第三夜 「同級生の女子生徒が…」
六月の梅雨が続く湿っぽいある日のこと、厨学二年生の真美也は、体調を崩して保健室にかけこんでいた。先月受けた定期試験の成績が悪くて親に叱られていたため、勉強時間を無理やりふやされていたために、連日の息苦しい気持ちが爆発していたという状況だった。
真美也には、好きな女子生徒がいた。もちろん、片思いであるが、その女子生徒とは同じクラスになったことがなく、公立厨学の場合はだいたい近くの少学校からの進学で同じ少学校出身の者も当然いるが、真美也が慕う女子生徒は別の少学校からの進学だった。少し背が高めで、髪の毛を長くしていつも三つ編みのおさげにしていた。入学式の時にひと目でそのうしろ姿を見かけてあこがれていたのである。その時はまだ髪の毛先もスカートの上裾ぐらいだったが、この一年間でもずっと切っていなかったのか、お尻を通りこして毛先がスカートの下裾にまでかかるくらいに伸びていたのである。それでも編み方はきっちりとしていて頭には何本ものの太いピンセットがさしこまれ、両方の耳元からきつく三つ編みの根元がしばられているという感じで細く垂れ下がり、お尻の真ん中あたりで黒いゴムが双方ともにきっちりと強くゆわえられており、そこから毛先まででもかなり長く垂れていた。
「いつもふたつに分けた三つ編みの姿しか見せないけど、ほどくとどのくらいになるんだろう。きっとひざを曲げたあたりまでかな…」
実際には、去年の水泳の授業があった頃に乾かすために髪の毛をほどいていたこともあり、一度だけ真美也はその姿を見たことがあるが、一瞬性器がぼっきまでして、精液も流れて下着を汚したこともあるほどだった。
女子生徒の名はゆう子といった。一年生の時はだいぶ離れたクラスにいたが、二年生では隣のクラスに近づいて、体育なら男子どうし、女子どうしがそれぞれ二クラスずつで同じ授業をやることになるそのクラスにいた。しかし、相手が女子では同じ教室で授業を受けることはなくもちろんしゃべったことなど一度もなかったし、ゆう子もまず真美也が自分のことを慕っているとは夢にも思わなかった。
しかし、けさの朝礼でちょっとしたニアミスがあった。雨が降っていたので、体育館で行われていたが、廊下への出口に生徒が集中して満員電車のように身動きが取れなくなることがあった。その時、真美也も押し出されてゆう子の背中を向けていたところにぶつかり、この時後ろにたらしていたゆう子の三つ編みにしていたかたほうの髪の毛のなかほどに手がひっかかってしまい、意識的ではなかったのにゆう子のおさげ髪のかたほうをひっぱってしまうようなかっこうになったのである。はっと思ってすぐに手を離した真美也だったが、彼女の髪の編み目にぬるっとした感触を味わったのはたしかだった。そのことがもとでまた熱も上がってしまったのであった。また、去年の水泳の授業があった頃に髪の毛をほどいていた姿を見た時と同じようにぼっきもしていたが、気持ちがより変になっていくという感じであった。
ゆう子も、決してブスというほどの女子生徒ではなかったが、男子には決して人気があったわけでもなかった。おとなしくて男の子にはまず関心を持っていないという感じで、またかえって近寄り難い雰囲気を持ち合わせていた。他の女子生徒のうわさをする男子は多いが、ゆう子は男子生徒たちの眼中にはまずないという感じで、ゆう子はどうかとしゃべる男子はまずいなかった。多くの男子生徒の女子に対する関心はまず顔がかわいいかであり、ついで胸が大きいか、それから尻とか足であった。真美也のようないわゆる髪フェチの男子生徒はほかにおらず、この点ではライバルがいないから安心のようなものであったが、事実、真美也がゆう子を慕っていることなど周囲にはまだ誰も気付いていない。むしろ、他の女子を好きなんだろうといううわさがされていた。もちろん、真美也自身も誰にも彼女のことなどしゃべったりしていなかった。わかられると、またなんで、まさかああいう子が、意外だなどと言われそうである。
いっぽうでは、ゆう子は同じ女子には人気があって、やはり髪の毛を長くしてきれいに編んでいるということで女子生徒たちにはあこがれが強いということもあり、ゆう子の髪の毛をなでている女子生徒を見たりすると、真美也はいいなあと思ったりしていた。
「もし、自分も女の子に生まれていたらあの子みたいに髪の毛を長くして女子生徒にさわられてみたいし、あの子に近づいて自分も彼女の髪の毛をなでてみたい」
どちらかといえばそんな考えをいつも抱いていた。つまり、たんにあこがれるだけで告白して恋人になってつきあおうということまでは考えておらず、思うだけでいいということだったのである。まだ、三年生が残っているけれど、同じクラスになることはないだろうな、それでもいいという感じだった。
さて、その日、保健室で倒れ込んでいた真美也は、ずっと寝っ放しでいつのまにか外も暗くなってもう夜が来ていたかのように感じた。六月であるから実際には昼が長いはずだが、大雨で外には大きな雨雲がひろがっていたために暗いためであった。実際にはまだ、午後の授業が始まる前の昼休みだった。食欲もなかった真美也は給食もとらなかった。保健室の寝室は、ぐっすり眠れるようにカーテンで仕切られていて窓も見えない位置にあったためである。
真美也が目をさましてそろそろ起きて出ようとする時、保健室のドアが開いた音がした。保健の先生ともうひとり女子生徒がいっしょに入ってきたというようすだった。たしかに女の子の話声だった。保健の先生はこの四月に交代して赴任してきた、ある女子大学を出たての若い黒髪先生だった。これも真美也の好みどおりで胸あたりまで届くウェーブのかかった長い黒髪をおろしていた。カーテンのすき間からのぞきだしたが、黒髪先生がつれてきた女子生徒は、真美也が日頃からあこがれていた隣のクラスの女子生徒でいつもの長いおさげの三つ編みにきっちりと結っていたゆう子だった。
「ゆう子さん、じゃあ、そこの丸いいすの上にすわって。どんなぐあいなのか見てあげるから」
「はい、先生、お願いします」
真美也は、自分のいる方向からちょうど後ろを向いてゆう子がその丸い、背もたれのないいすにすわったのを見届けた。スカートのすそをあげて前の方におろすようにすわると、自慢の長い三つ編みの黒髪の毛先はまっすぐお尻をこえていすのふちより下までたれていた。真美也はその髪の毛先をまじまじと見つめ、性器をまたぼっきさせていたが、その時、奇妙なことが起こった。
黒髪先生が、ゆう子の正面から両肩をおさえ始めた。するとすぐにしゃがんでゆう子の首のあたりに顔を近づけ始めた。
「何をしているんだろう、あの先生は彼女に、あっ」
黒髪先生の目が赤く光り出していた。そして、真美也の方向からはゆう子の後ろ姿に隠れてはっきりと見えなかったが、黒髪先生が口をゆっくりと大きくあけたかと思うと、なかからすばやく鋭い牙がはえてきて、その牙がゆう子の首を目がけて突き刺したのである。
「黒髪先生、気持ちいいわ」
「うふふふふ。くくくく」
そしてじっとしたままのゆう子を黒髪先生は抱きかかえながら、ちゅばちゅばっと音をたてながら、何度も息をして何かを吸い込んでいるようだった。黒髪先生の口もとから血が流れてゆう子のおさげにしている髪のはえぎわや、きっちり三つ編みにしばっている根元のあたりにしたたりおちていたのである。
「く、黒髪先生は、もしかして、吸血鬼…」
こわくなって、真美也は逃げ出そうとしたが、この保健室から彼女らの前を通らずに出ることができなかったため、もうカーテンをあけずに彼女たちがいなくなるまでじっとしていようと思った。
しかし、そうはうまくいかなかった。後ろ向きになってうずくまっていた真美也の背中から、ついにカーテンが開けられてしまい、いることがわかってしまった。後ろを向くと、そのカーテンをあけた黒髪先生が立っていた。そして、黒髪先生が恐ろしい形相で真美也をにらみながら話しかけた。
「あなた、まだ、そこにいたの?」
「は、はい」
「もしかして、今の場面をあなた、見ていたわね」
「えっ?べつに」
「隠さなくてもいいわ。わかっているのよ。わたしには。わたしはこのとおり、人間じゃないから隠れてもわかるのよ。それに、あなたがどんな子を好きなのかということもね」
「ええっ?」
吸血鬼である黒髪先生は、その超能力によって真美也の心の中もお見通しというわけである。
「おほほほほ。だったら、ちょうどいいじゃない。ここにいるあなたの好きな女の子、いまわたしが吸血鬼にしたから、この子に血を吸われてあなたも吸血鬼になればいいわ。わたしは女だけど、女の子しか襲えないの。でも、この女の子はあなたのような男の子を襲うことができるわ。うふふふ」
ゆう子は、黒髪先生に襲われた時と同じようにずっと丸いいすに、真美也の方向からは背中を向けてすわったままだった。だが、黒髪先生がその時、ゆう子の頭の上から長い片方の三つ編みの髪の毛をするするっと下のほうまでなで始め、つまんですこし上のほうにあげると、ゆう子がゆっくり立ち上がりながら後ろを振り向き出した。そして、すぐに目をギラッと赤く光らせて真美也のほうを見つめた。
「うっ、く、苦しい」
「うふふふ。ゆう子さん、この男の子を襲うのよ」
ゆう子に見つめられた真美也は、その場で動けなくなってしまった。ゆっくりとゆう子が三つ編みの髪の毛を両方とも背中にはらいのけながら真美也に近づいて、真美也の首に顔を近づけたところで口を大きくあけてすぐにするどい牙をなかからあらわしてきた。そして、真美也の正面から肩の上にとびながら抱きつくとすぐに真美也の首に牙を刺してきたのであった。
「うわあーっ!」
「くくくく。くくくくく」
ゆう子にかみつかれて真美也は悲鳴をあげた。より強力な猛毒が、真美也の全身に染み込んで痛みを大きく感じさせられていた。血も流れ出てきて、ゆう子がすぐなめて吸い上げ始めた。
「ううっ…。いっ…いっ…いた…いた…」
「くくく、ちゅばっ、ちゅばっ」
真美也の目の前には自分の首にかみついているゆう子の髪の毛を両側に分けてさしこまれている何本もののピンと、その頭から垂れ下がっている二本の三つ編みのおさげ髪が、真美也の首から血を吸うために何度もはげしく揺れ動いているのが見えた。そのうえ、ゆう子の魔力のために両腕も意志とは関係なく動かされて、気がつくと真美也は両手でゆう子の三つ編みの髪の毛をさすったりつまんだりしていて、よりゆう子を興奮させるのだった。
「ああ、けさ、この女の子の髪の毛をさわってしまったばっかりにぼくは…」
「くくくく。ちゅばっ、ちゅばっ。ちゅっ」
ゆう子も、真美也の身体を両腕で強く抱きしめて真美也を悶えさせていた。そのため、より興奮した真美也は、思わずぼっきしていた。そして、精液も流れ出てきた。
どく…どく…じゅるる…じゅるるん…びちゃあー。
「ああ…、ああ…」
「くくくく、血、血がほしい…」
「ううう…」
不気味に笑いながらゆう子は真美也を襲っていた。真美也も、好きな異性に襲われているためか、抵抗することもなく、襲われる味わいをかみしめ続けるのだった。吸血鬼に襲われると自分も吸血鬼になり、しかも自分を吸血鬼にしたゆう子の奴隷になって別の人間を襲ってしまうのかと真美也は思った。
「くくくく、うふふふふ、うふふふふ、血、血…。ちゅばっちゅばっ」
「ああ…」
「うふふふ、うふふふふ」
「あん…ああん…」
「うふふふふ。うふふふふ」
真美也の首にも血がしたたりおちてきた。そして、真美也はその場にがくっとなってまたベッドの上に倒れてしまった。
目覚めて、真美也が起き上がると、ゆう子に鏡台を見るように案内された。鏡のなかの自分の口を見た真美也は、両側に牙がはえているのが見えた。
「とうとう、ぼくは、この女の子によって吸血鬼になったのか」
「ほほほほ、もうすぐこの保健室に一年生の女の子が来るから、その子の血を吸うといいわ」
ゆう子を吸血鬼にした黒髪先生が、さらにゆう子によって吸血鬼にされた真美也に話しかけた。
「ええっ?女の子を襲うなんて」
「あなたは女の子から血を吸わないと生きられなくなるわよ。ふふふ、あなた好みの長い髪の毛の女の子よ。いやでも襲いたくなるわ」
黒髪先生がぶきみに笑いながら話したとおり、体操着を着て胸あたりまでの三つ編みのおさげをした一年生の女子生徒が、手にけがをしたので保健室に入ってきたのであった。その女子生徒をひと目見ただけで真美也は興奮してしまい、目を光らせて女子生徒に魔力をかけて動けないようにしてしまった。
「くっくくく」
「きゃあーっ!」
真美也は正面から女子生徒のりょうほうのおさげの髪の毛をわしづかみにしてひっぱりながら、女子生徒の首に近づいてすぐ牙を出し、かみついて血を吸い始めたのであった。ゆう子のかけた魔力によって真美也は動くようになっていたため、意志とは反対に女子生徒を襲ってしまったのである。
「かわいらしい女子生徒さん、許して。ぼくは君の血を吸わないと生きられないの」
ゆう子も、真美也を興奮させようと真美也のはいていた制服のズボンに下着までぬがせて、真美也の性器をまさぐり始めた。おとなしい長い三つ編みのゆう子が吸血鬼になったためにこんないやらしいことをするのにも、真美也はより驚いて興奮し、一年生の女子生徒の血を吸うと同時にゆう子の手による攻撃を受けて身悶えしていた。真美也の心も完全な吸血鬼にするための、黒髪先生の狙いだった。とうとう、真美也の性器から、精液も流れ出ていた。
「うう…」
「はあはあ…」
「ちゅばっちゅばっ」
真美也が血を吸いつくすと、その女子生徒の口からも牙がはえてきたのであった。
< つづく >