形而上の散歩者テルマ 前編

-1-

 俺、倉島修吾。
 なんか朝っぱらから渡辺が彼氏とイチャイチャしててムカついたから、AKB研究生になりきって2700フォローされてたついったーにチンコばらして通報されたなう。

 ま、そんなことはどうでもいいんだけど、問題は渡辺。
 彼女は今、俺から真横に3つ離れたところにいる。彼氏が偉そうにふんぞり返る席の前で、椅子の背もたれに腰かけて笑ってる。
 本日も渡辺、超可愛いんですけど。足だってすっげえ細い。しかも今日は俺の大好きなポニテバージョンの渡辺ですよ。くそ。もしも俺に触手があったら、今すぐあの太ももに絡み付いてやるのに。
 ちなみに彼氏の寺田っつー男は、すでに俺に脳みそクリクリされてるので、渡辺とはエッチできない状態だ。
 しかし、それでも2人は一応まだ付き合ってるんだから、教室の中でイチャついてようが、クンニしてようが、別におかしなことではない。
 ついでに言えば、渡辺が俺との関係をこっそり続けながら寺田とも付き合ってくことについても、俺は了解済みである。
 どうせあの2人はもうヤレないんだし、俺もみんなの見ている前で渡辺みたいな大物とイチャつく勇気もないし、だったらアイツらはこのまま自由に泳がせておいたほうがいいと思うんだ。

 だけどモヤモヤする。

 朝っぱらからリア充オーラをムンムンに発する寺田渡辺カップルと、寝たふりに忙しい俺。
 そのクラスランキング2位の渡辺はるかも、3位の三森リナですら性的に攻略した実績を持ち、隠れリア充度のパラメータはチートでMAXである俺も、学校社会のコミュニティ格差の中では、イジメどころか空気よりも薄い存在感で、本日も相変わらず教室の最底辺の最底辺に沈んでいた。
 蟹工船でいうなら、俺は蟹。
 カースト制度でいうならガンジス川で、アパルトヘイトでいうなら古タイヤな。
 そんな俺でも、渡辺が楽しそうに笑う声が気になって、ついつい彼らの方をチラ見してしまう。そしてそのたびに、こちらに視線を向ける渡辺と目が合うんだ。
 なにそれ? 見せつけてるわけ? なんか感じ悪くない? 
 そういえば昨日の渡辺のメールに返事をしてないな。
 いや、でも、まさかそんなことであの渡辺が怒るわけないだろう。別に俺、彼氏じゃないんだし。現に渡辺は彼氏の寺田と楽しくイチャつき中なわけだし。クソ。
 HRが5秒で終わることで有名なうちの担任も職員室に戻って、今は1時限目の授業待ちで教室の中もざわめいている。あと15分はフリーの寝たふりタイム。なのに俺には渡辺の楽しそうな声しか耳に入ってこない。
 ったく、なんで俺がこんなことでイライラしなきゃならないんだよ。

 昨日は三森相手にさんざんご主人様レイプを楽しんだのだが、その後、俺は妹の美結に逆レイプされかけて大変な目にあった。
 美結にはアレだ。口でしてもらった。
 だがもちろん最後まではしてないし、逆に下手くそなフェラに2人とも冷めちゃって、結局俺は射精すらしていない。
 やっぱり兄妹でそんなことしようとしても、上手くいくはずがないんだ。
「へたくそでごめんね」としょげる美結の頭を撫でて、俺たちは一緒に寝た。それだけだった。

 というわけで、中途半端に高まったままの性欲を、俺は朝から持て余してる。
 そんなとき、渡辺の巧みで丹念なフェラを思い出すと、胸がきゅんとなっちゃうんだ。
 俺、恋してる。渡辺のフェラに。

「あははっ。もー、やだったら、篤ー」

 あー、イライラする。
 いいさ。しょせん俺にはぼっちがお似合い。体育教師とのパス練習も爽やかにこなし、自分宛の年賀状を書くために百の筆跡を操り、お友だちを写生しろと言われれば妄想世界を羽ばたく脳内フェアリーを芸術的に描いて保健室に呼ばれるのも日常茶飯事の男。
 リア充カップルのイチャラブ見せつけ攻撃など、朝メシ前の便所メシだぜ。
 とりあえず生意気な渡辺には嫌がらせメールで反撃し、俺は華麗に教室から撤退する。

 
『渡辺さん!さっきから僕しゃぶってくださいってお願いしてるじゃないですか!なんで無視するんですかプンプン! 倉島の息子より』

 さーて、それじゃ授業始まるまで、トイレでネネさんとチュッチュしてこよっと!



 俺は勝ち組だ。
 人類を負け組と勝ち組に分けたなら、俺は間違いなく圧勝組に属する人間だ。今なら勝ち組にだって負ける気がしない。それぐらい俺のこのヘンテコな力はすごい。
 正直、すごすぎて俺の体が追いつかない。
 なんかさっきから今まで使ったことのない股の筋肉が悲鳴を上げてるし、股関節にも違和感が生じて歩き方がおかしくなってるぐらいだ。
 でもそれがどうした。俺が望んで得た結果じゃないか。
 俺は地球の全ての美女を抱く。この能力を使ってヤリまくってやる。
 モテモテでウッハウハの学園生活をジョイフルしてやるんだぜ!

 などと、がに股で廊下を闊歩していたら、またもや美少女発見。
 まったく、我が校の女子レベルやばいわ。WGK(我が校)48を結成できるくらいやばい。
 そしてそのメンバーの中で、間違いなくセンターポジションに収まるべき神女子、藤沢綾音がこっち見て微笑んでるなんて、本当にやばい。

 …やばい。

 廊下の壁にもたれて、俺を見つけてニッコリと微笑んでいるのは、確かにあの、藤沢綾音だった。
 ナンバーワン美少女、藤沢。
 その呼び名がなぜ彼女に相応しいのか、それを語り尽くすには1万行を要するだろう。
 でも1行でいうなら、彼女は見た目はもちろん、何をやらせてもナンバーワンだからだ。
 見ろ、あのサラッサラの髪。俺のと同じ素材で出来てるなんて信じられるか?
 顔小っさ。渡辺も小さいけど、藤沢の場合はさらにパーツの大きさや配置が完璧。
 いや渡辺だって相当美人だよ。でも藤沢は、その上を行く。しかも笑ったらすっげ可愛い。三森もピンチなくらいあどけなく可愛い。
 顔だけで、もうナンバー2と3の二人を凌駕しちゃってる。
 勉強だって、スポーツだって、オシャレなことだって、およそ学園生活で彼女が誰かに負けたことなんてない。知らないけど、たぶんない。
 そして、そのことを鼻にかけたり、他人を見下したりするようことを彼女は決してしない。
 人の悪口を言わず、他人の面倒を嫌がらず、でもクソ真面目ってわけでもなくて、クラスの奴らとバカ話で盛り上がったりするし、いいタイミングで面白いこと言ってみんなを笑わせるセンスもある。
 嫌味がなく、親しみやすく、でも他の女子とは明らかに違う、パーフェクト女子。
 そういう女がこの世にいる。てか、同じクラスにいる。
 俺の目の前に…いる。

「倉島くん、倉島くん」

 しかもあろうことか、この俺を手招きしますか。
 鈴の音のようなアニメ声で、まるで天使が小さな羽で羽ばたくかのように、ちょいちょいってその白い手で俺を招きますか!
 なんだよもう、うちの女子の間では廊下で待ち伏せするのが流行りなわけ? パワースポットなわけ?
 俺、明日から地蔵のように廊下に突っ立ってることにするわ。

「あ、あああ、ぼぼ、僕ですか?」

 できるだけ平静を装うとしても、これが限界だ。
 体中が発熱してる。ものすごい勢いで制服の中が蒸れていく。

「ごめん、ちょっといいかな?」
「は、ははい」

 まるで人生で初めて女子と喋ったかのように、俺は緊張していた。
 俺が脱オタ目指してクラスで浮いてた頃、流れで彼女とちょっとした会話くらいはしたことあるけど、いつもこんな感じだった。気圧されまくって、自分でも何を言ってるのかわからない状態だ。
 でも、今の俺はあの頃の俺とは違う。
 まず非童貞。
 男としてまるで別物。漢である。
 さらに、抱いた相手はあの渡辺と三森。
 いきなりの大物食いだ。並の童貞なら腹を壊して死んでいる。異能力持ちの俺だからこそ成し遂げられた偉業なのだ。
 この能力があれば、たとえ藤沢であろうと恐れることはない。
 どうせ近いうちに、藤沢も落とす予定だったんだ。堂々と、スマートに彼女に接近してやればいい。

「わ、わわわたくしのようなオオヒラタシデムシに何かご用でしょうか…?」
「アハハッ。相変わらずおかしなこと言うね、倉島くんって」

 くそぅ。何言ってんだ、俺。
 やっぱりダメだ。俺には藤沢と正面から向き合う男子力はない。もっとこう、卑怯な手で迫らないと。
 藤沢が笑うだけで、もう顔が真っ赤だ。言ってることも、めちゃくちゃだ。
 一体、俺なんかに彼女が何の用だっていうんだよ。

「あのさ…」

 藤沢が、俺に顔を近づけてきて、声を潜める。俺の心臓が5倍くらいに膨らむ。

「はるかと、リナのことなんだけど」

 そして膨らんだ心臓が破裂して肛門から出た。
 まずい。いきなり触れられたくない話題きた。
 歯がガタガタと鳴り、冷や汗がドバドバと溢れてきた。
 体温が冷えていく。目がチカチカとしてきた。耳鳴りがしてきた。
 呼吸が上手くできない。口の中がねばる。でも力が入らない。唾を飲むこともできない。心臓が不規則だ。苦しい。意識が遠のいていく。向こうに光が見える。引っ張られていく。そして何かを突き抜けた。近くで水の音がする。だんだん楽になっていく。だんだん楽になっていく。

「え、死ぬの?」
「いや死なないし!?」

 藤沢が、俺の顔をさらに近くまで覗き込んできて、そのショックで俺は目が覚めた。
 死ぬかと思った。美少女と喋ったら死ぬところだった。人の生き死にすら自在に操るとは、やはり美少女は恐ろしい。みんな、美少女のことは俺に任せて逃げるんだ!

「それで、やっぱり倉島くん、何か知ってるの?」
「え、何が?」
「だから、はるかとリナ。あの二人、今日はどっちも授業サボってるよね? それで私、気づいちゃったんだけど、なぜか倉島くんも同じ授業サボってない?」
「……」
「でさー、戻ってきたら、二人とも何か変なんだけど。というより、はるかとか、一昨日くらいからなんか落ち着かないし、リナだって、いきなりイメチェンしてきて、理由聞いても真っ赤になるだけで教えてくれないし」
「…………」
「まさかねー、とは思うんだけど…ひょっとして倉島くん絡み? ね、君ってあの二人と何かあるの?」

 ゴックンと喉を鳴らし、呼吸を整え、俺は努めて平静を取り繕う。

「しししりしり知りませんよ、ななな何何ももも」
「うん、さっきからドモりすぎてテクノっぽいよね。大丈夫?」
「ン、ンンッ、大丈夫。ほ、本当に何も関係ないよ、俺」
「ウッソだぁ。今、死にそうになったくせにー」
「で、でも死んでないもん。ウソついてない証拠だもん」
「いや、でもかなり三途の川だったし。ていうか、ここで命賭けられても困るんだけど」
「藤沢さん。男ってのはね、誰でも命を賭けて守らなきゃならない秘密のフォルダが自宅のPCにあるのさ」
「何それ? 矢沢?」
「永ちゃんがこんなこと言ったら濡れるわ」
「やっぱり何か隠してるんだ」
「そんなことないって」
「ウソついてもダメ。わかってんだよー」
「ないよー。藤沢さんに隠すようなことなんて、全然ないって」
「ホントに?」
「ホントホント」
「だったら見せてよ、家のパソコン」
「そっちかよ」
「あはは」

 気がつくと、普通にしゃべってた。この俺が学校一の美少女と、放課後の軽いトークを交わしてた。
 これは俺の成長というより、やはり藤沢の力だった。
 キョドる、ドモる、声もボソボソ、という喪男の教科書のような俺でも、ポンポンと話を繋げていく彼女の話術で、いつの間にか会話が弾んでる。
 てか、楽しい。藤沢さんとのおしゃべり楽しい。
 相変わらず直視するにはまぶしすぎる美少女だが、彼女の心地よい声と転がるような会話のテンポ、それにちょっとしたことでも笑ってくれるリアクションが嬉しくて、結構しゃべれてる。いつの間にかオオヒラタシデムシの生態について熱く語っちゃったりしてる。しかも、わりとウケてるんだ、なぜか。
 やっぱり彼女はすごい。
 藤沢は、例え相手が誰であろうと、偏見なしに当たり前にしゃべれるからすごいんだ。
 もしも渡辺や三森のことがなければ、俺はあっさり彼女に心酔してただろう。こんな美少女が、自分と普通にしゃべってくれるってだけで、俺みたいな男は簡単にやられてしまう。浄水器でも何でも買ってしまう。
 藤沢がナンバーワンである一番の理由。
 彼女は敵を作らない。誰であろうと、彼女は自分の味方にしてしまう。学校社会での立ち振る舞いまで、完璧なのだ。
 
「もー、なんか上手くごまかされた気がするなー」

 髪をかき上げる仕草にドキーッ。
 もう、この人は本当にすごい。惚れる。惚れるしか選択肢はない。

「ま、いいか。引き留めちゃってごめんね。私、部活行かなきゃ」

 小っちゃくバイバイして、藤沢は背中を向ける。
 なんだか寂しい。もっと彼女と話したかった。今度はぜひ槍形吸虫の話でも。
 でも、それよりもっと大事なこと忘れてた。
 これはチャンス。決定的チャンス。
 藤沢は俺に背中を向けている。
 廊下には他に人もいるが、気にすることはない。俺が彼女に何をしようと、それに気づく人間なんていないんだから。
 藤沢の中に潜れ。彼女を俺のものにして、ここから連れ出せ。
 そして…ナンバーワンの彼女を、誰より先に俺が抱くんだ!
 俺は彼女の背中に手を伸ばす。呼び止めるフリして、その細い肩に手をかける。
 

 ───そして、誰もいなくなった。

 あ、あれ? あれれ? どうなってんの?
 賑やかだった放課後の廊下から、人の声が消えた。気配すら消えた。
 藤沢はいる。あいかわらず俺の目の前で背中を向けて、いる。
 俺と藤沢だけ残して、あとの人間だけ消えてしまった。
 ここは…どこだ? 学校の廊下なのか?
 俺は藤沢の世界に潜ったはずだ。なのにここは……それともここが、そうなんだろうか?

 ゆっくりと、藤沢が肩に手を乗せたままの俺に振り返る。

「ふーん…。やっぱり、ウソだったんだ」

 震えた。
 藤沢の声の冷たさに、俺は震えた。
 彼女は俺を、それこそオオヒラタシデムシでも見るかのように冷たい目で見て、俺の手を払った。
 藤沢は藤沢のままだった。子供でも裸でもなく、制服のままの藤沢綾音だった。

「あなたも、そっち系の人なんだね。それではるかとリナのこと、モノにしちゃったわけ?」

 よくわからないまま、俺は頷いていた。
 わかってるのは、俺の能力がバレてるらしいってこと。
 そしてここで主導権を握っているのは、俺じゃなくて彼女だということ。
 藤沢は、動揺する俺の前でくすりと微笑む。

「で、次は私の番ってわけだ?」

 顔が赤くなった。何が起こってるのかすらわかってないというのに、彼女の小首を傾げて微笑む仕草に、現実世界と同じようにドキドキしちゃったりしてる。
 見えない。何にも、見えてこない。
 誰もいない学校廊下で、藤沢と俺しかいない世界で、俺は彼女の心が見えないままでいる。
 俺は喉を震わせ、やっと思いで口を動かす。

「…ここ、どこですか?」

 藤沢はあきれたように笑って、髪をかき上げる。

「あなたの方から来たんでしょ? ここ、私の心の中よ」

 キラキラと、彼女の髪になびいて星くずが飛び散る。
 いつもの学校廊下。でもよく見るとそこには汚れも埃もヒビもない、ピカピカの廊下だ。窓もキラキラ。空気まで澄んでいる。
 誰もいない世界で、藤沢と、彼女を取り巻く全てが輝いていた。

「藤沢さんも、俺と同じ力を…?」

 今の俺と互角以上に対話できるなんて、普通の人間には不可能だ。考えられるのは、彼女も俺と同じ能力者だってこと。
 なのに彼女は、嫌悪感をあらわに顔をしかめる。

「じょーだんじゃないわ。あなたたちと一緒にしないで」

 彼女が嫌な顔をすると、俺まで悲しくなる。馬鹿なこと言った自分を後悔したくなる。
 藤沢の心に惹き込まれている自分に気づく。他人の心の中では、圧倒的に優位なはずの俺が、完全にこの世界の美しさに魅了されている。

「私はノーマル。普通の女。ただ、あなたみたいに異常な力を持った人たちに、心の中までイジられたくないだけ」

 普通だって?
 ウソだろ。こんなの見たことない。
 この世界は、現実を完璧に反射している。ただの反射じゃない。ありのまま受け入れ、正しく美化し、跳ね返している。
 それが本当なら、彼女は現実よりも完璧な現実を心の中に築いていることになる。てかそんなの、菩薩の領域だろ。生身の人間がそんなことできんのか?
 この世界には“美”しかない。エゴもコンプレックスもトラウマもない。

「…そんなこと、できるはずない」
「できるわよ。あなただって私の中を覗いてるんだから、わかってるでしょ」
「わかるわけないって! なんだよ、これ? なんでこんなに……きれいなんだよ…」

 藤沢はまた眩しい笑顔を見せる。
 そしてスカートを摘んでほんの少し持ち上げ、俺に見せつけるように眩しい太ももを輝かせ、さらさらの髪を泳がせる。
 俺は息を呑む。彼女の美しさがさらに輝きを増す。心を奪われる。
 彼女が浮かべるのは、まさに最強美少女の微笑み。

「だって私、完璧だもん」

 目が潰れた。まぶしい光に溶けてしまいそうだった。
 主人公の必殺技に巻き込まれたザコ敵のように、俺はこの光であっさり塵になってしまうと思えた。

 そう。藤沢綾音はいつも完璧だった。

 勉強でもスポーツでもミスコンでも休み時間の教室でも、彼女が誰よりも一番で、誰よりも輝いていた。
 でも、心の中までそんなのアリか。
 どんな美人もイケメンも、心の中にはドロドロした欲望やコンプレックスの一つや二つあるもんだろ。現実どおりに完璧なんてあるはずない。むしろ薄汚れた都会の空気まで洗浄してしまうほど美しい心なんて、あるはずもない。
 逆にそれこそ、狂気の沙汰だ。

「なんで…」
「ん?」
「なんでそんなに、メンタル強いんですか…?」

 一分の隙もないとは、まさにこのこと。
 彼女の心は、まるで魔法の鏡だ。傷一つない鏡だ。
 だが、なんのためにここまで内面まで磨き上げる必要がある。
 サトラレでもない限り、普通はそこまでする気を配る必要もない。むしろ外見が完璧な藤沢綾音だからこそ、内面には自由な醜さがあってもいいはずだ。
 四六時中、心の中まで完璧なんて、そんなの普通の人間にできるはずがない。どんな聖人君子でも無理だ。そんな努力をしようなんてすら考えもしないはず。
 なのに、なんで?
 藤沢の表情が、少し曇る。

「…うちの母、知ってるんでしょ?」
「え?」
「生意気なコンビニの店員って、あなたのことでしょ? 同じモノを持ってる人がいるって、お母さん言ってた」

 吐き気をもよおして、膝をついた。
 思い出したくもない女の顔と、彼女の世界を思い出して、死にそうになった。

 布団ババア。

 俺が能力に目覚めるきっかけを作った女。最恐最悪のイカれた女。
 ていうか、親子だって? 藤沢と布団ババアが?
 その話がまた、あまりにも衝撃すぎて吐きそうだった。

「私の一番身近な人が、あなたと同じ異常者だったのよ。私は小さい頃から、24時間、母親に監視されていた。思いもかけないことで叱られるし、殴られるし、最悪。そしてあの人は決まって言うの。『お前の考えてることは全てわかってる』って。『心の中にもお前の逃げ場はない』って。私はどうやったらそんな化け物から自分を守れるか、ずっと考えてた」

 布団ババアは、自分の能力を隠したりしない。他人のコンプレックスや秘密を突いて恐れさせることを楽しんでいる。
 俺のバイト先の先輩もそうだった。ババアに何か言われたから様子が変になった。あれはきっと、先輩しか知らないはずの過去の傷をババアがえぐったに違いないんだ。
 確かにあのババアなら、自分んちの子どもだろうが、どこまでやるかわかったもんじゃない。

「完璧な人間になるしかなかったの。誰から見ても、心の中まで覗かれても完璧な人間に。あなたたちに弱みなんて絶対見せない。そのためなら私は何も欲しくない。嬉しくない。悲しくない。落ち込まない。あなたたちの勝手な期待も欲望も嫉妬も完璧に打ち返して完璧に生きて見せるわ。そして最後まで勝ち残って、藤沢綾音のまま死んでやる。誰があんな人の奴隷なんかになるもんですか」

 一瞬だけ、世界にノイズが走った。彼女の悲愴な決意と怒りが、一本のノイズになって走り抜ける。
 でも、それだけだ。彼女の完成された世界には傷一つ入らない。

「だから、私は完璧なの」

 彼女の微笑みは、相変わらず慈愛と美しさと可愛らしさに満ちている。
 圧倒的な強さと自信の上に、可憐に彼女は君臨している。

 パーフェクト・ワールド。

 壮絶な親子関係の中で、何年も重ねて作り上げた不可侵のメンタル強さ。藤沢綾音がいるだけで、ただの学校廊下が世界遺産並に神々しく輝く。それはもう、常人の域を超えた驚異の精神力で。
 ここまで壮絶な覚悟で、完璧に生きてきた人間に、俺なんかが勝てるわけない。
 例え勝ったとしても、彼女の背後には布団ババアがいる。この恐るべき親子に、俺みたいなポッと出の新人エロ能力者が太刀打ちできるわけない。
 敗北感と恐怖が俺の膝を震わせる。立ち上がれない。

「で、あなたは何? はるかとリナみたいに、私も簡単にモノにできると思ったの?」
「…お、俺は…いや…」
「いい気にならないで。その力があれば誰でも抱けるとでも思った? 誰でも自分の思いどおりになるって、本気でそう信じてた?」

 藤沢は、フンと鼻を鳴らして俺を見下す。

「最低だね、本当に。あなたなんかに興味もなかった女を操って、自分勝手な彼女ゴッコの相手させて楽しいの? それ、アニメやゲームで彼女作るのと、どこが違うの? まさかあなた、そんなので自分が神様にでもなったつもりだったの?」

 やめてくれ。もう言わないで。
 藤沢には何も反論できない。心を暴かれたのは俺の方だ。

「ただのキモオタ野郎が、犯罪者になっただけじゃない。あなたのやってることは犯罪よ。自分がモテないからって、女を卑怯な力でオモチャにしていいと思った? それで勝ったつもり? バカ? ヘンタイ? 気持ち悪すぎるよね?」

 言葉だけで俺をズタズタにしていく。
 これだけきつい言葉を使っても、彼女の美しさは何も変わらない。俺の醜さを、彼女は丁寧に跳ね返しているだけだから。
 悪いのは俺だ。俺が最低のクズ野郎だから。
 追い詰められていく。心がズタズタに引き裂かれていく。完璧な彼女の、完璧な罵りで。

「……死ねば?」

 俺は悲鳴を上げて、彼女の世界から逃げ出していた。

 ───現実の廊下に戻ってくる。

 目眩がして、膝をついた。
 藤沢も俺から離れ、怪訝そうに顔をしかめた。

「今、私の中に入った…? やっぱり、あなたもお母さんと同じなの? コンビニの店員って、あなたのこと?」

 怖くて藤沢の顔が見れない。
 俺は膝をついたまま、震える自分の体を抱えて、頷く。土下座しそうな勢いで、頷く。

「はるかとリナにも、何かしたのね?」

 しました。俺は彼女たちにひどいことをしました。
 現実の藤沢にも、俺は抵抗できずに正直に頷く。

「そう。やっぱり、そうなんだ」

 冷淡な声が、逆に怖かった。俺は縮こまって震えるばかり。
 でも周りの人目を気にしたのか、藤沢は語気を柔らかくして、俺に近づいてきた。

「…倉島君、大丈夫? 具合でも悪いの?」

 演技になんて見えない。いつもそうしているように、具合悪そうな同級生に声をかけているだけにしか見えない。周りにいる連中だってそうだろう。
 藤沢綾音は、そういう子なんだ。そういう風に出来ている。誰もがそういう子でいて欲しいと期待しているから。

「あなた、どこかおかしいのかな? うちのお母さん、その手のビョーキに詳しいから、教えておいてあげるね。あなたのしたこと全部」

 そして、俺の耳元には強烈な爆弾を落としていく。
 布団ババアに引きずり込まれたあの光景。ドロドロの悪臭と息苦しさ。
 ババアに勝てる気なんてしない。今度こそ俺はあの世界で殺されてしまう。

「ご愁傷さま、シデムシ君」

 最悪の慰めの言葉を残して、藤沢は去っていった。
 俺は廊下にしゃがみ込んだまま、周りの好奇とからかいの視線を集め、ガタガタと震えている。
 吐き気が込み上げる。対人恐怖症がまたぶり返してくる。
 怖い。怖いよ。俺を見ないで。

 耐えられなくなって、廊下にぶち撒けてしまった。
 その辺にいた同級生たちが、驚きの声と、爆笑と、冷たい視線を遠慮なくぶつけてきた。
 俺はそのまま動けない。ゲロ吐いて、ボロボロ泣いて、震えてた。

 消えてなくなりたいと、マジで思った。

< 続く >



 俺は勝ち組だ。
 人類を負け組と勝ち組に分けたなら、俺は間違いなく圧勝組に属する人間だ。今なら勝ち組にだって負ける気がしない。それぐらい俺のこのヘンテコな力はすごい。
 正直、すごすぎて俺の体が追いつかない。
 なんかさっきから今まで使ったことのない股の筋肉が悲鳴を上げてるし、股関節にも違和感が生じて歩き方がおかしくなってるぐらいだ。
 でもそれがどうした。俺が望んで得た結果じゃないか。
 俺は地球の全ての美女を抱く。この能力を使ってヤリまくってやる。
 モテモテでウッハウハの学園生活をジョイフルしてやるんだぜ!

 などと、がに股で廊下を闊歩していたら、またもや美少女発見。
 まったく、我が校の女子レベルやばいわ。WGK(我が校)48を結成できるくらいやばい。
 そしてそのメンバーの中で、間違いなくセンターポジションに収まるべき神女子、藤沢綾音がこっち見て微笑んでるなんて、本当にやばい。

 …やばい。

 廊下の壁にもたれて、俺を見つけてニッコリと微笑んでいるのは、確かにあの、藤沢綾音だった。
 ナンバーワン美少女、藤沢。
 その呼び名がなぜ彼女に相応しいのか、それを語り尽くすには1万行を要するだろう。
 でも1行でいうなら、彼女は見た目はもちろん、何をやらせてもナンバーワンだからだ。
 見ろ、あのサラッサラの髪。俺のと同じ素材で出来てるなんて信じられるか?
 顔小っさ。渡辺も小さいけど、藤沢の場合はさらにパーツの大きさや配置が完璧。
 いや渡辺だって相当美人だよ。でも藤沢は、その上を行く。しかも笑ったらすっげ可愛い。三森もピンチなくらいあどけなく可愛い。
 顔だけで、もうナンバー2と3の二人を凌駕しちゃってる。
 勉強だって、スポーツだって、オシャレなことだって、およそ学園生活で彼女が誰かに負けたことなんてない。知らないけど、たぶんない。
 そして、そのことを鼻にかけたり、他人を見下したりするようことを彼女は決してしない。
 人の悪口を言わず、他人の面倒を嫌がらず、でもクソ真面目ってわけでもなくて、クラスの奴らとバカ話で盛り上がったりするし、いいタイミングで面白いこと言ってみんなを笑わせるセンスもある。
 嫌味がなく、親しみやすく、でも他の女子とは明らかに違う、パーフェクト女子。
 そういう女がこの世にいる。てか、同じクラスにいる。
 俺の目の前に…いる。

「倉島くん、倉島くん」

 しかもあろうことか、この俺を手招きしますか。
 鈴の音のようなアニメ声で、まるで天使が小さな羽で羽ばたくかのように、ちょいちょいってその白い手で俺を招きますか!
 なんだよもう、うちの女子の間では廊下で待ち伏せするのが流行りなわけ? パワースポットなわけ?
 俺、明日から地蔵のように廊下に突っ立ってることにするわ。

「あ、あああ、ぼぼ、僕ですか?」

 できるだけ平静を装うとしても、これが限界だ。
 体中が発熱してる。ものすごい勢いで制服の中が蒸れていく。

「ごめん、ちょっといいかな?」
「は、ははい」

 まるで人生で初めて女子と喋ったかのように、俺は緊張していた。
 俺が脱オタ目指してクラスで浮いてた頃、流れで彼女とちょっとした会話くらいはしたことあるけど、いつもこんな感じだった。気圧されまくって、自分でも何を言ってるのかわからない状態だ。
 でも、今の俺はあの頃の俺とは違う。
 まず非童貞。
 男としてまるで別物。漢である。
 さらに、抱いた相手はあの渡辺と三森。
 いきなりの大物食いだ。並の童貞なら腹を壊して死んでいる。異能力持ちの俺だからこそ成し遂げられた偉業なのだ。
 この能力があれば、たとえ藤沢であろうと恐れることはない。
 どうせ近いうちに、藤沢も落とす予定だったんだ。堂々と、スマートに彼女に接近してやればいい。

「わ、わわわたくしのようなオオヒラタシデムシに何かご用でしょうか…?」
「アハハッ。相変わらずおかしなこと言うね、倉島くんって」

 くそぅ。何言ってんだ、俺。
 やっぱりダメだ。俺には藤沢と正面から向き合う男子力はない。もっとこう、卑怯な手で迫らないと。
 藤沢が笑うだけで、もう顔が真っ赤だ。言ってることも、めちゃくちゃだ。
 一体、俺なんかに彼女が何の用だっていうんだよ。

「あのさ…」

 藤沢が、俺に顔を近づけてきて、声を潜める。俺の心臓が5倍くらいに膨らむ。

「はるかと、リナのことなんだけど」

 そして膨らんだ心臓が破裂して肛門から出た。
 まずい。いきなり触れられたくない話題きた。
 歯がガタガタと鳴り、冷や汗がドバドバと溢れてきた。
 体温が冷えていく。目がチカチカとしてきた。耳鳴りがしてきた。
 呼吸が上手くできない。口の中がねばる。でも力が入らない。唾を飲むこともできない。心臓が不規則だ。苦しい。意識が遠のいていく。向こうに光が見える。引っ張られていく。そして何かを突き抜けた。近くで水の音がする。だんだん楽になっていく。だんだん楽になっていく。

「え、死ぬの?」
「いや死なないし!?」

 藤沢が、俺の顔をさらに近くまで覗き込んできて、そのショックで俺は目が覚めた。
 死ぬかと思った。美少女と喋ったら死ぬところだった。人の生き死にすら自在に操るとは、やはり美少女は恐ろしい。みんな、美少女のことは俺に任せて逃げるんだ!

「それで、やっぱり倉島くん、何か知ってるの?」
「え、何が?」
「だから、はるかとリナ。あの二人、今日はどっちも授業サボってるよね? それで私、気づいちゃったんだけど、なぜか倉島くんも同じ授業サボってない?」
「……」
「でさー、戻ってきたら、二人とも何か変なんだけど。というより、はるかとか、一昨日くらいからなんか落ち着かないし、リナだって、いきなりイメチェンしてきて、理由聞いても真っ赤になるだけで教えてくれないし」
「…………」
「まさかねー、とは思うんだけど…ひょっとして倉島くん絡み? ね、君ってあの二人と何かあるの?」

 ゴックンと喉を鳴らし、呼吸を整え、俺は努めて平静を取り繕う。

「しししりしり知りませんよ、ななな何何ももも」
「うん、さっきからドモりすぎてテクノっぽいよね。大丈夫?」
「ン、ンンッ、大丈夫。ほ、本当に何も関係ないよ、俺」
「ウッソだぁ。今、死にそうになったくせにー」
「で、でも死んでないもん。ウソついてない証拠だもん」
「いや、でもかなり三途の川だったし。ていうか、ここで命賭けられても困るんだけど」
「藤沢さん。男ってのはね、誰でも命を賭けて守らなきゃならない秘密のフォルダが自宅のPCにあるのさ」
「何それ? 矢沢?」
「永ちゃんがこんなこと言ったら濡れるわ」
「やっぱり何か隠してるんだ」
「そんなことないって」
「ウソついてもダメ。わかってんだよー」
「ないよー。藤沢さんに隠すようなことなんて、全然ないって」
「ホントに?」
「ホントホント」
「だったら見せてよ、家のパソコン」
「そっちかよ」
「あはは」

 気がつくと、普通にしゃべってた。この俺が学校一の美少女と、放課後の軽いトークを交わしてた。
 これは俺の成長というより、やはり藤沢の力だった。
 キョドる、ドモる、声もボソボソ、という喪男の教科書のような俺でも、ポンポンと話を繋げていく彼女の話術で、いつの間にか会話が弾んでる。
 てか、楽しい。藤沢さんとのおしゃべり楽しい。
 相変わらず直視するにはまぶしすぎる美少女だが、彼女の心地よい声と転がるような会話のテンポ、それにちょっとしたことでも笑ってくれるリアクションが嬉しくて、結構しゃべれてる。いつの間にかオオヒラタシデムシの生態について熱く語っちゃったりしてる。しかも、わりとウケてるんだ、なぜか。
 やっぱり彼女はすごい。
 藤沢は、例え相手が誰であろうと、偏見なしに当たり前にしゃべれるからすごいんだ。
 もしも渡辺や三森のことがなければ、俺はあっさり彼女に心酔してただろう。こんな美少女が、自分と普通にしゃべってくれるってだけで、俺みたいな男は簡単にやられてしまう。浄水器でも何でも買ってしまう。
 藤沢がナンバーワンである一番の理由。
 彼女は敵を作らない。誰であろうと、彼女は自分の味方にしてしまう。学校社会での立ち振る舞いまで、完璧なのだ。
 
「もー、なんか上手くごまかされた気がするなー」

 髪をかき上げる仕草にドキーッ。
 もう、この人は本当にすごい。惚れる。惚れるしか選択肢はない。

「ま、いいか。引き留めちゃってごめんね。私、部活行かなきゃ」

 小っちゃくバイバイして、藤沢は背中を向ける。
 なんだか寂しい。もっと彼女と話したかった。今度はぜひ槍形吸虫の話でも。
 でも、それよりもっと大事なこと忘れてた。
 これはチャンス。決定的チャンス。
 藤沢は俺に背中を向けている。
 廊下には他に人もいるが、気にすることはない。俺が彼女に何をしようと、それに気づく人間なんていないんだから。
 藤沢の中に潜れ。彼女を俺のものにして、ここから連れ出せ。
 そして…ナンバーワンの彼女を、誰より先に俺が抱くんだ!
 俺は彼女の背中に手を伸ばす。呼び止めるフリして、その細い肩に手をかける。
 

 ───そして、誰もいなくなった。

 あ、あれ? あれれ? どうなってんの?
 賑やかだった放課後の廊下から、人の声が消えた。気配すら消えた。
 藤沢はいる。あいかわらず俺の目の前で背中を向けて、いる。
 俺と藤沢だけ残して、あとの人間だけ消えてしまった。
 ここは…どこだ? 学校の廊下なのか?
 俺は藤沢の世界に潜ったはずだ。なのにここは……それともここが、そうなんだろうか?

 ゆっくりと、藤沢が肩に手を乗せたままの俺に振り返る。

「ふーん…。やっぱり、ウソだったんだ」

 震えた。
 藤沢の声の冷たさに、俺は震えた。
 彼女は俺を、それこそオオヒラタシデムシでも見るかのように冷たい目で見て、俺の手を払った。
 藤沢は藤沢のままだった。子供でも裸でもなく、制服のままの藤沢綾音だった。

「あなたも、そっち系の人なんだね。それではるかとリナのこと、モノにしちゃったわけ?」

 よくわからないまま、俺は頷いていた。
 わかってるのは、俺の能力がバレてるらしいってこと。
 そしてここで主導権を握っているのは、俺じゃなくて彼女だということ。
 藤沢は、動揺する俺の前でくすりと微笑む。

「で、次は私の番ってわけだ?」

 顔が赤くなった。何が起こってるのかすらわかってないというのに、彼女の小首を傾げて微笑む仕草に、現実世界と同じようにドキドキしちゃったりしてる。
 見えない。何にも、見えてこない。
 誰もいない学校廊下で、藤沢と俺しかいない世界で、俺は彼女の心が見えないままでいる。
 俺は喉を震わせ、やっと思いで口を動かす。

「…ここ、どこですか?」

 藤沢はあきれたように笑って、髪をかき上げる。

「あなたの方から来たんでしょ? ここ、私の心の中よ」

 キラキラと、彼女の髪になびいて星くずが飛び散る。
 いつもの学校廊下。でもよく見るとそこには汚れも埃もヒビもない、ピカピカの廊下だ。窓もキラキラ。空気まで澄んでいる。
 誰もいない世界で、藤沢と、彼女を取り巻く全てが輝いていた。

「藤沢さんも、俺と同じ力を…?」

 今の俺と互角以上に対話できるなんて、普通の人間には不可能だ。考えられるのは、彼女も俺と同じ能力者だってこと。
 なのに彼女は、嫌悪感をあらわに顔をしかめる。

「じょーだんじゃないわ。あなたたちと一緒にしないで」

 彼女が嫌な顔をすると、俺まで悲しくなる。馬鹿なこと言った自分を後悔したくなる。
 藤沢の心に惹き込まれている自分に気づく。他人の心の中では、圧倒的に優位なはずの俺が、完全にこの世界の美しさに魅了されている。

「私はノーマル。普通の女。ただ、あなたみたいに異常な力を持った人たちに、心の中までイジられたくないだけ」

 普通だって?
 ウソだろ。こんなの見たことない。
 この世界は、現実を完璧に反射している。ただの反射じゃない。ありのまま受け入れ、正しく美化し、跳ね返している。
 それが本当なら、彼女は現実よりも完璧な現実を心の中に築いていることになる。てかそんなの、菩薩の領域だろ。生身の人間がそんなことできんのか?
 この世界には“美”しかない。エゴもコンプレックスもトラウマもない。

「…そんなこと、できるはずない」
「できるわよ。あなただって私の中を覗いてるんだから、わかってるでしょ」
「わかるわけないって! なんだよ、これ? なんでこんなに……きれいなんだよ…」

 藤沢はまた眩しい笑顔を見せる。
 そしてスカートを摘んでほんの少し持ち上げ、俺に見せつけるように眩しい太ももを輝かせ、さらさらの髪を泳がせる。
 俺は息を呑む。彼女の美しさがさらに輝きを増す。心を奪われる。
 彼女が浮かべるのは、まさに最強美少女の微笑み。

「だって私、完璧だもん」

 目が潰れた。まぶしい光に溶けてしまいそうだった。
 主人公の必殺技に巻き込まれたザコ敵のように、俺はこの光であっさり塵になってしまうと思えた。

 そう。藤沢綾音はいつも完璧だった。

 勉強でもスポーツでもミスコンでも休み時間の教室でも、彼女が誰よりも一番で、誰よりも輝いていた。
 でも、心の中までそんなのアリか。
 どんな美人もイケメンも、心の中にはドロドロした欲望やコンプレックスの一つや二つあるもんだろ。現実どおりに完璧なんてあるはずない。むしろ薄汚れた都会の空気まで洗浄してしまうほど美しい心なんて、あるはずもない。
 逆にそれこそ、狂気の沙汰だ。

「なんで…」
「ん?」
「なんでそんなに、メンタル強いんですか…?」

 一分の隙もないとは、まさにこのこと。
 彼女の心は、まるで魔法の鏡だ。傷一つない鏡だ。
 だが、なんのためにここまで内面まで磨き上げる必要がある。
 サトラレでもない限り、普通はそこまでする気を配る必要もない。むしろ外見が完璧な藤沢綾音だからこそ、内面には自由な醜さがあってもいいはずだ。
 四六時中、心の中まで完璧なんて、そんなの普通の人間にできるはずがない。どんな聖人君子でも無理だ。そんな努力をしようなんてすら考えもしないはず。
 なのに、なんで?
 藤沢の表情が、少し曇る。

「…うちの母、知ってるんでしょ?」
「え?」
「生意気なコンビニの店員って、あなたのことでしょ? 同じモノを持ってる人がいるって、お母さん言ってた」

 吐き気をもよおして、膝をついた。
 思い出したくもない女の顔と、彼女の世界を思い出して、死にそうになった。

 布団ババア。

 俺が能力に目覚めるきっかけを作った女。最恐最悪のイカれた女。
 ていうか、親子だって? 藤沢と布団ババアが?
 その話がまた、あまりにも衝撃すぎて吐きそうだった。

「私の一番身近な人が、あなたと同じ異常者だったのよ。私は小さい頃から、24時間、母親に監視されていた。思いもかけないことで叱られるし、殴られるし、最悪。そしてあの人は決まって言うの。『お前の考えてることは全てわかってる』って。『心の中にもお前の逃げ場はない』って。私はどうやったらそんな化け物から自分を守れるか、ずっと考えてた」

 布団ババアは、自分の能力を隠したりしない。他人のコンプレックスや秘密を突いて恐れさせることを楽しんでいる。
 俺のバイト先の先輩もそうだった。ババアに何か言われたから様子が変になった。あれはきっと、先輩しか知らないはずの過去の傷をババアがえぐったに違いないんだ。
 確かにあのババアなら、自分んちの子どもだろうが、どこまでやるかわかったもんじゃない。

「完璧な人間になるしかなかったの。誰から見ても、心の中まで覗かれても完璧な人間に。あなたたちに弱みなんて絶対見せない。そのためなら私は何も欲しくない。嬉しくない。悲しくない。落ち込まない。あなたたちの勝手な期待も欲望も嫉妬も完璧に打ち返して完璧に生きて見せるわ。そして最後まで勝ち残って、藤沢綾音のまま死んでやる。誰があんな人の奴隷なんかになるもんですか」

 一瞬だけ、世界にノイズが走った。彼女の悲愴な決意と怒りが、一本のノイズになって走り抜ける。
 でも、それだけだ。彼女の完成された世界には傷一つ入らない。

「だから、私は完璧なの」

 彼女の微笑みは、相変わらず慈愛と美しさと可愛らしさに満ちている。
 圧倒的な強さと自信の上に、可憐に彼女は君臨している。

 パーフェクト・ワールド。

 壮絶な親子関係の中で、何年も重ねて作り上げた不可侵のメンタル強さ。藤沢綾音がいるだけで、ただの学校廊下が世界遺産並に神々しく輝く。それはもう、常人の域を超えた驚異の精神力で。
 ここまで壮絶な覚悟で、完璧に生きてきた人間に、俺なんかが勝てるわけない。
 例え勝ったとしても、彼女の背後には布団ババアがいる。この恐るべき親子に、俺みたいなポッと出の新人エロ能力者が太刀打ちできるわけない。
 敗北感と恐怖が俺の膝を震わせる。立ち上がれない。

「で、あなたは何? はるかとリナみたいに、私も簡単にモノにできると思ったの?」
「…お、俺は…いや…」
「いい気にならないで。その力があれば誰でも抱けるとでも思った? 誰でも自分の思いどおりになるって、本気でそう信じてた?」

 藤沢は、フンと鼻を鳴らして俺を見下す。

「最低だね、本当に。あなたなんかに興味もなかった女を操って、自分勝手な彼女ゴッコの相手させて楽しいの? それ、アニメやゲームで彼女作るのと、どこが違うの? まさかあなた、そんなので自分が神様にでもなったつもりだったの?」

 やめてくれ。もう言わないで。
 藤沢には何も反論できない。心を暴かれたのは俺の方だ。

「ただのキモオタ野郎が、犯罪者になっただけじゃない。あなたのやってることは犯罪よ。自分がモテないからって、女を卑怯な力でオモチャにしていいと思った? それで勝ったつもり? バカ? ヘンタイ? 気持ち悪すぎるよね?」

 言葉だけで俺をズタズタにしていく。
 これだけきつい言葉を使っても、彼女の美しさは何も変わらない。俺の醜さを、彼女は丁寧に跳ね返しているだけだから。
 悪いのは俺だ。俺が最低のクズ野郎だから。
 追い詰められていく。心がズタズタに引き裂かれていく。完璧な彼女の、完璧な罵りで。

「……死ねば?」

 俺は悲鳴を上げて、彼女の世界から逃げ出していた。

 ───現実の廊下に戻ってくる。

 目眩がして、膝をついた。
 藤沢も俺から離れ、怪訝そうに顔をしかめた。

「今、私の中に入った…? やっぱり、あなたもお母さんと同じなの? コンビニの店員って、あなたのこと?」

 怖くて藤沢の顔が見れない。
 俺は膝をついたまま、震える自分の体を抱えて、頷く。土下座しそうな勢いで、頷く。

「はるかとリナにも、何かしたのね?」

 しました。俺は彼女たちにひどいことをしました。
 現実の藤沢にも、俺は抵抗できずに正直に頷く。

「そう。やっぱり、そうなんだ」

 冷淡な声が、逆に怖かった。俺は縮こまって震えるばかり。
 でも周りの人目を気にしたのか、藤沢は語気を柔らかくして、俺に近づいてきた。

「…倉島君、大丈夫? 具合でも悪いの?」

 演技になんて見えない。いつもそうしているように、具合悪そうな同級生に声をかけているだけにしか見えない。周りにいる連中だってそうだろう。
 藤沢綾音は、そういう子なんだ。そういう風に出来ている。誰もがそういう子でいて欲しいと期待しているから。

「あなた、どこかおかしいのかな? うちのお母さん、その手のビョーキに詳しいから、教えておいてあげるね。あなたのしたこと全部」

 そして、俺の耳元には強烈な爆弾を落としていく。
 布団ババアに引きずり込まれたあの光景。ドロドロの悪臭と息苦しさ。
 ババアに勝てる気なんてしない。今度こそ俺はあの世界で殺されてしまう。

「ご愁傷さま、シデムシ君」

 最悪の慰めの言葉を残して、藤沢は去っていった。
 俺は廊下にしゃがみ込んだまま、周りの好奇とからかいの視線を集め、ガタガタと震えている。
 吐き気が込み上げる。対人恐怖症がまたぶり返してくる。
 怖い。怖いよ。俺を見ないで。

 耐えられなくなって、廊下にぶち撒けてしまった。
 その辺にいた同級生たちが、驚きの声と、爆笑と、冷たい視線を遠慮なくぶつけてきた。
 俺はそのまま動けない。ゲロ吐いて、ボロボロ泣いて、震えてた。

 消えてなくなりたいと、マジで思った。

< 続く >



 そんなわけで俺は、三森の目と、腕を後ろに回してトイレットペーパーでぐるぐる巻きにしてみた。

「ご、ご主人様…これは、なんだか…」

 またスパンキングのような痛い系や、オナニーなんかの羞恥系のおしおきを想像していた三森は、目をふさがれ、動きもふさがれ、不安そうな声を出す。
 怖いだろ?
 ふふっ、作戦どおり。
 何度も三森の中に潜って、俺も彼女という人間がいろいろわかってきた。
 彼女は、自分の中でしかSMを楽しんだことがない。あくまで自分主体。だから自由も視界も奪われて、何をされるのかも分からないこの状況を、想像したことないのだ。
 彼女にとって未知のプレイ。だが、絶対に三森はこれにハマる。自信がある。
 無力で不自由な三森は、イジワルでエッチなご主人様の俺に頼るしかなく、何もかも投げ出して俺にすがるしかないのだ。
 これこそ、彼女が自分自身すら知らない心の奥底で、真に望んでいたSMプレイ。全てをご主人様に委ね、イジメられ、そして守られるプレイだ。

「怖いだろ、リナ?」
「は、はい…怖いです、ご主人様ぁ…」

 俺は黙って三森のスカートのフックを外す。そして、下着も足首まで下げる。
 小さく悲鳴を上げて、三森が体を縮こませる。
 色も量も薄い陰毛。エロエロな体のくせに、可愛い色したアソコに俺は喉を鳴らす。三森は為す術なく、身をよじるだけ。

「いい格好だな」
「あぅ、あの、ご主人様…リナ、本当に怖いです…ご主人様のお顔が見れないと、不安で…」
「これでいいんだよ。俺がお前を見ててやる。お前のその生意気な体を、余すことなく俺が視姦してやる」
「そ、そんな…ご主人様…」

 スカートを下ろして、はだけたワイシャツだけになった三森が、恥ずかしそうに体をくねらせる。
 相変わらず、なんて美味そうな体をしてやがるんだ奴隷の分際で。
 その大きく丸い胸も、くびれたウエストも、つるつるした形の良い尻も、なんだよそれ。ブラジルでサンバを踊れるレベルじゃないか。ヨーロッパのマンガフェスでコスプレできるレベルじゃないか。
 こうやって見ると、やっぱりすごいな三森の体は。世界と戦える女子校生だぜ。

「はぁ、はぁ……ご主人様…リナ、本当に怖くて…」
「心配すんな。ここにいるのは俺だけだ、お前は俺の命令に従っていればいい」
「は、はい…ご主人様だけ…ご主人様だけ…」
「そうだ。お前のその恥ずかしくてみっともない姿を見ているのは、俺だけだぞ」
「あぅ…リナ、恥ずかしい格好してます…裸で、トイレットペーパーで目隠しされて…ご主人様に、こんなみっともない格好見られて、リナすっごく恥ずかしいです…」
「俺の視線を感じるか? お前の全身をくまなく見てるぞ。前からだけじゃなく、後ろからも。右も左も上も下も、全て俺の視線がお前を捕らえている。俺の視線の檻の中に、お前は閉じこめられているんだ」
「あ、あぁ…ご主人様がリナの裸を見てる…あちこちから見られて、リナ、隠れられない…恥ずかしい、恥ずかしいよぉ…」

 そして三森のエロ想像力は、推定でも俺の約50人分はある。さらに視界と自由を奪うことによって、彼女の想像力はより敏感になるだろう。
 あとは言葉で責めてやるだけでいい。エロい三森はビンビンに反応してくる。

「リナ、お前のその体は誰のためにある?」
「ご、ご主人様のためです」
「だったら、恥ずかしくても俺の前ではいつでも裸を晒せ。隠そうとするな。生意気だぞ」
「はいっ。ごめんなさい、ご主人様。リナ、生意気な奴隷で…」
「あぁ、生意気な体だ。視線だけで感じるなんて、生意気でエロい体だ。お前は本当に変態だな」
「んっ、あぁっ、すっ、すみません、ご主人様! リナ、リナ、ご主人様の視線だけで感じる変態ですみません! すみません!」

 ビクン、ビクンと、俺の声がするたびに、三森は震える。こいつのエロ想像力の中で、今、俺の視線がバックベアードと化して襲いかかってるに違いない。
 怯えていた顔色も、どんどん朱を増していく。

「すみずみまで、よく見えるぞ。お前のでかい胸が汗をかいてる。股が濡れてる。マンコから汁を垂らしてるな」
「あっ、あっ、言わないで、くださいっ」
「スケベな体だな、まったく。男に見られただけで濡れるのか?」
「ち、違います! ご主人様だからです。ご主人様に見られてるから、リナは、感じてしまうんです!」
「そうだ。お前の体は俺のものだ。俺の前でだけ脱いで、俺の視線でだけ感じろ。他の男にその体を見せたら承知しないぞ」
「はいっ! リナは、ご主人様にしか肌を見せません! 他の男なんかで、絶対に感じません!」
「そのでかい胸も、尻も、俺のものだな?」
「あん、もちろんです! ご主人様のモノです! リナの体は、はぁ、すみずみまで、ご主人様のモノです!」
「心もだ。お前の心も体も、俺のものだ。俺のものじゃない場所なんて、お前には1つもないぞ」
「はい! あの、ありがとうございます! リナは、ご主人様のものです! んくっ、全部、ご主人様の奴隷ですぅ!」

 壁に体を預けて、リナは叫ぶ。
 肌は汗に濡れ、口からはよだれが零れ、乳首をピンと立たせて、俺の言葉一つで体を痙攣させて歓喜に震える。
 エロい。エロすぎる。なんだこの女子。ホントに同い年?

「リナ、イキそうか?」
「イキそうです! あぁ、リナ、ご主人様の視線だけでイッちゃいそうです! イっていいですか…? リナ、もうイっていいですか、ご主人様ぁ!」
「ダメだ。俺がいいと言うまでイクな」
「あぁ…そんな…はい、ご主人様…」
「こっちへ来い。足を開いて立て」
「んっ、は、はい…こ、こうですか?」

 一歩前に出て、足を開く。
 ひくついたアソコの、濡れて光るピンク色。
 ちなみに俺は、とっくにチンポ出してる。クールなご主人様を気取りながら、擦ってる。
 でもまだ入れてやんない。俺と三森の我慢比べなのだ。

「リナ、お前のエロマンコがよく見えるぞ」
「はぁ、はぁ、ご主人様…」
「ヒクヒクして、エロい汁をタラタラこぼしてる。触って欲しいか?」
「はいッ…はい、触って欲しいです。リナのエロマンコは、ご主人様に触れて欲しくて、ヒクヒクしてます…」
「自分でわかるか。お前のマンコがヒクついてるのが」
「わかり、ます…エッチなお汁、止まんなくて…我慢、できないんです! お願いです、ご主人様! エッチな奴隷のリナに、お情けください! ご主人様の手で、リナに触れて、イかせてください!」
「ダメだ。我慢しろ」
「そ、んな…ッ。リナ、苦しいです、ご主人様…っ、体中、ぞくぞくして、すごく……すごく、感じてるんです、ご主人様! 助けてください! アァ! あァ!」

 ビク、ビクと三森の体が跳ねる。
 見ているだけでアソコはビショビショで、真っ赤に火照っている。もう何度も犯されたみたいに。

「じゃ、想像することを許してやるよ」
「え…え?」
「俺に犯される自分を想像しろ。お前のマンコも、口も、ケツも、いっぺんに俺が犯してやる。ただし、お前の想像の中でだ。好きなだけ想像しろ。俺に犯されることを」
「ご主人様が…私を…犯すところ…」

 バカ正直に三森は想像は膨らませていく。
 半開きになった口は舌を彷徨わせ、俺の形をなぞる。足をわずかに広げて、赤みがかった肉を震わせる。

「もっと足を広げろ。そんなんじゃ入らないだろ」
「す、すみません! 今、すぐ…ッ」

 がに股に足を広げて、腰を落とし、俺にアソコを突き出すように命じる。
 三森の頬が、ますます羞恥に染まっていく。

「ほら、入っていくのがわかるか? お前のマンコと口とケツに、俺のが入ってくるだろ?」
「はい…はい、ご主人様のが、私にいっぱい…入ってきますぅ!」

 ビク、ビクと、まるで本当に挿入されたように体を痙攣させる。敏感な三森の体は、想像力だけでどんどんと高まっていく。

「入れてやったんだから、お前が腰を振れ。ちゃんと俺を満足させるように振りまくれ」
「はいッ、振ります! こ、こうですか、ご主人様!」

 足を広げたまま、三森は腰を前後に揺する。目と手をトイレットペーパーでぐるぐる巻きにされた拘束少女の一人運動。ひどく間抜けで、だがとても扇情的な光景だ。

「俺に入れられてるのがわかるか? お前の中に、今、俺のが入ってるんだぞ」
「はいっ…はい、入ってます! ご主人様の太くてかっこいいオチンチン、今、リナの中に入ってます!」
「マンコにだけか?」
「いいえッ! お尻にも、入ってます! お口の中にも、いっぱい、ご主人様のオチンチン、入ってますぅ!」

 舌を伸ばし、ヨダレをこぼし、だらしない顔で三森は腰を振り続ける。俺もどんどん興奮して、しごく右手に力が入る。

「くっ…リナ、お前は今、俺に犯されてるぞッ。マンコもケツも口も、俺のチンポでめちゃくちゃにしてやるッ。そのでけぇおっぱいも、ぐにゃんぐにゃんに揉みこんで吸ってやる!」
「はいッ! ありがとうございます、ご主人様ぁ! 今日も、今日もおバカな奴隷のリナをめちゃくちゃにしてくださって、ありがとうございます! リナは、とってもドMでヘンタイな女だから、ご主人様に恥ずかしいところをお見せして、犯されて、嬉しくって涙が出ます! こんな奴隷にお情けをくださって、本当にありがとうございますぅ!」

 ガクガクと俺の目の前で振れる腰から、彼女の愛液が飛び散って床を濡らす。あどけない童顔が快楽に蕩けきって、しみ出す涙が顔のトイレットペーパーを溶かし、頬に張り付いている。
 でも彼女の目は、きつく閉ざされている。舌は俺のを求めて彷徨っている。
 俺が命令したからだ。三森は俺の命令を絶対に守っているんだ。
 大きな胸が、たぷんたぷんと揺れる。乳首は、紅潮していく白い肌に消えてしまいそうなくらい淡い色のくせに、ピンと張って生意気な自己主張してる。
 くびれた腰が激しく動いて波を打つ。薄い色の陰毛が濡れてキラキラしてる。みっともなく舌を動かして、足を広げ、俺を求めてアソコを濡らしてる。

 昨日までは、同じクラスにいても俺とはまったく接点のない、リア充組のクラスメートだった。
 目立つ容姿してるくせに性格は大人しくて、ぽわぽわしてて、いつも笑ってて、女子の間で可愛がられてる子だった。
 あの子には彼氏なんていないといいなー、とか、いつもぼっちの俺のこと、優しそうなあの子は秘かに気にかけてくれてるといいなぁ、なんて勝手な期待したりしてた。
 そんで、俺に優しく声をかけてきたところを、上手く騙しておっぱいモミモミとか、ホントしょうもないこと想像して、時々おかずになってもらったりしてた。
 でも、当然そんなの俺の一方的な思いこみでしかなくて、向こうは俺のことなんて全然眼中にないこと知ってた。
 学校卒業したら、俺なんて同窓会も呼ばれないし、会うこともなくなるし。彼女はいつの間にか結婚しちゃって、どっかで幸せな家庭を築き、俺はそんなことも知らずに、今日も明日も卒アル開いてオナニーとか、そんな感じなんだろうなあって思ってた。

 今、俺の目の前で裸になって、トイレットペーパーでグルグルにされて、マンコ汁飛ばしながら腰振ってる、この女のことだ。
 もう彼女はただのクラスメートなんかじゃない。
 俺だけの奴隷、三森リナなんだ。

「リナっ!」
「きゃあッ!?」

 我慢できなくなって俺は三森の体に激しく抱きつく。
 三森の後頭部が後ろの壁に当たってゴィンといい音をさせるが、俺は構わず三森の体を持ち上げ、一気に挿入する。

「あぁぁあぁあーッ!?」

 俺の腕の中で、三森の豊満な体がガクンガクンと痙攣する。その痙攣が膣を通じてギュウギュウと伝わってきて、もうそれだけでイキそうなくらいに気持ちいい。温かくて、柔らかくて、三森のマンコは、本当に気持ちいい。
 俺はこの体を乱暴に貪りたい。めちゃくちゃにしてやりたい。
 
「あぁッ! あぁーッ!」

 両手を縛ったままの三森を、ガンガン突き上げる。背の低い彼女を壁に押しつけ、太ももを持ち上げ、下から押し上げるように腰を叩きつける。
 柔らかい。俺の体に吸い付くような彼女の肌は、最高だ。

「あぁぁッ、あ、ありがとうございます! ありがとうございますぅッ!」

 大きな瞳を見開き、イキっぱなしの顔で三森が喘ぐ。
 俺はその髪を鷲づかみにし、白い喉を晒させ、そこに舌と歯を這わせ、噛みついて、舌でべろべろに舐める。三森の肌は、熱く、しょっぱく、美味い。

「ひあぁぁぁッ! ご主人様、ありがとうございます! あ、ありがとう、ございますぅ!」

 俺の奴隷。俺の女。
 このいやらしくて、抱き心地最高の体を好きにしていいのは、俺だけだ。

「リナ、お前は誰の女だ! 言ってみろ!」
「はいッ! 三森リナは、倉島修吾様の女です! あぁッ! あなただけのものです!」
「俺のドスケベ奴隷は誰だ! 言え!」
「リナです! ご主人様の、ドスケベで、エロエロの淫乱奴隷は、リナです! いつでも、あっ、リナは、ご主人様のオチンチンのこと、ばっかり考えて、はぐっ、イジメて、泣かせて欲しくて、アソコを、24時間濡らして待ってる奴隷女です! あぁ、ドスケベで、ごめんなさい! 肉便器で、ごめんなさい! あぁッ、愛してます! 肉便器は、ご主人様のことが、大好きですぅ! あぁー! あぁーッ!」

 俺、ケダモノみたいだ。
 もう腰が止まんない。鼻息を荒げて、乱暴に三森を突き上げ、犯している。
 そして三森は、まるで俺に捕食された小動物のように、されるがままだ。
 彼女は大声を張り上げて、何回も達している。
 それでも俺は彼女に容赦しない。犯しながら何度も俺の奴隷であることを宣言させ、乱暴なやり方で犯す俺に、感謝の言葉を言わせている。
 三森は俺の命令に忠実に応える。俺はそんな彼女を貪り続ける。

「あっ、あっ…ありがとう、ございます…あっ、あり…ございま、しゅ、うっ、んっ、あっ、あっ…あっ…」

 もう彼女の意識は半分飛んじゃってる。
 蒼い瞳はひっくり返って、半開きの口元には泡をつけて、壊れた人形みたいに同じ言葉を繰り返し、俺のセックスを受け入れるだけだ。
 でも、それがいい。どんなになっても俺を受け入れる三森が愛しい。可愛い。このまま本当に壊してやりたいとすら思える。
 俺の奴隷なんだ。俺の好きにいいんだ。
 何度も何度も俺は彼女に突き入れ、そしてギリギリまで昇ってきた性欲を解放する。

「リナ!」
「きゃあッ!?」

 いきなり俺が手を離したから、三森の中から俺のは抜け出て、三森は個室の床にビタンと尻もちをつき、またもゴィンと壁に後頭部をぶつけた。
 それには構わず、俺は彼女の顔に精液のたぎりをぶつける。精液を一滴漏らさず、その妖精顔をしかめる三森にチンポを擦りつけて、腰の下を突き抜けていく快感に身を委ねる。

「あぁ…最高だ」

 超満足だ。俺は一匹のオスになって女を喰らった。夢中になってセックスした。
 渡辺の優しさに包まれるエッチもいいが、ケダモノのように犯す三森とのエッチも最高だ。

「うぅー…」

 しかし、三森はなんか違ったようだ。
 精液だらけの顔をうつむけ、ボロボロと涙をこぼし始めた。

「あれ、なに? どうした?」

 うずくまって三森は呻く。
 そういや、さっきすげぇ音した。
 三森の両手はまだ後ろに縛られたままだ。

「ご、ごめんごめん! すっかり夢中になっちゃって!」

 両手のトイレットペーパーを千切り、三森の頭を撫でる。そして新しいペーパーで、精液だらけのひっでぇ顔も拭いてあげる。

「痛いか? 本当ごめん。手ェ離すことないよなー。俺ってホント、鬼畜でごめんな? 尻とか大丈夫?」
「うー…だ、大丈夫ですぅ」

 ぐしぐしと涙を拭う三森を手伝って、俺は次々にペーパー千切って顔を拭いたり、頭を撫でたり、アソコもついでに拭いてあげたりと、大急ぎで彼女を慰めた。
 ったく、誰だよ、三森にこんなに精液ぶっかけたヤツは!

「…もう大丈夫です。ちょっと、びっくりしちゃっただけです。ごめんなさい」

 そう言って、健気にも三森は涙に濡れた瞳で笑顔を浮かべた。

「リナ、すっごく気持ち良かったです…。抱いてくださってありがとうございました、ご主人様」

 あどけない三森の笑顔は、いつ見ても俺を癒してくれる。
 有り難いやら、暖かいやら、なんだか不思議な気持ちになる。
 これがホントの三森の魅力。
 どんだけエロいことをしでかしても、最後のこの笑顔で、ほっこりしてしまうんだ。

「…俺も、すっげぇ気持ち良かった。その…リナは、最高だな」

 ご主人様らしからぬ俺の言葉に、三森の青い瞳は真ん丸になって、そしてなぜかまた泣き出してしまった。
 俺はそんな三森の頭を、グリグリと撫でてやる。

 ───小さな三森は、花を摘んでいた。

 頭ナデナデのついでに潜ってみた三森の世界では、小さな三森が、丘の上で俺のお屋敷を建設中だった。

「ふんふ~ん♪ ふふんふふ~ん♪」

 ご機嫌だった。
 満開に咲き乱れる三森のハッピー花が、彼女の手で編み上げられ、広く、花畑の中で盛り上げられていた。
 おそらく俺の命じたお屋敷の、これは基礎となる部分だろう。
 しかも、ちょうどここは、彼女のトラウマだった真っ赤な洋館が建っていたあたり。
 あの館よりは小さく、でも俺んちなんかよりはよっぽど広く、三森の花が、足首くらいの高さまで積み上げられている。
 摘んで、編んで、積み上げて。コツコツと俺のお屋敷を作る三森は、この果てしない作業を、楽しんでやっているように見えた。俺が頭にのっけてやった花かんむりだって、彼女の気分を反映するのか、花弁を大きくしてた。
 作業だって、むしろ思ったよりも早く進んでいる。
 5年か、下手をすれば10年はかかると思われた課題なのに、これでは1年と経たずに俺様専用の大豪邸が三森の中に完成するだろう。
 まったく、イジワルな宿題考えるほうの身にもなってくれよ。
 丸いお尻をこっちに向けて、無邪気に花を摘む三森に、俺は苦笑する。
 でも、きっと壮観だろうな。
 不気味だった赤い洋館も消えたこのお花畑に、お花で出来たお屋敷が建つ。
 俺たちの秘密の主従関係が、三森の中で小さなお屋敷となって、風薫るこの丘で花と一緒に咲くんだ。
 それはきっと、素敵な光景に違いない。
 
「あっ」

 俺に気づいた三森が、「にぱー」と満面に笑顔を浮かべて手を振った。そして、自分の立っている花の土台をブンブンと指さして、両手をいっぱいに広げて叫んだ。

「ご主人さまーっ! 1本目の門柱の太さは、このくらいで足りますか~?」
「サグラダ・ファミリアかよッ!」

 晴天のお花畑に、俺の絶叫ツッコミがどこまでもこだました。



 俺は勝ち組だ。
 人類を負け組と勝ち組に分けたなら、俺は間違いなく圧勝組に属する人間だ。今なら勝ち組にだって負ける気がしない。それぐらい俺のこのヘンテコな力はすごい。
 正直、すごすぎて俺の体が追いつかない。
 なんかさっきから今まで使ったことのない股の筋肉が悲鳴を上げてるし、股関節にも違和感が生じて歩き方がおかしくなってるぐらいだ。
 でもそれがどうした。俺が望んで得た結果じゃないか。
 俺は地球の全ての美女を抱く。この能力を使ってヤリまくってやる。
 モテモテでウッハウハの学園生活をジョイフルしてやるんだぜ!

 などと、がに股で廊下を闊歩していたら、またもや美少女発見。
 まったく、我が校の女子レベルやばいわ。WGK(我が校)48を結成できるくらいやばい。
 そしてそのメンバーの中で、間違いなくセンターポジションに収まるべき神女子、藤沢綾音がこっち見て微笑んでるなんて、本当にやばい。

 …やばい。

 廊下の壁にもたれて、俺を見つけてニッコリと微笑んでいるのは、確かにあの、藤沢綾音だった。
 ナンバーワン美少女、藤沢。
 その呼び名がなぜ彼女に相応しいのか、それを語り尽くすには1万行を要するだろう。
 でも1行でいうなら、彼女は見た目はもちろん、何をやらせてもナンバーワンだからだ。
 見ろ、あのサラッサラの髪。俺のと同じ素材で出来てるなんて信じられるか?
 顔小っさ。渡辺も小さいけど、藤沢の場合はさらにパーツの大きさや配置が完璧。
 いや渡辺だって相当美人だよ。でも藤沢は、その上を行く。しかも笑ったらすっげ可愛い。三森もピンチなくらいあどけなく可愛い。
 顔だけで、もうナンバー2と3の二人を凌駕しちゃってる。
 勉強だって、スポーツだって、オシャレなことだって、およそ学園生活で彼女が誰かに負けたことなんてない。知らないけど、たぶんない。
 そして、そのことを鼻にかけたり、他人を見下したりするようことを彼女は決してしない。
 人の悪口を言わず、他人の面倒を嫌がらず、でもクソ真面目ってわけでもなくて、クラスの奴らとバカ話で盛り上がったりするし、いいタイミングで面白いこと言ってみんなを笑わせるセンスもある。
 嫌味がなく、親しみやすく、でも他の女子とは明らかに違う、パーフェクト女子。
 そういう女がこの世にいる。てか、同じクラスにいる。
 俺の目の前に…いる。

「倉島くん、倉島くん」

 しかもあろうことか、この俺を手招きしますか。
 鈴の音のようなアニメ声で、まるで天使が小さな羽で羽ばたくかのように、ちょいちょいってその白い手で俺を招きますか!
 なんだよもう、うちの女子の間では廊下で待ち伏せするのが流行りなわけ? パワースポットなわけ?
 俺、明日から地蔵のように廊下に突っ立ってることにするわ。

「あ、あああ、ぼぼ、僕ですか?」

 できるだけ平静を装うとしても、これが限界だ。
 体中が発熱してる。ものすごい勢いで制服の中が蒸れていく。

「ごめん、ちょっといいかな?」
「は、ははい」

 まるで人生で初めて女子と喋ったかのように、俺は緊張していた。
 俺が脱オタ目指してクラスで浮いてた頃、流れで彼女とちょっとした会話くらいはしたことあるけど、いつもこんな感じだった。気圧されまくって、自分でも何を言ってるのかわからない状態だ。
 でも、今の俺はあの頃の俺とは違う。
 まず非童貞。
 男としてまるで別物。漢である。
 さらに、抱いた相手はあの渡辺と三森。
 いきなりの大物食いだ。並の童貞なら腹を壊して死んでいる。異能力持ちの俺だからこそ成し遂げられた偉業なのだ。
 この能力があれば、たとえ藤沢であろうと恐れることはない。
 どうせ近いうちに、藤沢も落とす予定だったんだ。堂々と、スマートに彼女に接近してやればいい。

「わ、わわわたくしのようなオオヒラタシデムシに何かご用でしょうか…?」
「アハハッ。相変わらずおかしなこと言うね、倉島くんって」

 くそぅ。何言ってんだ、俺。
 やっぱりダメだ。俺には藤沢と正面から向き合う男子力はない。もっとこう、卑怯な手で迫らないと。
 藤沢が笑うだけで、もう顔が真っ赤だ。言ってることも、めちゃくちゃだ。
 一体、俺なんかに彼女が何の用だっていうんだよ。

「あのさ…」

 藤沢が、俺に顔を近づけてきて、声を潜める。俺の心臓が5倍くらいに膨らむ。

「はるかと、リナのことなんだけど」

 そして膨らんだ心臓が破裂して肛門から出た。
 まずい。いきなり触れられたくない話題きた。
 歯がガタガタと鳴り、冷や汗がドバドバと溢れてきた。
 体温が冷えていく。目がチカチカとしてきた。耳鳴りがしてきた。
 呼吸が上手くできない。口の中がねばる。でも力が入らない。唾を飲むこともできない。心臓が不規則だ。苦しい。意識が遠のいていく。向こうに光が見える。引っ張られていく。そして何かを突き抜けた。近くで水の音がする。だんだん楽になっていく。だんだん楽になっていく。

「え、死ぬの?」
「いや死なないし!?」

 藤沢が、俺の顔をさらに近くまで覗き込んできて、そのショックで俺は目が覚めた。
 死ぬかと思った。美少女と喋ったら死ぬところだった。人の生き死にすら自在に操るとは、やはり美少女は恐ろしい。みんな、美少女のことは俺に任せて逃げるんだ!

「それで、やっぱり倉島くん、何か知ってるの?」
「え、何が?」
「だから、はるかとリナ。あの二人、今日はどっちも授業サボってるよね? それで私、気づいちゃったんだけど、なぜか倉島くんも同じ授業サボってない?」
「……」
「でさー、戻ってきたら、二人とも何か変なんだけど。というより、はるかとか、一昨日くらいからなんか落ち着かないし、リナだって、いきなりイメチェンしてきて、理由聞いても真っ赤になるだけで教えてくれないし」
「…………」
「まさかねー、とは思うんだけど…ひょっとして倉島くん絡み? ね、君ってあの二人と何かあるの?」

 ゴックンと喉を鳴らし、呼吸を整え、俺は努めて平静を取り繕う。

「しししりしり知りませんよ、ななな何何ももも」
「うん、さっきからドモりすぎてテクノっぽいよね。大丈夫?」
「ン、ンンッ、大丈夫。ほ、本当に何も関係ないよ、俺」
「ウッソだぁ。今、死にそうになったくせにー」
「で、でも死んでないもん。ウソついてない証拠だもん」
「いや、でもかなり三途の川だったし。ていうか、ここで命賭けられても困るんだけど」
「藤沢さん。男ってのはね、誰でも命を賭けて守らなきゃならない秘密のフォルダが自宅のPCにあるのさ」
「何それ? 矢沢?」
「永ちゃんがこんなこと言ったら濡れるわ」
「やっぱり何か隠してるんだ」
「そんなことないって」
「ウソついてもダメ。わかってんだよー」
「ないよー。藤沢さんに隠すようなことなんて、全然ないって」
「ホントに?」
「ホントホント」
「だったら見せてよ、家のパソコン」
「そっちかよ」
「あはは」

 気がつくと、普通にしゃべってた。この俺が学校一の美少女と、放課後の軽いトークを交わしてた。
 これは俺の成長というより、やはり藤沢の力だった。
 キョドる、ドモる、声もボソボソ、という喪男の教科書のような俺でも、ポンポンと話を繋げていく彼女の話術で、いつの間にか会話が弾んでる。
 てか、楽しい。藤沢さんとのおしゃべり楽しい。
 相変わらず直視するにはまぶしすぎる美少女だが、彼女の心地よい声と転がるような会話のテンポ、それにちょっとしたことでも笑ってくれるリアクションが嬉しくて、結構しゃべれてる。いつの間にかオオヒラタシデムシの生態について熱く語っちゃったりしてる。しかも、わりとウケてるんだ、なぜか。
 やっぱり彼女はすごい。
 藤沢は、例え相手が誰であろうと、偏見なしに当たり前にしゃべれるからすごいんだ。
 もしも渡辺や三森のことがなければ、俺はあっさり彼女に心酔してただろう。こんな美少女が、自分と普通にしゃべってくれるってだけで、俺みたいな男は簡単にやられてしまう。浄水器でも何でも買ってしまう。
 藤沢がナンバーワンである一番の理由。
 彼女は敵を作らない。誰であろうと、彼女は自分の味方にしてしまう。学校社会での立ち振る舞いまで、完璧なのだ。
 
「もー、なんか上手くごまかされた気がするなー」

 髪をかき上げる仕草にドキーッ。
 もう、この人は本当にすごい。惚れる。惚れるしか選択肢はない。

「ま、いいか。引き留めちゃってごめんね。私、部活行かなきゃ」

 小っちゃくバイバイして、藤沢は背中を向ける。
 なんだか寂しい。もっと彼女と話したかった。今度はぜひ槍形吸虫の話でも。
 でも、それよりもっと大事なこと忘れてた。
 これはチャンス。決定的チャンス。
 藤沢は俺に背中を向けている。
 廊下には他に人もいるが、気にすることはない。俺が彼女に何をしようと、それに気づく人間なんていないんだから。
 藤沢の中に潜れ。彼女を俺のものにして、ここから連れ出せ。
 そして…ナンバーワンの彼女を、誰より先に俺が抱くんだ!
 俺は彼女の背中に手を伸ばす。呼び止めるフリして、その細い肩に手をかける。
 

 ───そして、誰もいなくなった。

 あ、あれ? あれれ? どうなってんの?
 賑やかだった放課後の廊下から、人の声が消えた。気配すら消えた。
 藤沢はいる。あいかわらず俺の目の前で背中を向けて、いる。
 俺と藤沢だけ残して、あとの人間だけ消えてしまった。
 ここは…どこだ? 学校の廊下なのか?
 俺は藤沢の世界に潜ったはずだ。なのにここは……それともここが、そうなんだろうか?

 ゆっくりと、藤沢が肩に手を乗せたままの俺に振り返る。

「ふーん…。やっぱり、ウソだったんだ」

 震えた。
 藤沢の声の冷たさに、俺は震えた。
 彼女は俺を、それこそオオヒラタシデムシでも見るかのように冷たい目で見て、俺の手を払った。
 藤沢は藤沢のままだった。子供でも裸でもなく、制服のままの藤沢綾音だった。

「あなたも、そっち系の人なんだね。それではるかとリナのこと、モノにしちゃったわけ?」

 よくわからないまま、俺は頷いていた。
 わかってるのは、俺の能力がバレてるらしいってこと。
 そしてここで主導権を握っているのは、俺じゃなくて彼女だということ。
 藤沢は、動揺する俺の前でくすりと微笑む。

「で、次は私の番ってわけだ?」

 顔が赤くなった。何が起こってるのかすらわかってないというのに、彼女の小首を傾げて微笑む仕草に、現実世界と同じようにドキドキしちゃったりしてる。
 見えない。何にも、見えてこない。
 誰もいない学校廊下で、藤沢と俺しかいない世界で、俺は彼女の心が見えないままでいる。
 俺は喉を震わせ、やっと思いで口を動かす。

「…ここ、どこですか?」

 藤沢はあきれたように笑って、髪をかき上げる。

「あなたの方から来たんでしょ? ここ、私の心の中よ」

 キラキラと、彼女の髪になびいて星くずが飛び散る。
 いつもの学校廊下。でもよく見るとそこには汚れも埃もヒビもない、ピカピカの廊下だ。窓もキラキラ。空気まで澄んでいる。
 誰もいない世界で、藤沢と、彼女を取り巻く全てが輝いていた。

「藤沢さんも、俺と同じ力を…?」

 今の俺と互角以上に対話できるなんて、普通の人間には不可能だ。考えられるのは、彼女も俺と同じ能力者だってこと。
 なのに彼女は、嫌悪感をあらわに顔をしかめる。

「じょーだんじゃないわ。あなたたちと一緒にしないで」

 彼女が嫌な顔をすると、俺まで悲しくなる。馬鹿なこと言った自分を後悔したくなる。
 藤沢の心に惹き込まれている自分に気づく。他人の心の中では、圧倒的に優位なはずの俺が、完全にこの世界の美しさに魅了されている。

「私はノーマル。普通の女。ただ、あなたみたいに異常な力を持った人たちに、心の中までイジられたくないだけ」

 普通だって?
 ウソだろ。こんなの見たことない。
 この世界は、現実を完璧に反射している。ただの反射じゃない。ありのまま受け入れ、正しく美化し、跳ね返している。
 それが本当なら、彼女は現実よりも完璧な現実を心の中に築いていることになる。てかそんなの、菩薩の領域だろ。生身の人間がそんなことできんのか?
 この世界には“美”しかない。エゴもコンプレックスもトラウマもない。

「…そんなこと、できるはずない」
「できるわよ。あなただって私の中を覗いてるんだから、わかってるでしょ」
「わかるわけないって! なんだよ、これ? なんでこんなに……きれいなんだよ…」

 藤沢はまた眩しい笑顔を見せる。
 そしてスカートを摘んでほんの少し持ち上げ、俺に見せつけるように眩しい太ももを輝かせ、さらさらの髪を泳がせる。
 俺は息を呑む。彼女の美しさがさらに輝きを増す。心を奪われる。
 彼女が浮かべるのは、まさに最強美少女の微笑み。

「だって私、完璧だもん」

 目が潰れた。まぶしい光に溶けてしまいそうだった。
 主人公の必殺技に巻き込まれたザコ敵のように、俺はこの光であっさり塵になってしまうと思えた。

 そう。藤沢綾音はいつも完璧だった。

 勉強でもスポーツでもミスコンでも休み時間の教室でも、彼女が誰よりも一番で、誰よりも輝いていた。
 でも、心の中までそんなのアリか。
 どんな美人もイケメンも、心の中にはドロドロした欲望やコンプレックスの一つや二つあるもんだろ。現実どおりに完璧なんてあるはずない。むしろ薄汚れた都会の空気まで洗浄してしまうほど美しい心なんて、あるはずもない。
 逆にそれこそ、狂気の沙汰だ。

「なんで…」
「ん?」
「なんでそんなに、メンタル強いんですか…?」

 一分の隙もないとは、まさにこのこと。
 彼女の心は、まるで魔法の鏡だ。傷一つない鏡だ。
 だが、なんのためにここまで内面まで磨き上げる必要がある。
 サトラレでもない限り、普通はそこまでする気を配る必要もない。むしろ外見が完璧な藤沢綾音だからこそ、内面には自由な醜さがあってもいいはずだ。
 四六時中、心の中まで完璧なんて、そんなの普通の人間にできるはずがない。どんな聖人君子でも無理だ。そんな努力をしようなんてすら考えもしないはず。
 なのに、なんで?
 藤沢の表情が、少し曇る。

「…うちの母、知ってるんでしょ?」
「え?」
「生意気なコンビニの店員って、あなたのことでしょ? 同じモノを持ってる人がいるって、お母さん言ってた」

 吐き気をもよおして、膝をついた。
 思い出したくもない女の顔と、彼女の世界を思い出して、死にそうになった。

 布団ババア。

 俺が能力に目覚めるきっかけを作った女。最恐最悪のイカれた女。
 ていうか、親子だって? 藤沢と布団ババアが?
 その話がまた、あまりにも衝撃すぎて吐きそうだった。

「私の一番身近な人が、あなたと同じ異常者だったのよ。私は小さい頃から、24時間、母親に監視されていた。思いもかけないことで叱られるし、殴られるし、最悪。そしてあの人は決まって言うの。『お前の考えてることは全てわかってる』って。『心の中にもお前の逃げ場はない』って。私はどうやったらそんな化け物から自分を守れるか、ずっと考えてた」

 布団ババアは、自分の能力を隠したりしない。他人のコンプレックスや秘密を突いて恐れさせることを楽しんでいる。
 俺のバイト先の先輩もそうだった。ババアに何か言われたから様子が変になった。あれはきっと、先輩しか知らないはずの過去の傷をババアがえぐったに違いないんだ。
 確かにあのババアなら、自分んちの子どもだろうが、どこまでやるかわかったもんじゃない。

「完璧な人間になるしかなかったの。誰から見ても、心の中まで覗かれても完璧な人間に。あなたたちに弱みなんて絶対見せない。そのためなら私は何も欲しくない。嬉しくない。悲しくない。落ち込まない。あなたたちの勝手な期待も欲望も嫉妬も完璧に打ち返して完璧に生きて見せるわ。そして最後まで勝ち残って、藤沢綾音のまま死んでやる。誰があんな人の奴隷なんかになるもんですか」

 一瞬だけ、世界にノイズが走った。彼女の悲愴な決意と怒りが、一本のノイズになって走り抜ける。
 でも、それだけだ。彼女の完成された世界には傷一つ入らない。

「だから、私は完璧なの」

 彼女の微笑みは、相変わらず慈愛と美しさと可愛らしさに満ちている。
 圧倒的な強さと自信の上に、可憐に彼女は君臨している。

 パーフェクト・ワールド。

 壮絶な親子関係の中で、何年も重ねて作り上げた不可侵のメンタル強さ。藤沢綾音がいるだけで、ただの学校廊下が世界遺産並に神々しく輝く。それはもう、常人の域を超えた驚異の精神力で。
 ここまで壮絶な覚悟で、完璧に生きてきた人間に、俺なんかが勝てるわけない。
 例え勝ったとしても、彼女の背後には布団ババアがいる。この恐るべき親子に、俺みたいなポッと出の新人エロ能力者が太刀打ちできるわけない。
 敗北感と恐怖が俺の膝を震わせる。立ち上がれない。

「で、あなたは何? はるかとリナみたいに、私も簡単にモノにできると思ったの?」
「…お、俺は…いや…」
「いい気にならないで。その力があれば誰でも抱けるとでも思った? 誰でも自分の思いどおりになるって、本気でそう信じてた?」

 藤沢は、フンと鼻を鳴らして俺を見下す。

「最低だね、本当に。あなたなんかに興味もなかった女を操って、自分勝手な彼女ゴッコの相手させて楽しいの? それ、アニメやゲームで彼女作るのと、どこが違うの? まさかあなた、そんなので自分が神様にでもなったつもりだったの?」

 やめてくれ。もう言わないで。
 藤沢には何も反論できない。心を暴かれたのは俺の方だ。

「ただのキモオタ野郎が、犯罪者になっただけじゃない。あなたのやってることは犯罪よ。自分がモテないからって、女を卑怯な力でオモチャにしていいと思った? それで勝ったつもり? バカ? ヘンタイ? 気持ち悪すぎるよね?」

 言葉だけで俺をズタズタにしていく。
 これだけきつい言葉を使っても、彼女の美しさは何も変わらない。俺の醜さを、彼女は丁寧に跳ね返しているだけだから。
 悪いのは俺だ。俺が最低のクズ野郎だから。
 追い詰められていく。心がズタズタに引き裂かれていく。完璧な彼女の、完璧な罵りで。

「……死ねば?」

 俺は悲鳴を上げて、彼女の世界から逃げ出していた。

 ───現実の廊下に戻ってくる。

 目眩がして、膝をついた。
 藤沢も俺から離れ、怪訝そうに顔をしかめた。

「今、私の中に入った…? やっぱり、あなたもお母さんと同じなの? コンビニの店員って、あなたのこと?」

 怖くて藤沢の顔が見れない。
 俺は膝をついたまま、震える自分の体を抱えて、頷く。土下座しそうな勢いで、頷く。

「はるかとリナにも、何かしたのね?」

 しました。俺は彼女たちにひどいことをしました。
 現実の藤沢にも、俺は抵抗できずに正直に頷く。

「そう。やっぱり、そうなんだ」

 冷淡な声が、逆に怖かった。俺は縮こまって震えるばかり。
 でも周りの人目を気にしたのか、藤沢は語気を柔らかくして、俺に近づいてきた。

「…倉島君、大丈夫? 具合でも悪いの?」

 演技になんて見えない。いつもそうしているように、具合悪そうな同級生に声をかけているだけにしか見えない。周りにいる連中だってそうだろう。
 藤沢綾音は、そういう子なんだ。そういう風に出来ている。誰もがそういう子でいて欲しいと期待しているから。

「あなた、どこかおかしいのかな? うちのお母さん、その手のビョーキに詳しいから、教えておいてあげるね。あなたのしたこと全部」

 そして、俺の耳元には強烈な爆弾を落としていく。
 布団ババアに引きずり込まれたあの光景。ドロドロの悪臭と息苦しさ。
 ババアに勝てる気なんてしない。今度こそ俺はあの世界で殺されてしまう。

「ご愁傷さま、シデムシ君」

 最悪の慰めの言葉を残して、藤沢は去っていった。
 俺は廊下にしゃがみ込んだまま、周りの好奇とからかいの視線を集め、ガタガタと震えている。
 吐き気が込み上げる。対人恐怖症がまたぶり返してくる。
 怖い。怖いよ。俺を見ないで。

 耐えられなくなって、廊下にぶち撒けてしまった。
 その辺にいた同級生たちが、驚きの声と、爆笑と、冷たい視線を遠慮なくぶつけてきた。
 俺はそのまま動けない。ゲロ吐いて、ボロボロ泣いて、震えてた。

 消えてなくなりたいと、マジで思った。

< 続く >



 そんなわけで俺は、三森の目と、腕を後ろに回してトイレットペーパーでぐるぐる巻きにしてみた。

「ご、ご主人様…これは、なんだか…」

 またスパンキングのような痛い系や、オナニーなんかの羞恥系のおしおきを想像していた三森は、目をふさがれ、動きもふさがれ、不安そうな声を出す。
 怖いだろ?
 ふふっ、作戦どおり。
 何度も三森の中に潜って、俺も彼女という人間がいろいろわかってきた。
 彼女は、自分の中でしかSMを楽しんだことがない。あくまで自分主体。だから自由も視界も奪われて、何をされるのかも分からないこの状況を、想像したことないのだ。
 彼女にとって未知のプレイ。だが、絶対に三森はこれにハマる。自信がある。
 無力で不自由な三森は、イジワルでエッチなご主人様の俺に頼るしかなく、何もかも投げ出して俺にすがるしかないのだ。
 これこそ、彼女が自分自身すら知らない心の奥底で、真に望んでいたSMプレイ。全てをご主人様に委ね、イジメられ、そして守られるプレイだ。

「怖いだろ、リナ?」
「は、はい…怖いです、ご主人様ぁ…」

 俺は黙って三森のスカートのフックを外す。そして、下着も足首まで下げる。
 小さく悲鳴を上げて、三森が体を縮こませる。
 色も量も薄い陰毛。エロエロな体のくせに、可愛い色したアソコに俺は喉を鳴らす。三森は為す術なく、身をよじるだけ。

「いい格好だな」
「あぅ、あの、ご主人様…リナ、本当に怖いです…ご主人様のお顔が見れないと、不安で…」
「これでいいんだよ。俺がお前を見ててやる。お前のその生意気な体を、余すことなく俺が視姦してやる」
「そ、そんな…ご主人様…」

 スカートを下ろして、はだけたワイシャツだけになった三森が、恥ずかしそうに体をくねらせる。
 相変わらず、なんて美味そうな体をしてやがるんだ奴隷の分際で。
 その大きく丸い胸も、くびれたウエストも、つるつるした形の良い尻も、なんだよそれ。ブラジルでサンバを踊れるレベルじゃないか。ヨーロッパのマンガフェスでコスプレできるレベルじゃないか。
 こうやって見ると、やっぱりすごいな三森の体は。世界と戦える女子校生だぜ。

「はぁ、はぁ……ご主人様…リナ、本当に怖くて…」
「心配すんな。ここにいるのは俺だけだ、お前は俺の命令に従っていればいい」
「は、はい…ご主人様だけ…ご主人様だけ…」
「そうだ。お前のその恥ずかしくてみっともない姿を見ているのは、俺だけだぞ」
「あぅ…リナ、恥ずかしい格好してます…裸で、トイレットペーパーで目隠しされて…ご主人様に、こんなみっともない格好見られて、リナすっごく恥ずかしいです…」
「俺の視線を感じるか? お前の全身をくまなく見てるぞ。前からだけじゃなく、後ろからも。右も左も上も下も、全て俺の視線がお前を捕らえている。俺の視線の檻の中に、お前は閉じこめられているんだ」
「あ、あぁ…ご主人様がリナの裸を見てる…あちこちから見られて、リナ、隠れられない…恥ずかしい、恥ずかしいよぉ…」

 そして三森のエロ想像力は、推定でも俺の約50人分はある。さらに視界と自由を奪うことによって、彼女の想像力はより敏感になるだろう。
 あとは言葉で責めてやるだけでいい。エロい三森はビンビンに反応してくる。

「リナ、お前のその体は誰のためにある?」
「ご、ご主人様のためです」
「だったら、恥ずかしくても俺の前ではいつでも裸を晒せ。隠そうとするな。生意気だぞ」
「はいっ。ごめんなさい、ご主人様。リナ、生意気な奴隷で…」
「あぁ、生意気な体だ。視線だけで感じるなんて、生意気でエロい体だ。お前は本当に変態だな」
「んっ、あぁっ、すっ、すみません、ご主人様! リナ、リナ、ご主人様の視線だけで感じる変態ですみません! すみません!」

 ビクン、ビクンと、俺の声がするたびに、三森は震える。こいつのエロ想像力の中で、今、俺の視線がバックベアードと化して襲いかかってるに違いない。
 怯えていた顔色も、どんどん朱を増していく。

「すみずみまで、よく見えるぞ。お前のでかい胸が汗をかいてる。股が濡れてる。マンコから汁を垂らしてるな」
「あっ、あっ、言わないで、くださいっ」
「スケベな体だな、まったく。男に見られただけで濡れるのか?」
「ち、違います! ご主人様だからです。ご主人様に見られてるから、リナは、感じてしまうんです!」
「そうだ。お前の体は俺のものだ。俺の前でだけ脱いで、俺の視線でだけ感じろ。他の男にその体を見せたら承知しないぞ」
「はいっ! リナは、ご主人様にしか肌を見せません! 他の男なんかで、絶対に感じません!」
「そのでかい胸も、尻も、俺のものだな?」
「あん、もちろんです! ご主人様のモノです! リナの体は、はぁ、すみずみまで、ご主人様のモノです!」
「心もだ。お前の心も体も、俺のものだ。俺のものじゃない場所なんて、お前には1つもないぞ」
「はい! あの、ありがとうございます! リナは、ご主人様のものです! んくっ、全部、ご主人様の奴隷ですぅ!」

 壁に体を預けて、リナは叫ぶ。
 肌は汗に濡れ、口からはよだれが零れ、乳首をピンと立たせて、俺の言葉一つで体を痙攣させて歓喜に震える。
 エロい。エロすぎる。なんだこの女子。ホントに同い年?

「リナ、イキそうか?」
「イキそうです! あぁ、リナ、ご主人様の視線だけでイッちゃいそうです! イっていいですか…? リナ、もうイっていいですか、ご主人様ぁ!」
「ダメだ。俺がいいと言うまでイクな」
「あぁ…そんな…はい、ご主人様…」
「こっちへ来い。足を開いて立て」
「んっ、は、はい…こ、こうですか?」

 一歩前に出て、足を開く。
 ひくついたアソコの、濡れて光るピンク色。
 ちなみに俺は、とっくにチンポ出してる。クールなご主人様を気取りながら、擦ってる。
 でもまだ入れてやんない。俺と三森の我慢比べなのだ。

「リナ、お前のエロマンコがよく見えるぞ」
「はぁ、はぁ、ご主人様…」
「ヒクヒクして、エロい汁をタラタラこぼしてる。触って欲しいか?」
「はいッ…はい、触って欲しいです。リナのエロマンコは、ご主人様に触れて欲しくて、ヒクヒクしてます…」
「自分でわかるか。お前のマンコがヒクついてるのが」
「わかり、ます…エッチなお汁、止まんなくて…我慢、できないんです! お願いです、ご主人様! エッチな奴隷のリナに、お情けください! ご主人様の手で、リナに触れて、イかせてください!」
「ダメだ。我慢しろ」
「そ、んな…ッ。リナ、苦しいです、ご主人様…っ、体中、ぞくぞくして、すごく……すごく、感じてるんです、ご主人様! 助けてください! アァ! あァ!」

 ビク、ビクと三森の体が跳ねる。
 見ているだけでアソコはビショビショで、真っ赤に火照っている。もう何度も犯されたみたいに。

「じゃ、想像することを許してやるよ」
「え…え?」
「俺に犯される自分を想像しろ。お前のマンコも、口も、ケツも、いっぺんに俺が犯してやる。ただし、お前の想像の中でだ。好きなだけ想像しろ。俺に犯されることを」
「ご主人様が…私を…犯すところ…」

 バカ正直に三森は想像は膨らませていく。
 半開きになった口は舌を彷徨わせ、俺の形をなぞる。足をわずかに広げて、赤みがかった肉を震わせる。

「もっと足を広げろ。そんなんじゃ入らないだろ」
「す、すみません! 今、すぐ…ッ」

 がに股に足を広げて、腰を落とし、俺にアソコを突き出すように命じる。
 三森の頬が、ますます羞恥に染まっていく。

「ほら、入っていくのがわかるか? お前のマンコと口とケツに、俺のが入ってくるだろ?」
「はい…はい、ご主人様のが、私にいっぱい…入ってきますぅ!」

 ビク、ビクと、まるで本当に挿入されたように体を痙攣させる。敏感な三森の体は、想像力だけでどんどんと高まっていく。

「入れてやったんだから、お前が腰を振れ。ちゃんと俺を満足させるように振りまくれ」
「はいッ、振ります! こ、こうですか、ご主人様!」

 足を広げたまま、三森は腰を前後に揺する。目と手をトイレットペーパーでぐるぐる巻きにされた拘束少女の一人運動。ひどく間抜けで、だがとても扇情的な光景だ。

「俺に入れられてるのがわかるか? お前の中に、今、俺のが入ってるんだぞ」
「はいっ…はい、入ってます! ご主人様の太くてかっこいいオチンチン、今、リナの中に入ってます!」
「マンコにだけか?」
「いいえッ! お尻にも、入ってます! お口の中にも、いっぱい、ご主人様のオチンチン、入ってますぅ!」

 舌を伸ばし、ヨダレをこぼし、だらしない顔で三森は腰を振り続ける。俺もどんどん興奮して、しごく右手に力が入る。

「くっ…リナ、お前は今、俺に犯されてるぞッ。マンコもケツも口も、俺のチンポでめちゃくちゃにしてやるッ。そのでけぇおっぱいも、ぐにゃんぐにゃんに揉みこんで吸ってやる!」
「はいッ! ありがとうございます、ご主人様ぁ! 今日も、今日もおバカな奴隷のリナをめちゃくちゃにしてくださって、ありがとうございます! リナは、とってもドMでヘンタイな女だから、ご主人様に恥ずかしいところをお見せして、犯されて、嬉しくって涙が出ます! こんな奴隷にお情けをくださって、本当にありがとうございますぅ!」

 ガクガクと俺の目の前で振れる腰から、彼女の愛液が飛び散って床を濡らす。あどけない童顔が快楽に蕩けきって、しみ出す涙が顔のトイレットペーパーを溶かし、頬に張り付いている。
 でも彼女の目は、きつく閉ざされている。舌は俺のを求めて彷徨っている。
 俺が命令したからだ。三森は俺の命令を絶対に守っているんだ。
 大きな胸が、たぷんたぷんと揺れる。乳首は、紅潮していく白い肌に消えてしまいそうなくらい淡い色のくせに、ピンと張って生意気な自己主張してる。
 くびれた腰が激しく動いて波を打つ。薄い色の陰毛が濡れてキラキラしてる。みっともなく舌を動かして、足を広げ、俺を求めてアソコを濡らしてる。

 昨日までは、同じクラスにいても俺とはまったく接点のない、リア充組のクラスメートだった。
 目立つ容姿してるくせに性格は大人しくて、ぽわぽわしてて、いつも笑ってて、女子の間で可愛がられてる子だった。
 あの子には彼氏なんていないといいなー、とか、いつもぼっちの俺のこと、優しそうなあの子は秘かに気にかけてくれてるといいなぁ、なんて勝手な期待したりしてた。
 そんで、俺に優しく声をかけてきたところを、上手く騙しておっぱいモミモミとか、ホントしょうもないこと想像して、時々おかずになってもらったりしてた。
 でも、当然そんなの俺の一方的な思いこみでしかなくて、向こうは俺のことなんて全然眼中にないこと知ってた。
 学校卒業したら、俺なんて同窓会も呼ばれないし、会うこともなくなるし。彼女はいつの間にか結婚しちゃって、どっかで幸せな家庭を築き、俺はそんなことも知らずに、今日も明日も卒アル開いてオナニーとか、そんな感じなんだろうなあって思ってた。

 今、俺の目の前で裸になって、トイレットペーパーでグルグルにされて、マンコ汁飛ばしながら腰振ってる、この女のことだ。
 もう彼女はただのクラスメートなんかじゃない。
 俺だけの奴隷、三森リナなんだ。

「リナっ!」
「きゃあッ!?」

 我慢できなくなって俺は三森の体に激しく抱きつく。
 三森の後頭部が後ろの壁に当たってゴィンといい音をさせるが、俺は構わず三森の体を持ち上げ、一気に挿入する。

「あぁぁあぁあーッ!?」

 俺の腕の中で、三森の豊満な体がガクンガクンと痙攣する。その痙攣が膣を通じてギュウギュウと伝わってきて、もうそれだけでイキそうなくらいに気持ちいい。温かくて、柔らかくて、三森のマンコは、本当に気持ちいい。
 俺はこの体を乱暴に貪りたい。めちゃくちゃにしてやりたい。
 
「あぁッ! あぁーッ!」

 両手を縛ったままの三森を、ガンガン突き上げる。背の低い彼女を壁に押しつけ、太ももを持ち上げ、下から押し上げるように腰を叩きつける。
 柔らかい。俺の体に吸い付くような彼女の肌は、最高だ。

「あぁぁッ、あ、ありがとうございます! ありがとうございますぅッ!」

 大きな瞳を見開き、イキっぱなしの顔で三森が喘ぐ。
 俺はその髪を鷲づかみにし、白い喉を晒させ、そこに舌と歯を這わせ、噛みついて、舌でべろべろに舐める。三森の肌は、熱く、しょっぱく、美味い。

「ひあぁぁぁッ! ご主人様、ありがとうございます! あ、ありがとう、ございますぅ!」

 俺の奴隷。俺の女。
 このいやらしくて、抱き心地最高の体を好きにしていいのは、俺だけだ。

「リナ、お前は誰の女だ! 言ってみろ!」
「はいッ! 三森リナは、倉島修吾様の女です! あぁッ! あなただけのものです!」
「俺のドスケベ奴隷は誰だ! 言え!」
「リナです! ご主人様の、ドスケベで、エロエロの淫乱奴隷は、リナです! いつでも、あっ、リナは、ご主人様のオチンチンのこと、ばっかり考えて、はぐっ、イジメて、泣かせて欲しくて、アソコを、24時間濡らして待ってる奴隷女です! あぁ、ドスケベで、ごめんなさい! 肉便器で、ごめんなさい! あぁッ、愛してます! 肉便器は、ご主人様のことが、大好きですぅ! あぁー! あぁーッ!」

 俺、ケダモノみたいだ。
 もう腰が止まんない。鼻息を荒げて、乱暴に三森を突き上げ、犯している。
 そして三森は、まるで俺に捕食された小動物のように、されるがままだ。
 彼女は大声を張り上げて、何回も達している。
 それでも俺は彼女に容赦しない。犯しながら何度も俺の奴隷であることを宣言させ、乱暴なやり方で犯す俺に、感謝の言葉を言わせている。
 三森は俺の命令に忠実に応える。俺はそんな彼女を貪り続ける。

「あっ、あっ…ありがとう、ございます…あっ、あり…ございま、しゅ、うっ、んっ、あっ、あっ…あっ…」

 もう彼女の意識は半分飛んじゃってる。
 蒼い瞳はひっくり返って、半開きの口元には泡をつけて、壊れた人形みたいに同じ言葉を繰り返し、俺のセックスを受け入れるだけだ。
 でも、それがいい。どんなになっても俺を受け入れる三森が愛しい。可愛い。このまま本当に壊してやりたいとすら思える。
 俺の奴隷なんだ。俺の好きにいいんだ。
 何度も何度も俺は彼女に突き入れ、そしてギリギリまで昇ってきた性欲を解放する。

「リナ!」
「きゃあッ!?」

 いきなり俺が手を離したから、三森の中から俺のは抜け出て、三森は個室の床にビタンと尻もちをつき、またもゴィンと壁に後頭部をぶつけた。
 それには構わず、俺は彼女の顔に精液のたぎりをぶつける。精液を一滴漏らさず、その妖精顔をしかめる三森にチンポを擦りつけて、腰の下を突き抜けていく快感に身を委ねる。

「あぁ…最高だ」

 超満足だ。俺は一匹のオスになって女を喰らった。夢中になってセックスした。
 渡辺の優しさに包まれるエッチもいいが、ケダモノのように犯す三森とのエッチも最高だ。

「うぅー…」

 しかし、三森はなんか違ったようだ。
 精液だらけの顔をうつむけ、ボロボロと涙をこぼし始めた。

「あれ、なに? どうした?」

 うずくまって三森は呻く。
 そういや、さっきすげぇ音した。
 三森の両手はまだ後ろに縛られたままだ。

「ご、ごめんごめん! すっかり夢中になっちゃって!」

 両手のトイレットペーパーを千切り、三森の頭を撫でる。そして新しいペーパーで、精液だらけのひっでぇ顔も拭いてあげる。

「痛いか? 本当ごめん。手ェ離すことないよなー。俺ってホント、鬼畜でごめんな? 尻とか大丈夫?」
「うー…だ、大丈夫ですぅ」

 ぐしぐしと涙を拭う三森を手伝って、俺は次々にペーパー千切って顔を拭いたり、頭を撫でたり、アソコもついでに拭いてあげたりと、大急ぎで彼女を慰めた。
 ったく、誰だよ、三森にこんなに精液ぶっかけたヤツは!

「…もう大丈夫です。ちょっと、びっくりしちゃっただけです。ごめんなさい」

 そう言って、健気にも三森は涙に濡れた瞳で笑顔を浮かべた。

「リナ、すっごく気持ち良かったです…。抱いてくださってありがとうございました、ご主人様」

 あどけない三森の笑顔は、いつ見ても俺を癒してくれる。
 有り難いやら、暖かいやら、なんだか不思議な気持ちになる。
 これがホントの三森の魅力。
 どんだけエロいことをしでかしても、最後のこの笑顔で、ほっこりしてしまうんだ。

「…俺も、すっげぇ気持ち良かった。その…リナは、最高だな」

 ご主人様らしからぬ俺の言葉に、三森の青い瞳は真ん丸になって、そしてなぜかまた泣き出してしまった。
 俺はそんな三森の頭を、グリグリと撫でてやる。

 ───小さな三森は、花を摘んでいた。

 頭ナデナデのついでに潜ってみた三森の世界では、小さな三森が、丘の上で俺のお屋敷を建設中だった。

「ふんふ~ん♪ ふふんふふ~ん♪」

 ご機嫌だった。
 満開に咲き乱れる三森のハッピー花が、彼女の手で編み上げられ、広く、花畑の中で盛り上げられていた。
 おそらく俺の命じたお屋敷の、これは基礎となる部分だろう。
 しかも、ちょうどここは、彼女のトラウマだった真っ赤な洋館が建っていたあたり。
 あの館よりは小さく、でも俺んちなんかよりはよっぽど広く、三森の花が、足首くらいの高さまで積み上げられている。
 摘んで、編んで、積み上げて。コツコツと俺のお屋敷を作る三森は、この果てしない作業を、楽しんでやっているように見えた。俺が頭にのっけてやった花かんむりだって、彼女の気分を反映するのか、花弁を大きくしてた。
 作業だって、むしろ思ったよりも早く進んでいる。
 5年か、下手をすれば10年はかかると思われた課題なのに、これでは1年と経たずに俺様専用の大豪邸が三森の中に完成するだろう。
 まったく、イジワルな宿題考えるほうの身にもなってくれよ。
 丸いお尻をこっちに向けて、無邪気に花を摘む三森に、俺は苦笑する。
 でも、きっと壮観だろうな。
 不気味だった赤い洋館も消えたこのお花畑に、お花で出来たお屋敷が建つ。
 俺たちの秘密の主従関係が、三森の中で小さなお屋敷となって、風薫るこの丘で花と一緒に咲くんだ。
 それはきっと、素敵な光景に違いない。
 
「あっ」

 俺に気づいた三森が、「にぱー」と満面に笑顔を浮かべて手を振った。そして、自分の立っている花の土台をブンブンと指さして、両手をいっぱいに広げて叫んだ。

「ご主人さまーっ! 1本目の門柱の太さは、このくらいで足りますか~?」
「サグラダ・ファミリアかよッ!」

 晴天のお花畑に、俺の絶叫ツッコミがどこまでもこだました。



 俺は勝ち組だ。
 人類を負け組と勝ち組に分けたなら、俺は間違いなく圧勝組に属する人間だ。今なら勝ち組にだって負ける気がしない。それぐらい俺のこのヘンテコな力はすごい。
 正直、すごすぎて俺の体が追いつかない。
 なんかさっきから今まで使ったことのない股の筋肉が悲鳴を上げてるし、股関節にも違和感が生じて歩き方がおかしくなってるぐらいだ。
 でもそれがどうした。俺が望んで得た結果じゃないか。
 俺は地球の全ての美女を抱く。この能力を使ってヤリまくってやる。
 モテモテでウッハウハの学園生活をジョイフルしてやるんだぜ!

 などと、がに股で廊下を闊歩していたら、またもや美少女発見。
 まったく、我が校の女子レベルやばいわ。WGK(我が校)48を結成できるくらいやばい。
 そしてそのメンバーの中で、間違いなくセンターポジションに収まるべき神女子、藤沢綾音がこっち見て微笑んでるなんて、本当にやばい。

 …やばい。

 廊下の壁にもたれて、俺を見つけてニッコリと微笑んでいるのは、確かにあの、藤沢綾音だった。
 ナンバーワン美少女、藤沢。
 その呼び名がなぜ彼女に相応しいのか、それを語り尽くすには1万行を要するだろう。
 でも1行でいうなら、彼女は見た目はもちろん、何をやらせてもナンバーワンだからだ。
 見ろ、あのサラッサラの髪。俺のと同じ素材で出来てるなんて信じられるか?
 顔小っさ。渡辺も小さいけど、藤沢の場合はさらにパーツの大きさや配置が完璧。
 いや渡辺だって相当美人だよ。でも藤沢は、その上を行く。しかも笑ったらすっげ可愛い。三森もピンチなくらいあどけなく可愛い。
 顔だけで、もうナンバー2と3の二人を凌駕しちゃってる。
 勉強だって、スポーツだって、オシャレなことだって、およそ学園生活で彼女が誰かに負けたことなんてない。知らないけど、たぶんない。
 そして、そのことを鼻にかけたり、他人を見下したりするようことを彼女は決してしない。
 人の悪口を言わず、他人の面倒を嫌がらず、でもクソ真面目ってわけでもなくて、クラスの奴らとバカ話で盛り上がったりするし、いいタイミングで面白いこと言ってみんなを笑わせるセンスもある。
 嫌味がなく、親しみやすく、でも他の女子とは明らかに違う、パーフェクト女子。
 そういう女がこの世にいる。てか、同じクラスにいる。
 俺の目の前に…いる。

「倉島くん、倉島くん」

 しかもあろうことか、この俺を手招きしますか。
 鈴の音のようなアニメ声で、まるで天使が小さな羽で羽ばたくかのように、ちょいちょいってその白い手で俺を招きますか!
 なんだよもう、うちの女子の間では廊下で待ち伏せするのが流行りなわけ? パワースポットなわけ?
 俺、明日から地蔵のように廊下に突っ立ってることにするわ。

「あ、あああ、ぼぼ、僕ですか?」

 できるだけ平静を装うとしても、これが限界だ。
 体中が発熱してる。ものすごい勢いで制服の中が蒸れていく。

「ごめん、ちょっといいかな?」
「は、ははい」

 まるで人生で初めて女子と喋ったかのように、俺は緊張していた。
 俺が脱オタ目指してクラスで浮いてた頃、流れで彼女とちょっとした会話くらいはしたことあるけど、いつもこんな感じだった。気圧されまくって、自分でも何を言ってるのかわからない状態だ。
 でも、今の俺はあの頃の俺とは違う。
 まず非童貞。
 男としてまるで別物。漢である。
 さらに、抱いた相手はあの渡辺と三森。
 いきなりの大物食いだ。並の童貞なら腹を壊して死んでいる。異能力持ちの俺だからこそ成し遂げられた偉業なのだ。
 この能力があれば、たとえ藤沢であろうと恐れることはない。
 どうせ近いうちに、藤沢も落とす予定だったんだ。堂々と、スマートに彼女に接近してやればいい。

「わ、わわわたくしのようなオオヒラタシデムシに何かご用でしょうか…?」
「アハハッ。相変わらずおかしなこと言うね、倉島くんって」

 くそぅ。何言ってんだ、俺。
 やっぱりダメだ。俺には藤沢と正面から向き合う男子力はない。もっとこう、卑怯な手で迫らないと。
 藤沢が笑うだけで、もう顔が真っ赤だ。言ってることも、めちゃくちゃだ。
 一体、俺なんかに彼女が何の用だっていうんだよ。

「あのさ…」

 藤沢が、俺に顔を近づけてきて、声を潜める。俺の心臓が5倍くらいに膨らむ。

「はるかと、リナのことなんだけど」

 そして膨らんだ心臓が破裂して肛門から出た。
 まずい。いきなり触れられたくない話題きた。
 歯がガタガタと鳴り、冷や汗がドバドバと溢れてきた。
 体温が冷えていく。目がチカチカとしてきた。耳鳴りがしてきた。
 呼吸が上手くできない。口の中がねばる。でも力が入らない。唾を飲むこともできない。心臓が不規則だ。苦しい。意識が遠のいていく。向こうに光が見える。引っ張られていく。そして何かを突き抜けた。近くで水の音がする。だんだん楽になっていく。だんだん楽になっていく。

「え、死ぬの?」
「いや死なないし!?」

 藤沢が、俺の顔をさらに近くまで覗き込んできて、そのショックで俺は目が覚めた。
 死ぬかと思った。美少女と喋ったら死ぬところだった。人の生き死にすら自在に操るとは、やはり美少女は恐ろしい。みんな、美少女のことは俺に任せて逃げるんだ!

「それで、やっぱり倉島くん、何か知ってるの?」
「え、何が?」
「だから、はるかとリナ。あの二人、今日はどっちも授業サボってるよね? それで私、気づいちゃったんだけど、なぜか倉島くんも同じ授業サボってない?」
「……」
「でさー、戻ってきたら、二人とも何か変なんだけど。というより、はるかとか、一昨日くらいからなんか落ち着かないし、リナだって、いきなりイメチェンしてきて、理由聞いても真っ赤になるだけで教えてくれないし」
「…………」
「まさかねー、とは思うんだけど…ひょっとして倉島くん絡み? ね、君ってあの二人と何かあるの?」

 ゴックンと喉を鳴らし、呼吸を整え、俺は努めて平静を取り繕う。

「しししりしり知りませんよ、ななな何何ももも」
「うん、さっきからドモりすぎてテクノっぽいよね。大丈夫?」
「ン、ンンッ、大丈夫。ほ、本当に何も関係ないよ、俺」
「ウッソだぁ。今、死にそうになったくせにー」
「で、でも死んでないもん。ウソついてない証拠だもん」
「いや、でもかなり三途の川だったし。ていうか、ここで命賭けられても困るんだけど」
「藤沢さん。男ってのはね、誰でも命を賭けて守らなきゃならない秘密のフォルダが自宅のPCにあるのさ」
「何それ? 矢沢?」
「永ちゃんがこんなこと言ったら濡れるわ」
「やっぱり何か隠してるんだ」
「そんなことないって」
「ウソついてもダメ。わかってんだよー」
「ないよー。藤沢さんに隠すようなことなんて、全然ないって」
「ホントに?」
「ホントホント」
「だったら見せてよ、家のパソコン」
「そっちかよ」
「あはは」

 気がつくと、普通にしゃべってた。この俺が学校一の美少女と、放課後の軽いトークを交わしてた。
 これは俺の成長というより、やはり藤沢の力だった。
 キョドる、ドモる、声もボソボソ、という喪男の教科書のような俺でも、ポンポンと話を繋げていく彼女の話術で、いつの間にか会話が弾んでる。
 てか、楽しい。藤沢さんとのおしゃべり楽しい。
 相変わらず直視するにはまぶしすぎる美少女だが、彼女の心地よい声と転がるような会話のテンポ、それにちょっとしたことでも笑ってくれるリアクションが嬉しくて、結構しゃべれてる。いつの間にかオオヒラタシデムシの生態について熱く語っちゃったりしてる。しかも、わりとウケてるんだ、なぜか。
 やっぱり彼女はすごい。
 藤沢は、例え相手が誰であろうと、偏見なしに当たり前にしゃべれるからすごいんだ。
 もしも渡辺や三森のことがなければ、俺はあっさり彼女に心酔してただろう。こんな美少女が、自分と普通にしゃべってくれるってだけで、俺みたいな男は簡単にやられてしまう。浄水器でも何でも買ってしまう。
 藤沢がナンバーワンである一番の理由。
 彼女は敵を作らない。誰であろうと、彼女は自分の味方にしてしまう。学校社会での立ち振る舞いまで、完璧なのだ。
 
「もー、なんか上手くごまかされた気がするなー」

 髪をかき上げる仕草にドキーッ。
 もう、この人は本当にすごい。惚れる。惚れるしか選択肢はない。

「ま、いいか。引き留めちゃってごめんね。私、部活行かなきゃ」

 小っちゃくバイバイして、藤沢は背中を向ける。
 なんだか寂しい。もっと彼女と話したかった。今度はぜひ槍形吸虫の話でも。
 でも、それよりもっと大事なこと忘れてた。
 これはチャンス。決定的チャンス。
 藤沢は俺に背中を向けている。
 廊下には他に人もいるが、気にすることはない。俺が彼女に何をしようと、それに気づく人間なんていないんだから。
 藤沢の中に潜れ。彼女を俺のものにして、ここから連れ出せ。
 そして…ナンバーワンの彼女を、誰より先に俺が抱くんだ!
 俺は彼女の背中に手を伸ばす。呼び止めるフリして、その細い肩に手をかける。
 

 ───そして、誰もいなくなった。

 あ、あれ? あれれ? どうなってんの?
 賑やかだった放課後の廊下から、人の声が消えた。気配すら消えた。
 藤沢はいる。あいかわらず俺の目の前で背中を向けて、いる。
 俺と藤沢だけ残して、あとの人間だけ消えてしまった。
 ここは…どこだ? 学校の廊下なのか?
 俺は藤沢の世界に潜ったはずだ。なのにここは……それともここが、そうなんだろうか?

 ゆっくりと、藤沢が肩に手を乗せたままの俺に振り返る。

「ふーん…。やっぱり、ウソだったんだ」

 震えた。
 藤沢の声の冷たさに、俺は震えた。
 彼女は俺を、それこそオオヒラタシデムシでも見るかのように冷たい目で見て、俺の手を払った。
 藤沢は藤沢のままだった。子供でも裸でもなく、制服のままの藤沢綾音だった。

「あなたも、そっち系の人なんだね。それではるかとリナのこと、モノにしちゃったわけ?」

 よくわからないまま、俺は頷いていた。
 わかってるのは、俺の能力がバレてるらしいってこと。
 そしてここで主導権を握っているのは、俺じゃなくて彼女だということ。
 藤沢は、動揺する俺の前でくすりと微笑む。

「で、次は私の番ってわけだ?」

 顔が赤くなった。何が起こってるのかすらわかってないというのに、彼女の小首を傾げて微笑む仕草に、現実世界と同じようにドキドキしちゃったりしてる。
 見えない。何にも、見えてこない。
 誰もいない学校廊下で、藤沢と俺しかいない世界で、俺は彼女の心が見えないままでいる。
 俺は喉を震わせ、やっと思いで口を動かす。

「…ここ、どこですか?」

 藤沢はあきれたように笑って、髪をかき上げる。

「あなたの方から来たんでしょ? ここ、私の心の中よ」

 キラキラと、彼女の髪になびいて星くずが飛び散る。
 いつもの学校廊下。でもよく見るとそこには汚れも埃もヒビもない、ピカピカの廊下だ。窓もキラキラ。空気まで澄んでいる。
 誰もいない世界で、藤沢と、彼女を取り巻く全てが輝いていた。

「藤沢さんも、俺と同じ力を…?」

 今の俺と互角以上に対話できるなんて、普通の人間には不可能だ。考えられるのは、彼女も俺と同じ能力者だってこと。
 なのに彼女は、嫌悪感をあらわに顔をしかめる。

「じょーだんじゃないわ。あなたたちと一緒にしないで」

 彼女が嫌な顔をすると、俺まで悲しくなる。馬鹿なこと言った自分を後悔したくなる。
 藤沢の心に惹き込まれている自分に気づく。他人の心の中では、圧倒的に優位なはずの俺が、完全にこの世界の美しさに魅了されている。

「私はノーマル。普通の女。ただ、あなたみたいに異常な力を持った人たちに、心の中までイジられたくないだけ」

 普通だって?
 ウソだろ。こんなの見たことない。
 この世界は、現実を完璧に反射している。ただの反射じゃない。ありのまま受け入れ、正しく美化し、跳ね返している。
 それが本当なら、彼女は現実よりも完璧な現実を心の中に築いていることになる。てかそんなの、菩薩の領域だろ。生身の人間がそんなことできんのか?
 この世界には“美”しかない。エゴもコンプレックスもトラウマもない。

「…そんなこと、できるはずない」
「できるわよ。あなただって私の中を覗いてるんだから、わかってるでしょ」
「わかるわけないって! なんだよ、これ? なんでこんなに……きれいなんだよ…」

 藤沢はまた眩しい笑顔を見せる。
 そしてスカートを摘んでほんの少し持ち上げ、俺に見せつけるように眩しい太ももを輝かせ、さらさらの髪を泳がせる。
 俺は息を呑む。彼女の美しさがさらに輝きを増す。心を奪われる。
 彼女が浮かべるのは、まさに最強美少女の微笑み。

「だって私、完璧だもん」

 目が潰れた。まぶしい光に溶けてしまいそうだった。
 主人公の必殺技に巻き込まれたザコ敵のように、俺はこの光であっさり塵になってしまうと思えた。

 そう。藤沢綾音はいつも完璧だった。

 勉強でもスポーツでもミスコンでも休み時間の教室でも、彼女が誰よりも一番で、誰よりも輝いていた。
 でも、心の中までそんなのアリか。
 どんな美人もイケメンも、心の中にはドロドロした欲望やコンプレックスの一つや二つあるもんだろ。現実どおりに完璧なんてあるはずない。むしろ薄汚れた都会の空気まで洗浄してしまうほど美しい心なんて、あるはずもない。
 逆にそれこそ、狂気の沙汰だ。

「なんで…」
「ん?」
「なんでそんなに、メンタル強いんですか…?」

 一分の隙もないとは、まさにこのこと。
 彼女の心は、まるで魔法の鏡だ。傷一つない鏡だ。
 だが、なんのためにここまで内面まで磨き上げる必要がある。
 サトラレでもない限り、普通はそこまでする気を配る必要もない。むしろ外見が完璧な藤沢綾音だからこそ、内面には自由な醜さがあってもいいはずだ。
 四六時中、心の中まで完璧なんて、そんなの普通の人間にできるはずがない。どんな聖人君子でも無理だ。そんな努力をしようなんてすら考えもしないはず。
 なのに、なんで?
 藤沢の表情が、少し曇る。

「…うちの母、知ってるんでしょ?」
「え?」
「生意気なコンビニの店員って、あなたのことでしょ? 同じモノを持ってる人がいるって、お母さん言ってた」

 吐き気をもよおして、膝をついた。
 思い出したくもない女の顔と、彼女の世界を思い出して、死にそうになった。

 布団ババア。

 俺が能力に目覚めるきっかけを作った女。最恐最悪のイカれた女。
 ていうか、親子だって? 藤沢と布団ババアが?
 その話がまた、あまりにも衝撃すぎて吐きそうだった。

「私の一番身近な人が、あなたと同じ異常者だったのよ。私は小さい頃から、24時間、母親に監視されていた。思いもかけないことで叱られるし、殴られるし、最悪。そしてあの人は決まって言うの。『お前の考えてることは全てわかってる』って。『心の中にもお前の逃げ場はない』って。私はどうやったらそんな化け物から自分を守れるか、ずっと考えてた」

 布団ババアは、自分の能力を隠したりしない。他人のコンプレックスや秘密を突いて恐れさせることを楽しんでいる。
 俺のバイト先の先輩もそうだった。ババアに何か言われたから様子が変になった。あれはきっと、先輩しか知らないはずの過去の傷をババアがえぐったに違いないんだ。
 確かにあのババアなら、自分んちの子どもだろうが、どこまでやるかわかったもんじゃない。

「完璧な人間になるしかなかったの。誰から見ても、心の中まで覗かれても完璧な人間に。あなたたちに弱みなんて絶対見せない。そのためなら私は何も欲しくない。嬉しくない。悲しくない。落ち込まない。あなたたちの勝手な期待も欲望も嫉妬も完璧に打ち返して完璧に生きて見せるわ。そして最後まで勝ち残って、藤沢綾音のまま死んでやる。誰があんな人の奴隷なんかになるもんですか」

 一瞬だけ、世界にノイズが走った。彼女の悲愴な決意と怒りが、一本のノイズになって走り抜ける。
 でも、それだけだ。彼女の完成された世界には傷一つ入らない。

「だから、私は完璧なの」

 彼女の微笑みは、相変わらず慈愛と美しさと可愛らしさに満ちている。
 圧倒的な強さと自信の上に、可憐に彼女は君臨している。

 パーフェクト・ワールド。

 壮絶な親子関係の中で、何年も重ねて作り上げた不可侵のメンタル強さ。藤沢綾音がいるだけで、ただの学校廊下が世界遺産並に神々しく輝く。それはもう、常人の域を超えた驚異の精神力で。
 ここまで壮絶な覚悟で、完璧に生きてきた人間に、俺なんかが勝てるわけない。
 例え勝ったとしても、彼女の背後には布団ババアがいる。この恐るべき親子に、俺みたいなポッと出の新人エロ能力者が太刀打ちできるわけない。
 敗北感と恐怖が俺の膝を震わせる。立ち上がれない。

「で、あなたは何? はるかとリナみたいに、私も簡単にモノにできると思ったの?」
「…お、俺は…いや…」
「いい気にならないで。その力があれば誰でも抱けるとでも思った? 誰でも自分の思いどおりになるって、本気でそう信じてた?」

 藤沢は、フンと鼻を鳴らして俺を見下す。

「最低だね、本当に。あなたなんかに興味もなかった女を操って、自分勝手な彼女ゴッコの相手させて楽しいの? それ、アニメやゲームで彼女作るのと、どこが違うの? まさかあなた、そんなので自分が神様にでもなったつもりだったの?」

 やめてくれ。もう言わないで。
 藤沢には何も反論できない。心を暴かれたのは俺の方だ。

「ただのキモオタ野郎が、犯罪者になっただけじゃない。あなたのやってることは犯罪よ。自分がモテないからって、女を卑怯な力でオモチャにしていいと思った? それで勝ったつもり? バカ? ヘンタイ? 気持ち悪すぎるよね?」

 言葉だけで俺をズタズタにしていく。
 これだけきつい言葉を使っても、彼女の美しさは何も変わらない。俺の醜さを、彼女は丁寧に跳ね返しているだけだから。
 悪いのは俺だ。俺が最低のクズ野郎だから。
 追い詰められていく。心がズタズタに引き裂かれていく。完璧な彼女の、完璧な罵りで。

「……死ねば?」

 俺は悲鳴を上げて、彼女の世界から逃げ出していた。

 ───現実の廊下に戻ってくる。

 目眩がして、膝をついた。
 藤沢も俺から離れ、怪訝そうに顔をしかめた。

「今、私の中に入った…? やっぱり、あなたもお母さんと同じなの? コンビニの店員って、あなたのこと?」

 怖くて藤沢の顔が見れない。
 俺は膝をついたまま、震える自分の体を抱えて、頷く。土下座しそうな勢いで、頷く。

「はるかとリナにも、何かしたのね?」

 しました。俺は彼女たちにひどいことをしました。
 現実の藤沢にも、俺は抵抗できずに正直に頷く。

「そう。やっぱり、そうなんだ」

 冷淡な声が、逆に怖かった。俺は縮こまって震えるばかり。
 でも周りの人目を気にしたのか、藤沢は語気を柔らかくして、俺に近づいてきた。

「…倉島君、大丈夫? 具合でも悪いの?」

 演技になんて見えない。いつもそうしているように、具合悪そうな同級生に声をかけているだけにしか見えない。周りにいる連中だってそうだろう。
 藤沢綾音は、そういう子なんだ。そういう風に出来ている。誰もがそういう子でいて欲しいと期待しているから。

「あなた、どこかおかしいのかな? うちのお母さん、その手のビョーキに詳しいから、教えておいてあげるね。あなたのしたこと全部」

 そして、俺の耳元には強烈な爆弾を落としていく。
 布団ババアに引きずり込まれたあの光景。ドロドロの悪臭と息苦しさ。
 ババアに勝てる気なんてしない。今度こそ俺はあの世界で殺されてしまう。

「ご愁傷さま、シデムシ君」

 最悪の慰めの言葉を残して、藤沢は去っていった。
 俺は廊下にしゃがみ込んだまま、周りの好奇とからかいの視線を集め、ガタガタと震えている。
 吐き気が込み上げる。対人恐怖症がまたぶり返してくる。
 怖い。怖いよ。俺を見ないで。

 耐えられなくなって、廊下にぶち撒けてしまった。
 その辺にいた同級生たちが、驚きの声と、爆笑と、冷たい視線を遠慮なくぶつけてきた。
 俺はそのまま動けない。ゲロ吐いて、ボロボロ泣いて、震えてた。

 消えてなくなりたいと、マジで思った。

< 続く >


 というわけで、人権団体の人たちが聞いたら泡を吹いて卒倒しそうな権利を主張する三森を、仕方なく俺は教室から遠い男子トイレに連れ込むことにした。

「はぁん……ちゅく、ちゅぷ、ご主人様……リナ、はしたないおねだりしてしまって、申し訳ありません、ちゅく、ご主人様ぁ…好き、ちゅ」

 あぁ、本当にな。
 俺はお前くらい、はしたない女を見たことねえよ。
 そう思いながら俺は、個室に入った途端に態度を豹変させた三森の口づけを受け入れる。

「ご主人様、わがまま言ってしまって、ごめんなさい。リナ、今日はどんな命令でも聞きますから、許してください」

 そう言って三森は、俺に胸を押しつけながらブラウスのボタンを外していく。はちきれそうなフロントホックブラが登場する。
 あえてきつめのブラを装着するのが、彼女のジャスティス。
 このブラを外した瞬間のおっぱいアクションが男を喜ばせると知ってるに違いない。
 ハッ、甘く見られたもんだぜ。

「いやっほう!」

 ブラを外した瞬間にボインと揺れるおっぱいアクションに、俺は思わず大声を出してしまい、唇を噛んだ。
 三森は、その俺の反応に気をよくしたのか、強調するように胸を突き出す。

「はい…リナのおっぱいですよ、ご主人様。好きなだけイジメてください」

 ゆらりゆらり、おっぱいが揺れる。
 俺は思わず喉を鳴らす。あいかわらず、凶悪なほど大きくて形の良いおっぱい。
 三森はそれを誇らしげに俺に見せつける。奴隷のくせに生意気な。でも、なんて理想的なおっぱい。完璧すぎて非現実的だった。こんなおっぱいがあるはずない。ウソだ。夢だと言ってくれ。
 なのに、それは確かに僕の目の前で現実として揺れていて。

「ご主人様…リナのおっぱい、今日はどうしちゃいます? なんでも好きにしていいんですよ?」

 なんていう魅力的なおっぱい。この俺が、たかが奴隷のおっぱいごときに呑まれてしまうなんて。
 確かに俺はおっぱいが好きだ。でも生意気なおっぱいは嫌いだ。主導権を握るのは俺なんだ。たかがおっぱいなんかに、負けてたまるか。

「どうしたんですか? ほら、ご主人様の大好きなおっぱいですよ? 吸っても揉んでも、ペインティングしちゃってもしてもいいんですよ…?」

 しかし乳首を中心にゆらんゆらん揺れる魅力的なおっぱいには、目を奪われざるをえない。蕩けていく。この魔力に抗おうとする意志はなくなっていた。意識が…ゆらんゆらんに、奪われていく。

「さあ…こっちへ来て下さい。触って、握って、噛むのです。ご主人様はリナのおっぱいが大好物なのです。おっぱいモンスターなのです」

 そう、俺はおっぱいモンスター…おっぱい大好きモンスター…今日も森の向こうから、おっぱい求めてやってきた…あぁ…おっぱいが、呼んでいる…俺の大好物…噛む噛む…。

「ご主人様はもう、リナのおっぱいのことしか考えられません。リナのおっぱいを24時間イジメ続けるおっぱいマシーンなのです。さあ…あなたの仕事に戻るのです」

 はい…ワタシはおっぱいマシーン…おっぱいをイジるために開発されたOPP-AIマシーン…今日もおっぱい仕事を開始しマス…うぃーん、がしゃ、うぃーん、がしゃ、うぃーん…。

「きゃ~ん!」
「え?」

 気がついたら、俺はロボット的な動きで三森のおっぱいを鷲づかみにしてた。
 三森の嬉しそうな嬌声を聞いて、俺はようやく我に返った。

「お…お前がMCしてどうするんだー!」
「い、いたぁいッ!」

 俺はそのまま両手でギュウギュウおっぱいを握りしめる。指の間からモニューっておっぱいがはみ出して、三森が悲鳴を上げる。

「す、すみません、ご主人様! リナ、おっぱいにうっとりしてるご主人様が可愛くて、つい、おっぱい催眠を試みてしまって! あっ、あん!」
「試みてしまって、じゃねえだろ! なんて凶悪なおっぱいだよ。まさか、おっぱい催眠だなんて……てか、おっぱい催眠ってなんだよ! いろいろひでぇよ!」
「あんっ、痛い! そんなに、引っ張らないでください! リナの、リナのおっぱい、千切れちゃいそうですぅ! あぁーん!」
「千切れろ! 千切れちまえ、こんなおっぱい! 後ろを向け! 俺にこれ以上、そのボインを見せつけるな!」
「そんなぁ…いいところだったのに」
「いいから壁に手をついて、尻を突き出んだ!」
「は、はい、ご主人様! 申し訳ございません!」

 あぶねえ。危うく三森のおっぱいに精神を支配されるところだった。ホント、とんでもないおっぱいだ。気をつけなければ。
 俺は三森の尻を、妙にセクシーな下着の上から両手で強くこねる。

「まったく、ほんと生意気な奴隷だな、お前は」
「あ、あぁ…すみません、ご主人様…リナ、ご主人様が愛おしいあまりに、ついついトイレをご主人様のお屋敷だと誤認させて、一生ここに閉じこめてトイレのご主人様プレイさせちゃえって思ってしまって…」
「そうやって、随所で俺を上回るエロい閃きと能力を発揮するところが生意気だってんだよ!」
「きゃっ! い、痛い! ごめんなさい、ご主人様! もう二度とご主人様を洗脳しようなんて思いませんから、許して下さい!」
「くそっ…お前のような生意気なヤツには、えっと、何かおしおきを───」
「スパンキングですかッ? それとも、緊縛ですか? 飲尿にしますか? リナ、悪い子だから、どんなおしおきでもご主人様の言うとおりにします! 何でも言ってください!」
「え、あぁ…それは、どうも…」

 別に俺がMCしたわけでもないのに、おしおきはご褒美だと勝手に誤認している三森は、青い瞳をキラキラさせる。
 俺は完全に引いていた。いや、呑まれていた。
 確かに三森は体も性格もエロい。エロすぎる。
 あまりにもエロくて、ミモロいとかそういう新しい言葉が必要なくらい三森はエロいんだ。
 童顔美少女の、大人顔負けに豊満な体と、女子校生ばなれしたドM感覚。この贅沢な食材を、俺は好きに料理していい権利を持つ。
 あぁ、それは確かに素晴らしいことさ。
 なのに、俺の中では敗北感と躊躇いが渦巻いていた。
 こいつは俺みたいな、童貞捨てたばっかのにわかご主人様なんかには、手に負えない女だ。
 俺はひょっとして、とんでもない化け物を目覚めさせてしまったのだろうか…ごくり。

 そのとき、トイレの外から男子の声が聞こえてきた。

「やべー、着替える時間ねえよ。ションベンしてる場合じゃねえって」
「いいって。漏らしたらどうすんだよ。今日から女子も体育館でバレーだぞ」

 この声は、同じクラスのヤツらだ。
 教室棟の外れのトイレだから、誰も使わないと思ってたが、体育館ルートでなら使う可能性ある。
 俺は便器に水を流し、唇に人差し指を当てて、三森に動かないように合図した。
 彼らは、こんな遠くの個室で大便しているシャイボーイでも入ってると思ったらしく、一瞬だけ会話を途切れさせたが、そのあとは普通に会話を続けていた。
 空気の読める奴らでよかったぜ。 
 しかし、そうか。うちのクラスは次体育か。メンドくせえ。このまま三森とサボり決定だな。
 でも今日は女子もバレーか…くそっ、迷うぜ。
 バレーボールといえば、同クラ女子の揺れるおっぱいを堂々と観察することができるという、数少ない公式視姦競技の一つだ。男子としては出場しておきたいイベントではある。
 しかし、そのイベントの目玉となるだろうクラス一の巨乳ちゃんは、今はここで俺のおしおき待ちなのだ。
 俺はちょっと自慢したいような気持ちで、尻を突き出したままの三森を見下ろす。

 三森は、本気で「どうしましょう?」みたいな顔して青ざめ、目に涙を溜めていた。

 あれ、意外。
 三森のことだから、このまま扉を開けて、彼らの見ている前で「してして、スパンキングして! そして私の尻肉を割り開いてご主人様の野太いチンポを挿入するところを、そこのクソ童貞たちに見せつけてやってェ!」くらいのことを、呼吸をするかのように言うと思っていたが。

「女子バレーか…楽しみだな、三森」
「ひひっ」

 個室の外では、男子たちが三森の名前を出していた。その途端、三森は「んくっ」と喉を引き攣らせた。
 俺は慌てて水を流す。そして、三森にそっと耳打ちする。

(…大丈夫だって。バレてないよ)

 三森は泣きそうな顔で、コクコクと首を振る。
 なんか、マジ怖がってる三森が意外。さっきまであれほど大胆だったくせに。
 
「つか今日の三森、なんであんなに可愛くなってんの? やばくね?」
「やべーわ。あれはマジでやばい。こっそり写メ撮ったし、俺」

 みるみるうちに、三森の顔が真っ赤になっていく。
 照れるとか嬉しいって感じじゃなく、なんか本当に恥ずかしいっていう様子で、唇を震わせている。

「早く三森のおっぱい見てェなー」
「あー、今日ほどあいつのおっぱい見たい日なかったわ。やべ、ボッキしてきた」
「ははっ、体育、マジ楽しみだな」
「フェスティバルだよな」

 目をギュッと閉じて、三森は体を縮こまらせる。もうおっぱいのあたりまで真っ赤っか。
 今の三森は、男子が小便している壁一枚向こうで、シャツを開いて、ブラをはだけさせて、スカートたくし上げでエロい下着を丸出しにしている状態だ。
 自分からそんな格好になっておきながら、今頃になって羞恥に震える三森に、俺は激しい興奮を感じていた。
 水を流す。ガンガン流す。

(どうした、リナ? 恥ずかしいか?)

 ビクン。
 三森の体が跳ねる。

(あいつら、リナのおっぱいが見たいんだってよ。いい機会だから、見せてやろうぜ。三森リナは本当はエロエロ大好きの変態牝奴隷ですってところを、生おっぱい付きでさ)
(ぁ…ッ、やっ)

 ビクン、ビクンと、三森は見てて気持ちいいくらい体を震わせる。ますます俺は調子に乗っていく。

(お前だって、そういうの好きなんだろ? 俺の淫乱エロ奴隷でドMの肉便器だっていうこと、みんなに見せつけてやりたいんだろ?)
(やっ、やぁ…)

 ビク、ビクンッ。
 俺が囁くたびに、三森は体を痙攣させて、イヤイヤと首を振る。言葉責めがすげぇ楽しい。

「三森、彼氏いるのかなぁ」
「いないで欲しいよなー。てか、あいつと藤沢だけはいないだろ。まだ手ェついてない感じがいいんだって」
「だよなぁ」

(…バカだな、あいつら。藤沢と違って、お前なんて汚れまくってるよなぁ? お前は本物の変態なんだし。俺に精液ぶっかけられて、一晩中オナニーしてるエロ女だもんなぁ?)
(うぅ…)
(あーあ。お前の正体知ったら、がっかりするだろうなあ、あいつら。いや、それとも大喜びするかな。今のお前の、エロい格好見せてやったら)
(ッ!?)

「やべぇよな…今日の三森で、俺の中でランク動いた」
「風、吹いたよな。確実に、三森のほうに」
「もうあいつが2位ってことでいいんじゃね?」
「あぁ、俺の一票も使っていいぜ」

 今日の三森のイメージチェンジは、うちの男子にもかなり好評らしい。確かに、世界が嫉妬する美しさだもんな。
 俺は三森の横顔をのぞき込む。彼女は、固く閉じた睫毛を震わせるだけで、俺と目を合わそうともしない。

(なあ、あいつらにお礼した方がいいんじゃね? おっぱいくらい見せてやろうぜ)
(ッ!?)
(サービスしてやったら、クラス1位にしてくれるかもよ。男子みんなに見せてやったら、マジで藤沢を抜くかもな。なあ、やってみようぜ)
(…や…いやぁ…)
 
「あのおっぱいをさ、ワシっと後ろから揉みまくる想像したことあるの、俺だけじゃないよな?」
「逆に聞きてーよ。想像しないヤツなんているの?」
「いないよなぁ」
「いないよなぁ」

 どうでもいいけど、ションベン長ぇよ。
 それはともかく、俺はあいつらのリクどおりに、後ろから覆い被さるように、三森のパイパイを鷲づかみにする。

(ンンンーッ!?)

 喉を仰け反らせ、歯をギリギリ噛みしめ、三森は悲鳴を堪えている。
 無茶苦茶にこねまくり、揉みしだくワガママおっぱい将軍の折檻に、必死で堪え続けている。
 俺はますます興奮が高まっていく。

(そうだ、いいこと思いついた。お前、ここで小便しろ。扉をご開帳して、あいつらに変態牝犬奴隷の放尿お披露目してやろうぜ)
(いやっ、いやぁ…)
(嬉しいだろ? そういうことしたいんだろ? なあ、正直に言えよ)
(い、いやです…私……いやぁ…ッ)

 声を出すのも恐ろしそうに、三森はゆっくりと、掠れるような声で抵抗する。
 いいね、これ。
 マジ三森すげえ。このプレイは思いつかなかったわ。

(ごめんなさい…ごめんなさい、許してください…)
(んあ? 聞こえないなぁ? それとも、挿入してるところの方がいいか? パンパン俺に犯されてるとこ、見せつけてやりたいのか?)
(違っ! いやぁ…!)
(ほんとエロいな、リナは…俺もマジ興奮してきた)

 俺は調子にのって、ボッキしたドS棒を尻に擦りつけながら、さらに無茶な要求をしていく。そのたびに泣きそうな三森の声が俺の嗜虐心を煽って、興奮させていく。
 やばい。三森エロい。マジでミモロい。
 さすが脳内お花畑で俺に拘束されて喜ぶほどの変態奴隷である。
 さっきまでエッチをリードしていた三森が、今は俺の腕の中で震える子犬のようだ。ビクンビクン震える体は、快楽というより恐怖の反応っぽく、上位に立つ快感を味わわせてくれる。
 クラスの女子をイジメるのって、こんなに興奮するんだ。イジられるだけの俺には知り得なかった楽しさだ。
 三森の体が頼りなげに縮こまる。真っ赤な顔は破裂しそうなくらいで、青い瞳からは、ポロポロ涙がこぼれだすほどだった。
 
 …って、あれ?
 ひょっとして、マジ泣き?

(ごめんなさい…ごめんなさい、倉島くん。無理です。私、もう無理です…ッ!)

 あれ?
 あれれれ?

(ごめんなさい…ごめんなさい、倉島くん…ひっく)

 完全に素に戻って、三森は俺に謝り続ける。
 え、なんでなんで?
 今そういうプレイじゃないの? むしろ三森のホームグラウンドじゃないの?
 なんでこんなタイミングで、素の三森に戻っちゃってるわけ?

「よっしゃ! 行こうぜ、体育館へ!」
「俺らのシャングリラへ!」

 陽気にハイタッチでもしてるらしく、バチンと景気のいい音を立てて、奴らはトイレから出て行った。
 手ぐらい洗えよ。てか、お前らのシャングリラなら、ここで乳出して泣いてるところだから何とかしてくださいよ。

「うっ、うぅっ、ご、ごめんなさい、倉島くん。私、できなかった…ご主人様の命令、聞けなかった…」

 三森はメソメソと泣き続ける。俺はただただ、途方に暮れる。
 どうしてこうなった…。

「うぅ、うえ~ん」

 ぺたんと、後ろ向きに便座に座り込んで、子供みたいな声を出して、三森は本格的に泣き出した。
 
「あ、あのさ…ひょっとして、本気で嫌だった?」

 三森はフルフルと首を横に振る。そのあと、縦に振る。
 どっちだよ。

「嫌、じゃないです、ご主人様の命令は。でも、他の人に見せるのは、嫌です。ひっく。怖いです」

 怖い? 三森が?
 この三森リナに、恐れるものなどあったのか?

「つーかお前、さっきみんなの前でオナニーしてやるとか言ってたじゃん。そういうの、好きなんだろ?」
「ウソです。絶対できないです。ごめんなさい。私、ウソつきました。えぐっ」
「ええー」

 ウソって。奴隷のくせに、ご主人様を平気で騙しちゃうわけ?
 ったく、これだからゆとり奴隷はダメなんだ。きっちり学校で奴隷とご主人様の正しい在り方教えてくれよ。

「ごめんなさい、倉島くん…えぐっ、嫌いにならないで。ぐすっ…捨てないで、ください…」

 もう、何がなんだか全然わからん。
 別に俺がやりすぎたとか、羞恥プレイが嫌なら嫌で、そう言ってくれれば俺は構わんし。
 なのに、なんでこんなに泣かれるのか、捨てるとかの話になるのか。
 女の面倒くささフルである。俺にどうしろってんだよ。
 とにかく、このままでは埒があかない。
 お前の中に、直接聞いてやる。

 ───三森の脳内お花畑に、どしゃぶりの雨が降っていた。

「うわあ…」

 そしてその大雨の中、小さいな三森が暗い背中を向けて、へたり込んでいた。
 どんよりしてる。あの天真爛漫☆奴隷ッ娘と呼ばれた三森が、悲惨なくらいズタボロになっている。
 満開に咲き誇っていた花も枯れていた。彼女を縛っていた幸福の証である奴隷の茨も、枯れ落ちていた。
 大災害だった。

「リ、リ~ナちゃん?」

 努めて優しい声で俺が話しかけると、三森はビクンと体を震わせ、恐る恐るという感じで振り向いた。
 俺の顔を見ると、ぶわっと涙を浮かべ、一目散に逃げ出した。そして、すぐに枯れ花に足をひっかけ、「ふぎゃん!」という悲鳴を上げて大転倒した。 
 うわあ…ますます声がかけづらい。
 
「うう…うえ~ん!」

 地面に突っ伏して、ジタバタ泣き出す。
 昨日はあれだけ淫乱少女だったのに、今日の三森はもう、見た目どおりのただの子供だ。
 俺は彼女のそばにしゃがんで、その白い尻をぺちんと叩く。

「どうした? なんで逃げる?」
「えぐっ、だって、ごしゅじんさま、怒ってるから。リナのこと、嫌いって言うから、怖いですぅ、ひっく」
「嫌いだなんて言ってないだろ。なんでそんなことになるの?」
「だって、だってだって、リナ、ごしゅじんさまの命令きけないダメどれいだもん。いなかどれいだもん。うえ~ん!」

 三森が泣くと、雨足も強くなる。彼女自身を、彼女が強く責め立てる。

「あのな…別に1回命令聞けなかったくらいで、俺はお前を嫌いになったりしないぞ」
「…ふえ、ほんと、ですか?」
「あぁ、大丈夫。だから起きろ」
「は…はいぃ…」

 体を起こして、ぺたんと枯れたお花畑にお尻をつける。ぐしぐし涙をこぼして、まだ俺の目を見られずにいる。
 三森に説明させなくても、俺には彼女の恐れが伝わってくる。
 嫌われるのが怖かっただけだから、嫌われてないとわかれば、三森は俺から逃げない。
 でも、体はまだ震えている。俺に怒られる、というより、自分を許せないから、三森は顔を上げられない。
 たった一度の失敗で、三森は失望と後悔のどん底まで沈んでいた。
 あれだけ無敵の奴隷っぷりを発揮していた三森の、意外な脆さに俺は驚く。
 そしてその原因は、彼女自身の過去にあった。

「リナ、お前…男が怖いのか?」

 三森は、こっくんと頷いた。
 そのとたん、彼女の過去が走馬燈のように俺の頭に飛び込んでくる。
 正体不明の『兄』に幼い頃心を支配され以来、無意識に自分のご主人様を求めて生きてきた三森。彼女のこれまでの人生は、ずっとその『理想のご主人様』探しに費やされてきた。
 彼女自身すら自覚できなかった漠然としたその欲求を、俺が昨日ハッキリと自覚させてやった上で、寝取ってやったんだ。

 しかし、俺は見落としていた。
 満たされなかった奴隷願望の反面で、彼女は男性に対する失望と恐怖も募らせていた。
 心だけ支配して自分を捨てた兄。大実業家の孫で美少女な自分に優しく近寄ってくる大人の下心。容姿の目立つ彼女に付きまとう男子たちの加減知らずのしつこさ。
 幼い頃から三森はずっと男に傷ついてきた。体育教師の一方的な暴力にも、その後の優しかった前の彼氏も自分に歪んだフィギュア愛を投影していただけだということにも、密かに彼女は傷ついていたようだ。
 ただ、そんなのは男子ならよくあること。
 誰だって、自分の勝手な欲望や願望を異性に投影したり期待するのは、当たり前のことだ。つか、女だってそうなんだろ?
 なのに三森は傷ついてる。
 幼い頃からずっと『優しい男』でも『強引な男』でもなく『ご主人様』だけを理想に求めてきた彼女は、じつは純粋なロマンチストでもある。
 彼女は理想が高く、傷つきやすい。そして傷つくのを恐れて臆病だ。
 むやみに目立つ青い瞳はメガネで隠し、ナチュラルに薄い色の髪は短く切り、大きな胸はきつめのブラで隠した。
 ぼんやりした天然気味な性格は男の保護欲と嗜虐心を無意識に誘っているくせに、その反面、目立つ外見は男に対する警戒心で意識的に固めてたのだ。
 じつはヤマアラシだった三森。
 彼女が自分を許すのは『本当のご主人様』だけ。ご主人様以外の男は怖い敵。だから早くご主人様に出会って、本当の自分を解放して、拘束されて安心したい。
 そしてようやく巡り会えた、運命のご主人様である俺。
 理想の高い彼女は、自分も理想の奴隷として振る舞おうとしている。ご主人様を誰よりも喜ばせて、誰よりも寵愛される完璧な牝奴隷になろうと頑張っている。
 でもそれは反面、俺も兄のように、機嫌を損ねたら簡単に奴隷を捨てちゃう冷たい男じゃないかという、恐怖の裏返しでもある。
 俺が渡辺も抱いているという事実も、彼女を揺るがせた。
 自分は、もっと頑張らなきゃいけない。俺に捨てられたら人生終わり。だけどご主人様以外の男に裸を見せるのは泣くほど怖い。命令だからやらなきゃいけないのに、できない。
 ヤマアラシは、自分のトゲを脱ごうとして、そのトゲで自分を傷つけている。捨てられたくない。そばにいて欲しい。失敗してごめんなさい。嫌いにならないでください。という不安でいっぱい。

 なんてことだ。
 なんて普通の女の子なんだ。

 変態ドMスペシャルな女子だと思ってた三森の悩みは、じつはすっげえ普通。
 彼女の『ご主人様に支配されたい』願望も、深く探れば、その正体は『大好きな王子様に守られたい』っていう、女の子のよくある願望と同じだったというわけ。
 三森は泣きながら、今も求めている。
 それはただの『ご主人様』ではなく、『真のご主人様』だ。自分の心も体も、わがままも、不安も、性欲も、彼女自身すら把握できないこのお花畑のはるか遠くまで、全てを委ねることを許して守ってくれるご主人様だ。
 つまり、彼女の神様だ。
 それめちゃくちゃハードル高ぇよ。しかも、依存心めちゃくちゃ強ぇよ。
 でも、それだって理想の恋愛の形を夢見る女の子と変わらない。ようするに、こいつも俺もたいしてレベル変わらない。いろいろ妄想して、先走って、カラ回りして、自分の限界と現実を見て全力でがっかりしてる。
 でもそれくらい、当たり前のことだろ。
 だって俺たち、お互い初めてのご主人様と奴隷なんだから。

「雨、とまれ」

 俺が命令すると、ピタリと雨は止む。
 両手で目を擦りながら、三森は顔を上げる。

「怖がることもないし、泣くこともないぞ」

 三森は首を傾げる。あどけない顔が、行き先に困った迷子のように曇る。

「心配すんなよ。逃げなくていい。ここにいろ」

 小さな頭を撫でてやる。三森はすぐに「ん」と気持ちよさそうな声を出して、頬を染める。
 
「…ごしゅじんさまは?」
「ん?」
「ごしゅじんさまも、ここにいてくれますか?」
「あぁ、いるぞ」

 ようやくホッとして、笑顔を浮かべる。
 彼女はもう俺しか見えていない。俺のためなら何でもしたいと思ってるし、他の男に痴態を晒すことだって、今は怖くても、いずれは克服したいと思っている。
 そうすれば、俺が喜ぶと思うから。
 彼女の行き過ぎな奴隷暴走も、卑猥すぎる言動も、俺を失う不安と戦ってる彼女のSOSなんだ。

「…ありがとうございます、ごしゅじんさま」

 ポンポンと、彼女の足下で花が咲いていく。それは彼女の幸福の証。
 しかし彼女は、せっかく咲いた花を、いきなりブチブチと千切り始めた。

「ちょ、なにを…?」

 そして、それを慣れた手つきで編んでいく。
 あぁ、それ、見たことある。美結も小さい頃、そんなの作って遊んでた。

「ごしゅじんさま」

 三森は、その花かんむりを俺の頭に乗せる。たった今、生まれたばかりの彼女のハッピー花は、まだ暖かかった。

「ごしゅじんさまにあげます。リナのお花は、全部あげます。だから、ずっとリナのごしゅじんさまでいてください。おねがいです」

 そういってぺこりと頭を下げる。
 なんかもう、必死すぎて痛々しい。見てらんない。
 お前、うちのクラスの3位だぞ。いや、ついさっき一部男子の間で2位に昇格したばかりだぞ。
 お前の兄に変な能力がなければ。そして、同じく変な能力もった俺に出会って、そこをつけ込まれなければ、きっと彼女は、それなりに不満はあっても、他人から見れば十分に幸福な人生が送れたはずだ。
 なのに、そのハッピーの花は、こんな俺に捧げられてしまう。
 委ねることで、彼女の抱えたでっかいトラウマも小さくなる。たとえ何を代償に失ったとしても、彼女にはそれしか幸福の道がない。三森には、ご主人様が必要だから。
 彼女の想いはやっぱ重たい。
 俺なんかにそこまで期待されても無理だと思うし、面倒くさい。

「かっこいいです、ごしゅじんさま。ちょう似合ってます」
「ん、そっか?」
「はい…おうじさまみたいです」

 でもまあ、そうやって頬染めて恥ずかしそうにする表情とか、体を縮めた拍子に腕の間でキュッとなっちゃう成長期のおっぱいとか、そういうの見てたら、死ぬまでコイツのご主人様やってやるくらい楽勝かなって思えてくるのは、なぜなんだぜ?

 俺は、花かんむりを脱いだ。
 そしてそれを三森にかぶせた。

「こんなの、いらね」

 俺の冷たい言葉に、三森は顔面ブルーレイになった。
 しかし俺は構わず立ち上がる。

「ここに家でも建てるか。俺の屋敷な。使用人はお前で、主人は俺だ。そして花をいっぱい咲かせろ。見渡すかぎり花でいっぱいにしろ。それ全部、俺の庭だ」

 花かんむりを被り、きょとんとしている三森に、俺は指を突きつける。

「そんなチンケなもの、俺はいらねーよ。それより俺のためにでっかくて頑丈な庭付き一戸建てを用意しろ。ここを全部幸せのお花畑にして、全部俺によこせ。他の男に花一本でも触れさせたら許さねーぞ。全部俺のだ。ここに住むのは、俺だけだ」

 三森は、目を丸くして固まってる。
 俺は、声を低くして、命令口調を強くする。

「わかったか、リナ? どんだけ時間かかってもいいぞ。必ず花だらけにして、俺によこせ。それまで途中で投げ出すことは許さねぇし、逃げることも許さん。いや、お前に逃げられるわけねーよな。だって俺はお前のご主人様で、そしてお前は死ぬまで……」

 三森は肩を震わせる。
 頬が紅潮して、青い瞳が潤んでいく。
 俺は彼女に顔を近づける。花の匂いがする。キスしちゃいそうなくらいな距離で、きっぱりと、俺は彼女に命令する。

「俺の奴隷だからな」
「はいっ! ごしゅじんさまッ!」

 なんか爆発したのかと思った。
 それぐらいの勢いでお花畑が一斉開花して、ビックリした。
 

 ───三森の頭を、グリグリしてやる。

「え、あ、あう…」

 三森はどうしたらいいのか、困ったような顔してる。

「お前、まさか本気にしたの?」
「え?」
「他の男に、こんなプレイ見せるわけないじゃん。そんなことしたら、学校も人生もクビになっちまうぞ? こういうのは隠れてやるから意味があんの。奴隷が羞恥心までなくしちまったら、面白くねぇんだよ」
「え? え、えー…」

 てか、当たり前だろ。
 こんなところでションベンしながらご開帳とか、本気でやられてたら俺が死んでたわ。

「本当ですか? 本当に、ウソですか?」
「うん」
「リナは、他の人の前でいやらしいことしなくてもいいんですか?」
「しなくていい。ていうか、すんな」

 三森は、「はぁー」と肩から力を抜いて項垂れた。
 そして俺に向かって頬っぺたを膨らませた。

「ひどいです、ご主人様。リナ、本気でおしっこしながら扉を開けて、みんなの見ている前でご主人様にお尻の穴におしっこしてもらって、お腹の中がパンパンになったところで、『私はご主人様のバキュームカーです』って言いながら放出しなきゃならないのかと思いました」
「くそみそかッ!?」

 うろたえる俺を見て、三森はくすくす笑う。
 知ってるよ。そうやって、できもしないくせにそんなこと言って、俺に叱って欲しいだけなんだろ?
 三森は俺に独占されたいんだ。俺に叱られて、縛られて、他の男には指一本触れられないようなところに、閉じこめていて欲しいんだ。
 この変態めが。

「まあ、そんなことより、リナ。例えウソでも、お前が俺の命令を聞けなかったのは事実だ。そうだろ?」
「え…あ、それは、あの…」

 三森の顔から血の気が下がる。
 またもや見捨てられる恐怖を思い出して青ざめる三森に、俺は唇を上げる。

「今からスーパーおしおきタイムだ。リナ、次の授業はサボるぞ。お前をここで、徹底的に俺専用奴隷に再教育してやる。二度と俺に反抗できない女になるまで、調教してやるからな」

 ドMの三森は、ご褒美を貰った子犬のように表情を輝かせて、頷いた。

「はいっ、ご主人様っ! よろしくお願いします!」



 そんなわけで俺は、三森の目と、腕を後ろに回してトイレットペーパーでぐるぐる巻きにしてみた。

「ご、ご主人様…これは、なんだか…」

 またスパンキングのような痛い系や、オナニーなんかの羞恥系のおしおきを想像していた三森は、目をふさがれ、動きもふさがれ、不安そうな声を出す。
 怖いだろ?
 ふふっ、作戦どおり。
 何度も三森の中に潜って、俺も彼女という人間がいろいろわかってきた。
 彼女は、自分の中でしかSMを楽しんだことがない。あくまで自分主体。だから自由も視界も奪われて、何をされるのかも分からないこの状況を、想像したことないのだ。
 彼女にとって未知のプレイ。だが、絶対に三森はこれにハマる。自信がある。
 無力で不自由な三森は、イジワルでエッチなご主人様の俺に頼るしかなく、何もかも投げ出して俺にすがるしかないのだ。
 これこそ、彼女が自分自身すら知らない心の奥底で、真に望んでいたSMプレイ。全てをご主人様に委ね、イジメられ、そして守られるプレイだ。

「怖いだろ、リナ?」
「は、はい…怖いです、ご主人様ぁ…」

 俺は黙って三森のスカートのフックを外す。そして、下着も足首まで下げる。
 小さく悲鳴を上げて、三森が体を縮こませる。
 色も量も薄い陰毛。エロエロな体のくせに、可愛い色したアソコに俺は喉を鳴らす。三森は為す術なく、身をよじるだけ。

「いい格好だな」
「あぅ、あの、ご主人様…リナ、本当に怖いです…ご主人様のお顔が見れないと、不安で…」
「これでいいんだよ。俺がお前を見ててやる。お前のその生意気な体を、余すことなく俺が視姦してやる」
「そ、そんな…ご主人様…」

 スカートを下ろして、はだけたワイシャツだけになった三森が、恥ずかしそうに体をくねらせる。
 相変わらず、なんて美味そうな体をしてやがるんだ奴隷の分際で。
 その大きく丸い胸も、くびれたウエストも、つるつるした形の良い尻も、なんだよそれ。ブラジルでサンバを踊れるレベルじゃないか。ヨーロッパのマンガフェスでコスプレできるレベルじゃないか。
 こうやって見ると、やっぱりすごいな三森の体は。世界と戦える女子校生だぜ。

「はぁ、はぁ……ご主人様…リナ、本当に怖くて…」
「心配すんな。ここにいるのは俺だけだ、お前は俺の命令に従っていればいい」
「は、はい…ご主人様だけ…ご主人様だけ…」
「そうだ。お前のその恥ずかしくてみっともない姿を見ているのは、俺だけだぞ」
「あぅ…リナ、恥ずかしい格好してます…裸で、トイレットペーパーで目隠しされて…ご主人様に、こんなみっともない格好見られて、リナすっごく恥ずかしいです…」
「俺の視線を感じるか? お前の全身をくまなく見てるぞ。前からだけじゃなく、後ろからも。右も左も上も下も、全て俺の視線がお前を捕らえている。俺の視線の檻の中に、お前は閉じこめられているんだ」
「あ、あぁ…ご主人様がリナの裸を見てる…あちこちから見られて、リナ、隠れられない…恥ずかしい、恥ずかしいよぉ…」

 そして三森のエロ想像力は、推定でも俺の約50人分はある。さらに視界と自由を奪うことによって、彼女の想像力はより敏感になるだろう。
 あとは言葉で責めてやるだけでいい。エロい三森はビンビンに反応してくる。

「リナ、お前のその体は誰のためにある?」
「ご、ご主人様のためです」
「だったら、恥ずかしくても俺の前ではいつでも裸を晒せ。隠そうとするな。生意気だぞ」
「はいっ。ごめんなさい、ご主人様。リナ、生意気な奴隷で…」
「あぁ、生意気な体だ。視線だけで感じるなんて、生意気でエロい体だ。お前は本当に変態だな」
「んっ、あぁっ、すっ、すみません、ご主人様! リナ、リナ、ご主人様の視線だけで感じる変態ですみません! すみません!」

 ビクン、ビクンと、俺の声がするたびに、三森は震える。こいつのエロ想像力の中で、今、俺の視線がバックベアードと化して襲いかかってるに違いない。
 怯えていた顔色も、どんどん朱を増していく。

「すみずみまで、よく見えるぞ。お前のでかい胸が汗をかいてる。股が濡れてる。マンコから汁を垂らしてるな」
「あっ、あっ、言わないで、くださいっ」
「スケベな体だな、まったく。男に見られただけで濡れるのか?」
「ち、違います! ご主人様だからです。ご主人様に見られてるから、リナは、感じてしまうんです!」
「そうだ。お前の体は俺のものだ。俺の前でだけ脱いで、俺の視線でだけ感じろ。他の男にその体を見せたら承知しないぞ」
「はいっ! リナは、ご主人様にしか肌を見せません! 他の男なんかで、絶対に感じません!」
「そのでかい胸も、尻も、俺のものだな?」
「あん、もちろんです! ご主人様のモノです! リナの体は、はぁ、すみずみまで、ご主人様のモノです!」
「心もだ。お前の心も体も、俺のものだ。俺のものじゃない場所なんて、お前には1つもないぞ」
「はい! あの、ありがとうございます! リナは、ご主人様のものです! んくっ、全部、ご主人様の奴隷ですぅ!」

 壁に体を預けて、リナは叫ぶ。
 肌は汗に濡れ、口からはよだれが零れ、乳首をピンと立たせて、俺の言葉一つで体を痙攣させて歓喜に震える。
 エロい。エロすぎる。なんだこの女子。ホントに同い年?

「リナ、イキそうか?」
「イキそうです! あぁ、リナ、ご主人様の視線だけでイッちゃいそうです! イっていいですか…? リナ、もうイっていいですか、ご主人様ぁ!」
「ダメだ。俺がいいと言うまでイクな」
「あぁ…そんな…はい、ご主人様…」
「こっちへ来い。足を開いて立て」
「んっ、は、はい…こ、こうですか?」

 一歩前に出て、足を開く。
 ひくついたアソコの、濡れて光るピンク色。
 ちなみに俺は、とっくにチンポ出してる。クールなご主人様を気取りながら、擦ってる。
 でもまだ入れてやんない。俺と三森の我慢比べなのだ。

「リナ、お前のエロマンコがよく見えるぞ」
「はぁ、はぁ、ご主人様…」
「ヒクヒクして、エロい汁をタラタラこぼしてる。触って欲しいか?」
「はいッ…はい、触って欲しいです。リナのエロマンコは、ご主人様に触れて欲しくて、ヒクヒクしてます…」
「自分でわかるか。お前のマンコがヒクついてるのが」
「わかり、ます…エッチなお汁、止まんなくて…我慢、できないんです! お願いです、ご主人様! エッチな奴隷のリナに、お情けください! ご主人様の手で、リナに触れて、イかせてください!」
「ダメだ。我慢しろ」
「そ、んな…ッ。リナ、苦しいです、ご主人様…っ、体中、ぞくぞくして、すごく……すごく、感じてるんです、ご主人様! 助けてください! アァ! あァ!」

 ビク、ビクと三森の体が跳ねる。
 見ているだけでアソコはビショビショで、真っ赤に火照っている。もう何度も犯されたみたいに。

「じゃ、想像することを許してやるよ」
「え…え?」
「俺に犯される自分を想像しろ。お前のマンコも、口も、ケツも、いっぺんに俺が犯してやる。ただし、お前の想像の中でだ。好きなだけ想像しろ。俺に犯されることを」
「ご主人様が…私を…犯すところ…」

 バカ正直に三森は想像は膨らませていく。
 半開きになった口は舌を彷徨わせ、俺の形をなぞる。足をわずかに広げて、赤みがかった肉を震わせる。

「もっと足を広げろ。そんなんじゃ入らないだろ」
「す、すみません! 今、すぐ…ッ」

 がに股に足を広げて、腰を落とし、俺にアソコを突き出すように命じる。
 三森の頬が、ますます羞恥に染まっていく。

「ほら、入っていくのがわかるか? お前のマンコと口とケツに、俺のが入ってくるだろ?」
「はい…はい、ご主人様のが、私にいっぱい…入ってきますぅ!」

 ビク、ビクと、まるで本当に挿入されたように体を痙攣させる。敏感な三森の体は、想像力だけでどんどんと高まっていく。

「入れてやったんだから、お前が腰を振れ。ちゃんと俺を満足させるように振りまくれ」
「はいッ、振ります! こ、こうですか、ご主人様!」

 足を広げたまま、三森は腰を前後に揺する。目と手をトイレットペーパーでぐるぐる巻きにされた拘束少女の一人運動。ひどく間抜けで、だがとても扇情的な光景だ。

「俺に入れられてるのがわかるか? お前の中に、今、俺のが入ってるんだぞ」
「はいっ…はい、入ってます! ご主人様の太くてかっこいいオチンチン、今、リナの中に入ってます!」
「マンコにだけか?」
「いいえッ! お尻にも、入ってます! お口の中にも、いっぱい、ご主人様のオチンチン、入ってますぅ!」

 舌を伸ばし、ヨダレをこぼし、だらしない顔で三森は腰を振り続ける。俺もどんどん興奮して、しごく右手に力が入る。

「くっ…リナ、お前は今、俺に犯されてるぞッ。マンコもケツも口も、俺のチンポでめちゃくちゃにしてやるッ。そのでけぇおっぱいも、ぐにゃんぐにゃんに揉みこんで吸ってやる!」
「はいッ! ありがとうございます、ご主人様ぁ! 今日も、今日もおバカな奴隷のリナをめちゃくちゃにしてくださって、ありがとうございます! リナは、とってもドMでヘンタイな女だから、ご主人様に恥ずかしいところをお見せして、犯されて、嬉しくって涙が出ます! こんな奴隷にお情けをくださって、本当にありがとうございますぅ!」

 ガクガクと俺の目の前で振れる腰から、彼女の愛液が飛び散って床を濡らす。あどけない童顔が快楽に蕩けきって、しみ出す涙が顔のトイレットペーパーを溶かし、頬に張り付いている。
 でも彼女の目は、きつく閉ざされている。舌は俺のを求めて彷徨っている。
 俺が命令したからだ。三森は俺の命令を絶対に守っているんだ。
 大きな胸が、たぷんたぷんと揺れる。乳首は、紅潮していく白い肌に消えてしまいそうなくらい淡い色のくせに、ピンと張って生意気な自己主張してる。
 くびれた腰が激しく動いて波を打つ。薄い色の陰毛が濡れてキラキラしてる。みっともなく舌を動かして、足を広げ、俺を求めてアソコを濡らしてる。

 昨日までは、同じクラスにいても俺とはまったく接点のない、リア充組のクラスメートだった。
 目立つ容姿してるくせに性格は大人しくて、ぽわぽわしてて、いつも笑ってて、女子の間で可愛がられてる子だった。
 あの子には彼氏なんていないといいなー、とか、いつもぼっちの俺のこと、優しそうなあの子は秘かに気にかけてくれてるといいなぁ、なんて勝手な期待したりしてた。
 そんで、俺に優しく声をかけてきたところを、上手く騙しておっぱいモミモミとか、ホントしょうもないこと想像して、時々おかずになってもらったりしてた。
 でも、当然そんなの俺の一方的な思いこみでしかなくて、向こうは俺のことなんて全然眼中にないこと知ってた。
 学校卒業したら、俺なんて同窓会も呼ばれないし、会うこともなくなるし。彼女はいつの間にか結婚しちゃって、どっかで幸せな家庭を築き、俺はそんなことも知らずに、今日も明日も卒アル開いてオナニーとか、そんな感じなんだろうなあって思ってた。

 今、俺の目の前で裸になって、トイレットペーパーでグルグルにされて、マンコ汁飛ばしながら腰振ってる、この女のことだ。
 もう彼女はただのクラスメートなんかじゃない。
 俺だけの奴隷、三森リナなんだ。

「リナっ!」
「きゃあッ!?」

 我慢できなくなって俺は三森の体に激しく抱きつく。
 三森の後頭部が後ろの壁に当たってゴィンといい音をさせるが、俺は構わず三森の体を持ち上げ、一気に挿入する。

「あぁぁあぁあーッ!?」

 俺の腕の中で、三森の豊満な体がガクンガクンと痙攣する。その痙攣が膣を通じてギュウギュウと伝わってきて、もうそれだけでイキそうなくらいに気持ちいい。温かくて、柔らかくて、三森のマンコは、本当に気持ちいい。
 俺はこの体を乱暴に貪りたい。めちゃくちゃにしてやりたい。
 
「あぁッ! あぁーッ!」

 両手を縛ったままの三森を、ガンガン突き上げる。背の低い彼女を壁に押しつけ、太ももを持ち上げ、下から押し上げるように腰を叩きつける。
 柔らかい。俺の体に吸い付くような彼女の肌は、最高だ。

「あぁぁッ、あ、ありがとうございます! ありがとうございますぅッ!」

 大きな瞳を見開き、イキっぱなしの顔で三森が喘ぐ。
 俺はその髪を鷲づかみにし、白い喉を晒させ、そこに舌と歯を這わせ、噛みついて、舌でべろべろに舐める。三森の肌は、熱く、しょっぱく、美味い。

「ひあぁぁぁッ! ご主人様、ありがとうございます! あ、ありがとう、ございますぅ!」

 俺の奴隷。俺の女。
 このいやらしくて、抱き心地最高の体を好きにしていいのは、俺だけだ。

「リナ、お前は誰の女だ! 言ってみろ!」
「はいッ! 三森リナは、倉島修吾様の女です! あぁッ! あなただけのものです!」
「俺のドスケベ奴隷は誰だ! 言え!」
「リナです! ご主人様の、ドスケベで、エロエロの淫乱奴隷は、リナです! いつでも、あっ、リナは、ご主人様のオチンチンのこと、ばっかり考えて、はぐっ、イジメて、泣かせて欲しくて、アソコを、24時間濡らして待ってる奴隷女です! あぁ、ドスケベで、ごめんなさい! 肉便器で、ごめんなさい! あぁッ、愛してます! 肉便器は、ご主人様のことが、大好きですぅ! あぁー! あぁーッ!」

 俺、ケダモノみたいだ。
 もう腰が止まんない。鼻息を荒げて、乱暴に三森を突き上げ、犯している。
 そして三森は、まるで俺に捕食された小動物のように、されるがままだ。
 彼女は大声を張り上げて、何回も達している。
 それでも俺は彼女に容赦しない。犯しながら何度も俺の奴隷であることを宣言させ、乱暴なやり方で犯す俺に、感謝の言葉を言わせている。
 三森は俺の命令に忠実に応える。俺はそんな彼女を貪り続ける。

「あっ、あっ…ありがとう、ございます…あっ、あり…ございま、しゅ、うっ、んっ、あっ、あっ…あっ…」

 もう彼女の意識は半分飛んじゃってる。
 蒼い瞳はひっくり返って、半開きの口元には泡をつけて、壊れた人形みたいに同じ言葉を繰り返し、俺のセックスを受け入れるだけだ。
 でも、それがいい。どんなになっても俺を受け入れる三森が愛しい。可愛い。このまま本当に壊してやりたいとすら思える。
 俺の奴隷なんだ。俺の好きにいいんだ。
 何度も何度も俺は彼女に突き入れ、そしてギリギリまで昇ってきた性欲を解放する。

「リナ!」
「きゃあッ!?」

 いきなり俺が手を離したから、三森の中から俺のは抜け出て、三森は個室の床にビタンと尻もちをつき、またもゴィンと壁に後頭部をぶつけた。
 それには構わず、俺は彼女の顔に精液のたぎりをぶつける。精液を一滴漏らさず、その妖精顔をしかめる三森にチンポを擦りつけて、腰の下を突き抜けていく快感に身を委ねる。

「あぁ…最高だ」

 超満足だ。俺は一匹のオスになって女を喰らった。夢中になってセックスした。
 渡辺の優しさに包まれるエッチもいいが、ケダモノのように犯す三森とのエッチも最高だ。

「うぅー…」

 しかし、三森はなんか違ったようだ。
 精液だらけの顔をうつむけ、ボロボロと涙をこぼし始めた。

「あれ、なに? どうした?」

 うずくまって三森は呻く。
 そういや、さっきすげぇ音した。
 三森の両手はまだ後ろに縛られたままだ。

「ご、ごめんごめん! すっかり夢中になっちゃって!」

 両手のトイレットペーパーを千切り、三森の頭を撫でる。そして新しいペーパーで、精液だらけのひっでぇ顔も拭いてあげる。

「痛いか? 本当ごめん。手ェ離すことないよなー。俺ってホント、鬼畜でごめんな? 尻とか大丈夫?」
「うー…だ、大丈夫ですぅ」

 ぐしぐしと涙を拭う三森を手伝って、俺は次々にペーパー千切って顔を拭いたり、頭を撫でたり、アソコもついでに拭いてあげたりと、大急ぎで彼女を慰めた。
 ったく、誰だよ、三森にこんなに精液ぶっかけたヤツは!

「…もう大丈夫です。ちょっと、びっくりしちゃっただけです。ごめんなさい」

 そう言って、健気にも三森は涙に濡れた瞳で笑顔を浮かべた。

「リナ、すっごく気持ち良かったです…。抱いてくださってありがとうございました、ご主人様」

 あどけない三森の笑顔は、いつ見ても俺を癒してくれる。
 有り難いやら、暖かいやら、なんだか不思議な気持ちになる。
 これがホントの三森の魅力。
 どんだけエロいことをしでかしても、最後のこの笑顔で、ほっこりしてしまうんだ。

「…俺も、すっげぇ気持ち良かった。その…リナは、最高だな」

 ご主人様らしからぬ俺の言葉に、三森の青い瞳は真ん丸になって、そしてなぜかまた泣き出してしまった。
 俺はそんな三森の頭を、グリグリと撫でてやる。

 ───小さな三森は、花を摘んでいた。

 頭ナデナデのついでに潜ってみた三森の世界では、小さな三森が、丘の上で俺のお屋敷を建設中だった。

「ふんふ~ん♪ ふふんふふ~ん♪」

 ご機嫌だった。
 満開に咲き乱れる三森のハッピー花が、彼女の手で編み上げられ、広く、花畑の中で盛り上げられていた。
 おそらく俺の命じたお屋敷の、これは基礎となる部分だろう。
 しかも、ちょうどここは、彼女のトラウマだった真っ赤な洋館が建っていたあたり。
 あの館よりは小さく、でも俺んちなんかよりはよっぽど広く、三森の花が、足首くらいの高さまで積み上げられている。
 摘んで、編んで、積み上げて。コツコツと俺のお屋敷を作る三森は、この果てしない作業を、楽しんでやっているように見えた。俺が頭にのっけてやった花かんむりだって、彼女の気分を反映するのか、花弁を大きくしてた。
 作業だって、むしろ思ったよりも早く進んでいる。
 5年か、下手をすれば10年はかかると思われた課題なのに、これでは1年と経たずに俺様専用の大豪邸が三森の中に完成するだろう。
 まったく、イジワルな宿題考えるほうの身にもなってくれよ。
 丸いお尻をこっちに向けて、無邪気に花を摘む三森に、俺は苦笑する。
 でも、きっと壮観だろうな。
 不気味だった赤い洋館も消えたこのお花畑に、お花で出来たお屋敷が建つ。
 俺たちの秘密の主従関係が、三森の中で小さなお屋敷となって、風薫るこの丘で花と一緒に咲くんだ。
 それはきっと、素敵な光景に違いない。
 
「あっ」

 俺に気づいた三森が、「にぱー」と満面に笑顔を浮かべて手を振った。そして、自分の立っている花の土台をブンブンと指さして、両手をいっぱいに広げて叫んだ。

「ご主人さまーっ! 1本目の門柱の太さは、このくらいで足りますか~?」
「サグラダ・ファミリアかよッ!」

 晴天のお花畑に、俺の絶叫ツッコミがどこまでもこだました。



 俺は勝ち組だ。
 人類を負け組と勝ち組に分けたなら、俺は間違いなく圧勝組に属する人間だ。今なら勝ち組にだって負ける気がしない。それぐらい俺のこのヘンテコな力はすごい。
 正直、すごすぎて俺の体が追いつかない。
 なんかさっきから今まで使ったことのない股の筋肉が悲鳴を上げてるし、股関節にも違和感が生じて歩き方がおかしくなってるぐらいだ。
 でもそれがどうした。俺が望んで得た結果じゃないか。
 俺は地球の全ての美女を抱く。この能力を使ってヤリまくってやる。
 モテモテでウッハウハの学園生活をジョイフルしてやるんだぜ!

 などと、がに股で廊下を闊歩していたら、またもや美少女発見。
 まったく、我が校の女子レベルやばいわ。WGK(我が校)48を結成できるくらいやばい。
 そしてそのメンバーの中で、間違いなくセンターポジションに収まるべき神女子、藤沢綾音がこっち見て微笑んでるなんて、本当にやばい。

 …やばい。

 廊下の壁にもたれて、俺を見つけてニッコリと微笑んでいるのは、確かにあの、藤沢綾音だった。
 ナンバーワン美少女、藤沢。
 その呼び名がなぜ彼女に相応しいのか、それを語り尽くすには1万行を要するだろう。
 でも1行でいうなら、彼女は見た目はもちろん、何をやらせてもナンバーワンだからだ。
 見ろ、あのサラッサラの髪。俺のと同じ素材で出来てるなんて信じられるか?
 顔小っさ。渡辺も小さいけど、藤沢の場合はさらにパーツの大きさや配置が完璧。
 いや渡辺だって相当美人だよ。でも藤沢は、その上を行く。しかも笑ったらすっげ可愛い。三森もピンチなくらいあどけなく可愛い。
 顔だけで、もうナンバー2と3の二人を凌駕しちゃってる。
 勉強だって、スポーツだって、オシャレなことだって、およそ学園生活で彼女が誰かに負けたことなんてない。知らないけど、たぶんない。
 そして、そのことを鼻にかけたり、他人を見下したりするようことを彼女は決してしない。
 人の悪口を言わず、他人の面倒を嫌がらず、でもクソ真面目ってわけでもなくて、クラスの奴らとバカ話で盛り上がったりするし、いいタイミングで面白いこと言ってみんなを笑わせるセンスもある。
 嫌味がなく、親しみやすく、でも他の女子とは明らかに違う、パーフェクト女子。
 そういう女がこの世にいる。てか、同じクラスにいる。
 俺の目の前に…いる。

「倉島くん、倉島くん」

 しかもあろうことか、この俺を手招きしますか。
 鈴の音のようなアニメ声で、まるで天使が小さな羽で羽ばたくかのように、ちょいちょいってその白い手で俺を招きますか!
 なんだよもう、うちの女子の間では廊下で待ち伏せするのが流行りなわけ? パワースポットなわけ?
 俺、明日から地蔵のように廊下に突っ立ってることにするわ。

「あ、あああ、ぼぼ、僕ですか?」

 できるだけ平静を装うとしても、これが限界だ。
 体中が発熱してる。ものすごい勢いで制服の中が蒸れていく。

「ごめん、ちょっといいかな?」
「は、ははい」

 まるで人生で初めて女子と喋ったかのように、俺は緊張していた。
 俺が脱オタ目指してクラスで浮いてた頃、流れで彼女とちょっとした会話くらいはしたことあるけど、いつもこんな感じだった。気圧されまくって、自分でも何を言ってるのかわからない状態だ。
 でも、今の俺はあの頃の俺とは違う。
 まず非童貞。
 男としてまるで別物。漢である。
 さらに、抱いた相手はあの渡辺と三森。
 いきなりの大物食いだ。並の童貞なら腹を壊して死んでいる。異能力持ちの俺だからこそ成し遂げられた偉業なのだ。
 この能力があれば、たとえ藤沢であろうと恐れることはない。
 どうせ近いうちに、藤沢も落とす予定だったんだ。堂々と、スマートに彼女に接近してやればいい。

「わ、わわわたくしのようなオオヒラタシデムシに何かご用でしょうか…?」
「アハハッ。相変わらずおかしなこと言うね、倉島くんって」

 くそぅ。何言ってんだ、俺。
 やっぱりダメだ。俺には藤沢と正面から向き合う男子力はない。もっとこう、卑怯な手で迫らないと。
 藤沢が笑うだけで、もう顔が真っ赤だ。言ってることも、めちゃくちゃだ。
 一体、俺なんかに彼女が何の用だっていうんだよ。

「あのさ…」

 藤沢が、俺に顔を近づけてきて、声を潜める。俺の心臓が5倍くらいに膨らむ。

「はるかと、リナのことなんだけど」

 そして膨らんだ心臓が破裂して肛門から出た。
 まずい。いきなり触れられたくない話題きた。
 歯がガタガタと鳴り、冷や汗がドバドバと溢れてきた。
 体温が冷えていく。目がチカチカとしてきた。耳鳴りがしてきた。
 呼吸が上手くできない。口の中がねばる。でも力が入らない。唾を飲むこともできない。心臓が不規則だ。苦しい。意識が遠のいていく。向こうに光が見える。引っ張られていく。そして何かを突き抜けた。近くで水の音がする。だんだん楽になっていく。だんだん楽になっていく。

「え、死ぬの?」
「いや死なないし!?」

 藤沢が、俺の顔をさらに近くまで覗き込んできて、そのショックで俺は目が覚めた。
 死ぬかと思った。美少女と喋ったら死ぬところだった。人の生き死にすら自在に操るとは、やはり美少女は恐ろしい。みんな、美少女のことは俺に任せて逃げるんだ!

「それで、やっぱり倉島くん、何か知ってるの?」
「え、何が?」
「だから、はるかとリナ。あの二人、今日はどっちも授業サボってるよね? それで私、気づいちゃったんだけど、なぜか倉島くんも同じ授業サボってない?」
「……」
「でさー、戻ってきたら、二人とも何か変なんだけど。というより、はるかとか、一昨日くらいからなんか落ち着かないし、リナだって、いきなりイメチェンしてきて、理由聞いても真っ赤になるだけで教えてくれないし」
「…………」
「まさかねー、とは思うんだけど…ひょっとして倉島くん絡み? ね、君ってあの二人と何かあるの?」

 ゴックンと喉を鳴らし、呼吸を整え、俺は努めて平静を取り繕う。

「しししりしり知りませんよ、ななな何何ももも」
「うん、さっきからドモりすぎてテクノっぽいよね。大丈夫?」
「ン、ンンッ、大丈夫。ほ、本当に何も関係ないよ、俺」
「ウッソだぁ。今、死にそうになったくせにー」
「で、でも死んでないもん。ウソついてない証拠だもん」
「いや、でもかなり三途の川だったし。ていうか、ここで命賭けられても困るんだけど」
「藤沢さん。男ってのはね、誰でも命を賭けて守らなきゃならない秘密のフォルダが自宅のPCにあるのさ」
「何それ? 矢沢?」
「永ちゃんがこんなこと言ったら濡れるわ」
「やっぱり何か隠してるんだ」
「そんなことないって」
「ウソついてもダメ。わかってんだよー」
「ないよー。藤沢さんに隠すようなことなんて、全然ないって」
「ホントに?」
「ホントホント」
「だったら見せてよ、家のパソコン」
「そっちかよ」
「あはは」

 気がつくと、普通にしゃべってた。この俺が学校一の美少女と、放課後の軽いトークを交わしてた。
 これは俺の成長というより、やはり藤沢の力だった。
 キョドる、ドモる、声もボソボソ、という喪男の教科書のような俺でも、ポンポンと話を繋げていく彼女の話術で、いつの間にか会話が弾んでる。
 てか、楽しい。藤沢さんとのおしゃべり楽しい。
 相変わらず直視するにはまぶしすぎる美少女だが、彼女の心地よい声と転がるような会話のテンポ、それにちょっとしたことでも笑ってくれるリアクションが嬉しくて、結構しゃべれてる。いつの間にかオオヒラタシデムシの生態について熱く語っちゃったりしてる。しかも、わりとウケてるんだ、なぜか。
 やっぱり彼女はすごい。
 藤沢は、例え相手が誰であろうと、偏見なしに当たり前にしゃべれるからすごいんだ。
 もしも渡辺や三森のことがなければ、俺はあっさり彼女に心酔してただろう。こんな美少女が、自分と普通にしゃべってくれるってだけで、俺みたいな男は簡単にやられてしまう。浄水器でも何でも買ってしまう。
 藤沢がナンバーワンである一番の理由。
 彼女は敵を作らない。誰であろうと、彼女は自分の味方にしてしまう。学校社会での立ち振る舞いまで、完璧なのだ。
 
「もー、なんか上手くごまかされた気がするなー」

 髪をかき上げる仕草にドキーッ。
 もう、この人は本当にすごい。惚れる。惚れるしか選択肢はない。

「ま、いいか。引き留めちゃってごめんね。私、部活行かなきゃ」

 小っちゃくバイバイして、藤沢は背中を向ける。
 なんだか寂しい。もっと彼女と話したかった。今度はぜひ槍形吸虫の話でも。
 でも、それよりもっと大事なこと忘れてた。
 これはチャンス。決定的チャンス。
 藤沢は俺に背中を向けている。
 廊下には他に人もいるが、気にすることはない。俺が彼女に何をしようと、それに気づく人間なんていないんだから。
 藤沢の中に潜れ。彼女を俺のものにして、ここから連れ出せ。
 そして…ナンバーワンの彼女を、誰より先に俺が抱くんだ!
 俺は彼女の背中に手を伸ばす。呼び止めるフリして、その細い肩に手をかける。
 

 ───そして、誰もいなくなった。

 あ、あれ? あれれ? どうなってんの?
 賑やかだった放課後の廊下から、人の声が消えた。気配すら消えた。
 藤沢はいる。あいかわらず俺の目の前で背中を向けて、いる。
 俺と藤沢だけ残して、あとの人間だけ消えてしまった。
 ここは…どこだ? 学校の廊下なのか?
 俺は藤沢の世界に潜ったはずだ。なのにここは……それともここが、そうなんだろうか?

 ゆっくりと、藤沢が肩に手を乗せたままの俺に振り返る。

「ふーん…。やっぱり、ウソだったんだ」

 震えた。
 藤沢の声の冷たさに、俺は震えた。
 彼女は俺を、それこそオオヒラタシデムシでも見るかのように冷たい目で見て、俺の手を払った。
 藤沢は藤沢のままだった。子供でも裸でもなく、制服のままの藤沢綾音だった。

「あなたも、そっち系の人なんだね。それではるかとリナのこと、モノにしちゃったわけ?」

 よくわからないまま、俺は頷いていた。
 わかってるのは、俺の能力がバレてるらしいってこと。
 そしてここで主導権を握っているのは、俺じゃなくて彼女だということ。
 藤沢は、動揺する俺の前でくすりと微笑む。

「で、次は私の番ってわけだ?」

 顔が赤くなった。何が起こってるのかすらわかってないというのに、彼女の小首を傾げて微笑む仕草に、現実世界と同じようにドキドキしちゃったりしてる。
 見えない。何にも、見えてこない。
 誰もいない学校廊下で、藤沢と俺しかいない世界で、俺は彼女の心が見えないままでいる。
 俺は喉を震わせ、やっと思いで口を動かす。

「…ここ、どこですか?」

 藤沢はあきれたように笑って、髪をかき上げる。

「あなたの方から来たんでしょ? ここ、私の心の中よ」

 キラキラと、彼女の髪になびいて星くずが飛び散る。
 いつもの学校廊下。でもよく見るとそこには汚れも埃もヒビもない、ピカピカの廊下だ。窓もキラキラ。空気まで澄んでいる。
 誰もいない世界で、藤沢と、彼女を取り巻く全てが輝いていた。

「藤沢さんも、俺と同じ力を…?」

 今の俺と互角以上に対話できるなんて、普通の人間には不可能だ。考えられるのは、彼女も俺と同じ能力者だってこと。
 なのに彼女は、嫌悪感をあらわに顔をしかめる。

「じょーだんじゃないわ。あなたたちと一緒にしないで」

 彼女が嫌な顔をすると、俺まで悲しくなる。馬鹿なこと言った自分を後悔したくなる。
 藤沢の心に惹き込まれている自分に気づく。他人の心の中では、圧倒的に優位なはずの俺が、完全にこの世界の美しさに魅了されている。

「私はノーマル。普通の女。ただ、あなたみたいに異常な力を持った人たちに、心の中までイジられたくないだけ」

 普通だって?
 ウソだろ。こんなの見たことない。
 この世界は、現実を完璧に反射している。ただの反射じゃない。ありのまま受け入れ、正しく美化し、跳ね返している。
 それが本当なら、彼女は現実よりも完璧な現実を心の中に築いていることになる。てかそんなの、菩薩の領域だろ。生身の人間がそんなことできんのか?
 この世界には“美”しかない。エゴもコンプレックスもトラウマもない。

「…そんなこと、できるはずない」
「できるわよ。あなただって私の中を覗いてるんだから、わかってるでしょ」
「わかるわけないって! なんだよ、これ? なんでこんなに……きれいなんだよ…」

 藤沢はまた眩しい笑顔を見せる。
 そしてスカートを摘んでほんの少し持ち上げ、俺に見せつけるように眩しい太ももを輝かせ、さらさらの髪を泳がせる。
 俺は息を呑む。彼女の美しさがさらに輝きを増す。心を奪われる。
 彼女が浮かべるのは、まさに最強美少女の微笑み。

「だって私、完璧だもん」

 目が潰れた。まぶしい光に溶けてしまいそうだった。
 主人公の必殺技に巻き込まれたザコ敵のように、俺はこの光であっさり塵になってしまうと思えた。

 そう。藤沢綾音はいつも完璧だった。

 勉強でもスポーツでもミスコンでも休み時間の教室でも、彼女が誰よりも一番で、誰よりも輝いていた。
 でも、心の中までそんなのアリか。
 どんな美人もイケメンも、心の中にはドロドロした欲望やコンプレックスの一つや二つあるもんだろ。現実どおりに完璧なんてあるはずない。むしろ薄汚れた都会の空気まで洗浄してしまうほど美しい心なんて、あるはずもない。
 逆にそれこそ、狂気の沙汰だ。

「なんで…」
「ん?」
「なんでそんなに、メンタル強いんですか…?」

 一分の隙もないとは、まさにこのこと。
 彼女の心は、まるで魔法の鏡だ。傷一つない鏡だ。
 だが、なんのためにここまで内面まで磨き上げる必要がある。
 サトラレでもない限り、普通はそこまでする気を配る必要もない。むしろ外見が完璧な藤沢綾音だからこそ、内面には自由な醜さがあってもいいはずだ。
 四六時中、心の中まで完璧なんて、そんなの普通の人間にできるはずがない。どんな聖人君子でも無理だ。そんな努力をしようなんてすら考えもしないはず。
 なのに、なんで?
 藤沢の表情が、少し曇る。

「…うちの母、知ってるんでしょ?」
「え?」
「生意気なコンビニの店員って、あなたのことでしょ? 同じモノを持ってる人がいるって、お母さん言ってた」

 吐き気をもよおして、膝をついた。
 思い出したくもない女の顔と、彼女の世界を思い出して、死にそうになった。

 布団ババア。

 俺が能力に目覚めるきっかけを作った女。最恐最悪のイカれた女。
 ていうか、親子だって? 藤沢と布団ババアが?
 その話がまた、あまりにも衝撃すぎて吐きそうだった。

「私の一番身近な人が、あなたと同じ異常者だったのよ。私は小さい頃から、24時間、母親に監視されていた。思いもかけないことで叱られるし、殴られるし、最悪。そしてあの人は決まって言うの。『お前の考えてることは全てわかってる』って。『心の中にもお前の逃げ場はない』って。私はどうやったらそんな化け物から自分を守れるか、ずっと考えてた」

 布団ババアは、自分の能力を隠したりしない。他人のコンプレックスや秘密を突いて恐れさせることを楽しんでいる。
 俺のバイト先の先輩もそうだった。ババアに何か言われたから様子が変になった。あれはきっと、先輩しか知らないはずの過去の傷をババアがえぐったに違いないんだ。
 確かにあのババアなら、自分んちの子どもだろうが、どこまでやるかわかったもんじゃない。

「完璧な人間になるしかなかったの。誰から見ても、心の中まで覗かれても完璧な人間に。あなたたちに弱みなんて絶対見せない。そのためなら私は何も欲しくない。嬉しくない。悲しくない。落ち込まない。あなたたちの勝手な期待も欲望も嫉妬も完璧に打ち返して完璧に生きて見せるわ。そして最後まで勝ち残って、藤沢綾音のまま死んでやる。誰があんな人の奴隷なんかになるもんですか」

 一瞬だけ、世界にノイズが走った。彼女の悲愴な決意と怒りが、一本のノイズになって走り抜ける。
 でも、それだけだ。彼女の完成された世界には傷一つ入らない。

「だから、私は完璧なの」

 彼女の微笑みは、相変わらず慈愛と美しさと可愛らしさに満ちている。
 圧倒的な強さと自信の上に、可憐に彼女は君臨している。

 パーフェクト・ワールド。

 壮絶な親子関係の中で、何年も重ねて作り上げた不可侵のメンタル強さ。藤沢綾音がいるだけで、ただの学校廊下が世界遺産並に神々しく輝く。それはもう、常人の域を超えた驚異の精神力で。
 ここまで壮絶な覚悟で、完璧に生きてきた人間に、俺なんかが勝てるわけない。
 例え勝ったとしても、彼女の背後には布団ババアがいる。この恐るべき親子に、俺みたいなポッと出の新人エロ能力者が太刀打ちできるわけない。
 敗北感と恐怖が俺の膝を震わせる。立ち上がれない。

「で、あなたは何? はるかとリナみたいに、私も簡単にモノにできると思ったの?」
「…お、俺は…いや…」
「いい気にならないで。その力があれば誰でも抱けるとでも思った? 誰でも自分の思いどおりになるって、本気でそう信じてた?」

 藤沢は、フンと鼻を鳴らして俺を見下す。

「最低だね、本当に。あなたなんかに興味もなかった女を操って、自分勝手な彼女ゴッコの相手させて楽しいの? それ、アニメやゲームで彼女作るのと、どこが違うの? まさかあなた、そんなので自分が神様にでもなったつもりだったの?」

 やめてくれ。もう言わないで。
 藤沢には何も反論できない。心を暴かれたのは俺の方だ。

「ただのキモオタ野郎が、犯罪者になっただけじゃない。あなたのやってることは犯罪よ。自分がモテないからって、女を卑怯な力でオモチャにしていいと思った? それで勝ったつもり? バカ? ヘンタイ? 気持ち悪すぎるよね?」

 言葉だけで俺をズタズタにしていく。
 これだけきつい言葉を使っても、彼女の美しさは何も変わらない。俺の醜さを、彼女は丁寧に跳ね返しているだけだから。
 悪いのは俺だ。俺が最低のクズ野郎だから。
 追い詰められていく。心がズタズタに引き裂かれていく。完璧な彼女の、完璧な罵りで。

「……死ねば?」

 俺は悲鳴を上げて、彼女の世界から逃げ出していた。

 ───現実の廊下に戻ってくる。

 目眩がして、膝をついた。
 藤沢も俺から離れ、怪訝そうに顔をしかめた。

「今、私の中に入った…? やっぱり、あなたもお母さんと同じなの? コンビニの店員って、あなたのこと?」

 怖くて藤沢の顔が見れない。
 俺は膝をついたまま、震える自分の体を抱えて、頷く。土下座しそうな勢いで、頷く。

「はるかとリナにも、何かしたのね?」

 しました。俺は彼女たちにひどいことをしました。
 現実の藤沢にも、俺は抵抗できずに正直に頷く。

「そう。やっぱり、そうなんだ」

 冷淡な声が、逆に怖かった。俺は縮こまって震えるばかり。
 でも周りの人目を気にしたのか、藤沢は語気を柔らかくして、俺に近づいてきた。

「…倉島君、大丈夫? 具合でも悪いの?」

 演技になんて見えない。いつもそうしているように、具合悪そうな同級生に声をかけているだけにしか見えない。周りにいる連中だってそうだろう。
 藤沢綾音は、そういう子なんだ。そういう風に出来ている。誰もがそういう子でいて欲しいと期待しているから。

「あなた、どこかおかしいのかな? うちのお母さん、その手のビョーキに詳しいから、教えておいてあげるね。あなたのしたこと全部」

 そして、俺の耳元には強烈な爆弾を落としていく。
 布団ババアに引きずり込まれたあの光景。ドロドロの悪臭と息苦しさ。
 ババアに勝てる気なんてしない。今度こそ俺はあの世界で殺されてしまう。

「ご愁傷さま、シデムシ君」

 最悪の慰めの言葉を残して、藤沢は去っていった。
 俺は廊下にしゃがみ込んだまま、周りの好奇とからかいの視線を集め、ガタガタと震えている。
 吐き気が込み上げる。対人恐怖症がまたぶり返してくる。
 怖い。怖いよ。俺を見ないで。

 耐えられなくなって、廊下にぶち撒けてしまった。
 その辺にいた同級生たちが、驚きの声と、爆笑と、冷たい視線を遠慮なくぶつけてきた。
 俺はそのまま動けない。ゲロ吐いて、ボロボロ泣いて、震えてた。

 消えてなくなりたいと、マジで思った。

< 続く >



「ん…ちゅ、ん…は…んん…ちゅ、ちゅぷ…」

 ここは階段を昇りきった先にある、屋上に続く扉の前だった。
 古い机や備品が放置されていて、使われている気配もなかった。
 渡辺に嫌がらせのつもりでメール出した後、俺は爆笑しながら教室から出てきた彼女に拉致され、ここまで連行された。
 そして俺のシャツを摘みながら、「ここならたぶん、誰も来ないよ…」と声を潜める渡辺に、すさまじい萌えと性衝動を感じて抱きしめてしまったというわけだ。
 どうしてこうなったのか、難しいことは俺にもわからない。
 ただ確実に言えるのは、俺たちは今、チュッチュしている。
 学校で、朝イチから、みんなに隠れて濃厚なチュッチュをしている!

「んっ、んっ、んんッ…ふぅ…ん、ちゅ、ちゅぷ…はぁ…れろ、ちゅう、れろ……」

 渡辺の舌が俺の歯を優しく撫でる。俺も舌を伸ばして彼女と絡め合う。
 絡む。クチュクチュする。渡辺が俺の舌を吸って、フェラみたいに唇でしごいてくれる。
 彼女の腕が俺の背中に回される。俺も彼女を抱きしめる。
 柔らけー。唇もプルプルしてる。しかも渡辺って、超いい匂いするんだ。
 リアル女子校生、最強。ラブプラスなんてただの絵だよね。
 俺たちは長いキスをする。ハートが50個くらい飛び交う、こってりしたキスをする。
 ベロとベロがレロンレロンとスケベに絡まり、お互いの唾液を音を立てて吸い合い、背中撫でたり、尻を触りっこしたり、まったく渡辺のいやらしいことときたら。
 あいかわらず、俺の学校生活は超展開の連続だった。奇跡が続きすぎてバチカンにもマークされてるって話だ。
 渡辺との学校チューは激しく興奮する。しかも今はほんのわずかな休憩時間。寺田も同じ校舎にいるっていうのに、そのプチスリルが俺を興奮させた。

「ん…ねえ、本気なの、あのメール。うそだよね? 私、さすがにそういうのは困るんだけど…」

 もちろんあんなメール、ウソに決まってる。ただの嫌がらせだ。むしろ本気にされても困るってか、逆に俺が痛い。
 まさか朝イチで女子にマジフェラを要求するなんて行為がまかり通るほど、うちの学校ランク低くないし、俺もそこまでエロゲ脳withジャンルMCじゃないし。
 昨日、三森と図書室スパンキングプレイで学校図書をふやけさせてしまったのだって、ほんのはずみなのさ。
 だけどどうなの、君のその濡れた瞳は?
 どうして吐息がそんなにも熱いんだ? なぜ俺の髪を優しく梳きながら、首の後ろに手を回し、甘えるように体を寄せてくるんだい?
 まさかキスだけでもう興奮してしまったのか? 学校でフェラする自分を想像して濡れたのかい? ん?
 まったく、ここはエロマンガ島かっつーの。マン湖かっつーの!
 まあ、かくいう俺も、とっくにパンツの中がグチョグチョなんだけどさ。

「もちろん、本気だ」
「えー」

 俺はキリっと真剣な目で渡辺にお願いしてみた。
 渡辺は「えー」とかいうわりに嬉しそうに微笑み、俺の腕をギュッと握って、可愛い上目遣いで接近してくる。

「ねぇ、倉島…ひょっとして怒ってる? だからそんなイジワル言うの?」
「え、なんで?」

 怒るわけないだろ。だって渡辺は、寺田を教室に置き捨てて俺のところに来てくれた。こんなところに連れ込んでチューまでしてくれた。
 確かにまあ、寺田とイチャイチャしてる渡辺を見て、ちょっとだけイラっときたけど、でもそれ俺が渡辺に怒る義理じゃないし。
 むしろ別の意味で俺はいきり立っているから、一刻も早くしゃぶって欲しいんだって、きっぱりと言ってやった。
 でも渡辺的にはなんか違うらしく、「そうじゃなくて」と、俺の手をグイグイ揺らす。

「もー!」

 いきなり俺に体当たりしてきた。そして壁に後頭部をぶつけた俺に、体を寄せて見上げてきた。

「バカ。エッチ。…そんなこと聞いてんじゃないの」

 なんなんだよ。何スネてんだよ。てか本気で痛ぇよ。
 ったく、よくわかんねえけど、ちきしょ、その顔も可愛いな! チューしてやる!
 しかし渡辺は、するりと腕をすり抜け、体を沈めた。そして、ちょこんと俺の前で跪き、やや頬を染めたツン顔で、俺を見上げた。

「……誰かきたらすぐ教えてね。絶対だよ?」

 とか言って、渡辺は俺のベルトを外し、ズボンのチャックを下ろす。

「信じらんない。学校でこんなことさせるなんて、ほんと倉島エロい。AVかっつーの」

 …つか、マジしてくれるんですか? 今ここで!?

「ちゃんと見張ってる?」
「ま、任せとけ!」

 この体勢で階段下を見張れるのは俺だけ。しかし俺は、どちらかと言えば今から学校フェラしてくれる渡辺をもっと見ていたい。
 渡辺は、トランクスの中で熱く息巻く俺のサラマンダーを見て、頬をますます赤くした。

「もう固くしてる…エローい」

 そんなのてめーがその可愛い顔で俺のズボンを脱がしたり下から見上げたり髪を色っぽく耳にかけたり俺の足の間にちょこんと座る短いスカートの白い太ももが眩しかったりこの角度から覗けちゃってるブラウスの胸元がちょいセクシーってかそもそもお前の胸がでかいからだろうがバーカ!

「ごめん」

 謝っちゃった。

「いや、謝られても」

 渡辺はクスクス笑いながらトランクス越しに俺のに触れる。
 ゆっくりとなぞられる、優しいタッチのくすぐったさに、俺は震える。

「あのさ…私、倉島のこと、修吾とか…シュウって呼んでみようかな。ふたりっきりのとき限定で。いい?」
「え…あぁ、うん」

 シュウか。いいかもな。女に愛称で呼ばれるなんて、母親以来だな。
 渡辺の指先に優しくくすぐられて、俺はふわふわした気持ちのまま、適当に相づち打つ。

「シュウも私のこと、はるかって呼べばいいよ」
「う、うん…」

 渡辺の手が、焦らすように俺のトランクスを下げていく。ぞわぞわと腰がしびれる。
 あぁ、たまんない。もうすぐ渡辺がしゃぶってくれる。この美少女顔を俺の股間に埋めてくれる。あの魔法の唇で俺を幸せにしてくれる!
 やがて完全に戦闘体勢に入る俺のダンディズム。チラリとそれを見て、頬を染めて下を向く渡辺。
 どうした渡辺? 早く攻めてこい。そして俺のダンディズムに悲鳴を上げさせてみろ!
 渡辺は、モジモジしながら言う。

「そ、そんでね…あの、ふたりっきりのときとかさ、あとメールのときとかくらいは…私のこと、ちゃんと彼女扱いして欲しいなあって思うんだけど…ど、どうかな?」

 俺のダンディズムが、キャウンと可愛い悲鳴を上げた。
 その声、その瞳、その表情、とてつもなくそそる。男子なら間違いなく全員起立。俺もカウパー浮かべて降参さ。
 可愛い。なにこれ。渡辺すげー可愛いんだけど。たまんない!

「はるか、舐めて。俺、はるかに舐めて欲しい!」
「え…うんっ。シュウの、舐めてあげるね。んっ」

 嬉しそうに微笑む渡辺に、いきなり深いところまで飲み込まれて、思わず声を出してしまうところだった。そのまま頬をすぼめて思いっきり吸われて、背筋までゾクゾクした。

「んっ、ぢゅ、んっ、んっ、んっ、ちゅ、じゅっ、んっ、んっ」

 いきなり全開のピストン運動。
 渡辺の小さい顔が俺のを咥えて激しく前後する。なんて凶悪な快感。気を抜いたら精子どころか膀胱から腎臓まで引き抜かれてしまいそうだ。
 渡辺はやっぱりすごい。俺が待っていたのはこの快感なんだ。渡辺最高。超いい女。
 俺はグッと歯を食いしばる。だが、押し寄せる快楽の津波は俺ごとき無力な蟹野郎など一瞬で飲み込み、フェラチオという性の大海原に溺れさせ、小魚どもが俺の陰茎に群がり、ツンツンチュパチュパ吸い付いてきて、タコさんまで絡みついてきて、わかったわかった、お魚さんも、タコさんも、バキュームフェラさんも、ケンカしないでみんなで仲良く遊びましょって、ちょ、ちょっと、ちょっと待って、渡辺! 吸いすぎ!

「はるか! やば、それ、ちょっと、すごっ、すごいよぉ! ちょっと、待ってぇ!」
「んーっ。ダメっ、ん、授業、始まっちゃう、からっ。んっ、ちゅぶっ、早く、出してっ、シュウ、んっ、んっ、んぷっ、んっ」
「いや! いやいや! もっと優しく! 優しくしてぇ!」

 思わず腰が跳ね上がる刺激。脳がバキバキに痺れる衝撃。
 ヤバい。ヤバすぎる。何がヤバいって、俺、ヨダレとかすんごい出てるし、アホみたいな顔してる。クスリやってると思われる。
 このままでは俺はあっけなく射精してしまう。だが、そんなのもったいない。せっかく渡辺が学校でフェラしてくれるのに。このショコラのような贅沢なひとときをもっとじっくり味わいたいのに!

「ちゅっ、ん、もう、シュウ。我慢しちゃダメだってばぁ」

 一旦渡辺が俺のを口から出す。ホッと息をついたのもつかの間、彼女は俺の亀頭の上で舌をくるっくる踊らせた。しびれる快感に、俺のブルーアイズホワイトドラゴンも悲鳴を上げる。

「んっ、ちゅ、れろ、んっ、ねえ、出して、シュウ。ちゅ、ねえってば、シュウっ、んっ、ちゅぷ、もう、お願いだから、れろ、ちゅぷ、ちゅぅ…」

 文句を言いながらも彼女の舌はチロチロと俺のポイントを的確に攻撃してくるし、右手は俺のを握りしめ、素敵なリズムで刺激してくれるし、唇は優しく俺のカリを飲み込み、先走って溢れる欲望を吸ってくれる。
 さすが渡辺マイスター。美結みたいなド素人では話にならん。三森ではテクニックが足りない。
 渡辺じゃなきゃダメなんだ。今の科学では無理なんだ。
 この天使のフェラチオだけは!

「は、はるかっ、次の、授業、サボらない? 俺、もっとはるかと……ッ!」
「んーんっ! そういうのよくないよ、シュウっ。授業には、ちゃんと、出るの、んっ、んっ、んっ」

 ガポッと再び口の中に入れられ、その温かさと柔らかさで腰が砕ける。なんて絶妙な吸引力。渡辺のきれいな顔がいやらしく前後に動く。舌が丁寧に俺の陰茎に絡まる。俺は業界ナンバーワンの確かな技術力を実感する。

「はるか、すごいよっ。気持ち良すぎるっ。授業なんてサボっちゃお! お願い!」
「ダメだってば、んっ、んっ、延長、禁止っ」

 渡辺は、フェラしながら頭の上に指でバッテン作った。俺は舌打ちする。

「んっ、ちゅぷ、イって、んっ、もうイって、シュウっ、んっ、んっ、んっ、出してよぉ、もうっ、ちゅぶ、ちゅぶっ、ちゅうっ」

 こう見えて根が真面目な渡辺は、授業前に俺の射精を終わらせるため、懸命に口と手を動かす。だが俺はその奉仕が気持ちよすぎて、少しでも長らえようと必死に射精を堪える。
 愛のフェラチオは、いつの間にか俺と渡辺の真剣勝負に変わっていた。
 だって次の授業なんて何よ?
 ジジイ先生の倫理だぞ。そんなのどうでもよすぎるだろ。
 てか、俺ら学校でフェラまでしといて倫理って(笑)

「んー、ちゅ、んっ、んっ、んー…シュウってば、何笑ってんの?」

 渡辺が俺を口から出して、よだれのついた唇をぺろりと舐めた。色っぽい舌。俺を見る目が、妙に挑戦的でぞくぞくする。

「さては、私にもっとエロいことさせる気でしょー? ホントにもう、エッチだなあ……じゃ、すっごいことしちゃうからね?」

 渡辺は、俺の股間に顔を埋めて、右手で陰茎をシコシコ擦る。そして袋の方を優しく舐め始めた。

「うはぁ……」

 それもかなり気持ちよかった。渡辺の舌は本当にヤバい。チロチロとレロレロと本当に器用によく動く。
 絶え間ない快感が俺の睾丸を刺激する。ノックする。ええ、そこパンパンに入ってるからあんまりイジらないでくださいって、怒鳴りつけてやりたいくらいに!
 なのに、渡辺はもっと深く舌を伸ばしてくる。俺の股の間に潜るようにして、その後ろの穴にまで舌を這わせてくる。

「うわ、はるかっ、そこはッ!?」
「んー? ふふっ、ん、れろ、んー」
「ダメ!? はるか、そこダメ! そこ、汚いところだから…ら、らめぇぇぇ!」
「ん、ちゅぷ、れろ、ん、ちゅ、れろ、れろ、ン…ね、ここって、どう? ん、ちゅぷ、はあ、気持ち、いい? ちゅ、ん、れろ、ねえ、どう? ちゅ、はぅ、ちゅぷ、ちゅー…ねえ、シュウ? んっ、聞いてる?」

 そのとき、俺の意識は肉体から離れ、遙か時空を超えた場所でトムクルーズとハグしてた。
 マジでこんな体験初めて。信じらんない。
 俺は今、宇宙と一体になってる。全ての苦しみから解放され、神とアナルで対話してる。
 渡辺が俺のこんなところを舐めてくれるなんて。彼女のあの気持ちのいい舌が、俺の一番汚い穴の中まで入ってきて、ちゅうちゅうと可愛い音を立てて吸い付いてくるなんて。
 彼女にとって、俺は特別な男なんだって実感する。マジで俺は渡辺に愛されてる。ためらいのない舌使いでそれが伝わってくる。
 俺も渡辺のことが大好きだ。愛してる。俺はバケツの中で飛び跳ねた。シュウ、はるか、好きー! 

「あぁ、俺、もう……」

 頭がおかしくなっていた。 

「うんっ。それじゃ出しちゃおうね、シュウっ。んんっ、んっ、んっ、んっ、んっ」

 再び渡辺は俺の腰にしがみつき、喉の奥まで俺のを飲み込んでピストンを開始する。
 強い吸引が残り少ない俺のHPを根こそぎ奪い、ギュッと抱きしめられた太ももに柔らかい胸が押しつけられ、細い指が俺の内股や陰嚢、アナルのあたりまでコチョコチョとくすぐられて脳みそが溶けていく。
 もうダメ。完全に俺の負け。
 つーか、こないだまでクソ童貞だったヤツが、渡辺みたいな本格派の職人に勝てるわけじゃん。バカじゃねーの。
 素人は、ヨダレ垂らして「出る出るぅ」とか言ってればいいんだよっ。

「はるか、出るッ、出るぅッ!」
「んっ! んんっ! ん~~ッ!」

 渡辺がじゅぅぅぅっと俺のを吸い込んだ。熱いカタマリが尿道を突き抜け、弾けて飛んだ。
 彼女の喉の奥で、俺のラオウが真っ白になって天に召された。気づいたら空も晴れていた。恐怖の時代が終わり、愛の時代の幕が開けた。
 すごかったよ、はるか。
 俺、完敗だった。愛ゆえに俺は敗けた。清々しい気分だ。

「ん~ん~」

 しかしそんな渡辺は、口の中の精液を持て余しているところだった。

「あぁ、悪い」

 渡辺は、あんだけフェラ達人のくせに意外にも精液の味と匂いが弱点らしく、すぐに吐き出したがるんだ。
 俺は駅前で貰ったポケティを紳士的に差し出した。でも、渡辺は首を振って手でそれを制する。そして、コクリと喉を鳴らした。

「んっ、んん…」

 コク、コク、と渡辺の喉が動く。
 飲んでる。
 今まで何度も口に出しても、すぐにティッシュに吐いてた渡辺が、まずそうな顔して、俺の精液を飲んでる。何億という俺を、飲み下している!

「うっわ~。もう、これすごいネバるよー」

 などと真っ赤な顔を笑って誤魔化す渡辺に、俺は感動していた。2人の気持ちがアレしてアレになってくのが、恋愛童貞である俺にもわかった。
 俺たちすごい。超カップル。もう俺たちケータイ小説を超えた。エロさでは負けるけど、純愛さで勝った。

「だから、すぐそうやってエロい顔しないでってば。バカ。ふふっ」

 そう言って、渡辺は腰にしがみついてきた。
 俺の陰茎に彼女の熱いため息が吹きかけられる。ピクンと俺のが反応してしまう。

「は~あ…もう、シュウの彼女って、思ってたより大変だなあ。いつでもどこでも、しゃぶらされてさ」

 わざとらしくスネた口調で、チュッと太ももの付け根あたりにキスをする。陰毛のあたりをチロチロ舌でくすぐられ、ムズムズしちゃう。

「ま、いいんだけどね」

 くすっと笑う息がくすぐったくて、むずむずする。艶めかしい渡辺の仕草と舌に、また俺の性欲が痺れる。
 ポニテの髪を撫でた。気持ちよさそうな声を漏らす渡辺。それが可愛くて、あとラブプラスで鍛え上げた俺の撫で撫でスキルの上達ぶりを試したくて、顔とか耳とかを撫でまわした。

「ふっ…ん」

 渡辺はうっとりとため息を漏らす。あれ、マジで俺のスキル向上してる?
 まるでキス前のネネさんのように色っぽい渡辺の顔。「ん…」ていう微かな声に興奮する。むくむくと回復していく俺のタッチペン。渡辺がそれを優しくシコりながら、唇を舐める。
 俺と同い年のくせに、なんて色っぽい表情するんだよ。ぞくりとする。否が応でも期待してしまう。
 そんな俺を見透かすように視線を上げ、俺の目を見つめたまま、渡辺はまた濡れた唇で俺のにキスをしてくれた。舌でチロチロしてくれた。
 あの渡辺が、イジられっ子の俺なんかの下に跪いて、こんなことしてくれちゃうなんて、やっぱりすごい光景だって、あらためて思う。
 他人の心の風景にダイブできる俺のヘンテコ能力のおかげとはいえ、俺ってマジで神様に愛されてる。てか、フェラされてる。

「んっ…シュウ…ちゅっ」

 渡辺の細いアゴを撫でてやりながら、俺は彼女の中の『小さなはるかちゃん』に会いに行った。

 ───小さなはるかちゃんは、大きなお兄ちゃんをぺろぺろしているところだった。

「うはぅおぅふ!?」

 今日もヤバい絵をありがとう。
 精神世界の、ロリンロリンで全裸の渡辺が、俺のお兄ちゃん心のツボを知り尽くしたかのような女子座りで、小さな両手いっぱいに俺のをにぎにぎしつつ、ピンクの舌で先っちょを舐めていた。
 俺の平均的なアレが、やけに大きく見える。現実世界の渡辺の前では子犬のように大人しかった俺の肉棒が、この小さな渡辺の前では釘バットに見える。
 ホントこれが心の旅で良かった。お外の世界なら完全に犯罪ですから。

「はるかちゃん、気持ちいいよ」
「ん…ふふ、ありがとー」

 俺が頭を撫でてやると、小さな渡辺は俺のを握ったまま満面の笑顔を浮かべる。超可愛い。可愛いの極致だ。

「はるかちゃんは、男の人のチンチン舐めるの、好きなの?」
「んー…あんまり好きくなかったよ」
「でも楽しそうに舐めてるよ?」
「へへへ」

 俺がそういうと、渡辺は恥ずかしそうに身をくねらせた。

「だって、はるかはお兄ちゃんの彼女だもん。彼氏にするのは別だよぅ。お兄ちゃんが喜んでくれるから、大好き!」

 真っ赤になった頬を両手で隠して、また「えへー」と渡辺は笑う。
 そのあどけない顔面に、カウパーを噴射しそうになった。

「俺のこと、そんなに好きなんだ?」
「うん!」

 渡辺は、こっくりと頷いてくれる。幸福感に溺れちゃう。
 この小さな渡辺は彼女の心の核。無意識が人格化されたもの。だからこの子の言葉にはウソがない。女の見栄も計算もない。
 渡辺はるかは、100%の本心で俺のことを愛して、喜んでフェラしてくれているんだ。
 胸が熱くなるな…。

「あ、そうだ。お兄ちゃんに、いいもの見せてあげる」
「うん?」

 そう言って、渡辺は立ち上がって俺の手を引く。
 現実の彼女のより一回り小さな手を握り返して、俺は彼女の後について行った。

 彼女の心の中は、砂漠のオアシスに佇む、鉄の城で出来ている。
 彼女は自分自身をそこに閉じこめ、セックスと母親に捨てられた悲しみから逃れ、自分を守っていた。
 ここはその一番奥にある彼女の部屋。母親のいた頃の幼い自分の部屋を再現したこの場所で、1人で膝を抱えていた彼女に安心と快感を与えながら抱くことで、俺は渡辺はるかを手に入れたんだ。

 でも、今日はそこに新たな扉が増えていた。こないだまでは壁しかなかった場所に、白い扉が付いている。
 小さな渡辺が、その扉を開き、俺を招き入れる。
 俺は期待に胸を膨らませて、扉をくぐる。

「ひぃ!?」

 そこは、ひたすら女の子好みの、死ぬほどファンシーな部屋だった。
 思わず鳥肌立っちゃうくらい、可愛いもの大集合だった。

「あの…はるかさん、こ、ここは?」
「ふふ、びっくりした? あのね、ここはお兄ちゃんとはるかの部屋だよ!」
「ええッ?」

 閉じこめられたら5分で脳みそクラッシュしちゃいそうなくらい、女の子仕様の部屋である。
 真ん中にリラックスしたクマの丸いベッド。それを360度監視するかのように並ぶぬいぐるみたち。壁紙から天井まで花柄が埋め尽くし、ピンクピンクでカラフルなキャラクター家具がその隙間に埋まっている。
 クラスの女子の中でも大人っぽい感じで、リアル部屋にもぬいぐるみ一つ置いていない渡辺が、その奥底にこんなにもカラフルな女の子趣味を隠してたとは。
 戸惑う俺に、小さな渡辺は、シーッと人差し指を口に当てて声をひそめる。

「ここはね、秘密のお部屋なの。お兄ちゃんとはるかだけの秘密。誰にも言っちゃダメだからね?」
「秘密?」
「うん。はるかが作ったの。お兄ちゃんとはるかが、誰にも邪魔されないで、ふたりっきりになれる場所。だからここはお兄ちゃんのお部屋だよ。はるか、絶対大事にするから、いつでも遊びにきてね?」

 その瞬間、俺には彼女の気持ちが見えた。
 やりすぎじゃないのってくらい女の子全開のこの部屋は、渡辺の素直な感情を表してる。
 彼女は、自分の心の一番深い場所を、俺と共有したいって思ってくれている。それを許せる俺と一緒にいるのが、楽しくて嬉しくて仕方ないんだ。
 だから、ハシャいでしまってる。美人でセンス良くてモテモテガールな渡辺が、俺ごとき蟹野郎を相手に、ハシャぎすぎて空回りしちゃってる。
 こんなにも恥ずかしい少女趣味全開の部屋を、心の中にビフォーアフターしちゃうくらいに。
 でも、なんということでしょう。
 ここにはもう寂しかった彼女はいません。
 素っ気なく頑丈な鉄骨で、秘かな孤独を守るだけだった彼女の城には、今は大きく堂々とした窓が備え付けられています。砂漠だった外の景色も、だだっ広い緑のオアシスに変わっていました。
 砂漠の鉄の城の一番奥、秘密の部屋のその向こう側には…彼女がずっと欲しがっていた、心の潤いが満ちていたんだ。

「お兄ちゃん、ここ座って」

 ポンポンとベッドを叩く渡辺に従って、腰を下ろす。渡辺が俺の足の間にちょこんと女子座りして、嬉しそうに俺のチンコを握りしめる。

「続きしてあげるねー」

 ちゅっと、キスをして舌でくすぐってくる。
 ムズ痒くて単調な奉仕だが、チロチロ、ペロペロ、一生懸命舐めてくれる小さな渡辺を見ていると、テクニックがどうとか、どうでもいいように思えてくる。
 そういや最初に口でしてくれたときにも、渡辺はフェラが好きじゃないって言ってたっけ。
 当たり前だよな。こんなの舐めさせられるほうにしてみれば、くっせーだけで美味くもないし、気持ち良いわけでもないんだし。
 せいぜい、頬のむくみがちょっと取れるくらいだろ?
 でも、あのときも、今日だって、渡辺は一生懸命しゃぶってくれた。俺が気持ちいいって言ったら、何回もしてくれた。
 気持ちなんだ。
 フェラチオって、女の子の優しさなんだよ。

「はるかちゃん」
「んん?」
「大好きだよ」
「やったー!」

 こんだけクラスメートとエロいことをしておきながら、いまだに彼女いない歴=年齢の鈍感喪男な俺だが、渡辺が俺にどういう気持ちを抱いてくれてるかってことくらいは、十分に伝わった。
 あと、俺にヤキモチやかせたくて寺田とイチャついてみせた、その女心もね。
 不安にさせちゃってごめん。
 今度から、メールの返事くらいはすぐに返すよ。
 

 ───そして現実の渡辺は、俺に本格的な口奉仕を開始したところだった。

「うはぅおぅふ!?」

 舌を絡めながら口の中に飲み込まれ、ズポズポと擦られる。キュッとへこんだホッペタがその容赦ない吸引力を物語る。右手が俺の陰茎を絞る。親指で根元をクリクリ刺激してくる。
 反則だ。
 たった一瞬で、さっきまでのほのぼの感がエロスに塗りつぶされていく。
 まったくもって、フェラは技巧だ。テクニックが全てなんだよ!

「…は、はるか! そろそろ教室戻らないと…!」

 しかし、そろそろ時間的には限界だった。
 まだ賢者タイムを残している俺は、冷静に授業に遅刻することの危険に気を回す。
 いくらなんでも、俺と渡辺が2人そろって遅れて教室に入るのは目立ちすぎる。

「うん、でもシュウの……や、やばくないかな?」

 しかし渡辺は、すっかり伝説のポケモンと化した俺のを見て、困ったような顔をする。俺だって困り顔だ。つーか、そもそも渡辺のせいだろうが。

「ね、シュウ…もしも2人でサボっちゃったら、みんなにバレるかな? 大丈夫だと思う?」

 その問題について、賢者的に考えてみる。
 例え俺と渡辺が2人揃って授業をサボったところで、いったい誰が俺たちの関係を怪しむというのだろうか。
 まさか同クラに彼氏もいるモテ系女子の渡辺が、俺のような蟹野郎と逢い引きしてるなんて、誰もが想像だにしないだろう。
 ていうか渡辺はともかく、教室のエアー的存在である俺がいないってことに、誰が気づいてくれるだろうか?
 俺たちは十代の健全な男女だ。場所も選ばずセックスして当然なんだ。
 むしろこのエロい空気を置き去りにして授業なんかに出ることこそ、若人らしくないというべきではないだろうか。
 ですよね、クラーク先生!

「はるか、そこに立って」
「え…こ、こう?」

 賢者の衣をビリビリに破り捨てた俺は、渡辺を壁際に立たたせ、自分でスカートを持ち上げてパンツを見せろという、夢のエロ行為をお願いしてみる。

「……ほんとスケベだなぁ、シュウは……」

 恥ずかしそうにしながらも、俺の言うとおりにしてくれる可愛い渡辺を、俺は授業が終わるまでパンパンパンパン抱き続けるのだった。

「あぁっ、だめぇッ、イッちゃうよぉ、シュウっ、あ、あぁ! 私、私、また、あぁッ、あぁぁ! あぁ…ぁ…もう許して、シュウ…なんで、こんなに気持ちいいのぉ…んっ、あ、あっ!? やっ、また、そんなに、あっ、あぁ、だめっ、だめだめ、シュウ! 私、大っきい声出ちゃうからッ、ダメッ! イク、イクっ、あぁぁ、イっちゃ…あっ、あっ、んっあぁぁぁぁッ! …ぁ…や、やあ…んっ、んん! …んっ…んくっ…ちゅぷ、ちゅ…ん、もう…シュウの、にがいよぅ……」

 いえ~い。
 渡辺、エロい!

形而上の散歩者テルマ

~学校の廊下でゲ○を吐いたら妹が大変なことになった件~

 そんなわけで俺の腕の中でキャンキャン可愛い声で鳴く敏感美少女をイカせまくったあげく、最後にまた口出し精飲なんかもさせちゃって、ようやく性欲の平穏を手に入れた俺、倉島修吾。
 やっぱ渡辺はいいわ。満足度ハンパねぇわ。
 教室に戻って次の授業は普通に受けて、俺は軽やかな足取りでションベンへ向かう。
 さっきの濃厚なラブラブエッチを思い出したり、授業中もチラチラと俺にラブリービームを送ってくる渡辺を見てたら、何度も軽ボッキしてたまらんかった。
 まったく、渡辺は俺の前立腺を殺す気かよフフフ。

 そんな感じでニマニマしながら廊下を歩くキモい俺の前に、壁を背にして佇む1人の少女がいた。
 うわ、こんな可愛い子、学校にいたっけ?
 ていうか、めちゃくちゃボインじゃね? 目、なんか青くね? 超可愛い! 抱かれたい!
 って、三森じゃん。
 我がクラスのランク3位の巨乳美少女で先日から俺の性奴隷になった三森リナじゃん。

「ひょっとして、髪変えた?」

 昨日、俺に言われてメガネをやめたらしい三森は、ついでに髪もちょっとイジったらしく、前は単に短いだけだった髪もキチンと整えられていた。
 薄い色の前髪がすっきりとして、ロシア系ハーフの青くて大きな瞳も強調される。幼っぽさを残しながらも整った顔立ちと、白くてキメの細かい肌。ロリータな顔と身長に、そこだけ頼もしく成長した至宝のおっぱいときたらもう、アンバランスな黄金比とでも称すべき奇跡的なスタイルで、むしろ萌え美しすぎて現実感がなかった。
 ひょっとして君はハーフか。二次元と三次元のハーフか。

「可愛いじゃん」

 顔と胸とを遠慮なくジロジロと見ながら、俺は三森のお手柄なオシャレを褒めてあげた。
 でも、三森は顔をプイと背けただけで、相変わらず機嫌悪そうだった。

「なに? どうしたんだよ、リナ?」

 ツンとしたまま、こっちも見てくれない。昨日はあんなに従順奴隷だったくせに、今日はなんだか反抗的な態度だった。
 なにこれ、意味わかんない。昨日の今日でもうレジスタンスなわけ? 俺ってほんと、カリスマ性ないのな。
 やがて三森は、ゆっくりこちらを向いて、俺をジトっと恨めしそうに見上げた。

「……はるちゃんと、何してたんですか?」

 俺の喉のあたりでギクリって音がした。はるちゃんって、渡辺のことだ。ひょっとしてバレた? 気づかれた?

「ご主人様もはるちゃんも、朝はいたのに、いつの間にか2人で消えちゃってるし……」

 さっきの休み時間に2人時間差で戻ってきたあと、渡辺は「ちょっと具合悪くて」なんて言って、友達にはごまかしてた。
 ちなみに俺は予想どおり、誰からも声かけられることはなかった。
 確かに、渡辺の上気した頬とほんのりした瞳は微熱っぽい感じにも見えたけど、エロ眼で見れば「あなた今、かなり激しいエッチしてきましたね? てか具合悪いとか言ってるけど、あなたの具は気持ち良かったって言ってますよね?」ってすぐわかる。
 俺は三森のことをなめてた。確かにあの教室で俺たちの関係に気づくとしたら、彼女しかいないだろう。
 でもまあ、三森のことだから大丈夫だろって俺は思ってた。どうせ三森だからって、すんごいなめてた。
 女の勘ってすごいぜ。

「……ずるいです」
「え?」

 青い瞳をキッと尖らせて、三森は俺に詰め寄ってくる。

「はるちゃんばっかり、ずるいです! リナだって、はるちゃんみたいに朝イチで目隠し手縛りご奉仕強要されたり、職員室のドアに顔を押しつけられてスパンキングされたり、男子トイレの床に出した精液舐めさせられたり、耳とか尻尾とか犬グッズ付けて中庭引きずり回されたり、校庭の四隅で犬放尿させられながらご主人様に耳元で『今日の俺、わがまま犬将軍だから覚悟せよ』って囁かれたりしたいです!」
「そんなこと1コもしてませんからッ!?」
「リナ、授業中もずっとあの2人どんなことしてたんだろうって想像してたら、寂しくなって涙も出ちゃうし、あそこもどんどん濡れてきちゃうしで、ぐすっ」
「どんなことでも楽しめていいよな、お前って」
「とにかくリナ、本気で怒ってますから。ご主人様ひどいです。昨日はあれだけリナのこと調教してくれたのに…リナ、今日は頑張って可愛くしてきたのに……なのに、リナは朝から放置プレイで、はるちゃんばっかり可愛がってるとこ見せつけて…ぐすっ…えぐっ」
「え、いや、ちょっと、ごめん! マジ泣きは勘弁して!」

 三森はポロポロ涙をこぼし始める。そろそろ通行人も俺たちのことを怪しみだしている。
 さっきまでの天国気分から、いきなり転落の大ピンチ。どうしてこうなった…。

「…リナも犯してください」
「はい?」
「はるちゃんにしたみたいなこと、リナにもしてください。リナにもドSな犬将軍してください!」
「だからそんなことしてませんよっ!?」
「何でもいいんです。どんなプレイでもいいんです。してくれないと、ここでオナニーします。ご主人様の命令だって言って、みんなの見ている前でご主人様の上履きの匂いをクンクンしながらオナニーしますから!」
「ひぃ! それだけは勘弁!」

 この子ならやりかねない。
 放尿のオプションも勝手に付け加えかねない。

「ご主人様」
「はい!」
「確かにリナはただの牝奴隷です。ご主人様のやることに口を挟む権利なんてありません。でも、これだけは言わせてもらいます」
「は、はい」
「リナは、奴隷差別には断固反対です。私たちは、みんな等しくご主人様の性処理道具で淫乱奴隷犬なんです。ご主人様の精液なしでは生きていけない惨めな子犬ですけど、それでも懸命に生きてるんです。エサのザーメンくらい、ちゃんと公平に分けてください! もっとザーメン! モア・ザーメンです!」


 というわけで、人権団体の人たちが聞いたら泡を吹いて卒倒しそうな権利を主張する三森を、仕方なく俺は教室から遠い男子トイレに連れ込むことにした。

「はぁん……ちゅく、ちゅぷ、ご主人様……リナ、はしたないおねだりしてしまって、申し訳ありません、ちゅく、ご主人様ぁ…好き、ちゅ」

 あぁ、本当にな。
 俺はお前くらい、はしたない女を見たことねえよ。
 そう思いながら俺は、個室に入った途端に態度を豹変させた三森の口づけを受け入れる。

「ご主人様、わがまま言ってしまって、ごめんなさい。リナ、今日はどんな命令でも聞きますから、許してください」

 そう言って三森は、俺に胸を押しつけながらブラウスのボタンを外していく。はちきれそうなフロントホックブラが登場する。
 あえてきつめのブラを装着するのが、彼女のジャスティス。
 このブラを外した瞬間のおっぱいアクションが男を喜ばせると知ってるに違いない。
 ハッ、甘く見られたもんだぜ。

「いやっほう!」

 ブラを外した瞬間にボインと揺れるおっぱいアクションに、俺は思わず大声を出してしまい、唇を噛んだ。
 三森は、その俺の反応に気をよくしたのか、強調するように胸を突き出す。

「はい…リナのおっぱいですよ、ご主人様。好きなだけイジメてください」

 ゆらりゆらり、おっぱいが揺れる。
 俺は思わず喉を鳴らす。あいかわらず、凶悪なほど大きくて形の良いおっぱい。
 三森はそれを誇らしげに俺に見せつける。奴隷のくせに生意気な。でも、なんて理想的なおっぱい。完璧すぎて非現実的だった。こんなおっぱいがあるはずない。ウソだ。夢だと言ってくれ。
 なのに、それは確かに僕の目の前で現実として揺れていて。

「ご主人様…リナのおっぱい、今日はどうしちゃいます? なんでも好きにしていいんですよ?」

 なんていう魅力的なおっぱい。この俺が、たかが奴隷のおっぱいごときに呑まれてしまうなんて。
 確かに俺はおっぱいが好きだ。でも生意気なおっぱいは嫌いだ。主導権を握るのは俺なんだ。たかがおっぱいなんかに、負けてたまるか。

「どうしたんですか? ほら、ご主人様の大好きなおっぱいですよ? 吸っても揉んでも、ペインティングしちゃってもしてもいいんですよ…?」

 しかし乳首を中心にゆらんゆらん揺れる魅力的なおっぱいには、目を奪われざるをえない。蕩けていく。この魔力に抗おうとする意志はなくなっていた。意識が…ゆらんゆらんに、奪われていく。

「さあ…こっちへ来て下さい。触って、握って、噛むのです。ご主人様はリナのおっぱいが大好物なのです。おっぱいモンスターなのです」

 そう、俺はおっぱいモンスター…おっぱい大好きモンスター…今日も森の向こうから、おっぱい求めてやってきた…あぁ…おっぱいが、呼んでいる…俺の大好物…噛む噛む…。

「ご主人様はもう、リナのおっぱいのことしか考えられません。リナのおっぱいを24時間イジメ続けるおっぱいマシーンなのです。さあ…あなたの仕事に戻るのです」

 はい…ワタシはおっぱいマシーン…おっぱいをイジるために開発されたOPP-AIマシーン…今日もおっぱい仕事を開始しマス…うぃーん、がしゃ、うぃーん、がしゃ、うぃーん…。

「きゃ~ん!」
「え?」

 気がついたら、俺はロボット的な動きで三森のおっぱいを鷲づかみにしてた。
 三森の嬉しそうな嬌声を聞いて、俺はようやく我に返った。

「お…お前がMCしてどうするんだー!」
「い、いたぁいッ!」

 俺はそのまま両手でギュウギュウおっぱいを握りしめる。指の間からモニューっておっぱいがはみ出して、三森が悲鳴を上げる。

「す、すみません、ご主人様! リナ、おっぱいにうっとりしてるご主人様が可愛くて、つい、おっぱい催眠を試みてしまって! あっ、あん!」
「試みてしまって、じゃねえだろ! なんて凶悪なおっぱいだよ。まさか、おっぱい催眠だなんて……てか、おっぱい催眠ってなんだよ! いろいろひでぇよ!」
「あんっ、痛い! そんなに、引っ張らないでください! リナの、リナのおっぱい、千切れちゃいそうですぅ! あぁーん!」
「千切れろ! 千切れちまえ、こんなおっぱい! 後ろを向け! 俺にこれ以上、そのボインを見せつけるな!」
「そんなぁ…いいところだったのに」
「いいから壁に手をついて、尻を突き出んだ!」
「は、はい、ご主人様! 申し訳ございません!」

 あぶねえ。危うく三森のおっぱいに精神を支配されるところだった。ホント、とんでもないおっぱいだ。気をつけなければ。
 俺は三森の尻を、妙にセクシーな下着の上から両手で強くこねる。

「まったく、ほんと生意気な奴隷だな、お前は」
「あ、あぁ…すみません、ご主人様…リナ、ご主人様が愛おしいあまりに、ついついトイレをご主人様のお屋敷だと誤認させて、一生ここに閉じこめてトイレのご主人様プレイさせちゃえって思ってしまって…」
「そうやって、随所で俺を上回るエロい閃きと能力を発揮するところが生意気だってんだよ!」
「きゃっ! い、痛い! ごめんなさい、ご主人様! もう二度とご主人様を洗脳しようなんて思いませんから、許して下さい!」
「くそっ…お前のような生意気なヤツには、えっと、何かおしおきを───」
「スパンキングですかッ? それとも、緊縛ですか? 飲尿にしますか? リナ、悪い子だから、どんなおしおきでもご主人様の言うとおりにします! 何でも言ってください!」
「え、あぁ…それは、どうも…」

 別に俺がMCしたわけでもないのに、おしおきはご褒美だと勝手に誤認している三森は、青い瞳をキラキラさせる。
 俺は完全に引いていた。いや、呑まれていた。
 確かに三森は体も性格もエロい。エロすぎる。
 あまりにもエロくて、ミモロいとかそういう新しい言葉が必要なくらい三森はエロいんだ。
 童顔美少女の、大人顔負けに豊満な体と、女子校生ばなれしたドM感覚。この贅沢な食材を、俺は好きに料理していい権利を持つ。
 あぁ、それは確かに素晴らしいことさ。
 なのに、俺の中では敗北感と躊躇いが渦巻いていた。
 こいつは俺みたいな、童貞捨てたばっかのにわかご主人様なんかには、手に負えない女だ。
 俺はひょっとして、とんでもない化け物を目覚めさせてしまったのだろうか…ごくり。

 そのとき、トイレの外から男子の声が聞こえてきた。

「やべー、着替える時間ねえよ。ションベンしてる場合じゃねえって」
「いいって。漏らしたらどうすんだよ。今日から女子も体育館でバレーだぞ」

 この声は、同じクラスのヤツらだ。
 教室棟の外れのトイレだから、誰も使わないと思ってたが、体育館ルートでなら使う可能性ある。
 俺は便器に水を流し、唇に人差し指を当てて、三森に動かないように合図した。
 彼らは、こんな遠くの個室で大便しているシャイボーイでも入ってると思ったらしく、一瞬だけ会話を途切れさせたが、そのあとは普通に会話を続けていた。
 空気の読める奴らでよかったぜ。 
 しかし、そうか。うちのクラスは次体育か。メンドくせえ。このまま三森とサボり決定だな。
 でも今日は女子もバレーか…くそっ、迷うぜ。
 バレーボールといえば、同クラ女子の揺れるおっぱいを堂々と観察することができるという、数少ない公式視姦競技の一つだ。男子としては出場しておきたいイベントではある。
 しかし、そのイベントの目玉となるだろうクラス一の巨乳ちゃんは、今はここで俺のおしおき待ちなのだ。
 俺はちょっと自慢したいような気持ちで、尻を突き出したままの三森を見下ろす。

 三森は、本気で「どうしましょう?」みたいな顔して青ざめ、目に涙を溜めていた。

 あれ、意外。
 三森のことだから、このまま扉を開けて、彼らの見ている前で「してして、スパンキングして! そして私の尻肉を割り開いてご主人様の野太いチンポを挿入するところを、そこのクソ童貞たちに見せつけてやってェ!」くらいのことを、呼吸をするかのように言うと思っていたが。

「女子バレーか…楽しみだな、三森」
「ひひっ」

 個室の外では、男子たちが三森の名前を出していた。その途端、三森は「んくっ」と喉を引き攣らせた。
 俺は慌てて水を流す。そして、三森にそっと耳打ちする。

(…大丈夫だって。バレてないよ)

 三森は泣きそうな顔で、コクコクと首を振る。
 なんか、マジ怖がってる三森が意外。さっきまであれほど大胆だったくせに。
 
「つか今日の三森、なんであんなに可愛くなってんの? やばくね?」
「やべーわ。あれはマジでやばい。こっそり写メ撮ったし、俺」

 みるみるうちに、三森の顔が真っ赤になっていく。
 照れるとか嬉しいって感じじゃなく、なんか本当に恥ずかしいっていう様子で、唇を震わせている。

「早く三森のおっぱい見てェなー」
「あー、今日ほどあいつのおっぱい見たい日なかったわ。やべ、ボッキしてきた」
「ははっ、体育、マジ楽しみだな」
「フェスティバルだよな」

 目をギュッと閉じて、三森は体を縮こまらせる。もうおっぱいのあたりまで真っ赤っか。
 今の三森は、男子が小便している壁一枚向こうで、シャツを開いて、ブラをはだけさせて、スカートたくし上げでエロい下着を丸出しにしている状態だ。
 自分からそんな格好になっておきながら、今頃になって羞恥に震える三森に、俺は激しい興奮を感じていた。
 水を流す。ガンガン流す。

(どうした、リナ? 恥ずかしいか?)

 ビクン。
 三森の体が跳ねる。

(あいつら、リナのおっぱいが見たいんだってよ。いい機会だから、見せてやろうぜ。三森リナは本当はエロエロ大好きの変態牝奴隷ですってところを、生おっぱい付きでさ)
(ぁ…ッ、やっ)

 ビクン、ビクンと、三森は見てて気持ちいいくらい体を震わせる。ますます俺は調子に乗っていく。

(お前だって、そういうの好きなんだろ? 俺の淫乱エロ奴隷でドMの肉便器だっていうこと、みんなに見せつけてやりたいんだろ?)
(やっ、やぁ…)

 ビク、ビクンッ。
 俺が囁くたびに、三森は体を痙攣させて、イヤイヤと首を振る。言葉責めがすげぇ楽しい。

「三森、彼氏いるのかなぁ」
「いないで欲しいよなー。てか、あいつと藤沢だけはいないだろ。まだ手ェついてない感じがいいんだって」
「だよなぁ」

(…バカだな、あいつら。藤沢と違って、お前なんて汚れまくってるよなぁ? お前は本物の変態なんだし。俺に精液ぶっかけられて、一晩中オナニーしてるエロ女だもんなぁ?)
(うぅ…)
(あーあ。お前の正体知ったら、がっかりするだろうなあ、あいつら。いや、それとも大喜びするかな。今のお前の、エロい格好見せてやったら)
(ッ!?)

「やべぇよな…今日の三森で、俺の中でランク動いた」
「風、吹いたよな。確実に、三森のほうに」
「もうあいつが2位ってことでいいんじゃね?」
「あぁ、俺の一票も使っていいぜ」

 今日の三森のイメージチェンジは、うちの男子にもかなり好評らしい。確かに、世界が嫉妬する美しさだもんな。
 俺は三森の横顔をのぞき込む。彼女は、固く閉じた睫毛を震わせるだけで、俺と目を合わそうともしない。

(なあ、あいつらにお礼した方がいいんじゃね? おっぱいくらい見せてやろうぜ)
(ッ!?)
(サービスしてやったら、クラス1位にしてくれるかもよ。男子みんなに見せてやったら、マジで藤沢を抜くかもな。なあ、やってみようぜ)
(…や…いやぁ…)
 
「あのおっぱいをさ、ワシっと後ろから揉みまくる想像したことあるの、俺だけじゃないよな?」
「逆に聞きてーよ。想像しないヤツなんているの?」
「いないよなぁ」
「いないよなぁ」

 どうでもいいけど、ションベン長ぇよ。
 それはともかく、俺はあいつらのリクどおりに、後ろから覆い被さるように、三森のパイパイを鷲づかみにする。

(ンンンーッ!?)

 喉を仰け反らせ、歯をギリギリ噛みしめ、三森は悲鳴を堪えている。
 無茶苦茶にこねまくり、揉みしだくワガママおっぱい将軍の折檻に、必死で堪え続けている。
 俺はますます興奮が高まっていく。

(そうだ、いいこと思いついた。お前、ここで小便しろ。扉をご開帳して、あいつらに変態牝犬奴隷の放尿お披露目してやろうぜ)
(いやっ、いやぁ…)
(嬉しいだろ? そういうことしたいんだろ? なあ、正直に言えよ)
(い、いやです…私……いやぁ…ッ)

 声を出すのも恐ろしそうに、三森はゆっくりと、掠れるような声で抵抗する。
 いいね、これ。
 マジ三森すげえ。このプレイは思いつかなかったわ。

(ごめんなさい…ごめんなさい、許してください…)
(んあ? 聞こえないなぁ? それとも、挿入してるところの方がいいか? パンパン俺に犯されてるとこ、見せつけてやりたいのか?)
(違っ! いやぁ…!)
(ほんとエロいな、リナは…俺もマジ興奮してきた)

 俺は調子にのって、ボッキしたドS棒を尻に擦りつけながら、さらに無茶な要求をしていく。そのたびに泣きそうな三森の声が俺の嗜虐心を煽って、興奮させていく。
 やばい。三森エロい。マジでミモロい。
 さすが脳内お花畑で俺に拘束されて喜ぶほどの変態奴隷である。
 さっきまでエッチをリードしていた三森が、今は俺の腕の中で震える子犬のようだ。ビクンビクン震える体は、快楽というより恐怖の反応っぽく、上位に立つ快感を味わわせてくれる。
 クラスの女子をイジメるのって、こんなに興奮するんだ。イジられるだけの俺には知り得なかった楽しさだ。
 三森の体が頼りなげに縮こまる。真っ赤な顔は破裂しそうなくらいで、青い瞳からは、ポロポロ涙がこぼれだすほどだった。
 
 …って、あれ?
 ひょっとして、マジ泣き?

(ごめんなさい…ごめんなさい、倉島くん。無理です。私、もう無理です…ッ!)

 あれ?
 あれれれ?

(ごめんなさい…ごめんなさい、倉島くん…ひっく)

 完全に素に戻って、三森は俺に謝り続ける。
 え、なんでなんで?
 今そういうプレイじゃないの? むしろ三森のホームグラウンドじゃないの?
 なんでこんなタイミングで、素の三森に戻っちゃってるわけ?

「よっしゃ! 行こうぜ、体育館へ!」
「俺らのシャングリラへ!」

 陽気にハイタッチでもしてるらしく、バチンと景気のいい音を立てて、奴らはトイレから出て行った。
 手ぐらい洗えよ。てか、お前らのシャングリラなら、ここで乳出して泣いてるところだから何とかしてくださいよ。

「うっ、うぅっ、ご、ごめんなさい、倉島くん。私、できなかった…ご主人様の命令、聞けなかった…」

 三森はメソメソと泣き続ける。俺はただただ、途方に暮れる。
 どうしてこうなった…。

「うぅ、うえ~ん」

 ぺたんと、後ろ向きに便座に座り込んで、子供みたいな声を出して、三森は本格的に泣き出した。
 
「あ、あのさ…ひょっとして、本気で嫌だった?」

 三森はフルフルと首を横に振る。そのあと、縦に振る。
 どっちだよ。

「嫌、じゃないです、ご主人様の命令は。でも、他の人に見せるのは、嫌です。ひっく。怖いです」

 怖い? 三森が?
 この三森リナに、恐れるものなどあったのか?

「つーかお前、さっきみんなの前でオナニーしてやるとか言ってたじゃん。そういうの、好きなんだろ?」
「ウソです。絶対できないです。ごめんなさい。私、ウソつきました。えぐっ」
「ええー」

 ウソって。奴隷のくせに、ご主人様を平気で騙しちゃうわけ?
 ったく、これだからゆとり奴隷はダメなんだ。きっちり学校で奴隷とご主人様の正しい在り方教えてくれよ。

「ごめんなさい、倉島くん…えぐっ、嫌いにならないで。ぐすっ…捨てないで、ください…」

 もう、何がなんだか全然わからん。
 別に俺がやりすぎたとか、羞恥プレイが嫌なら嫌で、そう言ってくれれば俺は構わんし。
 なのに、なんでこんなに泣かれるのか、捨てるとかの話になるのか。
 女の面倒くささフルである。俺にどうしろってんだよ。
 とにかく、このままでは埒があかない。
 お前の中に、直接聞いてやる。

 ───三森の脳内お花畑に、どしゃぶりの雨が降っていた。

「うわあ…」

 そしてその大雨の中、小さいな三森が暗い背中を向けて、へたり込んでいた。
 どんよりしてる。あの天真爛漫☆奴隷ッ娘と呼ばれた三森が、悲惨なくらいズタボロになっている。
 満開に咲き誇っていた花も枯れていた。彼女を縛っていた幸福の証である奴隷の茨も、枯れ落ちていた。
 大災害だった。

「リ、リ~ナちゃん?」

 努めて優しい声で俺が話しかけると、三森はビクンと体を震わせ、恐る恐るという感じで振り向いた。
 俺の顔を見ると、ぶわっと涙を浮かべ、一目散に逃げ出した。そして、すぐに枯れ花に足をひっかけ、「ふぎゃん!」という悲鳴を上げて大転倒した。 
 うわあ…ますます声がかけづらい。
 
「うう…うえ~ん!」

 地面に突っ伏して、ジタバタ泣き出す。
 昨日はあれだけ淫乱少女だったのに、今日の三森はもう、見た目どおりのただの子供だ。
 俺は彼女のそばにしゃがんで、その白い尻をぺちんと叩く。

「どうした? なんで逃げる?」
「えぐっ、だって、ごしゅじんさま、怒ってるから。リナのこと、嫌いって言うから、怖いですぅ、ひっく」
「嫌いだなんて言ってないだろ。なんでそんなことになるの?」
「だって、だってだって、リナ、ごしゅじんさまの命令きけないダメどれいだもん。いなかどれいだもん。うえ~ん!」

 三森が泣くと、雨足も強くなる。彼女自身を、彼女が強く責め立てる。

「あのな…別に1回命令聞けなかったくらいで、俺はお前を嫌いになったりしないぞ」
「…ふえ、ほんと、ですか?」
「あぁ、大丈夫。だから起きろ」
「は…はいぃ…」

 体を起こして、ぺたんと枯れたお花畑にお尻をつける。ぐしぐし涙をこぼして、まだ俺の目を見られずにいる。
 三森に説明させなくても、俺には彼女の恐れが伝わってくる。
 嫌われるのが怖かっただけだから、嫌われてないとわかれば、三森は俺から逃げない。
 でも、体はまだ震えている。俺に怒られる、というより、自分を許せないから、三森は顔を上げられない。
 たった一度の失敗で、三森は失望と後悔のどん底まで沈んでいた。
 あれだけ無敵の奴隷っぷりを発揮していた三森の、意外な脆さに俺は驚く。
 そしてその原因は、彼女自身の過去にあった。

「リナ、お前…男が怖いのか?」

 三森は、こっくんと頷いた。
 そのとたん、彼女の過去が走馬燈のように俺の頭に飛び込んでくる。
 正体不明の『兄』に幼い頃心を支配され以来、無意識に自分のご主人様を求めて生きてきた三森。彼女のこれまでの人生は、ずっとその『理想のご主人様』探しに費やされてきた。
 彼女自身すら自覚できなかった漠然としたその欲求を、俺が昨日ハッキリと自覚させてやった上で、寝取ってやったんだ。

 しかし、俺は見落としていた。
 満たされなかった奴隷願望の反面で、彼女は男性に対する失望と恐怖も募らせていた。
 心だけ支配して自分を捨てた兄。大実業家の孫で美少女な自分に優しく近寄ってくる大人の下心。容姿の目立つ彼女に付きまとう男子たちの加減知らずのしつこさ。
 幼い頃から三森はずっと男に傷ついてきた。体育教師の一方的な暴力にも、その後の優しかった前の彼氏も自分に歪んだフィギュア愛を投影していただけだということにも、密かに彼女は傷ついていたようだ。
 ただ、そんなのは男子ならよくあること。
 誰だって、自分の勝手な欲望や願望を異性に投影したり期待するのは、当たり前のことだ。つか、女だってそうなんだろ?
 なのに三森は傷ついてる。
 幼い頃からずっと『優しい男』でも『強引な男』でもなく『ご主人様』だけを理想に求めてきた彼女は、じつは純粋なロマンチストでもある。
 彼女は理想が高く、傷つきやすい。そして傷つくのを恐れて臆病だ。
 むやみに目立つ青い瞳はメガネで隠し、ナチュラルに薄い色の髪は短く切り、大きな胸はきつめのブラで隠した。
 ぼんやりした天然気味な性格は男の保護欲と嗜虐心を無意識に誘っているくせに、その反面、目立つ外見は男に対する警戒心で意識的に固めてたのだ。
 じつはヤマアラシだった三森。
 彼女が自分を許すのは『本当のご主人様』だけ。ご主人様以外の男は怖い敵。だから早くご主人様に出会って、本当の自分を解放して、拘束されて安心したい。
 そしてようやく巡り会えた、運命のご主人様である俺。
 理想の高い彼女は、自分も理想の奴隷として振る舞おうとしている。ご主人様を誰よりも喜ばせて、誰よりも寵愛される完璧な牝奴隷になろうと頑張っている。
 でもそれは反面、俺も兄のように、機嫌を損ねたら簡単に奴隷を捨てちゃう冷たい男じゃないかという、恐怖の裏返しでもある。
 俺が渡辺も抱いているという事実も、彼女を揺るがせた。
 自分は、もっと頑張らなきゃいけない。俺に捨てられたら人生終わり。だけどご主人様以外の男に裸を見せるのは泣くほど怖い。命令だからやらなきゃいけないのに、できない。
 ヤマアラシは、自分のトゲを脱ごうとして、そのトゲで自分を傷つけている。捨てられたくない。そばにいて欲しい。失敗してごめんなさい。嫌いにならないでください。という不安でいっぱい。

 なんてことだ。
 なんて普通の女の子なんだ。

 変態ドMスペシャルな女子だと思ってた三森の悩みは、じつはすっげえ普通。
 彼女の『ご主人様に支配されたい』願望も、深く探れば、その正体は『大好きな王子様に守られたい』っていう、女の子のよくある願望と同じだったというわけ。
 三森は泣きながら、今も求めている。
 それはただの『ご主人様』ではなく、『真のご主人様』だ。自分の心も体も、わがままも、不安も、性欲も、彼女自身すら把握できないこのお花畑のはるか遠くまで、全てを委ねることを許して守ってくれるご主人様だ。
 つまり、彼女の神様だ。
 それめちゃくちゃハードル高ぇよ。しかも、依存心めちゃくちゃ強ぇよ。
 でも、それだって理想の恋愛の形を夢見る女の子と変わらない。ようするに、こいつも俺もたいしてレベル変わらない。いろいろ妄想して、先走って、カラ回りして、自分の限界と現実を見て全力でがっかりしてる。
 でもそれくらい、当たり前のことだろ。
 だって俺たち、お互い初めてのご主人様と奴隷なんだから。

「雨、とまれ」

 俺が命令すると、ピタリと雨は止む。
 両手で目を擦りながら、三森は顔を上げる。

「怖がることもないし、泣くこともないぞ」

 三森は首を傾げる。あどけない顔が、行き先に困った迷子のように曇る。

「心配すんなよ。逃げなくていい。ここにいろ」

 小さな頭を撫でてやる。三森はすぐに「ん」と気持ちよさそうな声を出して、頬を染める。
 
「…ごしゅじんさまは?」
「ん?」
「ごしゅじんさまも、ここにいてくれますか?」
「あぁ、いるぞ」

 ようやくホッとして、笑顔を浮かべる。
 彼女はもう俺しか見えていない。俺のためなら何でもしたいと思ってるし、他の男に痴態を晒すことだって、今は怖くても、いずれは克服したいと思っている。
 そうすれば、俺が喜ぶと思うから。
 彼女の行き過ぎな奴隷暴走も、卑猥すぎる言動も、俺を失う不安と戦ってる彼女のSOSなんだ。

「…ありがとうございます、ごしゅじんさま」

 ポンポンと、彼女の足下で花が咲いていく。それは彼女の幸福の証。
 しかし彼女は、せっかく咲いた花を、いきなりブチブチと千切り始めた。

「ちょ、なにを…?」

 そして、それを慣れた手つきで編んでいく。
 あぁ、それ、見たことある。美結も小さい頃、そんなの作って遊んでた。

「ごしゅじんさま」

 三森は、その花かんむりを俺の頭に乗せる。たった今、生まれたばかりの彼女のハッピー花は、まだ暖かかった。

「ごしゅじんさまにあげます。リナのお花は、全部あげます。だから、ずっとリナのごしゅじんさまでいてください。おねがいです」

 そういってぺこりと頭を下げる。
 なんかもう、必死すぎて痛々しい。見てらんない。
 お前、うちのクラスの3位だぞ。いや、ついさっき一部男子の間で2位に昇格したばかりだぞ。
 お前の兄に変な能力がなければ。そして、同じく変な能力もった俺に出会って、そこをつけ込まれなければ、きっと彼女は、それなりに不満はあっても、他人から見れば十分に幸福な人生が送れたはずだ。
 なのに、そのハッピーの花は、こんな俺に捧げられてしまう。
 委ねることで、彼女の抱えたでっかいトラウマも小さくなる。たとえ何を代償に失ったとしても、彼女にはそれしか幸福の道がない。三森には、ご主人様が必要だから。
 彼女の想いはやっぱ重たい。
 俺なんかにそこまで期待されても無理だと思うし、面倒くさい。

「かっこいいです、ごしゅじんさま。ちょう似合ってます」
「ん、そっか?」
「はい…おうじさまみたいです」

 でもまあ、そうやって頬染めて恥ずかしそうにする表情とか、体を縮めた拍子に腕の間でキュッとなっちゃう成長期のおっぱいとか、そういうの見てたら、死ぬまでコイツのご主人様やってやるくらい楽勝かなって思えてくるのは、なぜなんだぜ?

 俺は、花かんむりを脱いだ。
 そしてそれを三森にかぶせた。

「こんなの、いらね」

 俺の冷たい言葉に、三森は顔面ブルーレイになった。
 しかし俺は構わず立ち上がる。

「ここに家でも建てるか。俺の屋敷な。使用人はお前で、主人は俺だ。そして花をいっぱい咲かせろ。見渡すかぎり花でいっぱいにしろ。それ全部、俺の庭だ」

 花かんむりを被り、きょとんとしている三森に、俺は指を突きつける。

「そんなチンケなもの、俺はいらねーよ。それより俺のためにでっかくて頑丈な庭付き一戸建てを用意しろ。ここを全部幸せのお花畑にして、全部俺によこせ。他の男に花一本でも触れさせたら許さねーぞ。全部俺のだ。ここに住むのは、俺だけだ」

 三森は、目を丸くして固まってる。
 俺は、声を低くして、命令口調を強くする。

「わかったか、リナ? どんだけ時間かかってもいいぞ。必ず花だらけにして、俺によこせ。それまで途中で投げ出すことは許さねぇし、逃げることも許さん。いや、お前に逃げられるわけねーよな。だって俺はお前のご主人様で、そしてお前は死ぬまで……」

 三森は肩を震わせる。
 頬が紅潮して、青い瞳が潤んでいく。
 俺は彼女に顔を近づける。花の匂いがする。キスしちゃいそうなくらいな距離で、きっぱりと、俺は彼女に命令する。

「俺の奴隷だからな」
「はいっ! ごしゅじんさまッ!」

 なんか爆発したのかと思った。
 それぐらいの勢いでお花畑が一斉開花して、ビックリした。
 

 ───三森の頭を、グリグリしてやる。

「え、あ、あう…」

 三森はどうしたらいいのか、困ったような顔してる。

「お前、まさか本気にしたの?」
「え?」
「他の男に、こんなプレイ見せるわけないじゃん。そんなことしたら、学校も人生もクビになっちまうぞ? こういうのは隠れてやるから意味があんの。奴隷が羞恥心までなくしちまったら、面白くねぇんだよ」
「え? え、えー…」

 てか、当たり前だろ。
 こんなところでションベンしながらご開帳とか、本気でやられてたら俺が死んでたわ。

「本当ですか? 本当に、ウソですか?」
「うん」
「リナは、他の人の前でいやらしいことしなくてもいいんですか?」
「しなくていい。ていうか、すんな」

 三森は、「はぁー」と肩から力を抜いて項垂れた。
 そして俺に向かって頬っぺたを膨らませた。

「ひどいです、ご主人様。リナ、本気でおしっこしながら扉を開けて、みんなの見ている前でご主人様にお尻の穴におしっこしてもらって、お腹の中がパンパンになったところで、『私はご主人様のバキュームカーです』って言いながら放出しなきゃならないのかと思いました」
「くそみそかッ!?」

 うろたえる俺を見て、三森はくすくす笑う。
 知ってるよ。そうやって、できもしないくせにそんなこと言って、俺に叱って欲しいだけなんだろ?
 三森は俺に独占されたいんだ。俺に叱られて、縛られて、他の男には指一本触れられないようなところに、閉じこめていて欲しいんだ。
 この変態めが。

「まあ、そんなことより、リナ。例えウソでも、お前が俺の命令を聞けなかったのは事実だ。そうだろ?」
「え…あ、それは、あの…」

 三森の顔から血の気が下がる。
 またもや見捨てられる恐怖を思い出して青ざめる三森に、俺は唇を上げる。

「今からスーパーおしおきタイムだ。リナ、次の授業はサボるぞ。お前をここで、徹底的に俺専用奴隷に再教育してやる。二度と俺に反抗できない女になるまで、調教してやるからな」

 ドMの三森は、ご褒美を貰った子犬のように表情を輝かせて、頷いた。

「はいっ、ご主人様っ! よろしくお願いします!」



 そんなわけで俺は、三森の目と、腕を後ろに回してトイレットペーパーでぐるぐる巻きにしてみた。

「ご、ご主人様…これは、なんだか…」

 またスパンキングのような痛い系や、オナニーなんかの羞恥系のおしおきを想像していた三森は、目をふさがれ、動きもふさがれ、不安そうな声を出す。
 怖いだろ?
 ふふっ、作戦どおり。
 何度も三森の中に潜って、俺も彼女という人間がいろいろわかってきた。
 彼女は、自分の中でしかSMを楽しんだことがない。あくまで自分主体。だから自由も視界も奪われて、何をされるのかも分からないこの状況を、想像したことないのだ。
 彼女にとって未知のプレイ。だが、絶対に三森はこれにハマる。自信がある。
 無力で不自由な三森は、イジワルでエッチなご主人様の俺に頼るしかなく、何もかも投げ出して俺にすがるしかないのだ。
 これこそ、彼女が自分自身すら知らない心の奥底で、真に望んでいたSMプレイ。全てをご主人様に委ね、イジメられ、そして守られるプレイだ。

「怖いだろ、リナ?」
「は、はい…怖いです、ご主人様ぁ…」

 俺は黙って三森のスカートのフックを外す。そして、下着も足首まで下げる。
 小さく悲鳴を上げて、三森が体を縮こませる。
 色も量も薄い陰毛。エロエロな体のくせに、可愛い色したアソコに俺は喉を鳴らす。三森は為す術なく、身をよじるだけ。

「いい格好だな」
「あぅ、あの、ご主人様…リナ、本当に怖いです…ご主人様のお顔が見れないと、不安で…」
「これでいいんだよ。俺がお前を見ててやる。お前のその生意気な体を、余すことなく俺が視姦してやる」
「そ、そんな…ご主人様…」

 スカートを下ろして、はだけたワイシャツだけになった三森が、恥ずかしそうに体をくねらせる。
 相変わらず、なんて美味そうな体をしてやがるんだ奴隷の分際で。
 その大きく丸い胸も、くびれたウエストも、つるつるした形の良い尻も、なんだよそれ。ブラジルでサンバを踊れるレベルじゃないか。ヨーロッパのマンガフェスでコスプレできるレベルじゃないか。
 こうやって見ると、やっぱりすごいな三森の体は。世界と戦える女子校生だぜ。

「はぁ、はぁ……ご主人様…リナ、本当に怖くて…」
「心配すんな。ここにいるのは俺だけだ、お前は俺の命令に従っていればいい」
「は、はい…ご主人様だけ…ご主人様だけ…」
「そうだ。お前のその恥ずかしくてみっともない姿を見ているのは、俺だけだぞ」
「あぅ…リナ、恥ずかしい格好してます…裸で、トイレットペーパーで目隠しされて…ご主人様に、こんなみっともない格好見られて、リナすっごく恥ずかしいです…」
「俺の視線を感じるか? お前の全身をくまなく見てるぞ。前からだけじゃなく、後ろからも。右も左も上も下も、全て俺の視線がお前を捕らえている。俺の視線の檻の中に、お前は閉じこめられているんだ」
「あ、あぁ…ご主人様がリナの裸を見てる…あちこちから見られて、リナ、隠れられない…恥ずかしい、恥ずかしいよぉ…」

 そして三森のエロ想像力は、推定でも俺の約50人分はある。さらに視界と自由を奪うことによって、彼女の想像力はより敏感になるだろう。
 あとは言葉で責めてやるだけでいい。エロい三森はビンビンに反応してくる。

「リナ、お前のその体は誰のためにある?」
「ご、ご主人様のためです」
「だったら、恥ずかしくても俺の前ではいつでも裸を晒せ。隠そうとするな。生意気だぞ」
「はいっ。ごめんなさい、ご主人様。リナ、生意気な奴隷で…」
「あぁ、生意気な体だ。視線だけで感じるなんて、生意気でエロい体だ。お前は本当に変態だな」
「んっ、あぁっ、すっ、すみません、ご主人様! リナ、リナ、ご主人様の視線だけで感じる変態ですみません! すみません!」

 ビクン、ビクンと、俺の声がするたびに、三森は震える。こいつのエロ想像力の中で、今、俺の視線がバックベアードと化して襲いかかってるに違いない。
 怯えていた顔色も、どんどん朱を増していく。

「すみずみまで、よく見えるぞ。お前のでかい胸が汗をかいてる。股が濡れてる。マンコから汁を垂らしてるな」
「あっ、あっ、言わないで、くださいっ」
「スケベな体だな、まったく。男に見られただけで濡れるのか?」
「ち、違います! ご主人様だからです。ご主人様に見られてるから、リナは、感じてしまうんです!」
「そうだ。お前の体は俺のものだ。俺の前でだけ脱いで、俺の視線でだけ感じろ。他の男にその体を見せたら承知しないぞ」
「はいっ! リナは、ご主人様にしか肌を見せません! 他の男なんかで、絶対に感じません!」
「そのでかい胸も、尻も、俺のものだな?」
「あん、もちろんです! ご主人様のモノです! リナの体は、はぁ、すみずみまで、ご主人様のモノです!」
「心もだ。お前の心も体も、俺のものだ。俺のものじゃない場所なんて、お前には1つもないぞ」
「はい! あの、ありがとうございます! リナは、ご主人様のものです! んくっ、全部、ご主人様の奴隷ですぅ!」

 壁に体を預けて、リナは叫ぶ。
 肌は汗に濡れ、口からはよだれが零れ、乳首をピンと立たせて、俺の言葉一つで体を痙攣させて歓喜に震える。
 エロい。エロすぎる。なんだこの女子。ホントに同い年?

「リナ、イキそうか?」
「イキそうです! あぁ、リナ、ご主人様の視線だけでイッちゃいそうです! イっていいですか…? リナ、もうイっていいですか、ご主人様ぁ!」
「ダメだ。俺がいいと言うまでイクな」
「あぁ…そんな…はい、ご主人様…」
「こっちへ来い。足を開いて立て」
「んっ、は、はい…こ、こうですか?」

 一歩前に出て、足を開く。
 ひくついたアソコの、濡れて光るピンク色。
 ちなみに俺は、とっくにチンポ出してる。クールなご主人様を気取りながら、擦ってる。
 でもまだ入れてやんない。俺と三森の我慢比べなのだ。

「リナ、お前のエロマンコがよく見えるぞ」
「はぁ、はぁ、ご主人様…」
「ヒクヒクして、エロい汁をタラタラこぼしてる。触って欲しいか?」
「はいッ…はい、触って欲しいです。リナのエロマンコは、ご主人様に触れて欲しくて、ヒクヒクしてます…」
「自分でわかるか。お前のマンコがヒクついてるのが」
「わかり、ます…エッチなお汁、止まんなくて…我慢、できないんです! お願いです、ご主人様! エッチな奴隷のリナに、お情けください! ご主人様の手で、リナに触れて、イかせてください!」
「ダメだ。我慢しろ」
「そ、んな…ッ。リナ、苦しいです、ご主人様…っ、体中、ぞくぞくして、すごく……すごく、感じてるんです、ご主人様! 助けてください! アァ! あァ!」

 ビク、ビクと三森の体が跳ねる。
 見ているだけでアソコはビショビショで、真っ赤に火照っている。もう何度も犯されたみたいに。

「じゃ、想像することを許してやるよ」
「え…え?」
「俺に犯される自分を想像しろ。お前のマンコも、口も、ケツも、いっぺんに俺が犯してやる。ただし、お前の想像の中でだ。好きなだけ想像しろ。俺に犯されることを」
「ご主人様が…私を…犯すところ…」

 バカ正直に三森は想像は膨らませていく。
 半開きになった口は舌を彷徨わせ、俺の形をなぞる。足をわずかに広げて、赤みがかった肉を震わせる。

「もっと足を広げろ。そんなんじゃ入らないだろ」
「す、すみません! 今、すぐ…ッ」

 がに股に足を広げて、腰を落とし、俺にアソコを突き出すように命じる。
 三森の頬が、ますます羞恥に染まっていく。

「ほら、入っていくのがわかるか? お前のマンコと口とケツに、俺のが入ってくるだろ?」
「はい…はい、ご主人様のが、私にいっぱい…入ってきますぅ!」

 ビク、ビクと、まるで本当に挿入されたように体を痙攣させる。敏感な三森の体は、想像力だけでどんどんと高まっていく。

「入れてやったんだから、お前が腰を振れ。ちゃんと俺を満足させるように振りまくれ」
「はいッ、振ります! こ、こうですか、ご主人様!」

 足を広げたまま、三森は腰を前後に揺する。目と手をトイレットペーパーでぐるぐる巻きにされた拘束少女の一人運動。ひどく間抜けで、だがとても扇情的な光景だ。

「俺に入れられてるのがわかるか? お前の中に、今、俺のが入ってるんだぞ」
「はいっ…はい、入ってます! ご主人様の太くてかっこいいオチンチン、今、リナの中に入ってます!」
「マンコにだけか?」
「いいえッ! お尻にも、入ってます! お口の中にも、いっぱい、ご主人様のオチンチン、入ってますぅ!」

 舌を伸ばし、ヨダレをこぼし、だらしない顔で三森は腰を振り続ける。俺もどんどん興奮して、しごく右手に力が入る。

「くっ…リナ、お前は今、俺に犯されてるぞッ。マンコもケツも口も、俺のチンポでめちゃくちゃにしてやるッ。そのでけぇおっぱいも、ぐにゃんぐにゃんに揉みこんで吸ってやる!」
「はいッ! ありがとうございます、ご主人様ぁ! 今日も、今日もおバカな奴隷のリナをめちゃくちゃにしてくださって、ありがとうございます! リナは、とってもドMでヘンタイな女だから、ご主人様に恥ずかしいところをお見せして、犯されて、嬉しくって涙が出ます! こんな奴隷にお情けをくださって、本当にありがとうございますぅ!」

 ガクガクと俺の目の前で振れる腰から、彼女の愛液が飛び散って床を濡らす。あどけない童顔が快楽に蕩けきって、しみ出す涙が顔のトイレットペーパーを溶かし、頬に張り付いている。
 でも彼女の目は、きつく閉ざされている。舌は俺のを求めて彷徨っている。
 俺が命令したからだ。三森は俺の命令を絶対に守っているんだ。
 大きな胸が、たぷんたぷんと揺れる。乳首は、紅潮していく白い肌に消えてしまいそうなくらい淡い色のくせに、ピンと張って生意気な自己主張してる。
 くびれた腰が激しく動いて波を打つ。薄い色の陰毛が濡れてキラキラしてる。みっともなく舌を動かして、足を広げ、俺を求めてアソコを濡らしてる。

 昨日までは、同じクラスにいても俺とはまったく接点のない、リア充組のクラスメートだった。
 目立つ容姿してるくせに性格は大人しくて、ぽわぽわしてて、いつも笑ってて、女子の間で可愛がられてる子だった。
 あの子には彼氏なんていないといいなー、とか、いつもぼっちの俺のこと、優しそうなあの子は秘かに気にかけてくれてるといいなぁ、なんて勝手な期待したりしてた。
 そんで、俺に優しく声をかけてきたところを、上手く騙しておっぱいモミモミとか、ホントしょうもないこと想像して、時々おかずになってもらったりしてた。
 でも、当然そんなの俺の一方的な思いこみでしかなくて、向こうは俺のことなんて全然眼中にないこと知ってた。
 学校卒業したら、俺なんて同窓会も呼ばれないし、会うこともなくなるし。彼女はいつの間にか結婚しちゃって、どっかで幸せな家庭を築き、俺はそんなことも知らずに、今日も明日も卒アル開いてオナニーとか、そんな感じなんだろうなあって思ってた。

 今、俺の目の前で裸になって、トイレットペーパーでグルグルにされて、マンコ汁飛ばしながら腰振ってる、この女のことだ。
 もう彼女はただのクラスメートなんかじゃない。
 俺だけの奴隷、三森リナなんだ。

「リナっ!」
「きゃあッ!?」

 我慢できなくなって俺は三森の体に激しく抱きつく。
 三森の後頭部が後ろの壁に当たってゴィンといい音をさせるが、俺は構わず三森の体を持ち上げ、一気に挿入する。

「あぁぁあぁあーッ!?」

 俺の腕の中で、三森の豊満な体がガクンガクンと痙攣する。その痙攣が膣を通じてギュウギュウと伝わってきて、もうそれだけでイキそうなくらいに気持ちいい。温かくて、柔らかくて、三森のマンコは、本当に気持ちいい。
 俺はこの体を乱暴に貪りたい。めちゃくちゃにしてやりたい。
 
「あぁッ! あぁーッ!」

 両手を縛ったままの三森を、ガンガン突き上げる。背の低い彼女を壁に押しつけ、太ももを持ち上げ、下から押し上げるように腰を叩きつける。
 柔らかい。俺の体に吸い付くような彼女の肌は、最高だ。

「あぁぁッ、あ、ありがとうございます! ありがとうございますぅッ!」

 大きな瞳を見開き、イキっぱなしの顔で三森が喘ぐ。
 俺はその髪を鷲づかみにし、白い喉を晒させ、そこに舌と歯を這わせ、噛みついて、舌でべろべろに舐める。三森の肌は、熱く、しょっぱく、美味い。

「ひあぁぁぁッ! ご主人様、ありがとうございます! あ、ありがとう、ございますぅ!」

 俺の奴隷。俺の女。
 このいやらしくて、抱き心地最高の体を好きにしていいのは、俺だけだ。

「リナ、お前は誰の女だ! 言ってみろ!」
「はいッ! 三森リナは、倉島修吾様の女です! あぁッ! あなただけのものです!」
「俺のドスケベ奴隷は誰だ! 言え!」
「リナです! ご主人様の、ドスケベで、エロエロの淫乱奴隷は、リナです! いつでも、あっ、リナは、ご主人様のオチンチンのこと、ばっかり考えて、はぐっ、イジメて、泣かせて欲しくて、アソコを、24時間濡らして待ってる奴隷女です! あぁ、ドスケベで、ごめんなさい! 肉便器で、ごめんなさい! あぁッ、愛してます! 肉便器は、ご主人様のことが、大好きですぅ! あぁー! あぁーッ!」

 俺、ケダモノみたいだ。
 もう腰が止まんない。鼻息を荒げて、乱暴に三森を突き上げ、犯している。
 そして三森は、まるで俺に捕食された小動物のように、されるがままだ。
 彼女は大声を張り上げて、何回も達している。
 それでも俺は彼女に容赦しない。犯しながら何度も俺の奴隷であることを宣言させ、乱暴なやり方で犯す俺に、感謝の言葉を言わせている。
 三森は俺の命令に忠実に応える。俺はそんな彼女を貪り続ける。

「あっ、あっ…ありがとう、ございます…あっ、あり…ございま、しゅ、うっ、んっ、あっ、あっ…あっ…」

 もう彼女の意識は半分飛んじゃってる。
 蒼い瞳はひっくり返って、半開きの口元には泡をつけて、壊れた人形みたいに同じ言葉を繰り返し、俺のセックスを受け入れるだけだ。
 でも、それがいい。どんなになっても俺を受け入れる三森が愛しい。可愛い。このまま本当に壊してやりたいとすら思える。
 俺の奴隷なんだ。俺の好きにいいんだ。
 何度も何度も俺は彼女に突き入れ、そしてギリギリまで昇ってきた性欲を解放する。

「リナ!」
「きゃあッ!?」

 いきなり俺が手を離したから、三森の中から俺のは抜け出て、三森は個室の床にビタンと尻もちをつき、またもゴィンと壁に後頭部をぶつけた。
 それには構わず、俺は彼女の顔に精液のたぎりをぶつける。精液を一滴漏らさず、その妖精顔をしかめる三森にチンポを擦りつけて、腰の下を突き抜けていく快感に身を委ねる。

「あぁ…最高だ」

 超満足だ。俺は一匹のオスになって女を喰らった。夢中になってセックスした。
 渡辺の優しさに包まれるエッチもいいが、ケダモノのように犯す三森とのエッチも最高だ。

「うぅー…」

 しかし、三森はなんか違ったようだ。
 精液だらけの顔をうつむけ、ボロボロと涙をこぼし始めた。

「あれ、なに? どうした?」

 うずくまって三森は呻く。
 そういや、さっきすげぇ音した。
 三森の両手はまだ後ろに縛られたままだ。

「ご、ごめんごめん! すっかり夢中になっちゃって!」

 両手のトイレットペーパーを千切り、三森の頭を撫でる。そして新しいペーパーで、精液だらけのひっでぇ顔も拭いてあげる。

「痛いか? 本当ごめん。手ェ離すことないよなー。俺ってホント、鬼畜でごめんな? 尻とか大丈夫?」
「うー…だ、大丈夫ですぅ」

 ぐしぐしと涙を拭う三森を手伝って、俺は次々にペーパー千切って顔を拭いたり、頭を撫でたり、アソコもついでに拭いてあげたりと、大急ぎで彼女を慰めた。
 ったく、誰だよ、三森にこんなに精液ぶっかけたヤツは!

「…もう大丈夫です。ちょっと、びっくりしちゃっただけです。ごめんなさい」

 そう言って、健気にも三森は涙に濡れた瞳で笑顔を浮かべた。

「リナ、すっごく気持ち良かったです…。抱いてくださってありがとうございました、ご主人様」

 あどけない三森の笑顔は、いつ見ても俺を癒してくれる。
 有り難いやら、暖かいやら、なんだか不思議な気持ちになる。
 これがホントの三森の魅力。
 どんだけエロいことをしでかしても、最後のこの笑顔で、ほっこりしてしまうんだ。

「…俺も、すっげぇ気持ち良かった。その…リナは、最高だな」

 ご主人様らしからぬ俺の言葉に、三森の青い瞳は真ん丸になって、そしてなぜかまた泣き出してしまった。
 俺はそんな三森の頭を、グリグリと撫でてやる。

 ───小さな三森は、花を摘んでいた。

 頭ナデナデのついでに潜ってみた三森の世界では、小さな三森が、丘の上で俺のお屋敷を建設中だった。

「ふんふ~ん♪ ふふんふふ~ん♪」

 ご機嫌だった。
 満開に咲き乱れる三森のハッピー花が、彼女の手で編み上げられ、広く、花畑の中で盛り上げられていた。
 おそらく俺の命じたお屋敷の、これは基礎となる部分だろう。
 しかも、ちょうどここは、彼女のトラウマだった真っ赤な洋館が建っていたあたり。
 あの館よりは小さく、でも俺んちなんかよりはよっぽど広く、三森の花が、足首くらいの高さまで積み上げられている。
 摘んで、編んで、積み上げて。コツコツと俺のお屋敷を作る三森は、この果てしない作業を、楽しんでやっているように見えた。俺が頭にのっけてやった花かんむりだって、彼女の気分を反映するのか、花弁を大きくしてた。
 作業だって、むしろ思ったよりも早く進んでいる。
 5年か、下手をすれば10年はかかると思われた課題なのに、これでは1年と経たずに俺様専用の大豪邸が三森の中に完成するだろう。
 まったく、イジワルな宿題考えるほうの身にもなってくれよ。
 丸いお尻をこっちに向けて、無邪気に花を摘む三森に、俺は苦笑する。
 でも、きっと壮観だろうな。
 不気味だった赤い洋館も消えたこのお花畑に、お花で出来たお屋敷が建つ。
 俺たちの秘密の主従関係が、三森の中で小さなお屋敷となって、風薫るこの丘で花と一緒に咲くんだ。
 それはきっと、素敵な光景に違いない。
 
「あっ」

 俺に気づいた三森が、「にぱー」と満面に笑顔を浮かべて手を振った。そして、自分の立っている花の土台をブンブンと指さして、両手をいっぱいに広げて叫んだ。

「ご主人さまーっ! 1本目の門柱の太さは、このくらいで足りますか~?」
「サグラダ・ファミリアかよッ!」

 晴天のお花畑に、俺の絶叫ツッコミがどこまでもこだました。



 俺は勝ち組だ。
 人類を負け組と勝ち組に分けたなら、俺は間違いなく圧勝組に属する人間だ。今なら勝ち組にだって負ける気がしない。それぐらい俺のこのヘンテコな力はすごい。
 正直、すごすぎて俺の体が追いつかない。
 なんかさっきから今まで使ったことのない股の筋肉が悲鳴を上げてるし、股関節にも違和感が生じて歩き方がおかしくなってるぐらいだ。
 でもそれがどうした。俺が望んで得た結果じゃないか。
 俺は地球の全ての美女を抱く。この能力を使ってヤリまくってやる。
 モテモテでウッハウハの学園生活をジョイフルしてやるんだぜ!

 などと、がに股で廊下を闊歩していたら、またもや美少女発見。
 まったく、我が校の女子レベルやばいわ。WGK(我が校)48を結成できるくらいやばい。
 そしてそのメンバーの中で、間違いなくセンターポジションに収まるべき神女子、藤沢綾音がこっち見て微笑んでるなんて、本当にやばい。

 …やばい。

 廊下の壁にもたれて、俺を見つけてニッコリと微笑んでいるのは、確かにあの、藤沢綾音だった。
 ナンバーワン美少女、藤沢。
 その呼び名がなぜ彼女に相応しいのか、それを語り尽くすには1万行を要するだろう。
 でも1行でいうなら、彼女は見た目はもちろん、何をやらせてもナンバーワンだからだ。
 見ろ、あのサラッサラの髪。俺のと同じ素材で出来てるなんて信じられるか?
 顔小っさ。渡辺も小さいけど、藤沢の場合はさらにパーツの大きさや配置が完璧。
 いや渡辺だって相当美人だよ。でも藤沢は、その上を行く。しかも笑ったらすっげ可愛い。三森もピンチなくらいあどけなく可愛い。
 顔だけで、もうナンバー2と3の二人を凌駕しちゃってる。
 勉強だって、スポーツだって、オシャレなことだって、およそ学園生活で彼女が誰かに負けたことなんてない。知らないけど、たぶんない。
 そして、そのことを鼻にかけたり、他人を見下したりするようことを彼女は決してしない。
 人の悪口を言わず、他人の面倒を嫌がらず、でもクソ真面目ってわけでもなくて、クラスの奴らとバカ話で盛り上がったりするし、いいタイミングで面白いこと言ってみんなを笑わせるセンスもある。
 嫌味がなく、親しみやすく、でも他の女子とは明らかに違う、パーフェクト女子。
 そういう女がこの世にいる。てか、同じクラスにいる。
 俺の目の前に…いる。

「倉島くん、倉島くん」

 しかもあろうことか、この俺を手招きしますか。
 鈴の音のようなアニメ声で、まるで天使が小さな羽で羽ばたくかのように、ちょいちょいってその白い手で俺を招きますか!
 なんだよもう、うちの女子の間では廊下で待ち伏せするのが流行りなわけ? パワースポットなわけ?
 俺、明日から地蔵のように廊下に突っ立ってることにするわ。

「あ、あああ、ぼぼ、僕ですか?」

 できるだけ平静を装うとしても、これが限界だ。
 体中が発熱してる。ものすごい勢いで制服の中が蒸れていく。

「ごめん、ちょっといいかな?」
「は、ははい」

 まるで人生で初めて女子と喋ったかのように、俺は緊張していた。
 俺が脱オタ目指してクラスで浮いてた頃、流れで彼女とちょっとした会話くらいはしたことあるけど、いつもこんな感じだった。気圧されまくって、自分でも何を言ってるのかわからない状態だ。
 でも、今の俺はあの頃の俺とは違う。
 まず非童貞。
 男としてまるで別物。漢である。
 さらに、抱いた相手はあの渡辺と三森。
 いきなりの大物食いだ。並の童貞なら腹を壊して死んでいる。異能力持ちの俺だからこそ成し遂げられた偉業なのだ。
 この能力があれば、たとえ藤沢であろうと恐れることはない。
 どうせ近いうちに、藤沢も落とす予定だったんだ。堂々と、スマートに彼女に接近してやればいい。

「わ、わわわたくしのようなオオヒラタシデムシに何かご用でしょうか…?」
「アハハッ。相変わらずおかしなこと言うね、倉島くんって」

 くそぅ。何言ってんだ、俺。
 やっぱりダメだ。俺には藤沢と正面から向き合う男子力はない。もっとこう、卑怯な手で迫らないと。
 藤沢が笑うだけで、もう顔が真っ赤だ。言ってることも、めちゃくちゃだ。
 一体、俺なんかに彼女が何の用だっていうんだよ。

「あのさ…」

 藤沢が、俺に顔を近づけてきて、声を潜める。俺の心臓が5倍くらいに膨らむ。

「はるかと、リナのことなんだけど」

 そして膨らんだ心臓が破裂して肛門から出た。
 まずい。いきなり触れられたくない話題きた。
 歯がガタガタと鳴り、冷や汗がドバドバと溢れてきた。
 体温が冷えていく。目がチカチカとしてきた。耳鳴りがしてきた。
 呼吸が上手くできない。口の中がねばる。でも力が入らない。唾を飲むこともできない。心臓が不規則だ。苦しい。意識が遠のいていく。向こうに光が見える。引っ張られていく。そして何かを突き抜けた。近くで水の音がする。だんだん楽になっていく。だんだん楽になっていく。

「え、死ぬの?」
「いや死なないし!?」

 藤沢が、俺の顔をさらに近くまで覗き込んできて、そのショックで俺は目が覚めた。
 死ぬかと思った。美少女と喋ったら死ぬところだった。人の生き死にすら自在に操るとは、やはり美少女は恐ろしい。みんな、美少女のことは俺に任せて逃げるんだ!

「それで、やっぱり倉島くん、何か知ってるの?」
「え、何が?」
「だから、はるかとリナ。あの二人、今日はどっちも授業サボってるよね? それで私、気づいちゃったんだけど、なぜか倉島くんも同じ授業サボってない?」
「……」
「でさー、戻ってきたら、二人とも何か変なんだけど。というより、はるかとか、一昨日くらいからなんか落ち着かないし、リナだって、いきなりイメチェンしてきて、理由聞いても真っ赤になるだけで教えてくれないし」
「…………」
「まさかねー、とは思うんだけど…ひょっとして倉島くん絡み? ね、君ってあの二人と何かあるの?」

 ゴックンと喉を鳴らし、呼吸を整え、俺は努めて平静を取り繕う。

「しししりしり知りませんよ、ななな何何ももも」
「うん、さっきからドモりすぎてテクノっぽいよね。大丈夫?」
「ン、ンンッ、大丈夫。ほ、本当に何も関係ないよ、俺」
「ウッソだぁ。今、死にそうになったくせにー」
「で、でも死んでないもん。ウソついてない証拠だもん」
「いや、でもかなり三途の川だったし。ていうか、ここで命賭けられても困るんだけど」
「藤沢さん。男ってのはね、誰でも命を賭けて守らなきゃならない秘密のフォルダが自宅のPCにあるのさ」
「何それ? 矢沢?」
「永ちゃんがこんなこと言ったら濡れるわ」
「やっぱり何か隠してるんだ」
「そんなことないって」
「ウソついてもダメ。わかってんだよー」
「ないよー。藤沢さんに隠すようなことなんて、全然ないって」
「ホントに?」
「ホントホント」
「だったら見せてよ、家のパソコン」
「そっちかよ」
「あはは」

 気がつくと、普通にしゃべってた。この俺が学校一の美少女と、放課後の軽いトークを交わしてた。
 これは俺の成長というより、やはり藤沢の力だった。
 キョドる、ドモる、声もボソボソ、という喪男の教科書のような俺でも、ポンポンと話を繋げていく彼女の話術で、いつの間にか会話が弾んでる。
 てか、楽しい。藤沢さんとのおしゃべり楽しい。
 相変わらず直視するにはまぶしすぎる美少女だが、彼女の心地よい声と転がるような会話のテンポ、それにちょっとしたことでも笑ってくれるリアクションが嬉しくて、結構しゃべれてる。いつの間にかオオヒラタシデムシの生態について熱く語っちゃったりしてる。しかも、わりとウケてるんだ、なぜか。
 やっぱり彼女はすごい。
 藤沢は、例え相手が誰であろうと、偏見なしに当たり前にしゃべれるからすごいんだ。
 もしも渡辺や三森のことがなければ、俺はあっさり彼女に心酔してただろう。こんな美少女が、自分と普通にしゃべってくれるってだけで、俺みたいな男は簡単にやられてしまう。浄水器でも何でも買ってしまう。
 藤沢がナンバーワンである一番の理由。
 彼女は敵を作らない。誰であろうと、彼女は自分の味方にしてしまう。学校社会での立ち振る舞いまで、完璧なのだ。
 
「もー、なんか上手くごまかされた気がするなー」

 髪をかき上げる仕草にドキーッ。
 もう、この人は本当にすごい。惚れる。惚れるしか選択肢はない。

「ま、いいか。引き留めちゃってごめんね。私、部活行かなきゃ」

 小っちゃくバイバイして、藤沢は背中を向ける。
 なんだか寂しい。もっと彼女と話したかった。今度はぜひ槍形吸虫の話でも。
 でも、それよりもっと大事なこと忘れてた。
 これはチャンス。決定的チャンス。
 藤沢は俺に背中を向けている。
 廊下には他に人もいるが、気にすることはない。俺が彼女に何をしようと、それに気づく人間なんていないんだから。
 藤沢の中に潜れ。彼女を俺のものにして、ここから連れ出せ。
 そして…ナンバーワンの彼女を、誰より先に俺が抱くんだ!
 俺は彼女の背中に手を伸ばす。呼び止めるフリして、その細い肩に手をかける。
 

 ───そして、誰もいなくなった。

 あ、あれ? あれれ? どうなってんの?
 賑やかだった放課後の廊下から、人の声が消えた。気配すら消えた。
 藤沢はいる。あいかわらず俺の目の前で背中を向けて、いる。
 俺と藤沢だけ残して、あとの人間だけ消えてしまった。
 ここは…どこだ? 学校の廊下なのか?
 俺は藤沢の世界に潜ったはずだ。なのにここは……それともここが、そうなんだろうか?

 ゆっくりと、藤沢が肩に手を乗せたままの俺に振り返る。

「ふーん…。やっぱり、ウソだったんだ」

 震えた。
 藤沢の声の冷たさに、俺は震えた。
 彼女は俺を、それこそオオヒラタシデムシでも見るかのように冷たい目で見て、俺の手を払った。
 藤沢は藤沢のままだった。子供でも裸でもなく、制服のままの藤沢綾音だった。

「あなたも、そっち系の人なんだね。それではるかとリナのこと、モノにしちゃったわけ?」

 よくわからないまま、俺は頷いていた。
 わかってるのは、俺の能力がバレてるらしいってこと。
 そしてここで主導権を握っているのは、俺じゃなくて彼女だということ。
 藤沢は、動揺する俺の前でくすりと微笑む。

「で、次は私の番ってわけだ?」

 顔が赤くなった。何が起こってるのかすらわかってないというのに、彼女の小首を傾げて微笑む仕草に、現実世界と同じようにドキドキしちゃったりしてる。
 見えない。何にも、見えてこない。
 誰もいない学校廊下で、藤沢と俺しかいない世界で、俺は彼女の心が見えないままでいる。
 俺は喉を震わせ、やっと思いで口を動かす。

「…ここ、どこですか?」

 藤沢はあきれたように笑って、髪をかき上げる。

「あなたの方から来たんでしょ? ここ、私の心の中よ」

 キラキラと、彼女の髪になびいて星くずが飛び散る。
 いつもの学校廊下。でもよく見るとそこには汚れも埃もヒビもない、ピカピカの廊下だ。窓もキラキラ。空気まで澄んでいる。
 誰もいない世界で、藤沢と、彼女を取り巻く全てが輝いていた。

「藤沢さんも、俺と同じ力を…?」

 今の俺と互角以上に対話できるなんて、普通の人間には不可能だ。考えられるのは、彼女も俺と同じ能力者だってこと。
 なのに彼女は、嫌悪感をあらわに顔をしかめる。

「じょーだんじゃないわ。あなたたちと一緒にしないで」

 彼女が嫌な顔をすると、俺まで悲しくなる。馬鹿なこと言った自分を後悔したくなる。
 藤沢の心に惹き込まれている自分に気づく。他人の心の中では、圧倒的に優位なはずの俺が、完全にこの世界の美しさに魅了されている。

「私はノーマル。普通の女。ただ、あなたみたいに異常な力を持った人たちに、心の中までイジられたくないだけ」

 普通だって?
 ウソだろ。こんなの見たことない。
 この世界は、現実を完璧に反射している。ただの反射じゃない。ありのまま受け入れ、正しく美化し、跳ね返している。
 それが本当なら、彼女は現実よりも完璧な現実を心の中に築いていることになる。てかそんなの、菩薩の領域だろ。生身の人間がそんなことできんのか?
 この世界には“美”しかない。エゴもコンプレックスもトラウマもない。

「…そんなこと、できるはずない」
「できるわよ。あなただって私の中を覗いてるんだから、わかってるでしょ」
「わかるわけないって! なんだよ、これ? なんでこんなに……きれいなんだよ…」

 藤沢はまた眩しい笑顔を見せる。
 そしてスカートを摘んでほんの少し持ち上げ、俺に見せつけるように眩しい太ももを輝かせ、さらさらの髪を泳がせる。
 俺は息を呑む。彼女の美しさがさらに輝きを増す。心を奪われる。
 彼女が浮かべるのは、まさに最強美少女の微笑み。

「だって私、完璧だもん」

 目が潰れた。まぶしい光に溶けてしまいそうだった。
 主人公の必殺技に巻き込まれたザコ敵のように、俺はこの光であっさり塵になってしまうと思えた。

 そう。藤沢綾音はいつも完璧だった。

 勉強でもスポーツでもミスコンでも休み時間の教室でも、彼女が誰よりも一番で、誰よりも輝いていた。
 でも、心の中までそんなのアリか。
 どんな美人もイケメンも、心の中にはドロドロした欲望やコンプレックスの一つや二つあるもんだろ。現実どおりに完璧なんてあるはずない。むしろ薄汚れた都会の空気まで洗浄してしまうほど美しい心なんて、あるはずもない。
 逆にそれこそ、狂気の沙汰だ。

「なんで…」
「ん?」
「なんでそんなに、メンタル強いんですか…?」

 一分の隙もないとは、まさにこのこと。
 彼女の心は、まるで魔法の鏡だ。傷一つない鏡だ。
 だが、なんのためにここまで内面まで磨き上げる必要がある。
 サトラレでもない限り、普通はそこまでする気を配る必要もない。むしろ外見が完璧な藤沢綾音だからこそ、内面には自由な醜さがあってもいいはずだ。
 四六時中、心の中まで完璧なんて、そんなの普通の人間にできるはずがない。どんな聖人君子でも無理だ。そんな努力をしようなんてすら考えもしないはず。
 なのに、なんで?
 藤沢の表情が、少し曇る。

「…うちの母、知ってるんでしょ?」
「え?」
「生意気なコンビニの店員って、あなたのことでしょ? 同じモノを持ってる人がいるって、お母さん言ってた」

 吐き気をもよおして、膝をついた。
 思い出したくもない女の顔と、彼女の世界を思い出して、死にそうになった。

 布団ババア。

 俺が能力に目覚めるきっかけを作った女。最恐最悪のイカれた女。
 ていうか、親子だって? 藤沢と布団ババアが?
 その話がまた、あまりにも衝撃すぎて吐きそうだった。

「私の一番身近な人が、あなたと同じ異常者だったのよ。私は小さい頃から、24時間、母親に監視されていた。思いもかけないことで叱られるし、殴られるし、最悪。そしてあの人は決まって言うの。『お前の考えてることは全てわかってる』って。『心の中にもお前の逃げ場はない』って。私はどうやったらそんな化け物から自分を守れるか、ずっと考えてた」

 布団ババアは、自分の能力を隠したりしない。他人のコンプレックスや秘密を突いて恐れさせることを楽しんでいる。
 俺のバイト先の先輩もそうだった。ババアに何か言われたから様子が変になった。あれはきっと、先輩しか知らないはずの過去の傷をババアがえぐったに違いないんだ。
 確かにあのババアなら、自分んちの子どもだろうが、どこまでやるかわかったもんじゃない。

「完璧な人間になるしかなかったの。誰から見ても、心の中まで覗かれても完璧な人間に。あなたたちに弱みなんて絶対見せない。そのためなら私は何も欲しくない。嬉しくない。悲しくない。落ち込まない。あなたたちの勝手な期待も欲望も嫉妬も完璧に打ち返して完璧に生きて見せるわ。そして最後まで勝ち残って、藤沢綾音のまま死んでやる。誰があんな人の奴隷なんかになるもんですか」

 一瞬だけ、世界にノイズが走った。彼女の悲愴な決意と怒りが、一本のノイズになって走り抜ける。
 でも、それだけだ。彼女の完成された世界には傷一つ入らない。

「だから、私は完璧なの」

 彼女の微笑みは、相変わらず慈愛と美しさと可愛らしさに満ちている。
 圧倒的な強さと自信の上に、可憐に彼女は君臨している。

 パーフェクト・ワールド。

 壮絶な親子関係の中で、何年も重ねて作り上げた不可侵のメンタル強さ。藤沢綾音がいるだけで、ただの学校廊下が世界遺産並に神々しく輝く。それはもう、常人の域を超えた驚異の精神力で。
 ここまで壮絶な覚悟で、完璧に生きてきた人間に、俺なんかが勝てるわけない。
 例え勝ったとしても、彼女の背後には布団ババアがいる。この恐るべき親子に、俺みたいなポッと出の新人エロ能力者が太刀打ちできるわけない。
 敗北感と恐怖が俺の膝を震わせる。立ち上がれない。

「で、あなたは何? はるかとリナみたいに、私も簡単にモノにできると思ったの?」
「…お、俺は…いや…」
「いい気にならないで。その力があれば誰でも抱けるとでも思った? 誰でも自分の思いどおりになるって、本気でそう信じてた?」

 藤沢は、フンと鼻を鳴らして俺を見下す。

「最低だね、本当に。あなたなんかに興味もなかった女を操って、自分勝手な彼女ゴッコの相手させて楽しいの? それ、アニメやゲームで彼女作るのと、どこが違うの? まさかあなた、そんなので自分が神様にでもなったつもりだったの?」

 やめてくれ。もう言わないで。
 藤沢には何も反論できない。心を暴かれたのは俺の方だ。

「ただのキモオタ野郎が、犯罪者になっただけじゃない。あなたのやってることは犯罪よ。自分がモテないからって、女を卑怯な力でオモチャにしていいと思った? それで勝ったつもり? バカ? ヘンタイ? 気持ち悪すぎるよね?」

 言葉だけで俺をズタズタにしていく。
 これだけきつい言葉を使っても、彼女の美しさは何も変わらない。俺の醜さを、彼女は丁寧に跳ね返しているだけだから。
 悪いのは俺だ。俺が最低のクズ野郎だから。
 追い詰められていく。心がズタズタに引き裂かれていく。完璧な彼女の、完璧な罵りで。

「……死ねば?」

 俺は悲鳴を上げて、彼女の世界から逃げ出していた。

 ───現実の廊下に戻ってくる。

 目眩がして、膝をついた。
 藤沢も俺から離れ、怪訝そうに顔をしかめた。

「今、私の中に入った…? やっぱり、あなたもお母さんと同じなの? コンビニの店員って、あなたのこと?」

 怖くて藤沢の顔が見れない。
 俺は膝をついたまま、震える自分の体を抱えて、頷く。土下座しそうな勢いで、頷く。

「はるかとリナにも、何かしたのね?」

 しました。俺は彼女たちにひどいことをしました。
 現実の藤沢にも、俺は抵抗できずに正直に頷く。

「そう。やっぱり、そうなんだ」

 冷淡な声が、逆に怖かった。俺は縮こまって震えるばかり。
 でも周りの人目を気にしたのか、藤沢は語気を柔らかくして、俺に近づいてきた。

「…倉島君、大丈夫? 具合でも悪いの?」

 演技になんて見えない。いつもそうしているように、具合悪そうな同級生に声をかけているだけにしか見えない。周りにいる連中だってそうだろう。
 藤沢綾音は、そういう子なんだ。そういう風に出来ている。誰もがそういう子でいて欲しいと期待しているから。

「あなた、どこかおかしいのかな? うちのお母さん、その手のビョーキに詳しいから、教えておいてあげるね。あなたのしたこと全部」

 そして、俺の耳元には強烈な爆弾を落としていく。
 布団ババアに引きずり込まれたあの光景。ドロドロの悪臭と息苦しさ。
 ババアに勝てる気なんてしない。今度こそ俺はあの世界で殺されてしまう。

「ご愁傷さま、シデムシ君」

 最悪の慰めの言葉を残して、藤沢は去っていった。
 俺は廊下にしゃがみ込んだまま、周りの好奇とからかいの視線を集め、ガタガタと震えている。
 吐き気が込み上げる。対人恐怖症がまたぶり返してくる。
 怖い。怖いよ。俺を見ないで。

 耐えられなくなって、廊下にぶち撒けてしまった。
 その辺にいた同級生たちが、驚きの声と、爆笑と、冷たい視線を遠慮なくぶつけてきた。
 俺はそのまま動けない。ゲロ吐いて、ボロボロ泣いて、震えてた。

 消えてなくなりたいと、マジで思った。

< 続く >



「ん…ちゅ、ん…は…んん…ちゅ、ちゅぷ…」

 ここは階段を昇りきった先にある、屋上に続く扉の前だった。
 古い机や備品が放置されていて、使われている気配もなかった。
 渡辺に嫌がらせのつもりでメール出した後、俺は爆笑しながら教室から出てきた彼女に拉致され、ここまで連行された。
 そして俺のシャツを摘みながら、「ここならたぶん、誰も来ないよ…」と声を潜める渡辺に、すさまじい萌えと性衝動を感じて抱きしめてしまったというわけだ。
 どうしてこうなったのか、難しいことは俺にもわからない。
 ただ確実に言えるのは、俺たちは今、チュッチュしている。
 学校で、朝イチから、みんなに隠れて濃厚なチュッチュをしている!

「んっ、んっ、んんッ…ふぅ…ん、ちゅ、ちゅぷ…はぁ…れろ、ちゅう、れろ……」

 渡辺の舌が俺の歯を優しく撫でる。俺も舌を伸ばして彼女と絡め合う。
 絡む。クチュクチュする。渡辺が俺の舌を吸って、フェラみたいに唇でしごいてくれる。
 彼女の腕が俺の背中に回される。俺も彼女を抱きしめる。
 柔らけー。唇もプルプルしてる。しかも渡辺って、超いい匂いするんだ。
 リアル女子校生、最強。ラブプラスなんてただの絵だよね。
 俺たちは長いキスをする。ハートが50個くらい飛び交う、こってりしたキスをする。
 ベロとベロがレロンレロンとスケベに絡まり、お互いの唾液を音を立てて吸い合い、背中撫でたり、尻を触りっこしたり、まったく渡辺のいやらしいことときたら。
 あいかわらず、俺の学校生活は超展開の連続だった。奇跡が続きすぎてバチカンにもマークされてるって話だ。
 渡辺との学校チューは激しく興奮する。しかも今はほんのわずかな休憩時間。寺田も同じ校舎にいるっていうのに、そのプチスリルが俺を興奮させた。

「ん…ねえ、本気なの、あのメール。うそだよね? 私、さすがにそういうのは困るんだけど…」

 もちろんあんなメール、ウソに決まってる。ただの嫌がらせだ。むしろ本気にされても困るってか、逆に俺が痛い。
 まさか朝イチで女子にマジフェラを要求するなんて行為がまかり通るほど、うちの学校ランク低くないし、俺もそこまでエロゲ脳withジャンルMCじゃないし。
 昨日、三森と図書室スパンキングプレイで学校図書をふやけさせてしまったのだって、ほんのはずみなのさ。
 だけどどうなの、君のその濡れた瞳は?
 どうして吐息がそんなにも熱いんだ? なぜ俺の髪を優しく梳きながら、首の後ろに手を回し、甘えるように体を寄せてくるんだい?
 まさかキスだけでもう興奮してしまったのか? 学校でフェラする自分を想像して濡れたのかい? ん?
 まったく、ここはエロマンガ島かっつーの。マン湖かっつーの!
 まあ、かくいう俺も、とっくにパンツの中がグチョグチョなんだけどさ。

「もちろん、本気だ」
「えー」

 俺はキリっと真剣な目で渡辺にお願いしてみた。
 渡辺は「えー」とかいうわりに嬉しそうに微笑み、俺の腕をギュッと握って、可愛い上目遣いで接近してくる。

「ねぇ、倉島…ひょっとして怒ってる? だからそんなイジワル言うの?」
「え、なんで?」

 怒るわけないだろ。だって渡辺は、寺田を教室に置き捨てて俺のところに来てくれた。こんなところに連れ込んでチューまでしてくれた。
 確かにまあ、寺田とイチャイチャしてる渡辺を見て、ちょっとだけイラっときたけど、でもそれ俺が渡辺に怒る義理じゃないし。
 むしろ別の意味で俺はいきり立っているから、一刻も早くしゃぶって欲しいんだって、きっぱりと言ってやった。
 でも渡辺的にはなんか違うらしく、「そうじゃなくて」と、俺の手をグイグイ揺らす。

「もー!」

 いきなり俺に体当たりしてきた。そして壁に後頭部をぶつけた俺に、体を寄せて見上げてきた。

「バカ。エッチ。…そんなこと聞いてんじゃないの」

 なんなんだよ。何スネてんだよ。てか本気で痛ぇよ。
 ったく、よくわかんねえけど、ちきしょ、その顔も可愛いな! チューしてやる!
 しかし渡辺は、するりと腕をすり抜け、体を沈めた。そして、ちょこんと俺の前で跪き、やや頬を染めたツン顔で、俺を見上げた。

「……誰かきたらすぐ教えてね。絶対だよ?」

 とか言って、渡辺は俺のベルトを外し、ズボンのチャックを下ろす。

「信じらんない。学校でこんなことさせるなんて、ほんと倉島エロい。AVかっつーの」

 …つか、マジしてくれるんですか? 今ここで!?

「ちゃんと見張ってる?」
「ま、任せとけ!」

 この体勢で階段下を見張れるのは俺だけ。しかし俺は、どちらかと言えば今から学校フェラしてくれる渡辺をもっと見ていたい。
 渡辺は、トランクスの中で熱く息巻く俺のサラマンダーを見て、頬をますます赤くした。

「もう固くしてる…エローい」

 そんなのてめーがその可愛い顔で俺のズボンを脱がしたり下から見上げたり髪を色っぽく耳にかけたり俺の足の間にちょこんと座る短いスカートの白い太ももが眩しかったりこの角度から覗けちゃってるブラウスの胸元がちょいセクシーってかそもそもお前の胸がでかいからだろうがバーカ!

「ごめん」

 謝っちゃった。

「いや、謝られても」

 渡辺はクスクス笑いながらトランクス越しに俺のに触れる。
 ゆっくりとなぞられる、優しいタッチのくすぐったさに、俺は震える。

「あのさ…私、倉島のこと、修吾とか…シュウって呼んでみようかな。ふたりっきりのとき限定で。いい?」
「え…あぁ、うん」

 シュウか。いいかもな。女に愛称で呼ばれるなんて、母親以来だな。
 渡辺の指先に優しくくすぐられて、俺はふわふわした気持ちのまま、適当に相づち打つ。

「シュウも私のこと、はるかって呼べばいいよ」
「う、うん…」

 渡辺の手が、焦らすように俺のトランクスを下げていく。ぞわぞわと腰がしびれる。
 あぁ、たまんない。もうすぐ渡辺がしゃぶってくれる。この美少女顔を俺の股間に埋めてくれる。あの魔法の唇で俺を幸せにしてくれる!
 やがて完全に戦闘体勢に入る俺のダンディズム。チラリとそれを見て、頬を染めて下を向く渡辺。
 どうした渡辺? 早く攻めてこい。そして俺のダンディズムに悲鳴を上げさせてみろ!
 渡辺は、モジモジしながら言う。

「そ、そんでね…あの、ふたりっきりのときとかさ、あとメールのときとかくらいは…私のこと、ちゃんと彼女扱いして欲しいなあって思うんだけど…ど、どうかな?」

 俺のダンディズムが、キャウンと可愛い悲鳴を上げた。
 その声、その瞳、その表情、とてつもなくそそる。男子なら間違いなく全員起立。俺もカウパー浮かべて降参さ。
 可愛い。なにこれ。渡辺すげー可愛いんだけど。たまんない!

「はるか、舐めて。俺、はるかに舐めて欲しい!」
「え…うんっ。シュウの、舐めてあげるね。んっ」

 嬉しそうに微笑む渡辺に、いきなり深いところまで飲み込まれて、思わず声を出してしまうところだった。そのまま頬をすぼめて思いっきり吸われて、背筋までゾクゾクした。

「んっ、ぢゅ、んっ、んっ、んっ、ちゅ、じゅっ、んっ、んっ」

 いきなり全開のピストン運動。
 渡辺の小さい顔が俺のを咥えて激しく前後する。なんて凶悪な快感。気を抜いたら精子どころか膀胱から腎臓まで引き抜かれてしまいそうだ。
 渡辺はやっぱりすごい。俺が待っていたのはこの快感なんだ。渡辺最高。超いい女。
 俺はグッと歯を食いしばる。だが、押し寄せる快楽の津波は俺ごとき無力な蟹野郎など一瞬で飲み込み、フェラチオという性の大海原に溺れさせ、小魚どもが俺の陰茎に群がり、ツンツンチュパチュパ吸い付いてきて、タコさんまで絡みついてきて、わかったわかった、お魚さんも、タコさんも、バキュームフェラさんも、ケンカしないでみんなで仲良く遊びましょって、ちょ、ちょっと、ちょっと待って、渡辺! 吸いすぎ!

「はるか! やば、それ、ちょっと、すごっ、すごいよぉ! ちょっと、待ってぇ!」
「んーっ。ダメっ、ん、授業、始まっちゃう、からっ。んっ、ちゅぶっ、早く、出してっ、シュウ、んっ、んっ、んぷっ、んっ」
「いや! いやいや! もっと優しく! 優しくしてぇ!」

 思わず腰が跳ね上がる刺激。脳がバキバキに痺れる衝撃。
 ヤバい。ヤバすぎる。何がヤバいって、俺、ヨダレとかすんごい出てるし、アホみたいな顔してる。クスリやってると思われる。
 このままでは俺はあっけなく射精してしまう。だが、そんなのもったいない。せっかく渡辺が学校でフェラしてくれるのに。このショコラのような贅沢なひとときをもっとじっくり味わいたいのに!

「ちゅっ、ん、もう、シュウ。我慢しちゃダメだってばぁ」

 一旦渡辺が俺のを口から出す。ホッと息をついたのもつかの間、彼女は俺の亀頭の上で舌をくるっくる踊らせた。しびれる快感に、俺のブルーアイズホワイトドラゴンも悲鳴を上げる。

「んっ、ちゅ、れろ、んっ、ねえ、出して、シュウ。ちゅ、ねえってば、シュウっ、んっ、ちゅぷ、もう、お願いだから、れろ、ちゅぷ、ちゅぅ…」

 文句を言いながらも彼女の舌はチロチロと俺のポイントを的確に攻撃してくるし、右手は俺のを握りしめ、素敵なリズムで刺激してくれるし、唇は優しく俺のカリを飲み込み、先走って溢れる欲望を吸ってくれる。
 さすが渡辺マイスター。美結みたいなド素人では話にならん。三森ではテクニックが足りない。
 渡辺じゃなきゃダメなんだ。今の科学では無理なんだ。
 この天使のフェラチオだけは!

「は、はるかっ、次の、授業、サボらない? 俺、もっとはるかと……ッ!」
「んーんっ! そういうのよくないよ、シュウっ。授業には、ちゃんと、出るの、んっ、んっ、んっ」

 ガポッと再び口の中に入れられ、その温かさと柔らかさで腰が砕ける。なんて絶妙な吸引力。渡辺のきれいな顔がいやらしく前後に動く。舌が丁寧に俺の陰茎に絡まる。俺は業界ナンバーワンの確かな技術力を実感する。

「はるか、すごいよっ。気持ち良すぎるっ。授業なんてサボっちゃお! お願い!」
「ダメだってば、んっ、んっ、延長、禁止っ」

 渡辺は、フェラしながら頭の上に指でバッテン作った。俺は舌打ちする。

「んっ、ちゅぷ、イって、んっ、もうイって、シュウっ、んっ、んっ、んっ、出してよぉ、もうっ、ちゅぶ、ちゅぶっ、ちゅうっ」

 こう見えて根が真面目な渡辺は、授業前に俺の射精を終わらせるため、懸命に口と手を動かす。だが俺はその奉仕が気持ちよすぎて、少しでも長らえようと必死に射精を堪える。
 愛のフェラチオは、いつの間にか俺と渡辺の真剣勝負に変わっていた。
 だって次の授業なんて何よ?
 ジジイ先生の倫理だぞ。そんなのどうでもよすぎるだろ。
 てか、俺ら学校でフェラまでしといて倫理って(笑)

「んー、ちゅ、んっ、んっ、んー…シュウってば、何笑ってんの?」

 渡辺が俺を口から出して、よだれのついた唇をぺろりと舐めた。色っぽい舌。俺を見る目が、妙に挑戦的でぞくぞくする。

「さては、私にもっとエロいことさせる気でしょー? ホントにもう、エッチだなあ……じゃ、すっごいことしちゃうからね?」

 渡辺は、俺の股間に顔を埋めて、右手で陰茎をシコシコ擦る。そして袋の方を優しく舐め始めた。

「うはぁ……」

 それもかなり気持ちよかった。渡辺の舌は本当にヤバい。チロチロとレロレロと本当に器用によく動く。
 絶え間ない快感が俺の睾丸を刺激する。ノックする。ええ、そこパンパンに入ってるからあんまりイジらないでくださいって、怒鳴りつけてやりたいくらいに!
 なのに、渡辺はもっと深く舌を伸ばしてくる。俺の股の間に潜るようにして、その後ろの穴にまで舌を這わせてくる。

「うわ、はるかっ、そこはッ!?」
「んー? ふふっ、ん、れろ、んー」
「ダメ!? はるか、そこダメ! そこ、汚いところだから…ら、らめぇぇぇ!」
「ん、ちゅぷ、れろ、ん、ちゅ、れろ、れろ、ン…ね、ここって、どう? ん、ちゅぷ、はあ、気持ち、いい? ちゅ、ん、れろ、ねえ、どう? ちゅ、はぅ、ちゅぷ、ちゅー…ねえ、シュウ? んっ、聞いてる?」

 そのとき、俺の意識は肉体から離れ、遙か時空を超えた場所でトムクルーズとハグしてた。
 マジでこんな体験初めて。信じらんない。
 俺は今、宇宙と一体になってる。全ての苦しみから解放され、神とアナルで対話してる。
 渡辺が俺のこんなところを舐めてくれるなんて。彼女のあの気持ちのいい舌が、俺の一番汚い穴の中まで入ってきて、ちゅうちゅうと可愛い音を立てて吸い付いてくるなんて。
 彼女にとって、俺は特別な男なんだって実感する。マジで俺は渡辺に愛されてる。ためらいのない舌使いでそれが伝わってくる。
 俺も渡辺のことが大好きだ。愛してる。俺はバケツの中で飛び跳ねた。シュウ、はるか、好きー! 

「あぁ、俺、もう……」

 頭がおかしくなっていた。 

「うんっ。それじゃ出しちゃおうね、シュウっ。んんっ、んっ、んっ、んっ、んっ」

 再び渡辺は俺の腰にしがみつき、喉の奥まで俺のを飲み込んでピストンを開始する。
 強い吸引が残り少ない俺のHPを根こそぎ奪い、ギュッと抱きしめられた太ももに柔らかい胸が押しつけられ、細い指が俺の内股や陰嚢、アナルのあたりまでコチョコチョとくすぐられて脳みそが溶けていく。
 もうダメ。完全に俺の負け。
 つーか、こないだまでクソ童貞だったヤツが、渡辺みたいな本格派の職人に勝てるわけじゃん。バカじゃねーの。
 素人は、ヨダレ垂らして「出る出るぅ」とか言ってればいいんだよっ。

「はるか、出るッ、出るぅッ!」
「んっ! んんっ! ん~~ッ!」

 渡辺がじゅぅぅぅっと俺のを吸い込んだ。熱いカタマリが尿道を突き抜け、弾けて飛んだ。
 彼女の喉の奥で、俺のラオウが真っ白になって天に召された。気づいたら空も晴れていた。恐怖の時代が終わり、愛の時代の幕が開けた。
 すごかったよ、はるか。
 俺、完敗だった。愛ゆえに俺は敗けた。清々しい気分だ。

「ん~ん~」

 しかしそんな渡辺は、口の中の精液を持て余しているところだった。

「あぁ、悪い」

 渡辺は、あんだけフェラ達人のくせに意外にも精液の味と匂いが弱点らしく、すぐに吐き出したがるんだ。
 俺は駅前で貰ったポケティを紳士的に差し出した。でも、渡辺は首を振って手でそれを制する。そして、コクリと喉を鳴らした。

「んっ、んん…」

 コク、コク、と渡辺の喉が動く。
 飲んでる。
 今まで何度も口に出しても、すぐにティッシュに吐いてた渡辺が、まずそうな顔して、俺の精液を飲んでる。何億という俺を、飲み下している!

「うっわ~。もう、これすごいネバるよー」

 などと真っ赤な顔を笑って誤魔化す渡辺に、俺は感動していた。2人の気持ちがアレしてアレになってくのが、恋愛童貞である俺にもわかった。
 俺たちすごい。超カップル。もう俺たちケータイ小説を超えた。エロさでは負けるけど、純愛さで勝った。

「だから、すぐそうやってエロい顔しないでってば。バカ。ふふっ」

 そう言って、渡辺は腰にしがみついてきた。
 俺の陰茎に彼女の熱いため息が吹きかけられる。ピクンと俺のが反応してしまう。

「は~あ…もう、シュウの彼女って、思ってたより大変だなあ。いつでもどこでも、しゃぶらされてさ」

 わざとらしくスネた口調で、チュッと太ももの付け根あたりにキスをする。陰毛のあたりをチロチロ舌でくすぐられ、ムズムズしちゃう。

「ま、いいんだけどね」

 くすっと笑う息がくすぐったくて、むずむずする。艶めかしい渡辺の仕草と舌に、また俺の性欲が痺れる。
 ポニテの髪を撫でた。気持ちよさそうな声を漏らす渡辺。それが可愛くて、あとラブプラスで鍛え上げた俺の撫で撫でスキルの上達ぶりを試したくて、顔とか耳とかを撫でまわした。

「ふっ…ん」

 渡辺はうっとりとため息を漏らす。あれ、マジで俺のスキル向上してる?
 まるでキス前のネネさんのように色っぽい渡辺の顔。「ん…」ていう微かな声に興奮する。むくむくと回復していく俺のタッチペン。渡辺がそれを優しくシコりながら、唇を舐める。
 俺と同い年のくせに、なんて色っぽい表情するんだよ。ぞくりとする。否が応でも期待してしまう。
 そんな俺を見透かすように視線を上げ、俺の目を見つめたまま、渡辺はまた濡れた唇で俺のにキスをしてくれた。舌でチロチロしてくれた。
 あの渡辺が、イジられっ子の俺なんかの下に跪いて、こんなことしてくれちゃうなんて、やっぱりすごい光景だって、あらためて思う。
 他人の心の風景にダイブできる俺のヘンテコ能力のおかげとはいえ、俺ってマジで神様に愛されてる。てか、フェラされてる。

「んっ…シュウ…ちゅっ」

 渡辺の細いアゴを撫でてやりながら、俺は彼女の中の『小さなはるかちゃん』に会いに行った。

 ───小さなはるかちゃんは、大きなお兄ちゃんをぺろぺろしているところだった。

「うはぅおぅふ!?」

 今日もヤバい絵をありがとう。
 精神世界の、ロリンロリンで全裸の渡辺が、俺のお兄ちゃん心のツボを知り尽くしたかのような女子座りで、小さな両手いっぱいに俺のをにぎにぎしつつ、ピンクの舌で先っちょを舐めていた。
 俺の平均的なアレが、やけに大きく見える。現実世界の渡辺の前では子犬のように大人しかった俺の肉棒が、この小さな渡辺の前では釘バットに見える。
 ホントこれが心の旅で良かった。お外の世界なら完全に犯罪ですから。

「はるかちゃん、気持ちいいよ」
「ん…ふふ、ありがとー」

 俺が頭を撫でてやると、小さな渡辺は俺のを握ったまま満面の笑顔を浮かべる。超可愛い。可愛いの極致だ。

「はるかちゃんは、男の人のチンチン舐めるの、好きなの?」
「んー…あんまり好きくなかったよ」
「でも楽しそうに舐めてるよ?」
「へへへ」

 俺がそういうと、渡辺は恥ずかしそうに身をくねらせた。

「だって、はるかはお兄ちゃんの彼女だもん。彼氏にするのは別だよぅ。お兄ちゃんが喜んでくれるから、大好き!」

 真っ赤になった頬を両手で隠して、また「えへー」と渡辺は笑う。
 そのあどけない顔面に、カウパーを噴射しそうになった。

「俺のこと、そんなに好きなんだ?」
「うん!」

 渡辺は、こっくりと頷いてくれる。幸福感に溺れちゃう。
 この小さな渡辺は彼女の心の核。無意識が人格化されたもの。だからこの子の言葉にはウソがない。女の見栄も計算もない。
 渡辺はるかは、100%の本心で俺のことを愛して、喜んでフェラしてくれているんだ。
 胸が熱くなるな…。

「あ、そうだ。お兄ちゃんに、いいもの見せてあげる」
「うん?」

 そう言って、渡辺は立ち上がって俺の手を引く。
 現実の彼女のより一回り小さな手を握り返して、俺は彼女の後について行った。

 彼女の心の中は、砂漠のオアシスに佇む、鉄の城で出来ている。
 彼女は自分自身をそこに閉じこめ、セックスと母親に捨てられた悲しみから逃れ、自分を守っていた。
 ここはその一番奥にある彼女の部屋。母親のいた頃の幼い自分の部屋を再現したこの場所で、1人で膝を抱えていた彼女に安心と快感を与えながら抱くことで、俺は渡辺はるかを手に入れたんだ。

 でも、今日はそこに新たな扉が増えていた。こないだまでは壁しかなかった場所に、白い扉が付いている。
 小さな渡辺が、その扉を開き、俺を招き入れる。
 俺は期待に胸を膨らませて、扉をくぐる。

「ひぃ!?」

 そこは、ひたすら女の子好みの、死ぬほどファンシーな部屋だった。
 思わず鳥肌立っちゃうくらい、可愛いもの大集合だった。

「あの…はるかさん、こ、ここは?」
「ふふ、びっくりした? あのね、ここはお兄ちゃんとはるかの部屋だよ!」
「ええッ?」

 閉じこめられたら5分で脳みそクラッシュしちゃいそうなくらい、女の子仕様の部屋である。
 真ん中にリラックスしたクマの丸いベッド。それを360度監視するかのように並ぶぬいぐるみたち。壁紙から天井まで花柄が埋め尽くし、ピンクピンクでカラフルなキャラクター家具がその隙間に埋まっている。
 クラスの女子の中でも大人っぽい感じで、リアル部屋にもぬいぐるみ一つ置いていない渡辺が、その奥底にこんなにもカラフルな女の子趣味を隠してたとは。
 戸惑う俺に、小さな渡辺は、シーッと人差し指を口に当てて声をひそめる。

「ここはね、秘密のお部屋なの。お兄ちゃんとはるかだけの秘密。誰にも言っちゃダメだからね?」
「秘密?」
「うん。はるかが作ったの。お兄ちゃんとはるかが、誰にも邪魔されないで、ふたりっきりになれる場所。だからここはお兄ちゃんのお部屋だよ。はるか、絶対大事にするから、いつでも遊びにきてね?」

 その瞬間、俺には彼女の気持ちが見えた。
 やりすぎじゃないのってくらい女の子全開のこの部屋は、渡辺の素直な感情を表してる。
 彼女は、自分の心の一番深い場所を、俺と共有したいって思ってくれている。それを許せる俺と一緒にいるのが、楽しくて嬉しくて仕方ないんだ。
 だから、ハシャいでしまってる。美人でセンス良くてモテモテガールな渡辺が、俺ごとき蟹野郎を相手に、ハシャぎすぎて空回りしちゃってる。
 こんなにも恥ずかしい少女趣味全開の部屋を、心の中にビフォーアフターしちゃうくらいに。
 でも、なんということでしょう。
 ここにはもう寂しかった彼女はいません。
 素っ気なく頑丈な鉄骨で、秘かな孤独を守るだけだった彼女の城には、今は大きく堂々とした窓が備え付けられています。砂漠だった外の景色も、だだっ広い緑のオアシスに変わっていました。
 砂漠の鉄の城の一番奥、秘密の部屋のその向こう側には…彼女がずっと欲しがっていた、心の潤いが満ちていたんだ。

「お兄ちゃん、ここ座って」

 ポンポンとベッドを叩く渡辺に従って、腰を下ろす。渡辺が俺の足の間にちょこんと女子座りして、嬉しそうに俺のチンコを握りしめる。

「続きしてあげるねー」

 ちゅっと、キスをして舌でくすぐってくる。
 ムズ痒くて単調な奉仕だが、チロチロ、ペロペロ、一生懸命舐めてくれる小さな渡辺を見ていると、テクニックがどうとか、どうでもいいように思えてくる。
 そういや最初に口でしてくれたときにも、渡辺はフェラが好きじゃないって言ってたっけ。
 当たり前だよな。こんなの舐めさせられるほうにしてみれば、くっせーだけで美味くもないし、気持ち良いわけでもないんだし。
 せいぜい、頬のむくみがちょっと取れるくらいだろ?
 でも、あのときも、今日だって、渡辺は一生懸命しゃぶってくれた。俺が気持ちいいって言ったら、何回もしてくれた。
 気持ちなんだ。
 フェラチオって、女の子の優しさなんだよ。

「はるかちゃん」
「んん?」
「大好きだよ」
「やったー!」

 こんだけクラスメートとエロいことをしておきながら、いまだに彼女いない歴=年齢の鈍感喪男な俺だが、渡辺が俺にどういう気持ちを抱いてくれてるかってことくらいは、十分に伝わった。
 あと、俺にヤキモチやかせたくて寺田とイチャついてみせた、その女心もね。
 不安にさせちゃってごめん。
 今度から、メールの返事くらいはすぐに返すよ。
 

 ───そして現実の渡辺は、俺に本格的な口奉仕を開始したところだった。

「うはぅおぅふ!?」

 舌を絡めながら口の中に飲み込まれ、ズポズポと擦られる。キュッとへこんだホッペタがその容赦ない吸引力を物語る。右手が俺の陰茎を絞る。親指で根元をクリクリ刺激してくる。
 反則だ。
 たった一瞬で、さっきまでのほのぼの感がエロスに塗りつぶされていく。
 まったくもって、フェラは技巧だ。テクニックが全てなんだよ!

「…は、はるか! そろそろ教室戻らないと…!」

 しかし、そろそろ時間的には限界だった。
 まだ賢者タイムを残している俺は、冷静に授業に遅刻することの危険に気を回す。
 いくらなんでも、俺と渡辺が2人そろって遅れて教室に入るのは目立ちすぎる。

「うん、でもシュウの……や、やばくないかな?」

 しかし渡辺は、すっかり伝説のポケモンと化した俺のを見て、困ったような顔をする。俺だって困り顔だ。つーか、そもそも渡辺のせいだろうが。

「ね、シュウ…もしも2人でサボっちゃったら、みんなにバレるかな? 大丈夫だと思う?」

 その問題について、賢者的に考えてみる。
 例え俺と渡辺が2人揃って授業をサボったところで、いったい誰が俺たちの関係を怪しむというのだろうか。
 まさか同クラに彼氏もいるモテ系女子の渡辺が、俺のような蟹野郎と逢い引きしてるなんて、誰もが想像だにしないだろう。
 ていうか渡辺はともかく、教室のエアー的存在である俺がいないってことに、誰が気づいてくれるだろうか?
 俺たちは十代の健全な男女だ。場所も選ばずセックスして当然なんだ。
 むしろこのエロい空気を置き去りにして授業なんかに出ることこそ、若人らしくないというべきではないだろうか。
 ですよね、クラーク先生!

「はるか、そこに立って」
「え…こ、こう?」

 賢者の衣をビリビリに破り捨てた俺は、渡辺を壁際に立たたせ、自分でスカートを持ち上げてパンツを見せろという、夢のエロ行為をお願いしてみる。

「……ほんとスケベだなぁ、シュウは……」

 恥ずかしそうにしながらも、俺の言うとおりにしてくれる可愛い渡辺を、俺は授業が終わるまでパンパンパンパン抱き続けるのだった。

「あぁっ、だめぇッ、イッちゃうよぉ、シュウっ、あ、あぁ! 私、私、また、あぁッ、あぁぁ! あぁ…ぁ…もう許して、シュウ…なんで、こんなに気持ちいいのぉ…んっ、あ、あっ!? やっ、また、そんなに、あっ、あぁ、だめっ、だめだめ、シュウ! 私、大っきい声出ちゃうからッ、ダメッ! イク、イクっ、あぁぁ、イっちゃ…あっ、あっ、んっあぁぁぁぁッ! …ぁ…や、やあ…んっ、んん! …んっ…んくっ…ちゅぷ、ちゅ…ん、もう…シュウの、にがいよぅ……」

 いえ~い。
 渡辺、エロい!

形而上の散歩者テルマ

~学校の廊下でゲ○を吐いたら妹が大変なことになった件~

 そんなわけで俺の腕の中でキャンキャン可愛い声で鳴く敏感美少女をイカせまくったあげく、最後にまた口出し精飲なんかもさせちゃって、ようやく性欲の平穏を手に入れた俺、倉島修吾。
 やっぱ渡辺はいいわ。満足度ハンパねぇわ。
 教室に戻って次の授業は普通に受けて、俺は軽やかな足取りでションベンへ向かう。
 さっきの濃厚なラブラブエッチを思い出したり、授業中もチラチラと俺にラブリービームを送ってくる渡辺を見てたら、何度も軽ボッキしてたまらんかった。
 まったく、渡辺は俺の前立腺を殺す気かよフフフ。

 そんな感じでニマニマしながら廊下を歩くキモい俺の前に、壁を背にして佇む1人の少女がいた。
 うわ、こんな可愛い子、学校にいたっけ?
 ていうか、めちゃくちゃボインじゃね? 目、なんか青くね? 超可愛い! 抱かれたい!
 って、三森じゃん。
 我がクラスのランク3位の巨乳美少女で先日から俺の性奴隷になった三森リナじゃん。

「ひょっとして、髪変えた?」

 昨日、俺に言われてメガネをやめたらしい三森は、ついでに髪もちょっとイジったらしく、前は単に短いだけだった髪もキチンと整えられていた。
 薄い色の前髪がすっきりとして、ロシア系ハーフの青くて大きな瞳も強調される。幼っぽさを残しながらも整った顔立ちと、白くてキメの細かい肌。ロリータな顔と身長に、そこだけ頼もしく成長した至宝のおっぱいときたらもう、アンバランスな黄金比とでも称すべき奇跡的なスタイルで、むしろ萌え美しすぎて現実感がなかった。
 ひょっとして君はハーフか。二次元と三次元のハーフか。

「可愛いじゃん」

 顔と胸とを遠慮なくジロジロと見ながら、俺は三森のお手柄なオシャレを褒めてあげた。
 でも、三森は顔をプイと背けただけで、相変わらず機嫌悪そうだった。

「なに? どうしたんだよ、リナ?」

 ツンとしたまま、こっちも見てくれない。昨日はあんなに従順奴隷だったくせに、今日はなんだか反抗的な態度だった。
 なにこれ、意味わかんない。昨日の今日でもうレジスタンスなわけ? 俺ってほんと、カリスマ性ないのな。
 やがて三森は、ゆっくりこちらを向いて、俺をジトっと恨めしそうに見上げた。

「……はるちゃんと、何してたんですか?」

 俺の喉のあたりでギクリって音がした。はるちゃんって、渡辺のことだ。ひょっとしてバレた? 気づかれた?

「ご主人様もはるちゃんも、朝はいたのに、いつの間にか2人で消えちゃってるし……」

 さっきの休み時間に2人時間差で戻ってきたあと、渡辺は「ちょっと具合悪くて」なんて言って、友達にはごまかしてた。
 ちなみに俺は予想どおり、誰からも声かけられることはなかった。
 確かに、渡辺の上気した頬とほんのりした瞳は微熱っぽい感じにも見えたけど、エロ眼で見れば「あなた今、かなり激しいエッチしてきましたね? てか具合悪いとか言ってるけど、あなたの具は気持ち良かったって言ってますよね?」ってすぐわかる。
 俺は三森のことをなめてた。確かにあの教室で俺たちの関係に気づくとしたら、彼女しかいないだろう。
 でもまあ、三森のことだから大丈夫だろって俺は思ってた。どうせ三森だからって、すんごいなめてた。
 女の勘ってすごいぜ。

「……ずるいです」
「え?」

 青い瞳をキッと尖らせて、三森は俺に詰め寄ってくる。

「はるちゃんばっかり、ずるいです! リナだって、はるちゃんみたいに朝イチで目隠し手縛りご奉仕強要されたり、職員室のドアに顔を押しつけられてスパンキングされたり、男子トイレの床に出した精液舐めさせられたり、耳とか尻尾とか犬グッズ付けて中庭引きずり回されたり、校庭の四隅で犬放尿させられながらご主人様に耳元で『今日の俺、わがまま犬将軍だから覚悟せよ』って囁かれたりしたいです!」
「そんなこと1コもしてませんからッ!?」
「リナ、授業中もずっとあの2人どんなことしてたんだろうって想像してたら、寂しくなって涙も出ちゃうし、あそこもどんどん濡れてきちゃうしで、ぐすっ」
「どんなことでも楽しめていいよな、お前って」
「とにかくリナ、本気で怒ってますから。ご主人様ひどいです。昨日はあれだけリナのこと調教してくれたのに…リナ、今日は頑張って可愛くしてきたのに……なのに、リナは朝から放置プレイで、はるちゃんばっかり可愛がってるとこ見せつけて…ぐすっ…えぐっ」
「え、いや、ちょっと、ごめん! マジ泣きは勘弁して!」

 三森はポロポロ涙をこぼし始める。そろそろ通行人も俺たちのことを怪しみだしている。
 さっきまでの天国気分から、いきなり転落の大ピンチ。どうしてこうなった…。

「…リナも犯してください」
「はい?」
「はるちゃんにしたみたいなこと、リナにもしてください。リナにもドSな犬将軍してください!」
「だからそんなことしてませんよっ!?」
「何でもいいんです。どんなプレイでもいいんです。してくれないと、ここでオナニーします。ご主人様の命令だって言って、みんなの見ている前でご主人様の上履きの匂いをクンクンしながらオナニーしますから!」
「ひぃ! それだけは勘弁!」

 この子ならやりかねない。
 放尿のオプションも勝手に付け加えかねない。

「ご主人様」
「はい!」
「確かにリナはただの牝奴隷です。ご主人様のやることに口を挟む権利なんてありません。でも、これだけは言わせてもらいます」
「は、はい」
「リナは、奴隷差別には断固反対です。私たちは、みんな等しくご主人様の性処理道具で淫乱奴隷犬なんです。ご主人様の精液なしでは生きていけない惨めな子犬ですけど、それでも懸命に生きてるんです。エサのザーメンくらい、ちゃんと公平に分けてください! もっとザーメン! モア・ザーメンです!」


 というわけで、人権団体の人たちが聞いたら泡を吹いて卒倒しそうな権利を主張する三森を、仕方なく俺は教室から遠い男子トイレに連れ込むことにした。

「はぁん……ちゅく、ちゅぷ、ご主人様……リナ、はしたないおねだりしてしまって、申し訳ありません、ちゅく、ご主人様ぁ…好き、ちゅ」

 あぁ、本当にな。
 俺はお前くらい、はしたない女を見たことねえよ。
 そう思いながら俺は、個室に入った途端に態度を豹変させた三森の口づけを受け入れる。

「ご主人様、わがまま言ってしまって、ごめんなさい。リナ、今日はどんな命令でも聞きますから、許してください」

 そう言って三森は、俺に胸を押しつけながらブラウスのボタンを外していく。はちきれそうなフロントホックブラが登場する。
 あえてきつめのブラを装着するのが、彼女のジャスティス。
 このブラを外した瞬間のおっぱいアクションが男を喜ばせると知ってるに違いない。
 ハッ、甘く見られたもんだぜ。

「いやっほう!」

 ブラを外した瞬間にボインと揺れるおっぱいアクションに、俺は思わず大声を出してしまい、唇を噛んだ。
 三森は、その俺の反応に気をよくしたのか、強調するように胸を突き出す。

「はい…リナのおっぱいですよ、ご主人様。好きなだけイジメてください」

 ゆらりゆらり、おっぱいが揺れる。
 俺は思わず喉を鳴らす。あいかわらず、凶悪なほど大きくて形の良いおっぱい。
 三森はそれを誇らしげに俺に見せつける。奴隷のくせに生意気な。でも、なんて理想的なおっぱい。完璧すぎて非現実的だった。こんなおっぱいがあるはずない。ウソだ。夢だと言ってくれ。
 なのに、それは確かに僕の目の前で現実として揺れていて。

「ご主人様…リナのおっぱい、今日はどうしちゃいます? なんでも好きにしていいんですよ?」

 なんていう魅力的なおっぱい。この俺が、たかが奴隷のおっぱいごときに呑まれてしまうなんて。
 確かに俺はおっぱいが好きだ。でも生意気なおっぱいは嫌いだ。主導権を握るのは俺なんだ。たかがおっぱいなんかに、負けてたまるか。

「どうしたんですか? ほら、ご主人様の大好きなおっぱいですよ? 吸っても揉んでも、ペインティングしちゃってもしてもいいんですよ…?」

 しかし乳首を中心にゆらんゆらん揺れる魅力的なおっぱいには、目を奪われざるをえない。蕩けていく。この魔力に抗おうとする意志はなくなっていた。意識が…ゆらんゆらんに、奪われていく。

「さあ…こっちへ来て下さい。触って、握って、噛むのです。ご主人様はリナのおっぱいが大好物なのです。おっぱいモンスターなのです」

 そう、俺はおっぱいモンスター…おっぱい大好きモンスター…今日も森の向こうから、おっぱい求めてやってきた…あぁ…おっぱいが、呼んでいる…俺の大好物…噛む噛む…。

「ご主人様はもう、リナのおっぱいのことしか考えられません。リナのおっぱいを24時間イジメ続けるおっぱいマシーンなのです。さあ…あなたの仕事に戻るのです」

 はい…ワタシはおっぱいマシーン…おっぱいをイジるために開発されたOPP-AIマシーン…今日もおっぱい仕事を開始しマス…うぃーん、がしゃ、うぃーん、がしゃ、うぃーん…。

「きゃ~ん!」
「え?」

 気がついたら、俺はロボット的な動きで三森のおっぱいを鷲づかみにしてた。
 三森の嬉しそうな嬌声を聞いて、俺はようやく我に返った。

「お…お前がMCしてどうするんだー!」
「い、いたぁいッ!」

 俺はそのまま両手でギュウギュウおっぱいを握りしめる。指の間からモニューっておっぱいがはみ出して、三森が悲鳴を上げる。

「す、すみません、ご主人様! リナ、おっぱいにうっとりしてるご主人様が可愛くて、つい、おっぱい催眠を試みてしまって! あっ、あん!」
「試みてしまって、じゃねえだろ! なんて凶悪なおっぱいだよ。まさか、おっぱい催眠だなんて……てか、おっぱい催眠ってなんだよ! いろいろひでぇよ!」
「あんっ、痛い! そんなに、引っ張らないでください! リナの、リナのおっぱい、千切れちゃいそうですぅ! あぁーん!」
「千切れろ! 千切れちまえ、こんなおっぱい! 後ろを向け! 俺にこれ以上、そのボインを見せつけるな!」
「そんなぁ…いいところだったのに」
「いいから壁に手をついて、尻を突き出んだ!」
「は、はい、ご主人様! 申し訳ございません!」

 あぶねえ。危うく三森のおっぱいに精神を支配されるところだった。ホント、とんでもないおっぱいだ。気をつけなければ。
 俺は三森の尻を、妙にセクシーな下着の上から両手で強くこねる。

「まったく、ほんと生意気な奴隷だな、お前は」
「あ、あぁ…すみません、ご主人様…リナ、ご主人様が愛おしいあまりに、ついついトイレをご主人様のお屋敷だと誤認させて、一生ここに閉じこめてトイレのご主人様プレイさせちゃえって思ってしまって…」
「そうやって、随所で俺を上回るエロい閃きと能力を発揮するところが生意気だってんだよ!」
「きゃっ! い、痛い! ごめんなさい、ご主人様! もう二度とご主人様を洗脳しようなんて思いませんから、許して下さい!」
「くそっ…お前のような生意気なヤツには、えっと、何かおしおきを───」
「スパンキングですかッ? それとも、緊縛ですか? 飲尿にしますか? リナ、悪い子だから、どんなおしおきでもご主人様の言うとおりにします! 何でも言ってください!」
「え、あぁ…それは、どうも…」

 別に俺がMCしたわけでもないのに、おしおきはご褒美だと勝手に誤認している三森は、青い瞳をキラキラさせる。
 俺は完全に引いていた。いや、呑まれていた。
 確かに三森は体も性格もエロい。エロすぎる。
 あまりにもエロくて、ミモロいとかそういう新しい言葉が必要なくらい三森はエロいんだ。
 童顔美少女の、大人顔負けに豊満な体と、女子校生ばなれしたドM感覚。この贅沢な食材を、俺は好きに料理していい権利を持つ。
 あぁ、それは確かに素晴らしいことさ。
 なのに、俺の中では敗北感と躊躇いが渦巻いていた。
 こいつは俺みたいな、童貞捨てたばっかのにわかご主人様なんかには、手に負えない女だ。
 俺はひょっとして、とんでもない化け物を目覚めさせてしまったのだろうか…ごくり。

 そのとき、トイレの外から男子の声が聞こえてきた。

「やべー、着替える時間ねえよ。ションベンしてる場合じゃねえって」
「いいって。漏らしたらどうすんだよ。今日から女子も体育館でバレーだぞ」

 この声は、同じクラスのヤツらだ。
 教室棟の外れのトイレだから、誰も使わないと思ってたが、体育館ルートでなら使う可能性ある。
 俺は便器に水を流し、唇に人差し指を当てて、三森に動かないように合図した。
 彼らは、こんな遠くの個室で大便しているシャイボーイでも入ってると思ったらしく、一瞬だけ会話を途切れさせたが、そのあとは普通に会話を続けていた。
 空気の読める奴らでよかったぜ。 
 しかし、そうか。うちのクラスは次体育か。メンドくせえ。このまま三森とサボり決定だな。
 でも今日は女子もバレーか…くそっ、迷うぜ。
 バレーボールといえば、同クラ女子の揺れるおっぱいを堂々と観察することができるという、数少ない公式視姦競技の一つだ。男子としては出場しておきたいイベントではある。
 しかし、そのイベントの目玉となるだろうクラス一の巨乳ちゃんは、今はここで俺のおしおき待ちなのだ。
 俺はちょっと自慢したいような気持ちで、尻を突き出したままの三森を見下ろす。

 三森は、本気で「どうしましょう?」みたいな顔して青ざめ、目に涙を溜めていた。

 あれ、意外。
 三森のことだから、このまま扉を開けて、彼らの見ている前で「してして、スパンキングして! そして私の尻肉を割り開いてご主人様の野太いチンポを挿入するところを、そこのクソ童貞たちに見せつけてやってェ!」くらいのことを、呼吸をするかのように言うと思っていたが。

「女子バレーか…楽しみだな、三森」
「ひひっ」

 個室の外では、男子たちが三森の名前を出していた。その途端、三森は「んくっ」と喉を引き攣らせた。
 俺は慌てて水を流す。そして、三森にそっと耳打ちする。

(…大丈夫だって。バレてないよ)

 三森は泣きそうな顔で、コクコクと首を振る。
 なんか、マジ怖がってる三森が意外。さっきまであれほど大胆だったくせに。
 
「つか今日の三森、なんであんなに可愛くなってんの? やばくね?」
「やべーわ。あれはマジでやばい。こっそり写メ撮ったし、俺」

 みるみるうちに、三森の顔が真っ赤になっていく。
 照れるとか嬉しいって感じじゃなく、なんか本当に恥ずかしいっていう様子で、唇を震わせている。

「早く三森のおっぱい見てェなー」
「あー、今日ほどあいつのおっぱい見たい日なかったわ。やべ、ボッキしてきた」
「ははっ、体育、マジ楽しみだな」
「フェスティバルだよな」

 目をギュッと閉じて、三森は体を縮こまらせる。もうおっぱいのあたりまで真っ赤っか。
 今の三森は、男子が小便している壁一枚向こうで、シャツを開いて、ブラをはだけさせて、スカートたくし上げでエロい下着を丸出しにしている状態だ。
 自分からそんな格好になっておきながら、今頃になって羞恥に震える三森に、俺は激しい興奮を感じていた。
 水を流す。ガンガン流す。

(どうした、リナ? 恥ずかしいか?)

 ビクン。
 三森の体が跳ねる。

(あいつら、リナのおっぱいが見たいんだってよ。いい機会だから、見せてやろうぜ。三森リナは本当はエロエロ大好きの変態牝奴隷ですってところを、生おっぱい付きでさ)
(ぁ…ッ、やっ)

 ビクン、ビクンと、三森は見てて気持ちいいくらい体を震わせる。ますます俺は調子に乗っていく。

(お前だって、そういうの好きなんだろ? 俺の淫乱エロ奴隷でドMの肉便器だっていうこと、みんなに見せつけてやりたいんだろ?)
(やっ、やぁ…)

 ビク、ビクンッ。
 俺が囁くたびに、三森は体を痙攣させて、イヤイヤと首を振る。言葉責めがすげぇ楽しい。

「三森、彼氏いるのかなぁ」
「いないで欲しいよなー。てか、あいつと藤沢だけはいないだろ。まだ手ェついてない感じがいいんだって」
「だよなぁ」

(…バカだな、あいつら。藤沢と違って、お前なんて汚れまくってるよなぁ? お前は本物の変態なんだし。俺に精液ぶっかけられて、一晩中オナニーしてるエロ女だもんなぁ?)
(うぅ…)
(あーあ。お前の正体知ったら、がっかりするだろうなあ、あいつら。いや、それとも大喜びするかな。今のお前の、エロい格好見せてやったら)
(ッ!?)

「やべぇよな…今日の三森で、俺の中でランク動いた」
「風、吹いたよな。確実に、三森のほうに」
「もうあいつが2位ってことでいいんじゃね?」
「あぁ、俺の一票も使っていいぜ」

 今日の三森のイメージチェンジは、うちの男子にもかなり好評らしい。確かに、世界が嫉妬する美しさだもんな。
 俺は三森の横顔をのぞき込む。彼女は、固く閉じた睫毛を震わせるだけで、俺と目を合わそうともしない。

(なあ、あいつらにお礼した方がいいんじゃね? おっぱいくらい見せてやろうぜ)
(ッ!?)
(サービスしてやったら、クラス1位にしてくれるかもよ。男子みんなに見せてやったら、マジで藤沢を抜くかもな。なあ、やってみようぜ)
(…や…いやぁ…)
 
「あのおっぱいをさ、ワシっと後ろから揉みまくる想像したことあるの、俺だけじゃないよな?」
「逆に聞きてーよ。想像しないヤツなんているの?」
「いないよなぁ」
「いないよなぁ」

 どうでもいいけど、ションベン長ぇよ。
 それはともかく、俺はあいつらのリクどおりに、後ろから覆い被さるように、三森のパイパイを鷲づかみにする。

(ンンンーッ!?)

 喉を仰け反らせ、歯をギリギリ噛みしめ、三森は悲鳴を堪えている。
 無茶苦茶にこねまくり、揉みしだくワガママおっぱい将軍の折檻に、必死で堪え続けている。
 俺はますます興奮が高まっていく。

(そうだ、いいこと思いついた。お前、ここで小便しろ。扉をご開帳して、あいつらに変態牝犬奴隷の放尿お披露目してやろうぜ)
(いやっ、いやぁ…)
(嬉しいだろ? そういうことしたいんだろ? なあ、正直に言えよ)
(い、いやです…私……いやぁ…ッ)

 声を出すのも恐ろしそうに、三森はゆっくりと、掠れるような声で抵抗する。
 いいね、これ。
 マジ三森すげえ。このプレイは思いつかなかったわ。

(ごめんなさい…ごめんなさい、許してください…)
(んあ? 聞こえないなぁ? それとも、挿入してるところの方がいいか? パンパン俺に犯されてるとこ、見せつけてやりたいのか?)
(違っ! いやぁ…!)
(ほんとエロいな、リナは…俺もマジ興奮してきた)

 俺は調子にのって、ボッキしたドS棒を尻に擦りつけながら、さらに無茶な要求をしていく。そのたびに泣きそうな三森の声が俺の嗜虐心を煽って、興奮させていく。
 やばい。三森エロい。マジでミモロい。
 さすが脳内お花畑で俺に拘束されて喜ぶほどの変態奴隷である。
 さっきまでエッチをリードしていた三森が、今は俺の腕の中で震える子犬のようだ。ビクンビクン震える体は、快楽というより恐怖の反応っぽく、上位に立つ快感を味わわせてくれる。
 クラスの女子をイジメるのって、こんなに興奮するんだ。イジられるだけの俺には知り得なかった楽しさだ。
 三森の体が頼りなげに縮こまる。真っ赤な顔は破裂しそうなくらいで、青い瞳からは、ポロポロ涙がこぼれだすほどだった。
 
 …って、あれ?
 ひょっとして、マジ泣き?

(ごめんなさい…ごめんなさい、倉島くん。無理です。私、もう無理です…ッ!)

 あれ?
 あれれれ?

(ごめんなさい…ごめんなさい、倉島くん…ひっく)

 完全に素に戻って、三森は俺に謝り続ける。
 え、なんでなんで?
 今そういうプレイじゃないの? むしろ三森のホームグラウンドじゃないの?
 なんでこんなタイミングで、素の三森に戻っちゃってるわけ?

「よっしゃ! 行こうぜ、体育館へ!」
「俺らのシャングリラへ!」

 陽気にハイタッチでもしてるらしく、バチンと景気のいい音を立てて、奴らはトイレから出て行った。
 手ぐらい洗えよ。てか、お前らのシャングリラなら、ここで乳出して泣いてるところだから何とかしてくださいよ。

「うっ、うぅっ、ご、ごめんなさい、倉島くん。私、できなかった…ご主人様の命令、聞けなかった…」

 三森はメソメソと泣き続ける。俺はただただ、途方に暮れる。
 どうしてこうなった…。

「うぅ、うえ~ん」

 ぺたんと、後ろ向きに便座に座り込んで、子供みたいな声を出して、三森は本格的に泣き出した。
 
「あ、あのさ…ひょっとして、本気で嫌だった?」

 三森はフルフルと首を横に振る。そのあと、縦に振る。
 どっちだよ。

「嫌、じゃないです、ご主人様の命令は。でも、他の人に見せるのは、嫌です。ひっく。怖いです」

 怖い? 三森が?
 この三森リナに、恐れるものなどあったのか?

「つーかお前、さっきみんなの前でオナニーしてやるとか言ってたじゃん。そういうの、好きなんだろ?」
「ウソです。絶対できないです。ごめんなさい。私、ウソつきました。えぐっ」
「ええー」

 ウソって。奴隷のくせに、ご主人様を平気で騙しちゃうわけ?
 ったく、これだからゆとり奴隷はダメなんだ。きっちり学校で奴隷とご主人様の正しい在り方教えてくれよ。

「ごめんなさい、倉島くん…えぐっ、嫌いにならないで。ぐすっ…捨てないで、ください…」

 もう、何がなんだか全然わからん。
 別に俺がやりすぎたとか、羞恥プレイが嫌なら嫌で、そう言ってくれれば俺は構わんし。
 なのに、なんでこんなに泣かれるのか、捨てるとかの話になるのか。
 女の面倒くささフルである。俺にどうしろってんだよ。
 とにかく、このままでは埒があかない。
 お前の中に、直接聞いてやる。

 ───三森の脳内お花畑に、どしゃぶりの雨が降っていた。

「うわあ…」

 そしてその大雨の中、小さいな三森が暗い背中を向けて、へたり込んでいた。
 どんよりしてる。あの天真爛漫☆奴隷ッ娘と呼ばれた三森が、悲惨なくらいズタボロになっている。
 満開に咲き誇っていた花も枯れていた。彼女を縛っていた幸福の証である奴隷の茨も、枯れ落ちていた。
 大災害だった。

「リ、リ~ナちゃん?」

 努めて優しい声で俺が話しかけると、三森はビクンと体を震わせ、恐る恐るという感じで振り向いた。
 俺の顔を見ると、ぶわっと涙を浮かべ、一目散に逃げ出した。そして、すぐに枯れ花に足をひっかけ、「ふぎゃん!」という悲鳴を上げて大転倒した。 
 うわあ…ますます声がかけづらい。
 
「うう…うえ~ん!」

 地面に突っ伏して、ジタバタ泣き出す。
 昨日はあれだけ淫乱少女だったのに、今日の三森はもう、見た目どおりのただの子供だ。
 俺は彼女のそばにしゃがんで、その白い尻をぺちんと叩く。

「どうした? なんで逃げる?」
「えぐっ、だって、ごしゅじんさま、怒ってるから。リナのこと、嫌いって言うから、怖いですぅ、ひっく」
「嫌いだなんて言ってないだろ。なんでそんなことになるの?」
「だって、だってだって、リナ、ごしゅじんさまの命令きけないダメどれいだもん。いなかどれいだもん。うえ~ん!」

 三森が泣くと、雨足も強くなる。彼女自身を、彼女が強く責め立てる。

「あのな…別に1回命令聞けなかったくらいで、俺はお前を嫌いになったりしないぞ」
「…ふえ、ほんと、ですか?」
「あぁ、大丈夫。だから起きろ」
「は…はいぃ…」

 体を起こして、ぺたんと枯れたお花畑にお尻をつける。ぐしぐし涙をこぼして、まだ俺の目を見られずにいる。
 三森に説明させなくても、俺には彼女の恐れが伝わってくる。
 嫌われるのが怖かっただけだから、嫌われてないとわかれば、三森は俺から逃げない。
 でも、体はまだ震えている。俺に怒られる、というより、自分を許せないから、三森は顔を上げられない。
 たった一度の失敗で、三森は失望と後悔のどん底まで沈んでいた。
 あれだけ無敵の奴隷っぷりを発揮していた三森の、意外な脆さに俺は驚く。
 そしてその原因は、彼女自身の過去にあった。

「リナ、お前…男が怖いのか?」

 三森は、こっくんと頷いた。
 そのとたん、彼女の過去が走馬燈のように俺の頭に飛び込んでくる。
 正体不明の『兄』に幼い頃心を支配され以来、無意識に自分のご主人様を求めて生きてきた三森。彼女のこれまでの人生は、ずっとその『理想のご主人様』探しに費やされてきた。
 彼女自身すら自覚できなかった漠然としたその欲求を、俺が昨日ハッキリと自覚させてやった上で、寝取ってやったんだ。

 しかし、俺は見落としていた。
 満たされなかった奴隷願望の反面で、彼女は男性に対する失望と恐怖も募らせていた。
 心だけ支配して自分を捨てた兄。大実業家の孫で美少女な自分に優しく近寄ってくる大人の下心。容姿の目立つ彼女に付きまとう男子たちの加減知らずのしつこさ。
 幼い頃から三森はずっと男に傷ついてきた。体育教師の一方的な暴力にも、その後の優しかった前の彼氏も自分に歪んだフィギュア愛を投影していただけだということにも、密かに彼女は傷ついていたようだ。
 ただ、そんなのは男子ならよくあること。
 誰だって、自分の勝手な欲望や願望を異性に投影したり期待するのは、当たり前のことだ。つか、女だってそうなんだろ?
 なのに三森は傷ついてる。
 幼い頃からずっと『優しい男』でも『強引な男』でもなく『ご主人様』だけを理想に求めてきた彼女は、じつは純粋なロマンチストでもある。
 彼女は理想が高く、傷つきやすい。そして傷つくのを恐れて臆病だ。
 むやみに目立つ青い瞳はメガネで隠し、ナチュラルに薄い色の髪は短く切り、大きな胸はきつめのブラで隠した。
 ぼんやりした天然気味な性格は男の保護欲と嗜虐心を無意識に誘っているくせに、その反面、目立つ外見は男に対する警戒心で意識的に固めてたのだ。
 じつはヤマアラシだった三森。
 彼女が自分を許すのは『本当のご主人様』だけ。ご主人様以外の男は怖い敵。だから早くご主人様に出会って、本当の自分を解放して、拘束されて安心したい。
 そしてようやく巡り会えた、運命のご主人様である俺。
 理想の高い彼女は、自分も理想の奴隷として振る舞おうとしている。ご主人様を誰よりも喜ばせて、誰よりも寵愛される完璧な牝奴隷になろうと頑張っている。
 でもそれは反面、俺も兄のように、機嫌を損ねたら簡単に奴隷を捨てちゃう冷たい男じゃないかという、恐怖の裏返しでもある。
 俺が渡辺も抱いているという事実も、彼女を揺るがせた。
 自分は、もっと頑張らなきゃいけない。俺に捨てられたら人生終わり。だけどご主人様以外の男に裸を見せるのは泣くほど怖い。命令だからやらなきゃいけないのに、できない。
 ヤマアラシは、自分のトゲを脱ごうとして、そのトゲで自分を傷つけている。捨てられたくない。そばにいて欲しい。失敗してごめんなさい。嫌いにならないでください。という不安でいっぱい。

 なんてことだ。
 なんて普通の女の子なんだ。

 変態ドMスペシャルな女子だと思ってた三森の悩みは、じつはすっげえ普通。
 彼女の『ご主人様に支配されたい』願望も、深く探れば、その正体は『大好きな王子様に守られたい』っていう、女の子のよくある願望と同じだったというわけ。
 三森は泣きながら、今も求めている。
 それはただの『ご主人様』ではなく、『真のご主人様』だ。自分の心も体も、わがままも、不安も、性欲も、彼女自身すら把握できないこのお花畑のはるか遠くまで、全てを委ねることを許して守ってくれるご主人様だ。
 つまり、彼女の神様だ。
 それめちゃくちゃハードル高ぇよ。しかも、依存心めちゃくちゃ強ぇよ。
 でも、それだって理想の恋愛の形を夢見る女の子と変わらない。ようするに、こいつも俺もたいしてレベル変わらない。いろいろ妄想して、先走って、カラ回りして、自分の限界と現実を見て全力でがっかりしてる。
 でもそれくらい、当たり前のことだろ。
 だって俺たち、お互い初めてのご主人様と奴隷なんだから。

「雨、とまれ」

 俺が命令すると、ピタリと雨は止む。
 両手で目を擦りながら、三森は顔を上げる。

「怖がることもないし、泣くこともないぞ」

 三森は首を傾げる。あどけない顔が、行き先に困った迷子のように曇る。

「心配すんなよ。逃げなくていい。ここにいろ」

 小さな頭を撫でてやる。三森はすぐに「ん」と気持ちよさそうな声を出して、頬を染める。
 
「…ごしゅじんさまは?」
「ん?」
「ごしゅじんさまも、ここにいてくれますか?」
「あぁ、いるぞ」

 ようやくホッとして、笑顔を浮かべる。
 彼女はもう俺しか見えていない。俺のためなら何でもしたいと思ってるし、他の男に痴態を晒すことだって、今は怖くても、いずれは克服したいと思っている。
 そうすれば、俺が喜ぶと思うから。
 彼女の行き過ぎな奴隷暴走も、卑猥すぎる言動も、俺を失う不安と戦ってる彼女のSOSなんだ。

「…ありがとうございます、ごしゅじんさま」

 ポンポンと、彼女の足下で花が咲いていく。それは彼女の幸福の証。
 しかし彼女は、せっかく咲いた花を、いきなりブチブチと千切り始めた。

「ちょ、なにを…?」

 そして、それを慣れた手つきで編んでいく。
 あぁ、それ、見たことある。美結も小さい頃、そんなの作って遊んでた。

「ごしゅじんさま」

 三森は、その花かんむりを俺の頭に乗せる。たった今、生まれたばかりの彼女のハッピー花は、まだ暖かかった。

「ごしゅじんさまにあげます。リナのお花は、全部あげます。だから、ずっとリナのごしゅじんさまでいてください。おねがいです」

 そういってぺこりと頭を下げる。
 なんかもう、必死すぎて痛々しい。見てらんない。
 お前、うちのクラスの3位だぞ。いや、ついさっき一部男子の間で2位に昇格したばかりだぞ。
 お前の兄に変な能力がなければ。そして、同じく変な能力もった俺に出会って、そこをつけ込まれなければ、きっと彼女は、それなりに不満はあっても、他人から見れば十分に幸福な人生が送れたはずだ。
 なのに、そのハッピーの花は、こんな俺に捧げられてしまう。
 委ねることで、彼女の抱えたでっかいトラウマも小さくなる。たとえ何を代償に失ったとしても、彼女にはそれしか幸福の道がない。三森には、ご主人様が必要だから。
 彼女の想いはやっぱ重たい。
 俺なんかにそこまで期待されても無理だと思うし、面倒くさい。

「かっこいいです、ごしゅじんさま。ちょう似合ってます」
「ん、そっか?」
「はい…おうじさまみたいです」

 でもまあ、そうやって頬染めて恥ずかしそうにする表情とか、体を縮めた拍子に腕の間でキュッとなっちゃう成長期のおっぱいとか、そういうの見てたら、死ぬまでコイツのご主人様やってやるくらい楽勝かなって思えてくるのは、なぜなんだぜ?

 俺は、花かんむりを脱いだ。
 そしてそれを三森にかぶせた。

「こんなの、いらね」

 俺の冷たい言葉に、三森は顔面ブルーレイになった。
 しかし俺は構わず立ち上がる。

「ここに家でも建てるか。俺の屋敷な。使用人はお前で、主人は俺だ。そして花をいっぱい咲かせろ。見渡すかぎり花でいっぱいにしろ。それ全部、俺の庭だ」

 花かんむりを被り、きょとんとしている三森に、俺は指を突きつける。

「そんなチンケなもの、俺はいらねーよ。それより俺のためにでっかくて頑丈な庭付き一戸建てを用意しろ。ここを全部幸せのお花畑にして、全部俺によこせ。他の男に花一本でも触れさせたら許さねーぞ。全部俺のだ。ここに住むのは、俺だけだ」

 三森は、目を丸くして固まってる。
 俺は、声を低くして、命令口調を強くする。

「わかったか、リナ? どんだけ時間かかってもいいぞ。必ず花だらけにして、俺によこせ。それまで途中で投げ出すことは許さねぇし、逃げることも許さん。いや、お前に逃げられるわけねーよな。だって俺はお前のご主人様で、そしてお前は死ぬまで……」

 三森は肩を震わせる。
 頬が紅潮して、青い瞳が潤んでいく。
 俺は彼女に顔を近づける。花の匂いがする。キスしちゃいそうなくらいな距離で、きっぱりと、俺は彼女に命令する。

「俺の奴隷だからな」
「はいっ! ごしゅじんさまッ!」

 なんか爆発したのかと思った。
 それぐらいの勢いでお花畑が一斉開花して、ビックリした。
 

 ───三森の頭を、グリグリしてやる。

「え、あ、あう…」

 三森はどうしたらいいのか、困ったような顔してる。

「お前、まさか本気にしたの?」
「え?」
「他の男に、こんなプレイ見せるわけないじゃん。そんなことしたら、学校も人生もクビになっちまうぞ? こういうのは隠れてやるから意味があんの。奴隷が羞恥心までなくしちまったら、面白くねぇんだよ」
「え? え、えー…」

 てか、当たり前だろ。
 こんなところでションベンしながらご開帳とか、本気でやられてたら俺が死んでたわ。

「本当ですか? 本当に、ウソですか?」
「うん」
「リナは、他の人の前でいやらしいことしなくてもいいんですか?」
「しなくていい。ていうか、すんな」

 三森は、「はぁー」と肩から力を抜いて項垂れた。
 そして俺に向かって頬っぺたを膨らませた。

「ひどいです、ご主人様。リナ、本気でおしっこしながら扉を開けて、みんなの見ている前でご主人様にお尻の穴におしっこしてもらって、お腹の中がパンパンになったところで、『私はご主人様のバキュームカーです』って言いながら放出しなきゃならないのかと思いました」
「くそみそかッ!?」

 うろたえる俺を見て、三森はくすくす笑う。
 知ってるよ。そうやって、できもしないくせにそんなこと言って、俺に叱って欲しいだけなんだろ?
 三森は俺に独占されたいんだ。俺に叱られて、縛られて、他の男には指一本触れられないようなところに、閉じこめていて欲しいんだ。
 この変態めが。

「まあ、そんなことより、リナ。例えウソでも、お前が俺の命令を聞けなかったのは事実だ。そうだろ?」
「え…あ、それは、あの…」

 三森の顔から血の気が下がる。
 またもや見捨てられる恐怖を思い出して青ざめる三森に、俺は唇を上げる。

「今からスーパーおしおきタイムだ。リナ、次の授業はサボるぞ。お前をここで、徹底的に俺専用奴隷に再教育してやる。二度と俺に反抗できない女になるまで、調教してやるからな」

 ドMの三森は、ご褒美を貰った子犬のように表情を輝かせて、頷いた。

「はいっ、ご主人様っ! よろしくお願いします!」



 そんなわけで俺は、三森の目と、腕を後ろに回してトイレットペーパーでぐるぐる巻きにしてみた。

「ご、ご主人様…これは、なんだか…」

 またスパンキングのような痛い系や、オナニーなんかの羞恥系のおしおきを想像していた三森は、目をふさがれ、動きもふさがれ、不安そうな声を出す。
 怖いだろ?
 ふふっ、作戦どおり。
 何度も三森の中に潜って、俺も彼女という人間がいろいろわかってきた。
 彼女は、自分の中でしかSMを楽しんだことがない。あくまで自分主体。だから自由も視界も奪われて、何をされるのかも分からないこの状況を、想像したことないのだ。
 彼女にとって未知のプレイ。だが、絶対に三森はこれにハマる。自信がある。
 無力で不自由な三森は、イジワルでエッチなご主人様の俺に頼るしかなく、何もかも投げ出して俺にすがるしかないのだ。
 これこそ、彼女が自分自身すら知らない心の奥底で、真に望んでいたSMプレイ。全てをご主人様に委ね、イジメられ、そして守られるプレイだ。

「怖いだろ、リナ?」
「は、はい…怖いです、ご主人様ぁ…」

 俺は黙って三森のスカートのフックを外す。そして、下着も足首まで下げる。
 小さく悲鳴を上げて、三森が体を縮こませる。
 色も量も薄い陰毛。エロエロな体のくせに、可愛い色したアソコに俺は喉を鳴らす。三森は為す術なく、身をよじるだけ。

「いい格好だな」
「あぅ、あの、ご主人様…リナ、本当に怖いです…ご主人様のお顔が見れないと、不安で…」
「これでいいんだよ。俺がお前を見ててやる。お前のその生意気な体を、余すことなく俺が視姦してやる」
「そ、そんな…ご主人様…」

 スカートを下ろして、はだけたワイシャツだけになった三森が、恥ずかしそうに体をくねらせる。
 相変わらず、なんて美味そうな体をしてやがるんだ奴隷の分際で。
 その大きく丸い胸も、くびれたウエストも、つるつるした形の良い尻も、なんだよそれ。ブラジルでサンバを踊れるレベルじゃないか。ヨーロッパのマンガフェスでコスプレできるレベルじゃないか。
 こうやって見ると、やっぱりすごいな三森の体は。世界と戦える女子校生だぜ。

「はぁ、はぁ……ご主人様…リナ、本当に怖くて…」
「心配すんな。ここにいるのは俺だけだ、お前は俺の命令に従っていればいい」
「は、はい…ご主人様だけ…ご主人様だけ…」
「そうだ。お前のその恥ずかしくてみっともない姿を見ているのは、俺だけだぞ」
「あぅ…リナ、恥ずかしい格好してます…裸で、トイレットペーパーで目隠しされて…ご主人様に、こんなみっともない格好見られて、リナすっごく恥ずかしいです…」
「俺の視線を感じるか? お前の全身をくまなく見てるぞ。前からだけじゃなく、後ろからも。右も左も上も下も、全て俺の視線がお前を捕らえている。俺の視線の檻の中に、お前は閉じこめられているんだ」
「あ、あぁ…ご主人様がリナの裸を見てる…あちこちから見られて、リナ、隠れられない…恥ずかしい、恥ずかしいよぉ…」

 そして三森のエロ想像力は、推定でも俺の約50人分はある。さらに視界と自由を奪うことによって、彼女の想像力はより敏感になるだろう。
 あとは言葉で責めてやるだけでいい。エロい三森はビンビンに反応してくる。

「リナ、お前のその体は誰のためにある?」
「ご、ご主人様のためです」
「だったら、恥ずかしくても俺の前ではいつでも裸を晒せ。隠そうとするな。生意気だぞ」
「はいっ。ごめんなさい、ご主人様。リナ、生意気な奴隷で…」
「あぁ、生意気な体だ。視線だけで感じるなんて、生意気でエロい体だ。お前は本当に変態だな」
「んっ、あぁっ、すっ、すみません、ご主人様! リナ、リナ、ご主人様の視線だけで感じる変態ですみません! すみません!」

 ビクン、ビクンと、俺の声がするたびに、三森は震える。こいつのエロ想像力の中で、今、俺の視線がバックベアードと化して襲いかかってるに違いない。
 怯えていた顔色も、どんどん朱を増していく。

「すみずみまで、よく見えるぞ。お前のでかい胸が汗をかいてる。股が濡れてる。マンコから汁を垂らしてるな」
「あっ、あっ、言わないで、くださいっ」
「スケベな体だな、まったく。男に見られただけで濡れるのか?」
「ち、違います! ご主人様だからです。ご主人様に見られてるから、リナは、感じてしまうんです!」
「そうだ。お前の体は俺のものだ。俺の前でだけ脱いで、俺の視線でだけ感じろ。他の男にその体を見せたら承知しないぞ」
「はいっ! リナは、ご主人様にしか肌を見せません! 他の男なんかで、絶対に感じません!」
「そのでかい胸も、尻も、俺のものだな?」
「あん、もちろんです! ご主人様のモノです! リナの体は、はぁ、すみずみまで、ご主人様のモノです!」
「心もだ。お前の心も体も、俺のものだ。俺のものじゃない場所なんて、お前には1つもないぞ」
「はい! あの、ありがとうございます! リナは、ご主人様のものです! んくっ、全部、ご主人様の奴隷ですぅ!」

 壁に体を預けて、リナは叫ぶ。
 肌は汗に濡れ、口からはよだれが零れ、乳首をピンと立たせて、俺の言葉一つで体を痙攣させて歓喜に震える。
 エロい。エロすぎる。なんだこの女子。ホントに同い年?

「リナ、イキそうか?」
「イキそうです! あぁ、リナ、ご主人様の視線だけでイッちゃいそうです! イっていいですか…? リナ、もうイっていいですか、ご主人様ぁ!」
「ダメだ。俺がいいと言うまでイクな」
「あぁ…そんな…はい、ご主人様…」
「こっちへ来い。足を開いて立て」
「んっ、は、はい…こ、こうですか?」

 一歩前に出て、足を開く。
 ひくついたアソコの、濡れて光るピンク色。
 ちなみに俺は、とっくにチンポ出してる。クールなご主人様を気取りながら、擦ってる。
 でもまだ入れてやんない。俺と三森の我慢比べなのだ。

「リナ、お前のエロマンコがよく見えるぞ」
「はぁ、はぁ、ご主人様…」
「ヒクヒクして、エロい汁をタラタラこぼしてる。触って欲しいか?」
「はいッ…はい、触って欲しいです。リナのエロマンコは、ご主人様に触れて欲しくて、ヒクヒクしてます…」
「自分でわかるか。お前のマンコがヒクついてるのが」
「わかり、ます…エッチなお汁、止まんなくて…我慢、できないんです! お願いです、ご主人様! エッチな奴隷のリナに、お情けください! ご主人様の手で、リナに触れて、イかせてください!」
「ダメだ。我慢しろ」
「そ、んな…ッ。リナ、苦しいです、ご主人様…っ、体中、ぞくぞくして、すごく……すごく、感じてるんです、ご主人様! 助けてください! アァ! あァ!」

 ビク、ビクと三森の体が跳ねる。
 見ているだけでアソコはビショビショで、真っ赤に火照っている。もう何度も犯されたみたいに。

「じゃ、想像することを許してやるよ」
「え…え?」
「俺に犯される自分を想像しろ。お前のマンコも、口も、ケツも、いっぺんに俺が犯してやる。ただし、お前の想像の中でだ。好きなだけ想像しろ。俺に犯されることを」
「ご主人様が…私を…犯すところ…」

 バカ正直に三森は想像は膨らませていく。
 半開きになった口は舌を彷徨わせ、俺の形をなぞる。足をわずかに広げて、赤みがかった肉を震わせる。

「もっと足を広げろ。そんなんじゃ入らないだろ」
「す、すみません! 今、すぐ…ッ」

 がに股に足を広げて、腰を落とし、俺にアソコを突き出すように命じる。
 三森の頬が、ますます羞恥に染まっていく。

「ほら、入っていくのがわかるか? お前のマンコと口とケツに、俺のが入ってくるだろ?」
「はい…はい、ご主人様のが、私にいっぱい…入ってきますぅ!」

 ビク、ビクと、まるで本当に挿入されたように体を痙攣させる。敏感な三森の体は、想像力だけでどんどんと高まっていく。

「入れてやったんだから、お前が腰を振れ。ちゃんと俺を満足させるように振りまくれ」
「はいッ、振ります! こ、こうですか、ご主人様!」

 足を広げたまま、三森は腰を前後に揺する。目と手をトイレットペーパーでぐるぐる巻きにされた拘束少女の一人運動。ひどく間抜けで、だがとても扇情的な光景だ。

「俺に入れられてるのがわかるか? お前の中に、今、俺のが入ってるんだぞ」
「はいっ…はい、入ってます! ご主人様の太くてかっこいいオチンチン、今、リナの中に入ってます!」
「マンコにだけか?」
「いいえッ! お尻にも、入ってます! お口の中にも、いっぱい、ご主人様のオチンチン、入ってますぅ!」

 舌を伸ばし、ヨダレをこぼし、だらしない顔で三森は腰を振り続ける。俺もどんどん興奮して、しごく右手に力が入る。

「くっ…リナ、お前は今、俺に犯されてるぞッ。マンコもケツも口も、俺のチンポでめちゃくちゃにしてやるッ。そのでけぇおっぱいも、ぐにゃんぐにゃんに揉みこんで吸ってやる!」
「はいッ! ありがとうございます、ご主人様ぁ! 今日も、今日もおバカな奴隷のリナをめちゃくちゃにしてくださって、ありがとうございます! リナは、とってもドMでヘンタイな女だから、ご主人様に恥ずかしいところをお見せして、犯されて、嬉しくって涙が出ます! こんな奴隷にお情けをくださって、本当にありがとうございますぅ!」

 ガクガクと俺の目の前で振れる腰から、彼女の愛液が飛び散って床を濡らす。あどけない童顔が快楽に蕩けきって、しみ出す涙が顔のトイレットペーパーを溶かし、頬に張り付いている。
 でも彼女の目は、きつく閉ざされている。舌は俺のを求めて彷徨っている。
 俺が命令したからだ。三森は俺の命令を絶対に守っているんだ。
 大きな胸が、たぷんたぷんと揺れる。乳首は、紅潮していく白い肌に消えてしまいそうなくらい淡い色のくせに、ピンと張って生意気な自己主張してる。
 くびれた腰が激しく動いて波を打つ。薄い色の陰毛が濡れてキラキラしてる。みっともなく舌を動かして、足を広げ、俺を求めてアソコを濡らしてる。

 昨日までは、同じクラスにいても俺とはまったく接点のない、リア充組のクラスメートだった。
 目立つ容姿してるくせに性格は大人しくて、ぽわぽわしてて、いつも笑ってて、女子の間で可愛がられてる子だった。
 あの子には彼氏なんていないといいなー、とか、いつもぼっちの俺のこと、優しそうなあの子は秘かに気にかけてくれてるといいなぁ、なんて勝手な期待したりしてた。
 そんで、俺に優しく声をかけてきたところを、上手く騙しておっぱいモミモミとか、ホントしょうもないこと想像して、時々おかずになってもらったりしてた。
 でも、当然そんなの俺の一方的な思いこみでしかなくて、向こうは俺のことなんて全然眼中にないこと知ってた。
 学校卒業したら、俺なんて同窓会も呼ばれないし、会うこともなくなるし。彼女はいつの間にか結婚しちゃって、どっかで幸せな家庭を築き、俺はそんなことも知らずに、今日も明日も卒アル開いてオナニーとか、そんな感じなんだろうなあって思ってた。

 今、俺の目の前で裸になって、トイレットペーパーでグルグルにされて、マンコ汁飛ばしながら腰振ってる、この女のことだ。
 もう彼女はただのクラスメートなんかじゃない。
 俺だけの奴隷、三森リナなんだ。

「リナっ!」
「きゃあッ!?」

 我慢できなくなって俺は三森の体に激しく抱きつく。
 三森の後頭部が後ろの壁に当たってゴィンといい音をさせるが、俺は構わず三森の体を持ち上げ、一気に挿入する。

「あぁぁあぁあーッ!?」

 俺の腕の中で、三森の豊満な体がガクンガクンと痙攣する。その痙攣が膣を通じてギュウギュウと伝わってきて、もうそれだけでイキそうなくらいに気持ちいい。温かくて、柔らかくて、三森のマンコは、本当に気持ちいい。
 俺はこの体を乱暴に貪りたい。めちゃくちゃにしてやりたい。
 
「あぁッ! あぁーッ!」

 両手を縛ったままの三森を、ガンガン突き上げる。背の低い彼女を壁に押しつけ、太ももを持ち上げ、下から押し上げるように腰を叩きつける。
 柔らかい。俺の体に吸い付くような彼女の肌は、最高だ。

「あぁぁッ、あ、ありがとうございます! ありがとうございますぅッ!」

 大きな瞳を見開き、イキっぱなしの顔で三森が喘ぐ。
 俺はその髪を鷲づかみにし、白い喉を晒させ、そこに舌と歯を這わせ、噛みついて、舌でべろべろに舐める。三森の肌は、熱く、しょっぱく、美味い。

「ひあぁぁぁッ! ご主人様、ありがとうございます! あ、ありがとう、ございますぅ!」

 俺の奴隷。俺の女。
 このいやらしくて、抱き心地最高の体を好きにしていいのは、俺だけだ。

「リナ、お前は誰の女だ! 言ってみろ!」
「はいッ! 三森リナは、倉島修吾様の女です! あぁッ! あなただけのものです!」
「俺のドスケベ奴隷は誰だ! 言え!」
「リナです! ご主人様の、ドスケベで、エロエロの淫乱奴隷は、リナです! いつでも、あっ、リナは、ご主人様のオチンチンのこと、ばっかり考えて、はぐっ、イジメて、泣かせて欲しくて、アソコを、24時間濡らして待ってる奴隷女です! あぁ、ドスケベで、ごめんなさい! 肉便器で、ごめんなさい! あぁッ、愛してます! 肉便器は、ご主人様のことが、大好きですぅ! あぁー! あぁーッ!」

 俺、ケダモノみたいだ。
 もう腰が止まんない。鼻息を荒げて、乱暴に三森を突き上げ、犯している。
 そして三森は、まるで俺に捕食された小動物のように、されるがままだ。
 彼女は大声を張り上げて、何回も達している。
 それでも俺は彼女に容赦しない。犯しながら何度も俺の奴隷であることを宣言させ、乱暴なやり方で犯す俺に、感謝の言葉を言わせている。
 三森は俺の命令に忠実に応える。俺はそんな彼女を貪り続ける。

「あっ、あっ…ありがとう、ございます…あっ、あり…ございま、しゅ、うっ、んっ、あっ、あっ…あっ…」

 もう彼女の意識は半分飛んじゃってる。
 蒼い瞳はひっくり返って、半開きの口元には泡をつけて、壊れた人形みたいに同じ言葉を繰り返し、俺のセックスを受け入れるだけだ。
 でも、それがいい。どんなになっても俺を受け入れる三森が愛しい。可愛い。このまま本当に壊してやりたいとすら思える。
 俺の奴隷なんだ。俺の好きにいいんだ。
 何度も何度も俺は彼女に突き入れ、そしてギリギリまで昇ってきた性欲を解放する。

「リナ!」
「きゃあッ!?」

 いきなり俺が手を離したから、三森の中から俺のは抜け出て、三森は個室の床にビタンと尻もちをつき、またもゴィンと壁に後頭部をぶつけた。
 それには構わず、俺は彼女の顔に精液のたぎりをぶつける。精液を一滴漏らさず、その妖精顔をしかめる三森にチンポを擦りつけて、腰の下を突き抜けていく快感に身を委ねる。

「あぁ…最高だ」

 超満足だ。俺は一匹のオスになって女を喰らった。夢中になってセックスした。
 渡辺の優しさに包まれるエッチもいいが、ケダモノのように犯す三森とのエッチも最高だ。

「うぅー…」

 しかし、三森はなんか違ったようだ。
 精液だらけの顔をうつむけ、ボロボロと涙をこぼし始めた。

「あれ、なに? どうした?」

 うずくまって三森は呻く。
 そういや、さっきすげぇ音した。
 三森の両手はまだ後ろに縛られたままだ。

「ご、ごめんごめん! すっかり夢中になっちゃって!」

 両手のトイレットペーパーを千切り、三森の頭を撫でる。そして新しいペーパーで、精液だらけのひっでぇ顔も拭いてあげる。

「痛いか? 本当ごめん。手ェ離すことないよなー。俺ってホント、鬼畜でごめんな? 尻とか大丈夫?」
「うー…だ、大丈夫ですぅ」

 ぐしぐしと涙を拭う三森を手伝って、俺は次々にペーパー千切って顔を拭いたり、頭を撫でたり、アソコもついでに拭いてあげたりと、大急ぎで彼女を慰めた。
 ったく、誰だよ、三森にこんなに精液ぶっかけたヤツは!

「…もう大丈夫です。ちょっと、びっくりしちゃっただけです。ごめんなさい」

 そう言って、健気にも三森は涙に濡れた瞳で笑顔を浮かべた。

「リナ、すっごく気持ち良かったです…。抱いてくださってありがとうございました、ご主人様」

 あどけない三森の笑顔は、いつ見ても俺を癒してくれる。
 有り難いやら、暖かいやら、なんだか不思議な気持ちになる。
 これがホントの三森の魅力。
 どんだけエロいことをしでかしても、最後のこの笑顔で、ほっこりしてしまうんだ。

「…俺も、すっげぇ気持ち良かった。その…リナは、最高だな」

 ご主人様らしからぬ俺の言葉に、三森の青い瞳は真ん丸になって、そしてなぜかまた泣き出してしまった。
 俺はそんな三森の頭を、グリグリと撫でてやる。

 ───小さな三森は、花を摘んでいた。

 頭ナデナデのついでに潜ってみた三森の世界では、小さな三森が、丘の上で俺のお屋敷を建設中だった。

「ふんふ~ん♪ ふふんふふ~ん♪」

 ご機嫌だった。
 満開に咲き乱れる三森のハッピー花が、彼女の手で編み上げられ、広く、花畑の中で盛り上げられていた。
 おそらく俺の命じたお屋敷の、これは基礎となる部分だろう。
 しかも、ちょうどここは、彼女のトラウマだった真っ赤な洋館が建っていたあたり。
 あの館よりは小さく、でも俺んちなんかよりはよっぽど広く、三森の花が、足首くらいの高さまで積み上げられている。
 摘んで、編んで、積み上げて。コツコツと俺のお屋敷を作る三森は、この果てしない作業を、楽しんでやっているように見えた。俺が頭にのっけてやった花かんむりだって、彼女の気分を反映するのか、花弁を大きくしてた。
 作業だって、むしろ思ったよりも早く進んでいる。
 5年か、下手をすれば10年はかかると思われた課題なのに、これでは1年と経たずに俺様専用の大豪邸が三森の中に完成するだろう。
 まったく、イジワルな宿題考えるほうの身にもなってくれよ。
 丸いお尻をこっちに向けて、無邪気に花を摘む三森に、俺は苦笑する。
 でも、きっと壮観だろうな。
 不気味だった赤い洋館も消えたこのお花畑に、お花で出来たお屋敷が建つ。
 俺たちの秘密の主従関係が、三森の中で小さなお屋敷となって、風薫るこの丘で花と一緒に咲くんだ。
 それはきっと、素敵な光景に違いない。
 
「あっ」

 俺に気づいた三森が、「にぱー」と満面に笑顔を浮かべて手を振った。そして、自分の立っている花の土台をブンブンと指さして、両手をいっぱいに広げて叫んだ。

「ご主人さまーっ! 1本目の門柱の太さは、このくらいで足りますか~?」
「サグラダ・ファミリアかよッ!」

 晴天のお花畑に、俺の絶叫ツッコミがどこまでもこだました。



 俺は勝ち組だ。
 人類を負け組と勝ち組に分けたなら、俺は間違いなく圧勝組に属する人間だ。今なら勝ち組にだって負ける気がしない。それぐらい俺のこのヘンテコな力はすごい。
 正直、すごすぎて俺の体が追いつかない。
 なんかさっきから今まで使ったことのない股の筋肉が悲鳴を上げてるし、股関節にも違和感が生じて歩き方がおかしくなってるぐらいだ。
 でもそれがどうした。俺が望んで得た結果じゃないか。
 俺は地球の全ての美女を抱く。この能力を使ってヤリまくってやる。
 モテモテでウッハウハの学園生活をジョイフルしてやるんだぜ!

 などと、がに股で廊下を闊歩していたら、またもや美少女発見。
 まったく、我が校の女子レベルやばいわ。WGK(我が校)48を結成できるくらいやばい。
 そしてそのメンバーの中で、間違いなくセンターポジションに収まるべき神女子、藤沢綾音がこっち見て微笑んでるなんて、本当にやばい。

 …やばい。

 廊下の壁にもたれて、俺を見つけてニッコリと微笑んでいるのは、確かにあの、藤沢綾音だった。
 ナンバーワン美少女、藤沢。
 その呼び名がなぜ彼女に相応しいのか、それを語り尽くすには1万行を要するだろう。
 でも1行でいうなら、彼女は見た目はもちろん、何をやらせてもナンバーワンだからだ。
 見ろ、あのサラッサラの髪。俺のと同じ素材で出来てるなんて信じられるか?
 顔小っさ。渡辺も小さいけど、藤沢の場合はさらにパーツの大きさや配置が完璧。
 いや渡辺だって相当美人だよ。でも藤沢は、その上を行く。しかも笑ったらすっげ可愛い。三森もピンチなくらいあどけなく可愛い。
 顔だけで、もうナンバー2と3の二人を凌駕しちゃってる。
 勉強だって、スポーツだって、オシャレなことだって、およそ学園生活で彼女が誰かに負けたことなんてない。知らないけど、たぶんない。
 そして、そのことを鼻にかけたり、他人を見下したりするようことを彼女は決してしない。
 人の悪口を言わず、他人の面倒を嫌がらず、でもクソ真面目ってわけでもなくて、クラスの奴らとバカ話で盛り上がったりするし、いいタイミングで面白いこと言ってみんなを笑わせるセンスもある。
 嫌味がなく、親しみやすく、でも他の女子とは明らかに違う、パーフェクト女子。
 そういう女がこの世にいる。てか、同じクラスにいる。
 俺の目の前に…いる。

「倉島くん、倉島くん」

 しかもあろうことか、この俺を手招きしますか。
 鈴の音のようなアニメ声で、まるで天使が小さな羽で羽ばたくかのように、ちょいちょいってその白い手で俺を招きますか!
 なんだよもう、うちの女子の間では廊下で待ち伏せするのが流行りなわけ? パワースポットなわけ?
 俺、明日から地蔵のように廊下に突っ立ってることにするわ。

「あ、あああ、ぼぼ、僕ですか?」

 できるだけ平静を装うとしても、これが限界だ。
 体中が発熱してる。ものすごい勢いで制服の中が蒸れていく。

「ごめん、ちょっといいかな?」
「は、ははい」

 まるで人生で初めて女子と喋ったかのように、俺は緊張していた。
 俺が脱オタ目指してクラスで浮いてた頃、流れで彼女とちょっとした会話くらいはしたことあるけど、いつもこんな感じだった。気圧されまくって、自分でも何を言ってるのかわからない状態だ。
 でも、今の俺はあの頃の俺とは違う。
 まず非童貞。
 男としてまるで別物。漢である。
 さらに、抱いた相手はあの渡辺と三森。
 いきなりの大物食いだ。並の童貞なら腹を壊して死んでいる。異能力持ちの俺だからこそ成し遂げられた偉業なのだ。
 この能力があれば、たとえ藤沢であろうと恐れることはない。
 どうせ近いうちに、藤沢も落とす予定だったんだ。堂々と、スマートに彼女に接近してやればいい。

「わ、わわわたくしのようなオオヒラタシデムシに何かご用でしょうか…?」
「アハハッ。相変わらずおかしなこと言うね、倉島くんって」

 くそぅ。何言ってんだ、俺。
 やっぱりダメだ。俺には藤沢と正面から向き合う男子力はない。もっとこう、卑怯な手で迫らないと。
 藤沢が笑うだけで、もう顔が真っ赤だ。言ってることも、めちゃくちゃだ。
 一体、俺なんかに彼女が何の用だっていうんだよ。

「あのさ…」

 藤沢が、俺に顔を近づけてきて、声を潜める。俺の心臓が5倍くらいに膨らむ。

「はるかと、リナのことなんだけど」

 そして膨らんだ心臓が破裂して肛門から出た。
 まずい。いきなり触れられたくない話題きた。
 歯がガタガタと鳴り、冷や汗がドバドバと溢れてきた。
 体温が冷えていく。目がチカチカとしてきた。耳鳴りがしてきた。
 呼吸が上手くできない。口の中がねばる。でも力が入らない。唾を飲むこともできない。心臓が不規則だ。苦しい。意識が遠のいていく。向こうに光が見える。引っ張られていく。そして何かを突き抜けた。近くで水の音がする。だんだん楽になっていく。だんだん楽になっていく。

「え、死ぬの?」
「いや死なないし!?」

 藤沢が、俺の顔をさらに近くまで覗き込んできて、そのショックで俺は目が覚めた。
 死ぬかと思った。美少女と喋ったら死ぬところだった。人の生き死にすら自在に操るとは、やはり美少女は恐ろしい。みんな、美少女のことは俺に任せて逃げるんだ!

「それで、やっぱり倉島くん、何か知ってるの?」
「え、何が?」
「だから、はるかとリナ。あの二人、今日はどっちも授業サボってるよね? それで私、気づいちゃったんだけど、なぜか倉島くんも同じ授業サボってない?」
「……」
「でさー、戻ってきたら、二人とも何か変なんだけど。というより、はるかとか、一昨日くらいからなんか落ち着かないし、リナだって、いきなりイメチェンしてきて、理由聞いても真っ赤になるだけで教えてくれないし」
「…………」
「まさかねー、とは思うんだけど…ひょっとして倉島くん絡み? ね、君ってあの二人と何かあるの?」

 ゴックンと喉を鳴らし、呼吸を整え、俺は努めて平静を取り繕う。

「しししりしり知りませんよ、ななな何何ももも」
「うん、さっきからドモりすぎてテクノっぽいよね。大丈夫?」
「ン、ンンッ、大丈夫。ほ、本当に何も関係ないよ、俺」
「ウッソだぁ。今、死にそうになったくせにー」
「で、でも死んでないもん。ウソついてない証拠だもん」
「いや、でもかなり三途の川だったし。ていうか、ここで命賭けられても困るんだけど」
「藤沢さん。男ってのはね、誰でも命を賭けて守らなきゃならない秘密のフォルダが自宅のPCにあるのさ」
「何それ? 矢沢?」
「永ちゃんがこんなこと言ったら濡れるわ」
「やっぱり何か隠してるんだ」
「そんなことないって」
「ウソついてもダメ。わかってんだよー」
「ないよー。藤沢さんに隠すようなことなんて、全然ないって」
「ホントに?」
「ホントホント」
「だったら見せてよ、家のパソコン」
「そっちかよ」
「あはは」

 気がつくと、普通にしゃべってた。この俺が学校一の美少女と、放課後の軽いトークを交わしてた。
 これは俺の成長というより、やはり藤沢の力だった。
 キョドる、ドモる、声もボソボソ、という喪男の教科書のような俺でも、ポンポンと話を繋げていく彼女の話術で、いつの間にか会話が弾んでる。
 てか、楽しい。藤沢さんとのおしゃべり楽しい。
 相変わらず直視するにはまぶしすぎる美少女だが、彼女の心地よい声と転がるような会話のテンポ、それにちょっとしたことでも笑ってくれるリアクションが嬉しくて、結構しゃべれてる。いつの間にかオオヒラタシデムシの生態について熱く語っちゃったりしてる。しかも、わりとウケてるんだ、なぜか。
 やっぱり彼女はすごい。
 藤沢は、例え相手が誰であろうと、偏見なしに当たり前にしゃべれるからすごいんだ。
 もしも渡辺や三森のことがなければ、俺はあっさり彼女に心酔してただろう。こんな美少女が、自分と普通にしゃべってくれるってだけで、俺みたいな男は簡単にやられてしまう。浄水器でも何でも買ってしまう。
 藤沢がナンバーワンである一番の理由。
 彼女は敵を作らない。誰であろうと、彼女は自分の味方にしてしまう。学校社会での立ち振る舞いまで、完璧なのだ。
 
「もー、なんか上手くごまかされた気がするなー」

 髪をかき上げる仕草にドキーッ。
 もう、この人は本当にすごい。惚れる。惚れるしか選択肢はない。

「ま、いいか。引き留めちゃってごめんね。私、部活行かなきゃ」

 小っちゃくバイバイして、藤沢は背中を向ける。
 なんだか寂しい。もっと彼女と話したかった。今度はぜひ槍形吸虫の話でも。
 でも、それよりもっと大事なこと忘れてた。
 これはチャンス。決定的チャンス。
 藤沢は俺に背中を向けている。
 廊下には他に人もいるが、気にすることはない。俺が彼女に何をしようと、それに気づく人間なんていないんだから。
 藤沢の中に潜れ。彼女を俺のものにして、ここから連れ出せ。
 そして…ナンバーワンの彼女を、誰より先に俺が抱くんだ!
 俺は彼女の背中に手を伸ばす。呼び止めるフリして、その細い肩に手をかける。
 

 ───そして、誰もいなくなった。

 あ、あれ? あれれ? どうなってんの?
 賑やかだった放課後の廊下から、人の声が消えた。気配すら消えた。
 藤沢はいる。あいかわらず俺の目の前で背中を向けて、いる。
 俺と藤沢だけ残して、あとの人間だけ消えてしまった。
 ここは…どこだ? 学校の廊下なのか?
 俺は藤沢の世界に潜ったはずだ。なのにここは……それともここが、そうなんだろうか?

 ゆっくりと、藤沢が肩に手を乗せたままの俺に振り返る。

「ふーん…。やっぱり、ウソだったんだ」

 震えた。
 藤沢の声の冷たさに、俺は震えた。
 彼女は俺を、それこそオオヒラタシデムシでも見るかのように冷たい目で見て、俺の手を払った。
 藤沢は藤沢のままだった。子供でも裸でもなく、制服のままの藤沢綾音だった。

「あなたも、そっち系の人なんだね。それではるかとリナのこと、モノにしちゃったわけ?」

 よくわからないまま、俺は頷いていた。
 わかってるのは、俺の能力がバレてるらしいってこと。
 そしてここで主導権を握っているのは、俺じゃなくて彼女だということ。
 藤沢は、動揺する俺の前でくすりと微笑む。

「で、次は私の番ってわけだ?」

 顔が赤くなった。何が起こってるのかすらわかってないというのに、彼女の小首を傾げて微笑む仕草に、現実世界と同じようにドキドキしちゃったりしてる。
 見えない。何にも、見えてこない。
 誰もいない学校廊下で、藤沢と俺しかいない世界で、俺は彼女の心が見えないままでいる。
 俺は喉を震わせ、やっと思いで口を動かす。

「…ここ、どこですか?」

 藤沢はあきれたように笑って、髪をかき上げる。

「あなたの方から来たんでしょ? ここ、私の心の中よ」

 キラキラと、彼女の髪になびいて星くずが飛び散る。
 いつもの学校廊下。でもよく見るとそこには汚れも埃もヒビもない、ピカピカの廊下だ。窓もキラキラ。空気まで澄んでいる。
 誰もいない世界で、藤沢と、彼女を取り巻く全てが輝いていた。

「藤沢さんも、俺と同じ力を…?」

 今の俺と互角以上に対話できるなんて、普通の人間には不可能だ。考えられるのは、彼女も俺と同じ能力者だってこと。
 なのに彼女は、嫌悪感をあらわに顔をしかめる。

「じょーだんじゃないわ。あなたたちと一緒にしないで」

 彼女が嫌な顔をすると、俺まで悲しくなる。馬鹿なこと言った自分を後悔したくなる。
 藤沢の心に惹き込まれている自分に気づく。他人の心の中では、圧倒的に優位なはずの俺が、完全にこの世界の美しさに魅了されている。

「私はノーマル。普通の女。ただ、あなたみたいに異常な力を持った人たちに、心の中までイジられたくないだけ」

 普通だって?
 ウソだろ。こんなの見たことない。
 この世界は、現実を完璧に反射している。ただの反射じゃない。ありのまま受け入れ、正しく美化し、跳ね返している。
 それが本当なら、彼女は現実よりも完璧な現実を心の中に築いていることになる。てかそんなの、菩薩の領域だろ。生身の人間がそんなことできんのか?
 この世界には“美”しかない。エゴもコンプレックスもトラウマもない。

「…そんなこと、できるはずない」
「できるわよ。あなただって私の中を覗いてるんだから、わかってるでしょ」
「わかるわけないって! なんだよ、これ? なんでこんなに……きれいなんだよ…」

 藤沢はまた眩しい笑顔を見せる。
 そしてスカートを摘んでほんの少し持ち上げ、俺に見せつけるように眩しい太ももを輝かせ、さらさらの髪を泳がせる。
 俺は息を呑む。彼女の美しさがさらに輝きを増す。心を奪われる。
 彼女が浮かべるのは、まさに最強美少女の微笑み。

「だって私、完璧だもん」

 目が潰れた。まぶしい光に溶けてしまいそうだった。
 主人公の必殺技に巻き込まれたザコ敵のように、俺はこの光であっさり塵になってしまうと思えた。

 そう。藤沢綾音はいつも完璧だった。

 勉強でもスポーツでもミスコンでも休み時間の教室でも、彼女が誰よりも一番で、誰よりも輝いていた。
 でも、心の中までそんなのアリか。
 どんな美人もイケメンも、心の中にはドロドロした欲望やコンプレックスの一つや二つあるもんだろ。現実どおりに完璧なんてあるはずない。むしろ薄汚れた都会の空気まで洗浄してしまうほど美しい心なんて、あるはずもない。
 逆にそれこそ、狂気の沙汰だ。

「なんで…」
「ん?」
「なんでそんなに、メンタル強いんですか…?」

 一分の隙もないとは、まさにこのこと。
 彼女の心は、まるで魔法の鏡だ。傷一つない鏡だ。
 だが、なんのためにここまで内面まで磨き上げる必要がある。
 サトラレでもない限り、普通はそこまでする気を配る必要もない。むしろ外見が完璧な藤沢綾音だからこそ、内面には自由な醜さがあってもいいはずだ。
 四六時中、心の中まで完璧なんて、そんなの普通の人間にできるはずがない。どんな聖人君子でも無理だ。そんな努力をしようなんてすら考えもしないはず。
 なのに、なんで?
 藤沢の表情が、少し曇る。

「…うちの母、知ってるんでしょ?」
「え?」
「生意気なコンビニの店員って、あなたのことでしょ? 同じモノを持ってる人がいるって、お母さん言ってた」

 吐き気をもよおして、膝をついた。
 思い出したくもない女の顔と、彼女の世界を思い出して、死にそうになった。

 布団ババア。

 俺が能力に目覚めるきっかけを作った女。最恐最悪のイカれた女。
 ていうか、親子だって? 藤沢と布団ババアが?
 その話がまた、あまりにも衝撃すぎて吐きそうだった。

「私の一番身近な人が、あなたと同じ異常者だったのよ。私は小さい頃から、24時間、母親に監視されていた。思いもかけないことで叱られるし、殴られるし、最悪。そしてあの人は決まって言うの。『お前の考えてることは全てわかってる』って。『心の中にもお前の逃げ場はない』って。私はどうやったらそんな化け物から自分を守れるか、ずっと考えてた」

 布団ババアは、自分の能力を隠したりしない。他人のコンプレックスや秘密を突いて恐れさせることを楽しんでいる。
 俺のバイト先の先輩もそうだった。ババアに何か言われたから様子が変になった。あれはきっと、先輩しか知らないはずの過去の傷をババアがえぐったに違いないんだ。
 確かにあのババアなら、自分んちの子どもだろうが、どこまでやるかわかったもんじゃない。

「完璧な人間になるしかなかったの。誰から見ても、心の中まで覗かれても完璧な人間に。あなたたちに弱みなんて絶対見せない。そのためなら私は何も欲しくない。嬉しくない。悲しくない。落ち込まない。あなたたちの勝手な期待も欲望も嫉妬も完璧に打ち返して完璧に生きて見せるわ。そして最後まで勝ち残って、藤沢綾音のまま死んでやる。誰があんな人の奴隷なんかになるもんですか」

 一瞬だけ、世界にノイズが走った。彼女の悲愴な決意と怒りが、一本のノイズになって走り抜ける。
 でも、それだけだ。彼女の完成された世界には傷一つ入らない。

「だから、私は完璧なの」

 彼女の微笑みは、相変わらず慈愛と美しさと可愛らしさに満ちている。
 圧倒的な強さと自信の上に、可憐に彼女は君臨している。

 パーフェクト・ワールド。

 壮絶な親子関係の中で、何年も重ねて作り上げた不可侵のメンタル強さ。藤沢綾音がいるだけで、ただの学校廊下が世界遺産並に神々しく輝く。それはもう、常人の域を超えた驚異の精神力で。
 ここまで壮絶な覚悟で、完璧に生きてきた人間に、俺なんかが勝てるわけない。
 例え勝ったとしても、彼女の背後には布団ババアがいる。この恐るべき親子に、俺みたいなポッと出の新人エロ能力者が太刀打ちできるわけない。
 敗北感と恐怖が俺の膝を震わせる。立ち上がれない。

「で、あなたは何? はるかとリナみたいに、私も簡単にモノにできると思ったの?」
「…お、俺は…いや…」
「いい気にならないで。その力があれば誰でも抱けるとでも思った? 誰でも自分の思いどおりになるって、本気でそう信じてた?」

 藤沢は、フンと鼻を鳴らして俺を見下す。

「最低だね、本当に。あなたなんかに興味もなかった女を操って、自分勝手な彼女ゴッコの相手させて楽しいの? それ、アニメやゲームで彼女作るのと、どこが違うの? まさかあなた、そんなので自分が神様にでもなったつもりだったの?」

 やめてくれ。もう言わないで。
 藤沢には何も反論できない。心を暴かれたのは俺の方だ。

「ただのキモオタ野郎が、犯罪者になっただけじゃない。あなたのやってることは犯罪よ。自分がモテないからって、女を卑怯な力でオモチャにしていいと思った? それで勝ったつもり? バカ? ヘンタイ? 気持ち悪すぎるよね?」

 言葉だけで俺をズタズタにしていく。
 これだけきつい言葉を使っても、彼女の美しさは何も変わらない。俺の醜さを、彼女は丁寧に跳ね返しているだけだから。
 悪いのは俺だ。俺が最低のクズ野郎だから。
 追い詰められていく。心がズタズタに引き裂かれていく。完璧な彼女の、完璧な罵りで。

「……死ねば?」

 俺は悲鳴を上げて、彼女の世界から逃げ出していた。

 ───現実の廊下に戻ってくる。

 目眩がして、膝をついた。
 藤沢も俺から離れ、怪訝そうに顔をしかめた。

「今、私の中に入った…? やっぱり、あなたもお母さんと同じなの? コンビニの店員って、あなたのこと?」

 怖くて藤沢の顔が見れない。
 俺は膝をついたまま、震える自分の体を抱えて、頷く。土下座しそうな勢いで、頷く。

「はるかとリナにも、何かしたのね?」

 しました。俺は彼女たちにひどいことをしました。
 現実の藤沢にも、俺は抵抗できずに正直に頷く。

「そう。やっぱり、そうなんだ」

 冷淡な声が、逆に怖かった。俺は縮こまって震えるばかり。
 でも周りの人目を気にしたのか、藤沢は語気を柔らかくして、俺に近づいてきた。

「…倉島君、大丈夫? 具合でも悪いの?」

 演技になんて見えない。いつもそうしているように、具合悪そうな同級生に声をかけているだけにしか見えない。周りにいる連中だってそうだろう。
 藤沢綾音は、そういう子なんだ。そういう風に出来ている。誰もがそういう子でいて欲しいと期待しているから。

「あなた、どこかおかしいのかな? うちのお母さん、その手のビョーキに詳しいから、教えておいてあげるね。あなたのしたこと全部」

 そして、俺の耳元には強烈な爆弾を落としていく。
 布団ババアに引きずり込まれたあの光景。ドロドロの悪臭と息苦しさ。
 ババアに勝てる気なんてしない。今度こそ俺はあの世界で殺されてしまう。

「ご愁傷さま、シデムシ君」

 最悪の慰めの言葉を残して、藤沢は去っていった。
 俺は廊下にしゃがみ込んだまま、周りの好奇とからかいの視線を集め、ガタガタと震えている。
 吐き気が込み上げる。対人恐怖症がまたぶり返してくる。
 怖い。怖いよ。俺を見ないで。

 耐えられなくなって、廊下にぶち撒けてしまった。
 その辺にいた同級生たちが、驚きの声と、爆笑と、冷たい視線を遠慮なくぶつけてきた。
 俺はそのまま動けない。ゲロ吐いて、ボロボロ泣いて、震えてた。

 消えてなくなりたいと、マジで思った。

< 続く >

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