MC三都物語 京都編 中編

京都編:中編 巫女姉妹

4.布石

「はんっ、ああっ、あんっ、サトル様ああああっ!」

 はだけた巫女装束からこぼれ出た胸を、サトル様の口が吸う。
 それだけで、全身に電気が走る。

 いや、さっきから電気はずっと走りっぱなしやった。

 サトル様の固くて逞しいものがさっきから私の中で暴れっぱなしだったからだ。
 もう、子宮口を突き抜けてその奥まで入ってきている。

 もっとも、サトル様のおちんちんが暴れているのも、私が激しく腰を動かしているからなんやけど。

「ククク……随分と腰使いが巧うなったな、沙友里。最初の頃はあんなにぎこちなかったいうのに」
「そ、それはもうっ、サトル様に喜んでいただくためにっ!ああっ、はうんっ!」
「ククク……可愛いやつやな、おまえは」
「あっ、お褒めいただいてっ、ありがとうございます!あんっ、はああんっ!」

 いやらしく体をくねらせながら、私はサトル様に礼を述べる。

 私がサトル様の巫女になってもう1ヶ月が過ぎた。

 あの日、この巫女装束を初めていただいた後にサトル様から全て教えてもらった。

 この神社のこと、サトル様のこと、そして、サトル様の巫女になるということがどういうことなのかも。
 もちろん、サトル様がここに封印された鬼の念を宿していることも。
 私は、そのサトル様にお仕えする巫女として選ばれたのだ。

 それまで、私、葛野沙友里(かどの さゆり)は会社の先輩だったサトル様のことを、先輩、と呼んでいた。
 でも、全てを知ってしまうと畏れ多くてとてもそんな呼び方はできない。
 サトル様は、私のお仕えするべき大切な主なのだから。

「あっ、くうっ、あんっ、はうっ!あうっ、さ、サトル様!わっ、私っ、もうっ!どっ、どうかっ、私にお恵みをっ、はああっ!」
「いいだろう、沙友里。たっぷりとくれてやる」
「あっ、ありがとうございます!あうっ、あああっ、くうううっ、激しいいいっ!」

 サトル様が下から私の中を突き上げる動きを大きく、そして早くしていく。
 私も、その動きに合わせてサトル様のおちんちんを奥深くまで迎え入れるように腰を動かす。

「んくうううっ!くるっ、来ますっ、ああっ、サトル様の熱いのがっ、はああああああああああっ!」

 私の中で暴れていたサトル様の熱くて固いおちんちんが震えて、熱い精液がたっぷりと迸り出てきた。
 子宮の奥が熱いもので満たされていき、脳髄まで真っ白に染まっていく。

 それと同時に、私の体から急速に力が抜けていくのを感じる。

「ああああっ、むふうううううぅ……」

 ぐったりとサトル様に体を預けて、私は大きく息をする。

 もちろん、絶頂に達したせいもあるけれど、全身の力が抜けているのはサトル様に私の精気を捧げたから。
 それが、サトル様の巫女の重要な役目のひとつなのだ。

 サトル様は巫女の精気を吸わないと生きていくことはできない。
 そのために自分の精気を捧げるのは巫女として当然のことであり、大きな喜びでもある。

 もっとも、一度の性交で捧げる精気はかなりの量だから、私の体にかかる負担も大きい。
 巫女になって最初の頃は、私は精気をサトル様に捧げるたびに気を失っていた。
 でも、最近では一回精気を捧げただけでは気絶しなくなってきた。

 サトル様の仰るには、サトル様に精液を注がれるたびに私の体はより鬼の巫女にふさわしい体になっていくらしい。
 だから、私の体は、より多くの精気を生み出して蓄えられる体になっているのだそうだ。
 もちろん、それは私にとっても大きな喜びだった。
 それでこそ、巫女としての務めを全うできるのだから

「沙友里」
「なんでしょうか、サトル様?」

 少しの間体を休めて、ようやく起き上がった私にサトル様の声が降ってきた。

「今日は新しい術を教えてやろう」
「はい」

 最近は、サトル様に精気を捧げるだけではなく、様々な術を教えていただいている。
 呪術を身につけることも、サトル様の巫女として働くためには必要だからだ。

「それに、そろそろ、親にも会社を辞めたことを言わなあかんやろうしな」
「……はい?」

 サトル様の言葉通り、勤めていた会社を辞めたことはまだ両親には伝えてなかった。

 その代わりに、毎日、出勤するふりをしてここに通い、巫女の務めを果たしていた。

「今日教える術はそのための術や。……おまえ、一緒に住んどるんは親だけか?」
「いえ……高校に通う妹もいますが?」

 私は実家で、両親と、妹の友加里(ゆかり)との4人暮らしだった。

「ほう……妹か?」

 そう言って、サトル様は少しの間何か考えている様子だった。

「どうや、沙友里。妹を俺の巫女にせえへんか?」
「友加里を、サトル様の巫女に?」
「そうや。妹と一緒に俺に仕えるんや」

 ……友加里と一緒に、サトル様にお仕えする。

 サトル様の悲願のためには4人の巫女が必要だ。
 それが、私でまだひとり目。
 あと、3人の巫女が必要になる。

 もちろん、私に異存はなかった。

 私にはサトル様を独占したいなどというちっぽけな感情などはない。
 サトル様の悲願達成が私たちの悲願でもあるのだから、巫女同士で嫉妬するなどというのはもってのほかだ。
 それでも、ともにお仕えする巫女のひとりが可愛い私の妹だったら、姉妹で一緒に巫女としてサトル様にお仕えできるのなら、それはなんて素晴らしいことなんだろう。

「嫌か、沙友里?」
「とんでもございません。ぜひとも、妹の友加里をサトル様の巫女にしたいです」
「そうか。なら決まりや。そっちの方はちょっと準備がいるさかいに、そうやな、今週末に実行するとしよう」
「はい」
「もちろん、おまえにも手伝ってもらうからな。それまでに俺が教える術をしっかりと習得しておくんやで」
「かしこまりました」
「ほなら、さっそく練習や」
「はい、サトル様」

 そう答えて、私は立ち上がった。

* * *

「あ、お帰り、お姉ちゃん」

 その日、夜までサトル様に術の手ほどきを受けてから帰宅すると、階段を降りてきた妹の友加里と鉢合わせした。
 しかし、友加里は浮かない顔をして私を見ている。

「今日も遅かったんやね」
「うん」
「……なあ、姉ちゃん」

 上がり框に腰掛けてパンプスを脱いでいる私に、不安そうに友加里が話しかけてきた。

「ん?なに?」
「最近、ちょっと痩せたんとちがう?」
「え?そう?」
「絶対前より痩せてる。そんなに仕事が大変なん?」
「……うん、まあね」

 友加里に言われるまでもなく、自分が以前より痩せているのはわかっていた。
 本来、サトル様には4人の巫女が必要なのだ。
 それを今は私ひとりの精気で支えているのだから、体に負担がかからないはずがない。

「あんまり無理したらあかんで」
「うん。ありがとう、友加里」

 そう言って、私は友加里の頭を撫でるとリビングに向かう。

 友加里の気遣いが私には嬉しかった。
 学校ではテニス部の副主将なんかやっていて、活発で少し跳ねっ返りなところもあって時々手を焼くこともあるけれど本当は優しい子だ。

 やっぱり、この子と一緒にサトル様にお仕えしたい……。
 
 友加里を見ていると、改めて昼間にサトル様が提案したアイデアが魅力的に思えてきて、週末が待ち遠しい。

 それまでに、私もしっかりと術が使えるようになっておかないと。

「ただいまー」
「ああ、お帰り。今日も遅かったのね、沙友里」
「うん」
「ご飯は?」
「まだよ、もう、お腹ペコペコやわ」

 リビングに入って、母さんと会話を交わす。
 何気ない、本当にいつも通りの会話。

 私がサトル様の巫女になっていることを、まだ家族の誰も知らない。

* * *

 そして、金曜日の晩。
 サトル様に言われたことを実行する日が来た。

 深夜、家族が寝静まった頃合いを見計らって私はそっと自分の部屋を出る。

 まず向かったのは、両親の寝室だ。

 部屋の入り口で、私は低く静かに呪を唱える。
 しばらくすると、両親の部屋が淡い黄色の光に包まれた。

 これで、この部屋の中は結界になった。
 この結界の中で眠っている人間は、何があっても目を覚ますことはない。
 私にはまだ起きていて抵抗力の強い人間に術をかけるだけの力はないから、途中で目を覚まされたら困る。
 これはそのための結界だ。

 私はそっと部屋の中に入っていく。
 薄い黄色の光の充満した空間の中で、術者の私の体だけが青い光に包まれていた。

 私は、両親の枕元に立つと、懐から呪符を取り出した。

 そして、呪文を唱えながら、まず1枚目を父さんの胸に貼る。
 すると、呪符はすっとその体の中に沈んでいった。

 同じことを、母さんにも繰り返す。

 これが、サトル様に新たに教わった術。
 この呪符を埋め込まれた者は術者である私の言うことを無条件に信じ、受け入れるようになる。

 呪符に複雑な呪文と模様を描いていき、呪力を込めるのにはかなりの練習が必要だった。
 この、模様のような不思議な文字は、遙か大昔に鬼が使っていた文字なのだそうだ。
 私の巫女修行は、この文字を理解することから始まった。

 もっとも、まだまだ完全に習得したとは言えへんけど……。

 でも、とりあえずは術がうまくいって私は胸をなで下ろす。
 これで、父さんも母さんも私の言うことを疑わなくなるだろう。
 その気になれば、呪文ひとつでふたりを私の言葉通りに行動させることだってできる。

 ふたりの寝室を出て結界を解くと、今度は友加里の寝室の入り口に立って結界を張る。

 そして、そっと友加里の寝室に入っていった。

 可愛らしいわ、友加里……。

 ベッドですやすやと寝息を立てている、妹の少しふっくらとした丸みのある寝顔を見下ろす。
 その、愛くるしい表情を見ると、思わず頬が緩んでしまう。

 友加里と一緒にサトル様にお仕えするところを想像すると、興奮で胸が高鳴ってくる。

 そのためにも、この術を成功させんとあかんな……。

 私は、赤く濁った液体の入った小瓶を取り出す。

 この中に入っているのは、サトル様の血と精液に私の愛液を混ぜたもの、それに、サトル様が特別な術を施したものだ。

 私は瓶の蓋を外すと、呪文を唱えながら眠っている友加里の額にその液体を数滴垂らす。
 すると、その液体は友加里の中に染みこむように消えていく。
 もちろん、友加里の額には痕すら残らない。

 続けて、さっき両親に貼ったのと同じ呪符を取り出すと友加里の体にも埋め込む。

 これで仕込みは完了ね。

 私は、静かに友加里の部屋を出ると結界を解いた。

 自分の寝室に戻ろうとして、軽い目眩を覚えて足下がふらつく。

 これまで、術の練習にはサトル様の神社の氏子の人たちが相手をしてくれた。
 だけど、それ以外の相手に一度にこれだけの術を施したのは初めてだから、私はかなり消耗していた。
 まるで、サトル様に精気を捧げたときのように。

 この程度の術でこんなに疲れているようではダメね。
 まだまだ修行あるのみやわ……。

 自分の未熟さを痛感しながら自分の部屋に戻る。

 でも、とにかく明日は友加里をサトル様のところに連れて行かなくてはいけない。 
 今日の疲れを明日に残すわけにはいかなかった。

 しっかり休んで明日に備えないと。

 ベッドに潜り込むと、疲れで猛烈な眠気が襲ってきて、すぐに私は泥のように眠り始めた。

5.傀儡

 翌日。

 朝ごはんを食べながら、私はみんなに話を切り出した。

「驚かんと聞いてくれる?実はな、私、会社を辞めたんやけど」
「ほう……」
「あら?そうやったの?」

 父さんも母さんも、会社を辞めたことを明かしても驚く様子はない。
 友加里にいたっては、「ふーん、そうなんや」と、あまり関心もなさそうに言って、ずずっとおみおつけを啜っている。

「まあ、それは別にかまわへんけど、これからどないするつもりなんや?」
「うん、知り合いの神社で巫女修行をしてな、将来的にはそこで働こうと思っとんのや」
「そうなん?まあ、沙友里が決めたことやから、母さんもかまわへんけど」

 と、そんな調子で父さんも母さんも拍子抜けするくらいにあっさりと認めてくれた。
 まあ、それもこれも夜にかけた術のおかげなんやけど。

 両親の方は、何の問題もなく片がついた。
 残るのは友加里だ。

「友加里、ちょっとええか?」
「ん、なに?お姉ちゃん?」

 朝ご飯の後、私は友加里の部屋に行く。

「今日はなんか予定あるのん?」
「うん、部活があるから学校行くつもりやけど」

 そういえば、引退前の最後の大会があるって言ってたわね。

 でも、友加里と同じ高校に私も通ってたけど、あの学校、別にテニスの強豪校でもないし、友加里だって市の大会で3回戦くらいまでがいいところのはずじゃない。
 まあ、副主将なんかやってるから、最後の大会くらいは出たい気持ちはわかるけど。

 でも、今日はもうサトル様が待っておられるんやから。

 ……しゃあないな、ちょっと強引やけど。

 私は、短く呪文を唱える。
 すると、友加里の顔から表情が消えた。

「いい、友加里。今日はお姉ちゃんと一緒にお出かけしようね?」
「……うん」

 私の言葉に、友加里は虚ろな顔で返事をする。

 これがあの呪符の本当の効果。
 呪文を唱えることで呪符を埋め込んだ相手を人形のように思いのままにできる。
 もっとも、私はまだまだ未熟だからそれほど複雑なことをさせることはできないけど。

「じゃあ、行こうか?」
「……うん」

 友加里はふらりと立ち上がると、私の後についてきた。

「母さん、私、これから友加里と出かけてくるから。お昼は外で食べるからいらんわ」
「そうかい?」
「うん。それと、もし友加里に電話がかかってきたら今日は大事な用があるから行かれへんようなったって言っといてや」
「わかったよ」

 母さんにそれだけ告げると、私は友加里を連れて外に出た。

 そして、友加里の手を引いてサトル様のもとへと向かう。

 土曜日とはいえ、朝、まだ店も開く前の時間だから通りは閑散としていて、道行く人も少ない。
 通勤や通学の人がいない分、平日よりも静かなくらいだ。
 そのおかげで、他の人に怪しまれることはなかった。 

 ぼんやりと前を見つめたまま私に手を引かれてついてくる友加里の姿は、まるで小さな子供のようだ。

 今の友加里は、私の可愛いお人形さんなんや。
 これから友加里はサトル様のものになるんや。
 そして、私と一緒にサトル様にお仕えするんや……。

 そう考えただけで、興奮してアソコが濡れてくるみたい。

 そして、神社のある暗闇図子の入り口に着いた。

 ここまで来ると、もうサトル様の領域だ。
 この袋小路の住人はみんなサトル様の眷族。いわば私の仲間だ。
 ここまでは、入ってくる人間もほとんどいない。

 実際に、この図子は住人たちの術によって一種の異界のような状態になっているらしい。
 結界というほど強力なものではないけれど、普通の人間はこの通りに関心を持つことすらないようになっているのだそうだ。
 まれに迷い込んでくる者もいることはいるが、基本的に自由にここを出入りできるのはここの住人とサトル様、そしてサトル様の巫女だけ。
 他には、サトル様か巫女が招き入れた者が入れるだけだ。

 ちょうど、私がサトル様の巫女になった日のように、そして、今の友加里のように。

「あ、おはようございます」

 神社の手前で立ち話をしていた4人の女性に私はペコリと頭を下げる。

 この方たちは、サトル様の前の体にお仕えしていた、私の巫女としての先輩だ。
 今は、この図子の一軒に住んでおられて、私たち新たな巫女が揃うまでの間、サトル様の身の回りの世話をなさっている。
 それだけではなくて、私にサトル様の巫女としての心得を教えてくださったり、術の修行も手伝ってくれたりしていた。

「おはよう、沙友里さん。あら、そっちの子は?」
「私の妹の友加里です」
「ということは、もしかして?」
「ええ。この子が次の巫女候補なんです」

 短い会話を交わすと、先輩方は目を細めて友加里を見ている。

「うん、可愛らしい子やな。これならきっとサトル様のお眼鏡にも適うわね」
「ありがとうございます。さあ、こっちよ、友加里」
「……うん」

 先輩方に頭を下げると、友加里の手を引いて石造りの鳥居をくぐる。

 そして、サトル様の神社に着くと、私は友加里を社殿の中に招き入れた。

6.共振

「来たか、沙友里」
「はい」

 中に入ると、神主姿で瞑想していたサトル様が目を開いて私の方を見る。
 次いで、その視線が私の背後でぼんやりと立っている友加里を捉えた。

「妹を連れてきたのか?」
「はい」
「ククク……可愛らしい娘やないか。……なるほど、雰囲気はおまえとはだいぶ違うな」
「はい。細面の私は父親似ですけど、妹は母に似て丸顔ですから」
「でも、やっぱり姉妹やな。目許がよう似とる。それにふたりとも別嬪やで」
「ありがとうございます」

 私と友加里を見比べて目を細めるサトル様に頭を下げる。

「ほなら、早速始めるで。着替えてこい、沙友里」
「はい。……友加里、ちょっとそこで座って待っててね」
「……うん」

 友加里が腰を下ろしたのを確認して、私は着ている服を脱いでいく。
 そして、用意してあった自分の巫女装束を手に取ると、白の上衣を身につけて緋袴を穿く。

「お待たせしました、サトル様」
「よし、始めるとするか」
「はい」

 巫女装束に着替え終えた私は、虚ろな表情で前を見つめたまま座っている友加里の傍らに立つ。

「仰向けに寝なさい、友加里」
「……うん」

 命令すると、友加里は言われたとおり素直に仰向けになってその場に寝転がる。

「両手は真横に伸ばして、足は心持ち広げて……うん、そうそう」

 心持ち足の開いていない大の字にさせると、私は呪文を唱えて、呪術の綱で友加里の両手両足を床に括りつけた。
 これで、私が術を解かない限り友加里の体は動かない。
 たとえ、私が気を失ったとしても。

 そして、次に別の呪文を唱えると、埋め込んだ呪符が友加里の胸に浮かび上がってきた。
 私が手を伸ばしてそれを剥ぎ取ると、友加里の瞳に光が戻る。

「あれ……ここは?……なにっ!?なんでや!?体がっ、動かへん!?」
「おとなしくして、友加里」
「お姉ちゃん?……なんや、その格好は!?」

 気がついた友加里が、驚いた顔で私を見上げる。

「言ったやろ、神社で巫女修行をしとるって」
「あっ!朝ご飯の時に!」
「こちらにいらっしゃるのがサトル様や。ここの神主さんで、私の大切なご主人様なんや」
「ご主人様って!?なに言うとんのや、姉ちゃん!?それに、私、いつの間にこんなところに!?」
「私が連れてきたからに決まっとるやろ」
「なっ!?どういうことやねん!?」
「すぐにわかるわ。さあ、おしゃべりはここまでや」

 そう言って立ち上がると、私は社殿の奥の祭壇に向かう。
 そして、そこに祀られている石マラを手に取った。

「な、なんやの、それ!?」

 石マラを手に戻ってきた私を見て、友加里が少し怯えた声をあげる。

「いいから、おとなしくするんや」
「やあっ!なにすんの!?」

 しゃがみ込んで友加里のスカートをめくりショーツに指をかけて脱がせていく。
 抵抗しようとして暴れるけど、私の術のせいで動くことができない。

「やめてっ、姉ちゃん!……やっ!?今度はなんや!?いやっ、やあああああっ!」

 ショーツを脱がせると、友加里のアソコに石マラを押し込む。
 きっと、まだ男の人を知らないであろう友加里のそこは、きつく押し返してくる。

「やあっ!痛いっ、やめてっ、やめてえええええっ!」

 友加里は激しく頭を振って嫌がるが、私は構わずに根元まで石マラを押し込んだ。

「痛いよう……。それに、気持ち悪い……アソコに…冷たいのが……」

 涙を流して体を震わせている友加里を見下ろす私には、特に可哀想だという感情は湧いてこない。
 友加里だって、後になるときっと素晴らしいことだと思うはずだから。

 まだ、この術を完全に習得していない私にできるのはここまで。
 ここから後はサトル様にお任せしないと。

「それでは、お願いします、サトル様」
「ああ」

 そう言って見上げると、サトル様は友加里を見下ろして印を組み、呪文を唱え始めた。

「いや……なに?……ひっ、ひいいぃ!」

 体をピクッと振るわせて友加里が目を見開いた。
 そして、その額に赤い水滴のような染みが浮かび上がる。

「なっ、なに、いったい……?あ、頭が……熱い……」

 視線を小刻みに泳がせ、唇をひくひくと震わせている友加里。

 気のせいか、私の額の一点も熱く感じる。

 ……いや、これは気のせいやない。サトル様の術が完成した証。

 昨日の晩に私が友加里の額に滴らせた呪液と、友加里のアソコに入っている石マラを通じて、今、私と友加里、そしてサトル様は繋がった。
 だから、これから私とサトル様がすることは友加里にも伝わる。

「ほなら、始めるで、沙友里。こっちへ来るんや」
「はい、サトル様」

 サトル様が床に胡座をかいて私を招く。

 その前に立った私は袴の中で自分のアソコが濡れているのを感じていた。
 いつものことだけど、ここに来ただけで私は盛りがついた牝のように興奮してしまう。
 でも、私はそのことを恥ずかしいとは思わない。
 だって、サトル様の前で発情するのも巫女としての務めですもの。

 私は、しゃがみ込むとサトル様の袴をめくり、その下で突き立っていたおちんちんを剥き出しにする。
 太くて大きなそれを両手で握ってさすると、さらに逞しくそそり立ってきた。

「よろしいですか、サトル様?」

 私は、おちんちんを跨ぐように立ってお伺いをたてる。

「ククク……ええんか、沙友里?前戯もなしだと妹には刺激が強すぎるんやないのか?」
「かまいません。どうせ、すぐに経験することになるんですし、それなら早い方がええんです」

 違う……。
 本当は、私が早くサトル様のおちんちんをアソコに入れたいから。
 それを、そんな言葉で言い繕っているだけ。

「それに、友加里も喜ぶと思います。せやから……」
「ククク……いいだろう」
「ありがとうございます。では……」

 私は、腰を沈めてサトル様のおちんちんをアソコの入り口に宛がう。
 そして、一気にそれを自分のお腹の中に迎え入れた。

「はうううううううっ!」
「んぐううううううっ!」

 私の喘ぎ声と同時に、もうひとつ、呻くような友加里の声も上がった

「サトル様っ、サトル様の熱いのがっ、中で擦れてっ、あっ、ああああーっ!」
「やっ、なにっ、これっ!?何か、アソコの中っ、出たり入ったりしてるっ、んくうううううっ!」

 私がサトル様にしがみついて腰を動かし始めると、私の中とサトル様のおちんちんが擦れて一気に体が燃え上がる。
 その快感に喘ぐ私とは対照的に、友加里はまだ戸惑っているようだ。

 でも、あなたにもすぐにこの快感がわかるようになるわよ。

 今、私たちはサトル様の術で繋がっているから、私の感じている感覚はダイレクトに友加里に伝わっている。
 友加里には初めての感覚だろうから、慣れてなくて戸惑っているだけ。
 でも、きっとすぐにこれを快感だと感じるようになるはず。

「はあああっ!熱いっ、サトル様のっ、大きくて堅くてっ、あうっ、うふううんっ!」
「やああああっ!アソコがっ、熱いいいいっ!なにっ!?いったい何やのっ、これっ!?あううううっ!」

 私が夢中になって腰を動かすたびに友加里の大きな喘ぎ声も響く。

 やだ、なんだかいつもよりも興奮して、すごく感じてしまう……。

 まだ午前中とはいえ、7月初めの京都の町は暑い。
 ましてや、この神社の社殿には空調なんか付いてない。
 激しく体を揺すってサトル様と体を交えていると、たちまち汗が噴き出してくる。

 体の中からこみ上げてくる熱と、夏の京都の熱が相俟って私を狂わせていくみたいに思える。
 頭が悩乱して感覚ばかりが鋭くなり、無我夢中でサトル様にしがみついて腰を振り、快楽を貪る。

「んふうううううっ!ああっ、サトル様っ、もっと、強くっ、んんっ、ふあああああああああっ!」
「なっ、なにっ!?あっ、うああああああああああ!」

 いったん大きく腰を浮かせて一気に沈ませた弾みで、サトル様のごつごつしたカリがアソコの入り口から奥まで擦り上げて、私は絶頂に達してしまった。

「なんや?もうイってもうたんかいな?」
「はいいいいぃ……。も、申し訳ございません」
「しゃあないな。ほなら、俺が動くで」
「はいぃ……。ああっ、んああああああああああああっ!」
「やああっ!またあああああああああっ!」

 サトル様に下から突き上げられたそのひと突きで、私はまたもイってしまう。
 またもや絶頂に達した、私と友加里の悲鳴が同時に上がる。

「どうしたんや?今日はえらい敏感やないか?」
「ん、んんん……。友加里と一緒だと思うたら、興奮して、いつもより感じてしまうんです」
「でも、このくらいでは俺は満足できんで。わかっとるやろ」
「はい、もちろんです。どうぞ、サトル様の思いのままに……あうっ、うあああっ!ああんっ、すごいっ、激しいっ、サトル様!いあああああああああああっ!」
「またっ、ああああっ!ひぐうううううううううっ!」

 本当に、その日のサトル様とのセックスはすごかった。

 サトル様のおちんちんで突き上げられるたびにイクみたいで、何度も何度も絶頂に達した。
 この快感を、友加里と一緒に感じているんだと思うと、興奮して何度でも登り詰めてしまう。
 下から激しく中を突かれながら、私は必死でサトル様にしがみついていた。

「いあああっ!またっ、またイクううううううううううううっ!」
「ひあっ!ふあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!」

 すっかりはだけた胸元からはみ出た乳房を揉まれながらアソコの奥をおちんちんを突かれ、また私は絶頂する。
 軽くイったのを含めると、これで25回は超えてるいだろう。

 イキ続けたのと、精気を吸われ続けたので、快感に慣れた私でも目の前が霞み、頭がぼんやりとしてきていた。
 友加里の方は、さっきから私がイクたびに獣のような濁った声を上げるだけになっている。

「いくで、沙友里!」
「はいっ、サトル様!どうかお恵みをっ!あっ、くるっ!サトル様のっ、熱いのがっ、子宮の奥にっ!ああああああああああああっ!」
「んふっ!ふう゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛っ!」

 ぎゅっとサトル様にしがみついた瞬間、私の中で熱いものが弾け、お腹いっぱいに満たされていく。
 友加里の、鈍く濁った方向がまるで遠くで聞こえているみたいだった。
 目の前がチカチカとフラッシュして火花が散る。

 そして、快感のうねりに飲み込まれていく中、ありったけの精気をサトル様に吸われていく感覚。

「ん……んふううぅ……ふううぅ……はぁ……はぁ……」

 全身から力が抜けて、腰が抜けたようになる。

 こんなに精気が空っぽになるのはいつ以来やろうか。
 久しぶりに気を失うところやった。

 ぐったりとしている私の耳元で、サトル様が囁いた。

「立てるか、沙友里?」
「はぁ…はぁ……ちょっと、すぐには……足に、力が入りそうにないです。はああぁ……でも……這ってなら……」

 そう答えると、私は這うようにして友加里の傍らに行く。

「あ゛あ゛……あ゛う゛……」

 ぐったりとして鈍く呻いている友加里の目は開いているものの、どんよりと濁って、完全に光が失せていた。
 どうやら、途中からほとんど意識を失っていたようだ。
 力なく仰向けになったままの、下腹部の辺りがひくひくと痙攣していた。

 でも、私もそのままへたり込んでしまう。
 精気を捧げすぎて、まだしばらく動けそうにない。

 友加里の傍らに突っ伏したまま、大きく深呼吸をして呼吸を整える。
 しばらくそうしていても、友加里は起き上がる気配はなかった。

 そうしているうちにようやく体に力が戻ってきた。
 術を使うだけの魔力と精気が回復したのを感じて、私は上体を起こすと、呪文を唱えて友加里を縛めていた術を解く。

「友加里。なぁ、友加里」

 名前を呼んでも、友加里の目は濁ったまま、何の反応もない。

 なら、これでどうや?

 ぐったりとしたままの友加里のスカートを脱がせて、アソコから石マラを引き抜いた。
 その途端に、友加里のそこからお漏らししたのかというくらい大量の愛液が迸り出てくる。

 意識が戻りそうな気配はないのに、友加里のそこはどくどくと蜜を溢れさせていた。

 でも、それならそれでこのまま……。

「こんなにお汁を溢れさせて……友加里の方の準備はええみたいです、サトル様」

 そう言って見上げると、サトル様はひとつ頷いて友加里の両足を抱えた。

 後は、友加里を起こすだけだ。

 私は、その頭の側に回りこむとその頭を膝に乗せてそっと頬をはたいた。

「友加里……起きるんや、友加里」
「……ん、んん。……あ、姉ちゃん?」

 呼びかけていると、友加里の瞳にわずかに光が戻った。
 しかし、私を見上げるその顔はトロンと蕩けていて、焦点も合っていない。

「ん、んふうぅん……私、いったいどないしてもうたんや?」

 ふにゃりとした表情で私を見上げたまま、甘ったるい吐息を漏らしている友加里を見ていると、可愛らしくてそのまま抱きしめたくなる。

「友加里も、こんなになるまでいっぱいイったんやなぁ」
「イった?イったって、どういうこと?」
「どうや?自分でエッチするのよりずっと気持ちよかったやろ?」
「なんやて?……そんなん、私、知らへん。自分でやったことないからわからへんよ……」
「まあっ!ホンマにかわいいなぁ、あんたは。ひとりエッチもしたことなかったんかいな?」

 友加里の口から出てきた思いがけない言葉に、私は目を丸くする。
 我が妹ながら、この歳まで自分でしたことがないなんてちょっとした驚きだった。
 普段のやんちゃな態度とは裏腹に、こんなに初心で純真なところがあるなんて、ますます可愛らしい。

「でもなぁ、友加里はたしかにイってもうたんやで」
「そんな……イクって……」
「気持ちいいのが振り切れてしもうたんや。せやから、もう知らんとは言わせへんで。あんたは、気持ちいいことをもう知ってしもうたんやから」
「な…なに言うとんのん、姉ちゃん……?」
「でもな、さっきのは借り物や。私が気持ちいいって感じたのをあんたも一緒に感じとっただけなんや。それはほんまもんの気持ちよさやない。サトルの様のをホンマに入れてもろうたら、もっともっと気持ちええんやから」
「ど、どういうことやねん?……えええっ!?」

 そこで初めて、友加里は自分の両足をサトル様に抱えられていることに気づいたらしい。

「そうや。今からサトル様に入れてもらうんやで」
「なっ、なにアホなこと言うとんねん!」
「心配いらへん。あんたのアソコはもうぐしょぐしょに濡れて準備万端やんか。何の問題もあらへん」
「そういうのんと違う!いやっ、やめてえなっ、姉ちゃん!」

 友加里は何とかもがこうとするが、両足をサトル様に、そして両肩を私に押さえつけられて満足に動くことができない。
 それに、何度もイったせいで体に力が入らないのか、振りほどこうとする力も弱々しい。

 私がサトル様に目配せすると、サトル様はひとつ頷いて逞しくいきり立ったおちんちんを友加里のアソコに宛がう。

「い、いやっ!?なんかっ、入ってくる!痛いっ、痛いいいいいいいいいいいいっ!」

 サトル様のおちんちんがゆっくりとその中に入っていき、友加里は歯を食いしばって悲鳴を上げた。

「いやああああっ!なんか大きくて堅いのが、お腹の奥まで入ってきとるっ!いやっ、痛いっ!苦しいいいいいっ!」

 根元までサトル様のおちんちんを飲み込んで、友加里のお腹がその形にぽっこりと膨らんでいる。

 そう……サトル様のおちんちんは普通の大きさじゃない。
 普通の女の子には大きすぎるから、最初は痛くて苦しいだけ。
 でも、すぐに気持ちいいと感じるようになる。

 大丈夫……私もそうやったんやから。
 あんたは私の妹やもの。……せやから大丈夫や。

「大丈夫や、友加里。はじめは少し苦しいかもしれへんけど、すぐに気持ちようなるから」
「そっ、そんなことっ、あるわけないやんかっ!んくうううううっ!あかんっ!動かんといてやっ!ああっ、あくうううっ!」

 サトル様が腰を動かすと、友加里はまた苦しそうに悲鳴を上げる。
 その下腹部が抽送に合わせて変形するのがわかる。

「いやあああっ!大きくて堅いのがっ、私のお腹の中でっ、動いてっ!くううっ、苦しいいいいいっ!いっ、息ができへんっ!」
「もう少しや。もう少ししたら気持ちようなるからな」

 友加里の頭を抱いて私は優しく囁く。
 しかし、そんなことあるわけがないとでもいうように、友加里は目を固く瞑ったまま頭を大きく振る。

「いやあっ、もうやめてっ!くうっ、くうううっ!」
「もう少し、もう少しの辛抱やで、友加里」

 サトル様の大きなおちんちんの抽送を受けて苦しそうに呻く友加里を、私は励まし続ける。
 それを気持ちいいと感じるようになることを信じて。

 だって、さっき私と一緒にあんなに何度もイったんやもの。
 この、サトル様のおちんちんで奥まで突かれる感覚を、快感と思わな嘘や。

「んくうううっ!中でっ、堅いのが擦れてっ、苦しいいいいいっ!あっ、あああっ!?あふううううっ!?」

 不意に、友加里の呻く声の感じが変わった。

「んふうううううっ!あっ、熱いっ!アソコの中っ、擦れて、体が燃えるうううううっ!」
「ふふふ……やっと気持ちようなってきたんやね、友加里」
「違うううっ!気持ちええんやない!熱いねん!体がっ、燃えるように熱いんや!」
「もう、友加里ったらホンマに初心やなぁ。気持ちええから体が熱くなるんやないか」
「そんなっ!?そんなっ!あうっ!んふううううっ!」
「ほら、そんなにいやらしい声出してからに。……それになんや、これは」
「あひいいいっ!そんなあああっ!おっぱい触らんといてやっ!」

 私が友加里の胸を掌で押すと、ブラウスの下で乳首がカチカチに尖っていた。

「ほら、こんなに乳首堅くしてるやないの。感じてる証拠やで」
「んふうううんっ!あんっ、お姉ちゃん!あんっ、んんんっ!んむむむっ!」

 サトル様のおちんちんでアソコを突かれ、私に乳首を摘ままれて、潤んだ涙目で喘ぐ友加里を見ているうちに我慢できなくなってその唇を奪う。

「ふむむむぅ……。んぐぐぐぐぅ……んっ!んんんっ!んーっ!んぐぐっ……んむむむむーっ!」

 友加里の唇の柔らかい感触を楽しんでから、口の中に舌を入れて友加里の舌をいらう。

 すると、友加里の体がきゅっと反り返って固まった。

「むふうううぅ……。なんや、友加里ったら、もうイったんかいな。やっぱり、サトル様のおちんちんで気持ちよくなったんやろ?」
「ち……違う……」
「じゃあ、気持ち悪かったん?」
「そ……そうやないけど……」
「もう、ホンマに強情な子やなぁ。もっと自分に素直になりや」
「でっ、でも……。あっ、ふああああっ!だめえっ、おちんちんっ、突かないでえええっ!」

 サトル様が、いったん止めていた抽送を再開したので友加里はまたあられもない声を上げる。

「ああっ、ふあああっ、あっ、あふうううんっ!」
「ほら、そないに気持ちよさそうやんか。正直に認めなあかんで」
「あっ、うあああっ!あかんっ、もうあかんっ!それ以上突かれると、私、おかしくなってまううううっ!」
「それでええんや。おかしくなってええんやで、友加里」
「そっ、そんなあああっ!あひいいっ!らっ、らめえっ!なんひゃか、からだっ、ちからっ、はいらへんっ!」

 次第に、友加里の呂律が回らなくなってくる。
 その瞳がどんよりと濁っていき、私の腕をぎゅっと掴んでいたその手から力が抜けて行くのもわかる。

 でも、私は何の心配もしていない。
 それは、友加里の精気をサトル様が吸っているだけのことなのだから。

「はんっ、あふうっ、あっ、あああっ!」
「どう?気持ちいい?」
「んっ、んふうん!あひっ、きっ、きもひいいっ、きもひいいのんっ!」

 虚ろに淀んだ視線を泳がせながら友加里が快感を口にする。
 その顔は、快楽に蕩けた女の表情だ。

「んふうううっ、おおきいのっ、わらひのなかでっ、いっぱいになっれっ、あうんっ、きもひいいようっ!」

 サトル様がおちんちんを打ち込むのに合わせて、友加里の身体が踊るように反り返り、ビクビク跳ねる。

「はううっ!らめっ、わらひっ、もうらめっ!あくううううううっ!」

 友加里の体が、おへそを突き上げるように弓なりに曲がった。
 そのまま、ブリッジの要領で私のももに埋めて体を支えている首がプルプルと震える。

 絶頂に体を強ばらせている友加里の姿に、サトル様はニヤリと笑みを浮かべると思い切り腰を打ち付けた。

「ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛っ!おっ、おなかのなかにっ、はいってぐるううううぅ!あっ、あづいいいいいいっ!あぐううううううううっ!」

 ぽっこりと膨らんだ友加里のお腹の中でサトル様のおちんちんがビクビクと震えて、子宮いっぱいに精を注いでいるのがわかる。
 海老反りになって叫ぶ友加里の体が痙攣し、大きく見開いた目がせわしなく動いて視線を泳がせていた。 

「あふううううっ!あっ、ふああぁ……あ……あぁ……」

 反り返っていた友加里の体ががっくりと崩れ落ちる。
 そして、友加里はそのまま意識を失った。

 わたしは、力なく横たわる友加里の頭を膝の上で抱えたまま、その頬の涙をそっと拭う。

 サトル様が友加里の体からおちんちんを引き抜いた時にピクッと微かな反応があったけど、目を覚ます気配はない。

「いかがでした、私の妹は?」

 友加里を抱いたままで訪ねると、サトル様は満足そうに頷いた。

「悪うない。いや、ええ女や。さすがはおまえの妹やな」
「ありがとうございます」
「それに、精気の質もおまえによう似とる。これは巫女になった時が楽しみやな」
「では、友加里が目を覚ましたらすぐに契約の儀式を行いましょうか?」
「いや、今日はこのまま帰したろ」
「……え?」
「ククク……明日になればこの娘の方から進んで巫女になりたがるようになる。おまえ、俺と初めてやった時、その後どうやった?」
「あっ!」
「そういうことや……ククク」

 楽しそうなサトル様の笑みに、私も頬も思わず緩む。

 そうか……そうやな、今夜一晩焦らすくらいの方がこの子にはええかもな。
 でも、まずは目が覚めた友加里がどんな顔するか楽しみやわ……。

 友加里の頬をそっと撫でながら、私もサトル様と同じ、楽しそうで意地の悪い笑みを浮かべていたのに違いなかった。

「ん……んん……」

 2時間ほどして、ようやく友加里の目が開いた。

「目が覚めたか、友加里?」
「ん……お姉ちゃん?」
「すごかったなぁ。あんたがあんなにいやらしいなんて、お姉ちゃん知らんかったわ」

 寝惚けている友加里に、わざと思い出させるように言う。

「そんなにサトル様のおちんちんが気持ちよかったんか?」

 途端に、友加里の顔が真っ赤になった。

「……!やっ、な、なに言うとんのやっ!そ、そんなわけあらへんやろ!」
「友加里こそなに言うとんの?あんなに大きな声で気持ちええって言うとったのに」
「あ……う…そ、それは……」
「恥ずかしがらんでええんやで。お姉ちゃんもサトル様のおちんちんでいっぱい気持ちよくしてもろうとるんやから」
「なっ、お姉ちゃん……」
「でもな、それがサトル様の巫女の務めなんやからな。どう?友加里もサトル様の巫女にならへんか」
「な……なに言うとんねん……。アホなこと言わんといてや……」

 口ではそう言いつつも、気まずそうに視線を逸らす様子には強い拒絶は感じない。

 サトル様は仰っていた。
 私と友加里が術で繋がっている間は、快感だけでなくて、サトル様を慕う私の気持ちも友加里に伝わるって。

 だから、一見ムキになって否定していても、それはまだ自分の気持ちを認めることができないで戸惑ってるだけ。
 もう、友加里はサトル様のものになったのも同然なのに。

 それをもう一晩焦らそうなんて、サトル様も殺生やわ……。

「まあええわ。返事は明日でも遅くないさかいに」
「……え?」

 私があっさり引き下がると、肩すかしを食らって友加里は間の抜けた表情で私を見る。

「サトル様の巫女になるんかならへんのか、今夜一晩、よーく考えてからでええ言うとんのや」
「せやから……そんなつもりはないて……」
「無理せんでええよ。答えは明日聞くよって。ほな、ちょっと待っててな」
「え?」
「すぐに着替えるから、今日は一緒に帰ろうな」
「お姉ちゃん?……て、ええええっ!?」

 立ち上がった私が巫女装束を脱ぎ始めたのを見て、友加里が素っ頓狂な声を上げる。

「ちょっ、ちょっとお姉ちゃん、下着は!?」
「あら?下着なんか着ててもご奉仕の邪魔になるだけやないの。だから身につけてへんよ」
「で、でもっ、こんなところで裸になるなんて!」
「え?ここには友加里とサトル様しかおらへんやないの」
「だっ、だからっ!」
「あんた、ホンマに可愛いなぁ。さっき、私がサトル様とセックスしとったの、あんたも見てたやん」
「やっ!なっ……」

 湯気が出そうなほどに真っ赤になって狼狽えている姿に、思わずクスリと笑ってしまう。

 じっとりと汗ばんだ装束を脱いで体の汗を拭き、自分の服を取り上げる。

「お待たせや。ほな、帰ろか」

 着替えを終えると、友加里の肩をぽんと叩いた。

「……お姉ちゃん」
「今日のこと、父さんにも母さんにも内緒やで」
「こんな恥ずかしいこと……言えるわけないやんか……」
「まあっ」

 本当に恥ずかしそうに俯くその仕草が可愛らしくて、私は友加里の頭をぐいっと抱き寄せた。

「では、今日はこれで失礼しますね、サトル様」

 そう言って頭を下げた私に、サトル様はニヤリと笑みを浮かべた。

 友加里に気づかれないように笑みを返すと、その肩を抱いて建物から出て行く。

「お腹空いたやろ。なんか食べて帰ろか?」
「……そんな気分やない」
「なら、甘いものはどう?清華堂の抹茶パフェとか、沢田屋のわらび餅とかもええなぁ」
「もう……そういう問題やないって……」

 気恥ずかしそうにしている友加里の背中を押すように、私たちは家への路を歩いて行った。

 その日の深夜。

 私は、友加里の部屋の前に立ち、そっとドアに耳を当てる。

「……んっ、あふうっ!あっ、ああんっ……」

 ドアの向こうから、友加里の切なそうな喘ぎ声が聞こえてきた。

「んふうんっ!やんっ、こんなことっ、したらあかんのにっ、止まらへん!うっ、あううっ!」

 私の時と同じ……。

 私も、初めてサトル様とした日の夜は体が火照って、自分でするのが止まらなかった。
 その時はまだ、私とサトル様の関係は会社の先輩後輩で、本当のサトル様のことを知ってもいなかったけど。

 それでも、サトル様にはそれだけの力がある。
 サトル様の大きくて逞しいものに貫かれると、誰でもこうなってしまう。

「……足りないっ!こんなのじゃ足りへんよっ!んんんっ、もっと、もっとやっ!あうんっ、んふううううっ!」

 ……この様子なら、明日はきっと大丈夫やね。

 ドアの向こうから漏れてくる友加里の喘ぎ声に安心すると、私は自分の寝室に戻った。

7.契約

 翌日、朝ご飯の時間になっても降りてこない友加里の様子を見に行く。

「……あ、お姉ちゃん」

 ベッドの上で力なく横たわった友加里が、どんよりと曇った視線をこっちに向けた。

 そのパジャマの胸元は大きくはだけて、ズボンもショーツもだらしなくずれている。
 目の下に黒く隈ができているのに、目の周りから頬にかけて、のぼせたように赤く染まっている。

 まさか、眠らずにずっと自分でしとったんかいな……。

 いや、それまで自分でしたこともないくらい純粋な子だから、昨日のは刺激が強すぎたのかもしれない。

 でも、様子を見に来たのが私やのうてお母さんやったらどうするつもりやったんやろか、この子は?

 だらしない自分の姿を隠すそぶりすら見せない友加里を見下ろしながら、そんなことを考える。

「で、どうなんや、友加里?」
「……え?」
「昨日の答えや」
「う……それは……」
「なんや?そんないやらしい格好をして、てっきりサトル様の巫女になるつもりやと思うたのに」
「う……」

 私が意地悪くいうと、友加里はばつが悪そうに布団で体を隠す。

「友加里、はっきりしいや。サトル様の巫女にならへんのか?」
「………………なる」

 容赦なく問い詰めると、友加里は布団で半分顔を隠してもじもじしながら、小さな声で、それでもはっきりとひとつ頷いた。

 まったく、世話の焼ける子やな……。

「そうか。せやったら早う着替えや。お母さんには朝ご飯いらんって私から言っとくさかいに」

 それだけ言うと、私は部屋を出る。

「……お姉ちゃん」

 リビングで待っていると、20分ほどしてから友加里が着替えを終えて降りてきた。
 ボサボサだった髪もちゃんと整えている。

「ほな、行こか?」
「……うん」

「母さん、ちょっと友加里と出かけてくるわ。今日もお昼いらんから」
「わかったわ。行ってらっしゃい」

 お母さんに一声かけると、私は友加里と一緒に家を出る。

* * *

「来たか、沙友里」
「はい、友加里も一緒です」

 神社に着くと、いつものようにサトル様に挨拶をする。

「ほら、友加里もサトル様にご挨拶するんや」 

 私の後ろに隠れるようにしていた友加里をサトル様の前に立たせた。

「今日は何をしにここに来たんか、ちゃんと自分で言いや」

 私がそう言っても、友加里は俯いたままだ。

「なにしとんの、友加里?」
「……う、うん」

 私が催促しても、友加里はしばらくの間そうやってもじもじしていたが、ようやく意を決したように顔を上げた。

「あの……私を……巫女にしてください……」

 消え入りそうな友加里の声が聞こえた。

 後ろに立っている私からはその表情はわからないが、きっと恥ずかしそうに頬を染めているに違いない。

「ククク……いいのか?」
「……体が熱くて、疼いてどうしようもないんです。アソコがじんじん熱くなって、自分ではもう満足できなくて、このままやとおかしくなってしまいそうなんです。昨日のことを思い出すと切のうなって、あなたの大きいのでしか満たされそうにないんです。せやから……」

 友加里の肩が小さく震え、内ももを摺り合わせているのが背後から見ている私にもわかる。

 少し間を置いて、サトル様が口を開いた。

「わかった。巫女にしてやろう」
「あ、ありがとうございます!」

 サトル様の返事にお礼を述べる、友加里の弾んだ声。
 あまりにも嬉しそうな声が妙に可笑しく思える。

 友加里の背後で、クスクスと声を殺して笑っていた私にサトル様が視線を向けた。

「沙友里、準備を」
「はい」

 サトル様に言われて、私は必要なものを取りに行く。

 ……杯と、小刀と……そうや、包帯も用意せんとあかんな。

「サトル様、用意できました」
「ああ、ご苦労」

 私から杯と小刀を受け取ると、何が起こるのかわからないでいる友加里の目の前でサトル様は自分の手首を切った。

「えええっ!?」

 いきなりのことで驚く友加里。

 そんな友加里を尻目に、サトル様は杯に血を溜めていく。

 契約に充分な血が溜まると、私はサトル様の手首に手早く包帯を巻いていく。

「ほなら、巫女になる契約の儀式といこうか。さあ、この血を飲むんや」
「……え?」
「俺の巫女になる者は、俺の血を啜らなあかんのや。これを飲み干して、はじめて俺の巫女になるんや」
「……ということは、お姉ちゃんも?」
「もちろんや」

 目を丸くしてサトル様の血の入った杯と私の顔を見比べている友加里に、私は力強く頷いた。

 それでも、踏ん切りがつかないのかまじまじと杯を見つめている。

「さあ、どうしたんや?俺の巫女になりとうないんか?」
「……あ、いえ。……その……わかりました」

 サトル様に催促されてようやく杯を持ち上げると、友加里はぎゅっと目を瞑ってサトル様の血を飲み干した。

「……う、うう」

 ごくりと飲み込んで、気持ち悪そうに顔を顰める友加里。

 まあ、その瞬間は気色悪いと思うかもしれんなぁ。
 でも、すぐに効いてくるわ。あれは効果抜群なんやから。

 私は、自分がサトル様の血を啜った時のことを思い出していた。
 あの時から私は生まれ変わった。
 サトル様の巫女として。

「うっ、うあああっ!」

 友加里が、短く呻いて体を震わせた。
 一瞬、その目が赤く染まる。

 しかし、それもすぐに元に戻って、ぼうっとサトル様を見つめている。
 その瞳がだんだん潤んでくるのがわかった。

「これで契約完了や、友加里」
「私のこと、友加里って呼んでくれはるんですか?」
「ああ。おまえはもう俺の巫女なんやからな」
「ありがとうございます、サトル様」

 友加里が、ごく自然に、サトル様、と呼ぶ。
 たぶんそれは私がサトル様と呼んでいるのが影響してるんやろうけど。

 熱っぽい視線をサトル様に向ける友加里の頬は紅潮して、唇がふるふると小さく震えていた。

「あの……サトル様……」
「ん?なんや?」
「サトル様の逞しいおちんちん、どうか私にください……」

 そう言うと、友加里はいきなり跪いてサトル様の袴の裾を持ち上げるとその中で屹立していたそれを手にとった。

「どうか、お願いします。……ちゅ、んちゅ、ちゅば」

 ねっとりした視線でサトル様を見上げたかと思うと、友加里は手に持ったおちんちんに舌を伸ばした。

 まあっ、この子ったら私よりもよっぽど積極的やわ!

 友加里の思いがけない行動が可笑しくて、私は思わず吹き出してしまった。

「あふ……ちゅぱ、れろぉ……んふ、あむ……」

 うっとりと目を閉じてサトル様の大きなおちんちんを舐め回している友加里。

 ……これなら安心ね。

 私は、サトル様に目礼をすると、社殿と繋がった渡り廊下を抜けて屋敷に向かった。

 屋敷で巫女装束に着替えた後、私は友加里のための新しい白衣と緋袴を用意して社殿に戻る。

「あっ、んふうううううっ!ああっ、いいっ、いいれすっ、サトル様のおちんちんが奥まで来てるっ!あんっ、あっ、ああんっ!」

 社殿に戻ろうとすると、もう、渡り廊下にまで友加里の甘い声がこぼれてきていた。

「あんっ、はんっ、あっ、いいっ!しゅごく気持ちいいれすっ、サトル様あぁ!あうんっ、あっ、ああーっ!」

 昨日一晩でよほど体が燃え上がっていたのだろう。
 中に入ると、サトル様にしがみついて友加里はものすごい勢いで自分から腰を振っていた。

 サトル様の肩越しに私と目が合った友加里が、蕩けた笑みを浮かべる。

 その表情は私の知っている妹のものではなかった。
 快楽に酔った、鬼の巫女としての淫靡な笑顔。

 きっと、私もサトル様に抱かれている時はあんな笑みを浮かべているんやろう。

「はあああんっ!あうっ、あっ、だめっ、わらしっ、もう力が入らないっ!ううぅ、あはぁっ!」

 友加里の動きが、次第に鈍くなっていっていた。
 その瞳はどんよりと濁り、もうかなりの精気を吸われているのがわかる。

 きっと、それだけ友加里が激しくサトル様を求めていたのに違いなかった。

「ククク……なら、俺が突いてやろう」
「ひぐうううううっ!」

 サトル様が腰を突き上げると、友加里の体がガクンと跳ねる。

 その顔が苦しそうに歪む。
 だが、それもほんの一瞬のことだった。

「ふああっ、しゅごいっ!しゅごくいいれしゅううううっ!う゛う゛っ、ふあああああああっ!」

 すぐにその表情が緩み、振り落とされないように、サトル様の体に巻き付けた手の指をしっかりと組む。

 そして、サトル様に突き上げられるままに、蕩けた表情で体をガクガクと揺すっている。

「あ゛っ、う゛あ゛あ゛っ!あ゛うっ、う゛う゛っ、はあ゛あ゛あ゛っ!」

 もう、友加里はサトル様の動きに合わせて鈍い声を上げるだけになっていた。
 その目は大きく開いているものの、視線は宙を泳いだままなにも映していないように見える。
 ただ、涎を垂らした口元にいやらしい笑みを浮かべていた。

「ククク……いくぞ、友加里」

 たぶん、サトル様のその言葉はもう友加里の耳には届いていない。

「あ゛あ゛あ゛っ!あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ーっ!」

 サトル様が友加里の体を強く抱きしめて一突きすると、絶叫を上げてその体が反り返った。

「ふあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛……あ゛う゛ぅ……う…………」

 ぴくぴくと痙攣していた友加里の体が、糸が切れたようにくたっと崩れ落ちる。

 意識を失った友加里の体を、サトル様が床に降ろす。

「完全に気絶してもうとる……。友加里ったら、巫女に成り立てやからまだ精気もそんなにないのにこんなになるまでして。ホンマ、無茶な子やわ」

 近寄って私が揺すっても、友加里はピクリとも動かない。

「それもあるが、これは熟睡しとるな。ククク……可哀想に、昨日は一睡もしてないんやろうな」
「まあっ!でも、そうさせたのはサトル様ですよ」
「そうやったな。ククク……」

 サトル様とふたり並んで、眠っている友加里を見下ろす。

 これで、友加里とふたりでサトル様にお仕えできるんや。

 私の胸はその喜びでいっぱいになっていた。

 その日、友加里が目を覚ました時にはもう夕方近くになっていた。

「……ん。あ、サトル様、お姉ちゃん」
「やっと目が覚めたんかいな」
「え?ここは?」

 布団の上で寝かされている自分に気づいて、友加里はきょろきょろと辺りを見回す。

「神社の隣のお屋敷の、サトル様の部屋や。あんたが起きへんから、サトル様がここまで運んでくれたんやで」
「えええっ!ご、ごめんなさい、サトル様!」
「ククク……気にするな。このくらいなんでもない」
「もう、あんたがいつまでも寝とるから、そろそろ帰らなあかん時間やないの。せっかく、これを着せてあげようと思うとったのに」
「……お姉ちゃん、それって?」
「ああ。あんたの巫女装束や」
「着る!今すぐ着てみたい!」

 私の持っていた真新しい巫女装束を見て、いきなり友加里はがばっと起き上がった。

「でもなあ、帰るのが遅うなるで」
「もう、お姉ちゃんったらそんな意地悪言わんといてや」

 もちろん、別にすぐに帰らなくてもいいし、遅くなったところでお父さんもお母さんも私の言葉でどうとでも言いくるめることができるんだけど。

 私がわざとからかっているのがわかっているサトル様は、唇を尖らせている友加里をにやにやしながら眺めている。

「なぁ、お願いや、お姉ちゃん。ちょっとでええから」

 私の腕に縋りついて、友加里はだだっ子が甘えるような声で頼み込んでくる。

 こっちを見る子犬のような視線が可笑しくてつい、作っていたしかめ面が崩れてしまった。

「しゃあないな、もう」
「やった!」
「ちゃんと着るのにコツがいるからな、一回でちゃんと覚えるんやで」
「うん!」
「ええか、じゃあ、まずこれを羽織って袖に手を通すんや」
「うんうんっ、それから?」

 躍り上がって喜んでいる友加里に、私が衣装を着付けていく。

「……違う違う。そないにしたら形が崩れてしまうやろ。先にここを留めてからこっちを結ぶんや」
「……うん」

 いつの間にか、友加里はひとつひとつ真剣な顔で頷きながら私の説明を聞いていた。

 この巫女装束は仕立てがきちんとしている分、正しく着ないと襟が弛んだり袴がずれたりしてしてすぐに着崩れてしまう。
 まあ、どのみちこれを着たままでサトル様と体を重ねると崩れてしまうんやけど、普段はちゃんとした格好をしていないとあかん。

「よし、できたで!」

 着付けを終えると、友加里は少し照れくさそうに、でも嬉しそうな表情でサトル様の前に立つ。

「ど、どうですか……サトル様?」
「おう、よう似合うとるで」

 そう言うと、サトル様は友加里の頭をくしゃくしゃっと撫でる。

「ありがとうございます!サトル様!」
「うんうん、見かけだけは一人前の巫女さんやなぁ」
「もうっ、お姉ちゃんったら!」

 ぷいっと唇を尖らせる友加里に、私は真剣に言う。

「でも、ホンマのことやからな。これからホンマの巫女になるために修行せなあかんのやからな」
「……わかっとるよ、それくらい」
「結構大変やで。サトル様も、先輩方も厳しいからな」
「先輩方?」
「ああ。この神社の門前に住んでおられる先代の巫女さん方や。私たちの修行を手伝ってくださるんや。あんたも後で挨拶しとこうな」
「……うん」
「そういうことで、明日から修行を始めるで。学校が終わったらまっすぐここへ来るんや。ひとりで来れるな?」
「うん!」

 力強く頷く友加里を、私は笑顔で抱き寄せる。

 この日、妹の友加里が新たにサトル様の巫女になったのだった。

* * *

 友加里が巫女になって3週間が過ぎて、そろそろ夏休みも近づいてきた頃、私はひとつの決断をした。

「あんな、私のしとる巫女の仕事がな、夜の神事も手伝わなあかんようになったから、今度から神社に住み込まなあかんようになったんや」

 朝ご飯の場で、そう話を切り出した。

「む……まあ、仕事ならしゃあないな。沙友里が決めたことなんやから」

 と、父さんは特に反対もしない。

「うん。まあ、言うても京都の町中やし、歩いて帰れる距離やから」
「そうね。沙友里のことやから心配ないけど。でも、たまにはうちに顔を出すんやで」

 と、母さんもあっけないくらいにあっさりと認めてくれた。

 まあ、それもこれもふたりに埋め込んだままの呪符のおかげやけど。

 ただ、ひとりだけ驚いて目を丸くした後、不満そうに頬を膨らませた人間がいる。
 もちろん、それは友加里だ。

「ちょっと!どういうことなん?」

 朝ご飯の後、サトル様のところに行こうとした私を友加里が呼び止めた。

「なにがよ?」
「お姉ちゃんがサトル様のところに住み込むって話や!」
「ああ。だって、それが本来の巫女の務めやもの。今は、由紀子さんたち先輩方がサトル様の身の回りの世話をしてくれてはるけど、あれは本当は私たち巫女がせなあかんことなんや。私はその務めを果たすだけや」
「だったら私も!」
「あんたはあかん」
「なんでや!?お姉ちゃんばっかりずるいで!」
「だって、あんたは学校行かなあかんやろ」
「サトル様にお仕えするんやったら、私、学校行かんでもええもん!」
「あかん!」

 私のきつい口調に、友加里が驚いて黙る。

「ええか、友加里。あんたももう、サトル様の本当の目的は知っとるやろ?」
「……うん」
「そのためには、あんまり周りに怪しまれたらあかん。学校やめるなんて目立つことしたらあかんのや。わかるやろ?」
「……うん」
「どのみち、あんたも今年で卒業や。そうしたら、それからサトル様のところに住み込めばええことやないか。それまでは今まで通り、学校終わりに毎日サトル様のところに来たらええし、どうせ夏休みになったら、毎日朝から晩までサトル様のところにおれるやろ」
「……うん」

 素直に頷きながら、それでもしょぼんとしている友加里を慰めようと、優しく抱きしめてあげる。

「もう少しの辛抱やから、我慢するんや」
「……うん」
「よしよし、ええ子やな、友加里は。それとな、サトル様にはあとふたり巫女が必要や。私も探すようにするけど、あんたも学校とかでええ子がおらんか見繕っといてくれへんか?」
「うん、わかった」

 そう、サトル様の目的のためにはあとふたりの巫女が要る。

 それに、私も友加里もまだまだ一人前の巫女にはほど遠い。
 もっと修行して、早くサトル様の手助けができるようにならんとあかん。

「ほなら、行ってくるわ。あんたも学校終わったら来るんやろ?」
「当たり前やんか」

 ホンマ、手のかかる子やな。

 まだ、少し拗ねている様子の友加里に私は内心ため息をつく。
 まあ、それがこの子の可愛らしいところでもあるんやけど。

「なら、また後でな」
「いってらっしゃい」

 友加里に見送られて、私は家を出る。

「ふう、朝やいうのにもうこんなに暑いんかいな。そういえば、もう祇園祭の季節やもんな……」

 まだ早朝だというのに、じりじりと照りつける日差しと、地面からの照り返しが肌を焼くようだ。
 よく鍋底に喩えられる京都の夏の暑さは、祇園祭の始まるこの頃から本格的になる。

 でも、今年の夏はいうほど体に堪えない。
 これも、サトル様の巫女になって私の体が普通の人間とは違っていってるからなんやろうか。

「早う行かんと、サトル様が待ってはるで……」

 誰に言うのでもなく呟くと、私は真夏の日差しの中をサトル様の神社へと歩き始めた。

< 続く >

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