Love Is the Plan the Plan Is Death 5

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 ……時間は少し遡り、武がこの世界に復帰する前日。

「はい、次の議題に取り掛かるわよ!」
 威勢のいい、しかし涼やかな声が放課後の生徒会室に響く。
 テキパキと仕事をこなし、皆を引っ張るこの部屋の主。
 生徒会長の小鳥遊弥生だ。
 校内美少女ランキングでは常にトップ3入りし、成績優秀スポーツ万能。
 それでいて気さくな性格で、しっかり者で面倒見がいいと来れば人気が出ない筈が無い。
 告白した男子は数知れず、だがガードが固く、誰一人として成功した者はいない。
 正に学校のアイドル“高嶺の花“だった。
 今日も男子生徒会役員の熱い視線を受けながら、速やかに議題をこなしていた。
「さて、と。次はなんだっけ……」
 弥生がプリントを手にしようとした時、ガタンと何かが倒れる音がした。
 驚いてその方向を見ると、役員である女子生徒が倒れていた。
「大丈夫!?」
 弥生は急いで女子生徒に駆け寄った。
 見るからに顔色が悪い。
「保健室に運ぶわよ。男子、悪いけど手伝って。先生にも連絡」
 騒然としかけた生徒会室に、弥生の指示が飛ぶ。
 それだけで皆平静を取り戻し、行動に移った。
 すぐに担架が持ち込まれ、女子生徒を乗せると保健室に向かった。
 弥生はそれに付き添った。
 すぐに保健室に到着し、女子生徒をベットに寝かせる。
 そして保険医に報告した。
「生徒会役員の吉沢茜が倒れたので、診察をお願いします」

「ごめんね、迷惑でしょ……」
 夕暮れに染まる通学路、茜にしては珍しく落ち込んだ調子で言う。
「気にしなくていい」
 それにどこか素っ気無く答えたのは、付き添いを申し出た武だ。
 たまたま学校に残っていたと武は言うが、茜が心配で待っていたのはバレバレである。
 もっと優しく言えないものかと考えてはみるが、不器用な武は上手くいかない。
 だが、その気持ちは伝わった様だった。
「ありがと」
 若干元気が戻った調子で茜が答えた。
「でも、最近倒れ過ぎだよ。私どっか悪いのかな……」
 もともとそんなにタフな方では無いが、一般的な体力はあると思っていた。
 だが、1年程前から体調が徐々に悪化し、この3ヶ月に至っては何と12回も倒れている。
 体調不良で休む事など数える気にもならない。
 今ではすっかり保健室の常連と化し、クラスでも病弱キャラが浸透してしまっていた。
 生徒会も休みがちなり、今回の様に無理して参加してみれば、かえって迷惑をかけてしまった。
 会長は気にしないでと言ってくれるが、それは無理だろう。
 無論病院には行っている。
 それも複数の病院にだ。
 が、診断結果は毎回軽い貧血だった。
 大丈夫だろうと医者は言うが、薬を飲み生活習慣を正してみても、悪化こそあれ何の改善も見られないのだ。
 こうなるとただの貧血とは思えない。
 茜は精神的にも疲れ始めていた。
「もう少し様子を見てみよう。俺も何か方法を考える」
 武がどこかぶっきら棒に言う。
 だが、その瞳に宿る心配や気遣いに、茜は気付いていた。
「もう、武はお医者さんじゃないんだから、何も分かんないでしょ~」
 憎まれ口だが、それは照れ隠しだった。
「それもそうだな」
 武がニヤリとした笑みを浮かべた時――世界が一変した。

 結界――それもセイバー達が使うにでは無い、どこか虚無に満ちた空間。
 妖魔が現れたのだ。
「あ……あれ……」
 茜はどこか夢心地になり、ふらふらと立ち尽くす。
 それを囲む様に複数の気配が湧き上がってくる。
「全く、性懲りもなく……」
 武が気配に注意しながら呟いた。
「セイバーか? 悪いが邪魔はしないでくれるかな?」
 武と慧の正面の気配が実体化して、ザラザラした耳障りな声で言った。
 姿こそ人の形をしているが、ピンクっぽいブヨブヨしたモノで出来ていて不気味に蠢いている。
 一般人なら生理的な嫌悪感と、言い知れない恐怖を抱くだろう。
 だが、武はこの程度の化け物など見慣れている。
 特に動揺した様子は無い。
 慧を庇う為に前に出る。
「茜に指1本触れさせないよ」
「ほう、見逃してあげようと言うのに、退きませんか」
 その声を合図に他の気配も実体化した。
 2人を取り囲む様に4体。
 大人程の大きさの、粘液にまみれた肉腫だった。
 その姿をどう表現すればいいのか。
 生物を袋状にして、裏返したモノとでも言えばいいのか。
 一般人どころか並のセイバーなら、恐慌状態に陥ってもおかしくない程の禍々しい姿だった。
 しかし、武はまるで動じない。
 寧ろ、余裕すら感じさせる表情を浮かべていた。
 その両手に冷気が宿り、周囲の空気が凍ってキラキラと輝く。
 突如として4体の肉腫が、足が無いとは思えないスピードで距離を詰めた。
 恐らく接地面に無数の管足があるのだろう。
 そして2メートル程まで近付いた瞬間、肉腫から触手が2本飛び出し2人を襲う。
 その速さはまるで鞭の如きだった。
 目にも止まらぬ8本の触手は、しかし1本も2人の届くことは無かった。
 2人の寸前で、全てが凍り付いていた。
 見る間に本体の肉腫まで凍りつき、動きを止めた。
 武が静かに指を鳴らす。
 すると、全てが砕けてダイアモンドダストの様に宙に舞った。
「ば…ばかな……」
 1体だけ残された妖魔が、信じらないと言った声を出す。
「どうした? かかってこないのか?」
 武が挑発的な笑みを作る。
「貴様……その力は……まるで……」
 妖魔は続きを言えなかった。
 視界がキラキラと輝く。
 気付いた時には自分もすでに全身が凍っていた。
 凍らされた事を自覚出来ない程の、圧倒的な冷気。
 こんな力は如何にセイバーと言えど、人間には不可能だ。
 妖魔が知る限り、この力を持っていた者はただ1人。

 白銀の魔王――銀の女王だけだ。

 そう思った瞬間、視界が砕けた。
 いや、砕けたのは自分自身だった。
「あ……あれ? 私、いったい……」
 妖魔が散った事で結界が解除され、茜が夢から覚めた様な口調で言う。
「大丈夫か? 早く帰って寝た方がいいな」
 さっきまでの戦闘など無かったかの様に武が言う。
「……そだね。ありがと、武」
 どこか釈然としない物を感じながらも茜は頷き、2人は歩き出した。

「う~ん、遅くなっちゃったな~」
 暫く経った同じ場所に、1人の女子高生が通りかかった。
 長いポニーテールが揺れる。
 メリハリの利いた体に、理知的な瞳。
 皆のアイドル、小鳥遊弥生だった。
 もうすっかり遅くなり、周りに人影も無い。
 いくら生徒会長とは言え、普段ならこれ程遅くなる事は無い。
 だが今日は役員の茜が倒れた事もあって、仕事が遅れてしまった。
 皆を残すのも悪いと考えた弥生が、1人で残りの仕事をこなしたのだ。
 自分でも背負い込み過ぎかな~と弥生は思うが、こればかりは性分なので如何しようも無かった。
「……あれ?」
 考え事をしていた所為か、周りの景色が変わっている事に気付くのが遅くなった。
 道を間違えた?
 有り得ない。
 ここは通い慣れた通学路、しかも一本道だ。
 しかし、どう見ても見慣れた通学路とは一変していた。
「なに……どうなったの……」
 流石に怖くなり、辺りを見回す。
 すると、道端にピンク色した丸いモノがあった。
 大きさは弥生でも一抱えに出来る程度。
 たまに蠢く様は不気味ではあるが、その色と形からあまり恐怖は感じなかった。
 寧ろとあるキャラクターと被って見えた。
「まさか……かーび」
 言い掛けた時、突如ピンクの塊に大きな穴が開いた。
 まるで弥生が言い掛けたキャラが口を開いた様だった。
 そして物凄い勢いで空気を吸い込む。
「ちょ……ほんとに……そうなの!?」
 必死で吸い込まれない様に耐える。
 余りの吸引力に立っていられなくなり、地面に這いつくばった。
 それでもジリジリと吸い寄せられていく。
「や……やだ……やめ……」
 弥生は懸命に耐えたが、遂に限界が来た。
 叫び声と共にピンクの塊に吸い込まれる。
 取り込んだ弥生と共に、塊はグネグネと蠢いた。
 弥生は自分がおかれた状況に恐怖した。
 そんな弥生に何処からか声が聞こえた。
「……カラダ……ココロ……ヨコセ……」
 弥生は愕然とした。
 このままではダメだ。
 何とか脱出しようとするが、体は全く自由にならない。
 寧ろ、どんどん感覚が薄れていく。
 塊が動く度に、自分が吸い取られていく様な感じがした。
 塊は尚も弥生と共に動き続ける。
 まるで自らの体を弥生に馴染ませる様に。
 その度に自分が吸われていく恐怖に弥生は狂いそうだった。
 いや、狂った方が幸せだったのかも知れない。
 自分が食われ消えていく感覚を、弥生はゆっくりゆっくりと味合わされるのだから。
 途中、弥生の着ていた服が器用に剥ぎ取られ、外に吐き出された。
 やがて動きが激しくなっていき、塊が弥生に満遍無く纏わり付く。
 弥生の表情がどこか恍惚とした物になっていた。
 いや、最早“弥生“が誰なのかさえ分からなくなっていた。
 その手が豊かな胸を揉んだ。
「あ……ぁぁあああぁっ!」
 外見からは想像も出来ない様な卑猥な声が響く。
 まるで感触を楽しむ様に、両手で激しく揉みしだく。
「あっ! ひぃっ! あ……や……ぁぁああっ!」
 弥生の全身が快楽に震えた。
 やがて、手が下へと伸び、秘部に触れた。
「ひぎぃぃぃっ!」
 弥生は短い悲鳴を上げ、瞬時にイッた。
 しかし、手は弥生を休ませるつもりは無い様で、更に激しい愛撫を開始する。
「ひぃっ! ぁぁああああっ! ぎっ! ひぃぃぁあぁぁぁあぁああああぁあっ!」
 弥生は休む間も無くイかされ続けた。
 ……どれ位イッただろうか……。
 弥生の表情は淫蕩に蕩け切り、元の凛とした雰囲気はまるで残っていなかった。
 すると、弥生に纏わり付いていたモノが、蠢き始めた。
 弥生の肌を這いずり回ると、穴という穴から侵入したのだ。
「ごっ! がぁっ! ぐぼっ!」
 弥生から苦しげな呻きが、断続的に上がる。
 が、容赦なく体内に侵入していった。
 暫くして全てが入りきると、弥生の瞳に力が戻った。
「ふ~、危ない危ない、この体が通りかからなきゃヤバかったわ」
 口調は弥生だが、内容は全く別人である。
「まさかあんなヤツが敵になるとはね……何か手を考えなきゃ……」
 言いながら、裸のままの体を弄る。
「でも、この体が手に入ったのはラッキーかな……あぁん!」
 妖艶な表情で喘ぐ。
「マナも充分あるし……あんっ! 何より標的と顔見知りとはね……」
 弥生が不敵に笑った。
「これなら何とかなりそう……ひぃぃぁぁんっ!」
 自慰で軽くイッた後、服を拾って着替える。
 表情を凛とした、いつもの弥生に戻すと結界を解いた。
「さて、これから忙しくなりそうね」
 清楚な笑みを浮かべながら、弥生は帰路に着いた。

< 続く >

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