プロローグ 父は知らない。 物心ついた頃にはもういなかったから。 母に尋ねるといつも少し困ったような顔をしていた。 だから私はそれ以上何も聞けなかった。 それでも良かった。 美しい母と私より少し背の高い姉。
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美しい母と私より少し背の高い姉。
そして黒猫のアルテ。
私たち三人と一匹は静かに慎ましく生きていた。
私たちは何も望まなかった。
ただ、平和に暮らしたかった。
それなのにその願いは叶わなかった。
蒼い月の夜に 第一話
第一話 透き通った湖の水面にきらきらと眩しく朝日が反射する。 もう夏だというのにその水は冷たく、気持ちよかった。 黒く短い髪を洗い、ゆったりと水面に浮く。 私たちの復讐の帰り道。 あの屋敷から三日ほど街道に沿っ
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