SAIMIN GOで遊ぼう! 第3話

第3話

「あーもー男子!! 遊んでんじゃない!!」

 教室に茉理の声が響いた。

 今は掃除の時間。一部の男子がさぼっているところを、箒をもった茉理がどやしつけたのだ。

「えー、んじゃ乳揉ませてくれたら真面目にやるわ」

 にやにやと笑う男子たち。茉理がジト目になる。

「ほー。んじゃあたしの乳揉ませたるから、お前らのちんこ揉ませてもらおうか」

「へ」

 男子たちが間抜けな声をもらす。その隙をついて、茉理の手が男子たちの股間に伸びた。

「おらー松岡おまえのちんこ、どないなもんか見せんかいコラー!!」

「ぎゃああ! やめろ!! 変態女!」

「いまさら乙女みたいな反応すんじゃなーい! 嫌ならさっさと机運ぶ!」

 そう言って、茉理はゴミの入った袋を持ち上げた。

「おいっしょ……じゃーこれ捨ててくるから」

「はーい、おつかれさま」

 他の女子に手を振って教室を出る茉理。

「ったく馬鹿どもがー」

 ため息をつきながら焼却炉に歩いていく茉理は、連絡路でスマホを掲げた男子生徒を見つけた。こちらにカメラを向ける格好で立ち尽くしている。スマホゲームでもやっているのだろうか。

「おいおい、先生に注意されちゃうよ……ちょっと君、そこにセンセーい――」

 男子の指が動く。茉理の意識は闇に落ちていった。

「よし、捕獲……っと」

 俺は立ち尽くした茉理を見て、にんまりと笑った。

 光莉や麗華もいいが、こいつみたいに普段元気のいい女がこうやって捕獲されてると、また違った良さがあるというものだ。

「『ついてこい』」

 命令を打ち込んで、俺は技術第二室に向かう。今日は生徒会が活動しているので、生徒会室は使えない。一つの場所を使い続けるのはリスキーだしな。

 人気のない技術棟の階段をあがり、三階の技術第二室に入る。木のにおいが鼻をくすぐった。学校はクソだが、こういう人気のない教室の感じは嫌いじゃない。

「さて、『お前の名前を言え』」

 命令にあわせ、茉理が口を開く。

「はい……わたしの名前は桑原茉理です」

 うむ、バッチリかかってる。

 この名前を言わせる命令は、いわば俺がこいつのご主人様であることの確認作業みたいなものだ。この何気ない行為が、これからの興奮をより引き立たせる――まあ人には、そいつにしか理解できなこだわりがあるのだ。

「よし、『服を脱げ』」

「はい……服を脱ぎます」

 命令に従い、もたもたと服を脱ぎはじめる茉理。ブラウスが無造作に地面に捨てられ、スカートが脚を伝い落ちる。と、下着まで脱いだところで、茉理の動きが止まった。

「あん? 何やってんだ。ったく……『全裸になれ』」

 やっとそれで下着を脱ぐ茉理。

「ふーん……乳のでかさは小笠原より小さいけど、結構いい形してんじゃねえか」

 俺は無造作に茉理の乳房を揉んだ。ほどよい柔らかさが手に心地よい。

「どれどれ、まんこは……使い込んではいないみたいだな」

 俺はかがんで、茉理の女性器を人差し指と親指で割り開いた。ピンク色の健康的な肉が、茉理の呼吸に合わせて動いている。

「ふむ……『質問に答えろ』。お前処女?」

「はい、処女です……」

 淡々と答える茉理。

「なるほどね。こいつは小笠原とちがって、そこそこ遊んでそうだと思ったが……掘り出しもんかもな」

 ぐにぐにと茉理の股間を揉みながら、俺はこいつの顔をしげしげと眺めた。俺でも知ってるくらい、こいつは男子に人気がある(麗華や小笠原は別格だが)。

 誰かしらこいつをいただいた男がいてもおかしくないはずだが……小笠原とべったりすぎるのが、男子を敬遠させているのかもしれない。

「お前は好きな男はいるのか?」

「……C年の、真壁くん」

 真壁? たしかにそんな名前の奴がクラスメートにいたような……そうだ、たしかサッカー部のエースだったか。背も高くてイケ面の女子にモテモテのリア充野郎。

「なるほど、なかなかの面食いだなお前」

 とは言っても、顔面偏差値的に、こいつと真壁ならお似合いか。少なくとも俺とよりはつり合いがとれてる……自分で言ってて悲しくなってきた。

「よし、今日のお楽しみ方法決定。……命令っと」

 俺がコマンドを打ち込むと、茉理が小さく呻いた。

「あ……れ」

 焦点が定まっていなかった目が、俺を捕える。

「わっ! ま、真壁君?」

 そう。茉理には俺がモテモテサッカー部イケメンの真壁くんに見えてるはずだ。

「って……ひゃあっ!! なななななな、なんであたしはだ、はだかっ!?」

 そう言うなり、茉理は後ろを向いて、しゃがみ込む。一瞬で首筋まで真っ赤だ。

「恥ずかしがるなよ、桑原」

 あまりキャラを似せようとしてないが、まあSAIMIN GOはの力なら誤差の範囲内だろう。

「や、やだ、真壁くん、み、見ないで……」

 消え入りそうな声。こいつこんなキャラだったのか。

「なんで恥ずかしがるんだよ。俺とお前は恋人同士だから、裸を見てもなんもおかしくないだろ」

「はぇ……あたしと真壁くんが……恋人どうし……」

 服を脱ぐときといい、どうもこいつは催眠のかかりが悪いのだろうか。

「そうだよ、今から結ばれようってお前が言ったんじゃないか」

 俺の言葉を無条件で信じるよう命じてあるので、茉理に偽の記憶を上塗りしていく。

「あ……そうだ……あたし……ご、ごめん真壁くん、ちょっと緊張してたの。嫌わないで」

「大丈夫だよ」

 そう言って俺は茉理の胸と股間に手を伸ばした。

「ひあっ」

 茉理はびくっと大げさなほど反応する。SAIMIN GOで感じやすくしてあるためだ。

「どう? 気持ちいい?」

「はあっ……だ、だめぇっ」

「駄目って何が駄目なんだ?」

 女性器に浅く指を出し入れすると、瞬く間に茉理の膣内は湿ってきた。

「気持ちよくないのか?」

「うあっ……そ、それは……」

「ほら、言えよ桑原」

「ううっ……きもち、いいです……」

「ふふふ、可愛いよ桑原」

 甘ったるい三文芝居だが、こういう余興は真面目にやってこそ意味がある。俺は優しく茉理にキスをした。

「ん……ちゅっ」

「まかべくん……んっ」

 すぐに恥ずかしがって逃げようとする茉理の頭を捕まえて、舌を差し入れる。最初は明らかに逃げ腰だった茉理だったが、次第に積極的になってきた。

「ちゅっ、んっ桑原、好きだよ」

「ちゅぱ、はっ、真壁くん……あたしもっ」

 お互いに唾液を送りあって飲ませあう。俺が顔を引くと、茉理は咄嗟に寂しそうな顔をした。なかなか可愛い奴め。

「桑原、脚をひらいて」

 俺はそう言って、茉理を机の上に押し倒した。

「それじゃいれるよ、桑原」

「ね、ねえ、真壁くん……お願いがあるの」

 めんどくせえな、こいつ。

「なんだい?」

「……茉理って呼んでほしい」

「わかったよ。……いくよ、まつり」

 俺は内心、この道化芝居にげらげら笑いながら、チンポの先を茉理の女性器にあてがった。

「うん……来て」

 俺は茉理の膣を一気に貫いた。

「うおっ……!」

 ぐねぐね動く麗華のまんこや、ふわとろな光莉のまんことちがって、茉理のまんこは愚直なまでにペニスを締め付けてくる。これでは一分持たずに出てしまいそうだ。俺は茉理の太ももを軽く叩いた。

「ま、まつり、少し力抜いて」

「え、でも、ど、どうやって……やだ、はずかしいよっ」

「ぐおっ……ゆ、ゆっくり深呼吸するんだ」

「う、うん……すぅ……は、はぁぁ」

 なんとか動くだけの余裕が出てきた。

「じゃあ動くよ、まつり」

 俺はゆっくりと腰を動かす。俺の好みのセックスではないが、これも余興だ。

「うっ……ぐすっ」

「……?」

 見ると、茉理が顔をおさえ――嗚咽を漏らしていた。

「ど、どうしたのまつり? 痛かったかい?」

「ううん、違うの……」

 そう言って首を振る茉理。……一瞬SAIMIN GOの効果が切れたのかと思って焦ったが、どうやら違うようだ。

「幸せすぎて……あたし、光莉と違って女の子っぽくないから、こうやって好きな人と一緒になれるなんて思ってなかったから……ぐすっ」

 まあ『お前が好きな人だと思い込んでるだけの別人』なんだけどね。俺は茉理に優しく囁いた。

「俺も幸せだよ、まつり……ねぇ、膣内に出していいかい?」

「えっ? で、でも、あたしたちまだ大人じゃないし、妊娠しちゃったら……」

「茉理に俺の子供を産んでほしいんだ……わかるだろ?」

 俺はそう言いながら、茉理の頬を優しく撫でる。茉理が表情をとろけさせた。

「……わかった、いいよ。あたしも真壁くんの子供、ほしい……」

 俺は別に子供を産めとは命令してないので、これはこいつの本心だ。もちろん、俺が真壁クンだと思い込んだ上での、だが。

「嬉しいよ、まつり。じゃあ出すよっ!」

「うん……きてっ」

 俺は腰を茉理の下腹に押し付け、射精した。

「はぁっ……来てるっ……真壁くんの……っ」

 茉理がぴくぴくと躰を震わせる。俺は最後の一滴まで、茉理の中にザーメンを放った。ペニスを引き抜くと、膣口からごぽりとザーメンが垂れ落ちた。

「ふー……出した出した」

 俺は一気に冷静になって、この小芝居への情熱も消える。

「もう一回キスしてほしいの……」

「は? もうそういうのいいから」

「え?」

 一瞬何を言われたのかわからないという感じで、きょとんとした茉理にスマホを向けてマインドを再捕獲した。茉理の目から光が消える。

「この方法、おもしろいけど一回でボール二つ使うのは問題だな……昼間の小笠原とので、もうストックねーぞクソ」

 俺は悪態をつきながら、記憶を消すための命令を打ち込んでおく。

「そうだ、こいつは真壁への恋心を消してレズにしよう。こいつはおもしろいぞ。犯したいほど小笠原光莉に欲情してる、と」

 これで経過を見守って、こいつらの関係が壊れていくのを楽しもう。オナニー動画アップロードと合わせて、いい余興になるぞ。俺は自分の発想に悦に入りながら、その場を後にしたのだった。

「……まつり遅いなあ」

 光莉は校舎裏で校舎に背をつける形で体育座りしながら、つぶやいた。

 茉理から先行偵察を命じられて、件の校舎裏におっかなびっくりきては見たものの、そこには猫の子一匹見当たらず

「LINEも未読だし。掃除が長引いてるのかな……」

 もそもそと腕で膝を引き寄せる。体育ぼっち見学歴の長い光莉は、体育座りに慣れているので、気を抜くとこの姿勢になる。茉理に「ぱんつ見えてる!」とよく怒られるが、ここならぱんつが見られるのを気にする必要はない。

 湿った土の感触を尻に感じつつ、光莉は顎を膝がしらにぐりぐり押し付けた。

(……オナニーしたいな)

 ふとそんな考えが頭をよぎる。

 光莉は午後の授業中の間、たびたび自慰をしたいという欲求にかられていた。

 周りに気をくばりつつ、そっと股間に指を伸ばす。

「わ……すっごい濡れてる」

 クロッチ周りの生地が、愛液を含んでぼってりと重みを増している。気が付かなかったが、授業中ずっとこうだったのだろうか。

「うう、気付いちゃうと気持ち悪い」

 生地と肌の間に指を差し込んで、空間をつくる。肌に張り付いていた部分が剥がれる感覚に、光莉は首をすくめた。股間にひんやりとした空気を感じる。

「誰も……こないよね」

 あたりには人の気配はなく、鳥のさえずりしか聞こえない。光莉は指をそっと秘部に伸ばす。

「ん……」

 ずっと疼いていたそこは、思った以上に敏感になっていて、光莉は思わず声を漏らした。

「っ……だめ、ここ外だよ……」

 自分に言い聞かせるような言葉と裏腹に、入り口を這いまわる指が止まらない。

「~っ、だめ、だめだから」

 背をまるめて、本格的な行為に入る前に、満足するよう自分に言い聞かせる。しかし光莉の身体と指は全く主の言葉に耳を貸さない。準備万端と判断した指が膣に差し込まれた。

「んんっ!」

 甲高い声が漏れて、思わず顔を上げて辺りを見回す光莉。やはり人の気配はない。

 そこからはもう自分を遮るものは存在しなかった。指が身体の奥まで差し込まれ、空いてる手は胸に伸びる。

「はっ、んっ……あっ」

 普段の‘宿題’で学んだ、自分の快感ポイントを的確に刺激する。もはや光莉の頭には気持ちよくなることしかない。

「んっ、ふっ! っ!」

 校舎にもたせ掛けていた背を、ずりずりと尻を前にずらし、ほとんど仰向けになるような姿勢で脚を開いて自慰にふける。

「はっ、そこ……すごっ」

 ブラジャーをずらして乳首を愛撫しつつ、逆の手でクリトリスを円を描くように撫でさする。愛液がとめどなく溢れて、股の間の土を黒く変色させていく。

 光莉の自慰は、生真面目な本人の性格を反映するように、丁寧で、周到で、真剣だった。だからだろう、光莉は土を踏みしめて近づいてくる音にぎりぎりまで気づかなかった。

(!? 誰か来る!)

 声に気付いて、びくんと顔を上げた光莉。しかしすでに遅すぎた。

「んで、森がよー」

 校舎の角から、男子生徒二人が姿を現し――光莉に気付いた。

「……あ?」

 屋外で、あられもない姿を見せつけている少女に、一瞬あっけにとられる男子生徒二人。その虚をついて、光莉の手が動いた。

 スマホを取り出し、SAIMIN GOを起動。男子生徒をロックオンし、二人続けて捕獲。

 マインドを捕えられた男子生徒二人は、虚脱した状態で立ち尽くし、それを見た光莉はほぅとため息をついた。

(あ、危なかった……)

 普段の光莉には信じられない早業である。慌てて身なりを整えようとして――はたと思いとどまった。

(この人たち、意識、ない……し)

 男子生徒のほうを気にしながら、もういちどそっと股間に手をやる。意識がないとはいえ、男子生徒の顔は光莉の股間を向いている。光莉はひきつりそうな羞恥心を感じながら、膣口に指を差し入れた。

「――っ!!!」

 その瞬間に光莉が感じた快感は、先ほどとはくらべものにならない激しさだった。

(わっ、わたし、オナニーするところ見られてッ……!)

 死ぬほど恥ずかしい、はずなのに気持ちいい。光莉にとって、完全に新しい世界だった。

「はっ! こ、これっすごっ……」

 見も知らぬ男子生徒の目の前で、がくがく腰を浮かせて指を出し入れする光莉。普段の姿からは想像もつかない痴態をさらしながら、光莉はもだえ狂った。そしてじきに限界が訪れる。

「い、いくっ、くぅっっっ!!!」

 男子生徒に報告するかのように、口に出して絶頂に達する。ぴゅ、と膣から潮がほとばしった。

「はぁ……はぁー……」

 激しい絶頂を体験した光莉は、しばらく顔を覆って息を整えていた。

(わたし……すごい変態みたいなことしちゃった……)

 いっきに恥ずかしさがこみ上げてくる。立ち上がって下着を直し、土の染みを靴でこすってごまかした。そして、そこでやっと男子生徒二人に意識が向く。二人ともC組の生徒だ。名前は……葛西と、福田だったか。

「そういえばこの人たち……もしかしてまつりの言ってた人たちなのかな」

 茉理に送ったLINEをチェックするが、やはり既読はついていない。

(どうしよう……)

「と、とりあえず『今見たことは忘れる』。後はタバコを吸うな? でもこの人たちじゃないかもしれないし……そうだ」

 光莉は新たな命令を打ち込む。

「『小笠原光莉は親友である』、と。よし、‘にがす’」

 二人のマインドを戻すと、男子生徒二人は一瞬ぶるっと震え、そして目の前に現れた光莉に目を丸くした。

「あれ? 光莉じゃねーか。なにやってんだ、こんなところで……って、どうした?」

 話しかけられた光莉は、男子生徒から顔を背けていた。

(はははは恥ずかしいっ! さっきオナニーしてるところ見られてた人と会話するの!)

 SAIMIN GOの力は疑いようがないが、それとこれは話が別である。顔から火が出そうだ。

「……だいじょっぶか? 保健室行くか?」

 福田が心配そうにのぞき込む。なにせ光莉はすでに親友だからだ。

「だ、大丈夫。なんでもないの、なんでも。二人とも偶然だねっ」

 やや声をうわずらせつつ、光莉はなんとか二人と向き合うことに成功する。

「おめー桑原と帰らんかったんか」

 葛西が言った。葛西は背が高めで、襟足が長めのいかにもやんちゃをしている感じの髪形をした生徒だ。福田は背が低く、髪もボウズに近い。

「うん、今日はちょっと。二人ともいつもここにくるの?」

「おう、まあいつもはコースケもいっけど……」

「じゃあタバコ吸ってるのってやっぱり……」

 と言いかけた光莉は、口をつぐんだ。

「コースケって……飛び降りた……」

「だよ。あークソ、意味わかんねー! ……あ、光莉のことじゃねーからな、うん」

 福田が苛立たしげに声を上げた。そして懐からタバコを取り出す。火をつけようとするのを、光莉はあわててとめた。

「だ、だめだよー。先生に見つかったら停学になっちゃう」

「つってもよ……あーもうわかったよ。光莉に言われちゃしかたね」

「……町田君、悩みとかあったの?」

 光莉はおそるおそる聞いてみた。今まではSAIMIN GOをそんなに積極的に使うつもりはなかった光莉だが、このアプリがあれば人を救えるかもしれない――そんな想いが胸をよぎった。

「悩み? わかんねぇけど、いきなり飛び降りるとか意味わかんねえよ」

 葛西が天を仰ぐ。火のついていないタバコを咥えたまま、ぐにぐに動かした。

「普通ダチに相談するじゃん!? 違うか?」

「う、うん、そうだね……わたしもそう思うよ」

 光莉はあたふたしながら頷いた。二人にとっては光莉は『昔からの親友』だが、光莉にとってはいきなり人間関係の輪に飛び込んだ形なので、まったく距離感がつかめずにいる。

「あー、でもなんか変だったよな、あの時」

「あの時?」

 福田がうなづく。

「飛び降りる直前、いきなり立ち上がったらふらふら出てってさ。いつもションベ……トイレ行くときはなんも言わんから、その時もそうだと思ったけどよ。なんか目が明後日の方向いてたわ」

「へんなもんでも食ったんかなぁ」「うーん……」

 黙りこむ二人とは別に、光莉は今の言葉に違和感を感じた。

『いきなり』『ふらふら』『目が明後日の方向いて』

(これって……)

 その時、光莉のスマホがLINEの通知音を鳴らした。

「あ、茉理からだ」

『ごめんごめん! 友達と話し込んじゃって。今どこ?』

 メッセージと共に、ハート形のスタンプ。

 茉理はスマホをしまうと、二人に声をかけた。

「わたしそろそろいくね。あ、葛西くんそこの地面ちょっと濡れてるから気をつけて」

「ん? おお、サンキュ。んじゃな」

 教室に戻る光莉の胸の中で、ある疑念がわきあがっていた。

『ザンガクブソクデス』

「あれ?」

 光莉は目の前のモニタに目をやった。確かに金額表示にマイナスの記号がついている。

「まだお財布ケータイ、おかね入ってたと思ったんだけどな……」

「どうなさいますか?」

「げ、現金で払います」

 光莉は慌てて小銭入れを取り出した。しかし財布の中には。

「じゅ、じゅうはちえん……」

 小学生以下の手持ちである。頭の中が真っ白になってフリーズした光莉の横から札が差し出された。

「千円で。あとこれも」

「あ、まつり」

 ありがとうございましたという声を背に、二人はコンビニを出た。

「むー……」

「なんでさっきから膨れてんの?」

「だって、親しい相手ほどお金の貸し借りしちゃいけないってお父さんに言われてるし……」

「し、親しい、ね。へへ……」

 初歩的な失態をさらしてしょぼくれている光莉は、茉理の妙な反応や、その視線に含まれる熱っぽさに気が付かない。

「じゃ、じゃねひかり。また明日」

「えっ、うち来てよまつり。すぐお金返したい」

「そ、そう……じゃあせっかくだし、お邪魔、しよっかな」

「ただいま~。まつりも一緒」

 光莉はそう言って、トントンと階段を上がっていく。茉理も、今にいる光莉の母親に挨拶をして後に続く。

「はい、720円」

「あ、ありがと」

 金を返した光莉はベッドの上に腰掛けて、茉理は床の上に座っている。二人の間に、微妙な沈黙が流れた。

「そ、そうだ、ひかりにききたいことがあるんだけど!」

「え、なに?」

 ぼんやりと『オナニーしたい』と思っていた光莉は、慌てて顔を上げた。

「ひかりのSAIMIN GOってほかの人でも使えるの?」

「ほかの人?」

 考えても見なかった言葉に、光莉はきょとんとした。

「んー……どうだろ。試したことないし……」

「じゃあさ、あたしがひかりにSAIMIN GO使って、なんか叶えてあげる。やってみない?」

「わたしに?」

「うん、あたしがグリーンピース食べれたみたいにさ」

「ううん……」

 顎に手をあてて考える光莉。

(なんだろ……速藤堂先輩みたいに背を高く……無理か)

「……もう少し積極的になれるようにとか」

 おずおずと口にした光莉の言葉に、茉理が身を乗り出した

「いいじゃんいいじゃん。それやろーよ! スマホ使っていい?」

(なんでこんなにSAIMIN GO使いたがってるんだろ?)

 不思議に思いながらも、光莉はスマホを茉理に手渡した。今更スマホに見られて困るものなど入っていないし、なによりSAIMIN GOという強大な力を自分一人で使い続けるということに、後ろめたさににた気持ちが光莉にはあった。

「じゃ、いくよー」

(マインドを捕獲されるってどんな感じなんだろ。ちょっと怖いなあ……)

 茉理が慎重にスマホ画面の照準をあわせ、指を滑らせる。襲い来る虚無感にデジャヴを覚える間もなく、光莉の意識は闇に落ちていった。

「……ひかり?」

 茉理の声に、光莉は全く反応しない。

「や……た……」

 茉理は、興奮で体温が一気に上昇するのを感じた。指の先にまで血流が充足する。

 友情と愛情の垣根を意識し始めたのはいつからだろうか。この子供の頃からの親友に対する劣情が、いまや隠すのも難しいほどに茉理の中で膨れ上がっていた。

 おそるおそる、光莉の頬に触れる。顔にかかっている髪を指で弄んだあと、茉理は親友の首筋に顔をうずめた。

(ひかりの……におい……)

 シャンプーの香りと、一日をすごした汗のにおい。茉理は思い切り息を吸って、その芳香を肺に流し込んだ。

「やっばい、これ……」

 顔を離して、おもわず口から垂れていた涎をこする。もう理性のタガははじけ飛んでしまった。

 光莉の身体を、そっとベッドに押し倒す。そして制服を上にたくし上げた。ピンク色の地味なブラ。

「ブ、ブラ外すよ、いいよね」

 返事が無いことを知りつつも、うわべだけの了解を求める。無言はOKだと自分本位な解釈をして。

 カップが取り払われ、解放された光莉の双丘が重力に負けて僅かに広がった。

 光莉は制服の上からでもわかる巨乳だ。白い胸上から頂点への盛り上がりはすごい存在感である。そしてそのてっぺんの桜色の、神聖な突起。

 茉理はためらうことなく、乳首に唇をつけた。

「ちゅぱっ……はむっ……」

 光莉の乳首を舌で転がす。もちろん光莉の反応はないが、それでも舐めてるだけでイきそうなくらい茉理は興奮していた。

 十分以上も乳房を愛撫していただろうか。茉理はそっと口を離す。刺激されてつんと勃った乳首が、唾液に濡れて光って見える。

「ひかり興奮してんじゃん。あたしは……うわ」

 茉理が自分の股間を確認すると、ひくくらい濡れていた。無意識のうちにイったのかもしれない。

「こっちはどうだっと」

 平静な口調を装いながら、光莉のスカートをめくり上げる。茉理は薄ベージュの下着の真ん中に小さなシミを見つけた。それを見た茉理の中に、嗜虐心が芽生えてくる。

(あたしがこんなに濡れてるのに、この娘は)

 茉理はスマホを手に取った。光莉がすごく丁寧に毎回喋ってくれるので、どういう使い方をすればいいかは、大体わかっている。

「こういう感じで……記憶はない、と。送信!」

 ボタンを押すと、目を瞑っていた光莉のまぶたがぴくぴく震え、ゆっくりと目が開いた。

 上半身を起こした光莉は、ぼんやりと茉理を見て、不思議そうに言った。

「……おねえちゃん、だあれ?」

(よしっ! 成功!)

 茉理は飛びつきたくなる衝動をおさえながら、優しく微笑んで見せた。

「おねーちゃんはねー、ひかりちゃんの先生!」

「せんせいなの? 何のせんせいなの?」

「それはねー、えっちなことの先生だよ」

「えっちなこと? えっちなことってなあに?」

「うん、それはね。……ちょっとひかりちゃんのおっぱい触るよー」

 そう言って、茉理は光莉の胸をやさしく愛撫した。

「どう、おっぱいこうやって触られると」

「んっ……んーとね、なんかへんなかんじ……」

「それが気持ちいいってことなんだよ、ひかりちゃん」

「そうなんだ! すごーい!」

 キラキラした目でこちらに目を向ける光莉を見て、茉理の中で何かがはじけ飛んだ。

「じゃ、じゃあひかりちゃん、えっちの授業続けるね。ぱんつ下ろすよ」

 光莉のパンティーをずらすと、薄めの陰毛が生えそろった股間が露わになる。控えめなスリットから僅かにサーモンピンクの肉がはみ出している。

(これがひかりの……おまんこ……)

「お、おねえちゃん、はずかしいよ……」

 女性器を間近で凝視する茉理に、精神だけ幼女化した光莉が、怯えた声を上げる。

「恥ずかしくないよ。ひかりちゃんのおまんこ、すごくきれいだから」

 茉理はそう言って光莉の女性器に舌を伸ばした。スリットをほぐすように舌でなぞったあと、優しく舌を差し入れる。光莉が細い悲鳴を上げた。

「だめ、そこきたないよっ」

「大丈夫……おねちゃんに任せて……ちゅっ、れろっ……」

 脚を閉じようとする光莉を手で押しとどめて、茉理はクンニを続ける。次第に光莉の女性器から出る愛液の量が増え、粘り気がましてくる。

「だ、だめぇ……」

 光莉が顔を手で覆って力なく首を振るが、その声には艶が含まれている。

「ちゅぱっ、んっ」

「あっ、あっ」

 声のトーンを上げていく光莉。茉理も自分の手で股間をまさぐって、光莉にペースを合わせて自分を高めていく。

「お、おねえちゃん、ひかりもうだめなのっ、もうなんかだめなのっ」

「ひかりちゃん、お姉ちゃんの手を握って。……一緒にいこ?」

 幼光莉が、わけもわからず伸ばされた手を握る。快感に比例するように、痛いほど握りしめられるのを感じながら、茉理は深く、深く舌を差し込んだ。

『っくぅーっ!!!』

 二人の声が見事にハモった。光莉の潮を顔で受け止めながら、茉理は余韻に浸る。

「はぁ……はぁ、ひかりちゃん?」

 光莉はぐったりしたまま、応える気配はない。

「気絶しちゃったか。なんでこう可愛いかなぁ」

 茉理は光莉の頬にキスすると、光莉の股間を丁寧に拭いて下着を身に着けさせた。SAIMIN GOを使う前の状態にしてベッドに座らせ、そしてスマホをとったあと、はたと動きを止めた。

(……これがあれば、光莉をあたしに惚れさせることもできる)

 茉理はごくり、と喉を鳴らした。

 今みたいなことを、光莉の同意のもとでできる。それはなんと甘美な誘惑だろう。茉理はSAIMIN GOの画面を穴が開くほど見つめた。

 それから何分経っただろうか。茉理が打った文面はこうだった。

『あなたはバイである』

「こ、これならそこまでずるくない、よね……? あたしが嫌なら光莉も拒否できるし……うん、ずるくない」

 そう言いながらも、そこからさらに数分。そして茉理は意を決したように、目をつむって送信。そのあと間髪入れず‘逃す’ボタンを押した。

「……んぅ」

 意識をとりもどした光莉は目を擦った。運動をした後のように妙に身体が重い。

(SAIMIN GOを使われた後ってこんな感じなんだ……)

「あ、ひ、光莉、よーっす」

「……どうしたの?」

 茉理がぎくしゃくした動きでスマホを返してよこしてくる。

「どう、SAIMIN GOの使われ心地は」

「んー……ふつう、かなぁ」

 光莉は手を握って、開いて、した。当然だが目に見えた変化はない。

(これで積極的になれてるのかなぁ)

「じゃ、じゃああたし帰るね!」

「あ、じゃあ玄関まで……」

 ベッドから立ち上がろうとした光莉は、踏ん張れずにベッドに倒れこんだ。

「あれ?」

 足ががくがくしていて言うことを聞かない。光莉があたふたしている間に、茉理は部屋を出て行ってしまった。

「なんだろ……変な姿勢で座ってたからなのかな」

 光莉は髪をかき上げた。

「まあいっか。宿題やろ」

 そう言ってスマホをベッドに置いて、オナニーを始めるのであった。

「おはよう、まつり」

 始業前の講堂。そこに全校生徒が集まっていた。光莉が遅れて列に入ってきた茉理をみつけて声をかけた。今日は珍しく、茉理がいつもの時間にあらわれずに、二人は別々の登校だったのだ。

「あ、ひかり……おはよ

「なんの話なのかな。全校って珍しい」

「なんだろ。やっぱ飛び降りの件があったからかな」

「……かも」

『えー、静かに』

 講堂に生活指導教諭のマイクを通した声が響いて、ざわめきがぴたりとやんだ。

『今日は生徒会長の藤堂君から、みなさんにお話があります』

 その言葉と共に、生徒会長藤堂麗華が壇上に上がる。

(やっぱ藤堂先輩、美人だなあ)

 光莉ならば緊張で一言も喋れなくであろう大観衆の前で、胸を張る姿は神々しくすら見えて、男子ならずとも思わず見とれてしまう。まあ実のところ、光莉はバイセクシャルの気があうので、単純にどきどきしてしまうのだが。

『みなさん、おはようございます。先日は非常にわが校にとっていたましい事件がありました……』

 麗華がスピーチを始めた。見事な言葉選びで、飛び降り事件に対する生徒たちの不安を代弁し、それに対する反論を理路整然と述べていく。

 そんな麗華の様子に異変があらわれたのは、始まって数分のころだった。

『であるからして……ッ、ごほん、諸兄においては、冷静に日々を、ォッ……』

 ところどころで麗華の言葉が不自然に詰まる。最初はせきばらいでごまかしていた麗華だったが、徐々にそれが尋常でないことが聞いている側に伝わってくる。

『たとえ不測のッ、ふっ、不測の事態があっても、いたずらに騒ぐことな――んひっ』

 口調が乱れるにつれて、麗華の変調ははためにも明かになってきた。前かがみになり、片肘で上体を支える。

「お、おい、大丈夫か」

 教諭の言葉に、手をあげて応える麗華。

『だ、大丈夫です。少々風邪気味で……ッッッ!!!』

 突如、麗華の身体ががくんとのけ反った。

『やっ……やめっ! 動かすなっ……なっ、中でゴリゴリこひゅれてッ!』

 講堂が一気にざわめきたつ。慌てて教諭数人が壇上に駆け上がろうとする。

『あ゛♪ だめ♪ お、おまんことケツ穴も、げんかひっ、イ、イ……』

「な、なにをいっとるんだっ」

 教師が麗華の腕を掴む前に、限界は訪れた。

『イクッ! いっちゃう! イク、イク、イックゥーーーーッ!!!!!!』

 獣の様な叫びと共に、ガクガクと麗華の身体が弓なりに反って痙攣する。『じゅぽん! ゴトッ! ゴトン!』と麗華の足元に何かが落ちたと思われる音をマイクが拾った。

「か、解散だ! 教室にもどって!」

 教師たちが麗華を生徒の目から隠すように囲んで講堂から運び出していく。ざわめきが収まらぬ中、光莉はうつむいて何かを考え込んでいた。

「いやー、マジで驚いたよね」

 昼休み。光莉達はいつもの場所で弁当を広げていた。

 全校生徒が目にした麗華の醜態だったが、その光景は若い少年少女には刺激が強すぎた。

 あからさまに話題にのぼるというより、口に出すのも憚られるが、何もなかったように振る舞うには微妙な、もやもやとした空気が教室中にたちこめているという、なんとも居心地の悪い状況ができあがっていた。

「そのことなんだけど」

 光莉が言いかけた時、がさりと背後の草むらで音がした。

「だ、だれっ?」

 光莉が声を投げかけたが、返事はない。

「風じゃない?」

 茉理がおかずを口に運びながら言った。

(あぶねえ、ばれるところだった)

 俺は光莉達に見つからないようにその場を離れつつ、息を吐いた。

 朝の集会は胸のすくような見世物だった。麗華が俺の永久所有マインドになったのを祝ってやるためのイベントである。集会をセッティングするため、わざわざ教師にまで貴重なボールを割いてやったのだ。なんて優しい飼い主様なのだろうか。

 麗華はこれで終わりだ。今まで通り生徒会長を務めることはできないだろう。だが麗華当人は幸せだろう。なんせ正式に俺の雌奴隷になれたのだから。

(生徒会長じゃなくなっても、まだまだ堕ちてもらうぜ)

 俺は麗華に次は何をさせるか考えながら、舌なめずりをした。

 ここに光莉達を見に来たのは、レズにしてやった茉理が、光莉をレイプしたかどうか確かめにきたのだが、どうやらあの様子ではまだ襲ってはいないらしい。

(ボールもすっからかんだし、とりあえずしばらくはあいつらは放置だな)

 俺は意気揚々とその場を後にしたのだった。

「SAIMIN GOを他に使ってる人がいる!?」

「……たぶん」

 茉理の声に、光莉は声をひそめつつ頷いた。

「それって……生徒会長の?」

「……うん。藤堂先輩、校門にいらっしゃった時も様子がおかしかったし。SAIMIN GO持ってる人に……いたずらされてるんだと思う」

 光莉は、自分の言葉にぞっとした。麗華の今日のような姿を全生徒の目に晒させるような行為はいたずらではすまされない。女性の人生を破滅させようとする行為だ。

(それに……町田くん、も……)

 SAIMIN GOは恐ろしい力なのだ。それを思い知って、光莉は無意識に拳を握りしめていた。

「それってヤバくない?」

 茉理がお茶をすすりながら言った。

「だって他人がSAIMIN GO使われててもわかんないし。もしかしたらあたし達だってもう使われてるかもよ~」

「もう、真面目に話してるんだから茶化さない!」

「でも本当にさ。そいつがSAIMIN GOを使ってき勝手してるなら、本当にそのうちあたし達も危ないんじゃない」

 茉理が声のトーンを抑えて言った。

「うん……でも、どうすればいいんだろう」

「あたし達だってSAIMIN GOあるんだし、そいつのマインドを捕まえちゃったらいいじゃん!」

「でもそれには、誰がSAIMIN GOを持ってるか知らなきゃだめなんだよ」

 相手は人を死に追いやりかねない行為を、ためらいなく行わせられる人間なのだ。下手に何かをして、自分たちがSAIMIN GOを持っているとばれればどうなるか。光莉の背筋に寒気がはしった。

「そっか。そだよね……そうだ」

 茉理は、ぽんと手を合わせて光莉の方が見た。

「じゃあさ、とりあえずできるだけ被害に会う人が出ないようにしようよ」

「え?」

「ここだ、ふくろうの前。どう?」

「うん、大丈夫、取れてる」

「これで今日六つめかぁ。だいたい大きな駅の周りはとりつくしたよね」

 光莉はスマホ画面を見た。画面下部に表示されるボールの数はすでに100を越えている。

「これだけあたしたちが採っちゃえば、悪いやつにはほとんどボールいかないって」

 そう、茉理が出したアイデアは、『マインドボールを、‘悪いやつ’より先に集めつくしてしまおう』というものだ。マインドボールが増えなければ、麗華をひどい目に遭わせた犯人も大胆なことはしづらくなるだろうし、そのうちに尻尾を掴むチャンスがくるかもしれない。

 これなら自分たちがSAIMIN GOの持ち主だと知られる可能性はほとんどないだろう。かくして、光莉達はここ数日、都心の各地を回っていた。

「ボールは何日かしないと回復しないから、池袋はしばらくいいよね」

「そうだと思う」

 茉理の言葉に、光莉は頷きを返した。スマホを見た。今は六時半をすぎたころだ。

「今日はこれくらいにしとこうか」

「うん、そうだね」

 光莉達は踵を返して、改札口に歩いていった。

< 続く >

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