プロローグ
夢を、見た。
翠色の、夢。
物心ついた頃から何度も何度も見てきた、同じ景色。
どこかの森の中。高い壁に囲まれた、古い2階建ての大きな洋館。
僕は鉄柵でできた大きな門の外側から、いつもその建物を覗いていた。
門から建物の扉まで、煉瓦で舗装された道が続いている。
その途中には噴水があり、青空の下、涼しげな水流を吹き上げている。
通路の先にある、大きな両開きの、立派な扉。
その中に入れば、何かが手に入る。何かが、だ。
そのことは、なぜだか理解していた。
でも、そこまで行くことはできない。
なぜなら門には必ず鍵がかかっていて、僕には開けることができなかったから。
だからいつも僕は門の外側から、その建物をただぼんやりと眺めていた……。
< プロローグ 了 >