千紗と未来 前編

前編

※過去に『催眠屋☆キャットハウス』にて同じ作品を投稿しています。『催眠屋☆キャットハウス』の管理人様に許可をいただいてこちらのサイトに投稿させていただきました。

(Chisa Yugamidani)

 未来ちゃんは移り気だって思う。
 私だけじゃない。彼女の両親や友達全てがそう思っている。

「なんか、しばらく来ない間にまた増えたね」
 
 壁面にずらりと並んだ本棚にぎっしりと収まった本を見て私、湯上谷千紗(ゆがみだにちさ)はつぶやいた。

「ん~?」
「本の量。本棚に入りきらなくなってる」
「ああ、そうなんだよね~また新しい本棚買わなくちゃ」
「もう読まなくなった本とか処分したら?古本屋にもってくとかすれば場所も空くし新しい本も買えるよ」
「ん~なんか手放せないんだよね~なんかの役に立ちそうでさ」
「そう言って、一度飽きたら二度と手をつけないじゃない。そこの本棚の扉、最後に開けたのいつよ」
 
 彼女、上月未来(こうづきみく)はちょっとでも興味を持ったものは徹底的に調べたがる女の子である。ものによっては専門書や海外の論文まで読み漁るほどマニアックな領域に突っ込みたがる。しかも彼女の興味の対象は短期間で次から次へと新しいものに移り、その度に新しい本が増えるので常に置き場に困っている。彼女の部屋の壁面にはびっしりと大型の本棚がならんでいるが、その全ての棚が埋まり、入りきらない本は床に平積みになっていた。

「そこに積んである本、見たことないかな」
「ああそれ?最近買った本なんだけど……どんなだっけ」
「……読んでないの?」
「半分くらいは読んで本棚に移したんだけどね。全部読む前に別のことに興味がでちゃって」
「あんた……やっぱり移り気だわ」
 
 積んである本の一冊を手に取りながら呟く。
 好奇心が強く移り気な彼女の心が私に向くことは、ないのかな……。
 私と未来ちゃんは幼馴染で、私は未来ちゃんに密かに思いを寄せている。くせ毛だから手入れが大変だと言って短くまとめられたふわふわの髪、小さいころからいつも私を引っ張ってくれた快活さ、年齢の割りに幼い身体(私もそうだが……)、トラブルに出会っても明るく笑う笑顔、そのすべてが大好きだった。
 だけど今の関係が壊れる事が怖いこと、女の子同士というマイノリティが怖いことを理由に、私は幼馴染のままでいることを選んでいた。

「……ん?」
 
 何気なく手に取った本は催眠術の本だった。
『サルでもわかる!催眠術のかけ方!』
(うさんくさ~)
 未来ちゃんは海外の専門書を読んだかと思えばこういう近所の本屋さんにでも売ってるような本も読んでいる。
 でも、催眠術かぁ。

「未来ちゃん、ちょっと読んでもいい?」
「どうぞ~貸したげてもいいよ」
「そんなにしっかりとは読まないわよ」
 
 その本には、催眠術とはどういうものか、かけ方、解き方などが書かれていた。なんでも信頼しあっている人同士のほうが催眠術が成功する確率が高いらしい。そりゃあいかにも胡散臭い感じの見知らぬ人に催眠術なんてかけられたくない。私だったら絶対に警戒してしまうだろう。
(未来ちゃん…私だったら、どうだろう)
 ちらっと未来ちゃんの方を見ると、彼女は本棚を整理しているところだった。
 幼馴染だし、案外成功するかもしれない。失敗したって笑い話になるだけだよね。

「未来ちゃん、ちょっといい?」
「ん~?」
「この本なんだけど……」
「ああそれ?催眠術がどうかした?」
「ちょっと試していい?」
「え~?」
 
 未来ちゃんは怪訝そうな笑みを浮かべた。

「なんかできそうな気がするの。ほら、『サルでもできる』って」
「かかるわけないって、そんなの」
「わかんないよ?案外あっさりかかっちゃうかも」
「ふ~ん、まぁいいけどね。暇だし」

(よしっ)
 私は心の中でこぶしをにぎった。

「それじゃあここに座って」
 
 ベッドの上をポンポンと叩きながら未来ちゃんを座らせると、カーテンを閉め、ライトの照度を暗めにした。

「おっ、雰囲気でるね~」
「携帯の電源も切ってね」
 
 途中電話が鳴ったりしたらきっと台無しになるからね。

「切ったよ。さぁいつでも来たまへ~」
「そんなに張り切らないでよ。ゆったりと楽に座って。肩の力を抜いて、リラックスしてね」
 
 未来ちゃんの様子が落ち着いたのを見計らって彼女の隣に座ると、未来ちゃんのお腹の上にそっと手を置いた。

「未来ちゃん、私の合図で、私の手を持ち上げるように息をしてね。……はいっ、吸って」
 
 すう、と未来ちゃんが息を吸い込む音が聞える。
 あまり吸い込み過ぎないうちにお腹を軽く押さえる。

「吐いて……」
 
 このとき、吐く息を長くするのがコツだと本には書いてあった。

「吸って……」
 
 手の力を弱め、呼吸を促していく。

「吐いて………」
 
 手に軽く押す力を加える。

「吸って……吐いて………」
 
 徐々に慣れてきたのか、だんだん呼吸がスムーズになっていく。

「吸って……吐いて………吸って……吐いて………」
 
 これはブリージングという手法で、呼吸を意識的にゆっくりとした腹式呼吸にすることで、催眠にかかりやすくする効果があるらしい。
 何度か繰り返していると、心なしか未来ちゃんの表情がリラックスしたものに変わっていった。まぶたの先がとろんと下がり、眠そうとまではいかなくても、明らかに表情が柔らかくなっている。

「リラックスしてきたね。そのまま続けて」
 
 もう私が声をかけなくても、未来ちゃんは自分でゆったりとした呼吸を続けていく。

「そのままでいいよ。なにも考えないで。私の声だけを聴いて」
 
 未来ちゃんの左右の肩に両手を置き、耳元に口を寄せて囁く。

「だんだんまぶたが重くなってきます……まぶたから力が抜けてだんだん下がっていきます……」
 
 未来ちゃんのまぶたがピクピクと震え始める。

「まぶたが重くなる……重くなる……だんだん下がっていく……」
 
 すかさず繰り返すと、ゆっくりとまぶたが落ち始める。

「そう……瞬きが多くなってくる……目を開けているのが辛くなる……だんだん眠くなってくる……」
 
 少しずつ未来ちゃんの身体から力が抜けていく。

「眠くなる……眠くなる……未来ちゃんはだんだん眠くなる……」
 
 子守唄を歌うように囁くと、未来ちゃんのまぶたはあっさりと閉じてしまった。
(わ!眠っちゃった)
 小さい頃はよく一緒にお昼寝したりして寝顔を見ることもあったけど、こんなに無防備な未来ちゃんの姿は久しぶりに見たような気がする。
(えっと、これからどうするんだっけ)
 本には催眠がうまくかかると、その催眠をより深くすることでできることが増えると書いてあった。

「未来ちゃん、あなたは私の催眠術にかかってしまいました」

『催眠にかかっている』ということを認識させるだけでも催眠は深くなるらしい。

「私が10から数を逆に数えると、あなたの催眠は深くなっていきます……10……9……8……7……身体が沈んでいく……6……5……4……3……全身の力が抜けいていく……2……1……0……」
 
 眠っている表情に変化はないが、未来ちゃんの身体からは明らかに力が抜けてゆき、肩が下がり、足も少し開いたような姿勢になる。いつもはしっかりと閉じられている太ももとスカートのラインが妙に色っぽく見えてしまう。たぶん催眠を深めることには成功したのだろう。
(これからどうしよう)
 なんとなく興味を持って催眠をかけてみたはいいけど、このあとどうするのかはまるで考えていなかったけど、全身から力を抜いて無防備な寝顔を晒している未来ちゃんを見ていると、なんだかいけないことをしている気分になってくる。今ならスカートを摘み上げてその中を覗いてもまるで気づかれないだろう。
 そんなことを考えていると、本当に覗きたくなってくる。スカートの中だけでなく、可愛らしい服に覆われたその身体を。

「未来ちゃん、あなたはだんだん服を脱ぎたくなります。着ているものを脱ぎたくなってきます」
 
 未来ちゃんの手がピクッと動いた。

「脱ぎたくなる……脱ぎたくなる……」
 
 何度か繰り返すと、未来ちゃんはゆっくりと着ているものを脱ぎ始めた。
 未来ちゃんは活発で物怖じしない元気な性格だけど、服の趣味はとても女の子らしい。
今年買ったお気に入りと言っていたシャツワンピ、黒のスカート……未来ちゃんの身体を覆うものが一枚ずつ取り払われていき、薄いピンクのジュニアブラとショーツが飛び込んできた。私も未来ちゃんも年齢より幼い体つきだけど、こうしてみるとその身体には可愛らしさがあふれていた。

「わ……ぁ」
 
 学校で体育の授業のとき一緒に着替えることはあったけど、こうやってじっくりと見ていると本当にヘンな気分になってくる。胸がどきどきするだけじゃなく、その奥のほうに、なにかじんわりと甘酸っぱい気持ちが広がっていく。
 夜未来ちゃんのことを思うとよくこんな気分になって、いつも一人で自分を慰めていた。
(未来ちゃんも、するのかな……)

「未来ちゃん、これから3つ数えると、未来ちゃんは目を覚まします。目を覚ますと、だんだんエッチな気分になってきます。胸がどきどきして、エッチなことをいっぱい考えちゃいます。エッチな気分になると、なんだかオナニーがしたくなります。オナニーがしたくてたまらなくなります。したくてしたくて我慢できなくなります」
 
 好奇心に負けた私は、未来ちゃんにオナニーがしたくなる催眠をかけてみる。これで未来ちゃんがオナニー未経験だったらどうなるのだろう……?

「1……2……3!」
 
 パンッ!
 手を叩くと、未来ちゃんはビクッと震えて目を覚ました。

「あ、あれ?私……」
「目が覚めた?」
「千紗?え?ええ?!なんで私下着姿なの?!」
 
 未来ちゃんは慌てて両手で身体を隠しながら現状への疑問を口にした。

「未来ちゃんは催眠術にかかってたんだよ」
「催眠術って、え?そんなこと…………ぁ」
 
 未来ちゃんの表情から力が抜け、とろんとしたものに変わる。頬に赤みが差し、吐息も熱を帯びてくる。

「はぁ……はぁ……」
「ふふっ、エッチな気分になってきた?」
「千紗……どういうこと?……なんで……私……」
 
 熱に浮かされたような未来ちゃんの表情はとてもエッチで、それ以上に愛おしいと思った。

「だから、催眠術だよ。未来ちゃんは私の催眠術にかかってるの。今、すっごくエッチな気持ちでしょ?」
「う……うん……でも、催眠術なんて……」
「信じない?自分の身体に起こっていることなのに。それに、そろそろ……」
「な、なに……?ぁ……っ……」
「どう?したくなってきた?」
「ぅぅ……これも、催眠術……なの?」
 
 オナニーの欲求が襲ってきたのだろう。
 未来ちゃんの表情がだんだん切ないものに変わっていく。

「はぁっ……ぅぅ……だめぇ」
「だめじゃないよ。未来ちゃんはいつもどんなオナニーしてるの?」
「そ、そんな……オナニーなんて、してない……」
「ウソつき。私の目を見て。未来ちゃんはウソはつけない。本当のことをしゃべっちゃう。ね、いつもどんなオナニーしてるの?」
「……はだかになって、大事なとこ……指で……」
「へぇ~はだかになってしちゃうんだ。じゃあ下着、脱がなくちゃね」
 
 私が言うと、身体を隠していた未来ちゃんの手がゆっくりと下着に伸びていく。

「ああっ……だめっ……」
 
 未来ちゃんの身体は自らの言葉を無視するように、ブラをとり、ショーツを脱いで生まれたままの姿を晒した。

「準備できたね。ほら、オナニーしちゃおうよ」
「やっ……!」
 
 さすがに自慰を晒すことは恥ずかしいのか、未来ちゃんは身体を強張らせてしまう。

「だめだよ。ほら、力を抜いて。未来ちゃんはオナニーをはじめちゃう。身体が勝手に動いちゃう」
「やだ……千紗、やめてっ……どうして……こんな……」
「だって、見たいんだもん。未来ちゃんの、オナニー」
「っ……ばかぁ」
 
 顔を真っ赤にして目をそらすが、震える右手はゆっくりと股間に近づいていく。

「ふ……っ」
 
 その指先が、ついに未来ちゃんの大事なところに触れた。

「く……んんっ」
 
 ほとんど毛の生えていない割れ目に触れた指先はほんの少しの間抵抗するようにその動きを止めたが、やがて観念したかのようにゆっくりと上下に動きはじめた。

「やっ……だめぇ」
「だめじゃないよ。そう……そのまま続けて」
「ぅぅ~」
 
 未来は恨めしそうに私を睨みつけるが、頬を赤らめ上目遣いで睨まれても可愛いだけだった。

「ね、どう?気持ちよくなってきた?」
「ぅぅ……ヘンなこと、訊かないでよぉ」
「だぁめ。未来ちゃんは私の質問に素直に答えちゃうよ。黙ってようと思ってもお口が勝手にしゃべっちゃう」
「千紗ぁ!」
「ね、教えて。今、どんな気分?」
 
 イヤイヤするように首を振るが、催眠のもたらす誘惑には逆らえず、未来ちゃんは心の内を告白する。

「……すっごく、エッチな……気分、です……ぁぁ」
 
 未来ちゃんが答えた途端、割れ目から微かに透明な液体が滲み未来ちゃんの指先を濡らした。

「あは、濡れてきたよ」
「言わないで……恥ずかしいよ……」
「どうして?さっき自分で言ってたじゃない。エッチな気分になってます、って。未来ちゃんの身体が心に正直になってるんだよ」
「は……ぁ……」
 
 だんだん指の動きが早くなっていき、割れ目も潤いを増していく。
 その割れ目に隠れた未来ちゃんの女の子の部分が見たくて、私はさらなる暗示をかけていく。

「ね……足、開いてほしいな」
「っ!千紗、お願い……もう許してぇ」
「え~?」
 
 正直こんな夢みたいな機会はもうないかもしれない。大好きな未来ちゃんのこんなエッチな姿を見ることができるのに、止めたくなんかないなぁ。

「っく……お願い……ぐすっ」
 
 あまりの恥ずかしさに、未来ちゃんはとうとう泣き出してしまった。未来ちゃんは泣き顔も可愛いんだけど、少しやりすぎたかなと良心が痛み出す。

「ぅぅ……えっく……」
「わ、わかったよぉ。もう止めるから……」
「ぐすっ……ホントにぃ?」
「う、うん……」
 
 涙を浮かべた視線を向けられ、思わずドキっとしてしまう。こんなにも可愛い未来ちゃんを知っているのは、きっと私だけだろうな。

「ね、さっきどんなこと考えながらオナニーしてたの?」
 
 少しだけイジワルしたくなった私は、ふと沸いて出た疑問を口にした。

「え……そ、それは……」
「ね、教えてよ。それ教えてくれたら催眠術、解いてあげるから」
 
 未来ちゃんは少しの間逡巡したあと、小さな声でポツリと答えた。

「……好きな人の……コト」
「……え?」
 
 どくん、と、なにか重たいものが心に圧し掛かった。

「未来ちゃん、好きな人……いたんだ」
「…………」
 
 未来ちゃんはこくん、と小さくうなずいた。

「ふぅ~ん、そうなんだ……」
 
 どくん、どくん
 心臓の音がうるさいくらいに響き、頭の中がすぅーと冷え切っていくのがわかる。声が震える。身体が震える。さっきまでの甘い気分は消え去り、代わりにどす黒い感情が心を満たしていく。

「……ね、答えたでしょ……はやくもとにもどして……」
 
 ふと我に帰って未来ちゃんを見ると、彼女はまだオナニーを止められずに痴態を晒していた。

「…………やだ」
 
 自分の口から出たのが信じられないほど冷たい声が未来ちゃんに浴びせられた。

「未来ちゃん、私の目を見て」
「千紗……?どうしたの、怖いよ……」
「いいから、私の目だけを見て。私の声だけを聴いて」
 
 未来ちゃんの頬を両手で包み、目線を合わせながら言葉を紡いでいく。未来ちゃんの吐息が感じられる距離まで顔を近づけ、彼女の視界から強引に私以外の景色を排除する。ほんの少し唇を突き出せばキスできるほど距離を縮めても、私の心にはなんのときめきも生まれない。

「ほら、じーっと見つめて……だんだん吸い込まれていく。意識が私の瞳に吸い込まれていく」
 
 少しずつ未来ちゃんの瞳から光が消えてゆき、表情もうつろになっていく。

「ほら、もうなにも考えられない。未来ちゃんは私の操り人形だよ。私の言う事ななんでもきいちゃうんだよ」
 
 気に入らないなぁ。
 未来ちゃんに好きな人がいるのが気に入らない。

「もう未来ちゃんは私に逆らえない。絶対に逆らえない。もう未来ちゃんは私の言いなりのお人形さんだよ」
 
 さっきよりも強力な暗示をかけ、未来ちゃんの心を完全に私の支配下に置く。

「未来ちゃん、あなたの好きな人の名前を教えて」
「ぅ…………」
 
 ビクッと身体が震え、未来ちゃんは辛そうに口を噤んだ。

「ほら、教えて。好きな人の名前」
 
 言いたくないってことぐらいわかってる。でもどうしても知りたい。未来ちゃんの心を奪ったのが誰なのか、知らずにはいられない。同じクラスの男の子?先輩?後輩?それとも先生?私の知らない人?

「未来ちゃん、未来ちゃんは私のなんだっけ?」
「千紗の……操り……人形、です」
「私の言う事はどうするんだっけ?」
「なんでも……ききます」
「そうだよね、未来ちゃんは私の言いなりなんだよね。じゃあ教えて、未来ちゃんの好きな人は誰なの?」
「ぅ……や……ぁ……」
 
 暗示に囚われた未来ちゃんの心は私の問いかけに答えることを求めている。なのに未来ちゃんは頑なに口を閉ざそうとする。
(どうして?そんなに知られたくないの?未来ちゃんは私のこと親友だと思ってくれてると思ってたのに、好きな人を知られるのがそんなにイヤなの?!)

「未来ちゃん!好きな人は誰?!」
 
 強い調子で問い詰めると未来ちゃんは力いっぱい口を噤んで話そうとしない。瞼も堅く閉じられ、その表情には絶対に言わないという強い意志が感じられた。これだけ力いっぱい拒否されると強引に聞き出すのは難しいかもしれない。

「ふぅ……」
 
 私はため息をつき視線を下に落とすと未来ちゃんの女の子が飛び込んできた。
(そっか、服、脱いだままだっけ)
 そう思ったとき、ピンと閃いた。

「未来ちゃん、こっちを見て。大丈夫、もう好きな人のことは訊かないから」
 
 ふっと表情が緩み、未来ちゃんはほっとしたような顔で私を見た。

「未来ちゃん。これから3つ数えると意識が戻ってくるよ。すっきりと目覚めることができる。でも催眠は解けない。未来ちゃんの心は私のものだからね。いい?」
 
 コクンと未来ちゃんが頷くのを確認してから、未来ちゃんの意識を現実に戻してあげる。

「1……2……3!」
 
 パンッ!
 手を鳴らすと未来ちゃんはビクッと身体を震わせて意識を取り戻した。

「あ、あれ?私……きゃっ!」
 
 戸惑うように周りを見回したかと思うと、自分がはだかなのに気付いて慌てて大事なところを手で隠した。

「びっくりした?」
「千紗?私、どうして?」
「未来ちゃんは私の催眠術にかかってオナニーしてたんだよ」
「なっ!…………ぁ」
 
 未来ちゃんは顔を真っ赤にして驚くが、すぐに自分の痴態を思い出し、自分が与えた快感に悶えていく。

「はぁ……はぁ……」
「思い出した?思い出してエッチな気分になっちゃった?」
「あ……だめ……千紗、催眠……解いてくれるんじゃなかった……の?」
「ふふっ、いいじゃない。それよりもっと楽しもうよ」
「そんな、約束がちが……」
「あなたはだんだんオナニーがしたくなる」
 
 未来ちゃんの身体がピクンと震える。

「ほぅらしたくなる。アソコがうずうずしてくる。触りたくてたまらなくなる」
「ぁ……ぁ……」
「オナニーがしたくてたまらない。オナニーの欲望に抵抗できない。ほら、さわっちゃお。我慢しないで……オナニー、しちゃお」
「ぅぅ……だめぇ」
 
 股間を隠しているハズの指がゆっくりと動き出す。胸を隠していた方の手も小ぶりなおっぱいを包み込むようにやわやわと刺激していく。

「はぁ……ぁぁ……んぁっ」
「ふふ、気持ちいい?」
「うん……気持ちいい……はぁっ」
 
 暗示を強化したせいか、私の質問にも素直に答えてくれる。
 徐々に足が開いていき、指が割れ目のナカへと沈んでいく。

「んっ……は……ぁぁっ……あ……あ……」
「どこを触ってるの?」
「ぁ……おっぱいと……く……クリトリス……」
「ふぅん、女の子は好きだよね」
 
 そうやって恥ずかしいことを言わせているうちに未来ちゃんのオナニーはだんだん激しさを増していく。胸を触っていた手は今では割れ目を押し開き、もう片方の指で積極的にクリトリスを愛撫している。彼女の指が動くたびにくちゅくちゅといやらしい水音が私の耳をくすぐる。

「はぁ、はぁ……気持ちいい……ああっ……」
 
 足を大きく開き、見せ付けるように自慰行為に没頭する未来ちゃんはとても淫靡だった。

「はぁん……ああっ……あっ、あっ」
「未来ちゃん、イキそう?」
 
 声のトーンが高くなり、余裕がなくなってきた様子を見てカマをかけてみた。

「うんっ、イキそう……イキそうっ!」
 
 指の動きはますます激しさを増し、周りの花弁も充血して本物の花のようにふわぁと開いていく。

「ああっ!イク……いっちゃう!ああっ……!」
「ストップ!!」
 
 未来ちゃんがもうイってしまう直前に、私は大声で彼女の自慰行為を止めた。

「だめだよ、未来ちゃん。勝手にイっちゃだめ」
「ぁ……ぁ……」
 
 絶頂の快感を直前でお預けを食らった未来ちゃんは物欲しそうな顔で私を見つめた。

「そんな顔してもだめ。未来ちゃんはイけない。絶対にイけない。いいよ、オナニー続けても。だけど絶対にイクことはできないよ」
「そ……そんな……ああっ!」
 
 未来ちゃんは絶頂を求めてオナニーを再開する。指先でクリトリスを弾くように刺激し、より気持ちよくなろうとする。

「はぁっ……ああっ……あん!ああっ!あぅ……はぁっ」
 
 だけどどうしても達することはできない。どれだけ気持ちよくなっても決してイクことはできない。

「イけないよね。こんなに身体が火照ってるのにイけないよね。ふふっ、どんな気持ち?ねぇ、どんな気持ち?イキたくてたまらないのにイけないのってどんな気持ち?」
「はぅん……やぁ、切ないよぉ……イキたいよぉ……千紗ぁ……お願い……イカせてぇ」
「そんなにイキたい?」
「イキたい!イキたいの……アソコが切ないの……ヒクヒクってぇ……止まらないのぉ!」
 
 恥じらいを捨てて懇願する未来ちゃんはどこまでもいやらしくて、キレイだった。
 そんな未来ちゃんに、私は聖人を誘惑する悪魔のような表情で囁く。

「そんなにイキたいんだ~」
「うんっ!イキたいっ!」
「一個だけお願い聞いてくれたら、いいよ。イっても」
「ほ、ほんとに?」
「うん。だからね、好きな人の名前を教えて」

 期待に輝いていた未来ちゃんの表情が一瞬で絶望に染まる。

「だめならいいよ。そうやってずっと自分を慰めてれば?イけないけどね。絶対!一生!」
 
 決して達する事ができず身体が満たされることはない。かといって性の熱が引くこともない。中途半端な快感に翻弄され、抜け出すことのできない生き地獄。永遠に続く生殺しだ。

「ああっ!ああん!ふぁぁぅ!」
 
 悲鳴のような喘ぎ声が響き渡る。本当ならココでイっていたのだろうけど、やはりギリギリのところで達することはできなかったようで、愛液でふやけた指先はなおも快感を求めて激しく蠢いている。

「未来ちゃん、私の目を見て」
 
 もうイクことしか考えられないハズなのに、それでもまだ黙秘を続ける未来ちゃんに引導を渡すために最後の暗示をかける。

「言っちゃえ」
 
 暗示というよりは最後の後押し。未来ちゃん一人じゃ越えられない一線を越えさせるために、彼女の背中をポンと押す一言。
 その一言に導かれるように、未来ちゃんはとうとう好きな人の名前を口にした。

「千紗……」

「…………え?」
 
 今……なんて?

「千紗……千紗……千紗が好き!好きなのぉ!ずっと……ずっと前から好きだった!大好き!大好き千紗ぁっ!」
 
 告白することでリミットがはずれた未来ちゃんは一瞬にして頂へと上り詰めていく。

「ああっ……千紗が見てる……私のオナニー、見てるぅっ!」
 
 さっきよりも激しく、腰を突き出して見せ付けるように股間をいじり、女の子に生まれた悦びを貪っている。

「好きっ!千紗!愛してる!!ああっ!あああっ!あ、あ、あ、ああっ……あああぁぁっ!!!」
 
 ビクンビクンと魚のように未来ちゃんの幼い肢体が痙攣し、未来ちゃんはイッた。

「あぁぁ……あぁっ!……あぁん……ぁ……はぁ……はぁ……しゅき……ちさぁ……すきぃ……」
 
 私への愛を口にしながら。
 その姿を美しいと思いながらも、取り返しのつかないことをしてしまった罪悪感に打ちひしがれて……私はなにもできずに、未来ちゃんが絶頂の余韻に浸るのを見ているだけだった。

< つづく >

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