コレクション 前編

前編

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 そこは一切の光がささない場所だった。
 一人の男が部屋の中に姿を表すまでは。
 その男は年老いていた。
 老いさらばえた両足は、すでに自分の体重を支えることもかなわない。その代わりにクッションの敷き詰められた、豪奢な車椅子に乗っている。
 その車椅子を押しているのは、蒼みがかった長い黒髪をした美しい女。
 黒い服のうえから、白いエプロンを身に纏っている。
 女は、どうやらメイドのようだ。
 ただ彼女の顔には一切表情のようなものが浮いていず、その瞳からは意識の光がぬけ落ちていた。
「点灯しろ」
 そう老人が命じると、いきなり部屋の中に光が満ちる。
 広い部屋だった。
 まるで美術館のような部屋。
 部屋の中はいくつもの板で仕切られ、通路のようにしてある。
 そこを老人は車椅子をメイドに押させながら進んでゆく。
 部屋の中に作られた通路には、一定間隔で円筒状のケースが立ち並んでいる。そのケースの下には液晶のディスプレイ備え付けてあった。
 だけど問題なのは、ケースの中身。
 それは女。
 どれも中には全裸の女が封じ込められていた。
 その中でしているポーズは様々。右手を腰に当て、左手を頭に当てていかにもセクシーなモデルっぽいポーズをしているもの。しゃがみこんで自分の淫やらしい部分を両手で思いっきり広げてみせているもの実に様々だ。
 ただ彼女らに共通しているのは、すべて男の欲情をさそい自分の肉体を誇示しようというポーズをとっているということ。
 彼女らはみんな笑顔をしている。
 でも、その笑顔は不自然だった。
 なんにも楽しくもおかしくもないのに無理に作った……いや、作らされた笑顔。
 そんな感じなのだ。
 老人は途中扇情的なポーズをした、魅力的な美女達に目を止めることなく車椅子を押されて部屋の奥へと進んでゆく。
 そこには鋼鉄性の扉があり、老人が近づくと音もなく開く。
 白い部屋。
 壁だけでなく、そこにあるすべてが白い。
 部屋の中央においてある大きなベッドも白く塗られている。
 唯一の例外といったら、そこに寝かされるようして縛りつけられている少女くらいのものだろう。
「気がついたかね?」
 老人がたずねると。
「放しやがれ、変態じじい! あたいになにしやがんだ!」
 おおきなベッドに、大の字に両手と両足を金属の枷で固定させられている。
 少女はそれを引きちぎろうと、全力ではね回る。
 全身の筋肉に筋繊維が引きちぎられそうなくらいの力が込められた。
 でも、ベッドに直接取り付けられた枷はびくともしない。
「心配せんでよい。わしは見てのとおりの、死にかけたおいぼれじゃ。お前さんのそのような姿を見たところで、わしのものはピクリともせんよ。……じゃがまあ安心しろなどとゆうても、無理な話しじゃろうがのう」
 老人はそういって、フォッフォッフォッと気味の悪い笑い声をたてる。
「ざけんじゃねーよ。今すぐ放せよ! 聞いてんのかよエロじじい! てめーギッタギッタにしてやるからな。覚えてろよ、くそじじい!」
 くちぎたなくののしる少女に老人は。
「フォッフォッフォッ。なんとも元気のよいむすめごじゃ。おまえさんにはちいっと見てほしいものがあるんじゃ」
 老人がそういったとたん、天井に映像が写しだされる。
 それはどこかの学園にある裏庭の風景のようだ。
「どうじゃ、見覚えがあるじゃろ?」
 という老人の問いに少女は。
「あたいの学校だロ? そんなん関係ねぇだロ? 早く放せよ、変態じじい!」
 少し見ただけでふたたびののしりはじめる。
「フォッフォッ、ようみるんじゃ。おまえさんにとって、もっとなじみ深いものが見れるはずじゃよ」
 老人が楽しそうに笑いながら、少女の注意をふたたび映像の方へとうながした。
「なんだよてめぇ。いいかげんにしろよ!」
 少女はそういいながらも、けっこうすなおに映像に目をうつす。
 少しの間いぶかしげにしていた少女だったけど、すぐにあることに気づく。
 裏庭には花壇があり、そこに咲いている花をひとりで手入れしている女子生徒。
 長い黒髪と美しくおだやかな顔。わずかに微笑んでるその表情から、彼女のやさしさがはっきりと伝わってくる。
 少女にとって虫酸が走るくらい、いやなタイプの女。生理的にうけつけない、そんな感じなのだ。
 だけど少女はその娘(こ)のことをよく知っていた。それこそいやというくらいに。
 なぜならそれは……
「あ、あたい……なんで……」
 そう、その娘(こ)こそ少女自身だったのだから。
 とまどう少女。
 あそこにいるのは間違いなく自分自身。どれほど自分ではみとめたくなくても。
「てめぇあたいに何しやがった!」
 少女がふたたびさわぎだす。
 それとともにべッドに固定されていた体をむちゃくちゃに動かしてみるけど、とうぜんのようにむだだった。
「それでは次に、こいつを見てもらおうかの」
 老人がそういった次の瞬間、天井に写し出されていた光景がいっペんする。
 白い校舎のかわりに写しだされたのは、ガリガリにやせほそった一人の少年の姿。いかにも性格暗そうで貧相な少年で、それ以外に特徴らしきものは見当たらない。
 問題なのはそれを見た少女の方だった。
「あっ!」
 そういったきり少女はだまり込む。
 視線はうつろで、ただその少年の姿しか目に入らないってかんじだ。
 ギッ。
 なにかがなった。
 ギギッ。
 最初は小さかった音が徐々に大きくなり。
 ギギギギギッ、バンッ!!!
 その音とともに、少女をベッドに固定していた金具がはじけとぶ。
 金属性の枷が紙のように引きちぎられていた。
 自由をとりもどした少女。
 でも、そこに喜びの色はない。
 なにかに憑かれたような視先を天井に向けたまま、一体何をつかもうというのか両手を天井に伸ばそうとしている。
「あれは、おまえさんのなんじゃ?」
 老人が聞くと。
「おやかたさま…」
 少女は視先を動かすことなく、それでもはっきりとそう答える。
「フォッフォッフォッ。どうやら処置は完璧のようじゃな。おまえさんは、わしの孫に死ぬまで仕えるのじゃ。うれしかろう?」
 そう聞かれた少女の顔に、ようやく表情らしきものがうかぶ。
 それは恍惚の表情。
 喜びの中にひたり込んでいる。
「おやかたさまにおつかえする……。いっしょう……」
 少女はほんとうにうれしそうに、老人の言った言葉をそうくりかえす。
「よい娘(こ)じゃ。あとは、わしが死ぬまでに、おまえさんにこの屋敷のことをすべて憶えてもらうだけじゃな。わしのかわいい孫がすべてを継ぐ日のためにの」
 老人はフォッフォッと楽しそうな笑い声を上げる。
 少女はそんな老人のことなどもう気にする様子もなく、ただ天井に写し出された貧相な少年の映像をぼうっと貝つめ続けていた。

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「ちょっとつき合えよ」
 そういわれて佐倉翔(さくらしょう)が連れて行かれたのは校舎裏だった。
 そこで2人の男達にこづかれている。
 ありふれた、いつもとなんら変わることのない光景だった。
 ……すくなくとも翔にとっては。
「だからさ、もってんだろ? いたい目見ないうちに、さっさとだせよ」
 背の高い方の男が言った。
「ばっかだなぁ。そんなこと言ってる間に、こうすんだよ!」
 ドグッ!!
「ぐう一っ」
 翔はお腹をおさえてへたりこむ。
 最初話しかけたやつほど背は高くないけど、でも横幅だったら倍以上ありそうだ。翔とくらベたら3倍はあるかもしれない。
 そんなやつのパンチが、もろに翔の腹部にヒットしたのだから当然の結果だろう。
 そいつは翔の髪をつかむと無理やりあおむかせる。
「なぁ出す気になっただろ?」
 という言葉に翔は返事をかえせない。だから下の方から恨みのこもった視先をなげかける。
「なんだぁ? その目はよう!」
 翔の目つきが気にくわなかったのだろう。男はぶっとい腕を振り回して翔になぐりかかる。
 でもその攻撃が翔に届くことはなかった。
「あんっ?」
 男が驚きの声をあげる。
 腕が翔の顔にヒットする寸前にとまってしまっていた。
 何かにうけ止められたような感触がある。
 そこには何もないのに。
 でもとまどっていられたのも、ほんのわずかのこと。
 男の巨体がいきなり翔の目の前から消失する。
「うぎゃ一」
 そんな声が聞こえてきたのは、遥か上空から。
 翔が上を見ると、男がとんでいた。
 4階建ての校舎の屋上を遥かにこえて高々と舞い上がっている。
 もちろん男には羽根なんてないないから、すぐに落下し始めて……。
「うぎゃ一一一一一」
 ドウン!!!
 男の頭がひしゃげて血が地面に流れ出していた。つぶれてしまった顔からは、元の顔を想像するのは不可能に近い。
 翔には、一体何が起ったのか理解できなかった。だけどその男が死んだことははっきりとわかる。
 翔のロ元には、笑みが呼かんでいた。うれしかったからではない、楽しかったからだ。
 でも翔がその違いが意味することに気付くのは、もう少し先のことになるのだけど……。
「てめぇなにしやがった!」
 背の高い男もやはり何が起きたのか理解できなかったらしい。翔にいきなり掴みかかる。
 それが男の運命を決めた。
 もし男に少しでも目の前で起こったことを理解するだけの頭があれば、たぶん生き残これたかも知れない。
「んぎゃ一一一っ!」
 さっきの男以上の叫び声を上げて男は空へと舞上がり、そして落ちた。
 ドウン!!!
 人気のない校舎裏に変な形をした死体が2つでき上がった。
「ククククッ」
 翔はその様子を見ながら、たまらなくなったっていう感じで笑い声をたてる。
 そんな翔の目の前の景色が奇妙な具合にゆらぎはじめる。ちょうど木立が見えてたあたりがゆらぎ、そこに人影らしきものが表われた。
 濃紺のボディスーツにぴったりと包み込まれた肉体は、男どもにとってなやましいラインを描いている。
 それは少女だった。
 それもとびっきり美くしい。
 ただ翔はその少女に見覚えがあった。
 よくこの辺りにいた。
 でもここだけでなく、学校じゅうの花だんはほとんど彼女がめんどうを見ていた。
 誰にでもやさしく誰もがあこがれるような、そんなひとだった。
 もちろん翔も例外ではなく、彼女のことをひそかに思っている男の1人だった。だけどそれだけで、彼女とは直接話しをしたことすらない。
 彼女は3ケ月ほど前に行方不明になっていて、家族から捜索願いがだされていたがその行方はようとして知れなかったはずなのだけど。
 その彼女がなんでこんなところに、こんなふうに表われたのか翔にはわからなかった。けれど今この男達を殺したのが、彼女であることだけは翔にははっきりと理解できた。
 彼女がゆっくりと近ずいてくるのを見て翔は思った。
 たぶん殺される。
 自分もこの男たちと同じように。
 でも翔は不思議と怖わくはなかった。
 こういう死に方も自分にはふさわしい。
 翔の頭の中に浮かんでいたのはそういう思い。
「北条さん」
 彼女の名前を呼んでみた。
 一度でいい、彼女に話しかけてみたかった。最初で最後になるのだろうけど、これでくいは残らないはずだ。
 だけど、現実は翔の想像を超えていた。
「美雪とお呼び下さい、お館さま」
 翔の目の前にひざまずき、頭を下げながら北条美雪が発した言葉。
「えっ?」
 さすがに翔のロ元からは笑みが消えていた。
 一体、北条さんは何を言っている。
 自分の聞いたことがわからない、見ていることが何をいみしているのか理解できない。
 だから翔は、
「ほ、ほうじょうさん……何をしてるの? ……何をやってるの?」
 そう聞いた。
 そう聞くしかなかった。
「美雪とお呼び下さい」
 北条美雪は質問には答えず、そうくりかえす。
「……じ、じゃあ、みゆき……さん?」
 恐る恐る確かめるように翔が言うと。
「美雪です。美雪とだけお呼びください」
 美雪はゆずらない。
「わかった……じゃあ、みゆき……。今何をやったのか聞かせてくれない?」
 と翔が聞いてみる。
 ちょっとだいたんになったらしい。
「放り投げただけです」
 美雪は、なんだかものすごいことをさらっと言ってのける。
「ほうりなげただけって……」
 その質問はとり合えず聞きながして、別の疑問を口にする。
「じゃあ姿が見えなかったのはどうして?」
「たいしたことではありません。光学迷彩を使っていただけです」
 やはり美雪はこともなげに言った。
「光学迷彩って……」
 なんだかよけい謎だらけになったような……。
 翔はこの発言も聞きながすことにする。
「なんでぼくのことを、お館さまって呼ぶの?」
 だぶんこれが一番気になっていることだ。
 目の前にひざまづき自分のことをそう呼ぶわけを確かめなくては、今後どう対応してよいのか判断できない。
 でも、たぶん殺されることはない。そのことは確信できていたけど。
「先日祖父にあたられる先代のお館様がなくなられました。その後を翔様が、おつぎになられた。だからお館さまなのです」
 当然のようにそういう美雪に。
「えっ? ぼくにおじいさんなんていないはず……」
 うまれてから一度も会ったことないし、唯一の肉身である母からは話しすら聞いたことがない。
 翔はずっと母と二人暮らしで、母が昼夜わかたず働くことでどうにか食いつないでいる。おせじにも裕福な暮らしぶりとはいえない。なのに母は翔にじいさんがいるなんて、ただの一度も口にすることはなかった。
 お館さまだなんて、なんだか金持っぽい。そんなじいさんがいるのなら、たよってもよさそうなものだ。
 ましてや、まだ30才になったばかりの母は、息子の翔の目から見てもたまらないくらいに美くしく愛くるしい女性だった。
 そんな娘がいたとしたら、普通の父親なら娘のほうがいくら援助をことわってもだまっていられないはず。
 それがでまかせだろうと本当のことだろうと、そのじいさんと名乗る人物はかなりうさんくさい相手のようだった。
 そう考えたとき、また翔の口元には笑みが浮いていた。
 でもそのことに本人は気付いていない。
「死んだって言ったよね?」
 翔が聞く。
「はい。ちょうど3日前になります」
「なんで生きているうちに会いに来なかったんだい?」
「なにかとお急がしいお方でしたから」
「へえ? たとえば?」
「最後のお仕事はわたしを作ることでした。そして、わたしにすベてを託されてお亡くなりになられました」
「作る? だって君は北条みゆきだろ?」
「そうです。でも、わたしはあなたに仕えるために作り変えられています。見た目は同じでも、以前と同じ部分はほとんどありません」
 そのセリフを耳にしたとき、翔はじぶんのものが熱くたぎるのを感じていた。
”あなたに仕えるために作り変えられています“というあたりはなぜかとくに翔のものを刺激する。
「作り変えられたって……どんなふうに?」
 ほとんど無意識のうちに、翔がロにしたセリフ。
「わたしの筋繊維はすべてアドバンスドパワーサポ一トを受けられるように、強化繊維と取りかえられています。そのうえパワーサポートは縮退炉を使用していますのでほぼ無制限にうけることができます」
 美雪が説明をするけど、もちろん翔にはたいして理解できていなかった。
 でも翔が本当に聞きたいのは、そんなことではない。
「あのさ、きみの……その……女としての部分は……どうなのかなって……」
 翔が聞きずらそうにそう言うと。
「形状、伸縮性、圧力そのすべてがお館様に最高の快楽を提供できるように設計されております。しかも経験を重ねることにより、わたしの肉体はお館様のお好みに合うように、進化をとげてゆくのです。わたしは現在世界で最高のセクサロイドでもあると自負しております」
 美雪は誇らしそうにそう言い放った。
 まぁ翔にはその内容の半分も理解できてなかったけど。
「じゃあ、ぼくと……してくれる?」
 恐る恐るって感で翔。
「当然です。お館様がお望みになれば、いつどこでなりとも」
 一瞬もためらうことなく答える美雪。
「ここでも?」
 翔が言ったそのときには、美雪はすでに自分の服に手をかけていた。
 はじらいもためらいもそこには存在しない。
 ただ単に言われた命令に従っている。
 そんな感じだった。
「す、すごいっ。……もっとよく見せて……」
 美雪の裸体は美くしかった。
 翔は生まれて始めて見る生の女体にただ息を飲み目をはなせなくなった。
 翔の股間のものが痛いくらいに反応している。そこには自分自身でも驚くくらいドロドロとした欲望がうずまいていた。
 美雪の胸におずおずと手を伸ばす。
 柔らかくはずむような弾力があった。
 翔はそのままむしゃぶりつきたい衝動を、必死で押さつける。
 そして、
「ねぇ、足を広げて奥まで見せてよ」
 そう命じる。
「はい」
 短く答えて美雪は立ったまま足を大きく開らくと、両手を使ってピンクの花弁を左右にめくリあげる。
「どうぞ存分にごらんになって下さい」
 そう言った美雪にためらいは一切なかった。
 そんな様子に翔は違和感を感じた。
 確かに翔の思いどうりになる、すばらしい女がここにいた。
 でも……
「……違う、こんなんじゃだめだ……」
 そう翔は満足なんてしていなかった。
「お館さま?」
 いきなり不満そうにする翔の態度に、美雪が不信そうにたずねると。
「もとの……もとのみゆきにはもどれないの? ねぇもどってよ」
 やさしかった美雪。
 おだやかに微笑んでいた美雪。
 けがれのない美雪。
 それが翔のあこがれていた美雪だった。
「もどる? ……わたし……もとに」
 美雪の様子がいきなりおかしくなった。
「みゆき?」
 のぞきこむように翔が言うと。
「ころした……わたし……ころした……。ひとをころした……」
 はずかしい格好をしたまま美雪は涙を流していた。
 どうやらさっき2人の男を殺ろしたことに、ショックを受けているらしい。
「みゆき? ぼくがわかる? みゆき?」
「はい……、お館さま……です」
「どうしたの?」
「わたし……ひとを……ころしちゃいました。……この手で、そらに放りなげたんです……。なのに、まるで虫でもつぶしたみたいに、何も感じなかったんです……」
 どうやらもどったのは性格だけだったみたいだ。
 美雪のその様子を見て、翔は自分のものが痛いくらいに突っ張るのを感じていた。
「くっ、くっくっくっ……、いいよみゆき。やっぱり君は最高だね。すてきだよ、とってもすてきだよ」
 まるで何かに憑かれたように翔が言う。
 全裸で自分のラビアをめいっぱい広げている美雪の足下にしゃがみ込むと、おしりを両手で力いっぱいだきしめながら股間に顔をうずめる。もちろんそれは美雪のまんこにしゃぶりつくためだった。
「あっ……」
 美雪は小さく反応を見せたけど、それだけだった。大きく広げたラビアの中はしめってすらいない。
 まるで経験のない翔だったけど、でもこんなんでは面白く思えるわけはない。
「感じてよ、ぼくの舌で気持ちよくなってよ」
 翔のその言葉は美雪に劇的な変化をもたらした。
「うあっん! な、なに? き、きもちいいっ! お館さまぁっ! あうんっ!! き、きもちいいですぅ!!」
 たった今まで泣いてたのがうそみたいに、激しくあえぎはじめる。もちろん美雪のまんこはすぐに淫らしい汁であふれかえっていた。
 翔は顔じゅうに美雪の愛液をあびながら、夢中になってしゃぶり続けている。
「ダメッッ! もうだめです! みゆきぃ、いっちゃいます!!」
 あっさりと頂上へと追い上げられてしまう美雪。
 上体を思いっきりのけぞらせて体じゅうに、びくんびくんとケイレンが走るけど立ったままの姿勢はくずそうとはしない。
 いやくずせないのかもしれない。
「そうなんだ。やっぱり君はぼくの言ったとおりになるんだね? いいよ。とってもいいよ。じゃあ、もうしばらくそのままでいてね。それと今からぼくのを入れるから、今よりもっと感じてね」
 そういいながら翔は自分のものをあせったように取り出すと、童貞君の性急さをはっきしていきなり美雪の中へとつっ込んだ。
「きゃうううっっっんんん!!!」
 ただ入れた、それだけで美雪は派手な声を上げていってしまう。
 だけどもちろんそれで終りなわけがない。
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!」
 翔が腰を動かすたびに、まともに声にならない声を上げていき続ける。
 やはり美雪にとっては翔の言葉は絶体らしい。それは感覚に関することでも例外ではないってことなのだろう。
 翔は自分のものを包み込むとろけそうな快感の中で、以外と冷静な部分があることに自分自身おどろいていた。
 その冷静な部分がまだ確かめることがあるといっている。
「ねぇみゆき、もしぼくがぼくに従う必要がないっていったらどうなるの?」
 腰の動きをゆるめながら翔がたずねる。
 はげしく動かし続けていたら、まともに話すことができない。せめて美雪があえぎ声以外の声を出せるようにしてやる必要があった。
「あ、うっ。……そ、それはぁ、うんっ、システム違反……ん、にぃ、なっりますぅ……。その命令は受理ィできませぇっん!!」
 その反答は翔の思った通りのものだった。
 だとしたら、たぶん……。
「じゃぁさ、ぼくを攻撃しろとか殺せって命令も受理できないんだろ?」
「はいいいっ……。そうぅっですぅぅぅうんっっっ」
 それは、翔の思ったとおりの返答だった。
 自分が美雪に同じことをするのなら、たぶんそういう処理をほどこすだろう。
 翔はじいさんが誰かは知らないけど、でも自分とけっこう以た考え方をする人物だったらしい。
 でも、あと一つ翔にはたずねるべきことが残っていた。
「君にあたえられた役割って何?」
「っうんっ……。はうっ……ガードと……っん! たんまつっ……ですうっっっんっ!!」
 なんだかだんだん聞きとりずらくなってきていたけど、でもどうにか理解することはできた。
 でもさすがに今度質問をするときには、ヤル前か後かにしとこうと思った。
 聞き取るのにひどく苦労するし、なによりHに集中できない。
 まぁとり合えず聞きたいことは全べて聞いたし、翔は腰の動きを全開にする。
「アカ゛カ゛カ゛ァァァァァァ」
 もう人の上げる声かどうかすら、判断つかないような声を上げて美雪はイキ続ける。
「うおうっ!!」
 翔はとても始めてとは思えないくらい、たっぷりと腰を使い美雪をよがり狂わせた後で精を放つ。
 それからしばらくして、翔はやっぱり自分もそんなに冷静ではなかったんだなぁと思い苦笑を呼かベる。
 なにしろ死体が二つもころがってるとこで美雪とヤッてたのだから。
 それと……。
「みゆき。自分の感情を封じて」
 短かく指示を出した後。
「あそこからやってくる人がいるよ。ぼくの前に連れて来て」
 そう命令を下す。
「はい」
 美雪が返事をしたときには、その姿はもう翔の前から消えていた。
「キャ……」
 校舎の影でひめいが上がりかかるけど、すぐにくぐもったうなり声に変わった。
 そして美雪に抱えられてきたのは、一人の女性だった。
「うっ、ううう……」
 美雪の手でロをふさがれているために、くぐもった声しかあげられないでいる。けど怒りに満ちたその目を見れば、何を言いたいのかくらいはたやすくわかる。
「やぁセンセ。こんなとこに一体何の用です?」
 その女性はこの学校の教師をしている永沢ミキだった。しかも風紀の担当をしていて、それに全霊をかたむけている。これまでに彼女の手によってなんらかの処罰をうけたものはかなりの数にのぼっているはずだ。
「うっぐぐぐ!! うっうっうー!」
 美雪の腕の中でもがきながら、何かを必死でうったえ続けるミキ。
「ああそうだね。そんなふうにされてたら話せないよね。……みゆき、とりあえず話せるようにしてあげてよ。それからセンセが大声を上げたりなんかしたら、すぐに話せなくしてね。方法は問わないから」
 そう言って話しかける翔の視線は、人間を見るものではなく面白そうなおもちゃ見つけた……。
 そんな感じだった。
「あなたたち正気? こんなところで裸になって! どうせいやらしいことしてたんでしょ? 停学よあなたたち!!」
 その返答を聞いたとたんだった。
「ふふ……はははっ! こりゃいいや! センセ、あなた最高だよ! 間違いない、あなたこそ最高の風紀のセンセイさ。ぼくが保証するよ!!」
 翔はそう言い終えたとたん、また笑い出した。
「なにがおかしいの!? ちゃんと質問に答えなさい! あんまり他人をばかにしてるような態度をとってると……」
 いったん少し間をおいて、
「停学よ!!」
 それは伝家の宝刀だった。
 まぁ彼女の場合、いささか使い古されてはいたけど……。
「くっくっくっ……。ぼくらはそれでいっこうにかまわないよ。でも、彼らの処分はどうするつもり? 死人でも停学にできるのかな?」
 そう言って翔が指差したのは、2人の不良……だったモノ。
「な、なに? なんなの……あれは?」
 自分が見ているものが信じられない……そんな感じだった。
「見てのとおりさ。……みゆき、あそこにお連れしてあげて」
 翔はふくみ笑いをしながら、美雪にそう指示を出す。
「はい」
 美雪は感情の抜けきった声で短く答えただけだった。
 けど、
「そんなことしなくていいから、わたしを放しなさい! まったく教師にこんなことをして、停学よ停学!!」
 美雪の腕の中でもがきながら、そんなふうにおどしをかけているミキのことを翔は楽しそうに見ているだけだったし、もちろん美雪はそんなことなんて気にするはずもない。
 あっさりと不良がたおれているとこまで運ばれてしまう。
「そ、そんな!?」
 目が見開らかれていた。
 まばたきしないその瞳の上にハエが止まっている。
 顔には血の気というものがなかったし、どこからどうみても……。
「し、しんでるの?」
 今度はミキの顔から血の気が引いた。
「そうだね。太陽が東から昇るのと同じくらい、確かに死んでいるみたいだね」
 そんなふざけたセリフに、ミキは怒りをあらわにして翔をにらみつける。
「これ、あなたたちがやったの?」
「だとしたらどうするの?」
「て、停学じゃすまないわよ」
 ここまできてなおその言葉。
 翔ははっきりと楽しそうに笑っていた。
「あははは! すごいや、まさかここでそのセリフが聞けるなんて思ってなかったよ!!」
 そう楽しそうに言った後。翔はいきなり笑みを消して……。
「あなたは自分も彼らと同じ運命をだどるんじゃないかって思わなかったの?」
 と言った。
「ま、まさかあなたたち……」
 女教師は思いっきり不安そうにそう言いかける。
「どうしようか? ねぇみゆき?」
 翔が話しを振ると。
「お館様の御心のままに」
 感情を消された美雪では、他のセリは思いつかないようだ。
「だってさ、センセ」
 冷めたく突き放すような言い方だった。
 人の命など、あまりたいしたものだとは思ってない。そんな感じの……。
「じ、じゃああなた、わたしを……」
 ミキは最後まで言えなかった。
 恐怖で……。
「安心して、とり合えず今はそのつもりないから」
 ふたたび翔の顔に笑みがもどる。
 でもその言葉、はたして安心してよいものか? 
 ミキには判断つきかねた。
 もちろん安心なんてしていいはずないけど……。
 だけど彼女に一体何が出来るだろう。
「とういうことで、お持ち帰り一名様。よろしくね、みゆき。……それじゃ行こうか? どうせ何かに乗ってきてるんでしょ? だしてよ」
「はい」
 美雪がそういったとたん、三人の目の前にア二メにでもでて来そうな形をした乗り物が出現する。
 三人がそれに乗り込んだとたん、それはまたすぐに姿を消した。
 後には人気のない校舎裏に2つの死体がころがっているだけだった。

< 続く >

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