四神戦隊メイデン・フォース 第7話

第7話 汚染(後)

 ぬるま湯の中に漂うような感覚に雪は、その身を委ねていた。
 気怠く、それでいて心地良い感覚。
 だがそれをかき乱すように遠くで、何か不快な音がしていた。
 それはテレビのボリュームを上げるように、少しずつ大きさを増してゆく。

「雪・・・雪・・・雪っ!」
 ピーッピーッピーッ
 妖魔の接近を知らせる警告音が、ヘルメットの中でけたたましく鳴り響いている。
「雪、雪っ、どうしたの!?」
 スピーカー越しに聞こえる朱美の怒声に雪は、はっと意識を取り戻した。
 表示されているモニターには、妖魔の存在を示す多数の光点と、味方を示す三角のマーカーが示されている。
 それを瞬時に分析した雪は、
「ごめんなさい!・・・右翼から下魔8、中魔3、左翼から下魔10、中魔6、上魔1です。右翼は陽動、左翼後方の森から回り込むように主力が来ます!」
 そう状況を報告した。

「了解!・・・雪、本当に大丈夫?」
「大丈夫です、朱美さん。それよりも、早く!沙夜子さんが孤立してしまいます!」
「了解。あいつの救援ってところは気にくわないけどね。・・・雪、兎も角、無理はしないで」
 雪の返答に軽口で応じた朱美は、そう戦友を気遣いつつも、敵陣の中へ飛び込んでいった。

「雪、余り気にしないで。誰でも調子が悪い時はあるわ」
「はい、有り難う御座います、蒼乃さん・・・」
 結局敵は無事撃退したものの、雪は自己嫌悪の念に囚われていた。
 いくら体調が良くないとは言え、戦闘中に惚けるなどあってはならないことだ。
 司令塔の判断次第では、皆の命を危険に曝す可能性も多分にある。
 自分の至らなさ故に、皆へ迷惑をかけた、そのことに雪は深く落胆していたのだった。

「それよりも、体調が悪いんでしょ?早く礼菜先生のところに行ったほうがいいんじゃない?」
 落ち込む雪の気分を変えようと、朱美がそう促した。
 普段は荒っぽい朱美だが、仲間を思う気持ちは誰よりも強い。
 その優しさは今の雪にとって、何よりも嬉しいものであった。
 確かに朱美の言うとおり、ここでウジウジしていたところで、自分の過ちが消えるわけではない。
 雪はその朱美の優しさに甘えることにした。
「・・・そうですね。そうさせて頂きます・・・それでは皆さん、ご機嫌よう」
 雪はそう皆に一礼すると、その場を後にする。
 その後ろ姿を朱美と蒼乃が心配そうに見送る中、沙夜子だけが、冷ややかな視線で見つめていたのだった。

「ふぅ・・・」
 日に日に、倦怠感が重くなっている気がする。
 礼菜から処方された薬を飲むと、症状は改善するのだが・・・
 薬の量を増やしてもらったほうが良いのだろうか?
 医務室に向かいながら、雪はそう思い悩んでいた。
 やがて医務室の扉が目前にやってくる。
 重い気持ちの中、
 コンコン
 雪はその扉を叩いた。
 
「体調が良くない?」
「はい、何だか日増しに倦怠感が酷くなっているような気がして・・・先生から頂いたお薬を飲むと、症状は良くなるのですが・・・」
「こちらでもバイタルはチェックしているけど・・・確かに余り調子は良くないようね」
 礼菜はデータが表示されたモニターを眺めながら、険しい表情をしている。

 メイデン・フォースのボディー・スーツからは常時、装着者の健康状態に関するデータが礼菜のもとに送信されている。
 モニターに表示されているメイデン・ホワイトのデータはおしなべて、活性状態が悪い、そのことを示す数値が並んでいた。
「それじゃあ、薬の量を増やしましょうか。それで様子を見て、その先の治療方針を決めましょう」
 最近、どうかその臭いに慣れつつある生薬の瓶を礼菜がそう言いながら振ってみせると、雪はどこかほっとした表情をしたのだった。

「はむっ」
 甘い香りのする薬液を、薬さじごと口に運ぶ。
 舌先に載ったそれは、果物のような甘みを広げながら、喉奥へと消えてゆく。
 最近ではこの薬を、気付け薬代わりに戦闘前に服用することにしている。
 この前のようなことがあっては取り返しがつかない-
 それがこの薬を服用する理由だ。
 そのお陰もあってか、戦闘中は感覚が鋭敏になり、これまで以上の活躍をすることができている。

「・・・ふぅっ」
 だが、その副作用なのか今度は戦闘後に、これまで以上の倦怠感を感じるようになってしまっていた。
 その事を礼菜に相談すると、戦闘のあった夜は服用量を倍にするように、との指示があった。
 確かに、その通りにすると翌朝には倦怠感が失せているのだが・・・
 雪は、また一つ大きく溜息をつくと、がっくりうなだれる。
「・・・また、あの夢を見るのかしら」
 薬を多量に服用した夜は、ある夢を見るようになっていた。
 今夜もまた、その夢を見るのかと思うと気が重くなる。 
「悩んでも仕方ないわね・・・寝ましょう」
 その気分を振り払うように雪は照明のリモコンを押し、明かりを消した。
 暗闇の中目を閉じると、戦闘の疲れもあったのか、雪は直ぐに眠りに落ちた。

 -雪は、濃い霧に包まれた深い森の中を一人、息を切らしながら駆けている。 
「はぁっ、はぁっ」
 その姿を明確に認知することはできないが、自分の背後から何か忌まわしい存在が追ってくる。
 その気配から逃れるため雪は、全力で森の中を駆けているのだった。
 だが、いくら走ってもそれは離れることはない。
 やがて、
「きゃっ!」
 ドサッ
 下草に足を取られ、雪は前のめりに倒れてしまった。
 慌てて起き上がろうとするが、
 ドサッ
 背後からのし掛かった『何か』に、地べたへと押し倒される。
「嫌っ、やめてぇっ!」
 その『何か』は、
 ビリッ
 嫌がる雪の服を破り捨てると、
 グニッ
 雪の両の乳房を掴み、
 ムニュッムニュッ
 荒々しく揉みしだき始めた。

「お願いです、もう止めてくださいっ!」
 雪は泣きながらそう嘆願するが、声なき『何か』は愛撫を止めることはない。
 それどころか、
 クリックリッ
「ひゃぁんっ、そんなところ、グリグリしないでぇっ!」
 雪の乳首を責め、乳房への愛撫とのコンビネーションで雪を快楽の虜にしようする『何か』。
 性への耐性が低い雪はその巧みな手技に翻弄され、
「い、嫌ぁ、胸が変な感じ・・・何、この感覚・・・」
 やがて悦楽を感じ始めるのだった。

 ガバッ
 そこで、雪は目を覚ました。
「また、あんな夢を・・・」
 また淫らな夢を見てしまった、その事に自己嫌悪する、雪。
 そして、体を起こそうとすると、
 クチュ
 下半身にぬめりを感じた。
 この淫夢を見た後は決まって、秘所を濡らしてしまうのだ。
 そのことに雪は、自己嫌悪の念を深くする。
 しかも今日は更に、その度合いを深めなくてはならないようだ。

「・・・はぁ・・・今日はシーツ濡らしちゃった・・・」  
 夢を見る度、漏らす愛液の量が増えている。
 初めはわずかに下着を湿らす程度であったものが、今日はシーツに染みを作るまでになってしまった。
 このまま夢を見続けていったら、この体はどうなってしまうのだろう-
 羞恥心を感じる一方で、雪は言いしれぬ不安に駆られるのだった。

「あの、先生・・・」
「なぁに?どうしたの?」

 戦闘後の医務室。

 雪は羞恥に頬を染めながらも、礼菜に或る事を打ち明ける決意を胸に秘めていた。
「あの、お薬の事なんですが・・・戦闘のあった夜にお薬を飲むと、変な、夢を見るんです」
「変な夢?どんな夢を見るの?」
「その・・・兎に角変な夢なんです。それで、朝起きると気分が悪くて・・・」
 思い切って礼菜に相談したものの、淫夢の内容まで話すことに躊躇いを感じた雪は、そう答えをはぐらかしてしまった。
 だが礼菜はその答えに何故か微笑みを返すと、
「そう、この薬を服用するとねぇ」
 薬瓶を掴みその蓋を徐に開けた。
 その途端、雪が普段服用している薬液よりも強烈な臭いが、部屋中に広がる。

「あ、あ・・・」 
 嗚咽のように声を漏らしながら、雪の顔から表情が失われてゆく。
 やがてその瞳はどんよりと濁り、光を失った。
 その過程を満足そうに眺めていた礼菜が、
「流石、原液の効果は覿面のようね・・・雪、私の声が聞こえる?」
 そう尋ねると、
「は、い、せん、せい・・・」
 雪は辿々しくもそう答えた。
 だが、その瞳は光を失ったままだ。
 しかし、
「それじゃ、雪、上着を脱いでくれるかしら?」
 礼菜がそう命じると、
「はい、せんせい・・・」
 雪は礼菜の命令どおり、ゆっくり上着のボタンを外してゆく。
「ふふ、いい娘ね、雪」

 ファサ
 衣擦れの音とともに品の良いブラウスが床に落ちる。
「ふふ、毒がしっかりと回っているようね・・・こんなに乳首を固くして」
 レースのブラジャーに包まれた胸の頂は、布地越しにもわかるほど、固くしこっていた。
 ムニュ
 その胸を礼菜は、ブラジャーごと揉みしだく。
「あ・・・」
 それに雪は一瞬、ビクンと体を震わせたが、
「やめて、せんせい・・・」
 弱々しくも確かな、拒絶の言葉を口にしたのだった。 

『チッ・・・流石に、貞操観念が強いみたいね』
 その様子に心の中で舌打ちしながら、礼菜は眉を顰める。
 退魔師、と言うよりは旧家の令嬢として育てられた雪にとって、性行為はタブーにも近いことなのだろう。
 このまま無理に快楽を与えては却って、性行為への嫌悪感を高めてしまうだけかもしれない。
『困ったわね。どうすればいいかしら・・・』
 礼菜は胸への愛撫を止め、顎に手をあて思案顔になる。
 顎を少し引いたその時、己の白衣が目に入った。
 それを見た礼菜は邪な笑みを浮かべ、再び雪に向き直った。
「雪、これは『治療』なの。嫌がることではないわ」
「ち、りょう?」
「そう、治療、よ。貴女の病を癒すためにしていることなの。だから、力を抜いて、雪」
 雪をそう諭しながら礼菜は、再び雪の胸に己の手をそえ先程よりも優しく、彼女の胸を愛撫し始める。
「ちりょう・・・はい、せんせい・・・」
 礼菜にそう諭された雪は素直に力を抜き、抵抗することがなくなった。
 その反応に、礼菜はほくそ笑む。
 雪が『医師』としての自分を信頼していることを、礼菜は逆手に取ったのだった。

「ふふ、そうよ雪。私を受け容れなさい」
「あ、はぁ・・・」
 悶えつつも抵抗しようとしない哀れな『患者』の胸を、礼菜は執拗に揉みしだいてゆく。
 そして薬瓶から薬液を指先に刮げ取ると、指をブラジャーの内側に滑り込ませ、薬液を軟膏のように、雪の乳首に塗り込める。
「はっ、あっ!」
 雪はその刺激に、喉を仰け反らせながら悶え苦しむ。
 礼菜はその反応を愉しむように、コリコリと乳首を指先で摘んでは離す。
「雪、感じているのね」
 礼菜の言葉どおり雪の下穿きはしとどに濡れ、椅子の上に染みを作るほどだ。
 自分の『治療』が十分な効果を得ていることに礼菜は満足そうな表情を浮かべ、
「感じていいのよ、雪。貴女は常に乳首を勃たせて感じる、淫らな女なの。どぉ、胸を弄られると堪らないでしょう?」
 そう含めるように、雪に囁く。
「・・・はい・・・むね、きもちいい・・・」
 雪は譫言のようにそう呟きながら恍惚の表情を浮かべつつ、礼菜の愛撫を受け容れる。
 その霞のような快楽の中に雪は意識をゆっくりと溶かし込み、やがて沈めていった。

 ガッ、キィンッ、キィンッ!
 遠くで剣戟の音が響く、鎮守の森の中。
 メイデン・フォースは、妖魔との戦闘の最中にある。 
「あんっ、いやぁ・・・」
 だが雪は、妖魔とではなく、己と戦っていた。 

 ここ数日ほど、産後の女性のように胸が張る状態が続いている。
 その症状は、乳房が腫れるだけではなく、いついかなる時も乳首が勃起し続ける、というものだ。
 そして、その勃起した乳首は今までにない鋭敏さをもって、雪を苛み続けるのだった。
『はぁっ、ダメっ、乳首擦れちゃうっ』
 運動性を向上させるためメイデン・フォースの装甲は、レオタード状のボディー・スーツにフィットするよう設計されている。
 そのため僅かに身じろぐだけで、勃起した乳首はボディー・スーツ越しに胸甲と擦れ、絶え間ない刺激を雪の体に送り込んでくるのだ。
 普段であれば装着していることさえ感じさせないそれは、今の雪にとって責め具にも等しいものであった。
「朱美、さん、右翼から接近中の上魔、は、鬼型、近接戦闘には注意してください」
 「了解」
 異変を悟られないよう、そして淫らな衝動を紛らわすように雪は、嬌声を押し殺し、懸命に指示を出し続ける。
 だが、
『ダメ、感じちゃう・・・』
 気を集中させようとすればするほど、体の感覚が鋭敏になり、雪の肉体を苛む。
 ガクガクと擦り合わされる内股の内部は既に、次々と溢れ出す愛液でぐっしょりと濡れ、ボディー・スーツの隙間からじわり、と太股へ零れ出そうとしていた。
『嫌、零れないで・・・』
 じっとりと湿ったボディー・スーツの股布は、コスチュームのプリーツ・スカートに隠れ、外から見えることはない。
 しかしそれが零れてしまえば何かの拍子に、皆に見られてしまうかもしれない・・・
 雪は必死に肢体をくねらせ、愛液が零れないよう姿勢を変え続ける。
『お願い、早く終わって・・・』
 それは雪にとって、拷問に等しく、永遠にも感じられる時間であった。

「・・・っと、下魔を2体撃破!雪、他にもう妖魔はいないの?」 
「は、い、朱美さん。他に妖魔は居ません。作戦、終了です」
 そう雪が告げた時、太股にツゥと愛液が一滴零れ落ちた。

「ふぅ・・・」
 疲れ切った表情で自宅に戻った雪は、有名洋菓子店のロゴが入った紙箱をテーブルの上に載せ、テーブルの椅子を引いて座った。
「どうしちゃったんだろう・・・」
 そう言って雪はテーブルの上で組んだ腕の中に、顔を伏せる。
 戦闘中の事を思い出し、思わず頬を赤らめるが、その記憶とともに股間も熱を帯び始め、雪は慌ててその記憶を振り払った。 

 薬を服用しない時の倦怠感は相変わらずであるため、礼菜の診察と薬の処方は継続して受けている。
 だが羞恥心が人一倍強い雪は、こんな恥ずかしい話を礼菜に相談することもできず、一人悩みを抱えたまま苦悩していたのだった。
 それに、と、テーブルの上にある紙箱をぼんやりと眺める。
 食べたくないなぁ・・・
 紙箱を眺めただけで軽い胸焼けを感じ、再び雪は顔を伏せた。 

 雪は、極度の食欲不振に襲われていた。
 好きな料理も、全く喉を通らないどころか、含んだだけで吐いてしまうような有様だ。
 だが食べないことにより、確実に体力は減退してきている。
 半ば義務感に追われるように、雪はのっそり上体を起こすと、紙箱に手を伸ばした。
 紙箱の中には大好物のカスタード・プリンが並んでいる。
 喉越しも良いこれならば、そう思って買ってきたのだが・・・

 パリ
 容器に巻かれたセロファンを、ゆっくり剥ぎ取ってゆく。
 普段であれば、大好物を前に胸も踊る作業なのだが、今は無感情にその工程をこなす、それだけのことだ。
 そして機械的に、雪はスプーンで掬ったプリンを口に運んだ。
「!?」
 その途端、雪は口元を手で押さえ、トイレへと駆け込んだ。
「おえっ、えっ、げほっ、げほっ!」
 口に含んだものだけではなく、胃の中の物まで便器に嘔吐する、雪。
 味、食感-何もかもが気色悪い-
 それがプリンを口にした感想だった。
 
「・・・はぁ・・・」
 食べかけのプリンを捨て、再び雪はテーブルに顔を伏せる。
 プリンさえ駄目となれば、何を口にすれば良いのだろう?
 絶望的なものを感じながら雪は、そのまま目を閉じた。

「待ちましたか?」
「いや、今来たばかりだ」
 繁華街のある駅前で、雪は沙夜子と待ち合わせていた。
 朱美と沙夜子の大喧嘩を仲裁したお礼に昼食を御馳走したいと言う、沙夜子の誘いに応じたからだ。
 雪は、そんなこと気にしなくて結構ですよ、と固辞したのだが、沙夜子の強引なまでの押しに流される形で、その招きに応じたのだった。
 正直、今の状況では食事など摂ることはできないのだが、沙夜子の厚意を無碍にすることもできない。
 雪は重い気分を隠しながら、沙夜子の予約した店へと向かった。

 二人が入った先は、洒落た感じのイタリアン・レストラン。
「有り難う。雪にはいつも感謝している」
 ウェイターが去ったところで、沙夜子は雪にそう深々と頭を下げた。
「いえ、そんな・・・沙夜子さん、頭を上げてください」
 いつになく殊勝な沙夜子の姿に、雪は慌てて両手を振りながらそう促す。
 沙夜子は有り難う、ともう一度言うと、漸く頭を上げてくれた。

「あの、沙夜子さんはお休みの日は何をなさっているんですか?」
「特に、何もしていないわ」
「そうですか・・・」 
 沙夜子と朱美の喧嘩の仲裁はするが、日常生活において仲が良いわけでもない二人の会話は余り弾まず、無為に時間だけが過ぎてゆく。
 蒼乃とであれば、趣味の話ででも盛り上がることができるのだが・・・
 いい加減この居心地の悪さに耐えきれなくなり始めた頃、
「お待たせしました」
 ウェイターが料理を持って現れてくれた。
 内心ほっとした雪の前に、ウェイターは盆に載せた料理を手際よく並べてゆく。
 ボンゴレ・ロッソに白身魚の香草焼き、そしてシーザー・サラダ。
 ランチを並べ終えたウェイターは一礼すると、店の奥へ姿を消した。

 雪は、目の前に並んだ料理と沙夜子の顔を見比べる。
 数日前のプリンの一件のことを考えると、安易に手をつけていいものか-
 そう思案し、料理に手を出すことを躊躇う雪を尻目に、沙夜子はシーザー・サラダにドレッシングをかけた。
 白くとろみのある液体が、瑞々しいサラダにかかる。
 雪はそれを見て思わず、ゴクリと唾を飲んだ。
 その理由はわからない。
 ただ、そのドレッシングが、堪らなく美味そうに見える。
 沙夜子が、白いドレッシングで濡れたプチトマトをフォークに刺し、口内へ運ぶ。
 その次はレタス、その次は鶏肉・・・
 いつしか、サラダを食す沙夜子の一挙一動を雪は凝視していた。

 それから沙夜子が何か一言二言話しかけてきたが、雪はその内容を覚えてなどいなかった。

 バサッ
 雪は脱ぐのももどかしい、とばかりに、上着をソファーへ投げ捨てると、
 ガサッ
 テーブルの上に置いたレジ袋の中から、近くのスーパーで買ってきたパック詰めの野菜サラダを、いそいそと取り出すと、
 パカッ
 そのプラスチックパックの蓋をまるで、クリスマスのプレゼントでも開けるかのように、笑顔で取り除く。
 続いて、礼菜から処方してもらった薬瓶を掴むとその蓋を開け、芳醇な香りのする薬液を、そのサラダにたっぷりと振りかけた。
 そして雪は、昼間沙夜子がしていたように、フォークをレタスに突き刺し、そのレタスを、恐る恐る口に運ぶ。

 サクッ
 前歯がレタスを噛みしめる音がし、薬液の甘みが口一杯に広がってゆく。
 美味しい。
 サクッサクッ
 今度は躊躇うことなく、フォークに刺したサラダを口内へ運ぶ。
 美味しいっ!
 サクッサクッサクッサクッサクッ
 やがて雪は、貪るようにサラダを口に頬張り始めた。
 口元が薬液で白く汚れ、飛沫が服に飛び散るが、雪は何かに取り憑かれたかのように、その行為を止めることはなかった。

 その夜。

「はぁっ、はぁっ、はぁっ」
 雪は一人、ベッドの上で身悶えていた。

 灼けるように、体が熱い。
 その熱から逃れるように己の体を抱き、身を捩るが、
「あっ、はぁんっ」
 ネグリジェが肌と擦れるだけで、ピリピリと電気のような感覚が背中を走る。
 その時、己の下半身が目に入った。
 じわり
 ネグリジェの股の部分が、じっとりと濡れている。
 雪は、その布の下の状態を確かめるべく、震える手でネグリジェを捲った。

「ここ、こんなに・・・」
 雪の股間は愛液でしとどに濡れ、下着の脇から筋となって、腿へと流れ落ちている。
 ネグリジェの中に籠もった牝の臭いが、むわっと雪の鼻をつく。 
 雪はその淫臭に誘われるように、その中心へと手を伸ばした。
 クチュ
「かっ、はぁっ!?」
 下着越しに軽く触れただけで、目が眩むような衝撃が走る。
「はぁっ、はぁっ・・・」
 息もできぬほど胸は苦しくなり、体の熱は身を焦がすほど。 
 再び雪は、その熱の源泉に目を遣り、浮かされるように、
 クチュックチュッ
 再び秘所を弄り始める。
「ひゃぁんっ・・・はぁぁっ!」
 秘所に触れる度、背筋に電撃が走るが、それは不快なものではない。
 寧ろその電撃に打たれるほど、その味に酔いしれてゆく。
 いつしか、雪はその行為に没頭していったのだった。
 
 この夜以降、雪が淫らな夢を見ることはなくなった-

「あっ、はぁっ・・・」
 集音マイクに拾われないよう声を押し殺しながら、左手で乳首を胸甲に押しつけるように胸を揉み、右手でボディー・スーツの股布を擦り続ける。
 周りに仲間がいない隙を見て、その背徳的な行為を愉しむことが雪の日常になりつつあった。
 後方支援担当の雪が前線に立つことは滅多になく、その機会は戦闘の度に得ることが出来る。

 クチュックチュッ
 ぬるぬるとした感触が手袋越しに、指先から伝わってくる。
 戦場で性行為をしている、という背徳感と、いつ仲間に見つかるかもしれない、というスリル。
 戦場でのオナニーは自宅では得ることのできない、極上の刺激を与えてくれるのだ。
 それに加え、
「はぁ、いい匂い・・・」 
 今の彼女は妖魔の体臭を嗅ぐだけで堪らなく興奮してしまい、性への欲求を押さえきることができなくなっていた。
 風に乗って流れてくる妖魔の微かな体臭は雪の体を火照らせ、花芯から蜜を滴らせる。

 キュッ
 愛液でヌルヌルになったボディー・スーツの上から、固くなったクリトリスを摘む。
『ひゃうっ!?』
 ビクビクッ
 それだけで軽い絶頂に達してしまい、慌てて漏れ出そうになった声を、雪はなんとか噛み殺した。
『ダメ、声が漏れちゃう・・・でも、もっと弄りたい・・・』
 はむっ
 雪は、左手を噛み声が漏れ出ないようにすると、
 ニュルッニュルッ
 クリトリスへのタッチをより緩やかなものにして、新たな快楽の引き出しの味を、存分に味わい始めるのだった。

「ふふ、すっかりお楽しみのようね」
 ボディー・スーツから送信される、雪のバイタル・データをチェックしながら、礼菜はそう呟いた。
 雪の神経が興奮していることを示すデータがモニターに次々と表示され、その数値は上昇の一途を辿っている。
 パラメータの分布から見てそれは、戦闘によるものではないことは明らかだ。
 それに発汗量を加味すれば、彼女がどのような状況にあるのか、想像に難くない。
 
 『あれほど貞淑だった雪が性の奴隷に墜ちつつある』
 礼菜はそう確信し、思わず笑みをこぼした。
 洗脳の効果をより確実なものにするためにあと一押し-
 その一手を考えながら礼菜は、無意識のうちに舌なめずりをしていた。

「皆さん、お疲れ様でした」
「雪もお疲れ。いや~、今日の妖魔も歯ごたえがなかったね」
 その朱美の軽口に、雪はふふ、と笑みをこぼす。
 メイデン・フォースのメンバーはコスチュームを解除し、元の私服姿に戻っていた。
 雪はこのところ、ロングスカートにブーツ、という服装を愛用している。
 それは、
 じわり
 秘所から流れ落ちる滴を隠すためのものだ。
 現に太股を伝って流れ落ちた愛液はブーツの中にまで入り込み、踝にまで達して、靴下を濡らしている。
 この雪の密かな愉しみは、仲間達に知られることなく続けられていた。
 だがそれは、彼女が想像だにしない相手に暴露されることとなることを、雪はまだ知らない。

「ねえ、雪」
「はい、何ですか先生?」 
「貴女・・・戦闘中にオナニー、してるでしょ?」
「!?」
 
 突然核心を突く礼菜の言葉に、雪は言葉を失う。
 それに畳み掛けるように、
「だって、戦闘中の貴女のバイタル・データは、こちらでモニターしてるのよ?」
 礼菜はそう言って、嘲るような笑みを浮かべた。
「いえ、先生、それはっ!」
 雪は必死に否定しようとするが、混乱の余り、頭の中で言葉を結ぶことができない。
 礼菜がバイタル・データをモニターしていることは承知していた。
 だがそれは各員の健康状態をモニターするもので、オナニーを察知されるようなデータは含まれていなかったはず、だ。
 誰にも秘密がばれないことを確信したうえで及んでいた筈の行為を咎められ、雪は混乱の極みに陥っていた。
 
 だが礼菜はそんな心中も全てお見通し、とばかりに、
「ふふ、特にこの臭いを嗅ぐと、興奮するんでしょう?」
 そう言って薬瓶の蓋を開けた。
「はぁっ・・・」
 それと同時に、雪の意識が緩み、その表情は陶酔したものに変化してゆく。 
 力を失った雪に礼菜は背後から歩み寄り、そっと包み込む。
「いいのよ、雪。オナニーをしても。とっても気持ちいいんでしょ?」
 そしてそう、礼菜が雪の耳元で囁くと、
「はい、とっても気持ちいいです・・・」
 心地よい感覚に包まれながら雪は、虚ろな瞳のままそう、礼菜の問いに答えるのだった。

「ふふ、正直ね、雪。ご褒美に、もっと気持ち良くしてあげる」
 礼菜は薬液を口に含むと、
「はむっ、ちゅっ」
 そのまま雪の唇を奪い、薬液を雪の口内へ流し込む。
 そして雪の舌に己の舌を絡めあわせる。
『はぁっ、美味しい・・・』
 ちゅっ、じゅっ、じゅるっ 
 ぼんやりとした思考の中、雪はそれだけを感じ取り、礼菜の舌先に残る薬液を奪うように吸い取り、絡め取ってゆく。
「・・・ぷはっ」
 雪があらかたの薬液を舐め取った頃、礼菜は雪から唇を離した。
 二人の間に粘液質の糸が引き、ゆっくりと落ちてゆく。
 雪は口の端から涎が流れ落ちるのにも構わず、惚けたようにそれをただ眺めるだけだ。

 ちゅっ
 礼菜は雪に再び顔を寄せ、口の端の涎を舐め取りながら、
「雪、服を脱ぎなさい」
 囁くようにそう命じた。
「はい・・・」
 雪は礼菜に命じられた通り、ブラウスを脱ぎ、スカートを床に落として、下着だけの姿になった。

 ぺろっ
 最後に残った涎の一滴を舐め取ると礼菜は再び、雪の表情を窺う。
 頬を紅潮させた雪の瞳は、相変わらず濁ったままだ。
『これなら大丈夫ね』
 礼菜はそう確信すると、雪に次の命令を下す。
「雪、下着も脱ぎなさい」
「はい・・・」
 礼菜の理不尽な命令にも雪は躊躇無く従い、直ぐに生まれたままの姿になる。
 胸は小振りだが、白磁のような肌に、均整の取れた肢体、そしてその裸体を引き立てる、艶やかな黒髪。
 日本人形のように美しい裸体に、思わず礼菜は息を飲み、情欲をかき立てられた。

 礼菜は白衣を脱ぐと、その下のスーツも脱ぎ捨て、雪と同じく生まれたままの姿になる。
 そして、のし掛かるように雪を寝台に横たえると、
 ピチャ
 礼菜は掌に薬液を載せ、
 ニュルッ
 その豊満な胸にそれを塗りはじめた。
 ニュルンッニュルンッ
 そして礼菜は薬液をローション代わりにして全身を使い、雪の体に塗り広げてゆく。
「んふっ、こんなに乳首を固くして・・・」
 クニックニッ
 礼菜は、雪の固く痼った乳首に己の乳首を擦り合わせ、その感触を愉しむ。
「あふっ、ふぅっ!」
「どう、雪?気持ちいい?・・・ふふ、聞くまでもないわね」
 ピチャ
 礼菜が雪の秘所に触れると、そこは既に洪水のように蜜が溢れ、嬰児が小便を漏らしたかのように寝台に染みを作っていた。

 ニュルンッニュルンッ
 雪の肌に馴染ませるように、礼菜は全身を使って薬液を塗り込んでゆく。
「はぁっ、はぁっ、気持ちいいよぉ・・・」
 その度に雪の表情は恍惚の度合いを深め、いつしか礼菜に抱きつき、その肌を重ねていた。
 粘液質な薬液を媒介に、絡み合う二匹の牝。

「ふふ、すっかり牝の顔になって・・・素敵よ、淫乱な雪は」
「い、ん、ら、ん?」
 かつては最も縁遠いものであった言葉を浴びせられた雪は、そう礼菜に聞き返す。
「そう、貞淑にして淫乱な女・・・それが貴女の本当の姿なの」
「いんらん・・・わたし、は、いんらん・・・」
 薬液のように、『淫乱』という言葉が雪の意識の中に塗り込められてゆく。
「ふふ、そうよ。貴女はとっても淫乱な女なのよ」
「・・・・・・・・」
 ぶつぶつと、そして噛みしめるようにその言葉を飲み込むと、雪の表情は一層淫蕩なものになった。
「せんせい、もっと、もっと気持ち良くしてぇ・・・」
 そして、普段の彼女であれば決してしないような甘えた声で、礼菜に快楽をねだる、雪。
 それは礼菜が吹き込んだように、淫乱な牝そのものの姿であった。
「そうよ、自分に素直になりなさい」
 雪が頑なに守り続けていた心の壁を突き崩したことに、礼菜はほくそ笑む。
 後は肉の悦びを存分に教え込んでやればいい。

 礼菜は薬瓶を手に取ると、今度は薬液を、
 トロッ
「はぅんっ!?」
 雪の秘所に垂らした。
 それだけで雪は軽い絶頂に達し、背を仰け反らせる。

「雪のココ、とっても美味しそう・・・」
 礼菜は体勢を入れ替え股を開くと、雪の熟れた秘唇に己の秘唇を重ね、腰を動かす。
 クチュックチュッ
「はぁんっ、雪のココ、とっても熱い・・・」
「イイっ、せんせい、もっと、こすってぇっ!」
 秘唇から生じる快楽に飲み込まれ、二人はその行為に没頭してゆく。
 二人の淫蜜と薬液が混ざり合った白濁液は、二人が射精したかのような様相を呈しつつ、最も敏感な器官の中にじっとりと塗り込められてゆく。 
 粘膜から直接、毒素を擦り込まれた雪は、
『何もかんがえられないっ、気持ちいい、気持ちいいよぉっ!』
 グッチュッグッチュッ
 淫欲に我を失い、礼菜の秘唇を貪り食らうように、その腰を動かすのだった。

「・・・はぁっ、もうダメ・・・」
 苦痛にも近い激しい快楽に、雪の性感は限界に近づいてゆく。
「ふふ、いいわよ、雪・・・はしたなくイってしまいなさいっ!」
 グッチュッグッチュッ
 そして礼菜が雪の痴態を見、腰の動きを早めると、
「・・・かはぁっ!・・・イ、イクぅっ!」
 ブシュゥッ
 雪は盛大に潮を吹きながら、初めての絶頂に達したのだった。
 ビクッビクッ
「はぁっ・・・」
 雪は肢体を痙攣させながら、だらしなく惚けた顔で悦楽の余韻に浸る。
 その姿は浅ましい牝そのものであり、西道の令嬢としての気品を感じることはできなかった。

「ふふっ、雪、とっても良かったわよ。ご褒美をあげる」
 礼菜はそう言って惚けたままの雪を抱き起こした。
「・・・はむっ、ちゅっ」
 そして再び薬液を口にすると先程と同じように、雪の唇を奪い、含んだ薬液を雪の口内へと流し込む。
「ちゅっ、むっ・・・」
 雪は無意識に礼菜の唇に吸い付きながら、再び恍惚に満ちた表情へと変わる。
 チュッチュルゥッ、チュッ
 それを確認したところで、礼菜は雪から唇を離した。
 雪の口内にはまだ多量の薬液が残っている。

「雪、『お薬』を味わいながらしっかり聞きなさい」
 その言葉に雪は、舌先で薬液を捏ね回しながら、焦点の合わない目でコクリと頷いた。
 それを見た礼菜は、雪の耳に口を寄せると囁くように、そして呪文を唱えるように、言葉を一つ一つ紡ぎ出す。
 雪はその言葉一つ一つに頷きながら、徐々に瞳の色を失い、やがて意識を闇に落としていった。

「ん・・・」
 ビクッ
 身を切るような寒さに、雪が目を覚ましたのは、自宅近くの森林公園のベンチだった。
「あれ、私、どうしたんだろう?」
 何かをしていた気がするが思い出そうとすると軽い頭痛がし、記憶を呼び戻すことができない。
「・・・早く、帰らなきゃ」
 だが雪は、その異常さに疑問を抱くこともなく、何かに急かされるように帰途についた。

 そして、森の奥深くに差し掛かった時だった。
「グゲゲゲッ!」
「妖魔!」
 一体の妖魔が道を塞ぐように、雪の眼前に姿を現した。 
 辺りは街灯がぼんやり照らすだけで、人の姿はない。
 雪は躊躇うことなく変身バンドを翳し、
「チェンジ、ホワイト!」
 メイデン・ホワイトに変身した。
 すぐさま、周辺の状況を確認・分析する。
 センサーで検知できる敵は、淫獣型の下魔1体のみ。
 過去の同型の妖魔から推測される戦闘力は低く、自分一人で十分対処できる相手だ。
 雪は、対妖魔用の銃を納めた腿のホルダーに手を掛け、相手との間合いを詰めようとした。

「ケケケッ!」
 その時妖魔が触手の先端から、ブビュル、と白い液体を吐き出し、強烈な臭気が当たりに漂った。
 その途端、意識が薄れ、カクンと膝立ちになる、雪。
 その瞳は、光を失い、虚ろなものとなっている。
 だが、
「はぁっ、はぁっ・・・」
 その体は何かを求めるかのように熱く火照り、雪は両の腕で己の体を抱き締めた。

「ケケケッ、オマエガホシイモノハコイツダロウ?」
 いつの間にか雪の眼前にまで迫っていた下魔はそう言いながら、白濁液が滴り落ちる触手をヘルメットの側面にペチペチと叩き付ける。
 白い飛沫がヘルメットに飛び散り、更に強烈な臭気が雪の意識をより深く浸食した。

「はぁっ、ああっ・・・」
 いつしか雪の意識は、眼前にある下魔の肉棒に釘付けとなっていた。
 じゅるっ
 無意識に、口内に涎が溜まる。
「サア、オマエノシメイヲハタセ」
 その瞬間を見計らったかのように、下魔は雪にそう命じた。
 本来倒すべき妖魔にそう命じられた雪は、何の疑問もなく、
「は、い・・・フェイス・オフ」
 ヘルメットを解除すると、
「・・・はむっ、ちゅっ・・・」 
 白い精液がまとわりつく穢らわしい下魔の肉棒に、恍惚とした表情で口づけをした。

 雪の脳裏に、
『妖魔の肉棒への奉仕は四神の巫女の務め』
『快楽こそ己の生きる意味』
 その二つの言葉が呪詛のようにぐるぐると回り続け、彼女を淫猥な行為へと駆り立てる。
 催眠で礼菜によって価値観を上書きされた雪は、疑問を抱かないどころかそれを当然の義務として、下魔の肉棒に奉仕するのだった。

 ちゅっ、ちゅっ、じゅっ
 下魔の瘤が浮いた醜いペニスに優しくキスの雨を降らせ、先端から竿に零れた汚液を一啜りすると、
 ムニュ
 胸の谷間に下魔の肉棒を挟み、
 ムニュルムニュル
 パイズリを始める、雪。
「はっ・・・はぁっ!」
 ボディー・スーツは装着したままだがそれでも、肉棒と触れた箇所からは火傷しそうな熱が伝わってくる。
 それは、雪の官能を著しく刺激する。
「はむっ、むちゅっ、ずちゅう・・・」
 堪らず雪は、胸の間から覗く亀頭にむしゃぶりつくと、その中にある精液を吸い出さんと、必死に愛撫を繰り返す。

「ケケケ、コノインバイメ、ソンナニオレノモノガイイカ?」
「はひ、ほっへもはふまふくて、おいひいれす。いっはいらしてくらさい」
 雪は一時も口から肉棒を離すことが惜しく、下魔の肉棒を頬張ったままそう答えた。
「ケケケ、ソウカ」
 シュルシュルシュルッ
 下魔は背中から触手を伸ばすと、雪の胸に絡み付かせ、搾乳するようにぎゅっと絞りあげる。
「ひゃひぃっ!」
 パンパンに張った胸は、それだけで性器のような悦楽を雪に与えてくる。
 雪は下魔の肉棒を咥えたまま、軽い絶頂に達してしまい、ガクガクと腰を震わせた。
 だが下魔の性的拷問は、その程度のものではない。
「ケケケ、ムネダケデイッタカ・・・ホンバンハマダコレカラダゾ」
 下魔は粘液に塗れた太いイボ付きの触手を雪の股下に伸ばすと、
 ビチャ
 潤みきった雪の秘所に密着させ、
「ケケケ、テンゴクヲアジワウガイイッ!」
 ズリュズリュズリュッ!
 それを一気に引き抜いた。
「びゅひぃっ!」
 胸とは比べ物にならない程の快感が秘所から脳天に走り、雪は一瞬気を失いかけ、前のめりになった。
「ぐぶぅっ!?」
 それは結果的に下魔にイラマチオする形になる。
「ケケケ、ソウカ、ソンナニオレノモノニホウシシタイカ」
 自分に都合の良いように解釈すると下魔は、丸太のような腕で雪の頭を掴み、
 グジュッグジュッグジュッ
 雪の喉奥に己のイチモツを叩き付け始めた。
 それと併せて、胸、股間の触手を蠢かし、雪の全身から刺激を送り込む。

 圧倒的な苦痛と快楽。

『ダ、ダメェッ・・・こんな凄いの・・・気が狂っちゃうっ!』
 雪は失神寸前になり、四肢をガクガクとさせ地面にへたり込みそうになるが下魔の触手が雪を支え、それすらも許さない。
 下魔の触手に絡め取られながら意識だけ沈めようとした時、口内の肉棒に膨らみを感じた。
「ケケケッ、ナカナカヨカッタゾ・・・ホウビダ。クラウガイイ!」
 下魔はそう叫ぶと、生殖器の全てから、 
 ビュルビュルビュルッ
 多量の精液を吐き出した。
 ゴブッゴブッ
「ふごぇっっ!」
 喉奥に肉棒をさし込まれながら、食道へ強制的に射精された雪は吐き出すことも叶わず、くぐもった悲鳴を上げる。
 そんな哀れな彼女をデコレーションするように、
 ビチャッビチャッ
 触手から吐き出された精液は白い雨となって、雪に降り注ぐのだった。

 ジュポンッ
 あらかた精液を吐き出したところで漸く下魔は満足したのか、肉棒を雪の口内から引き出した。
 それとともに、触手から雪を解放する。
「げぼっ、げぼっ!」
 飲み込めきれなかった精液を吐きながら、雪は前のめりに倒れ込み、そのまま意識を失った。
 いつの間にか、下魔はそこから姿を消し、精液に塗れた雪だけが取り残される。
 その雪の顔は、幸福に満ちたものだった。 

 それ以来、幾度となく雪は、下魔に『使命』を果たした-

「ううっ・・・」
 雪は腹を押さえながら恨めしそうに、薬瓶を見つめる。
 薬瓶はその雪を嘲笑うかのように、向こうの景色を映し出していた。

 口にしたもの全てを吐き出してしまい、今胃の中には何も残っていない。
 口の中がカラカラに渇き、ヒリヒリとした感触が、舌先から伝わってくる。
 昨晩、僅かに残っていた薬液を指で刮ぎ取って口にしてから先、何も摂ることができないでいる。
 先日、妖魔に奉仕してから、ずっとこんな調子のままだ。
 こんなことでは、四神の巫女としての使命を全うすることはできない-
「先生、先生の所に行かなきゃ・・・」
 『使命感』に突き動かされた雪はそう譫言のように呟くと、重い体を引きずり、礼菜のもとへ向かった。

 コンコン
「はい、どうぞ」
 ほっ
 診察室の扉を叩いた雪は、礼菜が在室していたことに安堵する。
「失礼します」 
「あら、雪じゃない。どうしたの?」
 はやる心を抑えながら開けた扉の先では、拍子抜けする程自然体の礼菜が雪を迎えた。
 プツ
 その姿に雪の、張り詰めていた緊張の糸が切れた。

「先生、お薬を、お薬をくださいっ!」
 雪は、半狂乱になりながら礼菜にそう詰め寄る。
 もう形振りなど構っている余裕はない。
 この状況を打破するのは、あの薬しかないのだ。
 一刻も早く薬を飲みたい。
 今の雪にはその一念しかなかった。

「ああ、あの薬?ごめんなさい、もう在庫がないの」
 だが礼菜が発した言葉は、今の雪にとって死刑判決にも等しいものだった。
「そんな・・・私、もうどうすれば・・・」
 唯一の頼る縁が失った雪は、顔を手で覆いながら、そう、床にへたり込んだ。

 そんな雪を礼菜は、腕を組みつつ見下ろしながら、
「雪、どうすればあの『お薬』が手に入るか、貴女なら解るでしょう?」
 そう諭した。
 その言葉に雪は顔を上げる。
「どう、すれば?」
 そして、礼菜に問い掛けるように、そう言葉を吐いたのだった。
「そう、どうすれば、ね」
 礼菜は再び諭すようにそう答えると、含みのある笑みを雪に向ける。

『どうすれば・・・か』
 礼菜の言う通り、答えなどとうに解っている。
 要はそれを実行するか否か、それだけのことだ。
 そうであれば、取るべき選択肢は一つ。
「わかりました・・・失礼します」
 雪は、礼菜に一礼すると医務室を後にした。

 パタン
 閉めた者と同様に、力無い音をたて閉じた扉を見つめていた礼菜は、
「くくく、くくっ・・・あははっ!」
 右手でこめかみを掴みながら天井を仰ぎ、そう、吹き出した。
「『わかりました』?ははっ、雪、本当にお利口さんね!・・・もう貴女は妖魔の精液なしでは生きていけない・・・本当にそれを理解しているの?」

 雪は、妖魔の攻撃対象である神域や霊脈の要衝を彷徨い歩いた。
 だが、闇雲に歩き回って妖魔に遭遇できるはずもない。
「はぁっ、はぁっ」
 疲れ果てた雪は、もう何カ所目か解らない社の板張りに、崩れるように座り込んだ。
 ずきん
 胸が潰れるように苦しい。
 その一方で肉体的苦痛に反比例するかのように、
 じわ
 雪の秘所は性の悦びを求め、悲嘆の涙を溢していた。
 そこに触れたスカートの中心は、小便でも漏らしたかのように、変色の領域を広げてゆく。
 普段であれば慌てて対処するところだが、精根尽き果てた雪はもうどうでもいい、と、虚ろな瞳でそれを眺めるだけだ。
 もう、自分の体さえ御すことができない-

 ふと、雪が首を巡らすと、本殿の奥に鎮座したご神体の鏡が目に入った。
 その鏡に映った己の顔は幽鬼のように青白く、ぎょろりと血走った目をしている。
 妖魔の精を漁る『餓鬼』-
 今の雪の姿は、まさしくそのものであった。

「辛そうね、雪」
「沙夜子さん、どうしてここに?」
 聞き慣れた声に雪が顔を上げるとそこには、黒い上下に身を包んだ沙夜子が佇んでいた。
 沙夜子は雪の動向をずっと監視していたのだが、冷静さを失った雪が、それに気づくことはなかったのだ。

 雪の問いに答える代わりに、
「顕現、淫亀」
 そう短く呪を唱えると、沙夜子の体は禍々しい光に包まれる。
「うっ、何?・・・」
 その光に雪が目を眩ます間に、沙夜子は『淫亀』へと変じていた。

「沙夜子さん、それは・・・」
 雪は淫らな沙夜子の姿に大きく動揺した。
 だがそれ以上に、沙夜子の中心で屹立するものから目を離すことができずにいる。
 そしてそこからは、嗅ぎ慣れたあの臭いが-

 自分の渇望するものがすぐそこにある-
 雪は、ゴクリ、と生唾を飲みこむ。
 沙夜子は冷たい微笑を浮かべながら、そんな雪の眼前に立つ。

「お前達」
 沙夜子がさっと右手を挙げると、音もなく下魔の群れが彼女の背後に現れた。
 その下魔達は、雪がこれまで『奉仕』をしてきた相手。
 その中には、雪との逢瀬を思い出したのか、自慰を始める下魔さえいる。
 境内は忽ちの内に、噎せ返るような性臭に包まれた。
「・・・はぁはぁはぁ・・・」
 欲しい。
 秘穴からダラダラと羨望の涎を垂らし、性感帯の全てを熱くしながら、雪の意識はその欲望だけに収斂されてゆく。
「・・・ちょうだい・・・」
 そう呟きながら、雪は欲望に突き動かされるまま、妖魔の群れへ一歩踏み出そうとした。
「駄目よ」
 だがその雪の前に、沙夜子が立ちはだかる。
「邪界に忠誠を誓いなさい、雪。そうすれば思う存分、これを堪能させてあげる」
 沙夜子は己のイチモツを誇示する姿勢を取りながら、彼女の両脇に控える下魔のイチモツを握り頬に寄せると、軽く扱き始めた。 
 それを見た雪の中では、肉棒に対する渇望が一層大きくなり、胸が張り裂けんばかりになる。
 だがその一方で、何故沙夜子が妖魔の仲間としてそこにいるのか、雪は俄に理解できないでいた。

 『妖魔の肉茎に奉仕することは四神の巫女の務めだが、妖魔は敵ではなかったのか?』 
 
 大きな矛盾を孕んだその命題に理性が悲鳴を上げ、
「ううっ・・・」
 雪は頭を抱えて、その場に蹲った。
 沙夜子は下魔から離れ、雪のもとへやって来ると、膝をつき雪と目線を合わせる。
 そして下魔の精液に塗れた右手をそっと雪の頬に添えると、
「私は四神の巫女の『使命』を果たすため、邪界の側についたの。貴女も四神の巫女なら何を一番に優先させるべきか、解るはずよ」
 そう言って射貫くような眼差しで雪を見つめた。

 その沙夜子の眼差しを受け止めながら雪は、再び思案する。
 沙夜子の言うとおり、四神の巫女の『使命』を果たすためには、邪界に仕えてしまうことが一番であることは確かだ。
 では何故、自分達は妖魔と戦ってきたのか?
 肉体は屈従しろ、と雪に命じ、性の渇きを訴えてくる。
 だが何か、大事なことを忘れているような違和感が、頭の隅から離れない。
「返事はどうなの、雪?」
 そんな雪を急かすように、沙夜子は返答を促す。
「・・・・・」
 だが、その違和感を解消できなかった雪は一瞬、沙夜子の問いに答えることを躊躇した。

「そう・・・残念だわ」
 沙夜子はそう言うと踵を返して、闇へ戻ろうとした。
 彼女に付き従う下魔達も、それに従い、雪に背を向ける。

「・・・ま、待って!・・・誓います、忠誠を誓いますからっ!」
 雪は、反射的に沙夜子を呼び止めていた。
「本当に?」
 沙夜子は振り返り、冷たい視線を雪に送ってくる。
「本当ですっ!この身も、心も全て捧げます!・・・だからお願いです、沙夜子さん!」
 些細な違和感など、どうでもいい。
 この肉の渇きを癒したい、自分の存在は快楽の中にこそあるのだから-

『墜ちたわね』
 淫亀は戦友の哀れな姿を見下ろしながら、心の中でそうほくそ笑むが、その素振りすら表情に出すことはない。
 この墜ちた獲物の洗脳をより確実にするため、次の手に出る。
「雪、貴女、返答を躊躇したでしょう?そんな人間の口から出た言葉なんて信用できないわ」
「そんな・・・」
 雪は縋るような、そして媚びるような視線を沙夜子に送る。 
 今や戦友ではなく、支配者と被支配者の立場に立った二人。
 支配者の沙夜子は雪を上から見下ろしながら大仰に、
「そうねぇ・・・」
 頬に人差し指を当て、思案顔になる。
 そして、楽しい悪戯を思いついた、そんな風に思わせる酷薄な笑みを浮かべると、
「じゃあ忠誠の証として、ここでイクまでオナニーなさい。私達に媚びながら、イヤらしく」
 そう雪に命じたのだった。
「え・・・」
『そんな事、恥ずかしい』
 隷従を誓ったとは言え、羞恥心を未だ持つ雪は、沙夜子の顔を伺い見た。
 沙夜子は薄笑いを浮かべているが、その目は笑ってはいない。
 また躊躇すれば、今度こそ-
 今の雪にとっては羞恥心よりも、悦楽の機会を永遠に失う恐怖心のほうが、圧倒的に強かった。 

「わ、わかりました。・・・オナニー、させて頂きます・・・フェイス・オフ、プロテクター・オフ、ウェポン・オフ」
 雪がそう命令を発すると、ヘルメットと装甲、武装が解除され、ボディー・スーツとコスチュームのプリーツ・スカートだけの姿になる。
 続いて床板に尻をつき、レオタードの股布をずらすと、沙夜子達に秘所が詳らかになるように腰を浮かし、前に突き出した。
 そこは本人の羞恥心とは裏腹に、既に潤みきり、愛液を滴り落としている。
「雪のオナニー、見てください・・・」
 雪は羞恥に頬を染めながら、神聖であるはずの社を淫猥なショーのステージにして、オナニーを始めたのだった。

 チュクチュク
「はぁぁ・・・」
 秘所に軽く触れただけで、脳髄を焦がすような快楽が走る。
 雪はふと、視線を沙夜子達に向けた。
 彼女達は雪の恥ずかしい姿を凝視している。
 ゾクゾクゾク
 この淫猥な姿を沙夜子や下魔に見られている、そう知覚しただけで、産毛を撫でるような快感が雪を襲う。
「胸、も、こんなに・・・」
 雪は秘所をなぞる手を休めず、ボディー・スーツの上からでもくっきりわかるほど浮き出た乳首に触れた。
「ひゃうんっ!?」
 極度に敏感になった乳首は、性器と変わりない快楽を雪に送り込む。
 上下二つの『性器』から凄まじい悦楽を感じながら雪はいつしか、沙夜子達の視線も忘れ、オナニーに没頭していたのだった。 

 一匹の牝に墜ちたかつての戦友が、浅ましく性を貪る様に、沙夜子は嗜虐心をかき立てられる。
「ふふ、とってもイヤラしいわよ、雪」
 ジュクッジュクッ
 そう言って沙夜子はブーツの先で雪の秘所を弄んだ。 
「あひぃっ!?」
「駄目よ、手を休めては」
「はひぃっ、申し訳ありません、沙夜子、様」
 雪は無意識のうちに、沙夜子に『様』をつけてそう答えながら、震える手でクリトリスと乳首への愛撫を続ける。
「ふふ、浅ましいわね、雪。仲間に虐められて、ココをこんなに濡らすなんて・・・どう、卑しい奴隷に墜ちた気分は?」
「はひぃ、とっても素敵ですぅ、沙夜子様ぁ・・・淫乱な奴隷の雪を、もっと虐めてくださぃ」
 言葉で、雪の意識下に奴隷としての上下関係を擦り込ませながら、沙夜子は秘所を弄る速度を早めてゆく。
 己と沙夜子の巧みな愛撫に、雪の限界は直ぐにやってきた。

「はっ、あっ、もうダメ・・イク・・・みんな、雪のイクところ見てぇっ!」
 雪はそう叫ぶと、腰を一層突き出し、
 ぶしゅぅっ!
 潮を吹きながら絶頂に達した。
 その顔はだらしなく緩み、かつての雪からは想像できない淫蕩なものであった。

「如何です、邪水晶様?」
「ふふふ、上出来よ、淫亀。よくやったわ」
「あ、はぁ・・・」
 絶頂で朦朧とする意識の中、雪は強力な邪気を放つ、その声の主へと視線を向ける。
 だが彼女が見た者の姿は、予想だにし得ないものであった。
「貴女は・・・翡翠様!?」
 かつて神凪本家で遠くに伺い見た、長女の顔がそこにあったのだ。
「違うわ、雪。こちらは私『達』の主、『邪水晶』様よ」
「邪水晶、様?」
 邪水晶と呼ばれた翡翠の姿を、雪は再び、まじまじと眺める。
 メロン程に膨らんだ豊満な胸、ペニスの様な乳首、そして沙夜子より逞しくそそり立つ赤黒いペニス。
 それにその身を包む淫猥なコスチューム-
 その姿は過去に数度戦ったことのある、淫魔そのものである。

 だが雪は、その姿に不思議な程安堵感を覚え、感激に打ち震えていた。
 -本家の人間も自分と同様に、邪界に尽くそうとしている。
 それも、その身を妖魔に変えてまで。
 それは四神の巫女を束ねる血筋の使命感からに違いない。
 なんと決意に満ちた、神々しいまでの姿だろう-
 そう断じた雪は、ほっと胸をなで下ろす。
 自分の判断は、間違っていなかった、と。
 だから雪に、迷いはなかった。

「西道雪、もう一度聞くわ。邪界に忠誠を誓う?」
「はい、未来永劫、この身果てるまで」
「私の下僕として?」
「この肉、血、魂の全てを邪水晶様に捧げ、魂尽きるまで従います」
 雪は決意に満ちた真っ直ぐな視線を邪水晶に向けながら、確かな口調で隷従の言葉を口にする。
『ふふふ、完全に墜ちたわね』
 この娘の価値観は、自分の下僕として仕えることが最上の悦び、そう考えるように書き換えられた-
 雪の瞳に映る己の姿を見つめながら、邪水晶はそう確信した。
 ならば、その悦びを身をもって感じさせ、肉体も己の虜にしてしまおう-

「・・・そう、ならばこれが最初の命令よ。私のモノに奉仕なさい」
「はい、邪水晶様」
 雪は宝具を捧げ持つように邪水晶のイチモツを握ると、
「れろっ、ちゅっ」
 血管の浮き出た裏筋を丹念に舐め上げ、キスの雨を降らしてゆく。
 邪水晶のモノに奉仕を始めると同時に、下魔達の触手が雪の体にまとわりついてくる。
 ニュルニュルニュル
 胸には触手が巻き付き、変形するほどに絞り上げ、
 ズリュズリュズュリュ 
 股間には、異なる大きさのイボがついた触手が雪の秘所を前後に責めたてる。
「はぁんっ!」
 その刺激に堪らず雪は、邪水晶の肉棒への奉仕を疎かにしてしまった。 

「奉仕を続けなさい、雪」
「申し訳御座いません、邪水晶様・・・れろっ、ちゅっ」
 邪水晶にそう促された雪は、ガクガクと体を震わせながらも、懸命に奉仕を再開した。
 ちゅっ、じゅっ
 肉棒の先端から染み出した液から、これまで奉仕してきた下魔のなど比較にならないほどの魔力を感じる。
 そしてそれは例えようもなく濃厚な蜜の味を、雪の舌先に伝えてきた。
 それは礼菜の医務室で味わった薬の原液の味と同じもの-
 その味に雪は堪らず、邪水晶の肉棒にむしゃぶりつく。
「はむっ、じゅっぅう、ちゅうぅっ」
『美味しい、美味しい、美味しい!』
 ここしばらくの精液への飢えを一度に癒すかのように、邪水晶の肉棒に舌をねじ込み中身を全て吸い取ろうとする。
 それに比例するように、肉棒を握る手の動きも、激しさを増してゆく。
「あんっ、雪、気持ち良いわ・・・もっと貴女の口で感じさせて」
 懸命な雪の奉仕を受ける邪水晶も悦楽を感じ、
 グボッ
 己の肉棒を雪の口内深くに突き込んだ。
「ぐぶっ」
 雪は喉奥を犯され苦しむが、邪水晶への奉仕の手は緩めない。
 それどころか、一層愛撫の手を強めるのだった。
 雪の奉仕が激しさを増すのあわせて、触手の愛撫も激しさを増してゆく。
 
 クパァ
 雪の胸を締め上げていた触手の先端が牙のついた口を開き、
 ピィィ
 ボディー・スーツを鉤裂きにして、雪の乳首を露わにした。
 雪の乳首は痛いほどに腫れ、赤い頂きを天頂に向けている。
 触手は鎌首をもたげると、
 カプッ
 雪の乳首に軽く噛み付き、
 プスッ・・・ビュルルッ!
『ひぎぃっ!?・・・乳首の中に、何か入ってくるぅ!?』
 口の中から細い触手を伸ばし、雪の乳腺へと侵入してゆく。
 その根を、乳房全体に張ったところで、
 ジュゥゥ・・・ジュルルッゥゥ!
 中身全てを吸い尽くすように、吸引を始めた。
『ひぃぃっ!・・・胸が、胸が全部吸われちゃうよほぉっ!』
 邪水晶のモノを頬張ったまま、胸から生じる強烈な快楽に、雪は脳天を焦がされる。

「ふふ、雪、気持ち良さそう・・・私も貴女を感じさせて」
 沙夜子は下魔を退かせ、雪の背後に回り込むと、優しく雪を包み込んだ。
 そして優しく雪の乳房を揉みながら己のモノを雪の股間にくぐらせると、素股を始める。
 ニュルッズリュッ
「はぁっ、私、雪のアソコをジュボジュボ犯してるみたい・・・」
 雪が溢れさせた愛液を潤滑油にして、沙夜子は腰の動きを早める。
『沙夜子様のチンポのカリ、コリコリ擦れて気持ち良いぃっ!・・・もっと、もっとぉ!』
 雪は太股を閉め、沙夜子の肉棒に秘所をより密着させると、腰の動きを沙夜子と同調させる。
 その姿はまるで、雪から肉棒が生えたかのようにも見える。

『あはぁっ、気持ち良いよぉっ!・・・もう何も考えられなひっ!』
 触手に乳首、沙夜子に乳房と秘所、そして邪水晶に口腔を犯された雪は、快楽の大海に溺れ、理性を吐き出し続ける。
「雪、最高の気分でしょう?私に忠節を尽くせば、いつでもこの快楽を与えてあげる。・・・だから、貴女の血の一滴、魂の一欠片まで全て、私に捧げなさい」
 邪水晶のその言葉に、雪は肉棒を咥えたまま、
「はひっ、はひっ!」
 と必死に頷き返した。
「ふふふ、いい娘ね、雪」
 邪水晶は、雪の髪を優しく撫で上げる。
 淫らな肉体は精神を爛れさせ、爛れた精神は更なる悦楽を求め続けるだろう。 
 そしてこの娘は言葉だけではなく、主のためなら命すら投げ出す、忠実な奴隷と化す。
 その姿を想像すると、邪水晶は根本に迸りを感じた。
「そろそろ出すわよ、雪。・・・たっぷり受け取りなさい」
 雪は邪水晶の言葉にコクコクと頷くと、邪水晶の射精を受け容れるため口をすぼめる。
「雪、私もイクわ・・・邪水晶様の奴隷として、貴女も一緒にイキましょう」
 その沙夜子の言葉にも、雪はコクコクと頷いた。
 そして各々が、ラストに向け、動きを早めてゆく。

 -もう四神の巫女としての使命すらどうでも良い。
 自分の生きる価値の全てがここにある-
 雪の価値観は悦楽が高まるに従い、その一念に塗り変えられてゆく。
 そして彼女の全てが一色になった時、
「「『イクッ!』」」
 絡み合った3匹の牝は、それぞれの感涙を爆発させながら、絶頂に達したのだった。

 ビュルッビュルッ
 邪水晶と淫亀が吐き出した精液が、雪の肢体を真っ白に染め上げる。
 それは雪の心が、彼女達の色に染め上げられた、象徴のようであった。

 邪界における邪水晶の居室。
 クチュ・・・ジュルッ  
 今、邪水晶の前には一人の女が跪き、淫らな水音を立てながら、邪水晶の肉棒に奉仕していた。
 ねっとりと竿を舐っては亀頭を飲み込み、その中身を吸い上げる。
 時折、熱の籠もった息を鼻から漏らすが、それ以外は持てるもの全てを、愛しい支配者への奉仕に、集中させていた。
 それが強制されたものでないことは、女の潤んだ瞳と、腿を伝い落ちる愛液の量が雄弁に語っている。
 
 その女は、かつてメイデン・ホワイトと呼ばれた破邪の巫女。
 だが、今は-

「ふふふ、淫虎、大夫上達したわね・・・これなら邪淫皇様にお披露目しても良いかもしれないわ」
「ちゅむっ、ぷはっ・・・有り難う御座います、邪水晶様」
 邪水晶の肉棒から口を離した雪は、邪水晶の褒めの言葉にそう礼を述べた。
 雪の首には鎖付きの黒革の首輪が填め込まれており、鎖の先は邪水晶の左手に伸びている。
 チャリ、と金属音を響かせ、雪を手許に引き寄せた邪水晶は飼犬にするかのように、雪の髪を優しく撫でつけた。
 それを雪は目を細めながら、歓喜に満ちた表情で受け容れる。

 今、雪の胸には鮮やかな黒水晶の刺青がある。
 邪水晶の性奴隷として『淫虎』の名を戴いた雪は、性奴隷としての服従心と性技を、邪水晶に叩き込まれていた。
 この調教も、今日で終わりにして良いだろう-
 己の膝下で、媚びた視線を向ける『淫虎』の姿を見、邪水晶はそう確信した。

「ふふ、淫虎、貴女の生まれ変わった姿を見せて頂戴」
「畏まりました、邪水晶様・・・顕現、淫虎」
 淫虎が胸の刺青に手を触れ、そう呪を唱えると、彼女の体を禍々しい光が包む。
 そして数瞬の後には、淫亀と同様の、奴隷戦士の装束に身を包んだ彼女の姿があった。
 その表情は誇らしげで信念に満ちた表情をしている。
 実際彼女は、四神の巫女として邪界に仕えることに誇りを覚え、メイデン・フォースを『正しい』道に導くことを、その使命として感じていた。

「ふふふ・・・」
 その姿を、邪水晶は満足気な表情で見つめる。
 この娘に対する洗脳は上々のようだ。
 例え洗脳が解けたとしても、肉の疼きが彼女を解放することはないだろう。
 この気高き、淫乱な牝は、メイデン・ホワイト、西道雪として、貞淑な女を装いながら、有能な下僕として働いてくれるはずだ。

 再び邪水晶は、傍らに控える二人の下僕の姿を見つめる。
 玄武の巫女と白虎の巫女。
 これで、四神の巫女の半数を手に入れた。
 メイデン・フォース攻略の橋頭堡としては、十分な戦力だろう。
 後は如何に、組織を内部から腐らせ、その果実を我が手中に堕とすか。

 邪な笑みを浮かべながら邪水晶は、次なる策に思いを巡らすのだった。

< 続く >

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