オイディプスの食卓 第15話

第15話 姉と弟と妹

「とォッ!」

 夢と現実の狭間を漂う朝のベッドの中、飛翔感あふれる少女のかけ声が頭上に聞こえてきて、うっすらとまぶた開ける。

「どーん!」
「ぐふっ!?」

 そして体が二つに折れる衝撃と重量に呼吸が止まった。
 突如襲いかかってきた女子が、僕の上で「朝だーッ! 起きろーッ!」と奇妙な歌のようなものを発して楽しげに回転している。
 本人は無邪気な幼児のつもりだ。
 だがしかし、現実に乗っかっているのは紛う事なきJC(ちょっぴり発育不良気味ではあるが)の肉体である。
 重いとはいわない。でも、ずっしりくる。それが僕の上でゴロゴロ布団に絡まり、僕の耳たぶを指で摘まんで口を近づけてくる。
 
「起きて、お兄ちゃん、朝だッ! 起きろーッ! キャ~~~ッ!」

 遠慮のない大声だ。子供は自分の声の大きさに配慮などしない。そしてテンションに朝夕の差がない。
 知らない間に僕も年を取ってたんだなって思い知らされた。幼児はただ可愛さばかりじゃなく、それなりにムカつくところもあるんだってことも思い出した。
 ただ、それにしても僕の上に乗っかっているのは、JC(ちょっぴり発育不良気味ではあるが)の肉体である。
 布団越しとはいえ、ほとんど身長の変わらない女子が僕に抱きついている。しかも、昨日まではツンツンのトゲトゲだった年上の義理姉だ。
 恥じらいもなく思いっきり甘える仕草はまるっきり無邪気な妹だけど、その豹変ぶりと柔らかい体の重みには正直興奮する。

「お兄ちゃん、起きてー!」

 僕がもう目を開けてることは知ってるくせに、「くふふ」と笑って口を近づけ声を張り上げる。
 彼女はもう生意気で可愛い僕の妹だ。
 ここまで甘えん坊になるとは思ってなかったけど、案外彼女の「お兄ちゃんが欲しかった」発言は本気で根強い願望だったみたいだ。
 ならばここでお兄ちゃんが取るべき行動は、このイタズラっ子を軽く叱って、優しく抱きしめてやることだろう。

「こら、花純」
「きゃ~~~ッ!」

 トラバサミのように襲いかかった僕の両手足は、あっさり花純さんにかわされた。
 抜群の運動神経で飛び上がった彼女は、もう一度「どーん!」と僕の上に飛びかかってくる。今度はお尻から。

「ぐふっ!? か、花純ッ!」
「きゃははははッ!」

 さすがにキレた。
 幼児時代の花純さんは結構めんどくさい。うるさいし、しつこい。綾子さんもよく頑張ったな。
 ドタドタ廊下に逃げていく彼女を追いかけ、僕も廊下に出たところで優惟姉さんの部屋がガチャリと開いた。

「あんたたち、うるさい!」
「やばい、お姉ちゃん出てきた! お兄ちゃん、逃げて逃げて!」
「な、なんで僕までっ!?」

 気をつけなきゃならない。
 僕はあくまで優しくて頼りがいのある兄貴じゃなきゃダメなんだ。
 花純さんのペースにハマるな。お兄ちゃんらしく堂々と振る舞わないと。
 
「お兄ちゃん、一緒にガッコいこー」
「うんうん、ちょっと待っててね」

 しかしどうにも可愛い妹である。
 彼女におねだりされて断る勇気なんて僕にはない。おもちゃでもバッグでもマンションでも何でも買ってあげたい。妹になら身代を崩されても悔いはない。
 兄妹というより、祖父と孫みたいだけど。

「早く早く~」
「よし、準備できたよ。行こう」
「行こ-!」

 2階で準備してきた僕を、玄関のとこで地団駄踏みながら待っている。
 そんなに僕と一緒に登校したいのかな、まいっちゃう。
 僕の制服の袖を摘まんで、「れっつごー」と可愛く発射の合図に右拳を掲げる彼女に引っ張られ、朝の陽光まぶしい玄関の扉の向こうへと僕らは並んで歩き出す。
 
「…………」

 そして、そのまま花純さんはしばしフリーズした。
 笑顔が曇っていき、自分が握りしめている僕の制服を怪訝に見下ろし、僕の顔を唖然とした表情で見つめてから、キュッと眉を絞る。

「つ、ついてこないでよ、お兄ちゃん」

 小走りで去って行く花純さんの背中を、僕はニヤニヤしながら見送る。
 彼女の幼児時代と女子中学生時代のスイッチは家の玄関だ。約8年の時間をドア一枚で隔てるタイムリーパーとなった彼女は、外では照れ屋で生意気な、僕の年上の妹だ。
 じつに可愛いツンじゃないか。

「なに朝から一人でニヤついてんだ、たそがれ。せっかく命名してやったんだから少しはたそがれれよ」
「あ、おはよう」
「ん」

 自分の席にカバンを置いたところで、いつもの悪友に絡まれる。
 なんだか機嫌がよくないみたいだ。
 
「ぎょう虫でも見つかったの?」
「昭和か。てか中学生が朝からぎょう虫でブルーになってた時代って昭和で合ってんのか? もっと大正くらいか? お前のボケって本当にツッコミづらいな、イライラする」
「え、ごめん。なんかマジで機嫌で悪いんだね」
「まあな……蓮に絡むようなことじゃないのはわかってんだけどな」
「迷惑なんだよ。帰れば?」
「なにそれ、俺の話を聞いてくれる流れじゃないの?」
「ま、聞くくらいなら」
「そっか。いや、まあ恋バナなんて恋愛童貞のお前に言ってもわからないと思うけどさ。まあ、聞くだけ聞いてくれよ」

 いつもの盛り上がらない前ふりから始まり、悪友は休みの間にあったことについて語り出した。
 相変わらず黒川のストーキング未遂の調査は続けているらしく、見つからない彼女を求めて街をさまよっていたそうだ。
 その過程でゲーセンに寄ってカツアゲされたり、他の可愛い子に目移りしたり、コンビニでうちの担任と3年女子がいちゃいちゃしてるの目撃したり、違うゲーセンに寄って同じ人にまたカツアゲされて結局友達になったり、いろんなことがあったそうだ。
 ここまではどうでもいい話だから全部聞き流したけど。
 ようするに、彼はついに黒川を目撃したらしい。

「なんていうか、上手く言えないんだけど変な気配っていうか、匂いっつーのか、よく知ってるはずの光景に、なんか変なの混じってるような気がしたんだよ」

 その変な気配っていうのか匂いっつーのかを追って彼は進んだ。
 そして、普段はあまり通らない路地の向こうで見つけたそうだ。
 黒いレインコートの小さな背中を。

「もうそれだけで射精するかと思ったよ。でも、そこは俺もギリギリ我慢して、後ろから声をかけたんだ。慎重に、ゆっくりとな」

 そしたら、どうなったと思う?
 意地悪なクイズ司会者みたいに、大仰な手振りで悪友は顔をしかめる。

「射精したの?」
「いや、しねえし。そうじゃなくて、黒川は目の前から消えたんだよ。パッて、手品みたいに」

 夢でも見たんじゃないの、と半分からかい気味に言うと悪友は「そうかもしんない」と素直に認めた。

「好きすぎて恋の蜃気楼を見たかもな。俺ってわりと夢見がちなとこあるし自分でも納得できちゃうんだけど、でもたぶん、そうじゃない」

 鼻を指で擦りながら、記憶を確かめるように天井を仰ぎ、独りごちるように言う。

「逃げられたんだよなー、きっと。なんとなく感じるものがあったんだ。消えたんじゃなくて、逃げられたんだって。さっき感じた気配が、糸みたいにギューンと伸びて切れるのを感じたんだ。あの一瞬で、黒川は俺の見えない場所まで走って逃げた。スキル『遁走』って感じで」
「オフランドの“忍者”みたいに?」
「あぁ、それ。それだよ。目の前で、現実に、俺は黒川がおかしなスキルを使うのを見たんだ。いや、実際には視ることも出来なかったけど」

 真面目な顔でおかしなことを言い出す悪友を、僕は半目で見つめる。
 オフランドのスキルを使ったって?
 バカバカしい。そんなのは、あっても僕の催眠術くらいまでだよ。身体能力系のスキルまで身につくなんて、さすがにあり得るわけないじゃないか。あの『Ice-book』とかいうおっさんの世迷い言と同レベルだよ。
 悪友は、ますます自分の妄想にハマっていくように口角泡飛ばす。

「問題は風遁系で見た目の時間を消したのか、土遁系で空間を捻れを作ったのか、なんだよな。くそっ、彼女がどの系統の忍法則を使っているのか、それさえわかれば俺のハウンドシステム・犬噛視(イヌガミ)でトレースできるというのに……ッ」
「そういや、簡単なテストで中二病の進行度がチェックできるサイトがあるんだけど、知ってる?」
「知ってる。俺、Sランク余裕だし」
「僕、Cランクだからあんまり高度な会話にはついていけないから」
「ふっ、雑魚が。いや、そうじゃなくてさ。本当なんだって。上手く言えないけど、なんてかさ、とにかく俺とあの子は何か特別な力と運命で結ばれてるんだよ、きっと。でも俺のほうがそれを使いこなせてないっていうか、あの子の住んでる世界に届いてないっていうもどかしさが――」
「それとこれだけは言わせてもらうけど、僕の初恋は幼稚園のときの橋本先生で、今も思い出すだけで切なくなるような、本物の恋だったから。僕を恋愛童貞だなんて二度と言うな!」
「お、おう、ごめん。なんでそれを今キレるんだよ?」
「いやもうすぐ先生来るし」
「ちっ、もうそんな時間か。じゃあとでな、蓮」

 わけのわからない話を中途半端に切り上げ、悪友は自分の席へ戻っていく。
 恋に悩んだりそのせいで突拍子もない行動に出ちゃったりするのは僕らの年頃ではノーマルなことだと思うけど、おかしな幻覚まで見えるようになるのはさすが彼だなって感じだ。
 そんなことより、妹の花純さんは可愛かった。
 うちに帰ったらまたいっぱい可愛がってあげよう。今では学校よりもネトゲよりも、家族との触れあいが楽しい。
 催眠能力を身につけて以来いろんな変化があったけど、最大なのは僕のこの心境の変化だと思う。
 家が楽しい。家族が好きだ。早くうちに帰りたい。
 放課後にまた探索に誘われたけど、用事があると言って僕は先に帰らせてもらった。

「あァ?」

 キッチンで冷たいミルクを飲んで、2階に行こうと廊下に出たところで、今帰ってきたばかりの花純さんと玄関で鉢合わせる。
 いつも僕を見るときがそうであるように、おっかない顔して眉をしかめた彼女だったけど、すぐに脳内のスイッチが入り、彼女の時間が逆行を始める。
 劇的とも言えるその変化を、僕は偶然目の当たりにした。
 14才の少女から6才の幼女へ。
 10年にも満たない年月だが、それは変貌といっていいくらい人の顔を変える歳月だった。
 思春期と反抗で張り詰めた表情から険しさが消え、無知と無邪気が目元を緩め、安心と甘えが口元を緩める。
 中学の制服を着たいつもの彼女なのに、僕の目にはランドセルを背負った小さな花純さんに見えた。それくらい顔つきまで違ってた。
 そして花純さんは、大きく両手を広げてこっちへ走り出す。

「お兄ちゃ~ん!」

 もちろん僕も、両手を広げて彼女を迎える。

「花純~!」

 廊下で抱き合い、くるくる回る。
 女子の匂いと柔らかさを思いきり堪能する。

「お兄ちゃん、お兄ちゃん! ただいま! 花純、ただいまだよー!」
「おかえり、花純! おかえりー!」
「きゃ~~ッ!」

 抱っこしたまま回してあげると、花純さんは僕の首をきつく抱きしめ、耳元で笑う。
 
「あのね、んとね、お兄ちゃん。花純、今日もガッコでね、いっぱいお勉強してきたんだよ! 一次関数とね、天保の改革とね、あと、背負い投げー! えらい? 花純いい子?」
「えらいえらい。花純は今日もいい子だったねー」
「てへへー。あのね、あとでお兄ちゃんにも背負い投げ教えてあげるね? 花純、すごかったんだよ。せんせーもぶん投げたんだよー!」
「すごいね、2年生は女子も体育で柔道やっちゃうだねー。じゃあ、その話はあとにして、良い子の花純ちゃんはうちに帰ってきたらまず始めに何をする?」
「おやつー!」
「コラコラ、その前にうがいと手洗いでしょ? お外はばい菌でいっぱいなんだから、まずはお手てとお喉をきれいきれいにしようね」
「はーい!」

 ぴょこんと右手を上げて元気よく返事をしてくれる。
 そしてぱたぱたと小走りに洗面所に向かう花純さんを僕は暖かい気持ちで見送る。
 可愛いなあ。愛くるしいなあ。
 じつは僕って妹が欲しかったんだろうなあ、きっと。すごく今の花純さんがしっくり来る。お兄ちゃん気質っていうのか、あるいは妹コンプレックスっていうのがこれなのか。

「あら、二人ともおかえりなさい」

 廊下に出てきた綾子さんが、洗面所に向かう花純さんと僕を見て微笑む。
 ちょうどそこへ近づいてく花純さんは、綾子さんのロングスカートをつかむと、思いっきりそれをめくり上げた。

「ただいま、ママー!」
「きゃあっ!?」

 紫色の下着があらわになった。まぶしい太ももの白と絶妙のコントラストを見せ付けて。

「花純ったら、また! そういうことしちゃダメって言ってるでしょ!」

 綾子さんは真っ赤な顔して叱る。

「へっへー」

 イタズラを成功させた花純さんは小生意気な笑顔を見せて逃げていく。
 どうやら花純さんは小さい頃はかなりのイタズラっ子だったらしい。しかも男子系のイタズラが好きみたいだ。
 僕の知らない親子の歴史を逆行して目撃させていただいた。
 彼女が本当の姉だったら、僕はどんな被害にあってたんだろう。怖いような気もするけど、案外と僕も一緒になって遊んでいたかも。

「もう……蓮に見られちゃったじゃない」

 色っぽい下着を僕に見られたことで、綾子さんは頬を染めて恥ずかしそうにしている。
 その表情にムラムラときた僕は彼女に体を近づける。

「うん、すごくエッチな下着だった」
「あんっ」

 右のお尻を強めに撫でる。ここも彼女の『えっちポイント』だ。
 身をよじって壁に寄りかかる綾子さんに、僕はさらに体を密着させてお尻を撫で続ける。

「ママって本当にエッチだね」
「ち、違うの。私はただ……たまにはこういうのも蓮が喜ぶかなって……あんっ、つねっちゃダメぇ」
「すごく嬉しい。ね、壁に手をついてお尻を突き出して。もっと撫でてあげるから」
「ダメよ、誰かに見られたら……」
「早く。綾子、僕の言うとおりにして」
「んっ……はい、蓮さん」

 呼び捨てにしてやると、綾子さんは小さく体を震わせ、言われたとおりに壁に手をつき、お尻を僕に差し出す。
 素直で可愛いママだ。息子の僕にお尻をくれるなんて。
 スカートをたくし上げ、スケベな下着に包まれたお尻をあらわにしてやる。

「きれいだよ、綾子。最高のお尻」
「やっ、恥ずかしい……うんっ」

 下着越しに撫でると彼女はいっそう敏感に反応し、びく、びくと体を跳ねさせる。
 しっとりとしてきた肌はますます手に張り付いて離れがたくなっていく。

「感じてるの、ママ?」
「ああん、意地悪……」

 耳元に囁くと、そこも敏感に反応させて唇を噛む。
 綾子さんと二人っきり。それだけでもうスケベな空間が出来上がる。
 彼女の体の隅々まで僕は知り、支配している。色気と母性の詰まったこの完璧な肉体を、中学生の息子である僕がモノにしちゃってる。
 もう片方の手で胸を持ち上がるようにして揉む。たっぷりと手に余る重量感がずしりとくる。すごい。ママはやっぱりすごい。
 おっぱいと、すべすべのお尻と、さらさらの下着。僕はもっと彼女に触れたくなっていく。

「ほら、じゃあ、こっちはどうなの?」
「だ、だめ……蓮さん、許してぇ……」

 お尻を撫でながら下へ向かっていく。
 どこを目指しているのかすぐに察した綾子さんは、恥ずかしさと期待に体をくねらせる。
 じょり。
 いつも以上に毛深い感触だった。大人って一日でこんなに生えるのかと驚くくらいの毛密度だった。
 そして固かった。頭蓋骨でも埋まってるのかと思うくらい丸くて固くなっていた。
 ていうか、穴ないじゃん。塞がったの?
 そう思って見下ろすと、そこには綾子さんの股の間にちょこんと正座して、ニコニコと僕を見上げる花純さんがいた。

「わあっ!?」
「きゃあっ!?」

 慌てて飛びのく綾子さんと僕。
 イタズラを成功させた花純さんは嬉しそうに「へっへー」と満面の笑顔だった。

「ねえねえ、二人で何してんの? 花純もなでなでしてー」
「ちょ、花純、何言ってんのよ。ママと蓮君は別になでなでなんて……」
「してたよー! 花純、見たもん。ママがこうやってお兄ちゃんにお尻出してた! ふりふりー! ふりふりー!」

 そういって花純さんは自分でスカートをめくり、壁に手をついてお尻をふりふりした。
 黄色いパンツが小さなお尻をくっきり浮かび上がらせている。健康的でまぶしい丸さ。なんてフレッシュな果実。

「これもこれで良い尻……」
「蓮君も、花純も、おやつがあるからキッチンへ集合してください!」
「はーい!」
「は、はい」

 真っ赤になって叫ぶ綾子さんに、花純さんは大喜びで、僕は恐々としながら従うのだった。

「お兄ちゃん、おいしい?」
「うん。花純もおいしい?」
「おいしー。えへへ、お兄ちゃん、半分ずっこしよー」
「半分ずつって……同じじゃない?」
「半分ずっこー! ねえねえ、しよー!」
「うん、じゃ、こっち花純の。こっちがお兄ちゃんの」
「わーい、あははは」

 綾子さんが買ってきたプリンを、二人で半分ずつ分け合って食べる。ちょっとだけ花純さんの分を大きくしてやったのはお兄ちゃん心だ。
 
「お兄ちゃんのおいしーねー」

 体は僕とたいして違わないのに、中身が幼女になってしまった花純さんは、スプーンを舐めるようにしてゆっくりとおやつを満喫している。
 口の横にカラメルなんか付けちゃって。
 僕がナプキンで拭ってあげると、「んふふ」と嬉しそうに唇を突き出してくる。キスしてやりたいくらい可愛い。
 ていうか、キスしちゃおっかな。
 
「んっ?」

 綾子さんがキッチンにいることを確かめて、チュッとその唇を奪ってやる。
 花純さんは、目をぱちくりさせた。僕は人差し指を口に立て、ナイショだよって合図する。
 キッチンの方を見て、こくんと頷いて、そしてほっぺを赤くして花純さんは満面の笑顔を浮かべた。

「……えへへー」
「二人とも、ミルクのおかわりいる?」
「僕はいいです。花純は?」
「い、いらないよ!」
「そう。花純、散らかさないで食べなさいよ」

 綾子さんはキッチンに戻ってからも、花純さんはモジモジしてなかなかプリンに手をつけないでいた。
 どうしたの、と僕が聞いても真っ赤な顔をして俯くだけ。
 でも、顔を覗き込んでみるとニマニマと彼女は笑っていた。
 花純さんは両手でスプーンをマイクみたいに握りしめ、こっそりと小さな声で僕に言う。
 
「……もっかい、チューしてください」

 思わず僕もニヤけてしまう。
 僕の妹がこんなに可愛いわけも然りだ。

「んっ」
「んっ」

 軽く唇を合わせるだけのキス。
 花純さんは椅子の上でぴょんぴょんお尻を跳ねさせ、「うひひー」とほっぺを両手で挟んで笑い、プリンにスプーンを刺して「あーん」と大きな口でぺろりとした。

「……でひっ」

 時々思い出したようにニヤけながらプリンを頬張る彼女を見ながら、僕もニヤニヤしていたに違いない。

「花純と遊ぶのは宿題と予習が終わってからにしなさい」

 その後、夕食の席で優惟姉さんからごもっともな説教をいただき、さきほどまで花純さんと夢中になっていたゲーム機を封印して僕は姉さんと自室で勉強を始めた。
 まだまだ遊び足りない花純さんはふて腐れ、ちょっと泣きわめいたりもしたけど、「終わったらいっぱい遊んだげる」と約束して何とか納得してもらった。
 いつものように狭い学習机の前で、僕がノートを広げて座り、横に姉さんが自分の参考書を片手に僕の勉強を見てくれている。
 慣れ親しんだ僕たち姉弟の日常風景なんだけど、今日はそこにプラスワンの存在があった。
 
「きゃはははっ」

 ベッドの上で僕のマンガを広げ、花純さんがこっちに足を向けて寝転がっている。
 僕らが勉強している間、おとなしくマンガを読んでると言った花純さんは自分の部屋ではなく僕の部屋でくつろぎ始めていた。
 正直、枕方面に足向けて寝るのは例え可愛い妹でも勘弁して欲しいところなんだけど、僕のマンガ本棚がすぐ届く体勢が良いらしく、せめて枕に足を乗せるなとだけ注意して放っておくことにした。出て行けと言っても泣くかキレるかだけだから。
 でも、困ったことに彼女はミニスカートだった。下着のガードに無頓着な幼女がこっちに足を向けて寝っ転がってるわけである。しかも、枕に足を乗せないように膝を立てて。
 花純さんは、またも黄色いパンツを丸見せにしていた。
 僕の部屋のレイアウトは南側の壁に学習机が向いており、その斜め後ろに南向きにベッドを配置している。つまり振り返ればパンツがある。こないだまで険悪だった義理の姉が、義理の妹になって僕にパンツを見せている。しかも彼女は6才まで幼女化して家族に認識されている最中なので、優惟姉さんもそんな彼女の無防備さをいちいち気にする様子もない。
 JCパンツが何の問題もなく開放中だ。
 だらしなく広がりがちな足は、その股間のステッチも確認できるくらい大胆に、幼い誘惑を黄色信号にして送っていた。
 チラチラと視線を向ける僕に気づいてもいない花純さんは、時折体勢を変える際にはぱっくりと股を開き、内股の腱までくっきり浮かべて僕に少女のか細さを教えてくれる。
 足細いのは知ってたけど、こうしてベッドの上で無防備に投げ出されるのを見ると、本当に花純さんのボディって妖精っぽいなと思う。大人になることのないティンカーベル。女性らしい丸みを獲得する前のサナギのような肢体。綾子さんや睦都美さんの体を知っている僕にとって同年代の花純さんの体はロリコンっぽく感じてしまうけど、でも彼女だって学校の他の女子では勝負にならないくらい抜群の美少女なんだから、下着や太ももに興奮してしまうのは仕方ないと思う。

「ひゃははははっ」

 勉強なんかに集中できるわけがないんだ。
 さっきキスまでした可愛い妹が、兄にパンツ見せてくれてるっていうのに。
 
「蓮……あなた」
「ッ!?」

 隣の優惟姉さんが、ジトっとした目で僕を見ていた。
 参考書を口にあてて、あきれたような言い方で。

「どうして勉強に集中しないのよ、もう」

 その冷たい目は僕がいつも恐れている目なんだけど、凝視しているのが僕の股間だと思うとなぜか嬉しいような気がした。
 しかしこの感情を掘り下げて考えるのは危険だと思った僕は両手で膨らんだ股間を隠し、「ごめんなさい」と謝る。

「仕方ない子ね」

 はぁ、とため息をついて優惟姉さんは参考書を置く。
 ちなみに姉弟をやってた実績が花純さんとは段違いの優惟姉さんのことなので、僕は彼女が本気で怒っているかどうかは態度でなんとなくわかる。
 優惟姉さんは、そんなに怒ってない。振り返って、寝そべってる花純さんに優しく声をかける。
 
「花純-。ごめん、ちょっと出てってもらっていい?」
「えー、なんで?」

 がばっと上体を起こし、花純さんは不機嫌そうに唇を尖らせる。
 
「お姉ちゃんとお兄ちゃん、ちょっと大事なお話できたの。終わったらすぐ呼ぶから。ね?」
「やだやだー!」
「こら、お布団の上でバタバタしないの。いいでしょ、ちょっっとだから。マンガ持ってっていいわよ」
「……むー……お姉ちゃんたちのお話が終わったら、花純ここでマンガ読むからね」
「うんうん。だからちょっと出てて」
「はーい」

 しぶしぶと花純さんは自分の部屋に戻っていく。
 そして、優惟姉さんはもう一度「はぁ」とため息をつくと、ちょっと椅子を離して僕に向かって座り直す。

「じゃあ、出しなさい」
「え?」
「その、だから、それをよ。我慢できないんでしょ? お姉ちゃんがフェラチオしてあげるから、花純が待ちきれなくなる前に済ませるわよ」

 髪をいじりながら、優惟姉さんは恥ずかしそうに早口で言う。
 家族間でオナニーの手伝いをするのは当然のこと。これまでも何度も勉強中に優惟姉さんには手伝ってもらったり手伝ってあげたりしている。
 子供の花純さんを追い出して、今から大人の予習が始まるってわけか。
 ますます固くなっていく股間を大急ぎで開放する。元気よく跳ねるそれを見て、優惟姉さんは赤い顔をしかめる。

「もう、どうしていつも勉強中にそんなになっちゃうのよ」

 それは実際にこれだけの美人姉妹に挟まれて暮らしている男じゃないと、説明しても理解してもらえないと思う。
 ましてや僕は義母や家政婦さんのクオリティまでエロゲレベルで有名な三沢さん家の長男だぞ。学校や街を歩くよりも、家の中で普通に生活している方が断然ネタに充実している。自室で勉強中だからといって禁欲できるはずもない。
 まあ、もっとも普通に暮らしているわけじゃないけど。
 催眠術でもなければ、1コ上の姉が幼女になってパンツチラチラしたり、5コ上の姉が「仕方ないからフェラしてあげる」なんて言うはずがない。家族が美人揃いで、しかも本人たちが気づかないうちに言いなりにしてしまっているからこそ出来る生活だった。
 僕の生活を体験できる人間は、僕しかいない。夢の家庭ハーレムなんだ。
 
「ちゅ、れろ……蓮、ここ、ちゃんとお風呂で丁寧に洗ってる?」
「う、うん、洗ってるよ」
「清潔にしてよ……んっ、お姉ちゃんが口つけるとこなんだから……んっ、ちゅぷっ、ちゅぷっ」

 優惟姉さんの頭が僕の股間に沈み、ゆっくりと上下運動を開始する。
 ここは『お姉ちゃんが口つけるとこ』なんだって。普段真面目な優惟姉さんにそんなこと言われたら余計に興奮する。
 
「んむっ、ふっ、んんっ、どんどん、おっきくなってくね。んぶっ、ちゅっ、ちゅぶっ」

 姉さんにオチンチンをしゃぶってもらえる幸せな時間。
 花純さんのパンツも吹き飛ぶような実感のある刺激。
 さらさらと流れる長い髪を、片手で束ねて無造作によける。学校へ行くときはいつも後ろできつく束ねるだけの黒髪が、今は女性の色気を纏って姉さんの横顔を覆う。

「姉さん……あっ」

 僕はその髪に指を埋めて、上下する小さな頭を撫でる。
 姉さんは速度を上げて、もっともっと気持ちよくなっていいよと、僕のオチンチンの根元をキュッと握りしめる。
 優しい愛撫に身を任せて甘える。女の子みたいな声が出ちゃって恥ずかしいけど、優惟姉さんはますます気持ちの良い場所を責めてきて僕を喘がせる。
 体の下に手を潜らせて、優惟姉さんの胸を揉んだ。
 
「んっ……」

 姉さんは一瞬だけ身をよじったけど、僕の好きにさせてくれた。
 こないだのクンニは僕ら姉弟の距離を確実に近づけている。姉さんは僕に体を触れられることに、さほど抵抗を感じなくなってるみたい。
 僕におっぱいを触られながら、忙しなく頭を上下させて、じゅぶじゅぶと唾液の音を立てる姉さん。もうフェラチオにも慣れたみたいで、スムーズに出し入れをして舌も絡めてくれている。
 気持ちいい。優惟姉さんのフェラは上手だ。
 姉さんのブラ越しに乳首を責める。「んんっ」と少し嫌がるように体を捻るけど、しつこく続けるうちに諦めたのか、それとも受け入れてくれたのか、僕のしたいようにさせてくれる。
 
「んっ、ふぅんっ、んっ、あむっ、あっ、じゅぶっ、ちゅぶっ、んんっ」

 それどころか、吐息がどんどん甘く切なくなっていく。
 姉さんの背中はすでに白いブラ紐が見えるまでまくり上がっていて、時々ピクンと緊張する肌をあらわにしている。姉さんのおっぱいはすごく弾力があって、揉み応えがあるんだ。
 また優惟姉さんとお風呂に入りたいな。そして、今度は僕がこの体をすみずみまで綺麗に舐めてあげよう。
 目の前で半裸に近い格好で僕に奉仕する姉と、その姉と一緒に入浴してイタズラする妄想で僕はもうじきイク。
 けど、そのときガチャリとドアノブが回る固い音が――
 
「お姉ちゃん、まだー?」
「きゃあっ!?」

 思わず甲高い悲鳴を上げた。僕が。
 僕のを咥えている最中だった姉さんは「もぐっ!?」とくぐもった声を出して顔を上げ、トレーナーを慌てて戻す。僕も急いで背中を向けるけど、半脱ぎのスウェットパンツは上げるヒマもなく、出しっ放しの状態だった。

「……なにしてんの?」
「な、ななななんでもないのよ、花純! お兄ちゃんが消しゴム落としちゃったっていうから。でも、もう拾ったわ、ホラ!」
「ふーん。じゃ、もういいよね? マンガの続き見してー!」

 そういって、にこやかに花純さんはベッドにダイブする。
 本棚に手を突っ込んでマンガの続きを取り出し、めくれ上がってスカートからお尻を見せて読書を始める。
 
「か……花純、あのね、まだお姉ちゃんたちのお話は終わってないから」
「ウソだもーん! 花純、ドアに耳当てて聞いてたもん。お姉ちゃんもお兄ちゃんも、ウンウンアッアッってラップしてただけで、お話なんかしてなかったじゃん」
「き、聞いてたの!?」
「ちょ、違うわよ、それ! ラップじゃないの!」
「じゃあ何?」
「何って……ラ、ラップよ?」
「ほらやっぱり。ウンウン、アッアッだもんね! でも花純、マンガ読んでるだけだもん。邪魔しないもん。だから居ていいよね、お兄ちゃん!」
「え、あ、あー、う、うん」
「へへっ」

 ごろり。
 マンガを持ったまま花純さんは仰向けになり、パンツを全開にした。
 僕と優惟姉さんは顔を見合わせ、はぁ、とため息をついて苦笑する。
 いや、苦笑はいいんだけど、その前にスウェット上げなきゃ。
 マンガに夢中になっている花純さんと彼女の黄色いパンツを確認し、僕はそろそろとお尻を上げる。
 でも、その前に優惟姉さんの指が僕のオチンチンに絡みついてきた。

(ッ!?)
(しーっ)

 人差し指を口にあて、優惟姉さんはチラリと花純さんの方へ視線を向ける。
 
「きゃははっ」

 マンガに夢中になっている彼女は、僕がオチンチンを丸出しにしていることに気づいてないし、もちろんそれを優惟姉さんが左手で握っていることも、僕たちの背中と椅子の背もたれが死角を作って隠している。
 でも、よく注意して見ればすぐバレるだろう。

(声、我慢して)

 しゅっ、しゅっ。
 緩やかに優惟姉さんの指が上下する。ぞくぞくと快感が腰を突き抜け、体が震える。
 でも、声は我慢した。姉さんは「えらいね」っていう優しい目で微笑み、同じペースの指運動を続ける。
 なめらかに、そして快楽を絞り上げるように。

「この問題、解いてみて」

 そういってノートの片隅にさらさらとペンを走らせる。
 
『声を出さなかったらばれないよ』
 
 密着した肌から良い匂いがした。僕はコクコクと頷き、唇を噛みしめる。
 優惟姉さんは目を細めて、指の速度を上げてきた。思わず口が開いてしまうけど、なんとか声は我慢した。優惟姉さんは僕の先端を指で素早く擦り、くりくりと尿道口をほじるようにイジった。
 
「ッッッ」

 必死で声が漏れるのを我慢する。
 優惟姉さんはそんな僕の反応を注視している。じっと、目の周りを赤くして。僕が図書館で優惟姉さんの表情を楽しんでたときみたいに。
 
『気持ちいい?』
 
 ノートにきれいな文字で走り書きされる。
 姉さんの囁き声が聞こえてくるみたいで、僕は夢中になってうなづく。
 
『もっと強くして大丈夫?』
 
 うなづいた。姉さんに身を委ねて、何度もうなづいた。
 キュッ。
 カリ首の下を指でつままれる。くりくりとそこをこね回され、喉の奥で悲鳴を殺す。
 しゅっ、しゅっ、しゅっ、しゅっ。
 輪になった指が直径を狭めて、僕のペニスを擦り上げる。絞るようなきつさで、そして僕好みのリズムで。
 
『声出さないで』
 
 歯を噛みしめて、ビクビクと僕を震わせる快楽の波を口内に留める。
 それでも、どうしても荒くなっていく呼吸を堪えるのは難しい。フンフンと鼻を鳴らしながら、気を抜けない快感に負けないように机にしがみつく。
 
『蓮の顔かわいい』
 
 ほっぺが熱くなるのを感じた。
 横を見ると、優惟姉さんも頬を赤くしていた。うっとりと目を細めて、僕のオチンチンを握る手に力を込めてきた。
 ぎゅっ、ぎゅっ。
 僕を抱きしめるみたいに握る。そして優しくオチンチン全体をさすった後、すばやい動きで上下に揺さぶる。
 その快楽はもちろんだけど、机に肘をついて、頬杖にして僕を見守る姉さんの熱っぽい視線が僕を骨抜きにした。
 姉さんに見つめられながら姉さんの手コキに翻弄される。かかとをつけてられなくて、膝がビクンビクンと跳ねる。下唇を痛いほど噛みしめて、僕は右手を姉さんの方へ伸ばす。

(ッ!?)
 
 太ももから股間へ、スルリと潜り込んでいく。
 姉さんはガタンと膝を机にぶつけ、そして慌てて唇を噛み、内股に力を入れた。
 でも、僕の手はすでに姉さんの股間に触れている。ソフトジーンズの固いファスナー越しでも、彼女のここが熱くなってるのがわかった。
 押し込むように指をめり込ませる。「んんっ」と小さな声を出して、優惟姉さんは慌てて口を塞いだ。
 つんつん。
 ペンで僕の手をつつく。でも、そんな可愛い抗議じゃ僕は引っ込まないよ。ていうより余計に萌えるよ。
 指を折り曲げてぐりぐりする。姉さんが顔を上げる。白くなるくらい噛みしめた唇。耳まで真っ赤になってるのが可愛い。
 ぐり、ぐり。下から突き上げるように指でえぐる。ジーンズの上からだから強いくらいでもたぶん大丈夫。姉さんも痛がってる顔じゃない。こないだのクンニでエロ顔は確認済みだ。これは恥ずかしさと気持ちいいの混ざったときの表情だ。
 もっともっと仕返ししてやれ。僕は姉さんの入り口(おそらく)に押し当てた指をバイブさせて責める。
 ギュッ。
 姉さんに亀頭をつねられ、飛び上がりそうになった。
 そのままナデナデされて刺激が静まってきたところで、また手コキが再開される。
 姉さんの左手は僕のオチンチンに、僕の右手は姉さんのアソコに。
 僕はジーンズの上からゆっくりと指でほじくるように撫でる。
 姉さんは根元から先端へ、僕の先走った液体をなじませるように手のひら全体でさすってくれる。
 イタズラ抜きで、ガチの愛撫だ。僕らはお互いを気持ちよくしてあげるために、工夫して刺激し合う。

(んっ……はぁ……蓮……)

 自然と顔が近づいて、互いを支えるように寄り添う。快楽に震える姉さんのほっぺたが、胸元から立ち上る女性の匂いが、僕をますます昂ぶらせる。
 
「んははははっ」

 花純さんは何も気づかず、無邪気にマンガで笑ってる。
 いつ見つかるかもわからないと危険な状態で、僕らは快楽を加速させる。
 あとで冷静になったとき、なんてことしちゃったんだと、きっと優惟姉さんは自分を恥じるだろう。
 でも僕は、この異常なシチュエーションに興奮していた。
 義妹の前でオチンチンを丸出しにして手淫に没頭する。僕を愛撫してくれているのは、僕のオナニーを手伝ってあげたい実の姉。そしてパンツ丸見せでマンガ読んでる義妹は、女子中学生でありながら中身は6才の幼女。しかも読んでるマンガは『グラップラー刃○牙』だ。
 花純さんの笑いのツボも含めて、この状況は普通じゃない。全然催眠術で悪さしたわけじゃないのに、これまで僕がしてきた催眠暗示や行為が、自然に不自然なシチュエーションを作り上げている。
 頭の奥で麻薬がドバドバ溢れている。おでこを擦り合わせるようにして優惟姉さんの方を向く。彼女の瞳もとっくに蕩けていた。緩く開いた唇から濡れた舌が覗いていた。
 僕たちは濡れた瞳で見つめ合う。言葉や喘ぎ声に出来ない互いの快楽が、最高のものであることを表情で伝え合う。
 そしてその表情こそが、僕らの最高のおかずだった。
 美人だきれいだとみんなに言われる姉さんの顔が、僕にアソコにいじられてトロットロに溶けている。僕の顔を熱心に見つめて、そして切なそうに瞳を濡らしている。
 花純さんがいなかったら、僕らはキスしてしまったかもしれない。それぐらい近い距離で、互いの息が唇に触れる距離で見つめ合い、性器をいじり合う。

(姉、さん……ッ)

 限界が近いことを瞬きで伝える。
 姉さんの瞳が、一瞬、遠くを見るように蕩けた。そして、机の上のティッシュを素早く数枚抜き取った。
 先端に押し当てられたティッシュの塊に、ぎりぎりのタイミングで僕は射精する。
 どく、どく……どく、どく……。
 自分でも驚くくらいの量が出てくる。姉さんはティッシュを掴んだ手でそれを受け止めてくれる。そして、もう片方の手で押し出すように僕のオチンチンをしごいてくれていた。
 幸福感に包まれた絶頂。そしてそこから全身の快楽が抜け落ちていく。心地よい脱力感が僕の体を沈めていく。
 姉さんはキュッ、キュッとオチンチンを絞り、最後の一滴まで出させてくれた。僕はその姉さんの気遣いに心ゆくまで甘え、体を投げ出していた。
 全て姉さん任せ。幸福そのものの射精だった。
 もう出ないところまで絞ってから優惟姉さんはティッシュを丸める。じわりと染み出す僕の大量の精液。青臭い匂い。
 優惟姉さんはコツンと僕に頭をぶつける。
 
 『たくさん出たね』
 
 ノートの片隅に書かれた落書きに、僕は苦笑する。
 優惟姉さんは、ティッシュを机の下のゴミ箱に放って投げた。
 
「……くんくん」

 そのとき、マンガに夢中だったはずの花純さんが鼻を鳴らした。
 僕はとっさに思い出す。僕が催眠術で彼女に与えた『精液はプレゼント』という暗示を。そしてそれは、幼女化した今も取り消してはいないことを。

「せーしだ!」
「きゃあっ!?」

 ガバっと体を起こした花純さんに、優惟姉さんは悲鳴を上げる。僕は急いでスウェットパンツを引き上げる。
 花純さんは表情を輝かせ、目をキラキラさせていた。
 
「お兄ちゃん、せーし? 花純にせーしくれるの!?」

 ベッドの上を這って近づいてくる。
 無垢なる純真な瞳で、せーしせーしと連呼しながら。

「ちょ、花純、何言ってるのよ。せ、せせ……って、何のことよ! 今こっち来ちゃダメ!」

 優惟姉さんは真っ赤な顔をしてオロオロしている。
 花純さんの前を塞ぐように広げた手のひらに、その花純さんが鼻を近づけ、スンスンと匂いを嗅ぐ。

「お姉ちゃん、せーしくさい」
「え、ええええっ!?」
「ずるいずるい! せーしは花純の! 花純にもお兄ちゃんのせーしちょうだい!」
「ちょ、なんで……なんで花純が精子のこと知ってるのよ、蓮!」
「うえ、いや、ぼ、ぼぼ僕はその」
「せーしせーし! せーしちょうだい、お姉ちゃん!」
「どういうことなのよ、これ! 蓮、あなた花純に何を教えてるのよ!」
「ちょっと待って、落ち着いて話を整理させて。今、様々なファクターが予想外の連結を起こしていて――いや、とりあえず謝るだけは謝るけど! ごめんなさい!」
「スンスン……スンスン……そこだなー!」
「やっ、何!? 何してるの、花純!」

 僕が優惟姉さんに鬼の睨みをされている間に、その姉さんの匂いを嗅ぎ回っていた花純が精子臭の発生源を突き止め、机の下に潜っていく。
 そして、さっき捨てた湿ったティッシュを右手に帰ってきて、重要アイテム入手のSEが鳴り響きそうなくらいの満面の笑顔でそれを掲げる。
 
「いえーい! せーし、げっとだよー!」
「ダ、ダメよ花純! そんなのばっちいから捨てなさい!」

 なんていうか、ホント自分でも不思議だなって思うんだけど、一人でしたときはすぐにティッシュと一緒にゴミ箱行きの精液なのに、女子に「ばっちい」扱いされると胸にチクッとくるのは何でなんだろうね?

「やだやだっ。これ花純が拾ったんだもん、花純のせーしだもん!」
「捨てなさい! それはあなたみたいな子供が持つものじゃないの。ゴミ箱に捨てて、ばっちいばっちいなさい!」
「意味わかんない、お姉ちゃん。お兄ちゃんのせーしは花純のだもん。花純のせーしだもん。花純のコレクションだもん。いっぱい集めて全員に名前付けて遊んでるんだもん!」
「蓮……あなた花純に何を教えたの? まさか、こんな小さい子に……」
「ち、違う違う! 何もしてない! これには複雑な理由が――」
「蓮、あなたはこっちに座って黙ってなさい!」
「はい!」
「花純! それはゴミ箱行きよ。捨てなさい!」
「やだー!」
「やだじゃない! いい、花純? 蓮に何を教わったのか知らないけど、それはあなたみたいな子どもが触るようなものじゃないの。良い子だからこっちにちょうだい?」
「あげない! これは花純のなの。お兄ちゃんが花純にせーしくれたの! だから花純、もう子どもじゃないもん。花純はアレだもん。色を知る年齢(とし)だもん!」
「い、色を知るって……蓮、あなた本当に何を教えてるのよ!」
「そっちは本当に僕じゃないよ!?」

 グラップラー刃○牙の父、勇○次郎の名セリフだった。
 よりによって名言に定評のあるイカれたマンガだ。とても子どもに読ませるものじゃない。ていうか、ガッツあふれるセクロスシーンもあることを忘れていた。
 幼い女の子にどんな悪影響を与えるのか、僕はもっと考えるべきだった。
 
「お兄ちゃんのせーしを目指して何が悪い! 女として生まれ妹として生まれたからには、誰だって一度はお兄ちゃんのせーしを志すッ! お兄ちゃんのせーしなど一瞬たりとも夢見たことがないッ、そんな妹は一人としてこの世に存在しないッ! それが心理なの!」

 しかもこのアレンジ力である。
 僕はただ唇を噛んで赤面するしかなかった。
 優惟姉さんは、精液ティッシュを掲げて独特の妹論を語る妹に唖然としている。
 もちろん意味がわかっていってるわけじゃないだろう。きっとマンガのセリフを借りることで年上の姉さんに対抗しようと必死になっているだけに違いない。その痛々しい妹を僕はどうすることもできなかった。
 激怒する優惟姉さん。花純も興奮してわけがわからなくなっている。
 そして女同士のバトルに挟まれたとき、僕はどうしようもないチキンになる。

「花純のバカ! あなた、自分で何を言ってるかわかってないんでしょ。いい? 女の子が精子とか言っちゃダメ。そんなものも持っちゃダメ。お姉ちゃんの言うとおりにしないと良い子になれないわよ。それでもいいの!?」
「禁欲の果てにたどりつく境地など高が知れたものじゃん! だったら喰らうの。せーしこそが至上のコミュニケーションなの。花純の行動のベクトルは全てせーしに向けられているの!」

 緊迫する空気。微妙なところで成り立っている会話。僕はこの闘いの成り行きを見守っているしかなかった。
 催眠術で止めればいいんじゃないかって?
 なにそれ、このギリギリの勝負に水を差してまで鳴らさなければならないコインなんてあるの?
 僕はそんな無粋で危険なマネはしない。思いっきり闘ってきな、地上最高の姉妹喧嘩だ。
 
「何をわけのわからないことばっかり……いいかげんにしなよ、花純。お姉ちゃん、本気で怒っていいの?」

 出た、あの視線。
 僕が幼年期から幾度となく泣かされてきた優惟姉さんの一番怖い顔。『あなたぐらいなら一分以内に殺(や)れるのよ』と言わんばかりのあの目だ。
 遙か高みから見下ろすライオンのように、どうやって仕留めるかを半ば楽しみながら算段する優惟姉さんの前では、花純さんといえでも尻尾を丸めて震えるしかない。それこそ巨大カマキリとリアルシャドーするかのように。
 
「あぅぅぅ~」
「花純。それをお姉ちゃんによこしなさい。5秒以内に渡さないとぶつわよ。いーち、にーい……」
「うぅぅぅ~……」

 精液ティッシュを両手に握って身を縮こまらせる花純さん。
 もういい、もう頑張らないで。
 なんか今すごい大問題になっちゃってて言いづらいけど、僕は精液なんていつでも出せるんだよ? 使い捨てにしてるんだよ?
 でも、頭の中が恐怖と精子欲でいっぱいになっちゃてる花純さんは、とうとう感情を爆発させてしまった。しかも、斜め上に。
 
「た、たかだかお兄ちゃんのせーしを貰うという単純な行為にぶつだの怒るだの5秒以内だのと――上等な料理にせーしをブチまけるがごとき思想!! お、お姉ちゃんは踏み込んじゃならねぇ領域に踏み込んだよ! ワリバシと紙袋だよ! 花純はこのせーしを守ることを何よりも優先します。SEXより! 食事より! 水より! 酸素より! SEXより!」

 キレた。
 優惟姉さんの何かが音を立ててキレた。
 というか、わけのわからないマンガ台詞の引用はもう仕方ないにしても、『SEX』はまずいよ花純さん。かなりタブーだよ。しかも何でそこだけ2回も復唱しちゃったのさ、しかも妙に美しい発音で。ECCでもやってたのかい。
 ひやりと冷たいものを感じる。優惟姉さんが僕を上から見下ろしていた。
 違う。僕が教えたんじゃないよ。マンガのせいなんだ。普通の格闘マンガのつもりで買い始めたあのマンガの作者が悪いんだ。

「……バッカみたい」

 僕に向かって吐き捨てるようにつぶやき。
 そして、花純さんをギロっと睨んで優惟姉さんは叫ぶ。

「花純ィイイッ、私が相手だ!」

 いや、優惟姉さんもバキ読んでたのかよ。
 優惟姉さんと花純さんが互いの体を掴んで揉み合う。一つのティッシュを巡って、JKとJCのとっくみ合いである。なんなんだろう、これ。どこの国の風習なんだろう。
 両者の闘いは意外にも均衡している。優惟姉さんが体格で勝るとはいえ、花純さんも運動神経バツグンのスポーツ少女だ。上手い具合に怒り心頭の優惟姉さんをいなしている。優惟姉さんだって決して運動音痴ではないのだが、体の捌き方が、素人目で見ても花純さんのが優れていた。
 しかも今日聞いた学校の話によると確か――
 
「姉さん、気をつけて! 花純は背負い投げの達人だ!」
「ッ!?」

 僕が声をかけるのと花純さんの体が優惟姉さんの懐に潜り込むのは同時だった。
 重心を下げてつま先でカーペットを捉える優惟姉さん。ギリギリだった。あのままもし花純さんが背負い投げをかましていたら、優惟姉さんは床に叩きつけられていただろう。
 だが、花純さんの動きは速かった。再び体勢を入れ替えたと思ったら、今度は自分の体をぶつけて姉さんを突き飛ばし、小内刈りを決めていた。
 最初からそうと決めていた動きだ。背負いをフェイントで見せることは計算の上だったんだ。とても催眠後退している6才児の発想とは思えない。というか女子中学生でもやることじゃない。なんてこった、先生をぶん投げたというのは本当だったのか。格闘技の天才だったのおか。
 優惟姉さんの後ろはベッド。ドシンとスプリングを響かせて倒れた彼女は無傷だった。
 無傷ゆえに――完璧な敗北感を与える勝利だ。

「今日体育で柔道あった分、コンマ1ミリだけ花純が上かな。お姉ちゃんにはこれを渡さないよ。この勝負、勝ったのは花純!」

 高々とトロフィーのように掲げられるティッシュ。くどいようだけど、あれは精液だ。この人たちは僕の精液ティッシュを取り合ってケンカしている。
 優惟姉さんはベッドに倒れたまま、フッと優しく微笑んだ。勝ち誇る妹をいたわるような目で。

「花純は強いのね。びっくりしちゃったわ。でも……お姉ちゃんがこのくらいで負けるわけないでしょ!」

 そう、優惟姉さんをただの優等生とあなどるのは間違いだ。
 この人はものすごい負けず嫌いだ。誰にも負けたくないと努力しているうちに優等生になった人なんだ。すました顔をしてるけど、誰よりも勝利に貪欲で、そこだけは父さん譲りなんだ。
 子供の頃はケンカでも負けたことがない。昔、僕が近所の年上の子たちにイジメられたと知ったときだって、優惟姉さんはホーキとか振り回してボロボロになりながらもイジメっ子たちを撃退し、なおかつその汚れた格好のまま真っ先に学校へ駆け込み、『集団で女の子に暴力をふるった』という既成事実を相手の親が騒ぎ出すより早く作り上げ、世論すら味方につけて圧勝するところを僕は見たことがあるんだ。
 勝つためならどんな泥臭い戦い方でもする。そういうとこが面倒くさいから、僕は姉さんを怒らせたときはすぐに「ごめんなさい」することにしている。
 そう、僕に反抗期なんてなかった。姉が面倒くさい人だったせいで。
 ちなみに僕があのときイジメられた理由は、「お前の姉ちゃんのパンツ持ってきてくれよ」という、性に目覚めかけた男子たちの歪んだ恋心から姉さんを守ろうとしたせいだということは、未だに告白できずにいる。
 それを知ったら、姉さんが彼らにどんな復讐をするか想像するだけで恐ろしいからだ。

「えいっ!」
「やぁんっ!?」

 カニ挟みで花純さんの細い体を捕らえる。
 そしてそのままベッドに引きずり込んでティッシュの奪い合いでもつれていく。

「それを離しなさい、花純! こちょこちょこちょ」
「やぁ! やっ、あははは、お姉ちゃん、ずるい! やめて-!」

 黄色い声の揉み合いだ。
 花純さんは短いスカートからパンツをチラチラと。
 優惟姉さんもジーンズの腰や背中の白い肌をチラチラと。
 こういうケンカとか、くすぐりっこみたいなこと、僕と優惟姉さんとはもう全然しなくなったから新鮮だった。
 なんだか、ずっと見ていたいような不思議な感じ。
 これが、姉妹なんだなぁ……。

「もう、やだ! これは花純のなの! 絶対、花純のなの! えーい、ぱくっ!」
「あっ!?」

 と、僕が見とれている間に、もつれ合いから立ち上がった花純がとうとう業を煮やして幼児の必殺技を出した。
 欲しいものはとりあえず口に入れるってやつ。
 僕の精液ティッシュを取られたくないあまりに、彼女はそれを口の中に入れてしまった。

「ちょ、ちょっとやめなさい、花純! それはダメ、すごくダメよ!」
「んー! んー!」
「早く出しなさいっ。ぺっ、しなさい。病気になるわよ!」

 な、ならないよ!
 
「んーッ! んーッ!」

 花純は涙目になり、それでもイヤイヤをして口を閉ざす。
 優惟姉さんはなんとか口をこじ開けようとまたもつれ合いになる。
 でも、やがて我慢できなくなった花純が口を開けて、大量のよだれと一緒にティッシュの塊を吐き出した。

「うえええ~」
「きゃっ、汚い!」

 さすがにそれには同意する。
 すごい汚いな、それ。

「ふええぇぇぇっ、せーし、まずい~」
「ほら、ごらんなさい! バカじゃないの、もう!」
「わーん! お兄ちゃ~んっ、お姉ちゃんがバカっていう~」

 無残に半溶けしたティッシュを、優惟姉さんは嫌な顔しながら厳重に包んでゴミ箱の底に捨てる。
 僕はえぐえぐ泣いてる花純の背中を撫でてやりながら、この6才児、とんでもないエロシーンクラッシャーだなって考える。
 優惟姉さんには、この一連のドタバタを催眠術で忘れさせた。
 そして花純さんは、催眠術で8才に設定を上げることにした。
 
「勝負には自滅したけど勝利は花純のものだったよ。たかだか1時間余りで6才児を8才児にかえる、勝利とはそういうものだ。花純、今から君は8才」
「わーい!」

 これで少しは彼女の行動も落ち着くだろうか。
 ひょっとしたら僕は、子育てを甘くみていたかもしれない。
 なんだかひどく疲れちゃったよ。

+++ かすみのにっき +++

○月○日

 かすみ 8さい
 今日はおにいちゃんのおへやでマンガをよみました
 そしたらかすみは、おにいちゃんのせーしをはっけんしました
 おにいちゃんのせーしはむかしからかすみの大すきなやつで、だいたい2ねんくらいまえからすきでした
 でも、おねいちゃんが一つしかないそれをじぶんによこせと言いだして、かすみとケンカになりました
 かすみはたいくでならった、せおいなげからのコーチがりでおねいちゃんをたおしました
 でもおねいちゃんはねわざがとくいだったので、かすみはまきこまれてしまいました
 せーしはしにました
 かすみはかなしかったです
 なのでいまから、おにいちゃんになぐさめてもらおうとおもいます
 とつげきー!

++++++++++++++++++

< 続く >

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