もったいない魔王 第三幕

第三幕

「うおぉぉぉおぉっ!」
 淫魔カンディスの上げた悲鳴は、すぐに巨大な滝から水が落ちる轟音によって掻き消された。
 その悲鳴が耳に届いたのは、肩に座っているザジと・・・カンディスを追いかけている大蛇くらいだっただろう。

「いやー、予想外でしたねぇカンディスのダンナ」
 のほほんとした様子で、ザジが主人の肩に掴まりながら言う。それに答える余裕は、主人には無い。悲鳴を上げながら全力疾走しているのだから、当たり前だ。

「てっきり土着の小神か精霊連中か、それとも名前を騙った同類かと当たりをつけて来てみたら、大蛇に襲われるなんて預言者じゃなけりゃ、夢にも思わないっすよねぇ」
 その大蛇は脚が無いくせに身体をくねらせながら、素早く迫ってくる。追いつかれたが最後、巻きつかれて全身の骨を砕かれて、最後には飲み込まれてしまうだろう。

 情けないかな、それは悪魔であるカンディスも変わらない。いや、人間よりは頑丈で生命力旺盛な分、末永く苦しむことだろう。淫魔は本来戦闘能力に優れてはいないのである。

「ザジッ! 我輩のっ・・・ポケットの中の薬をっ! 奴の口の中にっ! 放り込めっ!」
 切れ切れにカンディスが叫ぶ。蛇に飲み込まれたくないので、彼も必死だ。
「へーい」
 一方、配下の方には欠片の必死さも無い。主人を信頼しているからか、いざとなったら飛んで逃げられるからかは定かでないが。

 よれよれになっているおかげで、掴まりやすいスーツのポケットまで移動して中を見てみると・・・困ったことにラベルの貼られていない小瓶が3つ入っている。この中のどれを投げ込めば良いのかまでは、言われてないし判断もつかない。
 まっ、いいか。当てずっぽうで。
 そう思って一番取り出しやすい小瓶を両手で持つと、大蛇めがけて投げつけた。

 小瓶は超自然的なもので出来ていたのか、大蛇の口内に入った途端どろりと溶けて薬と一緒に流れ込んで行った。
 そして大蛇は・・・ピクリと小さく痙攣してカンディスを追うのを止めると、バタバタと苦しみだした。
「ダンナ、あれ何の薬だったんですかい? 毒薬はたしか作らない主義のはずっすよね」
「ああっ、あれ・・・若返りのっ・・・」

 どうやら、若返りの薬だったらしい。その薬で大蛇を子蛇に変えてしまおうと言う算段のようだ。
 その算段通り大蛇の艶あったウロコはボロボロと落ちていき、目は落ち窪んで肉は萎み、見る見る内に骨と皮だけに・・・。
「あの・・・どう見ても若返ってるようにゃ見えねぇんですけど」
 カンディスもザジに同感なのか、戸惑った様子でポケットの中の小瓶を探っている。

「ふむ・・・ザジ、どうやらお前が投げたのは成長薬だったようだな。我輩のストライクゾーンを下回っている獲物に使う予定だったのだが・・・」
「これじゃあ、成長薬じゃなくて老化薬ですぜ。使ったらダンナのストライクゾーンを、アッと言う間に上回っちまうんじゃないですかね」
 一般的に、蛇や亀などの動物は寿命が長い。今2人のすぐ目の前の大蛇もその例外ではないだろう。

 その大蛇を老衰で殺しかけている薬を人間に使えば、ストライクゾーン所か一瞬でミイラにしてしまうだろう。

「・・・とりあえず、気を取り直して水神とやらを探すとするか。もう、確実に気づかれているだろうが」

 紅い夕日に照らされながら、カンディスは遠い目を滝に向けていた。
 あれから水神らしき存在をカンディス達は探してみたのだが、見つけることができながった。
 あの大蛇以外には。

「ザジよ、巨大ではあるがただの蛇を神として信仰することなどありえるのか?」
 困惑した様子のカンディスの質問に、ザジは頷いた。
「ありえますぜ。魔力の無い人間には、目の前にいるのが神なのか正確には解りやせんからね。解るのは、目の前にいるのが神っぽいか神っぽくないかのどっちかだけ。
 ほら、ダンナ御自身だって人間界に来た時に神を騙ったじゃないですか」

 その解説に、カンディスはもっともだと納得した。その人間の愚かさに付け込むのが、悪魔の手口だ。時折、その愚かさが無い賢しい人間によって、痛い目を見る悪魔もいるが・・・少なくともザジが目をつけた村にはそういった賢しさを持つ人間は、いないか発言力を持っていないかのどちらかのようだ。
「魔力も神通力も無いただの大蛇を水神と崇めたて、意味の無い生贄を捧げ続けているのだからな。これでは賄賂どころかただの浪費だ」

 怒りすら滲ませて、カンディスは言った。生贄を捧げ続けた人間達は、自分達の捧げた存在がどれだけ貴重で唯一無二のものか、理解しているのだろうか? いや、理解していないだろう。
「女の味は、一人一人異なる。性格や過去、体質に肉付き、家族構成や過去・・・そういった物は似た存在はいても同じ者はありえない。
 まったく、どうせなら男を捧げれば良いものを」

 後半だけは、まっとうに悪魔らしい事を言いながらカンディスは持ってきた装備を確認する。対水神用に持ってきた道具のほとんどは無駄になったが、他にも幾つか持ってきているのだ。・・・あの成長薬とか。
「ダンナ、その薬ってもしかして未完成なんですかい?」
「未完成と言うか・・・お前が我輩を呼びに来た時色々と材料が混じってしまったのだ。おかげで何がどうなったか良く分からん。
 そもそも、我輩にとって魔法薬は未知の分野だからな。これからは実際に使ってみなければ、研究の進めようが無いのだ」

「一言で言うと、手詰まりなんですかい。でも良いんで? 下手したら獲物を殺しちまいますぜ」
「それは・・・まぁ、大丈夫だろう。本来人間を殺すような成分は、入れていない。あの成長薬は例外だ」
 カンディスの保証はとても説得力に欠けるものだった。

 その日、村の広場には本来の村の人口以上の人が集まっていた。水神信仰は、この辺りの辺境に広く信じられているので周辺の村からも、人が集まっているのだ。もちろん、生贄も。

 祭壇の前に炊かれたかがり火の輝きに照らされながら、総白髪の神官が独特の祈りの言葉を水神に捧げる。これからその信託によって生贄が選ばれることになっている。建前では。
 実際にはすでに選ばれている生贄を、ここで改めて水神の名で指名するのだ。

 その後は生贄に選ばれた娘達から穢れである俗世の垢を落とすために、禊をこの場で行い、滝つぼに突き落として終了と言う、とてもシンプルな物手順の儀式である。
 数年前から日照りが続いているため、今年の儀式は大規模に行われるがそれは生贄の数が増えるだけで、別に儀式そのものの手順は変わらないようだ。

 今まさに、神官が台本通りの信託を告げようとした瞬間、カンディスが現れたその時までは。
 全力疾走したためにいつも以上によれよれになったスーツに、片手には薬箱らしき物。さらに奇妙な事に、『水神』と書かれた紙製の名札を付けている。しかも、今回は堂々と小悪魔であるザジをつれている。そのザジも、何の付き合いか『水神の使い』と書かれた名札を、首から下に貼り付けるように付けている。

 神聖な儀式の最中に現れた、ふざけた上に信仰の対象を冒涜している余所者の男と明らかに人間ではない存在に村人達は・・・慌ててその場に跪くと、一斉に頭を下げた。祭壇の前の神官でさえも、顔にはっきりと畏怖を貼り付けて同様に跪いた。

「・・・『偽称の名札』は、どうやら正常に効いているらしいな」
「みたいっスね」
 二人の言う『偽称の名札』とは、もちろん二人が付けている名札の事だ。この名札は、書いた文面を読んだ相手にその内容を信じさせることが出来るという、アイテムだ。ただし、信じさせる事が出来るのは役職や立場だけで、抽象的な内容は書いては効果が発揮されないために、『水神』だと信じ込ませる事が出来るか不安だったようだが・・・成功したようだ。

 本来は別の作品の製作過程で出来た副産物だったので、薬と同じくここで実験してみたのだが・・・これに関しては、結果は上々のようだ。

「・・・でも、この格好の悪さはどうにかなりませんかね?」
「たしかに、これでは子供のようだな。・・・考えておく。
 村人達よ、儀式ご苦労である」
 カンディスは、出来るだけ威厳のある声と『神っぽい』と自分では思っている口調で、村人達に語りかけた。

 その言葉を聞き、村人達から安堵の息が漏れる。怒り、雨を遠ざけている(と、村人達は信じている)水神様から労いの言葉をかけられたのだ。中には、水神が村までわざわざ来たのは直接怒りを自分達にぶつけるためだと考えていた者もいたので、その場の空気は幾分か和らいだ。・・・ごく一部を除いて。
『村の長と、神官か。さてはこいつら・・・いや、今は放っておくか』

「水神様っ! わざわざのお越しいただき光栄にございますっ!」
 本来儀式の進行役の自分が、いつまでも黙っているのはまずいとでも思ったのか、老神官が声を張り上げた。
 今まで存在しない水神に、生贄を捧げ続けて事を考えれば、その頭をこのまま踏みつけてつぶしてしまいたくもなるが、それではいけない。淫魔たる者、怒りは暴力以外で表さなければ。

「水神様っ! 今より我らが捧げます生贄をお受け取りくださいっ! そしてどうか、どうかそのお怒りをお納めくださいっ!」
 村長も神官に続いて、声を上げた。それに、村人達の哀願も続く。

「・・・案ずるな、我輩の心に怒りはすでに無い。お前たちが我輩に生贄を捧げ、これまで通り我輩を崇めるなら天は、恵みをもたらすだろう」
 この言葉の後半には嘘はない。上級の悪魔には魔術だけではなく学芸に秀でている者が多く、カンディスもその例外では無い。そのカンディスの知識によれば、この地方は本来雨に不自由しない。以前の旱魃は、数十年に一度の天災だったのだ。

 その普段の恵を自分達の信仰の賜物と信じ込んでいただろう村人の愚かさは、明日までにカンディスにとっては疑うことを知らない愛おしいまでの純粋さに変わることだろう。

「では、早速生贄を水神様の前に」
 水神の使い役のザジが小さな身体には不似合いな良く通る声で命じると、事前に生贄として決められていた者たちが祭壇の前に押し出された。手順が違うが、それを愚かにも水神やその使いに指摘する者は皆無のようだ。

 祭壇の前に並んだ10人の生贄を前に、カンディスは思わず呻いた。
 予想通り、年若い少女達だ。しかし・・・10人中9人が予想以上に若かった。っと、言うか若すぎた。たしかに生贄は若く清らかなのがセオリーだが・・・。
 まぁ、青田買いすると言うのも選択肢の内だが・・・ゲームの開催期間中に熟すとは限らない。

 残りの1人は自分の置かれている状況を理解していなさそうな、へらへらと間の抜けた笑みを浮かべている少女。充分に合格な容姿をしているが何分数が少ない。薬の実験台にもなってもらわなければならないので、後もう2人は欲しいところだ。

 あの成長薬を薄めて使うという手もあるが・・・分量を間違えると、とんでもない事になるので試す気にはなれない。
 なら、危険を冒さずに追加を要求すればいいのだ。

「・・・村人達よ、どうやらお前たちは我輩をまた怒らせたいようだな」
 低く抑えた声で、カンディスがそう言うと村人達は見ていて愉快なぐらいに顔を青くする。
「我輩の怒りを鎮めたければ、それなりの誠意を見せてもらいたいものだな。なぁ、村長よ」

「しっ、しかしこれ以上の生贄は・・・」
 脂汗を流しながら、村長が抗弁しようとして言葉に詰まっている。その姿からは、村を治めるものとしての威厳やら貫禄やらは、まるで何処かに落としてきたかのように窺うことは出来ない。

 ありえないと思っていた事態に突然直面してしまったので、体裁を保つことが出来ないのだ。
 何がありえないのかと言うと、水神が存在して自分に要求を突きつけているというこの現実である。
 それが何故ありえないと思っていたのかと言うと・・・水神が本当は存在しないと言う事を村長は知っていたからだ。

 辺境の村で自然と戦いながら生きていくためには、村人達をまとめる必要がある。もっとも簡単なのは、全員に共通の敵を作るか・・・治める者よりも強大な存在を創り出し自分はその衣を借りる事だ。
 もちろん、今カンディスの目の前にいる村長が水神を創り出したのではなく、この村を興した初代の村長と神官だろう。

 もっとも初代から当代までに伝わる間に、村をまとめる事から自分の権威を高め、邪魔な異分子を排除する事へと目的がすり替わってしまったようだが。

「そうか、これ以上の生贄は無理か・・・。ん? んん~?」
 そうわざとらしく唸りながら、カンディスはずかずかと村長の後ろで他の村人と同様に膝をついて拝んでいるその家族のもとまで近づくと、検分を始めた。

 村長の家族構成は・・・母親と思しき初老の女と息子が2人にその妹が1人。妹の方は、十代前半でやや幼いがギリギリ許容範囲内だ。
「ふむ・・・村長よ、そう言いながらもここに生贄をちゃんと用意しているではないか、関心だな」
 そう言いながら、ぺたぺたと娘と母親に何か貼っていく。

「何を・・・おおっ、そうでしたこの2人を生贄に捧げるのを忘れておりましたっ」
 村長が振り返った先には、『新たな生贄』とかかれた札を貼り付けられた自分の娘と母親の2人がいた。

 寝耳に水の様子で2人は、はじかれたように顔を上げ・・・そして自分に貼られた『生贄』の名札を目にする。
「そうだ・・・あたしとおばあちゃんは生贄だったんだよね」
「そうだったね。・・・さっ、おばあちゃんと一緒に水神様の所へ行こうね、エイダ。ここにいちゃ、お父さんに迷惑がかかるからね」
「うん、おばあちゃん」

 そう言いながら、落ち着いた様子で2人は祭壇の前に出る。普通に生贄に名指ししていたらこうは行かなかったかもしれないが、『偽称の名札』を使ったことで、自分達が生贄だと認識してしまったせいで抵抗しようとは考え付かなかったらしい。

「さて、ではこの新たなる生贄を受け取る代わりに、この8人の幼子を次の我輩を祭る儀式の時まで返しておこう。
 ありがたく思うが良い」
 とりあえず、やはり青田買いはしておくつもりらしい。

 そして儀式は次の工程に移った。次の工程はこの世の穢れを落とす禊・・・この場で生贄達を一糸乱れぬ姿にして滝つぼからくみ上げた水で洗い清めるのだが、これをカンディスは自身がやると言い張った。
 もちろん、これに異論のある者などいない。僅かに疑問を感じ始めている者もいるようだが、それも水神に向かって言えるほど強いものではない

 そして、村の広場には4人の裸体が晒されることになったのだが・・・カンディスは渋い顔をしていた。へらへらした娘の身体には、剣で切られたと思わしき大きな傷跡が胸から腹にかけてあったが、意外と乳房が大きいことがわかった。エイダにも、その幼さの色濃い裸体は汚さずにはいられない魅力がある。
 少女達が自分の裸体を村人たちに晒していることに対しての、恥じらいが見え隠れするのも高得点だ。

 そして村長の母、ディエナの裸は・・・さすがに寄る年波には勝てないか、胸はもちろん全身のプロポーションが崩れてきている。若かりし時はエイダに似た美人だった事がカンディスには想像がつくだけに、ダメージは大きいようだ。

「・・・ダンナ、そんなしかめっ面するぐらいなら何で母親なんか選ばなきゃよかったんじゃないですかね? ダンナは、淫魔にしちゃノーマルなんだから」
 淫らな、背徳的な悪徳や罪悪担当の淫魔としては、ザジの言うとおりカンディスはノーマルだ。むしろ、潔癖すぎるともいえる。・・・その分、色々道具で操ってどうこうするのが好きなので、とんとんかもしれないが。

「それもそうなんだが・・・『若返りの薬』の実験に使いたくてな」
 そう言ってカンディスがザジに見せるのは、どろりとした緑色の液体が入った小瓶。
「これの中には、我輩を慕い服従する暗示薬も含まれているので、かつて美女だっただろう老婆を見つけても悔しい思いもせずに、これを飲ませるだけで若く美しい女を我輩の物にできると言うわけだ」

「失敗しても成功しても、あの村長は母親を失うって訳ですかい。なかなか良い感じっすねぇ」
「そういう訳だ。
 さて、お前たちの穢れを落とすためには、我輩の言う通りにしてもらわなければならない。まずはディエナよ、これを呑んでもらおうか」

 薬を渡されたディエラは、戸惑ったように液体を見ていた。見るからに不味そうで、不気味な液体だ。しかし呑めと言われては、断ることは出来ない。見た目に反して、無臭のその液体に思い切って口を突けると、一気に飲み干した。

 飲み干したままの姿勢のまま、一瞬ディエナは硬直し・・・ビクビクと手足の先から痙攣を始める。
「あっ・・・ああぁあぁぁあっ! おうぅっ! おぐぅぅぅうぁぁあっ!?」
 手足の痙攣はあっという間に全身に広がり、ディエナは苦痛に叫びながらガクガクと全身を激しく揺らす。

「おばあちゃんっ!?」
 エイダの悲鳴を上げる前で、ディエナの老い衰えた身体は張りを取り戻していく。しかし、それに比例するように痙攣は早く大きくなっていった。残像のせいで手足が複数に分裂して見えたり、エイダと同じくらいの少女の顔が見えたり・・・。

「ねぇ、ダンナ。気のせいか、あっしにはあの女が分裂しかけているように見えるんですけど」
「・・・そうか、奇遇だな。我輩にもそう見える」
 そう、ザジやカンディスの言う通りディエナは分裂していった。まるで蝶の蛹の羽化のように、背中からするりとディエナからディエナが出て行く。外見の特徴から察するに、どれもディエナ本人だろう。

 まず一番初めに出てきたのは、エイダと同い年くらいの十代前半のディエナ。並べれば、姉妹で通りそうなぐらいそっくりだ。二番目に出てきたのは、十代半ばのディエナ。始めのディエナに比べて、やや幼さは抜け始めているがまだ胸も小ぶりだ。最後に出てきたのは、十代後半のディエナ。こちらは先の二人に比べて胸も大きくなり、全体的に色気が増している。

 そして、残ったのは二十代前半のディエナだ。腰にやや肉がついてぽっちゃりとしてきたようだが、その分胸にも尻にも肉がつき若さと程よい豊満美を両立させている。

「村長、ディエナは今年で幾つになった?」
「はぁ・・・今年で60近かったはずですが・・・」
 分裂のショックか、ぼんやりと放心状態ディエナ・・・ディエナ達を眺めながら村長に訊くと、呆然とした様子の村長が間の抜けた答えを返してきた。

「・・・十代前半に半ば、後半。それと二十代前半・・・合計すると60すぎやすね」
「うーむ、どうやら『若返りの薬』ではなく、『分裂薬』を作ってしまったようだな。偶然の産物とはいえ、さすが我輩だっ!」
「まぁ、『守備範囲外を内にする』って言う目的は果たせたから、一応成功ですかねぇ。
 そう言えば、服従薬の方はどうなったんですかね?」

 言われて、ぎくりとカンディスは四人に増えたディエナに視線を戻した。はっきり言って、若返り成分が分裂と言う形で発揮されたような薬に含まれる服従薬の成分が、まともには効力を発揮できるとは思えない。
 まったく効力が出ないなら、まだいい。最悪、いきなり凶暴化して襲い掛かってくるような危険性もあるのだ。

「あ・・・水神様」
 一番年長のディエナ・・・以後、ディエナは出現した順番にディエナ1からディエナ4と表記・・・がカンディスを見つめて呟いたのをきっかけに、4人のディエナはカンディスに視線を向けた。
 幸な事に、どのディエナの視線にも敵意や悪意は含まれていなかった。・・・カンディスの予想通りのものも含まれていなかったが。

 ディエナ1からは甘える相手を見つけた子供のような喜びが、ディエナ2も大体同じだが頬を赤く染めて恋する相手を見るようなきらめきのある視線が、ディエナ3は情欲の込められた熱っぽい視線が、ディエナ4は母親が子供に向ける慈しみが込められている視線がそれぞれカンディスに向けられる。

「お前たちは我輩のものになるのだから特別に、我輩を名前で呼ぶことを許そう。これからは『水神様』ではなくカンディス様と呼ぶがいい」
 とりあえず安全そうなのを確認した途端、気が大きくなるカンディスだった。

「さて・・・お前たちから穢れが落ちたことを確認するためには、我輩に『奉仕』してもらわなくてはならない。この意味が解るな?」
「はい、カンディス様。まずは私の胸で楽しんでください」
「あっ、あたしも口でご奉仕するっ!」
 ディエナ4とディエナ1が、早速カンディスがズボンから出したペニスに奉仕しようと近づく。

 村人達はいきなり儀式から淫行へと移行した事態に戸惑ったが、村長も含め止めることも異議も挟むことも出来ない。それで『水神』の怒りをかったら、また雨が降らなくなると思っているからだ。それにディエナを若返らせた上に分裂させたあの薬は、村人たちには神の業に見えていた。

 祭壇に腰掛けたカンディスのペニスをディエナ4の柔らかく温かな胸の谷間が包み、ムニムニと刺激する。それにディエナ1が横から亀頭をチロチロと舌で刺激する。2人とも、どうやら性知識はそっくりそのまま残っているらしい。
「ん? ディエナ4、お前の乳首から母乳が出ているように見えるのだが?」
 ディエナ4のパイズリを、何時の間にか白い液体がすべりを良くしてサポートしている。カンディスはまだ射精していないのだから、母乳だろう。

「はい、つい3カ月前に産んだばっかりなんですよ」
「初産だったから、大変だったんだよねっ!」
 ディエナが3カ月前に出産。それも初産。・・・そんな事はありえない。それだと、あの初老のディエナから生まれたあの村長は、生後3ヶ月と言うことになる。

「・・・お前たち、処女幕のある者は手をあげろ」
 その問いに手を上げたのは、ディエナ1と2。4と3は手を上げなかった。
 もちろん、ディエナは村長を出産しているはずなので、処女受胎をしても処女幕は破れているはずだ。しかし、彼女らが嘘をついているとも、考えがたい。

 一体何故か。考え込むカンディスに、ディエナ4が話しかける。
「どうかなさいましたか、カンディス様。私の胸は、気持ちよくありませんか?」
「いやっ、そんな事は無いが・・・」
「そうですか、良かった。何か気がかりなことがあるなら、何でも言ってくださいね?」
「あ、ああ。わかった」
 このディエナ4の態度は、やはり服従している者とは思えない違和感がある。

「・・・もしかして、精神年齢とか肉体の状態とかは外見年齢に順ずるんじゃないですかね。多分、ディエナは3のちょっと前の頃に始めて男と寝て、4の頃に子供を生んだんで1と2は処女膜があるとか」
「つまり、我輩に対する態度の違いもそれか・・・うむ、疑問も無くなったことだし、安心して楽しもう」
 ザジの推測で疑問の氷解した途端、あっさりと快楽に集中するカンディスだった。

「出すぞっ、2人とも残さず飲むのだぞ」
 ビュクビュクと痙攣しながら、カンディスのペニスから精液が吐き出される。その大部分を口で受ける事になったディエナ1は、その臭いと苦味に顔をしかめたが言われたとおりコクコクと飲み込む。そしてディエナ4が、口元からこぼれた精液を舌で舐め取っていく。

「よし、よく飲んだな」
 そう言いながらカンディスがディエナ1の頭を撫でてやると、ディエナ1は嬉しそうに目を細めた。まるで、親に褒めてもらった子供のようだ。

「次は、あたし達がご奉仕しますね」
「どんなことでも致します」
 ディエナ2と3がそう言いながら自ら進み出てくる。時間があれば、4人それぞれの12の穴の使い心地を楽しんでみたいところだが、今回は魔法薬の実験も兼ねているし、何より村人の前だ。

 カンディスには、村人に自分の力を見せつけ服従させるつもりはあっても、ショーを長々と見せてやるつもりは無い。

「いや、お前達の穢れが落ちたことは確認できた。我輩は他の生贄の穢れを落とさなければならない。 その間・・・そこで固まっているお前の孫をほぐしておいてくれ」
 祖母の分裂とその後の淫行に固まっていたエイダが、ギクリと身体を振るわせる。思わず後ろに数歩逃げようとするが、それを素早く・・・しかし柔らかくディエナ4が後ろから抱きとめる。乱暴さの欠片もない慈母の如き抱擁だが、それは同時に逃げようとする者を情け容赦なく引き込む底なし沼にも似ている。

「さぁ、エイダ。あなたももうすぐ穢れを落とすのだから、その前に緊張をほぐしておきましょうね・・・」
「大丈夫よ。今は怖いかもしれないけど、とっても気持ち良いはずだから」
 ディエナ4と3が、艶のある微笑を浮かべながら優しく囁く。

「もしかして、こんなこと不潔だって思ってるの? そんな事無いんだから。気持ち良い事は、良い事なのよ」
「エイダ、たくさん気持ち良いことしてあげるからね」
 ディエナ2は年上ぶってそう説得し、ディエナ1は幼い顔に子供特有の残酷さを滲ませる。

「いっ、いやぁあぁぁぁぁぁっ! おばあちゃぁぁぁあぁぁんっ! 元に戻ってよっ! 離してよぉぉおっ!」
 一気にパニックに陥って叫ぶエイダに、ディエナ達はカンディスに言われた通りエイダをほぐすために指や舌を這わせていく。

「・・・やはり、『詐称の名札』では単純なストレスや精神的ショックはどうにもならんか。それはともかく、次に試す薬は・・・」
「あっしは、こっちの様子見てる事にしますかね。万が一逃げられたら面倒ったらないでしょうから」
「頼む」

 一言ザジに頼んでから、カンディスは残り一人の生贄の娘に向き直った。おそらく、エイダ同様に怯え混乱しているだろうというカンディスの予想は、見事に裏切られた。
「おっ、お願いしますカンディス様。あたしの穢れを落としてください」
 緊張と恥じらいで頬を染めてはいてもこの娘は、混乱はしていなかったのだ。

「・・・お前、名は何と言う?」
「はいっ、あたしはファーミアって言います」
「ではファーミア、率直に訊くが怖くは無いのか? やっている当人が聞くことではない気がするが」
「怖くないですっ、嬉しいくらいなんですから」

 ファーミアの返答に、カンディスの疑問は解消されるどころか深まった。怖くない、それどころか逆に嬉しいと言う。
 まさか、『変な薬で訳の解らない事をされるのが、子供の頃からの夢だったんです』とかは、無いだろうし。

「あたしはバカだしあんまり力もないし、そのくせ良く食べるし皆に迷惑ばっかりかけて。器量だけは良いほうだからって、父ちゃんはさっさと嫁に行って持参金稼いで来いって言ってたんですけど・・・」
 そう言いながらファーミアが指差すのは、自身に残った胸から腹に残る大きな傷跡。

「2年前に盗賊にばっさりやられちまって、命は助かったけれどこんな傷が残っちまって嫁の貰い手も無くなって。あたし、本当に役立たずになっちまったんです。それで、このまま迷惑かけ続けるくらいなら生贄になって村の皆の役に立とうって・・・水神様?」
 カンディスはファーミアの傷跡に手を伸ばすと、ペタペタと無遠慮に撫で回し始めた。ファーミアが驚いて引こうがお構い無しだ。

 カンディスは何故こんなことをしているかと言うと、長い身の上話に耐え切れなくなったからではなくファーミアを触診しているのだ。
「・・・傷跡はたしかに残っているが、内臓にが傷ついているわけでもないし子作りに問題も無い。乳房も傷ついてはいるが、母乳の出に問題はなさそうだな。
 これで何故嫁の貰い手がいなくなるのか・・・疑問だ」

 自分がもしも村人だったとしたら、逆に傷跡をネタにして持参金を値切って手に入れようとか、後々夜には傷跡をネタに言葉責めしてみようとか考えそうなカンディスには、ファーミアの置かれている状況が理解することが難しいようだ。

「しかし、とりあえずこの傷跡がお前の負担になっているということは理解した。喜んで我輩の生贄になると言うその心がけを評価して、お前には飛び切りの祝福をやろう。
 喜べ、お前はより優れた存在に変化するのだ」

 カンディスはそう言いながら、紅い薬の小瓶を取り出した。それを飲めと言うことなのだろうと察したファーミアは、小瓶を受け取ると一度深呼吸してから紅い液体を飲み干し、目をつぶった。

 とろみのある甘い液体が、喉を滑り落ちて行く。まるで強い酒を飲んだかのように喉が、そして身体の芯が疼くように熱くなる。それから・・・何も起こらない。目をつぶってから10秒経ち、1分経っても、ディエナの時のような痙攣も痛みも何も無い。
 恐る恐るファーミアが目を開いてみると、笑みを深くしたカンディスの顔がまず見えた。

「では、我輩に奉仕してもらおうか。お前はどの穴で我輩に奉仕したい?」
「ええっと・・・そのっ、どの穴って・・・?」
 一応はファーミアも年頃の少女だ。平均的な性知識は持ちあわしているし、ディエナ達がしていた事は見ていたので、こういう展開になるだろうということはうすうす解っていた。

 しかし、いきなり『どの穴か選べ』と主導権を渡されても困る。即答できるほどの心の準備も思い切りもファーミアには無かったし、逆に戸惑うには充分な羞恥心はあった。

「どの穴って・・・水神様の好きなように・・・」
「我輩が選べといっているのだ。好きに選ぶがいい」
 主導権を返そうにも、受け取ってももらえない。

『一体どう答えたらいいんだろう? 穴って言ったら口と・・・赤ん坊が出来るところだけど、あそこは初めては痛いもんだって、母ちゃんは言ってたし、やっぱり口の方がいいのかな? でも、上手くしないと気持ち良くないって言うし、あたし上手くなんて無いだろうし・・・』

 何とか考えをまとめて選ぼうとしても、興奮と緊張のせいか身体がじんじんと熱くなるばかりで、ちっともまとまらない。

『そう言えば、カンディス様のチンチンって大きかったけど・・・あんな立派なのあたしの中に入るのかな? がんばれば入るのかもしれないけど、すっごく痛いだろうなぁ。そしたらきっとやかましく悲鳴を上げちゃうだろうから楽しんでもらえないだろうし・・・でも、口でご奉仕してあごが外れたりしないかな』

 ちらりと視線を走らせると、カンディスのペニスは天に向かって勃起したままだ。子供の頃を除けば、ほぼ初めてファーミアがみるペニスは、実際以上に大きくて硬そうに見えた。

 また、身体の芯の熱さが増した気がした。

『やっぱり口かな。あたしの口であのチンチンを扱いたり、舌で舐めたりして口の中に子種をいっぱいドクドク出してもらって・・・きっと濃くて美味しいんだろうなぁ。
 でも、あのぶっといチンチンであたしの赤ん坊の出来る穴を入れてもらうのがいいかな? 穴が裂けちゃうくらい乱暴にしてもらったり、穴の奥までズンズン突いてもらって、溢れちゃうくらい種付けしてもらったら、きっと幸せだろうなぁ。・・・あれ、なんか変? あたしが迷ってたことって・・・』

 何かが変わった気がしたが、何が変ったのか解らない。何かが間違っている気もしたけれど、何が間違っているのかも解らない。
 グルグル頭の中が回って、耳の隣に心臓が引っ越してきたようにドキドキと鼓動がうるさくて、考えることさえ難しい。

「どうした? 口がいいのか? それともやはり処女から捧げたいか? 何なら肛門でも構わんぞ? 遠慮せずに言うがいい」
 そのファーミアを、ニヤニヤと笑いながら苛立つ事無くカンディスは見守っている。

『肛門って・・・お尻の穴? そんなところで・・・』
 口内に何時の間にか溢れていた涎をゴクリと飲み込む。
『気持ちいいのかな? 気持ちいいんだよね、カンディス様は。だったらあたしも気持ち良いよね。 あっ、でも父ちゃんも母ちゃんもあたしに嫁にさっさと行けって言ってたから、せめて種付けくらいはしてもらったほうがいいのかな?』

 そうの考えとは裏腹に、そろりと右手がこれまでそういった理由では触れた事の無いところへ・・・肛門に指が触れる。
 その途端、ゾクゾクとした寒気のような物が背筋を走って、思わず指を肛門から離してしまった。でも、気持ち悪い訳ではなくて・・・身体の芯が一段と熱くなった。

「肛門っ! 肛門でご奉仕させてくださいっ! あたしの尻の穴をつかって気持ち良くなって下さいっ!」
 指で触れただけであんなに熱くなったのなら、あのチンチンを入れて出し入れしてもらったら・・・。そう考えた途端、ファーミアはたまらず叫んでいた。羞恥心も何もかも、頭の片隅に追いやられて肛門を犯してもらうことで頭の中が占領される。

「いいとも。さぁ、我輩に尻を向けるといい」
 カンディスの言葉に胸を躍らせてファーミアはむにっと、肉付きのいい尻の谷間を自身の指で押し開き肛門を晒した。ピクピクと物欲しげに肛門が動くのが、ファーミア自身にも解った。

「おそらく初めてだろうが・・・その様子なら前座は要らんな」
 肛門の下に見えるファーミアの性器は、触れてもいないのに滴りそうなほど濡れていた。

 カンディスはがっちりとファーミアの腰を掴むと、ペニスを肛門に押し入れようと突き出した。
「あ・・・ああっ! あああぁあぁぁっ!」
 ピトリッと、亀頭が肛門に触れる。その後は、力任せに硬いペニスが自分の直腸に潜り込もうと、力任せに突きこまれる。

「ぐぅうっ! あぎぃっ! ぎひぃぃぃっ!」
 肛門の括約筋を引き裂くようにしながら、直腸を押し進んでくる。焼けるような灼熱感、そして鋭い痛み。それから・・・これは何だろう? とても心地良くて、それでももっと欲しくてたまらなくなる・・・。

 ペニスを根元まで挿入し終えると、カンディスは今にも千切れそうなほど広げられたファーミアの括約筋には一切構わずに、尻の肉がたわむほど強くズバンッズバンッと腰を叩きつける。
「あがぁぁぁぁっ! ひぎっ! ひぎぃぃいぃっ!」

「どうだ? 止めて欲しければすぐに止めてやるぞ?」
「やめないでっ! もっとっ! もっとお尻焼いてっ! 尻の穴が切れてもいいからぁっ、チンチンもっと突っ込んで子種入れてくださいっ!」

 まるで、からからに喉の渇いた時に水を求めるように、ファーミアの全てがカンディスとの行為を求めていた。
 まだ欲しい、もっと欲しい。これだけじゃ、全然満足なんて出来ない。

「そら、望みの物だ。受け取れっ!」
「ああぁーーーーっ!」
 ドクドクと直腸流し込まれる精液が、マグマのように熱く感じる。その熱さがまるで全身に染み渡っていくように広がっていく。

「さて、ここからが見ものだ」
 そう呟くカンディスの目の前で、ミシリッと言う肉が軋む音がファーミアから響いた。
 それを皮切りに、ファーミアの肉体が変貌していく。

「あっ! ああっ! あはぁぁぁっ!」
 ファーミアの口から漏れる歓喜の悲鳴と、肉体が上げる軋みと変化の音が絡み合って響く。
 背中からは今まで無かった器官が生まれ、体内ではその器官を操るための神経が再構築される。

 細胞その物も、変化を遂げる。今までのものよりも強靭で、生命力旺盛で、老いを知らない物に変わっていく。

 ・・・ばさりっと、夜よりも深い漆黒の翼が軽く羽ばたいた。
「魔力浸透補助剤・・・効果は上々だな」
 まだ挿入されたままだったペニスをカンディスが肛門から引き抜くと、「あうっ」っと喘いだ。こめかみから一対の短い角が生えた以外は、変わらぬ愛らしい顔で。

「さあっ、我輩が作り変えた後天的悪魔第一号ファーミアよ、これから末永く我輩の手足となって働いてもらうぞ」
「はいっ、カンディスさま。まずは・・・」
 ファーミアは誓いのキスの代わりに、自身の腸液で汚れたカンディスのペニスを綺麗にするために舌を這わせた。

 ファーミアの変貌で村人達がパニックに陥らないように、『水神の使い』と書かれた『偽称の名札』をザジと同じように貼り付けてから、カンディスはエイダの様子を見るために戻った。

「ダンナッ! すごいじゃないですかいあの薬っ! あれさえありゃぁ、いくらでも戦力が増えますぜっ!」
 興奮した様子でザジが褒めちぎる。・・・彼女がここまで素直にカンディスの作品を褒めるのは、初めてかもしれないという事実に、素直に喜べないようだ。

「たしかにすごいんだが・・・あの薬は作るのに時間がかかってな。今回は、魔界からこのゲームのために作っておいた物を使ったのだ。次が出来るのは・・・一月後だな」
「・・・まぁ、そう上手く行かないって事ですかね」
 やれやれとついたザジのため息が、ピシリとカンディスのプライドを傷つけた。

「それで、エイダの様子はどうだ?」
「あの通り、イキまくってますぜ」
 ザジの指差す方向には、4人のディエナによって囲まれたエイダが、時折身体をピクピクと震わせながら喘ぎ声を上げていた。

「あひぃっ・・・そこらめぇ、きたないぃぃ」
 クリトリスを舐められて、エイダが蕩けた声をあげる。クリトリス以外にもまだ薄い胸や乳首、肛門にでさえディエナは指や舌を伸ばし、愛撫を続けていく。その仕草は、どのディエナにも慣れが見えた。どうやら、経験や技術も4人とも共有しているようだ。

「充分緊張はほぐれたようだな。さて、エイダで実験する魔法薬は・・・これと、これだな」
「数が多いみたいですが良いんですかい? たしか魔法薬は一度に何種類も使うと、混ざっちまって思いもよらない副作用が出るって聞きますぜ?」
 カンディスが取り出した色とりどりの液体が入った小瓶を見て、不安げにザジが忠告する。

「仕方あるまい、実験台の数が少ないのだからな。試して効果を見なければ、研究も進まんし・・・。まぁ、これも進歩のためのやむおえない危険性と言う奴だ」
 相変わらず実験台の方の危険性は無視すると、カンディスは白い液体の入った小瓶の栓を開け、どろりとした液体をエイダに飲ませ始めた。

 エイダは当然驚いて顔を背け、口の中の液体を出そうとするがそれはディエナ達が許さない。顔を固定され、吐き出さないよう口を押さえられ、止めに鼻をつままれては抵抗の仕様が無い。しばらくむうむうと呻いてから、ごくりと飲み込んだ。

「でっ、あれは何の魔法薬何ですかい? 成長薬とか豊胸薬・・・それとも精力増幅薬とか?」
「いや、両性顕現薬・・・つまりフタナリになる魔法薬だ」
 二人の見ている前で、ピクピクとエイダの腰が上下に痙攣し始めたと思ったら、元々充血し勃起していたクリトリスの膨張が始まり・・・まるで勃起した男性器のような形になった。

「あぁっ、あふぅぅぅぅっ」
 風がクリトリスに当たるだけで感じるのか、エイダは巨大化した自分のクリトリスに驚きながらも艶のある声が出るのを止められないでいる。

「・・・ダンナ、残念ながら失敗なんじゃないですかね、これは」
「そうだな。男性器が新しく生えたのではなく、クリトリスが男性器の形になっただけのようだし・・・」
 そう言いながら無造作に手を伸ばすと、エイダのクリトリスを握ると右へ左へ動かし始める。

「ひっ! あううぅっ! くひぃぃぃっ! やめへぇぇぇっ!」
 敏感な部分が全てむき出しになっているため、男性器以上に敏感なクリトリスを乱暴に扱われて、痛みと激しい快楽にエイダが翻弄される。巨大化しても、クリトリスの感度は健在のようだ。

 グリッと、強く握りながら扱くと、エイダは悲鳴を上げながら絶頂に至ったが・・・。
「この強度なら挿入は出来るだろうが・・・射精はさすがに無理だろうな。イリスには、もうしばらく夢を叶えるのは我慢してもらうか」

 次に試す薬を、カンディスはエイダが絶頂の余韻に浸っている間に次の薬を素早く飲ませた。
「さてディエナ・・・エイダを押さえていろよ」
『はいっ』
 ディエナ達が命令通りそれぞれエイダの手足を押さえつけるのを見届けてから、カンディスはエイダの股を開かせるとゆっくりと正常位の形でのしかかるように迫っていく。

「えっ・・・いっ、いやぁっ!」
 余韻から立ち直ったエイダが暴れだそうとするが、すでに両手足が押さえつけられているので首をいやいやと振る事しか出来ない。

「暗示はかけないんですかい?」
「必要無い。まあ、見ていろ」
 カンディスはそう言うが、ディエナ達によってもう充分に前座は行われて濡れていても、エイダの未発達な性器にはセックスはまだ負担が大きいようだ。

 ズプリとめり込むように亀頭が膣口に入り込むと、メリメリとそのまま力任せに進入しようとする。
「いだいぃぃぃいっ! 抜いてぇぇえぇぇぇっ!」
「いいだろう」
 あっさりと頷いて処女膜を破る寸前でカンディスは挿入を止めると、ゆっくりペニスをエイダの膣から引き抜いていく。

 だが、カンディスはペニスを完全にエイダの膣から引き抜くと、すぐ再度挿入させようとする。
「もっ、もう痛いのいやぁぁあっ!」
 また身体が真っ二つに裂かれるような痛みを味わわされる事に、汚されることにエイダは心の底から恐怖した。

 紅く濡れる膣口に、再びズプリと亀頭がめり込む。
「あっ、はぁぁぁあぁぁあっ!?」
 その瞬間エイダが感じたのは、痛み以上に巨大な幸福感だった。

 何でこんな事を、しかも無理やりされてこんな気持ちになるのか解らなかったが、とにかく幸せなのだ。恐怖に引きつっていた顔が、思わずうっとりと緩んでしまいそうになるくらい。

 あの赤黒くグロテスクで、肉で出来ているとは思えないくらい硬い棒が自分の中に在る事が、さらに力ずくで押し進んでくることが、目が眩むほど嬉しくてたまらない。じんじんと伝わってくる股間の痛みは、幸せのちょっとした代価でしかなく、今はエイダに自分が如何に幸せなのか教えるおまけでしかない。

「さて、今ついさっきと同じくらい入れてやったが・・・また抜いてやろうか?」
「っ! そんな・・・・・」
 カンディスの提案に、エイダは息を呑んだ。そして、ついさっき感じていた物とは比べ物にならないほど大きな恐怖と不安が、のしかかってくる。

 この幸せを失ってしまうという恐怖感。そしてこの幸せを逃したら、もう2度と幸せになれないのではないかと言う不安・・・。
「・・・て、そのまま入れてくださいっ! 抜かないで奥まで入れてくださいっ!」
「ほほぅ、いきなり積極的になったな。しかし、もっと詳しく言ってもらわなければな」
「何をどうして入れて欲しいのか、詳しくご説明するのよ」
 カンディスの意を汲んで、ディアナ4がエイダに囁く。

「オチンチンを、このままあそこの奥に入れてくださいっ、あたしはオチンチンをあそこに入れられていると、幸せなんですっ!」
「なるほど、そこまで言うなら良いだろう。しかし、我輩の質問には正直に答えるのだぞ」
「はっ、いぃぃぃいっ!?」
 勢い良く返事をしようとしたが、それが処女幕を破られて途中から悲鳴に変わる。

 ブツリと、何かが千切れるような音がしたと思った途端、痛みが一段と激しくなる。しかし、その痛みと比例するように幸福感も大きくなる。
「処女喪失の感想はどうだ?」
「とってもっ・・・嬉しいですぅっ! オチンチンの先で、コツコツアソコの奥を叩かれるのがぁ、幸せの足音見たいですぅっ!」

「ほほぅ、処女で好きでもない男に犯されて幸せとは、お前は淫乱な女らしいなぁ?」
「はいぃぃいっ! あたしは処女なのに犯されて幸せを感じるぅっ、淫乱な女の子ですぅっ!」

「これから我輩のものになる訳だが、そうなるとお前は我輩に犯され続ける人生を生きることになる。幸せか?」
「幸せですっ! オチンチンで犯され続けるなんて、考えただけでぇ・・・・」

「言っておくが、我輩が犯すのは前の穴だけではないぞ? お前の口も肛門も犯すし、鞭などでお前を痛めつけることもあるだろう。・・・まぁ、ちゃんと前の穴も犯してやるが
 それでも構わんかな?」
「構いませんっ! あそこを犯してもらうためなら、口もお尻の穴も捧げますっ、いくら痛めつけられても我慢できますっ!」

「では最後にお前がどんな女なのか、我輩に自己紹介してもらおうか」
「あたしはぁ、オチンチンであそこを犯されてさえいれば幸せなっ、淫乱女のエイダですっ! オチンチンであそこを犯してもらうためならぁっ、お尻の穴でも何でも差し出す、変態な女の子ですぅっ。
 これから末永く犯してくださいぃぃぃっ!」

「合格っ、100点満点だっ!」
 いっそう強く腰を叩きつけ、ペニスを奥に突き込むとそのままドクドクと射精した。そして、ヌプリとペニスを引き抜く。
「はひっ、・・・しあわせぇぇぇぇぇ・・・・・・」
 蕩ける様な笑顔で、エイダはそう言いながら溢れるような幸福に浸りきっていた。

 『負の感情転換剤』・・・脳に作用し、強い負の感情を感じた事柄を、幸福な事に感じるように瞬間的に脳に刷り込んでしまう薬・・・は、カンディスの計算通りに効果を発揮した。

 その後はカンディスは村人達に、自分がやれと言うまで生贄の儀式を行うことを禁じ、村にある水神の神像を自分の紋章を刻み込んだ金属板に摩り替えて、この村やその周辺の辺境の村々を、自分を崇拝し女を定期的に捧げる悪魔崇拝の聖地に仕立て上げるための作業に没頭することになった。

 村長には村人達に無様な姿を晒した上に娘と母親を奪われることで、神官には神の声を聞くという役割を奪われお飾りとして生かされるという境遇で、復讐を果たすことが出来た。

 そして後は翼で飛んで修道院へ・・・とは行かなかった。クロス教の教区とは違って辺境は街道が整備されておらず、時折盗賊も出るためカンディスは歩いて帰ることになった。ファーミアが飛べるようになったとはいえ、ディエナが4人に増えてしまったので、抱えて飛んでいくのは無理がある。

「ここでの結果は上場だったな。だが・・・帰って数日すぎたぐらいで切れるな」
「一ヶ月のハンデ。・・・これからが本番ってやつっすねぇ」
 カンディスは今の自分の持てる戦力と道具をどう生かせばいいのかも、考えなければならなかった。

< 続く >

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