魔王と聖女と三王女 第六話

第六話

 三王女が我の手中に堕ちてから、我は入れ替わりで三人を犯した。フィオはすぐに、その胎に魔物の仔を宿し、エレノアとリーゼも負けじと身重の体を押して、我の精を求めた。フィオの腹は日に日に膨れ、数日でエレノアとリーゼに追いつき、三王女はそろって臨月を迎えていた。

「ご主人様ぁ……どうぞ、私にご慈悲を……」
「あぁん……お父様ったらぁ、私のことも忘れないでね」
「魔王様ぁ、フィオのことも可愛がってぇ」

 三人の美姫が、それぞれ甘い声をあげる。我は、玉座の間にて、三王女を侍らせていた。三人とも、服を纏わず、全裸でいる。さらには、肌も赤く、表情はとろけ、欲情に身を焦がされている様が、手に取るように分かる。太股には、銀色に輝く粘液の筋が、乾くことなく流れ続けている。胎の中の仔がピクンと動くたびに、三王女は全身を震わせ、快楽を享受する。その身に魔を宿し、心身を歪められ、闇に堕ちた人間のなれの果てともいえる姿だった。我は、三王女の嬌態を眺め、ほくそ笑む。

「ね、お父様……私のことを犯してくださらない? お父様の男根で私の子宮を刺激して、お腹の中の仔にミルクを恵んであげてほしいの」

 エレノアが、我のすぐそばまで歩み寄ると、発情しきった声でねだる。

「何を言っているの、エレノア……私だって、ご主人様に愛していただきたいのに……出産が近いから遠慮しているんだから!!」
「そうだよぉ、フィオだって、フィオだって……もう我慢できないのを、必死で我慢しているのにぃ!!」

 すぐさまエレノアに抗議するリーゼとフィオも、すでに性欲を抑えきれず泣きそうな顔をしている。仔が育つのに比例して、三王女の中の欲望も肥大化し、母体の精神を侵食しているのだ。

「口でするぶんならば、良かろう」

 我はそう言うと、玉座に腰掛けたまま、三王女の前に硬く天井を向く剛直を突き出す。

「本当ですか!!」

三人が同時に叫ぶ。三王女の視線が牡の器官に集中し、その表情がだらしなくにやける。我が脚を開くと、三人は、フラフラと夢遊病のように歩み寄ってくる。膨れ上がった腹を潰さぬよう気をつけながら、ひざまずくと、目の前にそそり立った男根に羨望のまなざしを向ける。かつての誇り高く美しい英雄たちは、飼い慣らされた犬のように、我の最後の許しを待っていた。

「……三人で、味わうがよい」

 我が鷹揚に頷きながらそう言うと、三王女は「はいっ!!」と短く返事をし、我先にと黒檀のごとき肉棒の先端に接吻する。亀頭に張り付いた三つの瑞々しい唇から、それぞれ舌がチロチロと伸び、男根を砂糖菓子か何かのように舐めまわす。彼女たちは鼻で深呼吸し、生々しい牡の臭気、肺一杯に吸いこもうとする。

「んん、ぴちゃ、ちゅぱ……」
「あぁ……れろ、れろ……」
「はぁん、ちゅぷ……じゅぷ……」

 そのうち、亀頭が唾液でまみれる他に、もう一つ別の水音が響き始めた。三王女たちが、誰からともなく、自らの股間に手を伸ばし、自分の秘所を慰め始めたのだ。

「どうした? 味わうのならば、口だけにしておけと言ったはずだろう」

 我は、三人を見下ろし、あざける。

「だって……お父様、私、我慢できない……」
「あぁご主人様……淫らな下僕をお許しください……」
「でも、でも……魔王様のここが、あんまりいい匂いがするから……」

 淫蕩に酔う三人の美姫は、口々に言い訳にならない言い訳を述べる。

「まあ、いい。どうせ、人間としての貴様らは、これからいなくなるのだからな」

 我の言葉は、自慰と口淫奉仕にふける三王女の耳には届かない。

「くれてやる。受け取れ」

 我は、そのまま、ドプドプと精を放ってやった。

「あぁッ!!」

 三王女が一応に、歓喜の声をあげる。我の男根の先端から噴き出した白濁した欲望は、三王女の顔を汚していく。

「んん、お父様の、美味しい……」

 唇についた精液を下で舐めとったエレノアが、うっとりと呟く。

「あぁ、ご主人様の……熱くて、なんて芳しいの……」

 天井を仰いだリーゼが、陶酔してささやく。

「魔王様の、ステキ……フィオ……もう本当に我慢できないッ!!」

 片手で自らの身に余る乳房を揉み始めたフィオが叫ぶ。三王女は、自らの女性器を弄ぶ手の動きを一層激しいものにする。

「もうダメ……私、限界ッ!!」
「ああぁぁぁ……もう、無理です!!」
「……イクっ! イキます!!」

 そして、三王女は、三人同時に絶頂を迎えた。荒く息をつき、我の脚に寄りかかるエレノア。床に手をつきながら、快感の余韻に浸るリーゼ。ペタンと尻をつき、至福の表情で虚空を見つめるフィオ。歪んだ魔の至福を、骨の髄まで味わった三王女だが、それはまだ始まりに過ぎない。

「……!!?」

 三王女が一様に、身を震わせる。

「あッ! あぁッ!! 何……お腹が、震えている……!?」

 エレノアが、突如始まった以上に、自らの肩を抱きしめて耐える。限界まで膨らんだ腹が、ビクビクと振動する。

「赤ちゃんが……動いている……すごい、こんなに激しいと、私……ッ!!」

 リーゼが、愛おしむように自らの大きく張った腹を優しく抱える。その顔に浮かんだ票所は、苦痛に対するものではない。

「産まれる……産まれそうなのに……私、すごく、気持ちいいよぉ!?」

 フィオが、仔が宿る腹を圧迫しないように、背筋を弓なりにして天井を仰ぐ。魔物の仔が腹の中で暴れ、その感触に快感を味わう。

 自慰による絶頂が引き金となって、三人の子宮にいた魔物が、産み出されようと蠢き始めている。いま、我の眼前で、人界を救おうとした麗しき英雄・三王女が、魔物の母になろうとしていた。

「エレノア、リーゼ、フィオ。床に降り、我に尻を向けて、四つん這いになれ。これから起きることがよく見えるようにな」

 我は、冷酷に言い放つ。三王女は弱々しくうなずくと、身体を震わせながら立ち上がる。よろよろと歩くと、そのあとには、ぽたぽたと滴った愛液の跡ができた。三王女は力の入らない身体を支えて、我の言いつけ通りに黒石の床に獣のように四つん這いになる。濡れそぼり、外側から解されきった媚肉と、内側に魔が宿り、母に貪欲な快楽を与え続ける膨らんだ胎が、玉座の上からよく見えるようになる。

 三王女の子宮に宿った魔物の仔らは、自らの母に恩を返そうとするがごとく、母たちの肉体の最奥から、淫気で侵し、快楽を貪れるようにしていく。その快楽は、魔物の仔が成長するにつれて強くなり、三王女たちの知性を溶解させていく。やがて、快楽は母性本能と結びつき、人間としての価値観までも犯し、理性を歪めていく。自らの胎内に息づく魔物の仔への想いが、我が施した三王女の精神支配をさらに深いものへと変えていく。

 だが、魔物の仔が、母体に対して及ぼす影響は、それだけではない。母となった三王女は、胎内で魔物の仔の身体を作り上げていくだけではないのだ。魔物を宿した母は、同時に、子宮で育んでいるはずの魔物によって、母体の肉体を作りかえられていく。母胎は、魔物の仔にとって居心地良く、育ちやすくなるように。全身をめぐる人の血潮も、仔とやり取りをしやすい魔物の血液に。そして、産まれ落ちた後も、自らを育てるに相応しい魔素のこもった乳を分泌し、さらには、本能的に魔物の仔のために行動するように……

「はうっ! はあぁぁッ!?」

 リーゼが、声にならない獣じみた叫びをあげた。ビクッと、ひときわ大きく身体を震わせる。その膨らんだ腹は、せわしなく脈打っていた。陣痛すらも悦楽と感じるように、堕ち果てた肉体が歓喜を享受し、ドロドロに蕩けた媚肉の隙間からは、愛液とも羊水ともつかない液体がブシッとあふれ出す。

「あうッ!! クる!? ご主人様のッ……仔がキます!!」

 内側から、秘唇が押し開かれるようにして、“何か”がリーゼの胎の内側からはい出してくる。母体を傷つけぬよう、妖しい光沢の粘液に包まれた、魔物の仔だ。一匹目の仔が、まるで野生の獣の出産のように床に産み落とされる。それと同時に、リーゼは絶頂したかのように背筋をけいれんさせ、乳房の先端から、母性の象徴である白い乳汁を滴らせる。それでも、出産はまだ終わらず、体の中に潜んだ次の仔が外を目指して、はい出してくる。

「んんッ! 私も……お父様の赤ちゃんが……出てくるぅ!!」
「んあぁッ! フィオも、フィオも……産まれちゃうよぉ!?」

 リーゼに続いて、エレノアとフィオのブルブルと全身を引きつらせる。エレノアは、だらしなく口を開け、よだれを垂らしている。フィオは、床に押し当てて身体を支える手の指に力を込める。二人は、リーゼと同様に、股間から淫靡な胎液を床にぶちまける。三人分の液体が水たまりを作り、熱を感じさせる妖しく甘い香りが辺りに満ちる。

「んんん! ああぁぁぁッ!!」
「ひあッ! ふあッ! あっ、あっ、あぁッ!!」

 エレノアとフィオが、絶叫し、二人の一匹目の仔が這い出てきて、床に落ちる。そのときには、リーゼの中から二匹目の仔が頭を出していた。甘い叫びが、しばしの間、途切れることなく続いていた。

 身に宿った仔をすべて産み落とし、腹も元通りにしぼんだ三王女は、力を使い果たしたかのように、床に倒れ込んでいた。エレノアは三匹、リーゼは四匹、フィオに至っては七匹もの魔物を産み落としている。産み落とされた魔物の仔たちは、その身を小さく震わせると、自らの力で全身を包んでいた粘液をふるい落とす。人間の赤子よりも、やや小さい、我と三王女の仔供たちが、その姿を現す。上半身だけ見れば、人の子ともそう大きくは違わない。だが、その下半身はまがうことなき異形の姿だった。

 エレノアの仔は、その下半身を蛇の姿にしていた。粘液にぬめったウロコが、光を反射し、妖しく七色に輝く。

 リーゼの仔は、幼子の柔肌と相反する鎧のような脚を持っている。その脚は、全部で八本あり、クモの下半身を形作る。

 そして、フィオの仔は、リーゼの仔同様に無数の脚を持っていた。その脚は、粘液の皮膚を持ち、触手のようにうごめく。タコかイカを連想させる軟体生物の下半身を持っていた。

 目を見開いた魔物の仔たちは、産声をあげることもなく、自分達の母親を見つめる。そのまま、はっきりとした生存への欲求を持って、それぞれの母親へと這い寄って行く。

「あはぁ……私の、赤ちゃん……」
「おいで……ママが可愛がってあげる」
「うふふ、たっぷり愛して、育ててあげるからぁ……早くぅ」

 エレノアとリーゼとフィオは、疲労困憊となりながらも、満面の笑みで自らの仔供たちを迎え入れる。母親の柔らかい腕に招き入れられるように、魔物の仔たちは二つの乳房に導かれる。その唇が貪欲に乳首に吸いつき、滴る母乳を吸引する。

「はぁん! イイっ!!」

 授乳にすら、悦楽を感じ、身をよじる三王女。しかし、二つの乳房では、産まれ落ちた仔すべてを一度にまかなうことはできない。あぶれた仔たちは、それぞれ、別の体液を求めて母親たちの身体を這いまわる。ある仔は、秘唇に吸いつき、愛液を貪る。またある仔は、母の唇を求め、唾液をねだる。そこからもあぶれた仔供たちは、汗を求めて、母の柔肌に舌を這わせる。

「あぁ!? そこは違う……うぅん、でもイイの。可愛い仔供のためだもの……」
「えへへ……ママの体液、赤ちゃんの自由にしていいよ……」

 妖しい母性に身体を突き動かせる三王女たちは、至福の感覚を持って、我が仔の求めに応じていく。

 我は、玉座より立ち上がった。思い思いに、我が仔と戯れる三王女を見下ろしながら、歩み寄る。我は、その中の一人、エレノアのもとに近づいていく。

「あ……お父様ぁ……」

 エレノアが幸せそうに表情を緩めて、我のほうを振り向く。

「エレノア。胸元を、我に見えるように差し出せ」

 我が命じると、エレノアはそれに従おうと身体をひねる。しかし、仔にまとわりつかれ、出産で体力を使いきった身体は、思うように動かない。我は、エレノアの栗色の髪を乱暴につかむと、そのまま顔を引き上げる。

「あぅ!? お父さ……ま……?」

 弱々しく、うめくエレノアに、我は邪悪にほほ笑みかける。

「ご苦労だった、エレノア。我から、貴様に褒美をくれてやろう」

 我は、手に闇の魔力を凝縮させる。その手のひらを、エレノアの胸元に強く押し当てる。ジュッと肉が焼けるような音が響き渡る。

「く……はぁ……」

 エレノアが、肺の中の空気をすべて吐き出すようなうめき声をあげる。我がつかんだ髪を手放すと、音もなく、仰向けに倒れ込む。それでも、エレノアの仔たちは、構うことなく母の身体に群がり続けている。

「ご主人様……一体、何を……?」
「エレノア……大丈夫……?」

 仔を抱えたリーゼとフィオが、虚ろな瞳で心配そうにつぶやく。我は立ったまま、しばし、エレノアを見下ろし続けた。すると、エレノアが自分の肩を小さくゆすりはじめる。

「うふふ……あはははは!!」

 突然エレノアは、狂ったように笑い始めた。目を開くと、倒れていた身体を起こす。何も変わっていないはずなのに、何もかもが変わってしまったかのような気配を全身にまとう。座った床にできた影は、さざ波が立つ。全身から、瘴気のよう気配が噴き出していく。そして、我が手を押しあてた胸元に、鋭利な刃物で切られたかのような線が真横に走った。わずかな血の粒が流れると、その線は、そのまま上下にめくりあがり……

 ギョロリ……

 と、巨大な瞳が胸元に開かれる。エレノアは、身体に植え付けられた不気味な瞳を誇るように胸を張ると、我のほうを見上げる。

「あぁ……お父様、ありがとうございます。仔を産むという名誉だけではなく、私の身体に闇の力を植え付け、真の魔族としてくれるなんて……こんな幸せは、他にありませんわ」

エレノアは妖艶にほほ笑み、うっとりと呟く。

「そうだ、エレノア。我の仔を産み、その身体を内側から作り変えられた貴様を、わが眷族として迎え入れた。貴様の身体は我が一部にして、魔界の一部。これで貴様は、我の真の娘となった……」
「うふ。ステキ……」

 我が言葉を聞いたエレノアは、魔性を感じさせる笑顔を顔に浮かべて、我が仔をなでる。

「あぁ、ご主人様……」
「魔王様ぁ、まってぇ……」

 我とエレノアの様子を、呆然と眺めていたリーゼとフィオが、這い寄ってくる。

「ご主人様……どうぞ、この私にも出産の褒美を……ご慈悲をください……私を、真の下僕としてください!!」
「魔王様ぁ。フィオも、エレノアみたいに、本当の眷族にしてぇ……フィオだって、頑張ったんだからぁ!!」

 リーゼとフィオは、羨望のまなざしを向けながら、我とエレノアのもとに這い寄ってくる。

「リーゼ、フィオ、安心しろ。もとより、そのつもりだ」

 リーゼとフィオが、安堵と感嘆のため息をつく。期待に満ちて胸元を差し出した二人に、我はエレノアと同じように魔力を込めた手を押しつける。身を焦がすような灼熱と、圧倒的な衝撃に貫かれ、リーゼとフィオは床に倒れ込む。その顔には、幸福と期待の表情が浮かんでいた。我とエレノアは、その二人を見下ろし、魔物の仔たちはそれに構う様子もなく母親たちの身体を貪っていた。

< 続く >

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