僕と、生徒会長と、 2話

2話:生徒会長 葉入怜

 しとしと雨がふっている。そういえば梅雨入りしたって今朝TVでやってたなあ、と悠がぼーっと教室から外を眺める。
 天気は雨。悠の気分もしとしと雨である。なぜなら今日と明日は中間テストなので、怜との個人指導がお預けなのだ。
 今日のテスト分は今やっている日本史で終了のためか、嬉しい気持ち半分、やるせない気持ち半分で、悠は全くやる気がなかった。
 っていうか悠は、この日はテストのこと以外ほぼ妄想しかしてない。例え、スパルタでもやっぱり好きな人には会いたいのである。
 怜の、高圧的な言動もここ数日は悠的に、気持ちよくなってきた気がする。性的に。

「おーい。悠、聞いてますかー? 応答求む―」

 ぼーっとしていた悠の頭に手を置かれ、ナデナデされたところで悠が気づく。いつの間にテストが終わったのか。どうやら悠の答案は、後ろの席の小宮山優子(こみやま ゆうこ)が回収したようだ。
 悠はにやけた口元を引き締めて、優子の魔の手から逃れた。

「君は相変わらず、頭撫でられるの好きだね。お昼と放課後は生徒会長になでなでされてるのかなぁ? 妬けるぅ~。私のことももっと見て。あ・な・た!」

 にやにやして悠をからかう優子。
 悠を更生させるために、昼と放課後に個人指導をしているという建前を作っていた悠と怜だが、その状態がかれこれ3週間も続くと、流石にクラスの皆も察するのである。

「別に、好きじゃないし、されてないから。ほっといて」
「え~そりゃないっすよ~。会長のために生徒会に出馬して、盗撮までした君が『好きじゃないから』は通用しないんだぜ?」
「そっちじゃなくて! 頭の方!」
「会長が好きなことは認めるんだ?」

 こいつうぜえ。そう悠は思いながら、ある意味怜よりも衝撃的な第一印象を持った、目の前の女性に反論する。

「おまえには渡さないからな! このレズ女!」
「ああん……。いい……」

 なぜ優子がレズだと言われているかというと、この学園に入って初めての授業がホームルームで、最初に自己紹介をしたのだが、その時の優子が

「ただの女には興味ありません。この中に幼女、美少女、美女美魔女がいたら、私のところに来なさい。」

 という高らかな同性愛宣言をしたためである。何番煎じだよ。

 実際ボーイッシュなルックスに、茶髪のショーットカットで170cmの高身長。そしてあけすけで、グイグイ行く変態的な性格が一部の女性に受け、既に告白も数回されている。
 更にクラスメイトにもその性格が受け、一躍人気者となったのである。ちなみにクラス委員長でもある。

「……で、実際どうなのよ? 少しは相談に乗ってやったんだから、報告ぐらいしろよ」

 そう、悠は恋の相談役にこの優子を選んだ。選んだというかそうせざるを得なかったというか。

 まずハカセに相談したところ

「お前やっぱり『小』を選んだんか! ほんっっっと、みみっちい奴じゃのう。……はぁ? 効果? そんなん教える訳ないじゃろうが。『小』っちゅうことは、そりゃあ『小』じゃからのう。やばいことしたら、いくら怜たんでも愛想尽かすんじゃないかのう。ぷぷぷっ、洗脳しといて嫌われるとか! あ、洗脳スマホは儂が預かるぞ。お前に預けておいたら壊されそうじゃからな。そうそう、データはしっかり転送されとるぞ」

 煽られただけで、全っっっく役に立たなかった。まあ怜にスマホの効果はあるようなので、悠は転園を先延ばしにしておいた。
 次に相談したのが優子である。唯一クラスで積極的に話しかけてくれて、恋愛については百戦錬磨の変態に、ご教授願い出る以外方法がなかったのだ。
 というのも、ハカセもコミュ障だが、負けず劣らず悠もコミュ障なのである。

 優子もいちいちからかってくるが、彼女がいなかったら悠は学園に残っていられたかも怪しい。
 優子という、性犯罪者よりも変態な彼女が味方なおかげで、悠は学園生活を送れているのである。悠もその点についてはものすごく感謝をしていたし、信頼を寄せていた
 ただし優子も怜を狙っているから、手放しには感謝するわけにはいかないのである。

「俺だって、小宮山が葉入先輩を狙ってるって知ってたら相談なんてしなかったよ!」
「いいじゃん。彼女に彼女が加わるだけだし」
「先輩はレズではありません、はい論破」
「私はレズじゃない娘を25人ほど導きました。はい、論破返し」
「茶髪の癖に! 校則違反だ! そんな髪色俺は認めない!」
「地毛だもーん。ああ、そっか、君は黒髪ストレートロング派だもんねー。茶髪ショートカット女子でまことにすいまめーん」
「古いしつまらない」
「うわー自分のこと卑下しちゃだめぢゅよー」
「誰が古くてつまらないだ!」
「あらきにしちゃいまちたか? ごめんなさいねよーしよし」
「俺の頭撫でるなって言ってんだろうがぁ」
「えー私君の頭撫でるの好きなんだけどなあ」
「この変態!」
「もっと」
「ビッチ!」
「いいね!」

 もうどっちも変態でいいんじゃないかなと、いつも通りに、クラスの総意がとれたところで、教室のドアが開かれる。18禁な二人以外は、その人に気づいてシーンとなる。
 あとで優子の、顔本の写真をネットの海に公開しといてやろう……とみみっちいことを考えていた悠も、ガチで感じている優子も全然気づかなかった。

「随分楽しそうね。須藤君?」

 葉入怜だった。びくっっと震える変態二人。特に悠の恐がりようは異常だ。悠は、顔から汗が滝のように流れ、本能的に怜とは逆の扉から逃げようとした。

「待て」

 動けなくなる、動かなくなる悠。命令に背いたらまた、おしおきを食らうからだ。
 もうどっちが洗脳されてんだかよく分からない状態にまで、悠は調教されたのだ。

「……先輩ぃ、俺もう漢字書き取り練習嫌です……。数学のりろん理解したくないですぅぅぅえいごのたんご嫌だああ!」

 疑問に思うクラス一同。この二人付き合ってるんじゃないの?

「皆さん、中間テスト前半お疲れ様でした。毎日毎日、うちの須藤君とそこの人のいちゃいちゃを見ていて苦痛でしょう。生徒会長として、この子をきっちり更生させますので、今しばらくお待ちください。ああ勿論、この子とは、お付き合いなどしておりませんので」

 青筋を立てる般若な生徒会長に何か言える勇気ある人は一人しかいなかった。

「怜先輩! 悠とまだ付き合ってないんですか!? それならこの小宮山優子と……ひぅあえ!?」

 異様な威圧感を滲み出しながら高速で優子に近づく怜。
 優子の身長も高いが怜は彼女よりも数センチ高いようで、怜は顔を傾けることもなく、優子の右耳に囁いた。

「私の、ゆう君に、手、出すな。出したら、殺す……」

 優子はブルブル震えたままぺたんと座りこんでしまった。

「じゃあ行きましょうか」
「せ、先輩、今日は補修ないんじゃ……。昼もなかったじゃないですかぁ」
「そんなにやりたくないの。それは反抗? 偉くなったわね。今日は科学でもやりましょうね。特別にいつもの2倍の量にしてあげます」
「いやだあああ」

 いつもの生徒会長室に連れられる悠。クラスメイト一同は会長には逆らわないようにしよう、と思ったのであった。

 生徒会長室で、怜は、悠に後ろから抱きつきながら、自分の勉強と会長としての仕事を早々に終わらせる。その後に悠は(強制的に)ずっーーっと勉強をする。
 これが早朝、昼、放課後の基本スタイルであった。ちなみに悠は、土日も学校に強制連行され、丸一日英才教育を受けていた。

 舞専学園は、名門の私立校でかなり頭のいい学校なのだが、悠は自宅に近いからというだけで記念受験のつもりで受験したら、見事すれすれで合格。
 悠はマグレ受かりを披露したのであった。
 そんなわけで、怜はずっと悠と一緒にいたいから、という理由で悠の勉強をちょっと見ようとしたのだが、あまりのあれっぷりに激怒。
 怜が洗脳されて、4日目からは朝早く怜が悠の家に現れ、起こされ、学校に拉致。(悠にとっては)拷問のような、天国のような日々を、過ごしていたのである。

「悠、塩化ナトリウムの化学式は?」
「うぐっ…し、C3PO?」
「死ね」

 この調子である。

「お、おかしいなー4日前に覚えたはずなんだけどなー」
「……。お家で復習やってないわね。言ったよね? お家に帰ったら同じとこやりなさいって。あなたを信じた私が馬鹿だったわ。これからは帰ったあとあなたのお部屋でお勉強をみてあげます」

「それだけは……。勘弁を……葉入先輩……」
「物覚えの悪い子ね。この部屋では私のことはなんて呼べって言ったかしら」
「……怜様です」
「よろしい。特別にニーソで触ってあげるわ。こういうの好きなんでしょ? この変態!」

 ちなみにこの部屋は机といすは一つしかない。どちらも大企業の社長が所持してるような豪勢な代物なのだが、二人はそれを共有して、使っていた。つまり超密着状態である。
 悠にとっては、大好きで初恋の女性が3週間毎日こんな調子なのだから、これで立つな。そっちに目覚めるな、という方が酷である。

「怜様……。まだですか?」
「何期待してるのよ。こんなにおったてて。なんて気持ち悪い。あなたなんてこれで十分よ」

 そう言うと、怜は悠を机の下に押し込み、ついでに軽く足蹴して正座させた。
 悠からはもう、丸見えである。今日は赤だ。

「はい、頭なでなでが好きなんでしょ? ん……しょっと」
「ふあぁぁぁ。ありがとうございます。ありがとうございます」

 左足を悠の頭にのせ擦る怜。悠はもうそれだけで幸せに包まれているような気分になった。

「はい。休憩おしまい。お勉強再開ね」
「え、そ、そんな。僕まだ全然」
「はぁ。しょうがないわねぇ。……ん? あらあらそんなに大きくして可哀そう。今日は下半身露出して勉強してもいいわよ? ほら早く」
「くっ」

 悠は怜のなすがままにされていた。
 ちなみに今回はかなり優しい方である。例えば、一昨日は全裸で正座しているのを写真に撮られ、その場で写真を現像し、その様子を言葉責めされながら、その後足コキで2回逝かされた。
 三日前はオナニーすることを命じられ、手を休めると、ベルトで叩かれた。その都度その都度、足で頭を撫でられ、多幸感が湧く。

 しかし悠もただ黙ってヤラれっぱなしではない。
 悠的には、正直なところこのまま怜に管理されたいという自我が芽生え始めているし、かなりマゾに目覚めてしまってるが、まだ、屈しない。
 もう黙ってはいられない。悠は優子直伝のテクニックで怜をメロメロにしようとした。反撃だ。逆転だ。

「怜先輩」
「あっ……本気で怒るわよ? 悠、私のことは……」
「葉入怜さん、僕はあなたのことが好きです。心の底から愛してます」
「…………っ!? ……んんっ!」
「だから今日は自由にさせてください。怜様と遊びたいです。デーt」
「ダメ。明日もテストあるでしょうが。速く脱げ。速く座れ。勉強しろ」
「はい」

 失敗である。ちなみにこのやり取りはほぼテンプレで、怜は内心めちゃくちゃ喜んでる。
 その証拠に悠は怜が湿っているなあと感じた、どこがとは言わない。

「……悠、デートは明後日ね」

 気付けば外は暗い。いつの間にか雨は上がったようだ。
 いつものように怜が主導権を握り、部屋を施錠して、学校の外へ出る。
 いつものように怜は人がいないことを十分に確認してから

「さて、今日からは一緒に帰りましょうね。みっちり優しく教えてあげる。今日もいっぱい頑張ったね。これからも頑張ろうね。よしよし」

(ほ、ほんとにうちに来るんだ……どうしよ)

 悠は頭をなでられる。ここだけくり抜けば、ただのバカップルなのであるが、やっぱり悠は怜より上の立場に立ってみたいなあと思う訳である。こういう時こそハカセの出番だ。

 実は5日前、悠はハカセから、新機能が後5日ほどで完成するから、その時、放課後にでも取りに来い。と言われていたのである。
 だから悠は、今日は怜と一緒に帰るのはまずいなあと思う訳だ。

「そういえば今日はハカセの家に行って、新機能のついた洗脳スマホで私を再洗脳するんだよね? どんな機能なんだろう。お姉ちゃんたのしみだなあ」
「…………っ!?」

 人は本当に驚くとき頭が真っ白になるそうな。それを利用して催眠術のテクニックに応用することもあるのだが、今の悠は良い実験体になるだろう。それぐらい驚いた。

「れ……れれ……」
「ああもうゆう君はかわいいなあ。ほら、生徒会長室以外で、人がいないところで、ゆう君はお姉ちゃんのことはなんて言うのかな?」
「怜おねえちゃん……」
「はい正解。もっとなでてあげます」

「それで、怜おねえちゃんはどうして、分かったの?」
「ん。知りたい? それじゃあ、ゆう君の頭貸して。ほら、後ろ向いて」

 悠が落ち着いたところで、当然の質問をする。場所は移って、悠の家。悠の部屋。
 怜が先に悠のベットに座ると、悠の身体ごと抱き込み、頭を、自身の胸に押し付ける。
 悠は、どくん、どくんと少し早い心臓の音を、目をつぶって聞きながら怜の言葉を待つ。

「実はね、盗聴器、仕込んでるの。ゆう君の、ブレザーの中。ほら、これこれ。全然気づかないゆう君も可愛いよ」

「だから、ね、お姉ちゃん知ってるよ。あの泥棒猫に毎日話しかけられてることも、なでなでされてることも。まあ、ゆう君がお姉ちゃんに、毎日愛の言葉を顔真っ赤にしながら、伝えてくれるようになったから泳がせておいたけどね。お姉ちゃんに好きだ! って言うゆう君、とってもかわいいよぉ」

「ど、どのくらい……?」
「うん? Eカップだよ」
「違くて、盗聴器を付けたのどのくらい前?」
「うーん、一週間前かなあ。あ、そうそう。今日ゆう君のお部屋に盗聴器仕掛けておくね」
「えっと……うーん」

 なんだか、悠は自分が信頼されてない気がして嫌だった。その様子を察した怜は交換条件に切り替えた。つまり、ブレザーの盗聴器を破棄する代わりに、部屋に取り付けさせて欲しい。ということだ。こちらは強行的に交渉を成立させた。怜に土下座までされては悠も断りきれないのである。ついでに、怜が居ないところでオナニーするときは、この部屋以外でするな、とも。怜は盗聴オナニーをしたいらしい。

 悠的にはもう好きにしてくれという感じである。

 落ち着いたところで、少しお互い無言になる。
 怜の心臓の音が速くなる。

「……じゃあ、怜お姉ちゃん、本題、いい?」

「……。うん、そうだね。まあいくらなんでも自分が変わりすぎだってのはすぐ自覚してたよ。人を好きになったこと、今までなかったし、恋をしたらこうなるのが普通なのかなあ、って思ってたけどそんなわけないよね」

 少し悲しげに笑う怜。悠は怜の表情を見ると、謝らずにはいられなかった。

「……。ごめんなさい」
「いいの。私は、あなたが好き、たとえ嘘の気持ちでもね。……。ふふっ、私から言うのは、初めて、だね」

 顔が熱くなる悠。好きな人に好きと言われて、とてもうれしい。でも悠の心は暗く沈んでいた。

「本当に気にしなくていいよ、ゆう君。多分、だけど、スマホの効果がなくなっても、あなたのことは好き、だから。きっかけはどうあれ、あなたと、この3週間過ごせて幸せでした。私の人生で間違いなく、最高の日々でした」
「ねえ待って、なんでそんなこと言うの? まるで、僕たちが」
「だって! 明日からは、違う私が、あなたのお姉さんに、なるんだよ。今のうちに、言っておかないと、さ」

 悠はその言葉を聞いた瞬間、目から涙が出るのを、感じた。
 そうだ、人を洗脳するということは、それまでとは、まるっきり違う自分になるということ。
 怜はすでに、自分が変わる覚悟をしている。自分が悠の良いように扱われているのに。自分がまた、死んでしまうのに。怜は悠を思ってすべてを受け入れている。
 悠はその、愛する人をただただ想う、健気な決意を感じ取った。同時に悠は、自分が背負う重い責任感に気づかされた。

「ご、めんなさい。先輩、僕、あなたが大好きで、一目惚れで、あなたと、ずっといっしょに、いたくて……」
「うん、わかってる。だいすきだよ」
「せんぱい……ぼく……ぼくは」
「ふふっ。泣き虫さんだね、悠は。この3週間、私はあなたからいっぱい元気を、私を想う一途な愛をたっくさん、くれた。だからわたしも、あなたの愛にこたえたい、わたしの、こと、あなたの、すきにしてほしい」

 悠と怜は強く抱き合った。いっぱい、いっぱい、泣いた。

「えへっ、ゆう君が、晩御飯、御馳走様でした。いっぱい美味しい、って言ってくれて、お姉ちゃん嬉しかったです。なんだか恥ずかしくなって、お風呂にいっちゃってごめんね。いいお湯でした。次はゆう君、お風呂どうぞ。私、準備して、待ってるね?」

 にかっと笑う怜。悠の両親は、怜の両親と一緒に、昨日から世界一周旅行に出かけている。
 勿論怜の仕業だ。そも、小型の盗聴器を軽々しくいくつも買えるだけの財力を持っている怜は、その両親も中々に裕福であった。
 娘にとことん甘い怜の親は、娘が初恋をしたと知るや否や、今日の、この日をセッティングするため、悠の両親を誘って海外へ出たのであった。

 と、いう訳で二人きり。
 やっぱり初めては彼氏の家よね! という怜の母親の鶴の一言により、悠が知らない間に、水面下で作戦が動いていたのである。

(……はぁ。先輩には勝てないなあ。ずっと尻に引かれそうだ)

 お風呂の中で一人考えた。彼女は絶対幸せにしなくちゃいけないな、と。
 気持ち新たに、いつもより、かなり丁寧に洗いって、風呂から上がった。

「お、おまた……ぶふぁ!?」
「お待ちしておりました。悠君。不束者ですが、これから、末永くよろしくお願い致します」

 怜は悠の布団にくるまっていて、悠が部屋に入ってくると全裸の自分を見せつけた。
 そして正座をし、三つ指ついてお辞儀したのである。
 怜が顔を上げる。悠は改めて怜に惚れ直した。怜のその表情は、今まで悠が見てきたどんな表情よりも凛々しくて美しい。少し緊張をしている様子が、その美しさに磨きをかけていた。

「悠君、こっちへ」
「は、はい」

 促されるまま、悠は怜の前に座る。
 怜は悠のパジャマを丁寧に脱がす。ここでもやっぱり怜が、主導権を握っていた。
 そして、怜は綺麗にパジャマを畳むと、少しいじわるな笑みを浮かべながら、悠のモノを優しく握る。

「くす、元気いっぱいだね」

 もうすっかり大きくなっていた。悠のモノが怜の手で、さらに大きくなる

「昨日、足で三回も抜いてあげたのに、とっても逞しいね。私、うっとりしちゃう」
「先輩、僕お願いがあるんです」
「今は呼び捨てにして欲しいかなあ。悠君、なんでも言って?」

「その、口と、手で、胸で、して欲しいんです」
「ふふっ。言われなくてもするつもりだったよ。手も口もおっぱいも全部初めてだから、うまくいかなくても許してね」

 怜は、また自分の胸に悠の後頭部を埋めさせ、優しくしごいた

「ほらほら、まだ触ったばっかりだよ。我慢しなさい」
「んああっ。これ、凄いです。れ、怜」
「くふっ、可愛い、もっと早くしてあげる、ほら、もういっちゃうの? お姉ちゃんの手だけでいっちゃうの? びくびく、びくびくしてるよ。可愛いねぇ」
「怜、怜、怜、ダメ、僕もうほんとまだイクのだめだから」

 悠は口の端からよだれを出しながら、湧き上がる射精感を必死に抑えた。
 怜は悠の気持ちいいところを的確に責め、時に早く、時にゆっくりと両手をつかって責めた
 3週間の調教の成果で、悠はすっかり、Mになってしまったので、優しく言葉で責められ、陰茎をしごかれるだけで達しそうになった。

「はい。おしまい。くふふっ。そんな悲しそうな眼をしないの。次はほら、君の好きな唇だよ」

 そこで怜は一旦悠を放す。実はこの二人はあんなに変態行為を繰り返していたのに、まだキスをしていなかった。

「ファーストキス。悠君からして欲しいな」
「怜、……怜! ごめん! 僕我慢できない!! ……んむうっ」
「ん……んん。ちゅ……ん。ふふっ。御馳走様。悠君のファーストキス、おいしかったよ。お返しに、大人のキス、してあげるね」

 今度は怜から唇を奪う。

「ふぁ…ゆう君の口おいしい。もっと開けて、そう、いくよ。……んっ、れろ、……じゅ…じゅるっ…」

 二人は夢中になってフレンチキスを繰り返した。その内、悠は我慢できなくなり怜の胸をもみ始めた。

「んんんっ! ぷはっ……もうちょっと優しく、んんんぅ、そうその調子で…んぁ…ちゅうう……レロッ…じゅるるる」

 お互いいつまでそうしていただろうか、ふと悠が唇から放す。
 怜の豊満な胸にむしゃぶりついた。

「んむっ。ど、どうしたのぉ。あっ、そこ、いいっ、好きっ! 手でも、してっ! っ、あっ、ち、乳首も、んんんっいい!」

 あまりの快楽に声がでてしまう怜。すぐに限界がやってくる。

「だめっ……もう来てるからっ……ゆう、くん、好きぃ、わたしいくっ……あっ……いいっっ!」

 怜の身体が大きく跳ねる。大きく痙攣する。怜はあやうく気絶しそうになった。

「はあっ、はあっ。……悠、君、ごめんね、先、逝っちゃって。はぁっ」

 激しく呼吸する怜。一人でするよりも気持ち良かった。とても幸せな気分に包まれた。

「ごめんね悠君、口とおっぱいは、また今度でいいかな、私、もうあなたのが欲しいのっ!」

 怜は悠を押し倒して、乗っかり、膝立ちになった。
 自分の秘所を悠に見せつけ。悠が何かを言う前に、悠のモノを擦り付ける。

「ああああっ!! いい! わたし、ゆう君のずっとほしかったの! もっと! ちょうだい! 好き! 大好き!!」

 怜は我慢できずに中に入れようとする。悠はあわてて止めるが、怜は意地悪な笑顔を浮かべて、思いっきり悠のモノを自分の中に向かいいれた。

「ゆう君、もういいよね、わたし、濡れすぎて、ほら、もう太ももにまでべったりついちゃって。ふふっ、ダメって言ってもしちゃうもん…………っつうう。くぅぅう! いっったぁい!」

 怜と悠の間から、赤い液体が流れ出た。怜は愛おしげにその純潔の証を見た。怜を慮りながらも、怜の、その笑顔に、散々焦らされ続けた悠は

「あはは、大丈夫大丈夫。ゆう君がいっぱい気持ちよくしてくれたから。んんっ、ゆう君のおちんちん、すごいビクビクしてる。もう出ちゃうの? 今までずっと我慢してたもんね、いいよ。出して。ほら、出して。気持ちよくなって。それで、全部、責任、取って。あなた、あいしてる」

 あまりの怜の気持ちよさに、悠は自分の意思で射精を止めることができなかった。
 怜に責められ、逆らえなくて、愛の言葉を囁かれると、悠は思いっきり怜の中に出して、意識を手放すのだった。

_______

【次の日 放課後】

「……で、中出しセックス決めて、儂との約束を忘れていた訳じゃな?」
「ふぁかせぇ、それは謝るぅ。ごめんねぇぇ。ふぁあああ」
「ハカセさん、私が悪いんです。私が誘ったから、悠君は悪くないです」

「はぁぁぁ。お主らのいちゃいちゃっぷり見せつけられてどうでもよくなったわ。データでも凄いことになっとったぞ。まあ割と毎日凄いけど」

 怜は、悠と結ばれたことでふっきれたのか、学校内でも、今、ハカセの家の中でも、かなりのいちゃラブっぷりを周囲に見せつけていた。全校生徒は爆発四散した。

 現在の二人の体制は、少しふかふかなソファーに怜が浅めに座り、怜が足を開き、間に悠を入れ、悠の顔を怜の胸に埋めさせ、抱き合ってる状態だ。
 時折怜が悠の頭を撫でている。リア充爆発しろ。人に謝るときは、おっぱいに顔埋めたままするんじゃない。

「それでハカセさん、新機能ってのは?」
「なんで怜たんがノリノリなんじゃ……。ほい、カシャっとな。よし。……いたっ、すみません、怜さん」

 怜がせんべいをハカセに投げつける。怜が悠にせんべいを食べさせる。

「はいっ。悠君、あーん。あんっ、可愛い!」
「お主ら場所をわきまえてやれふざけんな。……むぅ、新機能とはな、特殊性癖と性格変化を付けることに成功したんじゃ。その他秘密の機能もな。こっちは教えんぞぅ」

 悠が顔だけをハカセに向け返答する。怜はなんか悲しそう。

「ぷはっ。特殊性癖? 性格? ふぁああああ。くうんっ」

 頭をなでられ定位置に。怜はすごく嬉しそう。
 ハカセはワードで作ったのか、A2の紙を持ってきた。なんか書いてある。

「……。悠、お主、変わったな。わしが知っている悠はどこに行ったんじゃ……。はぁ、まあいい、色々種類があるぞ。見ろ。例えば積極的になるとか、消極的になるとか、オナニー癖つくとか、胸押し付けが好きになるとか、精液に興奮するとか、ヤンキーな性格、清楚な性格、明るい暗いなどなど」

「ぷはっ。やっぱりハカセって天才だよ! くうんっ」
「儂を褒めてくれるのはお主だけじゃよ。そこはかわっとらんようでよかった。よかった。はあ」
「ねえねえ、悠君、私これがいい! ヤンデレくっころ騎士!」
「怜さんはなんでそんなノリノリなんじゃ……」

 わーわー騒いだ後、結局は現状維持でいいか、となりお開きとなった。
 昨日の涙はなんだったのか。

「最後に聞いていい、ハカセ?」

 べったりと怜と腕組みして、頬をすりすりされている悠が、玄関口にて尋ねる。

「なんじゃ」
「危険度の詳しい話、教えてよ」
「確か悠君は私のために『小』を選んだんだよね? そのおかげで私たちは結ばれたんだ……。悠君ありがとう。大好きだよ」
「説明してやる感謝しろよ」

 無……被対象者(悠)に一目惚れ。性欲増進効果も。その日に即オナニーしたくなるレベル。

 小……超バカップル。対象者(怜)が、性的趣向を本人が認知しているか、していないかに限らず、被対象者(悠)に思いきりぶつける。

 中……忠実従順奴隷になる。倫理観が薄れ、被対象者(悠)に言われたことをすぐ実行するため、下手したらジェノサイド。

 大……端的に言うとヤンデレ。被対象者(悠)を、どんな方法を使ってでもいいから手に入れようとする。たまにボートに乗ることも。

「僕、もしかして一番良いのを引いたかもしれない」
「ちっ」
「おいハカセ、私の悠君に舌打ちするな! 悠君、私の変態な性癖に付きあわせちゃって、ごめんね。好きだよ悠君。」

「……そういえば怜さんの、好意変換システムなんじゃがな、あれもう、効果切っておいたぞい。3日前に搭載した機能じゃ。そんで、昨日来なかったから、腹いせで」
「え? じゃ、じゃあ怜……。」
「全然変わってないよ! むしろ昨日より悠君がかっこよく見えるよ! 毎日、昨日より大好きになってるよ!」
「怜っ!」
「ゆう君! ……んっ、ふぁぁぁお姉ちゃん幸せだよう。今日もいっぱいお電話しようね。絶対ゆう君から電話かけちゃダメなんだからね!? 私がリードするんですから! あなたはドキドキお姉ちゃんを待ってればいいの! それで明日のデー」
「お主ら、話題を振っておいて儂を無視するのは辞めろ。いい加減にしろ、この、バカップル夫婦がぁ!!」

 今日も雨。でも、悠と怜の心は晴れ模様だった。

――――

「……さ、散々いちゃいちゃしおって! ど、ど、ど、童帝を怒らせるとどうなるか。目に物を見せてくれるわ。こ、このままハッピーエンドで終わらせてたまるか。儂の恩返しは、しつこいんじゃからな。儂がお主を、更に男にしてくれようぞ。くくっ。ふはははははは。見える、見えるぞ儂には! 悠が世界を支配する姿がな!!」

 第8研究室、とプレートがかけられている、ハカセの研究室。
 数台のスマホが巨大なコンピュータにつながっている。しかもそのコンピューターは、さらに何台か連結しているようだ。

 スクリーンがある。

 画面には

『本当に、葉入怜及び須藤悠の、お互いの、お互いへの好意と記憶を消去しますか?』

 とある。ぼさぼさに伸びた白髪。老人の目は隠れている。その眼は見えないが、迷いはないようで、ボタンを……押した。

< 続 >

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