老教師の午後 5

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 人生は、連綿と続く時間の積み重ねだ。
 人はその時その時を、必死に生き、笑い、悲しみ、それが人生となっていく。

 だが――それは言い換えれば、「今」の積み重ねに過ぎない。
 過去は現在が辿って来た軌跡に過ぎず、未来も現在の状況から選択される結果に過ぎないからだ。

 そして、少女達の「今」を完全に掌握している私は、彼女達の人生そのものをこの手にしたと言っても良いのだろう。

 愛する男の隣に、別の女がいる――それだけで、無条件に吹き上がる敵愾心。身を焦がすほどの、嫉妬の炎。
 それが女の本能なのだろうが……なんとも、可愛いものだ。
 二人の心に荒れ狂う嫉妬の炎を、私は内心でニヤニヤと笑いながら観賞する。
 悪趣味なのは分かっているが、これがなかなか男としては心地よい。

 無垢で、おっとりとした普段の様子からは想像も出来ない、女の本性を剥き出しにする姿。
 そのギャップが、私の胸に歪んだ達成感をもたらすのだ。
「せんせ……」
 ドアを閉じた途端に、奈々は半泣きの表情で抱きついてきた。
 腰に回した手には、必死の力が籠められている。
 支配の絆は、荒れ狂う彼女の精神を赤裸々に伝えて来ていた。
『嫌だ』
『どうして』
『捨てられたくない』
『弥生が憎い』
『負けたくない』
 そんな言葉と感情が千路に乱れ、渦を巻くようにぐちゃぐちゃに入り乱れている。
 私は無言でその頤を持ち上げ、唇を重ねた。
「んっ!! …………ん、ん、ふ…………」
 乱れに乱れていた奈々の精神が、一瞬で歓喜に溢れ、急速に落ち着きを取り戻していく。
 そのまま舌を差し入れ、彼女の舌を絡めとるように弄びながら、私は思うがままに口腔を貪った。
 少女の唾液を味わい、吸い込み、そして自らの唾液を混ぜ合わせて再び奈々へと送り返す。
『せんせ……の、舌……すご……ぃ…………きもち、いい……』
 徐々に、とろけるような、痺れるような悦びが彼女の心を満たしていく。
 それと共に、応じる舌の動きも滑らかに、大胆になっていった。
「――はぁ、はぁ……せ、んせぇ……」
 数分後、息も絶え絶えの様子の奈々を、ようやく解放した。
「大丈夫だ、奈々……私がお前を見捨てる事など有り得ない……お前は本当に、私の理想の花嫁なのだ……」
 溢れた唾液を舐め取ってやり、軽く唇を重ね、私は奈々に微笑んで見せた。
「絶対に、何があっても、手放しはしない……」
 奈々も、それに微笑み返してくる。赤ん坊のように無防備で、純粋な笑顔だった。
「嬉しい……、嬉しいです、せんせ……」
 絶望も至福の喜びも、全ては私の掌の上。
『先生のお嫁さんになれるんだったら……わたし……死んでも、いい……』
 彼女達は私の用意した幸せに浸りながら、迷わずに私の子を生み、育ててくれればいいのだ。

 既に奈々との間には、確固たる支配の絆がある。
 意のままに彼女の精神や感情を操り、塗り替える事も簡単だ。
 だが、老教師はそうせずに、奈々の嫉妬を煽る事により彼女の「少女の殻」を破らせようと目論んだ。
 理由は単純で、その方が見ていて心地良いからだ。
 まったく下世話な事だ、と自嘲する通り、それは温厚で誠実な教師だった彼とは掛け離れた感情だ。
 人生を掛けての大博打を打っている緊張と、理想の少女の身も心も手に入れたと言う歓喜が、彼を浮かれさせているのかも知れない。
「わたし……、何でもしますっ!! 何でもしますから……」
 その先は、言葉が続かなかった。
 感極まったように老教師に抱きつき、その胸に顔を埋める。
 儚くも必死な、少女の思慕。
 無垢で柔かかった奈々の心が、焦燥と嫉妬の炎によって捻じ曲げられていく。
 その過程を、「少女」が「女」に変わっていくその全てを、老教師は鑑賞していた。
 心を読める彼にとって、これは極上の愉しみなのだ。
「では、奈々――口で、してみるかい?」
「え、おくち……? あの……どういう……?」
「口で、私のこれを愉しませて欲しいんだよ」
 言いながら、老教師は少女の手を掴み、自らの股間へと押し付ける。
「――――っ!!!」
 奈々の身体と精神が、同時に激しい動揺に、揺れた。
 生理や妊娠時など、セックスが不可能な時の為に、彼女にはフェラチオやパイズリ等も覚えて貰う必要がある。
 今の内から性技の仕込みに乗り出しておくのも悪くは無い。それに――。
 フェラチオには、性器を犯すのとはまた違う、格別な征服感がある。
 可憐な少女の口腔を初めて犯すのが自分の肉棒だという事が、更に老教師の興奮を煽る。
「…………、分かり、ました……」
『わた、し……いやらしい事だって、何でもする……恥ずかしいけど、それだけ、わたしが先生の物になっていくって、事、だもん……』
 おずおずと、上目遣いで老教師を見上げながら、奈々はそっと彼の下半身へと跪く。
 新たなる興奮にいきり立つ怒張を目前にし、少女は思わず息を呑んだ。
『……凄い……』
 嘘偽り無く伝わる少女の感嘆が、老教師の自尊心をくすぐる。
「ふふ……まずは、舌先で舐めてみるんだ」
「はい……」
 ちろ。
 おっかなびっくりに、触れるか触れないかの強さの、舌先の感触。
 だが、その刺激は新たなる感動を、老教師に呼び起こした。
(私の、理想の少女が、私の性器を、舐めているのだ……!!)
 びくん……っ!!
 その感動と、新たなる快感に、老教師の怒張はさらに跳ね上がる。
「きゃ……っ……」
 奈々は驚き、軽く悲鳴をあげながらも、次第に舌の動きを大きくしていった。

 私は、気付いていた。
 閉めた筈の指導室の扉が、薄く開いている事を。
 そのわずかな隙間から、二人を覗いている人が居る事を。
(ふふ……)
 それが誰かは、考えなくても分かる。
 自分だって、立場が逆なら同じ事をしたに違いないのだから。
(悔しいでしょう? でも、黙って見てるしかないのよ……弥生、ちゃん)
 見せ付けてあげる――。
 そう思うだけで、たまらない優越感と女の悦びが、胸に湧き上がるのだ。
「うっ……く……」
 自分の夫となる人。その人の、微かな呻き声。
 感じてくれている。私の舌で、気持ち良くなってくれている……。その事が、こんなに嬉しいものだとは思わなかった。
 もっともっと、この声を聞きたい。――そして、弥生にも聞かせてやりたい。
 だから、声に出して、こう言った。あの子に止めを刺す為に。
「わたし、せんせのお嫁さんになるんだもん……んちゅ……『旦那様』の、言うこと……んっ、ん……なんでも、従います……」
 驚愕に見開かれる弥生の瞳を視界の隅に捉え、私はそっと唇の端を上げる。

 傍の鏡に映った私の顔……それは、妖艶な「女の」笑み、そのものだった。

 ちろ……、ちろ、ちろ、ちろ……
「そうだ、そう……上手いぞ、奈々……」
 鈴口をちろちろと嘗め回す動きから、次第に竿全体を上下に、塗らす様な舐め方に変わっていく。
 その全体を舌先で把握しながら、奈々は歓喜にも似た衝動を覚えていた。
『これが……わたしの中に、入ったんだ……』
 改めて感じる「男」の力強さと迫力に、こくり、と、少女の喉が上下する。
 支配の絆を通じて届く、そんな奈々の感慨も、この上なく老教師を悦ばせた。
「……次は、軽く咥えてみなさい」
「は、い……」
 ほどなく、とろりとした暖かさと、ぬめりが怒張を覆い始める。
 膣とは別の、独特の快感――優に、十数年ぶりの快感だ。
「ん、ん……」
『口、入りきらないよぉ……』
 奈々の内心の通り、少女の小さな口に、その怒張は大きく、太過ぎた。
 それでも、精一杯に先端を頬張り、咥え込もうとする。
 ――ぬるり、と熱い感触が、私を包んだ。
「う……っ……そうだ、そのまま舐めながら、口全体でしゃぶるんだ……」
「ふ、くぅ……」
 反射的に漏れた男の声に、少女は上目遣いの瞳を嬉しそうに細め、頷いた。
 じゅぷ、じゅ……く、じゅぷ、ん……
 コツを覚えたのか、次第に奈々の動きは大きく大胆になっていく。
 拙い動きではあったが、十数年ぶりの歓喜はそれを補って余り在った。
 肉体的と言うよりは精神的な快感から、私の分身はいきり立ち、早くも欲望の放出を訴え始める。
「ああ……そろそろ、いくぞ、奈々……私の精液、ちゃんと飲むんだぞ……」
 こくん、と、亀頭を頬張りながら奈々は頷いた。
 その目尻に浮かぶ微笑みに、一瞬、亡き妻の面影が重なり――。
「ぐ、あ……っ!!!」
 ちゅうっ、と鋭く吸い込まれた瞬間、フラッシュバックと共に、私は奈々の喉奥へと容赦なく欲望を吐き出していた。
 どくっ、どくっ、ごぷっ、どくんっ、ごぷ、ごぽ……びゅく……
「んんんんんんっ、んう……ぐ……ぐふっ……んっ、んうぅ…………」
 初体験となる口内射出に驚き、目を白黒させながらも、奈々は懸命にそれを飲み込もうと喉を動かす。
「ふぅぅ、ふぅ……ん、く……くぅ……うぅ…………ん、く……ん、く……」
 大きく咽せ、涙目になりながらも、少女は一滴も漏らすまいと、決して口を離さなかった。

「せんせ……の、せいえき……いっぱい、でた、ね……」
「ああ、とても気落ちよかったぞ、奈々……」
「うれ、し……」
 息も絶え絶えといった様子の奈々の顔に、老教師は愛しそうに、キスの雨を降らせた。
 虚脱したような、力無くも幸せそうな笑みを浮かべる奈々、その華奢な身体を抱き締める老教師。
 窓の光を背に、神々しささえ感じてしまいそうな、それは一枚の完成された絵画だった。

 弥生はその美しさに心打たれながらも、同時に世界が真っ赤に染まりそうな程の嫉妬を感じていた。
 きっかけが魔力による紛い物でも、そこから飛び火した嫉妬の炎は、紛れも無い本物の「感情」だ。
(ああ……)
 千路に乱れる思考、泥沼のようにぐちゃぐちゃな感情の中。
(あの人を、奈々から奪えるなら……)
(あたしは、悪魔に魂だって売る――嬉々として)
 弥生は半ば無意識に、そう考える。
 それはもう一人の少女が迎えた成長――少女から女への脱皮、その始まりだった。

 彼女への初めての口内射精。
 その感動と快楽は、だが若さを取り戻した私の肉欲を鎮めるには些か足りなかったようだ。
「奈々、立ちなさい」
 少女は僅かに気だるげな気配を見せながら、ゆっくりと立ち上がる。
 屈み込み、股間に顔を近づけた。
 薄い陰毛の下、無意識にひくひくと蠢く尿道口がワレメの隙間から垣間見える。
(そうだそうだ、奈々に暗示を掛けていたのを忘れていたな)
 4時間目の授業、丁度奈々のクラスの授業を行った際、私はクラスの生徒全員に魔眼の暗示を施すと共に、奈々に特別な暗示を掛けておいたのだ。
 ――私に言われるまで、尿意を忘れ、トイレに行く事を忘れる、という暗示を。
「奈々、ひょっとして――『おしっこがしたい』のか?」
「――――!!!!」
 私の言葉に籠められたキーワードに、一気に尿意を「思い出し」、驚愕する奈々。
 その顔から一気に、血の気が引いていく。
 凄まじい苦悶が伝わってくるが、今の私にはそれすら心地よい。
「ご……ご免なさい、せんせ……おトイレに、行かせて……」
「駄目だ。ここでトイレに行ったら、今日はこれで終わりにするぞ」
「そんなぁ……お、お願い、お願いしますぅ――あ、あ!!!」
 突き上げるような排泄欲に、奈々は悶絶しながら哀願する。
「ふふ、丁度良い、ここでオシッコする所を見せてみろ」
「――そんな……」
 大きな衝撃を受けた顔のまま、奈々は見る見るうちに顔を青ざめさせていく。

 私はそんな様子の奈々に構わず、掃除用のバケツを目の前に置いた。
「さあ、これにするんだ」
「いやぁ……っ!!!」
『そっ、そんな恥ずかしいとこ、先生に……見られたら……生きていけないよぉっ!!!』
 あまりの恥辱に、奈々は立ち上がり逃げようとしたが、それを無理やり抑え込み、尿道口を指先で嬲る。
 とっくに膀胱の限界を超えている奈々には、もう耐えられまい。
 前屈みになり、少女は激しく首を振る。長い黒髪が揺れ、さぁっと広がった。
 そんな清楚な光景をバックに、少女の痴態が始まろうとしている。
「せんせ……お願い…………お願い……」
 奈々は上目遣いの、涙の滲んだ瞳で私に哀願していたが、やがてそれも肉体の衝動に耐える為にぎゅっと閉じてしまった。
「あああ……あああぁぁ…………」
 太股が引き攣れ、ひくんひくんと秘肉が収縮する。
 ――もう限界だな。止めを刺してやるか……。
 私は少女の耳元に口を寄せ、そっと囁いた。
「ほら、弥生が覗いているぞ。見せ付けてやれ、お前が私に全てを曝け出している処をな」
「で、でも……」
「ふふ……そうすれば、弥生はショックを受けるだろうな……もしかしたら、私への事も諦めるかも知れんぞ?」
 それは、奈々にとっては甘露のような誘惑だった。
 その一瞬の心の揺らぎが、少女の身体に致命的な隙を作らせる。
「でも、そんな――あ!!」
 瞬間の弛緩。でも、それが決壊の引き金を引いてしまったのだ。
「や、あ、あ!!!」
 絶頂の時のように、奈々の全身がビンと張り詰める。
「あぁ……ああぁぁぁぁぁ……おねがい、もう、もうだめぇぇぇ、だめぇぇぇぇぇ」
『で、出ちゃう、出ちゃう、出ちゃう、出ちゃう…………あ、あ!!』
 ぴっ、と、先走った雫が飛ぶ。
「あ、あ、あ、ああああああ」
 腰が、かくかくと前後に揺れ始める。

『お、お願い、お願い、お願い、お願い――い、いやぁぁぁぁぁっ!!!』
「ああああぁぁぁぁぁっ、いやぁぁぁぁああああああああああああああああああーーーーーーーーーーっ!!!!!」
 
 しゃぁぁぁぁぁぁ……
 待ち望んだ、黄金のアーチが描かれた。
 一昨日とは違う、自らの意思による奈々の放尿シーンだ。興奮しない筈が無い。
 その羞恥とショックの入り混じった、呆然とした表情。
「ああ、ああぁ、見ないで……見ないで……見ないで…………」
『どうしよう、どうしよう……嫌われちゃう、嫌われちゃう……』
 老教師はその思考を読んで、顔には出さずに悦に入った。
「――、――――っ、あぁぁ、とまんない、とまんないよぉ……せんせ、せんせぇ、みないでぇ……っ!!」
 しゃぁぁぁ……
 指導室内に、独特の匂いが立ち込める。
 だが、窓を開けるつもりは毛頭ない。この匂いをこそ、楽しまないでどうするのか。
「いやぁぁ……ぁ…………あぁ…………」
 ちょろ、ちょろちょろ……
 永遠にも思えた数十秒が過ぎ、黄金のアーチが途切れる。
 力なくひくつく柔肉から数滴の雫を垂らし、少女の放尿は終わりを告げた。
『見られちゃった……見られちゃったよぉ……』
 壊れた操り人形のように、全身を投げ出して呆然とする奈々。
 汗と涙でぐちゅぐちゃのその顔に、私は勢い良くキスをした。
「せん、せ……?」
「ふふ、凄く魅力的なシーンだったぞ、奈々……」
 顔を下げ、ヒクヒクと震える粘膜にむしゃぶりつく。
「ひぃ、ぃ……っ!!?」
 汚れにも、驚く奈々にも構わずに、一心不乱に舐めた。
 唇と舌を縦横無尽に動かして、シンプルな構造の秘部を隅から隅まで攻め立て、尿も愛液も何もかも、飢えた獣のように飲み込んでいく。
「う、うわ、うわぁぁぁっ!!!」
 膣が痙攣してぴゅっぴゅっ、と尿の残滓が飛び出すが、それも迷わずに飲み込んだ。
『あああああああああ、せんせいが、せんせいがああああああああああ』
 奈々の中で、何かが壊れた。
 汚れたそこを無茶苦茶に啜られて、少女は自分が嫌われても汚がられてもいない事を、大いなる悦びと共に悟った。
 羞恥が、恐怖が、老教師に全肯定されてがらりと反転していく。
「うわ、うわぁ、すご、すごい、すごい、すごいぃ……」
『わたし……こんな、エッチな事、言ってる……』
 一方で少女の肉体も、待ちに待った愛撫を与えられて、歓喜に打ち震えていた。
 上気した頬で、蕩けるような笑顔を浮かべ、その唇の端から一筋の涎をたらす。
 年端も行かない幼女が、ここまで淫靡な表情を浮かべることが出来るとは……。
 だが、これでいい。
『ああ……私、もう、先生に嫌われたら、死ぬしかない、な……』
 こぽ、こぽ、こぽと白濁した蜜が溢れ出る。
 私は奈々の内心に答えるように、言葉による篭絡を続けた。
「奈々……もうお前は私の物だ。私だけの、女だ。――いいな、奈々」
「う、嬉しい、嬉しいよぉ、せんせ……私、先生だけの物だよ……他の誰も、いらない……」
『もう、先生のお嫁さん以外の生き方なんて、意味ないもん……』
 支配される事の悦び、その蜜の味を浴びるほどに味わい、奈々の精神はドロドロの蜜漬のように蕩けていく。
(そう、獲物を縛る枷も、蜜も、多いに越した事は無いのだ……)
「さあ……では、行くぞ、奈々……」
「え……ぁ……」
 ハッと我に返ったような奈々の声。同時にその身体が、小刻みに震えだした。
「……私が、怖いのか?」
「違います……せんせが、怖いんじゃないの……痛いのが……まだ歩いてるだけで、痛いの……」
 奈々の言葉は嘘ではなかった。事実、奈々の心の声は未だに続いている破瓜の鈍痛に怯えていた。
 まあ、それはそうだろう。まだまだ未成熟な少女の膣を無理やり抉じ開け、貫いた、その翌日だ。
 昨夜は奈々の家に医者を呼び、抗生物質などの治療を施してはあるが、脳髄を貫くような痛みの記憶に恐怖するのは当然だ。
「そうか……ならば奈々、お前を『操作する』ぞ」
「あ……」
 途端に、奈々の瞳から光が消え失せ、表情という表情が一気に消えた。
 すぐさま瞳を覗き込み、その精神に忍び込む。
「大丈夫だ。お前は、『もうセックスで痛みを感じない』。膣から感じるのは快感だけだ」
 支配の絆がある以上、痛みを感じないようにする事など造作もない。
 ついでにその恐怖も緩和させてやろうかと思ったが、先刻の、怯え震える表情を思い出した。
(ああいう表情の少女を犯すのも、悪くないな……)

 目を覚ました奈々に、私は獣のように猛然と奈々に覆いかぶさった。
「あ……、せん、せ…………」
 隠しきれない恐怖を浮かべた奈々の唇を乱暴に奪い、舌先を差し込み、絡ませる。
 まるで拒絶するかのように腕が私の胸を押し返し、すぐに力を失い、ぱたりとソファの上に落ちた。
 その手を上から押さえつけ、私は、恐怖に戦く奈々を無理矢理貫いた。
「うぁぁぁあああああぅっっ!!!!」
 恐怖も快楽とも付かない叫び声。震え、仰け反る華奢な躯。
 奈々は目をカッと見開いたまま硬直し、ふるふると小動物のように震えていた。
(さあ、いくぞ――!!)
 私は欲望の赴くままに乱暴にピストン運動を開始する。
 突き上げる度に、ぷるぷると揺れる小さな胸が可愛らしい。
「うぁっ、うぁぁぁぅっ、せっ、せんせっ、せんせぇっ……」
 昨日の甘露をまた味わわせろとばかりに、腰は勝手に動いて奈々を無茶苦茶に突き上げ続ける。
 それでも、奈々の喘ぎ声は次第に甘美な響きを帯び始めた。
 麻酔のように刺激そのものを遮断している訳ではない。その刺激の中で、痛みに分類される部分のみがカットされているのだ。
 苦痛を感じない分、膣を突き上げられる刺激に集中できるのか、通常よりも遥かに早く、奈々は膣の快楽に目覚めていく。
 ず、んっ!!
「あふぅっ!!!」
 思い切り、彼女の子宮口を突き上げた。
 悲鳴のように漏れた奈々の声は、いまや明らかな艶を含んでいる。
 ずんっ、ずんっ、ずんっ、ずんっ……
「せっ、せんせぇっ、せんせぇっ、何か変、変なの……っ!!」
 小さく、愛らしい、しかしとても熱い、吐息。
 戸惑いながらも、急速に性の目覚めに花開いていく、その儚さと可憐さ。
「あ、あ、あ、なにか来る、なにか、来る……!!」
 突き上げを続けているうちに、最初は恐怖に丸まっていた背筋がピンと張り、仰け反ってきた。
 膣がきゅぅ、きゅぅ、と驚いたように締め付けてくる。
『ああ……きちゃう、すごい、大きいのが、きちゃう……』
 その目蓋からは随喜の涙がぽろぽろと零れ出、精神からは歓喜の叫びが伝わってきていた。
「あぁ、そうだ、そう、そのまま最後まで上り詰めるんだ、奈々っ……」
 そろそろこちらも限界だ。だがこれで私の方が先に果てては男の沽券に関わる。
 ず、ぐんっ、ずぐんっ、ずんっ、ずぐんっ!!
 私は猛然とピストンのピッチを上げ、腰のグラインドを深くした。
「ああぁ、来る、くる、くる、くるぅぅ……」
 子宮を突き上げるような衝撃さえ、今の彼女には、天上へと駆け上がる最後の背中の一押しとなる。
「ぐ、お、お…………っ!!!」
 私も、相手があどけなさの残る少女である事など、当に頭の中から吹き飛んでいた。
 腰に、奈々の脚が絡みつく。
 精を注いでほしいと、女の本能が求めているのだ。
「あっ、あっ、あああっ!!!」
「ぐ、お、おおおっ!!!」
 私の脳の中で、快感が爆弾のように炸裂し、それに繋がっている奈々の精神をも巻き込んだ。
「うぁ、ぁ、あぁぁあーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!」
 奈々の、絶頂。
 括約筋が滅茶苦茶に動き、膣壁は男の射精を促すようにぎゅぅっと締まり、そのままミミズのように蠢いた。
 そして――。

 この少女は私の物だと、世界中の男供に見せ付けるかのように――

 私は、精を放った。

 私は、もうおかしくなってしまったんだと、思う。
 昨日まで、ヴァージンだったのに。
 今はもう、自分の身体を貫く、逞しい先生のペニスが、愛しくて欲しくて仕方がないのだ。
 大きくストロークするその動きで、奥の奥まで貫かれるたびに、目の前が真っ白になるような快感が脳髄を直撃する。
 そして、また突くために亀頭の辺りまでペニスが抜かれるだけで、言いようの無い寂しさが湧き上がるのだ。
 ――完全に抜かれても、いないのに。

(先生の身体に、されちゃったんだ……)

 全てが終わった後、弥生の視線を感じた。
 悔しそうに歪んだ眉。
 バタン、だだだだだだだ……
 走り去る音に、私は、この上ない優越感を覚えていた。

 この日。

 私がかつて受け持った生徒の一人が、殺人事件を起こした。

 毎日必死に対話に努め、少しずつ少しずつ心を開いてくれた、ぶっきらぼうな少年だった。
 一歩一歩、成長の階段を踏むように優しい心を取り戻し――その恩返しと言い、警察官への道を選んだ彼。

 些細な喧嘩から拳銃を取り出して同僚を撃ち、直後にその銃で自らのこめかみを撃ち抜き、自殺したそうだ。

 代償とは、こういうものなのだ。
 あの日々に、少年の中に確かに芽生えていた確固たる信念が、私の悪魔との取引により「無かった事になった」。

 これは私のしでかした「被害」の、氷山の一角に過ぎないのだろう。
 だが、私は後悔してはいなかった。

 それでも、進むしかない。後戻りはできないのだ。

 私にはもう、それしかないのだから。

< つづく >

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