– Root A –
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初めて来た辰巳の部屋は、結構立派なマンションの最上階にあった。
「へぇー、凄いところに住んでるんだね・・・って、妙に郵便受けの数、少なくない?」
一階のエントランスで、気が付いたのはそこにだった。
それなりに大きいマンションなのに、住んでる人が少ない・・・というより、受け入れる世帯数が少ないって事かな。
「辰巳様の部屋、すごいんだよ。いくつも広い部屋があって、しかも防音もしっかりしてるの。セキュリティだって厳しいしで、お金持ちって感じだよね」
ふふっ、と笑いながら、美月はカードキーをお財布から取り出して、エントランスのカードスロットを通した。次いで、4桁の暗証番号を入力する。ピッっと音が鳴ると、エントランスのドアが開いた。
「でも、誰かが開けた時に、いっしょに入っちゃったらどうしようもないんだけどね」
まったくもってその通り。だけど、入り口近くに警備員さんが居て、しかも入る人は防犯カメラで録画ってしてるみたいだから、やっぱりそれなりにいいところらしい。
「ここの10階なんだよ。早くいこっ♪」
おぉ、世帯数のキャパに比べて、エレベーターの数が多い。何これ。
なんだか理不尽な思いを抱きつつ、わたしたちはエレベーターに乗った。
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「やぁ美星ちゃん、待ってたよ。今日は目一杯楽しんでいってね」
一見普通に、けど酷くねちっこい口調で、辰巳はそうわたしを出迎えた。
それは、美月は自分のモノだから、挨拶する必要すら無いって言ってるように感じた。
「辰巳様、遅れてしまって、済みませんでした」
深々と頭を下げる美月に、辰巳は特に言葉は返さず、「美月、はやく準備をするんだ」とだけ言った。
謝罪を無視された形の美月だったけど、そんな事も気にならない様子で、「はいっ」と嬉しそうに答えて、一人で奥の部屋へと進んだ。
「美月が部屋着に着替える間、美星ちゃんはこっちにおいで」
格好をつけて、レディファーストとばかりに左手で居間らしき部屋を指し示す。わたしは靴を脱いで揃えると、壁に寄り掛かるようにして道をあけた辰巳の前を通って、示された居間へと入った。
居間は、不思議とさっぱりした雰囲気だった。
居間自体が広いというのもあるけど、あまり無意味に物を置かない主義なのか、ちょっと間違えたら寒々しいという評価になってしまいそうなほどに物が少ない。
「殺風景・・・だろう?」
わたしの心を読んだかのように、辰巳が言った。わたしの正面のソファーにゆったりと座りながら、悠然と構えている。わたしは、そうだとも、違うとも言わないまま、辰巳と視線を合わせた。
「ボクってさ、物欲とかって、あんまりなくてさ。こんなに一つのモノに執着したのは、美月が初めてだよ」
また、当然のように口にされる、『美月はボクのモノ』発言。このわたしを前にして、よくも言えたものだと思う。
ただ。
そう、ただ・・・なんとなく納得は行ったかも。
美月以外には執着しないから、私物をあまり持たない。
美月以外には執着しないから、それがどんなに異常な行動でも、とれてしまう。
双子の姉の前で、美月を嬲るなんてこと、できてしまう。
つまり、辰巳はコワれてるんだって・・・納得した。
「辰巳様、お待たせしました」
美月が居間に入ってくると、わたしはあまりの事に声を失った。
美月は、裸でいるよりももっといやらしい感じの黒いボンデージに身を包み、首には犬にするみたいな首輪をはめていたから。
でも――そんな美月の姿を、少しだけ綺麗だと、思った。
- 7 -
ソファーに座った辰巳の上で、美月の身体が激しく揺れている。
美月の両足は大きく開かされて、辰巳のモノが出たり入ったりしているのが、イヤというほど良く見えた。
ぬらぬらと濡れて光るアレが、美月を擦りあげる度にぐちゅとかぶちゅとか、いやらしい音を立ててる。当然処女なわたしは、目の前の光景の迫力に、頭の中が真っ白になってしまった。
「みほっ、みほしちゃんっ!きもち、い、いよぉっ!たつみさまのっ、すご、くっ、いいのっ!!」
辰巳に命じられたからか、美月が激しく喘ぎながら、そんな事を叫ぶ。
ううん、辰巳に命じられていなくても、今の美月ならそんな恥知らずな事を、進んでするかも知れない。だって、美月はもう作り変えられているんだから。
「おっ、おまっ、こぉ・・・きもち、い、いいよぉっ!」
髪を振り乱し、下から突き上げる辰巳の動きに合わせて、自分からも腰を振る。蕩けるような表情は、こんな事になる前には、想像することさえ出来なかった。でも、もしかしたら、わたしも誰かとえっちしたら、こんないやらしい表情を浮かべるのかも。だって、双子なんだから。
「今度は後ろから突いてやる。ソファーに手を突いて、尻を突き出すんだ」
美月から抜くと、息を荒げてふらふらになっている美月に、辰巳は命令した。立ち上がるのも大変そうなのに、美月は嬉しそうに「はい!辰巳様」と返事を返している。
「これで、いかがでしょうか?」
ソファーの背もたれに手を突いて、美月はお尻を突き出している。白くて柔らかそうなお尻が、辰巳を求めてゆらゆらと揺れている。
「ああ、丁度いい」
辰巳は躾けられたペットを褒めるように、美月のお尻を軽く撫でた。それだけでも感じるのか、美月は身体を仰け反らせて、小さく喘いだ。
辰巳は美月のお尻を両手で掴むと、自分のモノをまた挿入した。美月の喘ぎが、大きく居間中に響き渡る。辰巳は汚い尻をわたしに向けたまま、大きく腰をグラインドさせ始めた。
――チャンス、だ。
わたしは気付かれないように、そっとポケットから折りたたみ式のナイフを取り出した。
ゆらりと、音を立てないように立ち上がる。
これが、わたしの選択。
辰巳を――殺す。
そうすると、自動的に美月も死ぬけど、美月はわたしとライフ=シェアリングするから、ちゃんと生き返る予定。
ソファーをガタガタと揺らしながら、辰巳と美月は気付く様子も無い。
わたしは中央に置かれたテーブルを回りこんで、二人に近付いた。
狙うは、辰巳の首。
喉を切り裂いてもいいし、頚動脈を切ってもいい。後頭部に突き刺すっていうのも手だ。女のわたしでも、一撃で殺せそうな急所がいっぱいある首って、とっても素敵♪
わたしは静かに歩を進める。あと2歩で、十分に手が届く位置になる。
あと、1歩。
ここまでの進捗は、完璧の一言。
だから、なんでこのタイミングで美月が振り返ったのか、まったく判らなかった。
だから、なんで二人に見えないようにナイフは隠し持ってたのに、わたしの殺意が気付かれたのか、まったく判らなかった。
「だめっ!!」
だから、なんで美月が「辰巳様を傷つけようだなんて、許さないっ!」って怒りながら、わたしから奪い取ったナイフを、わたしの胸に突き立てたのか・・・まったく判らなかった。
急速に暗くなる視界の中、歪んだ笑みを浮かべる辰巳の顔が、最後に見えた。
あとは、暗くて寒いどこかに、ゆっくりと、運ばれていく。
あぁ、わたし、死んだんだ――。
- Epilogue -
お○んこを、自分の指で掻き立てる。おかしくなるんじゃないかってぐらい気持ちよくて、でも、気持ちよければ気持ちいいほどに物足りなくて。
「きもっ、ちぃのに、もどかしいっ、ですっ!」
人差し指で、クリトリスを潰すような勢いでぐりぐりと捏ねる。ビリビリと、快感が身体中を走り回る。
けど、イケない。
自分では、どんなにしても、イケないようにされているから。
辰巳様が、そう命令したから。
「美星は、そんなにイキたいのかい?いやらしいなぁ。でもダメだ。ダメだよ。ボクを殺そうとしたんだ、その罰は受けなきゃね」
そう言われて、悲しさで涙がポロポロと溢れた。
辰巳様に生き返らせて頂く前の自分は、なんて馬鹿だったんだろうって。
「ごめんなさい!わたっ、わたしが馬鹿だったんです!辰巳様を殺そうとするだなんて!もっと、もっと罰を与えて下さいっ!」
辰巳様が、跪いたわたしの口元へ、足の爪先を近付けた。これは、差し出された場所を舐めても良いということ。もちろん、わたしにとっての喜びの行為だ。
「あっ、あむっ、ちゅっ、ぴちゅっ、はむぅ、あんぅぅ」
舌に広がる、辰巳様の味。臭くて、汚くて、でも辰巳様の味だと思うと、身体が震えるほど嬉しい。
「どう、美星ちゃん。辰巳様の足、とっても美味しいでしょう?」
辰巳様のお○んちんを柔らかく擦りながら、美月が笑った。辰巳様が美月の裸の肩を抱きながら、わたしに目を向ける。
「うん、おいしい・・・おいしいのぉ・・・。ずぅっと、こうしていたいぐらい・・・」
辰巳様の足の指を、一本一本舐めて、それでも足らずに指の間にも舌を伸ばす。辰巳様が不愉快に感じていないか気になって、わたしは舌の動きを止めないまま、辰巳様を見上げた。
「いいコだね、美星。ご褒美をあげるよ。尻を高く掲げて、自分の手で尻穴を広げるんだ」
辰巳様に、お尻を使っていただける。そう思うだけで、イっちゃいそうなほどに興奮した。
わたしは四つん這いで辰巳様にお尻を向けると、胸と顔で身体を支えて、尻たぶを両手で開いた。
「お尻の穴、ヒクヒクしてる。お前達姉妹は、ほんとうに淫乱だな」
辰巳様は言葉でわたしを嬲るように、嗤いながら言う。でも、その言葉だって、今のわたしには快感だ。構ってもらえる悦びに、お○んこから愛液が溢れてしまう。
「はい・・・はい・・・っ!わたしの淫乱なお尻、どうぞお使い下さいっ!」
辰巳様はソファーから立ち上がると、その立派なお○んちんを、わたしのお尻の穴にあてた。そのまま、一気に根元までを突き入れる。
「ひっ!い、あぁあぁぁあっ!」
気が狂うほどの快感が、お尻と身体の内側から生まれた。辰巳様のステキなお○んちんが、わたしの腸を擦りあげると、その圧迫感が快感になって全身を駆け巡る。抜ける寸前まで腰を引くと、お尻の穴の入り口が擦れて蕩けそうなほどに気持ちいい。気が付くと、イキっぱなしになったみたいに、すごい快感の波に飲み込まれてた。
「いいっ!!すごっ!あっ、とけちゃっ!おしりぃっとけちゃううっ!!」
辰巳様が、わたしの腰を掴んで、腰を激しく振るう。その動きはすべて快感になって、わたしの頭を白く染め上げる。
「おまえはっ、誰のモノだ!?言ってみろ、美星っ!!」
気持ち良すぎてばかになった頭に、それでも辰巳様の命令は入ってくる。
今のわたしなら、質問されるのも、それにお答えするのも、全てが快感だ。
「わた、わらしぃ・・・」
気持ち良すぎて、舌が回らない。間延びした、ばかみたいな口調。
「わらしぃ、らつみさまのぉ、モノれひゅぅ。らつみしゃまに、にゃにをしゃれてもよろこんひゃうぅ、いんらんなぁ、めしゅどりぇいでしゅぅ・・・」
あぁ、きもちいぃ。
きもちよくて、もうなにもかんがえられない・・・。
「そうよ、美星ちゃん。わたしたちはずっと、辰巳様のモノなのよ」
うん、わかってるよ、みつきぃ。
わたしたちは、たつみさまのモノ。
それこそ――。
それこそ、死がわたしたちをわかつまで――。
< おわり >