復讐 三日目

三日目

 なんでこんな事になったのだろう。

 僕は怒り狂った萩山と対峙しながらそう思った。

 そんな僕の隣には加奈がいて、涙を浮かべながら申し訳無さそうな顔をずっと僕に向けている。

「~~~~~~~~~~~っ!!」

 萩山が大きな声を上げて僕達に何か言っているようだが、強い風が吹いた為に何を言っているかは良く分からない。

 けれど加奈から取り上げた携帯を手にかざしている事から大体その内容は予想が付く。

 そう、事の発端は加奈がドジを踏んだ事から始まった。

 女の勘といえばいいのだろうか、ここ2、3日の加奈の様子に疑問を持った萩山が千恵と協力して加奈の携帯を盗み見たのだ。

 そして消していないメールが発見された。

 僕とのメールは全て削除するよう言ってあるので有り得ないと最初は思ったが、初めて僕から届いたメールだけは残しておいたと言うのだ。

 怒りを超えて呆れた。

 恋に夢中なのもいいけどこうなるなら考え物だ。
 しかし、この事がきっかけで僕の言う事には私情を挟まないようになるかもしれないからかえって良かったのかも知れない。

 萩山が実際に確信を持ったのはいつなのか知らないが、屋上に呼び出されるまでは怒りを見せていなかった。

 だが屋上に来た途端、隣にいた加奈を僕のほうへ突き出し烈火のように怒り狂い始めた。

 加奈の裏切りが相当頭にきたらしい。

 もちろん僕はとぼけようとしたが、確かな証拠を見せられてはどうしようもない。

 僕は押し黙って萩山の怒りの言葉を身に受けていた。

 隣では加奈がずっと体にしがみ付きながらごめんねという言葉を繰り返し続けていた。

 本当に馬鹿な奴だ。

 馬鹿な奴だけど、僕にとって理想的なシチュエーションを作ってくれた事は褒めてあげてもいい。

「こっちに来なよ、千恵」
「あ・・・・・はい」

 声を掛けると萩山の隣に立っていた千恵が萩山を見捨てて嬉しそうにこっちに駆け寄ってくる。

 萩山は気付いていなかったけど千恵は最初から僕だけを潤んだ瞳でじっと見つめていた。

 味方は一人もいない。

「な・・・え・・・?」

 信じられない、といった期待通りの顔で萩山が千恵の背中を目で追う。

 最高だ。

「な、何で・・・千恵っ、あんたまでっ!?」
「さあ、何でだと思う。萩山さん?」
「・・・あんたが・・・何かしたのね・・・」
「そうだよ」

 僕はあっさりと認める。

 隠す必要はない。

 僕の飄々とした態度を見て唇を噛む萩山の顔を見て笑いが零れた。

 もっと悔しがって絶望するといい。

 もっと悲痛な顔を僕に見せてくれよ。








 ドクン、ドクンと心臓が波打つ。

 加奈はともかく、千恵も信じられないことだけどあいつの言う通り催眠術やなんかで正気を失っている。

 いや、もしかしたら加奈の恋愛もあいつに仕組まれたものかもしれない。
 どちらかというとそっちの方がしっくりくる。

 そうだ。全部あいつが原因だ。

 でも、私だけはまだ無事でいる。

「・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 今まで自分が散々いじめてきた、隠したの人間に好きなようにされるのは耐えられない。
 何の役にも立たないゴミムシが私に逆らうなんて、絶対に許さない。

 ―――だったら、いっそ。

 頭の中に狂気が渦巻いていく。
 後のことを考えられない。

 ただ、本能があいつを殺せと私の中で警告している。

 殺せ。
 殺す。

 頭の中で、そして口に出して何度も範唱する。
 もう止まらない。

 あいつが後ろを向いた。
 いまだっ。

「う、ああああああああああああああああああああああああああっ」

 私は勇み声を上げると、手の平を突き出して全速であいつの体目掛けて突進する。

 ドンッ。

 胸に私の全力の力の衝撃を受けて小柄なあいつの体が後ろに倒れていく。

 鉄棒の前まわりを失敗するように体が逆向きに後ろ倒しになって短い柵を超える。

 体が吹き飛び、驚いたあいつが倒れながら私の顔を見る。
 見開いた目。
 信じられないといった、負け犬の顔。

 あは、あはは、ざまあみろ。
 あんたにはその姿がお似合いよ。

 何もできないまま、まるでスローモーションのように宙に投げ出されるあいつの間抜けな姿を見ながら私は笑う。

「あは・・・あはははは、はははっあははは、あっはっはははははははははは・・・・はは・・・・・・・・・・・は?」

 突如身を襲う浮遊感。
 まるで上空から下に向かって走る遊園地のアトラクションの一つに乗ったときのように体が浮く。

 私は奇妙な気持ちで下を見て絶句する。
 足場が無い。

「きゃああああああああああああああああああああああっ」

 気が付けば私はいつの間にか屋上のへりに手をかけて落ちないようにと自分の体を支えていた。

 おかしい。
 落ちたのはあいつのはずなのにいつの間に私はこんなことをしているんだろう。

「誰かっ、助けてぇぇぇっ」

 手の先に力を込めながら私はあらん限りの力で叫ぶ。

「どうしたの沙織?」
「・・・なにかあったの?」

 上から声がしたので、向くと見知った顔ぶれがそこにあった。

 良かった。
 危機は去らないものの、それでも友人達の顔を見て安心感で胸がいっぱいになる。

「加奈っ、千恵っ、助けてっ」
「助けるって・・・・・・・・まさか私達が? どうして?」
「自業自得でしょ。そのまま落ちればいいじゃん」
「――――――え?」

 親友達のあまりの言葉に私は目を見開いた。
 全身の血が冷たくなっていく。

「わ、私はあんた達を助けようと思ってっ・・・あんた達のためにあいつを殺したんじゃないっ」
「・・・」
「・・・」

 私は必死に言葉を投げかけるが、返事は返ってこない。
 まるで言葉が理解できない異星人みたいに首をかしげ、ガラス玉のような目で私を見ている。

 落ちそうな私の姿を見ても手を差し伸べることなく、平然とその場に立っているだけ。

「ねえっ冗談はやめてよっ、早く助けてぇぇぇっ」

 私の懇願の声も届かず、二人は能面のような顔に冷笑をたたえると踵を返してあっさりとその場を離れていく。

 遠ざかる靴の足取りを見ると、誰か助けを呼びに行ってくれる雰囲気ではない。

 二人は私を見捨てたのだ。

「い、嫌っ、誰か、誰かぁぁっ」

 吹き曝しの屋上で強い風を受け、体が大きく揺らされる。

 私の命を支える手からは力が見る見るうちに抜けていき、ひどく汗ばんでいるせいでコンクリートからずりずりとずれ落ちる。

「ひぃぃぃっ」

 落ちたくない。
 死にたくない。

 指を立て、爪を立てるが平らなコンクリートには引っ掛ける場所も無い。

 そして。

 無常にも体を支えきれなくなった手が完全に離れ、私の体が空中へ投げ出される。

 何も出来ない。

 手の指を動かす間にも地上との距離はどんどん近くなってくる。

 視界に入る、硬そうな地面。
 私の頭に、打ち付けられて体の中身が外に飛び出るイメージがやけにリアルに目に浮かぶ。

「嫌ああああああああっ」

 叫び声も虚しく、鼓膜が破裂するくらい大きな音を立てて背中が地面に打ち当たる。
 そして、同じ衝撃が後頭部へ。

 落下の衝撃で肺から空気が全て外に出てしまったために息が出来ない。

「・・・ぁ・・・・ぅぅ・・・・ごほっ・・・」

 体の下から上から、あちこちから生暖かいものがいっぱい外に流れ落ちていく。

 私を見下ろす空は私の事など何も知らないように広く、変わらない。

 ああ、でももっと赤くなってぼやぼやしてきた。
 あはは、何これ。

 どんどん体が冷たくなっていく。

 そして私は死に直結する傷みが体を襲うよりも早く、意識を失わせた。

「・・・・・・・・・」

 体が冷たくて重い。

「・・・・・・・・・」

 苦しい。
 息が出来ない。

「・・・・・・ぐ・・・・ぐぅ? がぼ、がぼっ!?」

 目が覚めた私の目の前に広がっているのは視界いっぱいの水。

 何故自分がこんな所にいるかという疑問は口から、鼻から入ってくる水の苦しさにかき消された。

 肺に残った息を吐きながら私は夢中で手を動かして水面へと向かう。

「ごほっ、がほっ、がほっ、うぇっ」

 幸い水面は近く、なんとか自ら顔を出す事に成功した私は水を吐き出しながら空気を取り込む。
 開いた目が見たのは浮きでコース分けされた馴染みのある風景。

 ――――――学校のプール?

「げ、ほっ・・・がっ・・・・・ごぼっ!?」

 不思議に思いながらも、これなら助かる。
 そう思った矢先足に痛みが走り、私の体はまた水の中に沈み込む。

 足が、攣ったっ!?。

「ぐぅっ・・・げぼっ、がぼっ・・・だ、誰がっ、ごぼ、だす、げでっ」

 足の痛みに耐えながら水面と水上を行き来するが、誰にも私の声は届かない。

 バランスを失ったせいで上手く泳げず、乱れた呼吸は急速に私の体力を奪い去る。

 手足で水を掻こうとしたが、たっぷりと水を吸った制服が重く思うように動かせない。

「ぐばっ、ごぼ、ごほっ・・・だ、誰かぁ・・・」

 水底から誰かが足を引っ張っているように体が下へ、下へ沈んでいく。

 少しでも空気を取り込もうと顔を水面に持ち上げるが、そのせいで波立った水を顔に受け思いっきり飲み込んでしまう。

 激しく咳込んで、息が出来ない。

 もう、駄目。

「ごぷ・・・・・・」

 肺に残っていた最後の空気が口から漏れて、私の体が下に沈んでいく。

 苦しい。
 誰か、助けて・・・。

 ―――そう願った所で息が出来ない苦しみで私の意識はまたフェードアウトした。

「おはよう」
「ひぃぃっ」

 誰かの声を受けて目が覚め、私は叫び声を上げる。
 まだあの恐怖のイメージが体の中にこびり付いている。

「おはよう。萩山さん」
「ひ・・・あ・・・・あぁ・・・東、宮・・・・・・なんで・・・あんたは私が・・・」

 目を覚ました私の前には確かに私が殺したはずの東宮の姿があった。
 以前と変わらない姿だ。
 屋上から落ちたとは思えないほどに外傷は無く、軽い口で話している。

「わ・・・たし・・・死んじゃった・・・の」
「違うよ。ただ幻覚を見ていただけだよ」
「げ・・・幻覚?」

 嘘だ。
 屋上から落ちる途中で受けた風も、その後の衝撃も、プールの水の冷たさも味も苦しさも幻覚とはいえないほどにリアルだった。

 かといってどういうことかを説明は出来ないけれど、幻覚なんかではないとだけは言える。
 だって、私が味わった恐怖は覚めた今でもまだ実感できるほどに絶大なものだったから。

「嘘じゃないよ。本当に幻覚だよ・・・・・・ただし受けた感覚は現実と一緒だけど」
「・・・う、嘘っ」
「だって見てみなよ。ここはどこ?」

 東宮の言葉を受けて、はっとして私は辺りを見回した。

 コンクリートの床。
 貯水タンク。
 そして広がる茜空。

「屋、上・・・・・?」

 見れば、東宮の後ろに立ち去ったはずの二人もいる。
 じっと動かず人形のようにしてはいるものの、あの時とは違い表情には生気が感じられる。

 それじゃあ。
 私は東宮を突き落とすこともなく、私自身が落下する事もなく、溺れ死んだのも全て幻覚だったということになる。

「あ・・・あんたぁぁぁっ」

 私は激怒して東宮に飛び掛ると、コンクリートの床に組み伏せる。
 こいつが何かをしたのは分かっている。
 だから、許せない。

「・・・ふふ」

 私を見上げる東宮の顔にはいつものように怯えたものがなく、むしろ堂々としていて余裕がある。

 それがまた私の怒りに火を注ぐ。

 私にあんな事をして、絶対に許さない。
 あんたは私の玩具らしく言う事を聞いて、おどおどしていればいいのよっ。

 目が覚めたなら復讐してやる。
 もう誰にばれてもいい。
 知った事じゃない。

 こいつのケツの穴にトイレットペーパーを突っ込んで、手足を縛ったまま教室に放置してやる。
 いいや、そんなことくらいじゃ私の怒りは収まらない。

「・・・分かってる?」
「何がよっ!?」
「何で幻覚を見ていたのか分かってるの?」
「あんたが何かしたんでしょっ」
「そうだよ。だから、また幻覚を見せれるって・・・分かってんの?」
「あ・・・」

 ぞくっと背筋に冷たいものが走る。

 そして頭の中に再び蘇るリアルな死のイメージと恐怖。

 思い出しただけで体からは汗が噴き出て、がちがちと奥歯が鳴る。

「や・・・止めて・・・」
「そういうのは手を離して言う台詞じゃない?」
「ひっ」

 私はすぐに東宮から手を離し、後ろに飛び退く。

「どうせまた僕をいじめようとか考えてたんでしょ?」
「お・・・思ってないっ。絶対思ってないっ・・・もうあんたに手は出さないからっ・・・」
「あんた?」
「ひぃっ・・・・・・と、東宮・・・君には手を出しませんっ。本当・・・約束するからっ」

 私の懇願が聞き入れられたのか、硬い表情をしていた東宮がふっと顔を緩ませる。

「あぁ・・・」

 胸に安堵感が満ち溢れた。

 立ち上がった東宮は制服の埃を払い、ゆっくりと私の方へ歩み寄ってくる。

 そして伸ばされた手。

 私はその差し出された手を取ろうと震える手を伸ばす。

「・・・許すと思う?」
「・・・・・・え?」
「今まで受けた仕打ちを許すと本気で思ってるの?」

 何を言っているのか分からなかった。
 頭の中が真っ白になる。

 だって東宮は私を許そうと手を伸ばしたんじゃ・・・。
 浮かべる笑顔はなんのため・・・。

「もう一回・・・いや何度も何度も悪夢を見てきなよ」
「い・・・嫌・・・い、や・・・もうあんなの、耐えられない・・・助けて・・・助けて・・・お願いっ」
「僕がそう言った時なんて言ったか覚えてる?」
「・・・あ・・・ぁあああ」
「”はあ?”だってさ。いいね。いい気分だよ」
「あ、謝りますっ・・・だから、お願い、許してっ」
「だから嫌だって言ってるだろ。・・・けど、悪夢から救えるのは僕だけだから。それを頭の中に刻み付けててね」
「な・・・何・・・」

 唇の端をにいと持ち上げて、東宮は繋いでいた手を離す。

 支えを失って私の体は地面に向かって倒れこむ。

「バイバイ」

 下に吸い寄せられる私を見ながら、東宮の口が声に出さずに言葉を紡ぎ出す。

 そして背中に硬いコンクリートの床が当たると共に、暗転したように視界が真っ暗に染まっていき、また恐怖の世界が始まりを迎える。

 けっして覚めない悪夢。

 嘘。
 止めて。

 待って、助けて。
 お願いだから、助けて。

「う・・・あああああああああああああああああああああああああああああああああっ」








「ちゅばっ、んん、んっ、んっ・・・んちゅっ、むっ・・・あふっ」

 全裸になった千恵が僕の股間に顔を埋めてペニスにむしゃぶりつく。

 すでに一度口の中に出してやったので千恵はトランス状態に入ってしまって、マグマのようにどろどろした目は僕のものしか映っておらず、鞘に手を添えたままべろべろと美味しそうに亀頭を嘗め回している。

「は、ぁっ、東宮、君・・・ちゅっ・・・んっ」

 同じく服を脱ぎ捨てた加奈は僕の体に小さな胸を押し付けてキスをしている。

 自分が好きな人間が友人の女に奉仕をされていても、そしてすぐ近くでは慕っていた人間がもがき苦しんでいても全く気にならないようだ。

 あくまで自分の愛情を渡し、受け止めてもらうだけで満足らしい。

 それだけで股間から愛液を溢れ出させて喜んでいる。

「ぐぎゃああああ、ぎっ、誰かっ、だずげ、でえええっ」

 地獄の底から発せられたような壮絶な叫び声に目をやると、沙織が何もない空に手を伸ばしじたばたと苦しんでいる。

 ずっと叫び続けているせいで声はしゃがれ始め、涙で目が赤く腫れている。

「がっ・・・ぐぇぇ・・・」

 段々と声が小さくなり、沙織は屋上の床で一人のた打ち回る。

 ぷしゅっ、じょろじょろじょろじょろ。

 声が止んだと思ったらその瞬間、沙織の股間から黄金色の液体が噴き出てコンクリートの床を濡らす。

 じつに四回目の失禁だった。

「あ・・・ぐう・・・あ゛あ゛あああああああああああああぎぃぃぃぃっ」

 大人しくなったかと思うと、30秒も経たないうちにまた沙織の口から悲鳴が出てくる。

 また違う幻覚を見始めたのだろう。

 これで一度目が覚めてから八回目の幻覚を見ていることとなる。

 そろそろかな?

 僕は様子を見るために加奈と千恵に離れるように言う。

 加奈は従順に、千恵は駄々をこねてペニスをせがんだが強く睨みつけると大人しく引き下がった。

 加奈同様においおい躾け直しておこう。

 さて。

 僕は脱ぎ散らかした制服から携帯を取り出し、沙織のプロフィール画面を開いた。

 そこには既存の内容に付け足されて”東宮拓哉に恐怖を覚えた時、自分が想像しうる最悪の死を現実的な感覚を持って体験し続ける幻覚を見る”

 ”その幻覚からは東宮拓哉がおはようと言った時限り目覚める事が出来る”と書かれてある。

 だからこの文によって沙織は今尚終わりなく悪夢を見続けている。

 最初は千恵に裏切られる事で、そして次は僕が手を離した事で条件を満たした。

 我ながら良い出来だと思うのが想像しうるという箇所だと思う。

 僕の場合ここは屋上だから単純に落ちたくないと思う。

 そうすると落下して死ぬ幻覚を見るわけだけどその時にガラスが視界に入れば、鋭利なガラスが体を切り裂く想像をするし、尖った木の枝を見れば刺さって死ぬ想像をする。

 つまり体験の間に無限に死の想像が起こって、終わりがないという所がポイントだろうか。

 唯一終わらせれるのは僕だけ。

 何度殺しても気がすまないから沙織にはもっとも相応しい罰だと思う。

 そして、これから沙織には僕がいないと生きていけないようになって貰うとしよう。

 とりあえず今から一時間だけ悪夢を見ないようにしてから僕はまた携帯を閉じてポケットにしまい、もがき苦しむ沙織の元へと近づいた。

「おはよう、萩山さん」
「ひっ・・・・・・あ・・・・・・ぎゃうっ、ひぎゃぅぅぅぅぅぅぅっ」

 目を覚ますや否や、沙織はその場から飛び退き頭を抱えて身を小さくする。

 一体どんな夢を見てきたのか、想像できないほどに酷い怯え様だ。

 濁った瞳と、目の淵にできた隈。

 がちがちと歯を鳴らして、絶えず恐怖に満ちた呻き声を洩らし続ける沙織を見ると僕の嗜虐心が心地よく刺激される。

「おはよう、萩山さん」
「ひっ、ご、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいっ、助けてくださいっ」
「あっははは。大丈夫、もう夢から覚めてるよ」
「ひぅっ、あ゛あっ、あああああ・・・ぁ・・・ぁあ・・・夢・・・・・・ほ、ほ、本当に?」
「信じないならもう一度夢を見てみる?」
「ひぎっ、い゛、嫌ぁぁっ、も、もうっ嫌なのっ・・・・・・止めでくださいっ、お願いじまずっ、お願いじまずぅっ」

 涙と鼻水で顔を無茶苦茶にして沙織は地面に頭をこすり付けて懇願する。

 この姿を見て元の性格を予想できる人間はいないだろう。

 僕はくすりと笑うと身をかがめて、沙織の頭に顔を近づける。

「助けてあげようか?」
「はっ、あっ、た、助げてくださいっ、な、何でもしますっ、言う事なんでも聞きますっ、だから、もう、あれは止めでぇぇっ」

 死に物狂いで何度も僕に頭を下げる沙織のどこにも生意気さはない。

 あの大きな存在はさもすれば指一本で壊れそうなほどにもろく、繊細になっている。

 ここにいるのは絶対的な恐怖に怯える一人の惨めな女の子だ。

「そうだなあ・・・じゃあ、まず裸になってよ」
「あ、あ゛、はいっ、すぐ、に・・・・・・すぐに脱ぎますっ」

 心に重度の傷を付けられた沙織は僕の言葉を耳にするや否や即座に服に手をかける。

 体にはまだ恐怖が染み付いており、がたがたと震えるせいで上手く小さなボタンを外せない。

 僕の機嫌を損ねたくないのだろう、顔色を伺いながら焦り戸惑う沙織はボタンを引きちぎるようにしてブラウスを脱ぎ、スカートを下ろし、下着にも迷わずに手をかけた。

「まだ?」
「ひぃっ・・・い、今すぐ、もうすぐ全部っ・・・・・・あうっ」

 怯えながらブラを捨て、早急に下を脱ごうとしたのはいいが先程のおもらしでびちょびちょに濡れた布生地が肌に張り付いている為になかなか脱げない。

 そして無理矢理引き下ろしたのと、慌てているせいで沙織は足を引っ掛けて地面に倒れこんだ。

 しかしそれでも転んだまま下着を脱ごうともがく姿は芋虫を連想させて痛快な気分だった。

「ぬ、脱ぎました、全部、脱ぎましたっ」

 立ち上がり、隠す事もなく見せた沙織の裸は、自分に自信を持っているだけあって見事なプロポーションだった。

 きゅっと締まったくびれた腰に、ふっくらと肉付き始めたお尻。

 伸びた足も長く、生え揃い始めた毛で隠されたそこは未開の神秘を持っている。

「そう・・・じゃあ・・・セックスしようよ」
「せ、セックス・・・・・・」
「何、もしかして嫌なの?」
「い、いえっ、違います、や、やめでくださいっ、逆らいまぜんっ、逆らいまぜんからっ」

 僕に睨みつけられただけで沙織の体からは汗を噴き出し、すぐさま僕の脚にすがり付いて首を振る。

「萩山さんも僕とセックスしたいよね?」
「はいっ、し、したいですっ、東宮君とセックスしたいですっ」

 見え見えの嘘。

 ただ恐怖から逃げる為だけにつかれた嘘だ。

 それを知っていながら僕は満足げに頷いて、脅える沙織に次の指示を出した。

「後ろを向いて、自分で入れなよ」
「は、はいっ・・・す、すぐに入れ、ますっ」

 僕が命令すると沙織はすぐに後ろを向き、椅子に座る時のように突き立ったペニスを埋めようと腰を下ろす。

 しかし焦って乱暴に入れようとしてもよく位置が掴めないペニスは沙織から逃げ、いつまでも入らない。

 ようやく捉えたかと思っても拡張されていない沙織の穴には入らず、滑ったペニスは鎌首をもたげたように違う方向へと曲がってしまう。

「ふぅん。まぁ入れたくないんなら別にいいよ。・・・・・・加奈っ」

 僕の呼びかけに遠くで僕たちを見つめていた加奈は顔を上げ、ぱっと顔を輝かせる。

 大きな返事をしてすぐにこちらの方へ走ってくる。

「呼んだっ?」
「萩山さんが僕とセックスしたくないみたいだからさ、加奈としようかなって」
「本当っ、嬉しいっ」

 今にも抱きつかんばかりに喜色を顔いっぱいにたたえて、加奈は残酷にも邪魔だといわんばかりに、悲壮に満ちた顔で何度もペニスを咥え込もうと腰を下ろす沙織の背中を突き飛ばした。

 別に同じことをしろとは言っていないが、加奈はあてつけのつもりなのか沙織がしようとしていた事と同じ行動にでる。

 ただ腰を下ろそうとしていただけの沙織と違い、片手であそこを開いて余った手は僕の肉棒に添えている。

 普通に考えれば誰だってそうするけど、頭が真っ白になっていた沙織には思いつかなかったのだ。

「あ・・・んっ」

 ぬぷぬぷとした感触に包まれ、ペニスが加奈の中に入っていく。

 開発途中のぬめった膣内を押し開いていく感覚が堪らない。

「はぁぁんっ・・・東宮君の、大きくて、硬いいぃっ」

 蕩けた瞳で僕のペニスを感じる加奈は余裕たっぷりで、悦んでいるのも束の間、すぐに僕を喜ばせようとお尻を振る。

「あ、あ・・・んぅ・・・はぁっ・・・いい・・・」

 僕のペニスを埋めすっかりご機嫌になった加奈の足元では、対照的に生きた心地もしない顔で沙織ががたがたと震えていた。

 用無し。

 誰が見ても分かる。

 今にも崩壊しそうなほどに不安定な視線が僕の視線と交りあう。

「・・・・・・ぁ・・・ぁぁ・・・・・」

 引きつった顔を見れば僕が何を言いたいのか分かったようだ。

「ひぃぃぃっ、お願い、お願いしますっ、もう一度だけチャンスを下さいっ、お願いじまずぅぅぅぅっ」

 鼻水を垂らしてかつていじめていた相手と、格下の友人の足元にすがりつく姿は哀れを通り越して滑稽である。

「だって。どうする、加奈」
「あ、ぁあんっ、はぁぁっ、嫌ぁっ、だって・・・あっ、東宮君のおちんちん、すっごく気持ち良いっ、んっ、好きっ」
「でも代わって貰えないとまた苦しい思いをしなくちゃならないんだってさ」
「知ら、ないよぉっ・・・あんっ、今まで、東宮君に、はうっ・・・酷い事してきた罰っ、だからっ」
「そん、なぁっ・・・お願いじまずっ、どうか、どうかっ」

 足に手を添えて涙ながらに懇願し続ける沙織を見て、加奈は心底鬱陶しそうな目で睨みつける。

 とても長年頼りにして追従してきた相手を見る目とは思えない。

「加奈、あの萩山がこんな惨めに頼んでいるんだから代わってあげたら?」
「あんっ・・・嫌ぁ、ん・・・私が東宮君とセックス、ひゃうっ、するのぉ」
「加奈、もう一度言うよ。”代わって”あげたら?」

 優しい物言いだけど、言葉に見えるのはけっして助言ではない。

「・・・う、ん・・・東宮君が言うなら・・・・・・」

 加奈もその事に気付き、不満が残りながらも僕の言う事には逆らえないので悲しそうな顔をしてしぶしぶ承諾する。

 ペニスが抜けたおまんこは名残惜しい加奈の気持ちを代弁するようにひくひくと蠢いている。

「また後で抱いてあげるからね」
「うんっ、約束だよっ」

 悲しんだり嬉しそうな顔をしたりころころと表情を変える加奈。

 その下では以前の高圧的な態度とは見違えるほど惨めな態度で頭を下げる沙織の姿があった。

「あ、ありがとうございますっ、ありがとうございますっ」

 砂漠で水を与えられたような救われた顔で何度もお礼を言う沙織。

 しかし興味がないのかあっさりと無視して加奈はすたすたとその場を離れていく。

「早く入れてくれない? それともまた加奈と代わる?」
「ご、ごめんなさいっ、すぐに、すぐに入れますからっ」

 僕が急かすと沙織は血相を代えて立ち上がり、また後ろを向いて交尾の体勢を取る。

 加奈が入れるところを見ていたため、今度は同じように僕のペニスに手を添えて穴に宛がう。

 腰を埋めても固定されたペニスは逃げない。

 いけると判断した沙織は一気に腰を下ろした。

 ぶちん、と膜を破る感触がペニスの先に伝わり、子宮口を叩く。

「入っ、たぁっ、入りましたぁっ」

 加奈のあそこも相当に小さいが、加奈より体の大きな沙織の膣内もそれにも増して小さい。

 陰道は僕のものをギチギチと締め付け、肉の鼓動がそのままペニスに伝わってくる。

「入れただけ? 加奈の動きを見てたんでしょ?」
「は、いっ・・・すぐに、ぐっ・・・動き、ますっ」

 額に玉のような汗を浮かべお尻を動かそうとするが、少し動いただけで沙織の体の動きが止まる。

 そりゃ初めてで濡らさずに入れれば痛くてろくに動けないのも当たり前だ。

 それも極狭の膣肉じゃあなおさらだろう。

 ・・・・・・でも死ぬような痛みじゃないだろう?

「加奈と・・・・・・代わっても良いんだよ?」

 耳元で囁くと、沙織は目を見開いて短い叫び声を漏らした。

 体の震えがペニスに伝わる。

「ひぐっ・・・ぐぅっ・・・・・あぁああっ」

 息みながら沙織は腰を引き、肉を押し広げているペニスを抜く。

 一番太いカリ首を抜けると、きゅぽんっと空気が抜ける音がして割れ目から零れた破瓜の血がペニスに滴り落ちる。

 だけどようやく抜けた事に安堵する暇はない。

 散々かけてきた脅しが効いている為、沙織はまた腰を下ろしてすぐに太いペニスを体内へ埋める。

 ずぶうっ、ぐちょっ。

 出来る限りの速さで出し入れをしているが、加奈のように腰を振るテクニックもなく、嗜虐心だけは満たされるものの射精感は遠い。

「ひぃっ、ぎぃぃっ・・・あ、ああぁぁっ」

 そろそろいいか。

 そう思った僕は沙織の背中を押して、背後からのしかかる。

 そして今度は自分の思うがままに腰を振って沙織の穴を蹂躙する。

 先ほどまでとは比べ物にならない速さだ。

 バチンバチンと肉が弾けあう音が鳴り、膨らんだペニスが思うが侭に肉穴をかき混ぜる。

 沙織には激しい痛みが襲い掛かっているだろうが、死ぬよりはマシなのか唇を噛み締めたまま大人しくペニスを受け止めている。

「・・・くっ・・・ううっ」

 肉ひだが生き物のようにペニスに絡みつき、唇の端から漏れる痛みを押し殺した声が脳に響く。

 常時キツイ締め付けを見せる膣肉が収縮し、その瞬間目の前が真っ白になり限界を迎えたペニスが沙織の中で弾けた。

 ドクンッ、ドクッ。

 一回、二回、まだまだ出る。
 今までで一番気持ちが良い。

「ひぐっ・・・・・あ、あ・・・」

 いきなり中に出されては複雑な思いだろう。

 しかし沙織は文句一つ言わずに目を閉じて僕が射精を終えるのをじっと待った。

 そして最後の一滴まで沙織の中に出し終えると、僕はペニスを引き抜き加奈に制服を持ってくるように言う。

「・・・・・・はいっ」

 走り寄って来た加奈から制服を受け取ると同時に、プルプルと震えていた沙織の体が地面に崩れ落ちる。

 その拍子で割れ目からごぷっと音を立てて大量の精液が飛び出した。

「僕に逆らえばどうなるか分かってるね?」
「は、はい・・・・・・に、二度と逆らいません・・・・・・逆らいませんからっ、あ・・・あ、あれだけは許してくだざいっ」

 僕に屈服しきった沙織を見ながら携帯を開いて沙織のページにアクセスする。

 沙織が経験した事として加えられた情報の中にもはっきりと僕のことが恐怖の存在として書かれてある。

 でもそれじゃあ面白くないんだよね。

 僕はもっと沙織で楽しむ為にまた新しい常識を沙織に書き込む。

 これが更新されればさぞかし愉快な事になるだろう。

 股の間から精液を零れさせて苦しげに大きく体を弾ませる沙織を見て、僕は邪悪に唇を歪ませた。

 遠くでは千恵が物欲しそうな顔でこっちを眺めている。

 隣では加奈が目を輝かせて僕の命令を待っている。

 そして目の前にはペニスを入れるのにおあつらえ向きに広がった穴もある。

 時間はたっぷりとあるし、どれも使い放題だ。

 僕は堪えきれず大笑いして、性欲を満たそうと動き出した。

エピローグ

「はぁ・・・ぁ・・・拓哉様ぁ」

 甘えた声を出して、沙織がベッドに座る僕の腕に抱きついた。

 服はおろか下着も付けていない為に、餅みたいに柔らかい肌の感触がそのまま僕の腕に伝わってくる。

 そういう僕も裸で、沙織はしなだれかかった僕の体にキスの嵐を降らせた。

 その表情に僕に対する敵意はなく、それどころか顔中に幸福感を溢れさせている。

 あの日、僕に屈服した沙織に携帯で書き込んだ内容はこうだった。

・東宮拓哉と20時間以上離れるとまた悪夢が始まる。

 この一文だけだけど、このことは当たり前の事実として沙織自身が自覚しているという事が大きい。

 幾度となく経験させられた悪夢の恐怖を体と心にしっかりと刻み付けた沙織はこの条件があるので、20時間どころか片時として僕の側を離れようとしない。

 初めは恐怖から逃れたい一心だったが側にいないと不安で押し潰されそうになるらしく、いつもそわそわとして僕を探しては視線をあちこちに漂わせている。

 そして、あれからというもの沙織が家に帰るのも僕が強制するからで、そうでなければ頑なな意思でずっと僕の側にいる。
 塾もすでに辞めて行っていない。

 学校がある日は当然僕と一緒にいられるわけだが、沙織にとって大変なのは休日だ。

 何せ20時間以上離れるわけにはいかないので休みの度に沙織は僕の家に押しかけて必ず僕と行動を共にする。

 傑作なのは僕がわざと早朝から家を離れた時で、その時は一秒の間も置かずに繋がるまで何度も何度も僕の携帯に電話をかける。
 おかげで僕の携帯の着信履歴は沙織でいっぱいになっている。

 一度家の側で沙織の様子を見たことがあるが、僕に会えないことで顔面を蒼白にして玄関の前で挙動不審になったのには笑いを堪えられず非常に愉快だった。

 泣きそうな顔をしながら繋がらない電話をかけ続け、やっとの事で繋がると顔を幸せそうに歪ませる。

 調整して20時間ギリギリで会ってやったときには涙を溢れさせ、顔をくしゃくしゃにする始末だ。
 そういえばおもらしもして下半身を濡らしてもいたっけ。

 そして次第に沙織は僕が側にいることで悪夢から切り離される事に慣れ、恐怖はやがて僕の側にいることに対しての安堵感にすり変わっていった。

 何をするわけでもなく、隣に僕がいるだけで沙織は幸せそうにする。
 服を脱げといえばその場で服を脱ぐし、足を舐めろといえば喜んで舐める。

 強気で生意気な態度は崩壊してしまって今では卑屈な態度を取っては僕を喜ばせる。

 さらに、月日が経つうちに沙織はいつしか僕の名前の後に様を付けるようになっていた。
 精神がぶっ壊れて、完全に心から僕を崇拝している証だ。

 僕は手を伸ばして、熱を持った沙織の秘所に手を伸ばした。

「はぁ、んっ・・・ああ、拓哉様の指・・・気持ち良いですっ・・・」

 狭かった膣内は僕のペニスの形通りに拡張され、入り口は開き切り、僕の側にいるときには常に蜜を垂らしている。

 指で乱雑に描き回してやると沙織は恍惚とした声を上げて、一段と熱の入った口づけをする。

「ん・・・ちゅ・・・は、ん・・・ぺろ・・・ぺろ」

 そして千恵はベッドの下に伸びた僕の足を大事そうに手に取り、一心不乱に舌を這わせている。
 もちろん裸だ。

 こいつもまた沙織に負けずぶっ壊れた人間の一人だ。

 いくら常習性は無いとはいえ脳みそが溶けるくらいの快感を得られる僕の精液を取り込み続けては耐え切れず、体がその快楽の虜となってしまった。

 精液ジャンキー。
 そう呼ぶに相応しく、千恵は僕の精液を得るためならそれこそ何でもするようになった。

 今もこうして大きな張り型をヴァギナに突き刺して犬のように四つん這いで、足の先から順に僕の体を舐め清めさせている。

 そんな屈辱的な行為でも千恵は、濁りきった目で薄笑いを浮かべながら脇目も振らずに奉仕している。

 言った通り、千恵の体は常時僕の精液を求めて止まない為、当然のように唯一の取り柄だった勉強だって身に付かないようになった。

 そうなると家庭や周囲で口煩く注意や警告をされるのでまたストレスが溜まっていき頭が僕の精液を求める。

 だが千恵以外にも僕の精液を狙うライバルがいるので精液にありつけず、ノイローゼに掛かりかけた時もあった。

 だから千恵を助けるわけではなくもっと壊す為に僕はある日、千恵にまた新しい情報を書き込んだ。

・僕の体液でも快楽を感じることができる。
・舌を僕の体に付けている時のみ舌は女性器なみの性感帯となる。

 体液は精液より格段に受ける快楽が少ないらしいが、それでも精液が与えられない時には千恵は喜んで僕の体に舌を伸ばす。
 さらにその舌も性感帯となっている為に相手をしなくても勝手に達して喜んでいる。

 完全に僕なしでは生きられなくなった千恵は、僕の側にいられないときには行為の後にかき集めた体液を瓶に詰め少しずつ摂取して気を紛らわせている。

 親に怒られるたびに舐め、少しでも嫌な事があると舐め、その繰り返しでもともと快楽に溺れやすかっただけに今では中毒となっている。
 どんな部分でも、僕の体に舌を這わしている瞬間だけあらゆる悩みから開放されるのだ。

 すっかり体液中毒となった千恵は沙織と同じくいつしか僕を依存し、崇めたてるようになり気付かないうちに僕の事を自発的に御主人様と呼ぶようになった。

「はぁぁ・・・東宮君・・・好きぃ・・・」

 そしてとろんとした表情で沙織とは反対側から加奈が僕の体に倒れこむ。

 開いた股を僕の太ももに擦り付けながら情欲に溶けた顔をして僕にキスをねだる。

 加奈もまたあれからますます愛欲の虜となっていた。

 一日中僕のことばかりを考えて生活している。

 だけど愛するが故に僕が嫌がることは一切しない。
 沙織に携帯を取り上げられた日からは僕の言う事に非常に従順となり、一言言うだけで過剰に僕に付きまとう事は無いし、我慢する事ができる。

 そういう点ではまだ二人よりマシな扱いを受けているのかもしれない。

 だが二人と違い加奈は好きという言葉を言うだけで気持ちを膨れ上がらせていく為、自己の崩壊に終わりが見えず、そういう点をとるなら不幸といえる。

 なにせ何百回と好きという言葉を繰り返した加奈は僕が好きというだけでイクのはもちろん、幸せそうな顔をしながら腰を抜かしてその場にへたり込む。

 まったく人の気持ちというのは計り知れないものだ。

 あとそれから、美由紀先生はというと・・・・・・実は全然相手をしていない。

 もともと僕はこの三人に復讐をしたかっただけなので、実験体にはなってもらったものの体を求める気にはなれなかったのだ。

 だから保健室を隠れ場所として利用させてもらっているが、お互い干渉し合わず極稀に美由紀先生のほうからアナルの相手を頼まれた時だけ僕はそれに応じている。

 今日もこうして保健室を使わせてもらっているが、先生は気にする事もなくいつも通り机に向かって事務をしている。

 それだけの関係だ。

 少しだけ寂しいと、最初は思っていた。

 だけど。

「拓哉様ぁ・・・んちゅ・・・ちゅ・・・いつまでもお側に置いてください・・・ちゅっ」
「ああぁぁ、御身足美味しいです御主人様・・・ちゅばっ、ちゅば・・・精一杯、ぺちゃ、清めさせていただきます」
「東宮君・・・あぁん・・・私、幸せだよぉ・・・」

 狂った目をして三人が僕の体にすがりつく。

 この三人は全員、毎日毎日飽きることなく僕を求めて生きている。

 離れることなど考えも付かないだろう。

 僕を失ってしまえばそこで彼女達の人生も終わってしまう。

「あぁ、なんだかあそこが寂しくなったなぁ」

 わざと大きな声で呟くと、途端に三人の目が妖しく光る。

「あ、あぁっ、拓哉様、私にお任せ下さいっ」
「御主人様、わ、私がお舐めいたします、一生懸命ご奉仕しますっ」
「だめぇっ、東宮君のは加奈が慰めるの。ねっ?」

 必死の形相で僕のものを取り合う三人を見て僕はまた笑う。

 この笑いが収まる日はこの先来ることはないだろう。

 だから一生僕に懺悔しながら過ごすといい。

 完全に壊れた三人を見ながら僕は終わる事のない復讐を続けた――――――。

< 終 >

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