形而上の散歩者Z 前編

前編

 俺、倉島修吾。
 コンビニのバイトでバナナクレープ並べてたら性欲がみなぎってきたので、今から渡辺にメールしてみる。

『今日バイト終わったら家に行っていい?』
『いいけど。私も昨日のこと話し合いたいと思ってた』
『それじゃ終わったらまたメールするね』
『話するだけだから。昨日みたいなことは絶対ないから変な期待しないでね』
『わかった。またあとでね』

 そしてバイトも終わって、渡辺の家。

「あ、やっ、やだっ。何してんの、だめだってだ、あん、だめぇっ」
 初めて見た私服の渡辺も可愛いかったけど、それを俺に脱がされていく渡辺はもっと可愛い。まるで妖精。マジで天使。
「やだ、話し合いだって、言ったのに……ちゅ、ダメぇ、んっ、キスも、んっ、ダメ、だってば、ん…もう…ちゅ……んんん……」
 渡辺はそう言うけど、昨日に比べたら全然部屋も片付いてるし、下着も昨日のよりちょっと良い物っぽいし、昨日まで童貞だった俺から言わせてもらっても、変な期待はお互いさまなんだぜ。
「ん、私っ、はぁ、後悔、してるの、ん、ちゅ、やめ……ん、あ、あん、だから、エッチは、あっ、だめだってば、ああっ」
 渡辺が何と言おうと俺は止める気はない。大丈夫。渡辺に俺を拒むことはできない。
 俺は首筋から鎖骨へとキスの位置をずらしていって、ブラを剥ぎ取り、乳房を持ち上げように握って先端を舌で転がした。
「ああっ! やあ、もうっ、だめ、だめぇ!」
 抵抗するのも忘れてあえぎ始める渡辺の反応を見る限り、この愛撫は正解らしい。昨日勉強したかいがあった。ネットのエロ小説はマジ参考になるからオススメだ。
 そしていよいよ最後の一枚。凝ったレースで装飾されたブルーの下着にはすでに濃い染みが拡がっていて、渡辺は俺に見られて恥ずかしそうに顔を隠す。
「脱がすよ」
 ゴムに指をかけて少し下げると、渡辺は遠慮がちに腰を浮かせた。そのままするりと足から抜いてしまうと、渡辺は観念したように、力の抜けたため息をついた。
「ふぁぁ……もうやだぁ……」
 その白いふとももを俺は遠慮なく両手で開いていった。俺の前で露わになっていく、渡辺の○○○○。ていうか、おまんこ。
 一番恥ずかしい部分を凝視され、渡辺は顔を覆ってイヤイヤする。でも俺は目を逸らせない。今までネットの画像や動画で吐きそうになるくらい見てきたはずなのに、それが本物の美少女のもとなると、やはり違う。なんていうか清楚な佇まいだ。和の心だ。それでいてエロい。色が薄くて、嗅いだことのない匂いがする。生々しい性の匂いが刺激的すぎる。
「やんっ!?」
 気がついたら俺はそれを舌ですくっていた。ビクビクっと、渡辺の腰が大きく跳ねた。
「やっ、何したの、ちょっと、だめ!」
 俺の舌がなぞるたびに、ぐんぐんと腰が跳ねる。悲鳴を上げて逃がれようとする渡辺を押さえつけて、俺は何度もそこを吸った。
「やあっ、やあっ、もう、やめてっ、ああんっ、倉島、あっ、んっ、そんなにされたら、怖いっ、怖いよぉ!」
 心の中に築いた“鉄の城”のせいでセックスの快感を受け付けない体質だった渡辺だが、俺に対してだけはガード無しで受け入れるようになっている。
 体が感じる刺激をダイレクトに受け入れ、しかも無意識のレベルで反響増幅されて脳に返ってくるんだから、今の彼女の快感は尋常なものじゃない。他の男のセックスじゃ無理だ。この俺に抱かれなきゃ味わえない天国だ。
「だめ、だめだめっ、変になる! ああっ、助けて、んっ、倉島! 倉島ぁ!」
 ガクガクと何度も腰を上下させて泣く渡辺を、俺は誇らしい気持ちで舐めまくってやった。学校でも上位を争う美少女が、俺の名前を叫びながらビクンビクンする姿を拝めるなんて、俺の前世はさぞかし名のある高僧だったに違いない。
「あっ! っっ! はぁッ…あッ!!」
 やがて渡辺は声すら出なくなるほど喉を引き攣らせた。彼女から湧き出る愛液は俺の顔をびしゃびしゃに濡らしてしまっていた。俺の髪の毛を思いっきり握りしめて、大きく反り返った体が、崩れ落ちるようにベッド代わりのソファに沈む。
 息を荒くしながら体を震わせる渡辺。
 感無量だ。俺の舌でイカせてやったわ、この美少女めを。

「はあ、はあぁぁ、はぁぁ…もう、恥ずかしいよぉ…死ぬ……」
 やがて息を吹き返した渡辺は、俺の視線から逃げるようにうつ伏せになり、クッションに真っ赤な顔を埋めた。
 何を恥ずかしがることがある。お前は立派だ。よくやった。
 白くて丸い尻が俺の唾液と自らの愛液でテラテラに濡れている。一刻も早くその中に俺を埋め込みたい衝動に駆られて、俺はもどかしい思いでベルトを外す。
「んん…やっぱ、するの……?」
 俺は無言でジーンズとトランクスを下げた。そして渡辺の目の前でバネのように飛び出る俺のロマンチック。
「怖いよ、倉島……」
 クッションをさらにきつく抱きしめて、俺のモノから目を逸らした渡辺の裸身を、俺は上から眺め下ろした。
 イッたばかりの白い肌はまだところどころが桃色に染まっている。俺とのエッチで蕩けるような絶頂を知った女が、もう抵抗する力もなく俺にトドメを刺されるのを待っているのかと思うと、オスとしての興奮が高まっていくのを感じる。
 汗と愛液に濡れた尻に、熱くなった俺の先端をこすりつけた。渡辺の柔肉が、ビクリと震えた。
「お尻上げて」
「…ん…」
 おずおずと浮く渡辺の尻。しかし、ほんの少し浮かせただけで力なく沈んでしまう。
「だめ…力、入んない……」
 弱々しく震える渡辺の腰の下に、俺はクッションを2、3個敷いてやった。
「うー……恥ずかしいよぉ」
 俺に差し出される丸い尻を柔らかく撫でてやると、渡辺の体から徐々に緊張が解けて、気持ちよさそうな吐息を漏らす。
「いくよ」
 こくりと頷いてクッションを握りしめる渡辺の尻に剛直を埋めていく。渡辺の中がギュッと強張るが、強引にねじ込んでいく。
「んっ! んんんっ……あぁッ!」
 入った。俺の2度目のセックス。イッた後の渡辺の中は、昨日よりもきつく俺を締めてくる。ぬくいし、気持ちいいし、やばい。
 俺は尻を突き抜けるようないきおいで性急に腰を動かした。
「いやっ、ううっ、はあっ、あっ、あっ、んんっ! ああっ!」
 俺が動く度に渡辺がクッションにくぐもった喘ぎ声を上げて、ソファの軋む音と渡辺の濡れた秘部の音がそれに伴奏する。
 なんて心地よいセックスの音。波打ってもだえる渡辺の背中。俺の陰茎を包み込む幸福な快感。
「ん、うっ、うっ、うっ、あっ、あっ、やっ、すごいっ、強いよ、すごすぎっ、ダメっ、あっ、ダメ!」
 本当だ。すげぇよな。すげえ気持ちいいよ、渡辺。俺、絶対やみつきなる。渡辺のこともっと味わい尽くしたい。死ぬまで渡辺とセックスしたい。むしろ今死にたい。
「ダメっ! ダメっ! あっ、待って! 怖い! やっ! ダメ!」
「ええ?」
 せっかく盛り上がってきてるのに、渡辺は必死に俺の動きを制する。
 俺に尻を預けたまま右手で俺の腕を掴んで、涙に濡れた目で懇願する。
「お願い、ごめん、んんっ、私、感じすぎちゃうの。倉島に、されちゃうと、ほんと、死んじゃうくらい気持ちいいの。良すぎて怖いの。ごめん。もう許して? お願い……」
 そんな、泣きながら許しを請われたら、俺だってちょっと引いちゃうけど、えー、やめちゃうの? ここで? マジで? 俺も泣くよ?
「あの、ごめん、もっとゆっくり……して。んと、これくらい……」
 そういって、遠慮がちに、ゆっくりと渡辺は尻を揺らし始めた。
「ふっ……ふっ……あ……あぁ……あ、んっ!……くぅ……」
 時々ピクっと痙攣しながらも、渡辺は自分のリズムを探して尻を揺らし続ける。じわじわと膣壁が俺のを締め付ける。
「う、ん……このくらい……このくらいがいいの……感じる……気持ちいい……んっ」
 じわじわと渡辺の尻に潜って、ゆっくりと吐き出されていく動きは、あまり強い快感じゃないけど、渡辺の吸い付くような膣の感触がはっきり感じられて悪くはない。
 しかし、このじっくりとした攻めが、今の俺のギンギンに昂ぶった興奮状態にブレーキかけてて、物足りない。
 そんな俺の不満を感じ取ったのか、渡辺が下から俺を見上げて言う。
「んっ、はぁっ…ごめんね、倉島、あん、ん、ん…あとで、ん、また、しゃぶってあげるから…ぁん…許して…ん、あっ……ふぁ」
 いや、そこまで言われたら俺だって男だ。どんなことでも我慢する。
 むしろ考え方を変えてみるんだ。
 これって、渡辺が俺のチンポでオナニーしてるようなもんじゃね? そう考えるとすごくね?
「あっ、んっ…ぁ、はぁ、はぁ、はぁ、倉島ぁ、私、ぁん、あ、あ、あ、あ、あっ」
 渡辺の締め付けてくる周期が短くなってきて、背中にじわっと汗が濡れてきた。クチュクチュという音が大きくなっていく。
「可愛いよ、渡辺」
 調子にのって俺は気取ったセリフを囁いてみる。
「んっ! やだ、そんなこと言って…ん…倉島ぁ…」
 渡辺は言葉だけで感じるみたいで、唇を噛んで見上げるその目は蕩けるように濡れている。俺ってなんてイケメンなんだ。

 ふと、あの『小さな渡辺』のことを思い出した。

 無垢で幼いあの子は、今も渡辺の深層意識の底で元気にしているのだろうか?
 さらさらの長い髪をして、背の低い渡辺は。
「あっ、んっ…倉島…はぁ…いいよぉ…」
 ちょっと彼女のことが気になった俺は、セックスに耽溺する渡辺を愛撫しつつ、渡辺の心の中にダイブした。

 ―――小さなはるかちゃんは、懸命に尻を振っているところだった。

「はぅあッ!?」
 余裕で構えていた陰茎にギュッという圧力がかかって、思わず射精しそうになる。
 鉄の城の中心にある女の子部屋。その可愛らしいベッドの上で、少女時代の姿をした渡辺がバックスタイルで俺を締め付けている。
「あん、ん、ん、お兄、ちゃっ、あ、あっ」
 黒髪がシーツの上で揺れている。頼りなく細い彼女の背中が、艶めかしい性の動きで波を打っている。俺の陰茎を飲み込み、前後する細い腰。白く小さな尻。そして桃色に滲んだ中心部にある薄茶色の窄まりまで丸見えだった。
 なんと儚く可憐なアナル。
 もしも俺が河童なら、随喜の涙を流しながら尻子玉を吸い出していたに違いない。
「あっ、ん、気持ち、いいっ、気持ちいい、よぉ、お兄ちゃん、あっ、あっ」
 ギュウギュウと絞り上げてくる強烈な快感。マジすごすぎるぞ。
 俺は押し寄せる快感に負けないよう、渡辺の尻に手を伸ばし、彼女の可愛い窄まりを指先でスッと撫でた。
「ひゃんっ!?」
 渡辺がビクビクっと体を震わせる。動きが小さくなったことで、ようやく俺は一息ついた。
「んも~、どこ触ってんの! お兄ちゃんのえっち!」
「ごめんね。はるかちゃんが可愛かったから、ついつい触っちゃった」
 ほっぺたを膨らませて振り返る渡辺の頭を撫でて、努めて優しい声で謝る俺。
「…えへへ」
 あっさりと機嫌を直した渡辺は、嬉しそうにニコニコする。
 いきなりアナルを撫でるような変態お兄ちゃんに、こんなにも無邪気に懐いてくれる渡辺が可愛い。この従順さがたまらん。
 せっかく来たんだし……何かやらせてみようかな?
「ね、はるかちゃん。もっといっぱいお尻振ってよ。俺のこと気持ち良くして?」
「うん、お兄ちゃんっ。あっ、ふっ、ふっ」
「もっと大きく速くだよ。できるかな?」
「え……う、うん。できるよ。こ、こうかな? ん……あっ!? あっ、んん、んっ、き、ついよ、お兄ちゃ、んっ、んっ、あふっ」
「頑張れ、はるかちゃん。俺は頑張りやさんのはるかちゃんが好きだよ」
「んっ、ホント? ホントに、好き? はるか、頑張る、ねっ。あっ、んっ、んっ、くぅんっ、んっ、んっ」
「まだまだ。イってもまだお尻振ってよ。動けなくなるまで頑張るんだ、はるかちゃん」
「はい、お兄ちゃん! ああっ! ああっ、ああっ!」
「もっとだよ、ホラ。お尻上げて。足も上げて。もっとズボズボってしてよ、はるかちゃん」
「んんっ、もっと、もっとですかっ? ああっ、んっ、あぁ! あッ! やっ、あっ、あぁーッ!」
「いいぞ。その調子だ、はるかちゃん。もっとだよ、もっと!」
 小さな渡辺が、全身を使って俺に尻を押しつけてくる。強烈な締め付けとピストンを味わいながら、俺はこっそりと彼女のアナルを指先でくすぐった。クリクリしたその感触を楽しみながら、もう片方の手では花の種のように小さな乳首を転がす。
 さっきは撫でただけであんなに怒ったクセに、今は俺のために尻を振るのに忙しくて、それどころじゃないらしい。
 まったく、素直で可愛い子だ。
「あぁッ! あぁーッ! あぁーッ、お兄ちゃーんっ!」
 容易く俺の言いなりになる無防備な渡辺の心。その健気で舌足らずな嬌声を楽しみながら、俺は現実世界へと帰ることにした。

 ―――現実の渡辺も大変なことになっていた。

「あぁ!? あぁッ! やあっ、何これッ!?」
 グイグイと渡辺の尻が俺の腰にぶつけられる。 
 先ほどまでの緩い動きじゃない。無意識の彼女とリンクした現実の渡辺も、全力で尻を振ってよがっている。
「やだぁ! やだぁ! 止まん、ないよぉ! あぁ! 倉島! ああぁ! やだ、止めて、助けて、倉島ァ! あぁ! あぁぁっ!」
 髪を振り乱して哀願するが、渡辺の尻は俺のを咥え込んで離さない。彼女の痙攣が俺の陰茎に伝わってくる。
「あぁッ! やぁ、もう! 止まんないの! イク、イクよ、イってるの、私! 助けて倉島! 止めてぇ!」
 渡辺の動きはますます速くなっていく。渡辺の中からは大量の愛液が吹き出し、俺たちの間でビシャビシャと飛沫を上げている。
 なにこの騒ぎ? 何祭り?
「あぁ! あぁ! ぃや! イク! もっとイッちゃう! イッちゃうの! 怖いよぉ、倉島! あぁん! 倉島ぁッ! お願い、早く止めて! あぁぁッ! んっ! 死んじゃう! あぁぁぁぁッ!」
 それでも腰は振り続けなければならないと、渡辺の内心は必死になっている。なるほど、快感で緩んでしまっている渡辺には、無意識から沸き上がる衝動を制御する力はないらしい。
 今の渡辺の体は俺の命令に支配されている。俺が渡辺をコントロールしている。
 嬉しくなって、たまらず自分でも腰を振った。
「渡辺! すげぇよ、渡辺!」
「ああッ、いやぁ! ダメぇ! 突いちゃダメぇ! あぁっ、やめ、やめてぇ!」
 女ってここまで乱れるんだ。すっげぇなぁ。すっげ気持ちいい。気持ちよすぎる。いつまでも渡辺の尻を犯していたい。
 でもこれ以上は俺が保たない。我慢の限界だ。
「あぁぁッ! あぁぁぁあぁぁッ!」
 俺は渡辺の尻から自分を引き抜いた。渡辺は全身を痙攣をさせてソファの上に崩れ落ちた。その火照った渡辺の尻に俺は大量の精液を吐き出した。我慢に我慢を重ねた上での大放出。気持ちよすぎて失神しそう。
 渡辺の尻から背中へと俺の精液が垂れていく。そのたまらなくいやらしい光景を見ながら、俺はカラカラになった喉を鳴らした。
 もう精液っていうか、髄液まで出しちゃったかもしんない。
 

「倉島って、すごいよね……」
 それからしばらくして渡辺も気を取り戻し、ベッド代わりのソファに腰かけて、俺たちはずっと寄り添っていた。かつてないほどの絶頂を味わった渡辺は、俺を熱い視線で見つめている。
 俺は「フッ」というニヒルな笑みを浮かべてその場を誤魔化した。タバコが吸えないのが残念だ。
「ねえ」
「ん」
「私……篤とは、別れないよ」
「…あぁ」
 俺は落ち着いた気持ちで渡辺の告白を受け止めていた。彼女が言いたいことはだいたい想像できる。
「倉島と篤を比べてるわけじゃないんだ。それは絶対ない。私はもう倉島のこと……。でも、こんな形で篤と別れるのってできない。ひどいこと言ってるって自分でも思うけど、できないの。ごめん」
 渡辺は自分でもどう説明していいかわからず混乱しているようだが、何度も彼女の心の中を覗いた俺にはわかる。
 ようするに、渡辺は自分の母親と同じことをしたくないんだ。
 母親を影を追うようにいろんな男に身を任せ、それでも自身の強いモラルがセックスの快楽を拒み、母親のようになりたくないと自分の中に複雑で強固な“鉄の城”を築いた渡辺。だがその反面、入り組んだ城の奥では小さなはるかちゃんが純真に俺を求めている。
 鉄の城と、その主とが戦った末に落ち着いたのが、自分を悪者にして俺との関係を続けたいという、都合の良い答えだ。
 でもそのあいまいな国境線に、彼女自身が納得できず、今も罪の意識に悩んでいる。不器用で生真面目な彼女らしい苦しみ。
 でも俺は、そんな渡辺に好感を抱いていた。そんな彼女が自分のモラルに背いてでも俺を求めてくれていることに、素直に感動してる。
 俺は渡辺の髪を優しく撫でてあげた。
「いいよ、気にしなくても。俺だって渡辺と寺田の関係壊す気ないし。でも時々でいいから、こうして渡辺と二人っきりになりたい。今はそれ以上望まないから」
「……倉島ぁ……」
 渡辺は感極まって涙を流し、俺にしがみついて何度もキスしてきた。
「ん、好きだよ、本当に好き…ん、ちゅ、ちゅく…ごめんね、倉島…ん、ちゅ、んく…はぁ、好きぃ……」
 唇から頬、耳、あご、のど、胸に舌を這わせ、体を下っていって、渡辺は俺の陰茎に何度もキスをする。ぞくぞくっと腰がしびれた。
「ん…あのね、倉島…これは、ん、その……フェラは、倉島にしかしないからね。ちゅ、篤には、ん、絶対してあげない。ん、ちゅ、倉島だけのものだよ……ちゅぷ、くちゅ、ん、約束するね?」
 上目遣いで俺を見て、根元からカリまで舌を震わせながら昇っていく。腰が浮くほど刺激に俺は思わず呻く。渡辺は俺のを飲み込んで舌を絡ませる。ねっとりと絡ませながら上下する。
 幸せな快感に包まれて、俺は渡辺の頬を優しく撫でた。渡辺は嬉しそうに目を細めて俺を見上げる。
 超可愛いよ渡辺。
 そんな萌える表情で俺のを咥えてくれるな。彼氏いるくせに、罪な女め。

 とか言って、じつは昼間、俺はすでに学校で寺田の心に潜入している。
 そんでそこにいるハナタレ小僧に「今後渡辺に対するボッキは禁止。もしも俺の言いつけを破ったら俺以外の男子全員がお前を犯す」と言っておいたんだ。
 これで寺田は、自分の彼女とエッチしようと考えるだけで言い知れぬ恐怖を覚えることになる。そして不感症の渡辺のほうから寺田を求めることもない。
 今後も彼らは表面上は仲の良いカップルを続けるのかもしれないが、実際にはもう終わってるんだ。
 何を知らない渡辺は、優しくて度量の広い俺のチンポに唾液を絡ませて美味しそうにすすってる。寺田に罪悪感を感じながらも、セックスの快感と幸福感を与えてくれる俺に喜んで奉仕してくれる。
 渡辺は本当にいい女だ。もう絶対に俺だけのモノに決定。
 ごめんな寺田。お前のこのエロ可愛い彼女は、これからは俺がたっぷり可愛がってやるからな。

「ん、ふぅん、んん、ちゅう、ん、ちゅ、ん…ねえ、気持ちいい?」
「あぁ、すごくいい。いいよマジで」
「ふふっ…ん、ちゅぱ…じゃあさ、いろいろしてみるから、どれが気持ちいいか教えて? 一番好きなの、教えてね」
 そういって、渡辺はさっきみたいに舌を根元から這わせたり、カリの周りを舌でなぞったり、尿道口をチロチロしたり、口に頬張って舌で転がしたり、頬に擦れるように上下したり、玉袋を舐めながら手でシゴいたり、そのまま肛門近くまで舐めたり、それはもういろいろしてくれた。
 すげえいい。天国にイっちゃいそうだ。マジで何度かお迎えの天使が見えた。
「……ね、どれがいい? 倉島が一番気に入ったのしてあげるから、リクエストして?」
 どれがいいって、そんなの選べるわけがない。地球と人類と子猫のどれが一番大事って聞くようなもんだ。
「ぜ、全部! 全部気持ちいい! 全部して!」
「アハハ、何それー? もー、せっかく倉島の好み覚えようと思ったのに、意味ないじゃん……もう、しょうがないなぁ…ちゅっ、んっ、ちゅぴ、ん、んく……」
 とか何とか言いつつ、渡辺は嬉しそうに、また全メニューしてくれた。俺は調子にのって2回も抜いてもらった。むしろ可愛がられたのは俺の方だった。
 いやぁ、もう……渡辺、エロい!

形而上の散歩者Z

~同級生をレイプしようと思ったら妹が大変なことになった件~

 そんな感じで、渡辺のマジパねぇフェラに大満足な俺、倉島修吾なわけですが、ちょっと冷静になって振り返ってみて、自分の不甲斐なさに愕然とした。
 確かにあの渡辺とイチャイチャHなんてすごいことだよ。
 なにしろ彼女は我がクラスの誇る美少女ビッグ3のうちの1人。そんな彼女に2回も口内射精してしまうなんて、俺は明日交通事故で死ぬのかもしれない。
 だけどこの選ばれしチカラがあれば、もっとすごいことできるんじゃないの?
 もっとこう、普通じゃできないような鬼畜行為に走ってみるべきなんじゃないだろうか?
 あぁ、そうとも。
 俺はもっとレイプとかSMとかハーレムとか、普通の男子じゃ体験できない危険なエロをやり尽くすべきだ。
 むしろ俺はそのために生まれてきた男と言っても過言じゃない。このチカラは「お前はエロ職人になれ」と神様が与えてくれたギフトだ。
 なのに、いくら相手が憧れの美少女とはいえ、ただのイチャイチャHで満足してるようでは、せっかくの能力がもったいない。
 俺ってヤツは、優しすぎるのが欠点だな。

 とか考えながらリビングに入ると、ソファの背もたれから、短いツインテールの後頭部が覗いていた。
 妹の美結(みゆ)が、テレビ見ながらチップス食ってるところだった。
「ただいまー」
「…………」
 なんだよ。無視かよ。
 兄ちゃんが退屈なバイトと濃厚なエッチに疲れて帰ってきたというのに、生意気な妹だ。
「美結、無視すんな」
「うっさいなぁ。はいはい、おかえり。これでいいんでしょ?」
 つまらなそうな返事と、パリンとチップスを砕く音がした。コイツはいつもこんな感じだ。
 思えば美結が進学するちょっと前くらいから、俺たち兄妹の会話はなくなってきていた。昔は俺によくなついていたけど、最近では用事があるときくらいしか話しかけてこないし、会話があってもこういう憎まれ口くらいだ。
 ここ数年の俺の対人恐怖症は確かにひどかったし、美結ですら遠ざけてたことは認めるけど、だからってこんなのは悲しい。
 家族の絆ってなんだよ。寂しすぎるじゃないか。しかもお前が美味そうに食ってるそのチップス、俺が買ってきたやつじゃないか。
 なんと荒々しい反抗期だ。あいにくこの不器用な兄は思春期の妹とどう接していいのかわからない。でもお前のことを良く知りたいから、思い切ってこちらから歩み寄るよ。
 俺は後ろからゆっくり近づいて、美結の頭に手をおいた。
 美結。
 お兄ちゃんが、お前を俺好みの素直で従順な妹に改造してあげるからね。

 ―――え、マリ○ギャラクシー?

 俺は今、美結の心の中にいる。
 そこは宇宙でした。
 小さな星がいくつも浮かんでます。
 とてもキレイです。
 おいおい…昔から単純なヤツだったが、いくらなんでも今ハマってるゲームまんまの脳内ってどうなんだよ。これが本当のゲーム脳ですねって、やかましいわ。
 まったく美結ときたら、いつまでも小学生気分か。がつんと説教してやらなきゃダメだな。
 俺はゲームと同じようにバネをきかせて宇宙へ飛んだ。星から星へと、ヒゲオヤジみたいに奇声を上げて飛んだ。
 やばいわ。これ楽しいわ。
 美結の中にはいろいろな星があった。どれもこれもキラキラして華やかな星で、そのひとつひとつにイメージがあった。
 テストで良い点を取りたい。水泳部のリレー代表になりたい。赤西のサインが欲しい。芸能人になりたい。漫画家になりたい。3年の志賀先輩の彼女になりたい。同じクラスのエリカみたいな美人になりたい。美術の橋本先生にエッチなことされたい。字がきれいになりたい。友だちだけで旅行に行きたい。
 これ、全部が美結の夢だ。大きい夢も小さい夢も星になって浮かんでる。夢いっぱいの宇宙がどこまでも広がっている。
 ここから女の子1人を見つけるのは大変だ。だが数々の星を飛び回り、探し回って、俺はようやく美結を見つけた。

 地味で小さく何にもない星で、美結はぽつんと座ってた。
 今よりもずっと幼いけど、妹だけあって懐かしい感じだ。美結は空から飛んできた俺を見て「…おにいちゃん?」と顔を上げたが、すぐにまた不機嫌そうに顔を伏せた。なんとなく美結をイジメて泣かせてしまった昔を思い出して、キュンとなる。
 彼女がここでヘコんでいる理由は、この宇宙に浮かぶたくさんの夢のせいだった。
 子供時代の無邪気な夢を引きずっていた彼女も、進学して少しの成長とたくさんの憧れを手に入れ、そして、その多くはただの夢で終わるのだという、がっかりくるような現実を知るようにもなった。
 数多くある彼女の夢の中には、本当はちょっとの努力で叶うこともあるのに、今の美結はそれすらわからない状態だ。やりたいことも欲しいものもいっぱいあるのに手が出せない。失敗したり、カッコ悪いことになったときが怖い。そういうのがかなり重要な年頃だったりもする。
 俺にも少しはそういう気持ちに覚えがある。だからちょっとは今の美結の気持ちもわかる。
 努力を始めるにも、あきらめるにも勇気いるよな。でも何にもできずにいたら自信もなくなるし、焦るし、イライラするよな。
 そのくせ、他人に頼るのはイヤってところも似てる。俺もずっと自分の対人恐怖症が怖かったけど、誰かに相談するよりは自分一人で抱えてるほうが楽だった。意固地になってることに気づかないでさ。
 ……なんだか、かわいそうになってしまった。
 いつもの生意気な態度が美結の不安の裏返しだったってこと、兄貴のくせに気づいてやれなかったなんて、不甲斐ないぜ。
「美結、行こうぜ」
 鼻をグシンと鳴らして、美結は顔を上げる。なんて情けない顔だ。あたりにはめちゃくちゃ陽気なゲーム音楽が流れてるっていうのに。
 もっと楽しめ。お前の世界は楽しいぞ?
「どこか飛んでみようぜ。簡単だ。俺が飛んできたの見たろ?」
 美結はこくりと頷いて立ち上がった。心の中の美結は素直だ。すぐに俺の言うとおりにする。
「えい!」
 でも何度かぴょんぴょんやっても、美結もすぐには飛び立てない。泣き顔になってしゃがみこんでしまう。
「ダメだよ…みゆ、できないよ。ムリだもん」
 しょうがねえなぁ、もう。
 わかったよ。美結がそこまで言うんだったら、そのM字の隙間から覗くぷっくりした割れ目に俺の活力を注入してやる。
 いや、もちろん冗談だ。そんなことやらないぞ、マジで。
「来いよ。兄ちゃんが手伝ってやる」
 俺の手にしがみついてくる美結を、そのまま抱っこしてやる。兄妹でお姫様だっことか恥ずかしいんだけど、美結はまんざらでもなさそうだ。
 このまま別の星に連れて行って、夢が叶うっていうことを美結に実感させてやりたい。そのためには現実でもすぐに実現できそうなことがいい。今の俺でも叶えてあげれそうなヤツがベストだ。
 宇宙を見渡したら、それがあった。
 ……美結、こんな夢もあったのか。いじらしいヤツ。俺、泣きそう。
「よし、掴まってろよ美結! 兄ちゃん、飛ぶからな!」
 美結は「ふひゃあ!?」とか変な悲鳴上げて俺にしがみつく。俺たちは一気に宇宙に飛び出した。
「すごーい!」
 広大な宇宙に星が瞬いている。美結が目をキラキラさせて空を見てる。キレイな光景だ。ヒゲオヤジみたいにくるくる回転してやったら美結が歓声を上げる。俺たちはしばらく一緒に宇宙遊泳を楽しんで、やがて小さな星に降り立った。
「やったー!」
 美結はクルクルと星を走り回って大はしゃぎだ。俺のことを超尊敬の眼差しで見てる。どうよ、俺? かっこいい兄貴じゃねえ?
「おにいちゃん、ありがとー!」
「簡単だよ、こんなの。美結だってもう1人で大丈夫だろ?」
「えー、ムリだよぉ。おにいちゃんが一緒ならヘーキだけど。えへへ」
 ニコニコしながら俺に抱きついてくる。素直に甘えてくる美結は可愛い。
 しかし甘えてばかりでもダメなんだ。
「大丈夫だって。本当に大変なときは助けてやるから、兄ちゃんがやったみたいにして、まずは1人で頑張ってみな?」
「……ん、がんばる」
 素直に美結は頷いた。すっかり機嫌の直った美結は、新しい星をわくわくしながら見渡している。
 こうしてみると、美結は兄のひいき目でも可愛い子だと思う。きっと将来は美人になるだろうし、志賀先輩とかいうバカだってたぶんゲットできるだろう。橋本先生とエッチは兄ちゃん絶対に許さないけど、美結はこれから少しずつ努力して、少しずつ夢を叶えてくれるに違いない。
 兄ちゃんが手伝ってあげるのはここまでだ。俺はいい気分のまま、はしゃぐ美結を置いて現実に戻ってきた。

 ―――いきなり頭を撫でられて、美結は目をくりくりさせていた。

「ただいま、美結」
 そのまま頭をぐしゃぐしゃにしてやった。美結は「わー!」とか「やめろー!」とか喚いてるけど、さっきまでのツンツンした感じじゃない。むしろ照れてるみたい。
「何すんのよー。お兄ちゃんのバカ」
「はいはい」
「…あのね」
「ん?」
「茶の間でゲームしてたらお母さんに怒られた。お兄ちゃんとこのテレビ使っていい?」
「いいよ」
 我が家ではリビングと俺の部屋にだけテレビがある。いつもはうちの鬼母に怒られても俺の部屋には来なかった美結なのに、今日は俺が了解すると嬉しそうにゲーム機を運びこんできた。
 俺の前でこんなにはしゃぐ美結、久しぶりに見たような気がする。
「あ~ん、コイツ強い! お兄ちゃん、アシストやって、アシスト!」
「はいはい」
 そうして俺たちは夜遅くまで2人で遊んだ。
 俺が美結を連れて行った場所。
 それは『昔みたいにお兄ちゃんと遊びたい星』という、小さく可愛い星だったんだ―――。

 そして一晩明けてちょっと冷静になった俺は、朝の教室で猛省していた。
 誰なんだ昨夜のキモ優しい兄貴は。なにが『お兄ちゃんと遊びたい星』だよ。マジうざい死ねよ俺。
 もっとケダモノになれよ、倉島修吾。エロ想像力を働かせろ。お前にはまだまだ未知の可能性が残されている。
 いい人になんかなるな!
 つまんない人生など捨てろ!
 男子なら鬼畜たれ!

 とりあえずターゲットを変えよう。
 そもそも妹相手にエロなんてあり得ないしな。
 あと渡辺も無理だ。彼女には童貞捧げちゃったし、俺も情が移ってるっていうか、もう大好きだし。彼女には鬼畜になれそうもない。
 しかし幸いにして、ここは女子レベル高めの我が校でもエリート揃いの桃源郷教室だ。獲物には困らない。余裕で全員食える。途中で病気もらわなければ。
 適当に出席順でやってくとかどうよ? 例えば女子1番の相澤から順番にヤッていって……最後は渡辺とトゥルーエンドか。それはちょっと感動的すぎるな。そいうイイ話はいらないんだって。
 それとも俺ランキングで可愛い順にやってく? あの21世紀のヒロインと謳われた伝説の美少女、藤沢綾音をやっちゃう……とか?
 俺は教室のドア近くで渡辺たちと談笑している藤沢をチラと見た。
 渡辺だってかなりの可愛さだけど、藤沢はやっぱり存在感からして違う。顔立ちも完璧に整ってるが、微笑みも優しげで美人特有の嫌味もない。すらりとしたスタイルもモデル並。クラスの中心グループに在籍しているだけあってセンスも良い感じだが、むしろ内から出てくるオーラと清潔感にカリスマ性を感じさせる。成績だってクラスで一番、部活ではラクロス部のエース。同じ人間とは思えないほど彼女は輝きまくってる。
 しかも前に耳にした噂が本当なら、彼女は今まで誰とも付き合ったことがないらしい。
 それがどういうことかわかるか?
 えぇ。処女です。処女で万能スペックのメインヒロインです。
 一昔前の少年マンガか家庭用コンシューマー機にしか存在しないはずのヒロインが、なぜか俺のクラスには実在するんです。
 その藤沢を俺が? 
 想像しただけでドキドキする。しかもそれ、このチカラを使えば簡単だから。今すぐにでも藤沢を抱けるから。
 俺は早くもボッキせんと股間に集まる血流に「早まるなマジで」ときつく叱責しながら、静かに席を立った。
 クラスの空気的存在である俺に注目するヤツなんていない。普通に通り抜けるフリをして藤沢のどこかに接触するだけでいい。彼女はこちらに背を向けている。大丈夫。気づかれない。 俺は慎重に、なにげない風を装って机の間を縫う。いける。落ち着け。絶対にいける……ッ!
 渡辺が、俺に気づいてこっそり手を振ってきた。
 俺はものすごい勢いでキョドりまくり、ロボットみたいな動きで彼女たちの前を通り抜けた。渡辺はそんな俺を見てクスクス笑ってるが、他の女子は明らかに不審者を見る目だった。
 他のヤツらがいる前じゃダメだ。放課後までチャンスを待ってみよう。

 そして放課後。ラクロス部の藤沢を俺は教室から見下ろしていた。
 もう教室には誰も残っていない。とりあえずここで部活が終わるまで待機して、下校するタイミングで彼女と接触して拉致っちゃおうという、猿でも思いつきそうな完璧な計画だった。
 藤沢はハーパン姿で他のメンバーと遊んでる。可愛いヤツは何を着ても可愛い。太陽の下で戯れる彼女は輝いて見えた。
 まったく、今にその純情そうな尻を俺に貫かれるとは思いもせずに、無邪気なものだ。早くその美しい顔が女の悦楽に悶え狂うところを俺に見せてくれ。
 一緒になってハシャいでるお前らもだ。大人の階段昇る君たちはまだシンデレラだからってキャッキャキャッキャしやがってバカめが。いつまでも笑顔のままで人生送れると思うなよ。
 貴様らはすでに俺の掌の上なのだ。いずれ全員俺の前で四つんばいにして犯しまくってやる。メス犬どもめ、覚悟しとけよ。ククク。
「おう、倉島いたのか」
 そのとき教室のドアが突如開かれ、担任の汚い顔がヌッと現われた。
 いたのか、じゃねえよ。危うく俺はこの窓を突き破ってしまうところだったんだぜ。
「ちょうどいいな。男子図書委員の土橋が勝手に帰っちまったから、三森が1人で図書整理に困ってるんだ。お前、ヒマなら手伝ってやれよ」
 担任の後ろにはショートカットでメガネの女子図書委員、三森が俺を怪訝な目で見ていた。
「いいよな倉島? よし、三森もよかったな」
 三森リナ。確か半分ロシア人。
 メガネっ娘の図書委員という設定はよくあるが、そこに白人系ハーフという併せ技を持っていることが高く評価される、我がクラスのナンバー3。
 そんな彼女が、俺を相方に指名され、ものすごく迷惑そうに「……はい」と頷いた。

 最悪だ。なんで俺がこんなことしてるんだよ。
 図書室で俺と三森が2人っきり。山積みとなった本の入れ替え作業をしているところだ。なんでも古くなった書棚を交換するとのこと。だがそんなことはどうでもいい。
 なんで俺が? しかも2人だけってどういうこと? 他の委員は?
「委員会っていつもは木曜日だから明日なんだけど、業者さん、明日の朝に書棚を引き取りに来るから今週は水曜日に集まろうって、私がみんなに連絡するの忘れてて……」
 お前のせいかよ。ああ、そうかよ。
 どう見ても簡単には終わらないだろ。こんなことしてる間に藤沢が帰っちゃうだろ。
 腹立つぜ。なんてボケボケした女だ。せっかくの計画がだいなしじゃないか。くそっ。
 俺は重そうに本を抱える三森の後ろ姿を、恨みを込めて睨んでやった。
 そして、ドキッ。
 なんてセクシーなお尻。ときめいちゃう。
 彼女の肌の白さや柔らかそうな髪とか瞳の色はいかにもハーフって感じだが、そのキレイな見た目のわりに気取ったところがなく、むしろ低めな身長や愛嬌のある表情とか、少しドジっ子なところもあって、男女問わずに可愛がられるタイプだった。渡辺グループの一員で、そこのマスコット的存在でもある。
 そしてなにより、その胸の発達具合は賞賛に値する。なんでもGとかHだとか、とにかく学生らしくないけしからんサイズだと職員会議で議題になったこともあるとかないとかいう話だ。
 容姿的にはクラスでも渡辺に次ぐナンバー3であると俺は思っている。だが、その多大なるおっぱいの功績を讃えて彼女こそがナンバー2だと評価する者も多く、審判団も公式的な見解を発表するには至っていない。我がクラスは2位争いが熱いのだ。
 ていうか三森を睨んでいたはずの俺の視線は、いつのまにこんなエロ方向にシフトチェンジを? いつから? 最初から?
「んしょ……っと」
 俺に対し右15度に尻を向けて前屈という、殺人的なアングルで眺める三森のおっぱいは、確かに『2つの最終兵器』の通り名に相応しい。1個でも炸裂したらこの地球はお終いだろう。
 そして本を運んでいくヨタヨタした足取りに揺れる、大きく張りのあるあの尻もどうだ。できることなら俺を産んで欲しいくらいだ。
 ハーフならではの妖精っぽい童顔と、アンバランスにダイナマイトなスタイル。保護欲と嗜虐心を同時に煽るふわふわしたキャラクター。
 ランキング3位の女、三森リナか……。
 なるほど、ひょっとしたらこの状況は逆に俺にとって喜ばしいことなのかもしれない。
 神様はどうしてこんなにも俺を愛してやまないんだ。

「三森」
「え、はい!?」
 警戒心バリバリで三森は顔を上げる。
「明日来る業者って、こっちの古い棚を持ってくだけだよな?」
「う、うん……そうだと思う」
 ということは、処分する棚だけ空けておけば、図書の移動は明日が委員会だと思って放課後集まる連中がやればいい。どうせこんな辺鄙な場所にある図書室を利用するやつなんていないんだし、バカ正直に俺たち2人で終わらせる必要はないんだ。
 しかし、バカ正直な三森がちゃんと整頓しないと帰れないと思いこんでいるこの状況は使える。
 放課後の図書室で2人っきり。いつもクラスで目立たず何を考えているのか分からない俺を恐れてるのか、三森は微妙にビクビクしてる。
 もしも今ここで俺が襲いかかってきたら……とか、想像して怯えてるのかな?
 レイプですか。なるほどなるほど。鬼畜ですなぁ。
 その想像は俺を興奮させた。どことなく男の嗜虐心を煽る三森を犯すとならば、やはり嫌がる彼女を動けないようにしてレイプするっていうシチュエーションが萌える。
 昨日の渡辺とのエッチで、単純な肉体操作なら俺のチカラでも可能だということはわかった。
 三森を抵抗できないようにして犯し、その後は忘れさせるなり恐怖を植え込むなり、適当に言い含めればなんとかなるだろう。
 しかもここの図書室は一般教室や部室棟からも離れてるせいで、貸し出し時間も過ぎた今は、よほどの用事もない限り誰もこない。完璧だ。
 これは場所が場所だけに、一句詠むしかないな。
『熟れきった 時代とお前を 俺レイプ』
 男子なら鬼畜たれ!
「んと……Eの67だから、このへんかな……」
 三森は背伸びしながら本を並べている。俺は後ろからそっと彼女の背後に歩み寄る。
 いい匂いだ。彼女はすぐ後ろにいる俺に気づいていない。つーか、さっきまであれほど俺のこと警戒してたのに、もう忘れたのか。やっぱりボケてるぜこの女。
 俺はそうっと両手を伸ばして、いきなり三森の胸を鷲掴みにした。
「……え?」
 一瞬、何が起こったから分からない風に後ろを振り返った三森が目を見開く。その瞬間を狙って、俺は三森の精神世界に飛び込んだ。

 ―――小高い丘の上に、真っ赤な館が建っている。

 真っ赤な壁に真っ赤な屋根。西洋風の凝った造りなのに、なぜか毒々しいまでに鮮やかな赤。周りに広がる大きくて手入れの行き届いた緑の多い庭が裕福な暮らしぶりを思わせるが、その景観も全てこの館の色が台無しにしている。よほどの酔狂者でもない限りこんなセンスありえない。俺は結構好きだけど。
 今立っている場所の後ろを振り返ると、これもまた西欧風の町並みが広がっていた。ただしその町並みも全て赤。ここの館と同じで全て真っ赤っか。このどぎつい色さえなければ素敵な町並みだったろうに。
 この光景は何かを暗示しているんだろうか? これが三森の心の中っていうのが不思議。もっとこう、メルヘンメルヘ~ンな感じだと思ってたけど。
 さて、肝心の三森はどこだろ? 街の中を探し回るのは面倒だな。それともこの館の奥にいるんだろうか?

 人は誰しも、心が描いた光景の底に、本当の自分を隠している。

 見た目はだいたい本人の幼い頃の姿だ。しかしそれは心の核となる最も大切なモノ。自己の根源。無意識の意思。
 俺にも詳しい正体はわからないが、普通の人間ならそれは心の一番深いところに存在する。あるいは人の心とは、その脆弱で無防備な自分を守るために築かれた砦なのかもしれない。
 そんな世界に進入し、心を読んで様々な障害を排除し、相手の正体を見つけ出して自分好みに調教するのが俺の仕事なのだが―――。

「あはははっ」
 三森の場合、その一番大事な何かは、庭先のブランコで無邪気に遊んでいた。
 無防備すぎて、俺のあごが軽く外れてしまった。
「え、あ、きゃん!?」
 そして俺を見てビックリして尻もちをつく。なんだこの絵に描いたようなドジっ子は。
「うー……あ、あのー、どなたですか……?」
 しかし心の中の三森も渡辺や美結と同じように、やはり今よりも禁断的なレベルで幼く、そして目にも眩しい全裸だった。
 白い肌は今よりもきめ細かく頬を輝かせている。手足は細く華奢な腰。頼りなげな内股と、その付け根にあるつるつるの割れ目のなんと柔らかそうなこと。
 俺は楽勝でボッキした。
 あ、いや、ちょっと待て。
 なんだその胸は。君のそのお年頃でぷっくりと膨らんだマシュマロ感もたわわなそれは、俺の性欲だけでは飽きたらず、食欲すらもそそらせるつもりなのか。
 しかもなんなんだ、そのきれいな乳首の色は。お前、桜よりも桜色じゃないか。
 俺は全身全霊でボッキした。
「あの…?」
「俺は倉島修吾。よろしく」
「あ、わたしリナです。はじめまして」
 ペコンと三森が頭を下げる。メガネはかけてないけど、子どもっぽいその笑顔は外の三森と同じく、めちゃくちゃ可愛い。鼻血でそう。
 俺は逸る気持ちを深呼吸で落ち着けて、紳士的に三森に申し出た。
「おっぱい触らせてください!」
「え、あ…はい」
 俺は三森の承諾の上でおっぱいを揉み揉みした。ふわふわしてるけど、肌にはきめの細かい張りがある。なんて心地よい手触りだ。
「こうしてると、君はどんどん気持ちよくなっていくよ」
「ん……? あ、あん」
「どう? 気持ちいいでしょ?」
「はい。あっ、ん、いいです」
「君は俺に触られると気持ちいい。それ基本だから忘れないで」
 俺は真剣な顔で乳首をコリコリしながら三森に命じた。
「あ、はい。んっ、んっ、んっ」
「俺に触れられると、君は気持ちよくて体から力が抜ける。何をされても気持ちいい。だから俺から逃げちゃダメだよ。大声も絶対出しちゃダメ。ちょっと怖くても我慢すること」
「ん、はい、わかり、あっ、ましたぁ」
「いい子だね。怖いのは最初だけだから大丈夫。でも逃げたらもっと怖いことになっちゃうから、絶対に気をつけてね。我慢すればもっと気持ちよくなるから。わかる?」
「はい、あっ、はっ、あぁんっ」
「あ、でもイヤならちょっとくらいなら抵抗していいよ。ちょっとだけね。俺の邪魔しない程度に。わかった?」
「ん、くふ、はい、ん、がんばります、あっ」
「俺の言ったことを守ってれば大丈夫。一緒に頑張ろうね」
「はい、んっ、んんっ」
 俺は素直に頷く三森のおっぱいをしばらく揉み倒して、現実世界へと戻った。
 楽勝だ。
 てか簡単すぎでしょ、コイツ。

 ―――びっくりしたまま、三森は固まっていた。

「え、あ、はえ? あの、なに、ちょっと、や……んっ? んーっ!?」
 俺は三森のぽってりした唇を奪うと、そのまま彼女を床に押し倒す。
「んー!? ん! んーっ!」
 暴れる三森を両手を掴んで制し、舌をねじ込んで口中を掻き回す。そしてシャツのボタンを外していく。
「やっ……! いやっ、やだ……誰か……!」
 近くで見る三森の肌は驚くほど白い。たまらなくなって首筋に吸いついた。三森は喉を反らせて、ぞわぞわっと鳥肌を立たせた。
「いやぁ…いやあっ…!」
 シャツのボタンを最後まで乱暴に外して広げる。三森の肌はどこまでも白い。その肌が窮屈そうにブラを押し上げている。同い年とは思えないほど、セクシーな体をしていた。
「うわっ、すげえ」
「やっ……見ちゃいやっ」
 三森が身をよじって俺の視線を避けようとする。その拍子にブチっという音がして、あっけなくフロントホックが弾けて開いた。
「いやぁっ」
 なんと……これは……なんということ……。
 俺の眼下には、この学園の男なら例え校務員のおっさんだろうが誰もが一度は夢想したはずの、あの三森リナの、あのおっぱいが広がっていた。
 その奇跡の光景の目撃した俺には、政府に進言する義務がある。
 今すぐこれを世界遺産に申請し、国の予算で保護すべきだと。
 弱々しく震える彼女の上で燦然と輝く球体。その白磁のような肌の上で、遠慮がちに揺れる桜色のつぼみ。それは俺を夢幻の旅路へ誘うようだった。男の目を惹き付けてやまない、謎の袋だった。
「やっ、なに? 何してるのぉ……?」
 気がつくと俺は三森のおっぱいに顔を埋めていた。なんていう弾力。渡辺の胸も大きい方だと思うが、三森のこれは完全に別モノだ。別世界。新世紀だ。
 俺は夢中になって舐め回していた。両手であまる肌を潰すようにこね、吸い、噛んで舐め尽くしていた。
「すげぇ。すげぇな三森のおっぱい、最高だぜ」
「いやぁ…ひっく…やめてぇ倉島君……」
 無意識下に俺が命じたせいで、三森は掠れたような声しか出せない。俺を押しのけようともがくが、力が出せないのか簡単にねじ伏せられる。
 三森は今、どうして自分の体と声が思うようにならないのか、不思議に思ってるに違いない。しかし、俺から逃げるともっとツライ目に遭うという漠然とした不安も心を支配している。そして体は快感に反応し始めている。混乱はやがて快感に流されていくはず。
 大成功だ。
 弱々しい抵抗を続ける三森をものともせず、俺は飽くことなく三森の肌を堪能した。柔らかくて俺の手に吸い付くようだ。渡辺以外の女は初めて抱くけど、抱き心地も女によって結構違うもんなんだな。三森の体はどこまで柔らかくて、俺を包み込むようだった。
「やめてお願い……もう許して……んむっ、んんん……」
 いつまでも泣いてる三森の手を払いのけて、無理やりキスしながらスカートの中に手を入れた。下着に触れると熱いものを感じる。湿っぽい。
 三森のヤツ、レイプされて感じてるんだ。
 すごい。これはやばい。かつて味わったことのない興奮。
「じっとしてろよ、三森。終わったら帰してやるから」
 三森が体を震わせる。驚いたように目を見開く。その怯えの表情がたまらない。
 放課後の図書室で同級生をレイプとか、俺の青春時代もいよいよ佳境に入ったな。
 俺はじれったい思いで下着の中に手をねじ込み―――

「いや!? やだ! やだあ!」

 とたんに三森が暴れ出した。さっきまでとうって変わった本気の抵抗と叫び声。俺は思わずたじろいでしまった。その隙に、三森がするりと俺の下から逃げ出した。
 やばい。俺は慌てて彼女のシャツの裾を掴まえたが、すごい勢いで三森は暴れる。
「やめてえ! 誰か! 誰か助けて!」
「あれ? え、ちょっと、待って!」
 口を押さえようとする俺と、必死で抵抗する三森。腕を振り解かれないようにするだけで精一杯だった。
「んー! やめて! やめてよ! 離してェ!」
「ちょ、待ってって! なんで、おまえ……ッ!」
 なんでだ? おかしいぞ?
 俺は確かに三森に「逃げるな」って命令したはずだ。
 まだ俺の説得が浅かったか? そんなことないと思うけど……。
「イテッ!?」
 三森の腕が俺の鼻を殴った。その隙に逃げようとする三森を俺は力ずくで押さえ込む。
「やだぁ! やめて! 誰か助けてぇ!」
 やばいぞこれは。
 今は考えてるヒマはない。もう一度コイツをおとなしくさせなきゃ、騒ぎになっちまう。
 俺は暴れる三森の腕を捕え、再び彼女の心の中に入っていった。

 ―――赤い洋館の庭で、俺はひとりぼっちだった。

 あれ? 
 三森は? 三森はどこ行った?
 あ、いた。今、館の中に逃げ込む三森の尻が見えた。
 どういうことなんだ? 俺は確かに心の中の三森に「逃げるな」と指示した。俺の命令は彼女を無意識下で支配するはず。
 いや……違う。それどころじゃないぞ。
 空気が違う。
 一度は俺の支配下に置いた三森の心を、今は完全にロストしたって感覚がある。この光景までもが、初めて見る場所みたいによそよそしく感じる。
 まるで見た目だけ同じの、違う舞台に入れ替わったみたいだ。
 奇妙すぎる。なんだこの感じ? 心をリセットされたとしか思えない。
 いや、そんなのありえない。今まで心の中に進入したのは3人しかいないけど、3人とも間違いなく俺の命令下で行動していた。
 渡辺の時はどうだった? 彼女もエッチの快感が強すぎて避難行動に出たけど、俺から完全に逃げることはなかった。それに命令を拒絶することもなかった。
 寺田も美結も、みんなそうだ。俺に一度捕まった無防備な心は、逃げるどころか抵抗すら考えられないはず。
 とりあえず俺は彼女を捕まえて、どうやって俺の命令をリセットできたのか調べる必要もある。そしてもう一度説得だ。このままじゃ本当に事件になる。

 だけど、俺はそびえ立つ館の玄関前で躊躇した。
 三森の行動も心理も過去も、ここでは読み切れない。さっきは必要ないと思ってたが、この庭先には三森の情報はほとんどない。これ以上のことを知るには館の中に入らなければ無理だ。
 それなのに、今、俺はこの館に不気味なものを感じている。他人の精神世界じゃ無敵のはずの俺が、この館に恐怖を感じている。
 でも、俺だって男の子だ。
 正義も勇気も無いけれど、エッチのためなら多少の危険にだって踏み込むぜ。
 俺は重い扉を両手で押し開けた。
 邸内も真っ赤な装飾だ。玄関ホールもふかふかのカーペットも階段も彫刻も真っ赤。目が痛いくらいだった。
『オカエリナサイマセ、ゴシュジンサマ』
「ひいっ!?」
 いきなり声をかけられて焦った。
 真っ赤なメイド服を着た金髪の女だった。
 いや、人間じゃない。マネキンだった。メイドの格好したマネキンが、カタカタと体を揺らしてこっちに近づいてくる。
 気持ちわるっ!
「や、やめろ! こっちくるな!」
『カシコマリマシタ、ゴシュジンサマ』
 俺が命令するとピタリとマネキンの動きが止まる。
 なんだよ。ただの気持ち悪いマネキンだと思ったけど、意外と素直なヤツじゃないか。
 気持ち悪いな。
「そんなことより、三森はどこ行ったんだろ?」
『オジョウサマナラ、2カイニイラッシャイマス』
「あ、どうも」
 俺は気持ち悪いマネキンに感謝しながら慎重に2階へと上がる。部屋の数が多い。そして真っ赤。どこまでも真っ赤な大豪邸だ。

 あぁ、わかった。
 ここは三森が幼少時代に住んでいた、ロシアの家だ。
 三森の祖父は事業家だ。しかも当時の政府とも繋がりのある大物だった。その息子が現地の女性と結婚して三森リナが生まれる。彼女はここでしばらく暮らしていた。さっきのマネキンみたいにメイドさんもいるすごい家だ。
 だが、やがて両親は彼女を置いて家を出て行く。どうしてかは幼かった彼女の記憶にないので不明。その後、祖父と一緒に日本に引き揚げ、三森は祖父の手で育てられたらしい。
 その幼少時の記憶が、この館のベースになっている。こんなに赤くはなかったが、鮮明すぎるほど当時住んでた家と同じ構造だ。
 だから俺には、三森の部屋がどこかもわかる。

「みーつけた」
 真っ赤なベッドの上で、真っ赤なぬいぐるみを抱く三森がそこにいた。
 豪奢な造りだけど、可愛らしいインテリアが女の子の部屋であることを伺わせる。
「あ、くらしまさんだぁ」
 三森も部屋に入ってきた俺を見てニッコリと微笑んだ。
 なにこの無邪気な癒し系の笑顔? 可愛くない?
 でも、油断するな。俺は逃げられないよう、慎重に彼女に近づく。
「リナちゃん、さっきはどうして逃げたの?」
「ん?」
 三森はベッドの上で首をかしげる。
「俺の言うことに逆らうの?」
「んーん」
 首をフルフルと横に振る。
 自分でも何をしたかわかってないのか?
 天然すぎて命令忘れたとか?
 いや、それはないな。
 彼女は俺と会ったことを覚えている。
 なのに、この子は俺の命令をリセットした。
「ベッドに上がってもいい?」
「うん。どーぞ」
 ベッドの上で三森と向かいあう。今のところ三森に怪しい感じはしない。
 しかし何かあるはずだ。どこかにスイッチが隠れているはず。
「リナちゃん」
「なぁに?」
「……君、セックスって知ってる?」
 三森は見る間に赤くなって、手にしたぬいぐるみに顔を埋めた。

 その瞬間、三森の記憶が俺の頭に流れ込んでくる。
 彼女が初めて男を知ったのは中2の時だ。体育教師にレイプされたのが初体験だった。しかもそれから1年ぐらい、ずっとその教師に肉体関係を強要されてきた。学校でも校外でも構わず呼び出されては犯されていた。
 やがて調子に乗りすぎた教師との関係は、他の生徒たちにも怪しまれるようになる。そのことにビビった教師は、三森に関係をやめることと、決して口外しないことを約束させて金を渡した。
 しかし彼女は、今までのことを祖父に告白した。三森の祖父の力は絶大だった。相手の教師はクビになり校長も退職し、今はどこに行ったのかもわからない。事件は表沙汰にならないまま、関係者ごとウヤムヤにされた。
 その後、生徒の間で噂になりつつあった三森の立場をかばってくれた担任教師と、彼女はまたも肉体関係になる。ただ、そいつは前の教師と違い、彼女を大切にする優しい男のようだ。今も2人は続いているらしい。
 それは三森と仲の良い渡辺や藤沢しか知らない、秘密の恋愛だ。

「……なるほど」
 なかなかにハードな過去だ。俺の呪縛から逃れたのも、そのときのトラウマが強烈に残っているせいなんだろうか?
 だとしたら話は簡単だ。
「リナちゃん、君は昔、学校の先生に乱暴されたことがあるね?」
「え、うん」
「つらかったと思うけど、それはもう終わったことだから忘れなきゃ」
「うん……」
 三森は悲しそうに顔を伏せる。
「ちなみに乱暴されたことを忘れるためには、違う人に乱暴してもらって気持ちよくなるのが一番だ」
「えー、そうなんですか?」
 ヘンテコな理屈に首をかしげる三森に、俺は「そうだよ」と力強く頷いた。
「だから俺がリナちゃんに乱暴してあげるよ。俺にエッチなことされたら、すごく気持ちいいよ。今まで感じたことないくらい気持ちいい。彼氏よりもずっといいから」
「……んっ」
 俺は三森の足の隙間に手を入れて、つるつるした股間をゆっくり撫でてやった。
「くぅっ、あん、あ……くらしま、さぁん……」
「ね? 気持ちいいでしょ? だから俺が思いっきりレイプしてあげるからね」
「あ、はい、んん、あっ、ありがとう、ございます…んん」
 どんだけめちゃくちゃな理屈だろうが、ここでは普通にまかり通る。三森も俺の言葉を当たり前と思って聞いているはずだ。
 俺が愛撫する手を止めると、物足りなそうに三森は俺を見上げる。
 それでいい。もっと俺を欲しがれ。俺は彼女に優しく微笑みかける。
「リナちゃん、君をレイプするよ」
「はい、くらしまさん……リナをレイプしてください」
「リナちゃんは俺にレイプしてもらうんだから、逃げちゃダメだよ。助けを呼んじゃダメ。あ、でもちょっとは抵抗して。それがレイプの醍醐味だから。わかった?」
 三森はうっとりとした目で「わかりました」に頷いた。
 ニコニコと屈託のないこの笑顔に裏があるように思えない。でも本当にわかってるんだろうか、この子?
 まだ何かが引っかかる。ただの違和感としか言えないが、この世界にはまだ秘密があるような気がする。
 でもまあ、いいや。
 俺は別に三森の全てを知りたいわけじゃない。面倒になりそうなことには首を突っ込みたくはないんだ。そのおっぱいを犯したいだけですから。
「それじゃ、約束だぞ」
「はい。約束です」
 何度も念を押しながら、俺は現実世界へと戻っていった。

 ―――三森の体から力が抜ける。

「あ……あれ?」
 クタっと三森の腰が落ちる。
 やれやれ。手こずらせやがって。
 連続して能力を使ったせいで疲労感が俺を襲った。
 しかし、目の前には元気を奮い立たせるに十分すぎる美味しそうな体がある。
 俺は三森をもう一度床に押し倒し、そのでかい胸を揉みしだいた。
「やっ、ダメ、倉島くん……やだぁ……ぁ……」
 無意識三森に語りかけた暗示が効いているのか、三森の反応がさっきよりエロい。感じ始めているらしい。
「なんだよ。感じてるのか、三森?」
「いやぁ……違う、違うもん…でも、どうして…あん、倉島くん、やめてぇ」
「やめていいのか? お前、こんなに感じてるのに? エロい女だな」
「え、違う、私……あん……お願い、やめて……」
 まったくなんという揉み心地だ。疲れを癒すのに、これ以上のおっぱいテラピーはない。
「ダメ、いや、あっ」
 弱々しい抵抗の三森のパンツを剥ぎ取る。そして……出たぜ、ヌレヌレのが。
 陰毛の色も量も薄いせいで、肌の白さと鮮やかなピンク色が際だつ。そして柔らかそうに濡れたソコからは甘酸っぱい女の匂いする。
「ヌレヌレじゃーん」
「いやっ、だめっ……見ちゃ、ダメぇ」
 弱々しく三森は顔を隠す。俺の前で裸になった二人目の女。その美味そうな肢体に俺は喉を鳴らした。
「ね、やめてっ、お願い、やめて倉島くんっ。ねっ……私の彼氏、学校の先生なんだよ」
「だから?」
「んっ、だから、今なら、黙っててあげるから……もう、やめて。ね?」
 クククッ、それで俺を脅してるつもりか。
 そんなの関係ないな。犯したあとで、さらにお前の中の三森に適当なこと吹き込んでおけばいい。今日のことは誰にも言えないようにするだけだ。心配は無用だぜ。
「私、彼氏いるの……」
「そんなの関係ないって。黙ってろよ」
 怯えた目で俺を見上げる三森の前で、俺はベルトを外してパンツごとずり下げた。
 そして飛び出す俺のロマンチック。
「いやッ!」
 そして容赦なくキックされる俺のロマンチック。
「あーッ!?」
「いやっ、どいて! 誰か助けて! 助けてぇ!」
「ちょ、痛ぇよ!」
 三森は途端に激しい抵抗を始め、図書室の中を逃げ回る。さすがに半裸で廊下に出る勇気はないようだが、ちょこまかと意外な素早さで俺を翻弄する。ていうか、運動系はまるでダメだから俺。
「待てよ、三森! 何で逃げんだよ!」
「逃げるに決まってるでしょー!」
 本気で抵抗して、本気で拒絶している。さっきまでの三森とはまるで別人だ。
 俺が無意識の三森に命じたことは、もうコイツの中で完全にリセットされている。
 おかしい。絶対おかしい。何者だコイツ?

 美少女ランキング第3位の女、三森リナ。
 強烈なおっぱいを持つふわふわ系のドジっ娘ハーフ。
 中学時代に、その性格をつけ込まれて教師に弄ばれた悲しい過去がある。
 でも、それだけじゃ足りないのか?
 まだ秘密があるのか?
 コイツには……俺のチカラが、効かないのか?

「えい!」
「いっ!?」
 三森が手当たり次第に投げる本が俺の額を直撃した。
 こんな女にエロ職人たる俺が負けるなんて信じられない。ムカつく。
「もうやめて! 私に近寄らないで、変態!」 
 ……わかったよ。
 それじゃあこの変態がトコトンお前の心に近づいてやる。
 俺の能力でお前の世界を全て暴く。二度と俺に逆らえなくなるくらい丸裸にしてやる!
 そしてその生意気なおっぱいと尻に、俺の生き様を刻みつけてやるぜ!

「おや、あんなところでアデリーペンギンの親子が散歩しているよ?」
「え、どこどこ?」
「うりゃあ!」
「きゃあ!?」
 こんな子供だましのウソに簡単に引っかかる三森。その隙に俺は素早いタックルで彼女の胸に顔を埋めた。
 立て続けに能力を酷使しすぎてクラクラする。
 でも、かまうものか。決死のダイブ、開始。
 俺は限界を超える覚悟で彼女の心の中に突っ込んだ。そしてそんな俺自身にもツッコんだ。

 これ普通にレイプしたほうが早いんじゃねーの?

< 続く >

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