男の子の夜が怖くなる 第二夜 近所のお姉さんが…

第二夜 「近所のお姉さんが…」

 少学五年生に進学した百合樹は、クラス替えもあって四年生までの雰囲気と大きく気持ちが揺れ動く時期でもあった。
 そのひとつにはもちろん、異性への興味もあった。しかし、彼の心の中は自分の学校にいる同級生などではなく、やや年上の女性にまず関心を目覚めさせていたのだった。
 新しいクラスでは同じ方向で通学する者が全くいなくなった。気弱でいじめられっこタイプの彼には異性ももちろん、同性にさえ友人はできていなかった。
 ところで、学年が変わる四月になると、多くの環境も変わってくる。いつもの通学路には新しい顔も現われてくるのであった。百合樹の目に止まったのは、大柄な女子高校の一年生だった。つまり、五つ年上ということになる。この春に反対方向にある厨学を卒業して百合樹の通う少学校と比較的近い私立の女子高校に通うことになったため、百合樹の通学路とわずかに重複していたのであった。百合樹の通学路には途中車の往来が激しい道路があって歩道橋などはなく、この道路を横断するのに長い赤信号で待たされていた。その交差点は五差路で、つまり百合樹の通ってくる道ともうひとつ別の方向からの道があってそこを百合樹がひと目で気に入った?女子高校生が通ってくるのであった。横断した先ではほんの十メートルぐらいのところが一緒の道になるが、またその先で二つの方向に分かれて左に百合樹の通う少学校が、右に女子高校があるという状況だった。したがって、以前から百合樹は多くの女子高校生も見ているはずなのだが、今までほとんど関心を持って見ていなかっただけである。
 百合樹が目に止めた女子高校生は、かねてからの好みどおり髪の毛のすごく長い少女で、スカートの下裾をはみでるくらいもあった。前髪も両サイドに分けてそれぞれ三つ編みにして他の髪の毛といっしょに背中へおろしていることが多かった。百合樹は女性というよりむしろその髪の毛にひきつかれたという感じだった。ときにふたつのやや太めの三つ編みのおさげにまとめていたり、耳元を黒いゴムで束ねたおさげにしていたり、またゴムもゆわえずに背中を覆うほどおろしていたりして、毎朝百合樹はその女子校生がきょうはどんな髪形をしているのだろうかとそればかりを楽しみに家をいつもの時間に出るようになっていたのであった。
「あっ、あの高校生だ。いいなあ、あの長い髪」
 たいてい、その女子校生が交差点に先に来て信号待ちをしていることが多く、横断歩道やその先の道の方向が百合樹が歩いてくる通学路では真正面になるので、女子校生の後ろ姿が百合樹からちょうど真後ろにいつも見られるようになっていた。顔のほうをじろじろ見ていると怪しまれるだろうが、後ろから眺めているぶんには何の文句も言われずにすむだろうと、しかも車が往来する横断歩道のほうを見ているつもりで実は女子校生の背中に胸をときめかせながら見ていたのだから、百合樹の気持ちはだんだんエスカレートしていた。
「もっと、おもいきり興奮しよう。うふふふ」
 女子校生の姿を見送って自分の少学校に着くと、きまって百合樹はトイレの大のほうにかけこんでいた。下着が精液で濡れているのを乾かすためである。女子校生の長い髪の毛を見るたびに、性器がぼっきするようになって精液も流れ出てくるようになっていた。もちろん、百合樹にとっては初めての経験であるが、毎朝百合樹がトイレの大のほうへかけこむ姿を周囲が見ても、朝食でたべすぎれば当然そういうこともあるだろうと周囲は思っていたので、不思議がられることはなかった。女子高校のある場所がより遠いほうにあるので、少し早く家を出る彼女の時刻にあわせて百合樹も早めに登校しているから、遅刻することがまずないというわけで、遅刻する生徒のほうばかり気にする教師の眼中にもないというわけである。
 百合樹のあこがれるこの女子校生であるが、通っている学校は私立の女子高校でそれほどレベルの高い学校でもなかった。顔はかわいいとはいえない。髪の毛に手入れを念入りにしている分顔の美容にはあまり気をつかっていないという感じだった。身長も同じ学年のなかでは高いほうで体型も太めであり、足もまさしく大根のようで全体的に髪の毛以外は美人ともいえず、厨学校でも男子が寄りついてくるほうではなかった。自他ともにもてないと認めているが、髪の毛だけは自分の気に入りで少学生以来ずっと長くしつづけてきた。
 百合樹はとにかく髪の毛以外はどうでもよかったようなものだった。また、たんにあこがれているだけで、この女子校生を恋人にしてデートでもしようという考えもなかったのである。もちろん、あまりにも年の差からして不釣り合いではあるが。
 しかし、毎日いると思いこんでいるととんでもないことになる。五月の終わり頃のことだった。その日、いつも会えると思って同じ時刻に門を出た百合樹が、この日はあこがれの女子校生に会えなかったのでどうしたのか、風邪でもひいたのかと思った。翌日も、またその翌日も同じ時刻に来て会えなかったのである。しかし、その週の土曜日でしかも帰り道になると…、ああっ、あの女子校生だ。よかった、最も多い姿の両サイドの前髪を三つ編みにして他の髪といっしょに背中へおろした姿を見てほっとした、という様子だった。この週は女子高校が中間試験をやっていて、いつもと通学する時刻が行きも帰りも違っていたのは当然のことだった。
 だが、女子校生の姿を見つけたのも一瞬で、百合樹が彼女に近づこうとすると、彼女は急に走り出した。百合樹に気がついたのではない。横断歩道の信号機が青から赤に変わろうとして点滅していたため、彼女は早く渡りたかったのである。だが、百合樹はすでに赤信号になってしまった交差点で待たされながら、彼女を見送ってしまう羽目になった。そして、彼女の帰る方向は少し左に曲がる道に入ったほうであるから、すぐに百合樹の視界から消えていった。
 横断歩道が青にようやく変わった。まっすぐ帰れば自宅の方向であるが、この日はもういちど彼女の後ろ姿が見たいと思ってしまい、なんと彼女の帰宅した方向の道へ曲がってしまったのである。その道に入ってもまだ彼女の姿は見えていなかったが、途中で曲線になっていたため、走れば追い付くだろうと思って百合樹は走り出した。そして、曲線が直線になったところで…いたのである。はるか前方に彼女の姿を見つけると、百合樹はまた彼女の背中にふわっとなびいている黒髪を眺めようと、さらに足を速めて彼女に近づこうとしていたのであった。
 ところが、彼女との間隔が5メートルぐらい近くなった時だった。百合樹はあわてて走っていたため、とうとうそこで転んでしまったのである。
「うわっ。いたい!」
 悲鳴をあげた百合樹に、その時、前を歩いていた女子校生もさすがに百合樹のほうを初めて振り向き出した。そして、倒れている百合樹に声をかけた。
「まあ、あんた、大丈夫?すごい血じゃない。ねえ、わたしの家、すぐそこだから手当てしてあげるわ。その前にけがしたところをとめなくては。今、ほうたいがないから、すりむいたところ、なめてあげるわね」
「うっ、おねえさん、すみません。はっ」
 百合樹はひざのところを強くコンクリートに打ちつけていて、上半身だけは起き上がっていたが、座り込んで立てないままだった。女子校生がそのひざの傷をなめはじめた。黒髪の長い女子校生が自分の股間の近くをなめていると思うと、百合樹は興奮するのだった。性器がぼっきして、半ズボンのチャックもふくらんできた。できればそこまで見られたくないと思った百合樹であるが、女子校生にはとうぜん気づかれていた。
「うふふふ。この子ったら。さあ、血がとまったわ。歩けないんじゃない?おぶってあげるわ」
「え?」
 女子校生はしゃがんで自分の髪の毛がかかった背中の、その髪の毛の上にのるよう百合樹に指示した。
「おねえさん、こんな髪の毛の上からのっかっていいの?」
「どうぞ。しっかりつかまってね」
 百合樹はとうとう、あこがれていた女子校生に背負われることになってしまった。彼女の長い黒髪にじかに抱きつきながら、また女子校生の肩につかまっていた。まさしく目の前はいくらでも好きなだけ眺めてくださいといわんばかりの黒髪で覆われ、香りも強く漂ってきて百合樹は転んだ痛みも忘れるくらいに、ボォーッとなりっ放しだった。もちろん、彼女の優しさにも魅入ってしまった。ぼっきした性器からは精液も出て下着が濡れており、しかも半ズボンだったため、たれていた精液がはみ出て女子校生の髪の毛にもかかっている。
 女子校生が家の鍵をあけて百合樹は背負われたまま、一室に入った。家にはほかに誰もいないようだ。ぬいぐるみや人形もあるいかにも女の子の部屋という感じだったが、外の窓が黒いカーテンで覆われて暗い感じであった。百合樹はその部屋におろされたが、傷口がまだ痛んでいたため、立つことができずに床に仰向けになってしまった。だが、目の前には女子校生のお尻を覆うほどの長い黒髪が両サイドの三つ編みといっしょに見えていて、この時こそとまた百合樹はその髪の毛全体をまじまじと眺めていたのであった。女子校生もその場に立ったまましばらく振り向かなかった。そして、女子校生のほうから口を割りはじめた。
「ねえ、あんた…」
「はい?」
「ふっふふふ」
「あっ、おねえさん、なにをするの?」
 急に振り向いた女子校生は、自分の髪の毛を見てぼっきしていた百合樹の性器を、半ズボンの上からつかみ始めた。百合樹は女子校生の突然の行動に驚いてしまった。
「さっき、わたしがあんたの傷をなめていた時も、あんたをおぶった時も、こうしてふくらんでたでしょ。おちんちんが」
「おねえさん、どうしてわかるの?」
「ほら、わたしの髪の毛、このへんが濡れているでしょ」
「ええ?あっ」
 百合樹が女子校生の背中におぶわれていた時、髪の毛を見て興奮したために流れ出てしまった精液が、女子校生の三つ編みにしていた前髪のまんなかあたりにもかかってしまい、その濡れたところを女子校生は百合樹につきつけて見せていた。女子校生はさらに百合樹にすごむように迫った。
「それに、さっき、どうして、あんた、わたしのこと追いかけてきたの?」
「ええっ?うっ。」
「あんた、少学生でしょ。たしか、毎朝交差点のところでも、わたしのことじろじろ見ていたわね」
「そんな、気付いてたなんて」
 百合樹はやはり気付かれていたのだと思って一瞬焦っていた。
「あんたのやってること、ストーカーよ。ちかんよ。あんたの学校の先生にいいましょうか」
「ごめんなさい。つい…」
「ついって、なんなの?あやまってすむ問題じゃないわ。少学生の男の子のくせに、わたしみたいな高校生を追いかけていやらしいわ。そんな男の子はね、わたしがおしおきしてあげるわ」
「おしおき?」
「うふふふ。こういうことよ」
「あっ」
 女子校生の長い髪の毛がとつぜんぶきみに動いた。その髪の毛を見続けていた百合樹は、そのまま視線をそらさずにいたが、女子校生の目がつりあがって光りだし、口から両側に牙がはえていた。そして、すぐに百合樹にとびかかってきた。
「血、血をちょうだい」
「うわあーっ!」
 女子校生は吸血鬼になっていたのである。百合樹の首にかみつき、ばさっと百合樹の右肩に少女の長い黒髪が左側の三つ編みにしていた前髪といっしょにおおいかぶさってきた。
「くくく」
「はなして、おねえさん」
「あんたも吸血鬼になるのよ。ちょうどいい獲物だわ。わたし、パパに血を吸われて吸血鬼になっていたんだけど、もっとだれかの血を吸ってパパに吸ってもらわないとパパが死んじゃうのよ。けれど、まわりの友達は襲えないし、自分のことを好きになってくれる男の子でないと血を吸えないと言われていたの。だから、あんたがちょうどよかった。これでたっぷり、パパにおいしい血があげられるわ」
「おねえさん、ほんとにごめんなさい」
「もうおそいわ。そのかわり、あんたをゆめの世界へつれてってあげるわよ」
「ええ?あうっ!」
 女子校生は、百合樹に噛みついていた牙をさらに鋭くとがらせて血を流させた。猛毒が百合樹の身体に大きく染み込んできた。吸血鬼の牙は、特に女性のほうがより強い猛毒を持ち、噛まれると強い痛みを感じるという。
「くくくく。うふふふふ、ちゅばっ、ちゅばっ」
「いたい、おねえさん」
「ふふふふ、また、おちんちん、たってきたじゃない。うふふふふ、うふふふふ、ふふふふふ」
「ううっ…。あん…あん…」
「うふふふふ、女の子みたいね。ずっと泣いているといいわ、うふふふふ」
「あん…あん…、いたい」
「うふふふふ、うふふふふ」
「あん…あん…」
「うふふふふ、うふふふふ」
 不気味に笑い続ける女子校生は、いたがる百合樹を抱きかかえながら、何度も息をして百合樹の首すじから血を吸い続けていた。血がしたたりおちそうになるとまた女子校生は首を下げて唇でなめまわしていた。そのたびにまた、百合樹のあこがれている女子校生の長い黒髪がおおいかぶさり、百合樹は興奮するのだった。しかも、性器も女子校生に握られてぼっきし、また大量に精液が流れ出てきてしまった。
 どっくんどっくん、じゅるじゅるじゅるるるるるる…。
「ああ…」
 しばらくして百合樹はがくっとなった。
 やがて灯りがつけられて百合樹は起き上がった。
「ここは、はっ、そうだ。ぼくはおねえさんの家に…」
「ふふふ、気がついたわね。この鏡を見て口をあけてみたら」
「あっ!」
 女子校生がいつも髪の毛をとくために使っている三面鏡を百合樹は見せられていた。百合樹の口からも鋭い牙がはえていたのだった。
「いまは昼間だから、あんたも人間の心でいられるけど、夜中になったら血がほしくなって人が襲いたくなるわ」
「や、やだ、だれかを襲うなんて」
「ふふふふ、あんたの場合は同じ年ぐらいの女の子から血を吸わないと生きられなくなるのよ。おうちのお父さんとかお母さんではだめなの。おうちの人達が寝静まってからそっと家の外に出ればいいわ。わたしがあんたを、好きな女の子のいる家につれていってあげる。かぎがかかっていても女の子の寝ているお部屋へ通り抜けることができるの」
「ええっ?女の子を?」
「おともだちもいなさそうね。いじめられてるんでしょ。学校のみんなにふくしゅうするのよ。女の子を吸血鬼にすればその子に別の男の子を襲わせることもできるわ。女の子にもいじめられているみたいね。そういう子ならおもいきり襲おうと思うでしょ」

 その夜、百合樹は女子校生の誘いどおり、ひとり家を出て何人かの同級生の女子生徒の家に押し入って、次々に吸血鬼にしていったのである。
 最初に百合樹が襲った相手も、百合樹の好みである髪の毛が長い女の子だった。真夜中に目覚めた女子生徒がいやがるのをむりやり抱きついたり、髪の毛をわしづかみにしたりするなど、気の向くままに襲い、うなじの横からかみついて血を吸い続けていた。
「きゃーっ!」
「くくくく…、ううっ、ちゅばっ」
 その女子生徒の布団をしいたベッドの寝床の下には、吸い切れずにたれた血と、百合樹が興奮してぼっきさせた性器からとびでた大量の精液とがまじりあってしたたりおちていた。

< つづく >

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