リアルゲーム 一話

1話-a:最初の獲物達~紹介パート~

 春休みという予行演習が終わり、今日からいよいよゲームが始まる。
「影路様、いよいよですね」
「ああ、美羅」
「はい」
「お前に『指令』を送る」
 美羅の瞳から光が消える。
 美羅に対して行ってきた実験と説明書のおかげで、支配した相手のことは理解できたつもりである。
 支配した人間は、とりあえず元々の人格を維持しつつも、俺が命令を下す時等に別の人格が現れる。
「学校や登校中、友達との付き合いの中では、俺のことは沖田と呼べ」
「私達が同居していること、そしてその関係を悟られないためですね?」
 指令を送っているとき、俺の指示がミスを招くときもあるかもしれない。そのため、裏の人格がストッパーとしてまたはよりよい意見を出してくれる相談者として勤めてくれるのである。
「ああ。とりあえず今はこれだけだ」
 もっとも、俗に言う催眠のように、性格を変えてしまえば、元というものはなくなってしまうが。
 美羅の瞳に光が戻った。
「じゃ、行こっか、沖田君」
「そーだね」
 俺に関わるすべての人間を奈落へと落とすゲームの始まりだ。

 私立宝玉学院全校生徒約900名、職員約100名、合わせて約1000名のうち、男子の数は100にも満たない。
 一昨年女子高から共学に変わったばかりの学校であるためしかたないことだがこの共学化や少ない男の数には親父が一枚噛んでいた。
 そこのところを問い詰めた結果、「男を支配するよりも女のほうが良いだろ?」だそうだ。
 ちなみに、完全に俺以外の人間を全員女にしなかった理由は、ふつーに怪しまれるということと、ある系統の魔法の成長度を調べるためらしい。
 教員、それ以外の職員に男はなく、年も高くて30代前半だそうだ。まぁ、そいつらまでやろうなんて気にはならないが。
 それらが一応、親父なりのサービスということらしい。

 入学式が終わり、必要な資料を分けてすぐ解散かと思われたが、速攻でホームルームが始まった。
 お題はもちろん委員会決めだ。その後に、任意だが部活動の自由見学兼仮入部の時間もあるらしい。やれやれ。
 かなり時間がかかったり、立候補したわけではないのに俺は副委員長にさせられた。美羅は図書委員だ。
「よかったぁ、となりに男子がいて」
「そういうなら、こんな学校に入らなきゃ良かったんじゃないか?」
 今俺が話しているのは、隣の席にいる篠原 優(しのはら ゆう)(男)だ。
 身長148cm、体重は40kg。かなりのチビで、そして俺よりも童顔・・・・・・いやこれはもう中性的な顔を通り越して女の子の顔である。
 制服をしているからこそ判別ができるものの、私服いたら絶対に女子と間違えられるだろう。
「う、うん。○学の時は男の子ばっかだったんだけど、この顔や身長のせいでからかわれて、だからここならそんなことないかな~って」
「それは・・・・・・あまり変わらないと思うけど」
 俺は好印象を持たせる雰囲気で話を続けながら、透視力という系統の魔法をフルに動員している。
 透視力というのは、なにも服が透けて見えるとかという類ではない。一応できなくもないが、男の体を見てどうするんだ?悪いがそっちの趣味なんてものは俺にはない。
 彼が持つ情報を見ることができるのだ。先程、俺が身長と体重をかなり正確な数字を出せたのもこの系統の魔法のおかげである。
 その魔法で得た情報から俺は不思議に思ったことがある。
 家が、空手の道場で当然のごとく優は空手を習っている。
 その技を使えば、いじめっ子などいっそうできただろうに・・・・・・
 別の透視力を使って、彼の心の中、彼の過去を探っていく。
 それを一応把握できた時、俺は心の中で美羅に指令を送る。
≪美羅、今から指令を送る≫
≪なんでしょう、影路様?≫
≪今から俺がお前に少し力を分け与える。その力でお前は、篠原 優に誘淫術を使え、ただし、即効性があるやつは使うな。夜になって効果が出るようにしろ≫
 ちなみに、美羅の席は優の逆隣だ。ちょうどいい席に座ってくれた。
 説明書によれば俺の力をある一定時間、支配済みの人間に分け与えることが可能ということだ。
 RPG風に俺のLVをとりあえず5(MAXが100)だと仮定しよう。魔法を使えば使うほど経験値は貯まっていく。
 支配済みの人間に力を分け与えて現状LV2の俺を仕立てることが可能なのだ(その代わり、俺のLVは一時的に4になるが)。力が帰ってきたときに、その分け与えたものが得た経験値を俺に還元してくれるというおまけつき。
 これを利用しないてはない。
 美羅の返事がちょっと間をおいて返ってきた。
≪まさか、影路様に男色の気があるとは思いませんでした≫
≪何を馬鹿なことを言っているんだ?親父がこのゲームをやらせる上での高得点を稼ぐためだよ≫
 まったく、早合点するな。
≪ではあの魔法、『逆転性別』を使うのですね?≫
≪ああ、一応な≫
≪一応?≫
≪正直言ってあの系統の魔法はまだ完璧に使いこなせるわけではない。ただし、あっちがあるゲームに乗ってくれるなら話は別だ。≫
≪あるゲーム?ということは・・・・・・≫
≪契約式でやっていこうと思う。それまでの手はずを頼むぞ?≫
≪分かりました。でも、簡単に、落ちるでしょうか?≫
≪賭けるか?≫
≪やめておきます≫
≪とにかく頼むぞ≫
≪了解≫
 素の美羅は優に話しかける。そして輝かしいほどの微笑みを優に見せるもちろん、魔法を使いながら

 部活動の自由見学の時間になった。上にも書いたとおり任意なので用事があるものは帰っているが部活動を見る生徒のほうが多い。
 俺は前々から将棋部に席をおくことに決めていた。体を動かすことが嫌いというわけではない、むしろ好きなほうではある。
 しかし、俺は頭脳プレーのほうが得意なのだ。それに今の俺なら多少のいかさまもできる。
 ちなみに美羅にはとりあえず水泳部に仮入部しろと指示を出しておいた。
 将棋部の実績は結構あるらしくそれゆえに女性上位の秩序が形成されているらしい。だから男子の入部希望者は俺一人だったがかまわない。
 クラス以外では手始めにここから変えていこう。俺の望む世界へと。
 早速俺は入部手続きの用紙を部長に求めた。
 将棋部部長伊藤 香子(いとう きょうこ)は問う。
「この部で男子はあなた一人になるけどいいの?」
「構いませんよ。ゲームに男も女も関係ないでしょう?」
「そりゃ、そうだね。はい、これ。もう決めてるなら早めに出してよ~。心変わりしないうちに」
「分かりました」
 事前に入手した情報では部長は、将棋のアマチュア4段の腕前らしい。
 結構な位置にいるので、将棋を楽しむものとして真剣に手合わせしたときどんな強さなのか個人的には興味がある。
 それ以外にもさまざまなボランティア活動に積極的に取り組み、また誰とも仲の良い関係を築きあげる。リーダー的存在。姉御肌の人間である。身長は175と女性にしては長身で、スリムな体格をしている。胸はさほど大きいとはいえないが、ウエストは細い。肌はきめ細かく健康的な色をしている。
 さて、どうやって堕とそうか?

< つづく >

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