とある王国の悲劇 剣姫編8 終幕

剣姫編 8 終幕

 ……時間は遡る……。

 綺麗に整頓された城内を、1人の少女が歩いている。
 あどけない外見に似合わず、腰に剣を帯びている。
 彼女は一部では「剣姫の再来」とまで呼ばれる剣士だった。
 しかしそう呼ばれる事を、彼女は誇りに思うと同時に否定する。
 それもそうだろう。
 剣姫と呼ばれた現女王は今も健在であり、その剣技も衰えてはいない。
 その女王と比べられれば、誰だって恐縮するだろう。
 今日はその女王陛下直々の呼び出しだった。
 着慣れない正装に身を包み、城内を緊張しながら歩いていた。
 気を紛らわそうと、城内を眺めてみる。
 昔は豪華絢爛だったと言う城内も、今は質素な印象である。
 建物自体は変わっていないが、装飾が最低限に抑えられたからだろう。
 彼女は今の姿が好きだった。
 昔の派手な頃は知らないが、今の姿こそがあるべき姿に感じられた。
 彼女が着る正装もそうだ。
 無駄な装飾品などは無く、実用性を重視している。
 だが、だからこその機能美があった。
 この城と彼女の姿が、今のこの国を如実に表している。
 
 女王の部屋に近付いているのに、人が殆ど居ないのも特徴的だった。
 普通なら、親衛隊や近衛兵等が警備に当たるだろう。
 が、あの女王を守るという無意味な仕事は必要無かった。
 話相手も居ない状況は、彼女をより緊張させた。
 目指す部屋は、目前に迫っていた。

 いや、彼女の運命が、と言うべきか……。

 ――部屋の中では、女王が湯浴みをしていた。
 湯に体を沈め、目を閉じる。
「そろそろ、潮時か……」
 女王が呟くと、それに応えるように扉を叩く音が響いた。
「じょ、女王陛下! お呼びにより、只今参りました!」
 緊張しているが、元気な声だ。
 女王はその声に若さを感じ、同時に自らの老いを感じていた。
 外見は少女と言ってもいい若さだったが。
「すまんが中に入ってくれ」
 浴室から声を掛ける。
「し、失礼します!」
 扉を開け、少女が入ってくる。
 そのままギクシャクと進み、誰も居ない椅子に向かって叫ぶ。
「ほ、本日は、お、お呼び下さり……」
「――ふふっ、すまんが私はこっちだよ」 
 少し笑いながら女王が呼ぶ。
「ふぇ?」
 その声でようやく目の前に誰も居ない事に気が付いたようだ。
 みるみる内に蛸の様に赤くなり、慌てて声のした扉へ向かう。
「よく来てくれた。服を脱ぎ、中へ入ってくれ」
「は、はい!」
 言われてそこが浴室だと判り、動揺しながらも衣服を脱いでいく。 
「し、失礼します……」
 恥ずかしげに体を隠しつつ、中に入った。
「こっちだ」
 湯船に浸かった女王が声を掛けた。
「貴女も入りなさい」
「は、はい」
 促され、湯船に浸かる。
 まさかの裸の付き合いに、彼女は混乱していた。
 自分は何の為に呼ばれたのだろうか?
 さっぱり見当も付かなかった。
「あ、あの……」
 思い切って聞いてみようとしたが……。
「ん? 何だ?」
「へ、部屋にお風呂って凄いですねっ!」 
 女王に返されると見当違いの事を言ってしまった。
 恥ずかしさに逃げ出したいくらいだった。
「ここは昔から王の私室でな。当時の王の趣味で作ったらしい」
 女王は自嘲気味に笑う。
「……何時の時代も、王とは碌でもないな」
「そんな事ありません!」
 少女は思わず叫んだ。
「女王陛下は違います!」
 その目は真剣で、尊敬に満ちていた。 
「陛下のお蔭でこの国は平和になりました」
 彼女は熱く語る。
「もう虐げられる弱者なんていません。虐げる者もいません」
 その想いは最早崇拝と言ってもいいだろう。
「皆幸せに、笑顔で暮らしています!」
 その言葉を、女王は静かに聞いていた。
 目は真っ直ぐに彼女を見詰める。
 その視線に気付き、彼女は赤くなって俯いてしまう。
「あ、あの……すみません……」
「何を誤る? 私を弁護してくれたのだろ? ありがとう」
 礼を言われ、彼女はますます赤くなった。
「……貴女に問いたい」
 女王の言葉に顔を上げた。
「人間とは何だ?」
「はい?」
 余りに唐突な問いだった。
「私の雛形となった者は、弱者を無くせば平和になると信じていた」
 女王が語り出す。
「私もそれに従い、弱者を無くす為長年努力してきたつもりだ」
「はい、今は弱者なんていません」
 彼女が答えた。
「そうだな。表向きはいないな」
「表向き?」
「人間とは平等では無い」
 女王の目に悲しさが宿る。
「美しい者、力が強い者、知能が劣る者……」
 その目は彼女を見てはいない。
「どうしても生まれつきの差が生じる」
 それは彼女も理解出来た。
「それは個性と言うのではないですか?」 
 思わず口を挟む。
「そうだな」
 それに女王が答えた。
「それが全て良い結果を生むのならば問題無い」
 女王は続ける。
「しかし、時としてそれらは簡単に悪い結果を生む」
 その目は悲しげなままだ。
「劣等感や嫉妬、そういった負の感情に結び付いてしまう」
 彼女も引き込まれそうだった。
「それを励みに出来るならまだいい」
 女王が彼女を見て問う。
「そう出来ない人間は……どうなると思う?」
 彼女は答えられない。
 彼女は励みに出来る人間だからだ。
「それはな……自分より弱者を作ろうとするんだよ」
 女王の顔に嘲笑的な笑みが浮かんだ。
「自分が勝てないなら、自分より弱い相手を探す」
 笑いながら言う。
「実に人間は度し難いな」
「そんな人ばかりじゃありません!」
 彼女は咄嗟に反論していた。
 尊敬する女王の口から、そんな言葉は聞きたくなかった。
「そうだな、勿論そうだ」
 女王が彼女に笑いかけた。
 その必死さが微笑ましかったのだ。
「そういった弱い人間を無くそうと、私なりに頑張ってきたつもりなのだがな」
 そして表情を引き締めた。
「……もう無理なようだ……」
「そんな……どうして……」
 女王の諦めとも取れる発言に、彼女は衝撃を受けた。
 神にも等しいとされる女王に出来ない事があるなんて……。
 彼女は信じたくなかった。
「政とは全てに行うものだ。個性がある以上、不満を持つ者も居る」
 女王が続けた。
「これだけ人間が集まれば、全員の意見を聞く事は不可能だ」
「それは……そうですけど……」
「その結果、大小様々な問題が生まれ、一見平和でも局部的にはそうでも無いんだ」
「でもっ! ……でも、何か方法が……」
 彼女が必死で考える。
 女王に諦めて欲しくなかった。
 何とか力に成りたかった。
「そこでな……やり直そうと思うんだ」
「えっ?」
 女王が真っ直ぐに彼女を見た。
「協力してくれるか?」
「も、勿論です!」
「ありがとう」
 女王が笑顔で礼を言った。
 それにつられ、彼女も笑顔になる。 

「では、早速お願いするわ」
 女王の笑顔が、妖艶なものに変わる。
 本能的に危険を感じたが、すでに遅かった。
 湯船の底から忍び寄っていた触手が、彼女に針を突き立てた。
「っひぃ!」
 彼女の悲鳴が上がる。
「大丈夫、すぐによくなるわ」
 女王が立ち上がった。
 その姿を見て、彼女は言葉が出なかった。
 腰から下、湯で見えなかった部分が、黝い塊になっていた。 
 そしてそこから触手が伸びている。
 なまじ上半身が美しいだけに、その不気味さは悪夢のようだった。
 いや、彼女の悪夢はこれから始まるのだ。
「ふふっ、楽しんでね」
 触手が彼女に殺到した。
「ひぃっ!」
 触手は彼女に絡みついた。
 おぞましい触手は彼女を拘束し、その美しい肌を這い回った。
 胸、頬、腰、腹、脇、腕、髪、足、耳、背、肩、尻……。
 触手はその凶暴な外観に似合わない、優しげな動きで彼女を愛撫した。
「女王……さまぁ……あぁ……何故ぇ……こんな……ぁあぁあっ!」
 快感に押し流されそうになりながらも、必死で彼女が訴える。
「見ての通り、私の体はもうだめなの」
 その言葉に合わせるように、右腕の肘から先が落ちた。
 湯に落ちた腕はすぐに塵の様に崩れた。
 無くなった腕を補うように、黝い塊が蠢き、腕を形作る。
 それを怯えたような目で彼女が見た。
「女王さまは……いったい……」
 余りの衝撃と恐怖に、一瞬快感を忘れた。
「弱者を救う者、かしら?」
 冗談の様に笑う。
「それにもう貴女には関係ないわ」
 そう言うと触手が伸び、彼女の首筋に細い針を刺し何かを注射した。
 「ああぁぁあああァアアァァッぁぁァァアァアぁぁぁぁあっァアアァァあっァァァあ」
 その瞬間、彼女の中で何かが切り替わった。
「うぁごいてぇぇ……も……もっとぉぉ……もぉっ……とぉぉ!」
 表情が淫蕩に変わり、はしたない言葉と喘ぎが漏れる。
 体を襲う感触が堪らなく心地良く、愛しく思えた。
「もうよさそうね……」
 それを見た女王がにじり寄り、股間から一際大きな触手を伸ばした。
「ぁあぁ……ちょ……っうだぁぁ……ぃいいぃ……」
 彼女は自ら足を大きく開き、腰を揺らめかす。
 秘部はすでに潤いきり、求めるように口を開いている。
「はぁやぁ……っくぅ! じ……ぃらさっ……ぁなぁい……いぃ! でぇぇ!」 
 狂おしいまでにそれを求めた。
「あらあら、はしたないわね……」
 巨大な触手はゆっくりと秘部へと入り込んだ。
「はぁぁい……っる! はぁい……って……っく……るぅうぅぅ……!」
 彼女は淫らな表情で体をびくん、と仰け反らせた。
 自らの膣内をゆっくり押し入ってくる触手の感覚。
 それが頭が沸騰しそうな程の快感を生み出していた。
「ぃ……ぃいいっ! ぃいぃぃっ……っあぁぁうぅぅぅっ!」
 虚ろな目を泳がせ、快感に揺さぶられるかのように頭を激しく振る。 
「ぃ……いいぃ……いぃいのぉぉ! すぅぅ……ってぇ……きぃ!」
 最も奥まで押し入った触手は、今度は入り口付近まで戻り、また突き込んだ。
「ぁああぁぁ……ぁ! あぁああぁ……ァァ! ぁアアァァアァァアアァアアァ!」
「ほら、もっと楽しみなさい」
 ゆっくりとした動きだった触手が徐々に速度を増していく。
 それに比例するかのように彼女の快感も増していった。
 彼女は圧倒され、快楽に啜り泣いていた。
「すうぅぅ……ってきぃぃぃい! さぁぁいぃ……っこぉぉぉ!」
 あまりに強烈な快感を与えられ続けた姫は、もはや自分が誰かさえわからなくなっていた。
 ただ、目の前にいる愛しい人に抱かれる女の悦びに浸っていた。
 いや、それは雌の本能か。 
「ああぁ……ぁっ! し……あぁ……ぁわ……せぇ……」
「もういいわね」
 ひくひくと体を震わせ、喘ぎ声を漏らす彼女を見て、女王が満足そうに言う。
「仕上げといきますか」
 そう言うと、更に大きく触手が膨らみ、激しく動き出す。
「あぁっが! ひぃぃ! おあぉぉっああぁぁぁああォオアォオォああアアアァァッァア!」
 今までの快感に引き出された喘ぎとはとは違う、獣の如き叫びが上がる。
 目を見開き、悲鳴を上げるかのように口を大きく開き、叫ぶ。 
 彼女が感じているのは、人間が許容できる快感を遥かに超えたものだった。
 まるで感じている者を壊そうとするような、暴力的な快感。
 全身ががくがくと有り得ない動きをする。
「いくわよ」
 彼女が限界に達しようとした瞬間、触手が姫の中に大量の液体を吐き出した。
 熱い液体は彼女の子宮だけでは収まりきらず、逆流して体外に溢れ出す。
「あぁあっ! ぁぁああぁ! しぬぅっ! しっんっじゃあぁ! うぅうっ!」
 それは今までの快感を、さらに凌駕する快感だった。
 体が粉々になったように感じ、精神もまたそうだった。
 彼女は意識を失い、体から一切の力が抜ける。
 顔は淫らに呆け、だらしなく開いた口からは涎が垂れている。
「そろそろ、私も貴女になるわ……」
 そう言うと女王の口が冗談のように大きく開いた。
 そこから何か黝い、液体とも固体とも見えるモノが蠢いている。
 女王が開いた口を彼女の口に近付ける。
「ふぇ?」
 彼女が意識を取り戻しかけたが、すでに手遅れだった。
 触手が器用に彼女の口を大きく開く。
 女王の口から溢れ出したモノが、彼女の口へ入り込んでいく。
 唇、舌、口内、喉、その奥へと。
 まるで感触を楽しむかのようにゆっくりと。
「あぁ……うぅあぁうぇぇあぁ…が……ごぁ…ぁぁあ……えぉ……」
 本能的に抵抗しようとするが、触手に拘束されてしまう。
 彼女の喉が嘘の様に大きく動く。
 モノが彼女に入り込む度に、彼女の体がびくりと揺れる。

 実にゆっくりと時間をかけて、モノは彼女の中に入り終わる。
 すると女王の体と触手が砂になったかのように崩れ落ちた。
 仰向けに倒れた状態の彼女の体が激しく痙攣する。
 四肢もがくがくと痙攣を繰り返し、顔は苦悶に歪んでいた。
 しばらくして一際大きく痙攣すると、落ち着いたかのように静かになった。
 彼女がゆっくりと起き上がった。
 無表情で辺りを見回し、浴室から出る。
 湯を拭い、着てきた服を身に着けると、女王の部屋から退室した。
 部屋を出る時、ニヤリ、笑った。

 暫くした後、国中が女王が姿を消したと言う話題で持ち切りになった。
 ある者は誘拐だと言い、またある者は暗殺だと言う。
 お忍びで各国を行脚しているだけだと言う者も居た。
 だが、どれも信憑性に欠けていた。
 
 そんな時、とある少女が言った。
「天に御帰りになったのよ、きっと」
 それこそ信憑性は無かったが、人々の間に染み渡っていった。

――そして、国は乱れた。

「全く、人間は度し難いね」
 戦火に包まれる城を、遠くから眺めている者が居た。
 まだ若い少女だ。
 あの日、女王の部屋を訪れ、そして、皆に女王が天に帰ったと言った者だった。
「ま、これでまたやり直せるね」
 その顔は笑っていた。
「さて、次はどうやって弱者を無くそうかな」
 楽しげに笑う。
 その笑い声が、戦火の空に響き渡った。

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