雌伏

「弘志しっかりして」

「うっうっ・・・あっあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~」

「弘志!弘志!」

「くっ!お、俺にかまうんじゃない!逃げてくれ」

「負けちゃ駄目!このままではこいつの思うがままになってしまうわ」

『思うがまま?いったい私が何を思っていると言うのだ』

「黙りなさい!全てお前の思うとおりになると思ったら大間違いよ」

『大間違いだと?さっきからお前は何か勘違いしてないか?』

「黙りなさい!」

『なぜそいつを苦しめているのが俺だと言いきれる』

「黙れと言ってるでしょ」

『そいつを苦しめているのは実はお前かもしれないじゃないぞ』

「何を言うの」

「あ、秋子!惑わされるな。それがこいつの・・・・・・ううっ」

「分かってるわ!こいつの手口は相手をとにかく攪乱さす」

『ほう』

「そして隙が出来たところを一気に攻め込む!卑怯なやつなのよ」

『なるほどな!そんなやり方もあるのか』

「とぼけるんじゃないわ!私は絶対弘志を救ってみせる。お前には渡さない」

『無駄な事を』

「あなたなんか怖くないわ。あなたはただの臆病な卑怯者よ」

『臆病な卑怯者だと!そんな事をお前が言う資格はあるのか?』

「少なくともあなたに対してはあるわ」

『そうかな!よく考えてみろ。お前もこの男も人間だろ』

「?」

『つまりは生まれながら欲を持っているんじゃないか』

「でも人間にはそれを抑える理性があるわ」

『理性?そんなものがなんの役にたつ』

「理性を持たないあなたには分からないでしょうね」

『たしかに分からんな。人間は食欲、物欲、性欲の集合体なんだ。理性なんぞは欲の前では無力なのだ』

「いいえ!理性は欲を制するわ。人間はあなたが思っているような弱いものじゃ無いわ」

『愚か者め!よかろうその目ではっきり見るがよい』

「いったい何をしようと言うの」

『この女に見覚えがあるな!』

「み、美代子!」

『たしかお前達二人の共通の友人だったな』

「まさか美代子を!・・・・・美代子!今すぐ逃げて」

『無駄だ!お前の声はその女には聞こえない』

「美代子は関係ないでしょ」

『大有りさ!この女はお前達と関係を持ったんだからな』

「そ、そんな」

『ふっ!大丈夫なんだろ。理性が勝つんだろ。人間は弱くないんだろ』

(ほんとに主任の話しは長いんだから今日も残業ね)

「主任!その案は大変素晴らしいものだと思いますがリスクが大きく正直今の時期どうかと思いますが」

(何考えているのよ!質問なんてする?ますます遅くなるじゃない)

『お前の言うとおりだ!こんな馬鹿げた会議が長引くせいで男を漁りにいく時間が無くなるな』

「えっ?」

「なんですか?田宮さん」

「す、すいません。なんでもないです」

(あれ?今のはなんだったんだろう?)

「会議中ですから急に変な声を出さないでください」

「はい!すいません」

(あっちゃ~!睨まれたじゃない)

「え~村野さんのおっしゃりたい事はようく分かりますが・・・・・・」

(うわぁ!ここからが長いのよね。どうせ上の方で採用されないのに)

「採用されないのに」

「田宮さん!どう言う事ですか!」

「あっ!すいません。独り言です」

「議論の妨げになりますので何か意見があったら挙手して発言してください。迷惑ですよ」

「はい!すいません。気をつけます」

(うわぁ!まだ睨んでいる。まいったな~)

「遅くなるのが嫌なのはあなただけじゃないんですからね。みんな会社の為を思って真剣にやってるんですから」

「はい!すいません」

『謝る事はない!この女は欲求不満でいらいらしているだけだ』

(こ、この声)

『身体の疼きが抑えられずにいらいらしているのだ。お前もかわいそうにな!その熟しきった身体をおもいっきり男にいたぶって欲しいだろう』

(どうしてこんな幻聴が?)

「・・・・さん!田宮さん!」

「あっ!はい」

「もう分かってるんですか!今度妨げになるような事をしたら出ていってもらいますからね」

「はい!すいませんでした」

(まいったな。きっと疲れているんだわ。もう何があっても声をあげないんだから)

『そうだな!声はSEXの時におもいっきりあげたいだろ』

(また幻聴だわ)

『なるほど幻聴か!でも幻聴というのはお前自身の心の声だぞ』

(え?え?)

『こんなつまらん女の話しを聞くのがなんになる?』

(なんでこんなにはっきり聞こえるのかしら?)

『苦痛以外に何が得られる?金か?地位か?』

(私どうしちゃったんだろ?)

『お前の身体はそんなものを欲しがっていないだろ』

(私ったら何を考えてるの)

『今すぐ男に抱きしめられたいだろ』

(どうして?どうして?)

『胸のあたりがむずむずしてきただろ』

(あっ!)

『心配するな!声は殺している。こんなところでよがり声を出したくないだろ』

(あんあんあぁぁぁ~)

『だんだん痺れてきたようだな。乳首の先がこすれるたびに脳天に電気が走るようだろ』

(あっ!あっ!あっ!どうしてこんな時に)

『子宮が熱くもえあがり』

(あ~ん)

『愛液がしたたり落ち』

(ど、どうして?疼きが止まらない)

『手足の先まで快感は走り』

(こんな事って)

『身体は更なる快感を欲求する』

(駄目!駄目!駄目!)

『くわえたいだろ』

(あん!・・・・・・・私いったい何を考えているの)

『舐められたいだろ』

(あぁ!どうにかなりそう)

『吸いつきたいだろ』

(は~ん・・・・・・・いけない!いけない!)

『吸われたいだろ』

(いや~ん・・・・・・・でも、でも)

『入れたいだろ』

(あんあんあんあ~ん)

『破壊されたいだろ』

(いい!いい!いい!)

『お前は今大好きな黒くて太いものを口に頬張っているんだ』

(く、口に)

『そうだ!お前は凄く恥ずかしい女なんだ!恥ずかしくて、恥ずかしくてたまらないんだ!でも嬉しくてたまらないだろ』

(あぁぁぁ~どうして?死ぬほど恥ずかしいのに凄く嬉しい!)

『もうすぐこれがお前の中に入ってくるんだぞ。お前が一番入れてほしいところだ』

(い、一番・・・・・・入れて欲しいところ・・・・・・入ってくるの)

『気持ちいいぞ!痺れるぞ!もっともっと恥ずかしい女になれるぞ』

(疼きが止まらない!我慢できない!早くしたい)

『当然だ!お前にとってこんなつまらん会議なんかなんの意味もない。大事なのは快感をむさぼり食う事だ』

(ど、どうしたら?)

『左手で乳首をつねってみろ右の二本の指をお前のいやらしいところに入れてみろ』

くちゅくちゅくちゅ

(気持ち良い!気持ち良い!気持ち良い!こんなに気持ち良いもんだなんて)

『もっともっと掻き回すのだ!』

(あんっあんっあんっいくいくいくいくー)

『いきたいだろ!至上の快楽を得たいだろ!声も返してやるぞ!おもいっきりよがるがいい』

「ああああぁぁぁぁぁ~いくいくいくいくいくいくいくの~死んじゃう」

「田宮さん何を!どうしたんですか?」

「ちんちん欲しい!黒くて太いのが欲しいの!欲しいぃぃぃぃ」

「田宮さんしっかりして」

『目の前の女を見てみろ!あの女はレズなんだ!本当はこんなくだらない話しなんかしたくない!さっきから欲求がたまってしょうがない。今すぐお前に抱かれたいんだ』

(い、い、今すぐに・・・・)

『そうだ!今すぐだ!あの女のいやらしい口をお前の口でふさぎ、胸を鷲掴み、やらしいところに突っ込んでやれ』

(私が)

『新しい扉を開けるのだ!』

「主任」

「な、何を・・・・あっ」

(もう!どうなっても良い。いいの!いいの!気持ち良い!気持ち良いの)

『これでも人間は弱くないのか!理性とは所詮こんなもんだ!快楽の前ではあまりにも無力なものなのだ』

「うわああああぁぁぁぁぁぁ!うっ!うっ!」

「弘志負けちゃ駄目!こんなやつに負けないで!お願いだから耐えてちょうだい」

「うぐっぐっぐっぐ」

『崩壊は間近だ!脆いものよな。そやつがわしの物になるのは間近だ』

「おなた思いどおりには絶対させないわ。弘志行っちゃ駄目!お願い耐えて」

『ふっ!そろそろ鎖を切らなければな』

「なんですって?」

『そやつをくだらぬ倫理に縛り付けているもの』

「まさか」

『この女だな』

「シ、シスター!」

『お前達につまらぬ物をふきこみ縛り付けている者は』

「お願い!シスターだけは」

『全て断ち切ってやるわ!』

「今日の糧を感謝します。われらに与えてくださった全ての物に感謝します。我が主なる・・・・・・・・・」

『くだらぬ!くだらな過ぎる!いちいちそんな戯言を言わねば飯も食えんのか』

(・・・・・・・?)

『食欲を満たすのに理屈はいらぬ。本能のおももくままに行動すればそれでよい』

「こ、これは・・・・・・・・」

『正直になれ!本能に逆らうな』

「みなさん!ついにきたる時が来たようです。私達の元にも遂にやってきました。しかし私達には主が付いておられます。怖れる事は何もありません」

『ふっ!へどが出るわ』

「主よ!われらをお守りください」

『哀れよのう!そんな虚像に縛られおって』

「黙りなさい!ここは主によって守られた場所!お前の力は及ばないわ」

『こざかしいわ』

「真理子さん聞こえる!」

「シスター」

「こいつがここに来たという事は真理子さん近くにいるのね」

『ふっ!見抜いておるのか!』

「いいこと!ようく聞いてちょうだい。どんな事があってもそいつの言う事に耳を傾けては駄目!主はあなたをいつも見守っています。いつもいつも・・・・」

『戯れ言を!』

「今すぐ真理子さんを解き放ちなさい!お前は存在してはいけないのです」

『くだらぬ虚像に洗脳された哀れな女よ!今わしが救ってやるわ』

「お前こそ覚悟しなさい!主は怒っておられます。お前は滅ぼされるのです」

『女としての喜びを与えてやるわ』

「出来る物ならやってみなさい。主の前ではお前は無力です」

『はっはっ!無力なのはどちらかな!まずお前の喉が渇きだし』

「・・・・・・・・・。」

『身体の芯から欲情が湧きだし』

「・・・・・・・・・。」

『愛液がしたたり落ち』

「・・・・・・・・・。」

『たまらなく男を欲しがる』

「・・・・・・・・・。」

「それで終わりですか?」

『何?馬鹿な!』

「お前の力もここには届かないわ!」

『火、水、風、なるほど結界か』

「そう!ここではあなたは無力」

『ほざきおって!捻り潰してくれるわ』

「あなたを哀れに思うわ」

『哀れだと!』

「お前は父の強さを知らない!母の優しさも知らない!生涯孤独!ぬくもりも安らぎもない闇の世界でしか生きていけないのね」

『なんだと』

「闇は全てを飲み込み無にするわ。もちろんお前もね」

『お前に何が分かる』

「私には分からないわ!でも主は全てお見通しです」

『ふざけるな』

「この世界では愛を知らぬお前には居場所がないのです」

『うるさい!』

「憎しみと破壊しかないお前は消え去るべきです」

『黙れ!』

「主の怒りを知りなさい」

『ぐぅぅぅぅぅぅ!凛か!』

「その炎は主の怒り!お前を全て焼き尽くすまで決して消えません」

『うわぁぁぁぁぁ!許さぬ!お前は許さぬぞ!』

「その怒りは更に増してお前を焼き尽くす」

『あぁぁぁぁ!これしきの炎など!うぐっ!うわぁぁぁぁぁぁ!あぁぁぁぁぁぁぁぁ』

「安心なさい。全て消え去った時お前に訪れるのは永遠の安らぎ」

『うう!うう!え、永遠の安らぎだと!』

「そうです。怒りも憎しみも無い永遠の安らぎです」

『ふっふっ!ならばお前には永遠の快楽をやろう』

「えっ!そ、そんな馬鹿な!消えるわけない!絶対消えるはずないのに」

(どうして?どうして?)

『こんな凛でわしを焼き尽くせると思ったか』

「なぜ主の炎が・・・・・・・・・」

『愚か者め!まだ気づかぬか!結界はとっくに全て破られておるわ!あの者達によってな』

「ま、まさか!お前達!」

(嘘よ!嘘よ!)

「私達はあのお方のおかげで解放されました」

「何を言ってるの」

「これからは自由にしたい事が出来るのです。女を喜びを味わう事が出来るのです」

「そんな筈ないわ!ここではお前の力は及ばないはず」

『封印の扉の事か!そんなものはとっくに破られておるわ』

「そんな!」

『ふっ!では今一度行くぞ』

「やめなさい!やめなさい!」

『喉が渇きだし』

「うぐっ!」

(あぁぁぁ!どうして?くわえたい!凄く!凄く!口の中に頬張りたい)

『ふっふっ!くわえたいだろ!頬張りたいだろ!』

「な、何を馬鹿な事を!」

『やつのちんぽはでかいぞ!太いぞ!気持ちいいぞ!』

(しゅ、主の・・・・・)

『次に身体の芯から欲情が溢れだし』

(負けちゃ駄目!でも、でも・・・・・し、したい!したい!とてもしたい!)

「お姉様!我慢する事ありませんわ!みんな!お姉様を慰めてあげましょ」

「お前達何を!あっ!ひぃぃぃぃ~」

『愛液がしたたり落ち』

「お姉様ったらもうこんなになって!かわいらしいわ!もっと気持ちよくさしてあげる」

くちゅくちゅくちゅ

「あ~!あんあんあんあんあん」

『そしてたまらなく男を欲しがる』

「あ~ん!どうして?どうして?」

(たまらなく男が欲しい!おもいっきりちんちんで突かれたい!私を無茶苦茶にして欲しい~)

『どうだ!抱かれたいだろ!突かれたいだろ!もっともっと快感が欲しいだろ』

「あ~んあ~ん!嫌!嫌よ!」

『遠慮する事はない。すでにお前の目の前には男が立っている』

「い、いつの間に?」

『ほうら!気持ち良さそうなちんぽだぞ』

「あぁぁ」

『あれに突かれたら凄~く気持ちいいぞ』

「駄目よ!駄目よ!」

(で、でも・・・・・・・)

『身体中電流が走ったみたいになり手足の先まで快感が行き渡る』

(あ~ん!もう、もう)

『お前はこの快楽の虜となるのだ』

「もうどうなってもいい!抱いて!して!」

『はっはっは!所詮こんなもんよ』

「シスター!しっかりして!正気に戻って」

「いいの!いいの!凄くいいの!もっともっと突き上げて~」

『自ら腰を動かしておるわ。見ろ!あの快楽に溺れた顔を』

「シスタ-!シスター!」

「あん!いく!いく!いく!いっちゃう!」

『美しいとは思わぬか』

「頂戴!あなたのものをいっぱい頂戴」

『気持ちいいぞ!羨ましいだろ』

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

『はっはっはっ!失神しおったわ!お前もしたいだろ』

「卑怯者!シスターを!シスターを!」

「ふっふっ!これで鎖は全て断ち切られたわ」

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「弘志!しっかりして」

『いい加減にしろ!しっかりするのはお前の方だろ』

「えっ?」

『まだ気づかぬか』

「・・・・・・・・?」

『その男の存在自体疑問に思わぬか』

「何を?」

『お前は、なぜその男が実際存在するものだと言いきれる?』

「あっ!ひ、弘志」

『そもそもその男は最初存在しないのだ』

「何を馬鹿な事を!弘志に美代子にシスター・・・・」

『ふっ!美代子だと!共通の友人だと!あの女の横にその男が立っていた事があったか?』

(そんな!・・・・学生の頃・・・・・就職が決まった時・・・・・あのクリスマスの日・・・・・そんな!そんな!嘘よ!嘘よ!)

『シスターだと!あいつの横にその男がいたか?』

(あの雨の日・・・・あの礼拝堂で・・・・あの朝・・・・あの日!あの時!・・・・・弘志何処に居るの?何処に?何処に?)

「嘘よ!嘘だわ!」

『シスターはお前の名を叫んだがその男の名も叫んだか?』

「弘志は!弘志は!」

『そんなもの私が作り出した幻影にすぎぬ』

「そんな!そんな事って」

『あの女達に縛られていたのはお前だ!わしがその鎖を切り離してやったわ』

「美代子!シスター!弘志!」

『お前から友情という物を切り離し』

(あぁ!私の・・・・私の・・・・頭の中が真っ白になっていく・・・・・・)

『信じる心を切り離し』

(ここは何処?何処なの?)

『安らぎを切り離し』

(私が!私が消えていく!)

『愛を切り離す』

(いったい?いったい?)

『そして仮の姿を打ち破り』

(私は?私は?)

『今こそ復活せよ』

(私はいったい何者なの?)

『わが母よ』

< 終 >

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