黒と白 12.黒と白

12. 黒と白 「終っちゃったんだ」  恵は辺りを見回しながら、深く、悲しげなため息を漏らした。 「恵!どうしてここに?..何故...お前は俺のことを.....」  恵は、訳も分らず捲し立てる影一の頬をゆっくりと撫で、髪

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黒と白 11.降臨

11. 降臨  じめじめと湿った感触が肌を嘗める深夜の庭園に、男は一人空を眺めていた。  日の光を遮られ輝きを失った月は、感情を無くした男の様に只佇んでいる。  真の闇というのはここよりも深いのだろうか?  自分が今、ど

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黒と白 10.堕落

10. 堕落 「ご主人様、準備が出来ました」  寝転がって煙草をくゆらせている影一に麻里が声を掛けた。  影一は何も言わず、不機嫌そうに指先の煙草をはじくと、部屋の絨毯の焦臭い臭いにも構わず部屋を出ていく。  麻里は黙っ

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黒と白 09.純愛

09. 純愛 「おにいちゃん!遅かったじゃない!前の電車に乗ってると思ったから、さっきからずっとここで飛びっぱなしだよ」  相変らずの無邪気な瞳は影一の荒んだ心を一気に洗い流していく。 「おい、人前で”おにいちゃん”って

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黒と白 08.出会

08. 出会 「つぎはー、よこはまー、よこはまです。お降りの方はお忘れ物の無い様お気をつけ下さい」  細身のジーンズにTシャツ。その上にはまっ黒のジャケットを羽織り、ぼさぼさだった髪は後ろで括られている。  その為か、普

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黒と白 07.館

07. 館 「ご主人様、今日は少しご機嫌がよろしいようですね」  主人の気分が伝染したのか、胸以外は細めの肢体を質素なメイド服に包んだ風見麻里が嬉しそうに言う。 「ん?いや別にそんなつもりはないんだが」 「今日は横浜でご

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黒と白 06.摩天楼

06. 摩天楼  影一の狩場がある繁華街の外れに建つハイテクオフィスビル。  地下3階、地上18階。当時最新鋭の技術を注ぎ込み建てられたそれは、最高のセキュリティを誇り、地下にはスーパーコンピューターまでもが設置されてい

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黒と白 05.調教

05. 調教 「あ、あぁ、ぁふぅ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁああっ、くぅっ、あんあんあんあんあああっ」  いつから続いているのだろう。  打放しのコンクリートの壁に反響する淫靡な喘ぎは、時々はトーンを変えながら、その本人以外

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黒と白 04.契約

04. 契約  薄暗く広い部屋。  古めかしい中世風の装飾を施された壁面に、数本の蝋燭が立ち、揺らめいている。  その部屋の中に唯一置かれた肘掛椅子にもたれながら、天野影一は蝋燭の灯も届かない、その部屋の中で最も暗い部分

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黒と白 03.妄想

03. 妄想 「はぁーーーっ」  本日28度目の溜息をつきながら、中根宏美は、出来たばかりの書類を無造作にファイリングしていく。 「おいおい。それは一応部長も目を通すんだ。もうちょっと丁寧にやってくれないかな」  まだ3

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浸食 後編

後編 【 6 】  柚実の躰から、最後の下着までも取り払われる。しかしそれらは、今となってはもうジャマなだけのものでしかなかった。垂れ流された愛液で濡れきったショーツはもう意味をなしていなかったし、それ以上にこれから享受

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黒と白 02.隷属

02. 隷属  男は窓際に置かれた椅子に腰掛け、窓枠に肘を付きながらつまらなそうに外を眺めていた。  ここに移動してから1時間、なんの成果も上がらず半ばふてくされた様な表情で道行く人々を睨み付けている。  その交番の入口

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浸食 中編

中編 【 4 】  午前中最後の授業をうわの空で聞き流しながら、柚実は頬杖をつき、ぼんやりと物思いにふけっていた。 「なんだか、なあ……」  小さく、独り言をもらす。  いつも通りの、おしゃべりなクラスメイト達。いつも通

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黒と白 01.狩場

01. 狩場  夕暮の繁華街。  賑わいの途切れないその一帯の中でも、駅前から伸びているメインストリートと商店街との交差点が今、その男にとって最もお気に入りの”狩場”であった。  そこには、学校や仕事帰りの女子高生・OL

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浸食 前編

前編 【 プロローグ 】 「こんにちは。元気にしてた?」  昼過ぎの繁華街。“彼女”がその少年に声をかけたのは、まったくの気まぐれであった。 「えっと、こんにちは。……その、失礼ですけど、どちら様でしたっけ?」  とはい

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Midnight blue 第三話

第三話  0089は完全に落としたのは確定。  この面白い女を使って、どう遊ぶか。  今まで与えてばかりいたのだから、おあずけを食わせるのがいいか。  幸い、女はコイツ以外にも一人居る。  しつこくキスをしてくる0089

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Midnight blue 第二話

第二話  いつも以上に強い力がボクの体を駆け巡っている。  それは、月へと向えば向うほど強く、恐ろしくなっていく。 「母さん……」  高層ビルの屋上も、既にここからはゴマ粒より小さく見えるほど高いところへ来たというのに、

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Midnight blue 第一話

第一話  夜空を、深淵の夜空を引っ掻くビル群。  まさに摩天楼という字に相応しい鉄とコンクリートとガラスの塔達。  多くの者がそこに入り、出る。  それらの一階から。  ただ、今夜の客達は……入り口から入ってくるようなお

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