を渡すつもりもないんだろ?」
 まただ。心を読んだ。
 そしてさっきのような彼の妹の淫蕩ぶりや遼燕寺の忠節ぶり―――
 …そうか。
 似ているようで彼の能力はこの分野においてボクよりも抜きん出ている。
「それが、キミの指輪の能力、か」
 つまり今日、学校に来てからは彼の掌の上で踊っていたってことになる。
 …鉄の味がいっそう濃くなる。
「あぁ、どうだっていいんだ。そんなコト。それよりもどうする?」
「なんで―――………見逃してくれるんだ?」
 こんな所で見逃しても利にならないハズだ。
「別に?ただの気まぐれだ。それにオマエにゃこの前、借りを作ったしな」
 この前………あぁ、期末試験の範囲で分からなかった問題を聞きにきた時のことか。
 だけどそんなこと思い出したくもない。
 今のボクはあの時のボクとは違う!
「まぁ、他のヤツにとってはそうだろうな。
 見てくれで物事を判断するような連中にとってオマエなんてそんなモンだ」
 自分以外の他人をバカに、いや、本質を見抜いたような烏の笑み。
 今までに見たこともない、常につけられた仮面を剥ぎ取ったかのような本当に、心底、面白そうな笑み。
 そして、今のボクには何より恐ろしい笑みだった。
 あぁ、そうか。
 ボクは烏が常に孤独だった理由が分かった。カラスはみんなに平等だった。だけどそれはみんなに優しかったからじゃない。
 誰にも興味がないだけだった。
 そしてわかった、ボクが孤独だったワケも。
「…だからボクは連中をいいように利用して支配するんだ」
 そう、今のボクならできる。
 だからここは見逃してもらおう。
 ただ、彼もタダで見逃すつもりはないだろう。
「さて…見逃す条件はなんだい?」
「この学園から出て行くことだ。
 隣町になるが今よりもいい条件の学校と住居をオマエに用意してやるよ。
 だからここから出て行け」
「そんなコトか、分かったよ―――カラス」

 決別、そう、これは決別だ。

 昔の自分と、そして、目の前にいる彼との、憧れへの決別

 別にこんなクソ溜め見たいなところにいる必要はない。
 それにここには遼燕寺のように烏の部下になった連中がまだいるに違いない。
 なら、昔の僕を知らない人間しかいないところでボクの城を作ったほうがいいに決まってる。
「クレバーなヤツが相手だと助かる。どうにもこの界隈にはわからずやが多くてな」
 皮肉めいて苦笑するカラスにボクも苦笑し返す。
「だからケガをしたのか…苦労するね、互いに」
 そこにカラスが突然指を突きつけてくる。

「―――1週間後だ」

 一週間後?なんだそれは。
 僕は黙って眼でカラスの更なる発言を促した。
「おそらく2週間後には全ての指環が誰かの手に集う。
 だから1週間はオマエが手出ししない限りこちらからは手を出さない」
 それまでに指環を奪われるなら奪われる。
 城を築くにしてもそれまでに造り上げろ、か。
「随分、余裕を見せてくれるじゃないか、えぇ?」
「そう見えるだけだ。
 それに俺のこの状態を見れば他の連中もどんな感じだかは推して知るべし、だ」
 城を築くヤツはもう城造りに取り掛かっているということ、か。
 確かにその点ではボクは多少遅れている。
 ―――だが、そんなのは構わない。
 いざとなれば指環集めに没頭して時期を見て他人の城を乗っ取ればいい。
 
 そう、この城を―――。
「………」
 しまった。読まれたか?
 様子を窺がったがこちらから向こうの感情は読み取れなかった。
 ただ、カラスは何も言わなかった。
「じゃ、そういうことだ。
 明日起きればどうなってるかは分かるだろうと思う」
「…わかった。
 あぁ、そうそう。隣のクラスの女子をボクのモノにしたんだけど…」
「手に負えないようだったらそちらに送りつけるさ」
「よろしく」
 僕はそれだけ言うと校門を通り過ぎようとする。
 気変わりして戦闘になる前にさっさとこの場を離れたかった。
 カラスとすれ違う、その時―――
 ボソッと、ヤツは、つぶやいた。
「昔のお前ならアイツ等は尽いてきてくれたかもしれねェが、今のオマエじゃ無理だな」

 まるで、それは憐憫だった。

 ―――!
 俺はキッと睨みつける。
 生まれてきて以来、最も激しい激情。

―――憎悪。

 聖人が持たないであろう、顕わにしないであろう感情、それをぶつけるように睨み付けた。
 戯言を―――!
 オマエに、何もかも持っていたオマエに何が分かるってんだ。
 何を犠牲にしてでも手に入れたいもの。
 それがボク、いや、オレにとってはこの指環なんだ。
 これの為にだったらオレはなんだってやってやる、やってやる―――!
 殺気を含んだ視線を受け流すカラスを振り切るように通り過ぎる。
 カラスは何か言いたそうな顔をしていたがどうやら諦め―――オレを見送っていた。

 そう、気付いてしまえばあとはもう実行に移すだけ。
 あと数日に訪れるであろう忌まわしい過去との決着。その為に、更なる力を手に入れる―――

< おわり >

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