第二章の5
「―――マルコシアス公、卿に伝授してもらった剣技を使い、いざ推して参る」
そう言って指輪をはめた遼燕寺が俺に向けたのは背に負っていた一降りの木刀。
場の緊張感が一気に臨海に達する。
「…[黒の王の命令]、せっか。今すぐ家に帰れ」
「…うん」
そう言って雪花が校舎裏から消えていく。
遅い雪花の歩みによって視界から消えるまで、互いに動くことはなかった。が、攻防は止むことなく続いていた。
たった2分前後のにらみ合い、だが、精神力はまるで2時間以上見つめ合うくらいに浪費していた。
これまで似たような殺意まがいの敵意は向けられたことはあったが、ここまで純粋な殺意を向けられたのは初めてかもしれない。
並大抵の連中なら気を失っていてもおかしくはない。
…いや、あぁ、そうか。
気付いて自嘲気味に口をゆがめる。
この状態で気を失ってないってことは俺も普通じゃないってか。
……そう、そうならなにも気負う必要はない。さぁ―――
「…行くぞ」
「…ふっ!」
速い!
いや、コレは速いなんてモンじゃない。
速いなんて言葉すらコレには生ぬるい!
華南と同様の超高速に加え、それ以上の速さで放たれるのは神速の一振りの木塊―――!
しゅばっ
風斬り音と共に眼前の空間が『凪がれた』
「っとおっ、あぶ…」
ねぇな。そう言おうとした瞬間、
ばしゅんっ
鼻の頭から約2センチほど上が真一文字に[裂けた]
「あっ!?ああああああああぁぁぁぁぁぁっ!?」
「…今のはわざと外した。
―――だが、それでも兄には十分効果はあったようだな」
そんなコトを遼燕寺がつまらなさそうに言い捨てる。
じわじわと押し寄せてくる大きな痛み、だが、そんなモノは指輪でどうにかなる。
それよりもなんだ、今のは。
まさかあの木刀に指輪の力が使われて何か仕込まれているのか?
いや、違うな。
俺は自分の考えを瞬時に打ち消した。
眼前の剣士はそんな小細工を用いられるほど器用なヤツじゃない。
すると―――
傷口をなぞる。
そこには痛みと共に答えがあった。
鋭すぎるくらいに綺麗な傷口にそれに対して血の流れる量が少なすぎる。
少し前にマンガで呼んだことがある。たしかこれは―――
「かまいたちか…っ!」
「……流石、指環を託されただけの事はある。だが、この速さと剣戟、兄に避けられるか!?」
「―――……っ!」
確かに精神支配は一度支配下に入れてしまえば最強の分類に分けられる戦闘、いや対人掌握術だ。
だが、指環使いに間接的な精神支配が効かない。既に告白の時点でガラスに映った影に対して精神支配を行っていた。が、結果は現状に至る。
マンガではこの剣戟を見切れた上に同じ得物を使っていた。その為アレと同じような対応はできない。
そんなワケで今、重要視されるのは肉迫するための体術。
だが、そんな状態でコイツのそれは究極に近い。
昨日、華南から入手したアスタロトの力を使ってなんとか避けられるレベル。そんなヤツの懐にもぐりこんで指輪の力を叩きつけるだけの隙ができるのか―――
いや、あまりにも間合いが、リーチが違い過ぎる。
一瞬、昨日の華南戦同様、わざと攻撃を受けて倒れたフリをしようかと思ったが今のをくらったらそんな気にもならなくなった。
何の用意もなくあの一撃を食らえば間違いなく致命傷、骨の2、3本ならまだいい、間違いなく意識は刈られ、生死を分かつ一打になる!
コイツ―――強い!
口だけじゃない。
見てくれで大丈夫だろうと高をくくっていたツケがこれだ。
強盗や変質者を撃退したってのもウソじゃないのがよく分かった。
しかも、それ以外に強い何か…信念のようなモノをコイツは持っている!
「ちぃっ!」
俺は背を向けて走り出す。
こんな障害物もロクにない広大な場所で戦えば獲物によるリーチが長い相手のほうが有利に決まっている。
昨日のように街中なら捨て駒がいくらでも調達できたが文化祭準備中の学園の放課後にはそれがいない。
普段は部活動でそこら辺にいる連中も今日は室内で文化祭の準備をしてしまっている。
「ぬぅっ!逃げるか!」
「一人だけ得物を使っといて言ってくれるぜ!」
そう言って俺は校舎の角を曲がる、確かこの先は―――
「!っ、ここは―――!」
「ここなら何とか五分ってトコだろ?」
そう言ってオレはにんまりと口を歪める。
―――廃材置き場の中で。
「ここでなら剣技が自在に振れないと読んで―――」
「まぁな……」
苦虫を噛んだかのような遼燕寺の表情に得意げになって答える。
だが―――
「甘い」
「―――え?」
遼燕寺が一度、納刀するかのように木刀を腰の後ろに構えた次の瞬間、
しゅばっ
[何か]が、俺を走った。
そして
「―――っはぁッ!?」
どぱぁっ!
カラダが、右腹部から左胸部下にかけて―――[開いた]
「あっ!?あああぁぁぁぁぁっ!!」
目を疑う、錆びているとはいえ、椅子や机に使われている鉄パイプが―――斬られている!
「わが剣、わが意思、例え木々であろうと、金属だろうと斬るべきものを斬ってみせよう」
「木刀でっ!斬鉄が、できる、だとぉっ!?」
ちぃっ!
相手の強さを計り間違えていた。
相手は自分の剣技に酔った狂刃だと思っていたが、違う、コイツは…完全に皆伝してやがる!
しかも木刀で錆びているとはいえ、鉄が斬れるなんざ剣聖以外の何者でもない。
「―――逆に自由に動き回れなくなったのは兄ではないのか?」
そう言って斬られたショックで立ち尽くす俺に向かってさっきよりも澄んだ刹那の剣閃が幾重にも走る!
ざんっざざざざんっ
「!!!!!―――っっ!」
瞬く間に5つ、軌跡が俺に走った!
言葉も―――出せない。
どしゃっ
俺はその場に倒れこむ。
「……とどめだ」
…やべ。マジで、やべェ。
…意識が朦朧とする。
身体を動かそうとするのに、いつも通り動かそうとしているのに、ぜんぜん体が動かない。
アスタロトを手に入れて油断したツケがこれだったか。
…高くついたな
(―――けねぇな)
勝てない。今の剣戟を受けてはっきりと悟った。
雪花を……からめ手…に使って…れ…ば勝…てたか……もな…
(情けねェな)
「―――………?」
なに かが 聞こ える。
最初、遼燕寺の声かと思ったがこんなやさぐれた声はしていない、なら誰…が?
バルバトス や オロバス 、 ダンタリオンでも 、 ない。
しかもその声は遠のく意識とは反対にますますはっきり聞こえてくるようになってくる。
(情けねェな、なにブザマ晒しているんだ?)
っせぇ……あんな…テレビでも見れ………な…いような非常識なマネされて……どう……しろ……って…んだ…よ……
(ふん、それ以上に非常識なのはどっちだ。おまえは―――■■■■なクセに)
っ!るせェ、黙れっ!
(イヤだね、どうしてもと言うんだったら―――)
………ち……く……しょう
あぁ、分かってる。
みなまで言わなくたっていい。
そう―――
「どうしてもと言うんだったら―――」
―――黙らせてやる―――!
「っあああぁぁぁぁ!あああああああああああああああぁぁぁぁっ!」
吼える!
俺は裂けた体を無理やり駆動させ、懐のポケットをまさぐる。
激痛と共にどろりと何かが流れる。
そしてどさり、と開いた何かが俺の中から出てきた。
が、今はどんな感覚よりもほんの少しだけ激情が勝っていた。
かつん
―――在った。
人差し指に当たる硬質の感覚。
オマ…エ…が、声の……主、な…んだ……な?
本来ならこんな場所。時間、状況で契約を行うべき魔王ではないのは重々承知している。
コイツはオレが選んだ中で最も危険な指環。
だが、そんなコトを関係ないくらいにコイツはオレの禁忌に触れた。
そう、あの時のくいなよりもより深層、何者もそれを触れることの赦されない領域にコイツは土足で踏み入った。
…てやる。あぁ、眼前にいる剣聖なんかよりも先にお前を這い蹲らせてやる―――!
残った未契約の、2環が内の一。
アスタロトに並ぶ七つの大罪が一罪を担う魔王、剣王の指環。
今、それに指を―――通す!
「だぁま―――っ」
「なっ!?」
眼前のモノはオレが何をしようとしたか分からなかったらしい。
不意を突かれ、思わず後方に飛びのく。
そして俺も目の前のモノに対する興味などさらさらなかった。
既にオレの敵意は須らくその指環に集っていた。
それほどの、嫌悪。
「れえぇ―――ッ!」
気付けばあの世界にいた。
魔人達と契約を成す群青に染め上がった世界。
今回は今まで一番群青が漆黒に近づいたセカイだった。
きっとそれは目の前の魔神が魔王と呼ばれるほどに強大なモノだからだろう。
だが……オレの心は揺れない、ただ静かに小さくも強烈過ぎる炎をたぎらせるだけだった。
「……」
この世界はあの世界とは乖離しているらしい。無事な部分など無い身体はここでは傷一つ無かった。
目の前には男がいた。
その目は、あの時のあの目に似ている。
その歪んだ口は、あの時のあの口に似ている。
見れば見るほど[アイツ]を見ているようで苛立ちが増す。
「ほう、自分に深手を負わせた相手よりも自分の心的外傷に深く触れた相手に対して怒りを抱くとはな…
まぁ、いい。俺を選んだんだ。この程度の力を持っていてもらわなければ、な」
「黙れ、一言も口に出すな、しゃべるな、口をきくな」
「何を恐れる。お前は知っているんだろう?
こんな傷すらいとも容易く治す方法を、常識外れたこの人間を赤子をひねるようにた易く倒す方法を。
なのになんでそんなにその力を忌避する?」
「―――……」
ただ、ただ拳を握り自分の真横へ叩きつける。
がっしゃあああぁぁぁんっ!
―――応える代わりに[その力]でその世界を[砕いた]
魔神の力の余剰によって生まれたこの心象世界。
魔神の構成したその世界を砕くと言う事はそれを構成したバケモノよりも強大な力を有しているという事。即ち、それこそが魔神を制圧したと言う証拠、契約したという既成事実になる。
砕けていく世界の中で俺は誰に言うでなくただ呟いた。
「こんなチカラ―――いらないんだよ」
砕かれた空間のかけらに映る魔王の口はただ笑っていた。
目が覚める。
いや、意識が、よみがえった。
「あぁ……」
産声をあげる。
身体の各部位をわずかに動かしチェックする。
頭部、腕部、胴部、腹部、脚部、どこをとっても大丈夫な場所などどこにもない。
どこもかしこも致命傷を負ってもうボロボロだ。なにより血が足りないのか意識が薄い。
それでも―――
おれは、かてると、かくしんした。
胸がざわめく。
あぁ、胸クソ悪いがお前の言うとおりだ。
今は致命傷だけを治癒すればいい、あとは指輪の力を借りればどうにかなる。
強力すぎるアスモデウスの指環の力はオレの生命を活性化させ、傷口は激しい痛みを伴いながらも癒着しようと音を立てて細胞活動を行い、密度は低いながらもなんとか塞がっていく。
あとは―――目の前の―――
「…なにが在ったか知らないが敵を眼前にしておきながら自己の内に全神経を集中させるとは兄は正気か?」
「…あ、ぁ……至…って、な」
「いや、その傷、その状況でそんな口が出るとは、既に正気ではなかったか……」
「なんと…でも…っ、言え…っ。
ただ、一つ口にするなら……お前の敗因はこの指輪を…っ、つけさせた…ことだっ」
「某には某の指輪の加護がある。そのような脅し、我には……通じぬ!」
そう言って約六間を一足飛びでやってくる遼燕寺。
指環で強化された肉体は音と同じ速度となり俺に向かってくる。
…一方、俺はふらふらとなりながら気を失いそうになる痛みに耐え、なんとか視神経のつながった左眼で目の前のかまいたちを見た。
「ウソじゃ……」
―――ねぇよ。
あぁ、そうだ。
逆立ちしたって剣聖たるオマエに剣技で、接近戦で勝てるわけがない。
だが、違う
お前は決して剣聖ではない。
剣聖が持つべきモノ、それをオマエは持っていない。
それは伝説。剣聖と共にただ佇むその伝説の証明。
即ち、聖剣、神剣、妖刀、そして―――魔剣。
…ならば、オレはそれを喚び出そう。
そう、今まで俺が所有することのなかった系統の指輪。
魔王の力で直接的な攻撃力を有するこの指環の持つ力。魔王の所有する剣を―――
「……来……た…れ…」
突如、それが地に現れた方陣から呼び出される!
それは剣と呼ぶには異様すぎる巨大な鉄塊だった。
背後に在る俺が丸々その陰に隠れられる広さと長大さ。
そして、その地肌のいたる所に鋼の手が生え―――その手には全て剣が握られ意志をもって動いていた。
それは明らかにヒトの揮うモノではなかった。
これぞはるか過去、神世にのみ揮われた、神の使いと戦うための魔王の持つ―――剣
「な!!」
突如、地から生えたそれを避けることができずに遼燕寺はそれに突っ込んだ。
がっしいいぃぃぃぃんっ
衝突音と呼ぶにはあまりにも綺麗で澄んだ音を放ち、そして―――戦い、と言うにはあっけない位、幕を閉じた。
「っつぅ……・」
俺は剣の反対側に向かって体を引きずった。
そこには思ったとおり、百足……いや、百手にその身を縛られたようにそれが捉えられていた。
「…いくら斬鉄ができるっつっても魂と強大な霊質で構成されてる魔剣までは斬れなかったらしいな」
「っくぅっ!離せ!」
その小柄な身体に身につけたありとあらゆる場所の服と肌の紙一重の隙間に刃を通され、遼燕寺は磔になっていた。
「いい眺めだな」
「くっ」
悔しそうな目でこちらを見下ろしてくる。
「さて、どうしたモンか」
とはいえ悩んでいる暇は無い。
なんせ指輪によって治癒能力が向上しているとはいえ、完全に塞がったわけでもない。傷が開き、臓物が外に垂れ落ちないよう、押し込んでいる状況だ。
なんとか指環の魔王達の力を使い切れば傷口は塞がるだろう。が、意識を手放すのは時間の問題だ。だからそれまでに目の前の指環使いから敗北宣言を引き出さなければならない。
そんなことを考えているとふと声が降りた。
「殺せ」
「……あぁ?」
「殺せといった。
兄に破れた以上、これ以上、生き恥をさらすわけにも行かぬ。殺せ」
「―――……」
すぅ、と剣を還す。そして不意にも関わらず佐乃は華麗に着地した。
「な、なにを……」
「死ぬんだったら勝手に死ねよ。オレは指環さえ手に入ればそれでいい」
「…馬鹿にするのか。今の戦いを、そして、敗れた私を」
これ以上ない恥辱に怒気を膨らませてこちらを睨む。
だが、俺は怒気をはらんだ遼燕時の言葉を一蹴した。
「…違うね。オマエが、オレ達の戦いを馬鹿にしているんだろう」
「な―――」
「そんなコトは無い、私は礼を尽くしたつもり、か?
ふざけんな、オレに礼を尽くすなら生き恥さらして生きろ、この世界で生きて強くなって今のオレをいつか越えて見せろよ」
「………………」
それが例えどんなに痛みを伴う行為だとしても。それがオマエを強くするはずだから。
「―――……兄がそれを望むのなら」
数瞬、黙りこくった後、そう言いながら遼燕寺は指から指環を抜き、俺に差し出してきた。
「しかし、何故、兄に、貴方に勝てなかったのか分かったが気がする」
「なんだよ、それ」
「さて、な」
ふっ、と佐乃が笑った。
「…笑えるのか、オマエ」
「……笑って……いたのか?自分が?」
自覚はなかったらしい。
「あぁ、自嘲気味だったがはっきりと、な」
「そうか……そうだな、笑ったのなんて久しぶりかもしれない」
佐乃が空を仰ぎ見る。
何か憑き物が取れたような、そんな顔。
もしかすると…
オレは佐乃から渡された指輪のナンバリングを確認する、と。
35、63、64
No.35、マルコシアス
そして…
「これ、か」
ロットリングNo.63、アンドラス、No.64、フラウロス
俺はさっそく三環まとめて左人差し指に嵌める。
すると、さっき見たあの世界になる。ただ、色は青かった。
そこには黒い狼にまたがったフクロウの顔をし、手には燃える剣を持った魔神とその傍らには豹の格好をした魔神がいた。
「……オマエ等が佐乃をあんなにした張本人か」
「黙れ、オレはヒト如きじゃねぇ、ブチ殺すぞ、ニンゲン」
「―――……俺もニンゲンできちゃいねェんだ。やってみるか?あぁ?」
挑発するどころか互いにキレた会話を会ってすぐに始める。
おそらく、コイツがNo63、アンドラス
相手を殺す方法をその指輪の所有者に与え、スキあらばその所有者すら殺そうとする魔神だ。
その上、人々の不和と喧嘩を煽り、その醜態を見るのを好むとされる魔神。
「ウワサは本当だったらしいな、どうせ佐乃を捻じ曲げたのはオマエなんだろう?」
「あぁ、アレだけ目的以外のことにはモロいヤツは改造するのは面白かったぜ、なんせ何かを疑うってことを知らないんだからな」
「テメェ……」
声を低くして唸る。が、その頭に血を上らせた瞬間、もう一柱、豹の姿をした魔神に対する注意がそれた。
そして、次の瞬間、至近距離で何か硬質のモノ同士が衝突する音が聞こえる!
「!」
するとそこには剣を持ち、俺を庇うように背を向けた鳥の翼を持った狼、マルコシアスとその鋭い爪で俺の首を掻っ切ろうとしていた豹、フラウロスがそこに、いた。
マルコシアスがため息をつく。
「やめんか。また封印されたいのか?
ヌシもヌシだ。佐乃を破り、その上、命まで失わせずに済んだその大器、こんなところで矮小にしてどうする?」
「元はといえばテメーが佐乃に力を与えた挙句、この二柱にいいように操られてるのを放って置いたのが悪いんじゃねぇかよ」
「む、確かに我が佐乃に力を与えたのは事実だがそれにあの素質、眠らせておくには惜しく、騎士は何かに使えるべきもの。主君がいなければ騎士ではあるまい?」
「そこで俺様がイロイロ教えてやったってワケだ」
得意そうに話すアンドラス。
…ふぅ、そう、そうだったな。
言葉が通じるから忘れていたがこいつらは悪魔であって人じゃない。
人の道義なんて通じる訳なんて、無い。まぁ、そんなの俺にもないっちゃ無いのだが。
「あー……まぁ、いいや。で、お前等俺の支配下に…」
「ヤなこった。まだだ。殺し足してねぇ、殺させろ!殺させろよおォォッ!!!」
フクロウ顔が瞳孔を開き、180°顔を回転させ叫ぶ。
同じ梟でもストラスとはえらい違いだ。
「なんとでも言え。もし文句があるんだって言うんだったら―――」
不機嫌そうになり、アスモデウスの幻影を投影した。
…見るだけでムカツき、イラついてくる。
「コイツと一騎打ちしてもらうがそれでも構わないか?」
決して冗談なんかじゃない。
やると言ったらやる。
「けっ、わぁったよ」
さしもの殺傷快楽神も剣皇を相手にするのは分が悪いと踏んだのかいやいや承諾して見せた。
そしてそれにアンドラスも従う。
「では―――我はマルコシアス、貴君の軍門に下ろう」
「アンドラス、コロシはオレに任せろ」
「……フラウロス。オレ、従う」
「烏 十字、お前らと契約しよう」
すると三匹の姿が消え、俺の姿が薄れていく。
さて、残るはオマエらの元主人の処断だけだ―――
「―――ふうっ……」
「―――兄」
「ん、あぁ、お疲れさん」
俺はその場に座りこんで、というより倒れこんで遼燕寺を一瞥して帰るよう促す。
「え?」
「もう、お前を縛るものは何もないハズだ。お前を謀っていのはアンドラス達だしな」
「アンドラス公たちが?」
「あぁ、最初が誠実なマルコシアスだったんで魔神達を信用したんだろうが、本来、気を抜けば自分達を使うモノを殺して自由になろうってヤツラだ。
いいように利用されたな」
「そんな…」
告げられた事実に呆然とする遼燕寺。
「まぁ、そんなワケだ。俺もある程度回復したらとっとと帰るからお前も帰れよ」
オレは簡単に遼燕寺に手を振って別れの挨拶をする。
今回ばかしは性欲も何もない。
昂ぶっているといえば昂ぶっちゃいるが勃たせるための血液すら今は惜しい。
それに全力を尽くして戦えたことでそれまでのストレスは全部ぶっ飛んだ、が、契約したての指環に宿った魔王が与えてくる不快感、つまりはさっきのことで八つ当たりしそうで―――イヤだ。
あれに関してだけは誰にも関与させたくない。
が。
「……兄、いえ―――おやかたさま」
「―――……は?」
妙な事を言いながら佐乃は帰るどころか心配そうな目をして俺の元に近づいてきた。
「操られていたとはいえ、刃を向けた相手を許すとは何たる大器。
貴方こそ私の求めていた忠節を尽くすべき御大。ぜひとも仕えさせて―――」
下さい、そう言おうとしたんだろうが俺はそれをさえぎった。
「時代錯誤もはなはだしい。
仕えてどうする。こんな時代で俺んちは伝統ある名家でもなんでもないから家令なんて雇う金もないぞ」
ウソだが。
「構いませんっ、お館さまの側に居させてくれれば。炊事洗濯なんでもします。だから是非ともっ」
「炊事洗濯ってお前はメイドか嫁にでもなるつもりか。そもそもなんでもって夜伽までできるってのかよ」
そもそも、その募集は先日打ち切られたところだ。これ以上いてみろ、俺の身が持たない。
「嫁………夜伽……」
何を考えたのか顔を赤くしてなにやら考え出す遼燕寺。
この態度を見れば、というより、この小柄な体を見れば一発で未通女どころか性体験などない事も分かる。
というよりこんな時代錯誤なことを言ってくるんだ、相当な箱入り娘だろう。
「遼燕寺、おい、遼燕寺」
「夜伽って……お館さまが私を抱いて…って―――!はっはいっ!」
「どうせセックスはおろかオナニーもしたことがないんだろ。そういうモンは自分がってヤツに残しとけ、以上。さ、帰れ」
「せっくす?おなにー?」
「………………」
呆れ果てた。ただでさえ遠い意識が更に遠くなる。
横文字は苦手なのかそれとも本当に知らないのか……
「自慰と性行為の事だ。
んでもう一度言うが処女は自分が捧げてもいいってヤツに残しとけ、以上」
「じい、せいこうい……処女!?」
しばらく反芻してようやく意味をのみこんだのかぼっと言う音が聞こえたかと思うと同時に遼燕寺の顔が赤が真っ赤になる。
「意味は理解したな?じゃあ、帰れ」
「ああああああああああああぁぁぁ……あのっ!」
「ん?」
「そのっお館さまなら構いませぬっ!
むしろ望むところ是非っ、いえ、それじゃはしたない、なんと言えば…っ!」
「………………はいぃ?」
「ですからわたくし遼燕寺 佐乃めを貰ってやっては下さいませんかっ!」
……ダメだコイツ。
仕方ない、これだけ言っても分からないようなら少しばかり痛い目にでも遭えば分かるだろう。
「ったく……」
身体の表層は…なんとかつなぎ合わさっている、か。ま、継ぎ接ぎとなんら変わりないが。
内側も…こちらも損傷はあるものの奇跡的に致命的なダメージを負った内臓は無いようだ。
こうして話している最中にもアスモデウスの魔力を総動員して治癒能力を高めている。
癪にさわる話だがヤツの魔力の質は俺のそれと相性が良いらしい。致命傷はほぼ完治しつつある。
とはいえ、ミリ単位で身体を動かしても悲鳴をあげそうになるくらいの激痛が走る。
まぁ、こんなのは問題にならない。
ダンタリオンの指輪を自分に使って[この痛みは全く痛くない]と思考を変える。
こうすることによって痛みはどうにかなる。まぁ、そもそも痛覚とは警告みたいなものだ。
それ全般にいえることだが[痛い]と感じるのは身体がそれ以上の刺激は害になる。という信号を発する際に伝えられる感覚だ。
つまり、この状態で無理をして次に意識を失えば恐らくそのまま絶命する。ただそれだけだ。
それよりも興がのった。
「…そうだな、オレがこんだけ痛い目にあったんだ。少し痛い目に遭ってもらうぞ?」
そう言って俺は佐乃の腕を掴んで俺の腕の中に納める。
それだけで遼燕寺は顔を真っ赤にし、こちらを見下ろしてきた。
「おっおやかたさまっ!?」
ははは、パニクってやがる。だが、これからが始まりだ。
「じゃ、言葉通りオマエをもらうぞ、遼燕寺」
「え、こ、ここでですかっ?寝所とか夜では―――」
「いや、ここでだ。誰かに見られるかもな」
「そんな―――」
あまりの仕打ちに目を白黒させる遼燕寺。
だけどな、まだ、まだだ。お前には更なる恥辱を与えてやる。
「さ、これを舐めてくれ」
そう言って俺は破けたズボンから奇跡的に無傷だった自分のモノを取り出して佐乃の前に晒した。
「あぅ……これ、が…男性の…っ?」
ちなみにまだ勃てていない。
それでも遼燕寺には大きく見えたらしい。少し慄きながら顔を赤らめる。
「どうした遼燕寺?できないのか?」
「で、でき…っ、やります!
それよりも、お館さま、できれば名字ではなく、一度でいいですから名前で呼んでいただけませんか?」
「ん、あぁ、分かった。佐乃」
「あぁぁ……」
涙ぐんでうっとりと夢でも見るかのように頬を紅葉させる遼燕―――佐乃。
「できれば接吻を……」
多くなっていく注文に苦笑しながらも俺はビクッっと身体を震わせ、目をきつく閉じた佐乃の唇にキスをしてそのまま舌で佐乃の口内を蹂躙しだす。
「んっ!んふぁ…っ!は……っ、む、ちゅう、ちゅっ、ン、ぴちゃぴちゃっ」
伸ばされた舌にこういうキスもあるのかと驚いて自分も真似したがった…が、伸ばした佐乃の舌の先は既になく、虚しく外気に触れるだけだった。
「んじゃ、佐乃、頼むわ」
「あ、はぃ…」
そう言って跪くとおそるおそる俺のモノを手にとって口をつける佐乃。
「ん、ふむっ……んっんっ」
小さい口から舌を出してちろちろと上品に舐めていく。
「咥えられるか?」
「はっはむっ、んっ!こほっこほっ!」
どうやら無理っぽい。
「できないならいい、丹念に舐めあげてくれ」
「は、はい……
れろっ……ちゅぱ……・ぴちゃ……」
「そう、その調子……だっ。
大きくなってるのが分かるな?お前が気持ち良くして大きくしてるんだ」
「は、ふっ、う……んちゅ、れろ、はふ、ぅ、んんっ…」
喉を鳴らして嬉しそうに答えてくる。
だんだん俺のペニスが大きくなってくる。
佐乃はそれに驚きつつも濃くなってくる牡臭に興奮しながらも決して舐めるのはやめようとはしなかった。
ちゅぱ……ちゅぴ……ちゅぱっ、れろぉっ、ぴちゃあっ
佐乃のフェラチオは稚拙だが丹念に舐めあげ、コツを掴むのが早いのか俺の感じるポイントを重点的に舐めてくる。
同時に奇麗と可愛いが混在した視覚的効果に俺のペニスは完全に勃起していた。
「佐乃、舐めるだけじゃなくてその手でシゴきあげてくれ」
頭をなでながら佐乃にそう頼むと佐乃は嬉しそうに目を細めて愛でるように俺のペニスを両手でシゴき上げてきた。
絹の様にすべすべした小さい手が俺のペニスを犯していく。
「もう少し強くだ。っ、そう、そのくらい……」
やはり佐乃は物事のコツを掴むのが早いらしい、絶妙な力加減で俺の竿をシゴいてくる。
武道をやっているせいか佐乃自身の握力も申し分ない。
幼顔の少女による鈴口を舌先で弄られながらのリズミカルな手淫に熱い奔流が俺のペニスを駆け上ってくる。
「んっ!佐乃っ、出すぞ、全部飲め!」
びゅくっびゅるびゅるっびゅるびゅるびゅるっ!
「ふぇ?っ!ぅんぅっ!?んっんっんっ!ふはぁっ、あ、あふっ、い……んん、ちゅぶ、は、熱ぃっ!?」
自分が搾りだした精液を懸命に飲み込もうとする佐乃。
だが―――
「んっ、んく…っ!んぁっ、げほっごほっげほっ!」
初めての味と量に身体の方が拒否反応を示し、当然のごとく吐き出す。
「もっ申し訳ありませんっ」
手をついて上目遣いに俺を見上げてくる佐乃。
「いや、初めてならそんなモンだ。
まぁ、どうしても申し訳ないって言うんなら―――」
俺はそういいつつ佐乃の脇に手を通し、後ろ向きに俺の膝の上に鎮座させる。
「お―――お館さまっ」
「責任、取ってもらうか」
そう言うと腰の帯紐を解き、佐乃の衣服をはだけさせる。
「きゃっ…お、おやかたさま…っ」
「…ホント変わってるよな、オマエ」
顔を赤くし涙目になって後ろを向いてこちらを窺ってくる。
そんな佐乃の身体は色気のない無地の白いパンティと―――胸には何より奇ッ怪なさらしが巻かれていた。
「…なんだ、コレ」
「あっ、あああああぁあの、これはそのっ」
さっきの磔で所々に切れ目が走っている。邪魔だから取ると―――
ぶるんっ
ナニか、ふつりあいなモノが、あらわれた。
「…なんだ、コレ」
「あっあのこれは…」
突然の出来事に思考が停止する。
千歳より少し大きいくらいの身体に、ひかりより少し大きいくらいの乳がついて、いた。
「これくらいの身体に合う胸当てがなくて…」
情けなさそうに、たぶん本人にとっては情けないことなのだろう、申し訳なさそうな顔をしてしゅん、とする。
…たしかに。これくらい華奢な身体に不釣合いな巨乳だ。なかなか見合ったものはないだろう。
つん、と上を向いて自己主張する乳首は佐乃が少し動くたびに大きく揺れてこちらの興味を誘ってくる。
「…もったいない。こんなに形もいいのに」
「ぶ…武芸には無駄な長物ですっ」
憮然とした表情で陳情してくる。
「オレに奉仕するにはこの上ない武器になる」
そう言って乳のふもとから揉みあげて感触を楽しむ。
「ひぅっ!ひふぅ…っ!」
「感度もいいようだな」
「そ…それはいいことなのでしょうか…っ?」
「あぁ、当然だろう」
どうやら佐乃にとって胸の大きさはコンプレックスだったらしい。その答えにほっとしたのか安堵のため息を上げる。
「さ、こっちはどうなってる」
今度は膝の下に腕を通してそのまま腰を持ち上げ、色気のない純白のショーツを脱がせにかかる。
「きゃっ!」
なかなかに初々しい反応を見せる。
「ひぁぁぁぁ…お、おやかたさま…っ、恥ずかしくてで死にそうですぅ…っ」
顔に手を当てて、でも指の隙間からはこちらの顔を見上げるように訴えてくる。
当然、無視する。つーか、むしろ、苛める。
「ほら、これなんだと思う?」
そう言って俺は佐乃のショーツのクロッチ部分に出来た染みを見せつける。
「っっっ!そそそそ…それはっ!?」
自覚はなかったのだろう。でも佐乃の女の部分はしっかり俺の牡に反応していた。
だが佐乃はそんなことを知る由もない。知識は合っても経験はなかったのが災いしたのかそれが自分の愛液だと思わず、自分の尿だと思ったらしい、あまりのショックに目の前が見えなくなった。というか、恥ずかしすぎて切腹するしかない、という思考状態になっている。
なんつー常識外れだ。
メンドくさいので思考を変える。だが、面白いのとこれくらいだと新鮮なので恥じらいは残す。
「[恥ずかしいと思えば思う程どんどん気持ちよくなってくる]ぞ。だが、[恥ずかしいといって死ぬ必要はない、修行の一つだ]と、思え」
すると―――どくんっ
佐乃の身体が奮え、今まで感じたことのない感覚に困惑気味な表情になる。
「ひぅっ、くあぁっ!くふっ!うっ、くうぅっ…んっ…だ、だめェ…っ!」
これでまた新しいオモチャができた。あとは―――
さっきのフェラチオで知らず知らずの内に多少は濡れたものの、満足には濡れていない佐乃の秘裂に隆起している俺のペニスを突き入れる!
「あぁっ、あ…ああああっ!!」
いきなりの挿入に悲鳴をあげる佐乃。
無茶な挿入だったせいか俺のペニスも少々痛い。
だが、そのままオレは強引に挿入を続ける。
じゅぼっ、ちゅぶっ、ぐちゅぅっ、ぬちゅんっ!
「ひぅっ!あぁあああぁぁ…っ!はあああぁぁぁ……っ!!」
みりみりと音を立てて拡張される痛みに未だ悶える佐乃。
結合部からは佐乃の純潔の証が流れ出ている。
「……」
ぬちっ…ちゅぬぅっ…ぬりゅう…
俺は注挿をゆっくりした物に変え、だんだん動きを止めていく。
…これだけ痛い目に遭えばオレに仕えるなんて言わないだろう。
あとはたまにコイツで遊べばいい。
「お、お館さま…?」
「もう十分だろ。お前も痛いだけなんだからもう―――」
「いぇっ!佐乃めは大丈夫ですからっ!どうかもっとお館さま…っ」
涙目になりつつもこっちに哀願してくる佐乃。
「オマエ―――」
呆れた。呆れたと同時にこの際、完全にコイツを俺のモノにすると、決めた。
よく考えればこれだけの上玉が自分から望んで俺のところへ来るなんてまずありえないからな。
「分かったよ、オレの負けだ」
そう苦笑するとオレはダンタリオンの指輪の力を起動させた。
ダンタリオンの精神操作で今の苦痛をできるだけ押さえ込もうと―――
「…………!?」
押さえ込もうとしたが、その刹那、入ってきた佐乃の思考がオレの動きを止めた。
「オマエ…痛いのがイイのか?」
「っ―――!そ、そんな…っ」
いや、違う。
痛いだけではない。
被支配と束縛、そういったモノを受ける事に対する欲求が高かった。
大和撫子的、と言ってしまえばそれまでだが元からこいつにはMとしての素質が在ったってコトか。
―――なら。
俺は使う指輪を増やした。
使うのはついさっき俺が支配した―――オレが元から所有していた魔神の宿る指環。
基督教界において色欲を司るとされているアスモデウスの能力。その能力を発動させる。
俺はコイツを使って佐乃の性感を一気に高めると同時に未成熟だった佐乃の性に関する感覚を最大限に引き上げる。
「はっ…あぁんっ!」
突如、先ほどとはうってかわった悶え方を始める佐乃。
試しに一突きしてみる。
「ふあ…っ、ふぁあああぁぁぁっ!」
びくんっびくっびくっ!
弓なりになりオレの膝の上で佐乃が達する。
きゅうきゅうと俺の肉棒を締め付けてくる。
「どうした?佐乃?」
「っ、申し訳ありません…っ
ただ……ただなにかが私をつきぬけてしまいましたぁ……っ」
「あぁ、それがイクって言うんだ」
「いく……です……か?」
息もたえだえになって言葉を反芻する佐乃。
「そうだ。
ここも―――胸じゃなくて、おっぱい」
「んはぁっ!」
ビクッ
「ここは―――女陰じゃなくておまんこ」
「ふぅっ!」
ビクンッ
「ここは―――陰核じゃなく、クリトリス」
「あぁぁ!」
ビクビクビクッ
「さ、オレがなぞった場所がどこか自分で教えてくれ」
「はあぁ……そんな……」
顔が紅潮し、恥ずかしそうにうつむくがそれ以上に悦びと期待が佐乃に走ったのを俺は見逃さなかった。
「さ、ここは?[恥ずかしいことが気持ちよくなる]佐乃なら答えれるよなぁ?」
そう言って俺は佐乃の小ぢんまりした身体には不釣合いの巨乳の両乳首をつまんで引っ張りあげる。
「はあああぁぁぁんっっ!」
ビクッビクッ
「ほら、どこだって聞いてる」
「おっぱい!おっぱいの乳首です!ちくびィっ!」
叫びながら佐乃の膣が俺を締め上げる。
ちなみに恥辱を快感に変える連中は数多くいるが佐乃に施したのはその究極に近い。
普通の連中は性的な恥辱を与えられ、そこから興奮を覚えて身体を昂ぶらせるが今の佐乃は―――そこから直接快感を得る事になる。
それだけならまだいい。
条件付けにアスモデウスの能力で究極的にまで高めた性感を得るようダンタリオンの指環で固定化した。
だから恥ずかしくなるような思いをさせればそれだけでイってしまう。
「はぁっはぁっはぁっ……」
「それじゃ今度はここだ」
そう言ってオレはクリトリスの皮を剥いて引っ掻いた。
「きゃふううううぅぅぅっっ!!」
「ほら、どこだか言わないと今度はもっと強くするぞ」
「だっダメです。そんなことしたらぁっ、狂ってしまいますぅっ!」
目尻に涙を溜めてオレに訴える佐乃。
「じゃ、どこだ?」
かりっ
「きひいぃぃぃっっ!
くりとりすっ、クリトリスですぅっ!」
歯を食いしばって何とか耐え、正解を言う佐乃。
「じゃ、最後だ。
ちなみにオレのモノは男根じゃない、チンポとでも呼べ」
男根は口にすると大根に聞こえたりして返って萎えるからナシだ。
「はっはいっ……っ」
そう言ってうつろな目で淫蕩に微笑む佐乃。
「じゃいくぞ―――」
オレは佐乃の膝下に手をもぐりこませ少し持ち上げるとそのまま佐乃を突き上げ出した!
「あああ…っ!ああぁぁぁぁっっ……・っっ……っ!!!」
何度も―――何度も突き上げられる佐乃。
一度付くたびに佐乃はイっている。
イっているがそれでも俺はやめてくれない。
やめてくれないし、何より、佐乃はこの状況を―――
「ふぁっ、んんっ、くぅんっ、はっ…はっ………も、もっと…っ、もっとぉ……っ」
―――悦んでいる。
「ほらっ!さのっ!
こたえないのかっ!?」
「んはひっっ!はひいいぃぃっ!
おま……っ、おまんこですぅぅぅっ!!」
「誰のはしたない淫らなおまんこに、誰のナニが出し入れっされてっいるんだ!?」
「さのっ!さののっ!ちいさなっ、みだらでっはしたないぃっ、はじめてのっオマンコにぃっ!おっおやかたさまのっ!かたくてぇっ、おおきすぎるっおちんぽがっだしいれされてますぅっ!」
「よく言った。オマエの中に射精するぞっ!」
「はっはいっ!
どうかさのにっおやかたさまの、熱いせいえきっせいえきいぃぃっっ!
さののっ!さののしょじょオマンコにぃっ!」
びゅくっびゅくびゅくびゅるびゅるびゅるっ!
「あっ!あああぁぁっ!イクっ!イクイクイクイクぅッ!イってしまいますううぅ!」
びくっびくびくびくっビクン!
初めての性交に膣内射精をされ感極まったのか佐乃が力尽きたかのように俺の胸にへたり込む。
胸元に走った傷が痛み、そんな佐乃を少し煩わしいと思いながら俺は他のことを考えていた。
…まさかこれで終わりだとは思ってないよなぁ…?
「ほら、なにしてる。まさか一発で終わると思ったんじゃないだろうな?」
「ふぇ…?あ…ま、まさか…っ!んっ!ひぅぅっ!」
意識が朦朧としているのか、初めてのセックスで中出しされて疲労しているのかさっきまでのはきはきした表情は無く、少し気だるそうに佐乃が応える。
「ほら、もう一度さっさと腰を振れ。それともさっきまでの話は無かったことにするか?」
仕官が白紙になる、そう言われ佐乃ははっと意識を取り戻す。が、
「そ、それは困りますぅっ!ひあぁっ!」
じゅぼっ、ちゅぶっ、じゅぼっ、ちゅぶっ、ぐちゅぅっ!
佐乃がむっくりと起き上がろうとしたものの、敏感になった自分の性器から電流が走り抜け、再び俺の胸に打った。
いつもならなんてこと無い重さも思わず気を失いそうになる。…限界は近いようだ。
というか、あと一発やったら間違いなく終わるかそれまでに意識を失うだろうがまぁ、性分なんだから仕方が無い。
「ほら、早くしろ、自分であれだけ達しておきながらオレはまだ一回しかイってないんだぞ。
従僕だったら普通、逆なんじゃないのか?」
「は、はいぃ…っ、申しわけぇ…ふぁ…っ!ありま…っ、ふぅふぅ…っ、せんんぁっ!」
「ほら、がんばれ」
そう言いながら頭を撫でる。
「ふぁっ…はい…っ!」
返事をするとなんとか落ち着いたのかオレの負担にならないよう手を地面について体勢を整える。
と、いかんせん身体の小さな佐乃がそれをすると斜めになった腕のひじまでの高さがちょうど俺の胸くらい来ることになり、ほとんど胸を押し付ける形になり、顔が今まで出一番近づき、佐乃一人が赤面する羽目になった。
ちなみに身体の大きさから密着するまでとはいかなかった精々、こちらの胸骨付近と言ったところだろうか。それでも佐乃を見つめると赤面し、恥ずかしそうに目を伏せてきた。
腰の方はというと俺の方は身体の不具合にも関わらず萎えることなく、そのまま二回戦に挑めると言う状況で佐乃の中に納まったままだった。
腰を持ち上げるのもキツいので肉棒にのみ力をこめて動かそうとしたがさすがに処女を失ったばかりの佐乃のヴァギナは狭く、俺に自由を与えることなく締め上げていた。
一度射精しているため潤滑油は足りているものの、やはり小さい身体で初めてでは俺が少し窮屈になってしまう。その上、生まれて初めての絶頂が普通味わえない代物だったせいもあるのだろう。動きもさっきに比べて格段に遅かった。
…仕方ないな。
どのみち、医者に行くんだし…これ以上壊れてもまぁ、問題ないか。死なない限りは。
そう思うとダンタリオンの指環を自分に使用し、痛覚を完全に無意識下に持っていく。
その上、アスモデウスの指環を使用し、互いの性感をそれまでの倍に増やす。
すると―――
「ふぁっふあああああああああぁぁぁぁぁっっ!」
佐乃が突然いななき、こぷっと接合部からピンクがかった白濁色のまじった無色の液体が吹き出てきた。
「ほら、さっさと動いてオレを満足させてみろ。じゃなきゃ―――」
そう言って緩慢に動く腰を打ちすえる!
ぬちゅっ、ちゅぱんっ、ちゅぶっ、ぐにゅうぅっ!
「ふああああああぁっ!」
「もう俺達は赤の他人だ。
あぁ、ちなみにオレは指環の力を使ってオマエの感覚を少し弄った。普通のセックスじゃとてもじゃないが満足できないだろうな」
「そ、そんなっ!?」
自分が異常になったことに若干青ざめながらもそれすら快感に変えてしまうのだろう、きゅんっと締め付けが強くなる。
「分かったらとっとと動け。全力でな。オレも多少動いてやるからとっととオレを満足させろ」
「はっ、はいぃっ!」
そう言うと名残惜しそうに胸から顔を、手を床から離し、背筋を真っ直ぐにして立ち膝状態になり自分から注挿を始めだす。
ぬっ…ちゅぅっ…くぽっ……んちゅうぅっ…
「んっ!ひっ!んぁうっ!ああぁ…っ!!」
「いいのか、佐乃。
そんな大声出すと誰か来ちまうかもしれないぜ?」
あられもなく喘ぐ佐乃にそう言うと思わぬ効果が現れた。
「―――っ!ぃやぁっ!」
そう言いながら困ったように肩越しに周囲を見渡そうとするが俺は腰を叩きつけて佐乃の身体をびくっと反射させて邪魔をする。
「ひぁうっ!んっ、ひぅっ!」
「どうした?見られると意識した途端、感じ出したのか?締まりがよくなったぞ」
「そ…そんなわけ…っ!んんっ!」
嫌でも意識してしまい、目では見れないので周囲の気配を肌で感じようとしたのだろう、肌が擦れるだけでも敏感に反応する。
「言い訳できないよなぁ?こんな傷だらけのに男にまたがって腰を振ってるんだから。
きっと見つかったらオマエがオレを犯してると思われるぞ」
「そ、そんなぁっ、んんっ、はぁ…っ!」
泣きそうになりながらも決して腰の動きを緩めることなく、それどころかそれを被虐のスパイスにしたのか困ったような顔をしながらも口はほころんでいた。
「ひぁっ、んんんっ、はぁっ!ん…っ!!」
「どうだ?どんな感じだ?」
「ひっ、ひもちいぃ…ひもちいいれすぅっ!」
ツラそうに片目を瞑りながらもけな気にこちらに従い、応えようとする。
「んぁっ、おちっ、オチンポォっ、なかでっ!ごりごりっ…てぇっ!」
「中って誰の、何の、中だ?ちゃんと答えろ」
「さのっ、さののぉっ!オマンコの中ですぅっ!!
これ…っ!すごっ…れす!きもちいいれすぅっ!」
「いいのか?見られるのがそんなにいいのかっ!?」
「らっらめぇっ!いっいやれすぅっ!だけどきもひいれすっ!!」
意識が混濁しているのか、それが気持ちいいことだとまだ認識できていないのか、それとも―――それが気持ちいいことだと思考を変えられたことに気付いていないのか。
ありのままに自分の快感を告白する佐乃を笑いながらそれとともに込み上げて来た自分の精をそのまま佐乃の膣中に出すべく更にピッチを早める。
「ふあああぁっ!?びくびくって…っ!震えるのらめぇっ!ひうぅぅぅっ!らめっらめらめらめええっ!ふん…っ、んんんんんっ!」
目を見開いて歯を食いしばってツラそうにする。
なにも知らない人間が見ればいたいけな少女を犯しているようにしか見えないだろうがよく見れば苦しみの内に牝の悦びに打ち震えているのが分かるだろう。
じゅぼっ、ちゅぶっ、じゅぼっ、ちゅぶっ、ぐちゅぅっ、ぬちゅんっ!
「っ!ひんんっ!んんっ、くるっ!くるくるっ、たっしてしまいますぅっ!!」
「ほら、オレはなんて言えって言った?」
「はあぁっ!イくっイクイクイクイクイクっ!イってしまいますうぅっ!」
「ほら、オレもイくぞ。さ、最後の授業だ。
スペルマ、ザーメン、なんでもいい。今からオマエの中に出すぞ精液―――子種を。孕ませてやる」
「っっっ!!!らしてくらはいぃっ!ざーめんっ、すぺるまぁっ!こだねっこだねじるぅっ…っ!はらませてくらさいぃっ!」
幼い口から出る淫語に背徳感を覚え、それがまるで呼び出すかのように佐乃の膣内に埋没した根幹の中を一気にそれが駆け上がっていく。
びゅ―――っ!びゅるっ!びゅくんっ!びゅる、びゅっ!ぴゅぴゅっ!ぴゅっ…ぴゅくっ。
「イくっ!ふぁああああああああああああああああああっ!」
これまでのエビ反りの中でひときわ強く弧を描き佐乃が気を失う。
「んっ、お館さまぁ……っ」
まるでうわ言のようにつぶやく佐乃の頭をなでて落ち着かせていると次第に整った吐息が聞こえてきた。
安心しきったあどけない笑顔。
コイツの素顔、こんなに幼かったのか。
にしても―――
元々、コイツは支配する側でなく支配される、いや、それを望む側の人間だったってのにクリスは何を考えてコイツに指環を渡したんだ?
……あぁ、そんなのはぶっちゃけどうでもいい。いい加減、限界だ。意識が薄れつつある。
「左乃、ちとせ…海鵜先生を呼んでオレが城まで連れて帰れと言っていたと伝えろ。
しばらく、横に――…」
なる、そう言おうとして俺は意識を手放した―――
< つづく >