アイテム
俺の名は江藤 新二(エトウシンジ)、子供の頃の夢だった探偵に最近やっとなる事が出来たんだ。
知り合いの援助もあって今日もひっそりと小さな事務所を開いている。
経営の方は正直言って厳しい……けれど毎日充実してるつもりだ。
なんでかって? それはもちろん近くの研究所のおかげさ。
どんな研究所かは実際に行ってみればわかる、というわけでちょっと行ってみようか。
「おーっす」
「ん? なんだ新二か、今途中だからもう少し待っとくれ」
「ようハカセ、悪いな」
俺は適当に椅子を見つけて腰掛ける、いつもの事だから今更遠慮なんてしない。
今目の前で何か作ってる小太りの男がこの研究所の所長で名前は日笠博士(ヒガサヒロシ)、所長と言ってもここには一人しかいないんだけどな。俺はいつもハカセと呼んでいる。
腐れ縁というやつだろうか、子供の頃からいつも遊びに来ては発明品の実験に付き合わされたりしているんだ。
ここには色んな物があっていつ来ても飽きない、さらに毎日新しいものを作っているから尚更だ。
「今日は何を作ってるんだ?」
「強いて言うなら『男の夢』だな、あとちょっとで出来るぞ」
「……何百回と聞いたぞそれ」
まあまともに教えてくれないのもいつもの事だ。あとちょっとと言われたので適当に暇を潰す事にする。
周りを見ると近くに腕時計のようなものが転がっている、確かこれは腕にはめてスイッチを押すと時間が止まるの時計だったか?
以前使わせてもらったけど使った人だけの時間が止まる不良品だったんだよな。(ハカセ的には成功らしい)
俺が使った時は押しただけで何も起こってない気がしたけど実際は3日間も固まってたらしい、ハカセが急いで解除する物を作ってくれたおかげで治せたが今でもあまり実感は無い、時間が止まってたのなら当然だが。
その時の時計と比べると微妙に形が違うけど怖いので弄るのはやめておこう。
「よし、完璧だ!」
不意にハカセの声が聞こえた、どうやら完成したみたいだ。
覗いてみると小さめの赤いリボン、いうなれば蝶ネクタイのようなものがあった。
……ここらへんはあまり追及しないでおこう。
「なんだこれ? 何に使うんだ?」
「ふっふっふ、聞いて驚くなよぉ?」
「それも何百回と聞いたな」
再びいつものパターンだが意外と気に入っている。
それはさておき、
「なんと! 人を思いのままに操れるボイスチェンジャーなのだ!!」
……人を操れるなんて初めて聞いた人なら心躍るかもしれない。
「なんだ、またかよ」
「なんだとはなんだ、少しは驚け」
残念ながら俺は何度も経験してるんだ。
長い間付き合ってるが、ハカセは今までそんな装置何度も作っている、はっきり言って今更だ。
別に俺の態度がそっけないのは飽きたからとかそういう訳じゃない。『人を操る』と言われた装置は今まで一度も成功した試しがないのだ。
初めて使わせてもらったのは確か2個で1セットのバッジ型の装置、受信機となるものを操りたい人に持たせてもう一つの送信機から何か指示を出すとその通りに行動するという物なんだが、結果は受信機を持ってる人が言う通りになるのではなく受信機のバッジそのものが言う通りに動くだけだった。
俺も初めて聞いたときは興奮して早速女の子にバッジもたせて意気揚々と「俺を好きになれ」なんて言ってみたらバッジが地の果てまで追い掛けて擦り寄ってくるんだから参ったよ、バッジに求愛されるなんて多分俺しか経験ないだろうな。
他にもいろいろな物で実験させられたがまともな成功例なんて一つもなかったんだ。
「そんな事言われても、もうあんな目に遭うのはもうごめんだぜ?」
「まあそういうな、今回は今までと状況が違うから絶対に大丈夫だ。データ回収を頼んだぞ」
いうまでもなく俺が実験するのは決まってるらしい。
「もっとマシなもん作ってくれよ、事務所に客が大量に来るような物とかさ」
「それくらい自力でやりたまえ。とにかく君に拒否権はないのだよ、いやなら資金援助もこれまでだ」
「……喜んでやらせていただきます」
言ってなかったが援助してくれた知り合いってのもこのハカセだ。お陰でいざと言う時に頭が上がらないから困る。
「で、どうやって使うんだこれ?」
「まずは操りたい人の声を何でもいいから録音する、すると勝手に分析してくれてメモリーに記憶するからあとはそれを呼び出した状態で声を通せばその人の声になる。」
「それだけじゃただの高性能なボイスチェンジャーだな」
「凄いのはここからだ、呼び出した状態でさらにそこのボタンを押したまま声を通すとなんとその人の心の声になるのだ! 名づけて『変心機』といったところか」
「心の声?」
「もちろん心の声はその人にしか聞こえない。例えば『なんか暑いな』みたいにその人の考えみたいな言い方で言うとその人は実際に暑いなと思い込むようになる。」
「ぬう、なんかわかりにくいな」
「そうだな……わかり易くいうと、某SSの某シャボン玉みたいな感じだな」
「……とてもわかり易いがある意味危険だ」
ハカセのスレスレ発言のお陰で使い方と効果はわかった、早速試してみるか。
俺は今の会話の中でハカセの声を録音していた、1から10まであるダイヤルを1にセットし声を記録する。
そしてメモリー1を呼び出し変心機越しに声を発してみる。
「あーあー、ただいまマイクのテスト中、おお! ハカセの声だ」
「マイクのテスト中なんて久しぶりに聞いたぞ」
見事にボイスチェンジャーとしての性能と俺のボキャブラリーの無さがが露呈されたところで次に進もう。
日ごろの恨みを晴らすつもりでボタンを押してみる、が。
「ちなみに、わしには操るボタンは効かんぞ」
「ぐっ、やっぱり?」
「そっちの性能は大人しく町で試してこい、見ればわかると思うが一度に10人分まで登録できる、まだプロトタイプだから上書きは出来ん。全部埋め終わったら戻って報告してくれ。」
「今ハカセを登録したからあと9人か、人数埋めるだけでいいのか?」
「馬鹿を言うな、もっともお前がメモリー埋めるだけで帰ってくるとは思ってないが。まあ報告の具体的な内容としては一人一人どういう風に操ったか、不便に感じた事、その他気付いた事、と言った所だ。どうせお前の事だから殆ど女性のデータになるんだろうな」
「『男の夢』と言ったのはハカセだぜ? 野郎を操っても仕方ないだろ」
「まあ男性の分はわしとお前だけで何とかなるだろう、とにかく頼んだぞ。今回は状況が違うんだ」
「さっきも言ってたな、状況ってどういうことだ?」
「ついにわしも認められたと言う事だよ」
スポンサーでも付いたのか? それにしてもハカセを認めるとは、それ以上の変人なんだろうな。
「わかったよ、じゃあ行ってくる」
「くれぐれも隠密にな」
「もとよりそのつもりだ」
さて、いくとするか!
意気揚々と出発したはいいが特に宛ては無い、とりあえず街中をぶらぶらしている。
それにしても最近ハカセのお陰で事務所を留守にしがちだな、助手もとい留守番でも雇ったほうがいいだろうか?
とにかく今は実験実験、さてどうしたものか。
辺りを見回すと学生たちがおしゃべりしながら登校しているな。
まだそんな時間だったのか、それにしてもいまいちピンと来る子がいないなあ。
そんな感じでしばらく物色してるといきなり背中に衝撃が走った。
「うお!」
「きゃっ!」
俺は何とかバランスをとったがぶつかった制服の少女は反動で尻餅ついてしまっている、髪をポニーテールにしていかにもスポーツ少女と言った感じだ、なかなか可愛い。
「ちょっと! どこ見て歩いてんのよ」
「はあ?」
いくらなんでもいきなりぶつかっといてそれはないだろう、こうなったら俺に遭ったのが運のつきだ。
早速実験台になってもらおう。
「そっちからぶつかってきたんじゃないか」
「うるさいわね! あんたがノロノロ歩いてるのが悪いんでしょ!」
ダイヤル回して声をメモリー2に登録、それをそのまま呼び出して・・・
それにしても俺一応年上のはずなのに容赦のない子だな。
「ああもう遅刻しちゃう! 急がなきゃ」
準備してる間に女の子が走り去ろうとしてやがる、逃がしてたまるか!
あとはこのボタンを押しながら変心機を構えてっと。
『わたしったらなにやってるんだろ、ちゃんとあの人に謝らなきゃ』
とりあえず言ってみたけどこんな感じでいいのか……? ぶっつけ本番はやっぱり緊張するな。
お! 女の子が駆け足で戻ってきたぞ。
「あ、あの、その……す、すみませんでした」
ほ、本当に謝った……これは成功だよな? ついに『男の夢』が完成したんだなハカセ!
おっと、感激してる場合じゃない。まだいろいろやらせてみないとな。
『悪い事しちゃったし、ちゃんと名乗らなきゃ』
「私、高崎真緒(タカサキマオ)って言います。さっきは本当にすみませんでした……」
ふーん、真緒ちゃんか。
どっかで聞いたような名前なのは気のせいだろうな。
「じゃ、じゃあもう時間が無いので私はこれで……」
真緒ちゃんには悪いけど、もう少し付き合ってもらおう。
見た限り遅刻常習犯っぽいし今日ぐらいどうってことないだろう、多分。
『どうせもう遅刻だからゆっくりいこうかしら、人のいないような道でもいってみよう』
言った途端に真緒ちゃんの速度と進行方向が変わったぞ、急にゆっくりと歩いて裏通りへ曲がってしまった。
早速探偵らしく尾行してみよう。
それにしても遅いな、好都合ではあるんだがちょっと尾行しにくいぞこれは。
と思ったら真緒ちゃんがこっちに気付いてしまった。……探偵の面子丸潰れだ。
「あの、まだ何か用ですか?」
変心機で謝らせたのが効いたのかさっきよりはまるくなってはいるが流石に不審そうだ、まあ裏通りにまでついて行ったんだから当然か。
うーむ、いちいち気にされても面倒だ。
「いや別に、気にしなくていいよ」
とりあえず返事をしておいて、すかさず変心機を構える。
『この人もこう言ってるしいちいち気にしちゃ駄目よね、この人が何してても全く気にしないようにしよう』
「そうですか」
真緒ちゃんはそれだけ言ってまたゆっくりと歩き始めてしまう。
試しに肩を軽く叩いてみる、反応が無いというか無視されてるというか、とにかく成功したみたいだ。
思い切ってスカートを捲ってみる、かわいい縞パンが完全にまるみえだけど真緒ちゃんは全く気にしてない。
このままいたずらしてやりたいけどどうせならもっと変心機を使っておかないとな。
『なんだかのど渇いてきちゃった、でも今飲み物なんて持ってないし……』
真緒ちゃんがちょっとそわそわし始めた、思い込むだけで喉って渇くもんなんだなあ。
安心してくれ、すぐにいい方法を教えてあげよう。
『あ、そうだ! 私の愛液やおしっこを飲んでみよう! ちょうどここにはさっきの人しかいないし早くオマンコ弄って飲んじゃおう。私ってあったまいい!」
……流石に相手の心にしか聞こえないとは言えこんな事口に出すのは恥ずかしいな、この辺りを改良点としてハカセに報告しとこう。
そう思ってるうちに真緒ちゃんはいつの間にか座り込んでパンツも脱いでしまっている、毛はほとんど生えてなくて綺麗なオマンコが丸見えだ。
そのまま手を近づけたかと思ったら凄い勢いで愛撫を始めてしまった。うへえ、もう濡れ始めてるよ。意外とオナニー好きだったのか?
グチョグチョとHな音が鳴るほど愛液が出るくらいになったら手に付いた大量の愛液をぺろぺろと美味しそうに舐めている。
でも流石に愛液だけじゃ喉は潤せないらしく今度はオマンコの前で手を添えると勢いよく出てきた黄金の液体を手に溜めていった。
溜まった黄金水をゴクゴクと美味しそうに飲み干してしまう。なんか俺も喉渇いてきたぞ……
暫らくすると満足したのかティッシュを取り出し汚れた部分を綺麗に拭いてパンツを履き直した。いやあ良い物を見せてもらったよ。
初めての実験台って事でまだいろいろしてあげたいけどメモリー全部埋めて試さなきゃ駄目だしあまりこの子だけで遊ぶわけにもいかないな。
そろそろ次をターゲットを探しにいくか、とりあえず変心機を構えてっと。
『ふう、おいしかった。なんかムラムラしてきちゃったし学校まで歩いてる間に一回イクまでオナニーしておこうっと。それとなにか困ったことがあったら鞄の中のチラシにある連絡先に相談してみよう』
俺は真緒ちゃんの鞄に事務所のチラシを忍ばせておいてちゃっかり宣伝しておきつつ、右手でオマンコ弄りながら歩いていく女の子を見送った。
また町をふらふらしていると商店街にさしかかった、まだ朝だし店は開いてても人は少ないな。
適当に歩いていると綺麗な声と元気な声が聞こえてくる。
「お花、いかがですかー?」
「今ならサービスするよっ!」
目を向けてみるとおっとり系の姉に元気なロリっ子と言った感じの妹が経営している花屋がある、下手すれば親子にも見えそうだがれっきとした姉妹だ。名前は確か姉が柊 葉子(ヒイラギ ヨウコ)で妹が咲姫(サキ)だったか。
このへんじゃ結構有名な美人姉妹なんだが肝心の花屋のほうは最近あまり良い状況じゃないらしい。
今日も宣伝の割りに客は来てないみたいだな、ここは一つ俺が励ましてあげよう。
「あ、いらっしゃいませー」
「いらっしゃい!」
店に入ってみても客は一人もいないようだ。
こんな美人の店に何で誰も来ないのかねえ?
「どんなお花をお求めですかー?」
話しかけてきたのはおっとり系の葉子さん、Tシャツジーパンのラフな格好の上から接客用のと思われるエプロンを着ている。遠くからだとよくわからなかったが、でかい。胸が服の下から窮屈そうに押し上げている。
今のうちに葉子さんをメモリー3に登録完了っと。
「おや、私を知らないのかね?」
「え? あら?」
なんとなくそれっぽく言ってみたが葉子さんは不思議そうにしている、まあ実際初対面だから当然なんだが。
早速変心機の出番だ。
『何で忘れてたのかしら? この人は天才アドバイザーで有名な江藤新二さんだわ。この人の言う事はどんなことでも正しいから疑問を持っちゃ駄目よ』
「ご、ごめんなさい、わたしったら江藤さんの顔も忘れちゃうなんて……」
「いやいや、私もまだまだということですよ」
自分で思い込ませてるとわかってても有名人になるのはなんか良い気分だな。
葉子さんも嬉しそうにニコニコしてるし。
「そうですよね、まだまだですものねー」
……台無しだ、せっかく紳士な気分だったのに。
「お姉ちゃん? この人知り合い?」
おっと、調子に乗ってたせいで妹を忘れていた。咲姫ちゃんもTシャツにジーンズ姿だがエプロンはしていない、こちらの胸は殆ど申し訳程度だ。
姉妹だと言うのに見た目も性格もここまで違うか。
「あらあら咲姫ったらー、アドバイザーの江藤さんよー? この前もテレビに出てたじゃないー」
語尾を延ばす独特の喋り方で紹介してもらう。まあテレビに出た事は一度もないが。
勝手に記憶を作ってしまったみたいだ。
「うーん……ごめんお姉ちゃん、そんな人知らないよ」
今のうちに咲姫ちゃんもメモリー4に登録完了、まだ悩んでるから可哀想だし解消してあげよう。
ただし同じ趣向ってのもつまらないから少し捻るか。
『よくわからないけど、お姉ちゃんが言う事はどんなことでも正しいから疑問に持っちゃ駄目よね』
敢えて俺じゃなく姉の葉子さんに依存させてみた、このほうがきっと面白い事になると思ったんだがどうだろう?
「でもお姉ちゃんがそう言うんだからきっと凄い人なのね!」
気持ちのいいほど元気な返事だ、とりあえずこれで俺への不信感はなくなったかな。
準備は出来たし俺好みの店に変えてやるとするか!
「ところでどうやらこのお店、あまり良い状態ではないようですね?」
「うっ、流石凄い人、やっぱりわかちゃうんですね!」
誰が見ても解ると思うけどな……というか咲姫ちゃんの中で俺は『よくわからないけど凄い人』みたいだ。
「このお店の責任者はお姉さんですか?」
「はい、一応私ですー」
「どうやら客引きの方法が悪いと見える。今の時代、ただ声をかけるだけでは客は寄ってきませんぞ」
「そ、そうなんですかー?」
もちろん俺はそんな事知らない、ノリに任せて適当にそれっぽい事言ってみただけだがお姉さんは目をキラキラさせてる。
「ここはひとつ、私が色々とアドバイスをしてあげましょう」
「うわあ、江藤さんにご教授して頂けるなんて感激ですー」
「まずはその格好、そのエプロンは脱いだ方がいいですな」
「はいー、わかりましたー」
素直にエプロンを外す葉子さん、エプロンがなくなったせいででかい胸が余計に強調されてる気がするな。
咲姫ちゃんは元からつけていないので特に変わらず。
「ほらやっぱり! だから言ったじゃない、そのエプロンは地味だからやめた方が良いって」
「むー、結構気に入ってたんだけどねー」
なんだ別に接客用ってわけじゃなかったのか、道理で咲姫ちゃんはつけてないわけだ。
もっとも俺がエプロンを外させたのは咲姫ちゃんのような理由じゃないけどな。
「いやいやエプロンだけではありません、私から見たらそのTシャツも必要ない、もっと胸を見せつける感じのがいいでしょう」
「シャツも……? ってちょっと! それって冗談だとしてもセクハラですよ!?」
「あらあら、シャツもでしたかー。うんしょっと、参考になりますねー」
驚いてる咲姫ちゃんをよそに葉子さんは少しきつそうにTシャツも脱いでしまう。
ブラからこぼれそうなおっぱいが目の前に晒された。
『見せつける』というのも効いたらしく、そのまま腕を胸の下に持って行き軽く持ち上げるように腕を組む。
ぐうっ……これは凄い破壊力だぜ……!
「お、お姉ちゃん! なにやってるの!? いくら天然ボケだからってそこまでやらないでよ!」
……それは結構酷いぞ咲姫ちゃん。
とりあえずここはお姉さんに任せるとしよう。
「咲姫ったらどうしたのー? ほらほら、咲姫もそんなシャツ脱いで見せた方が可愛いと思うよー?」
「え? そ、そう……かな? お姉ちゃんがそういうなら私も脱いでみよっと!」
どうやら咲姫ちゃんも納得してくれたみたいだな、元気よくシャツを脱いでブラのみの姿になったぞ。
持ち上げるほどもないのでとりあえず後ろで腕を組み胸を張って見せているようだ。
うーむ……葉子さんと比べるとなんだか悲しくなってきた。
む、もうこんな時間か、そろそろ次を探さないと拙いな。この姉妹とも一旦お別れだ。
とは言ってもここまでやっといて最後の一枚はとっておく、なんて野暮な事俺はしないから安心してくれ。
やっぱり最後は変心機を使わなくちゃな。
「どうですかー? 少しは良くなったでしょうかー?」
「ええ、予想以上ですよ、眼福眼福」
「……なにを拝んでるんですか?」
おっと、いきなり聞かれたんでつい本音が出てしまった。
まずはダイアルを咲姫ちゃんにあわせてっと。
『それにしてもお姉ちゃんのおっぱい大きいなあ。……なんだか吸い付きたくなっちゃう。舐めたり吸ったりしたらどんな感じだろう……』
言ってる間にも咲姫ちゃんの目の色が変わってくのがよくわかる、もう既に葉子さんのおっぱいに釘付けだ。
これだけでもなかなか面白いがとどめを刺してあげよう。
『そういえば今日はおっぱいの日だったじゃない、なら一日中お姉ちゃんのおっぱいしゃぶってても別に問題ないわよね! 明日から今まで通り過ごすけど今日だけはずっとおっぱいしゃぶっていたい!』
……我ながらアホくさい誘導だがこの際どうでもいい、結果が全てさ。
言い終わった瞬間咲姫ちゃんが目をギラギラさせて葉子さんのおっぱいに向かって飛びついてしまった。
「きゃっ! さっ咲姫!?」
「ああ……おっぱい……お姉ちゃんのおっぱい……」
凄いな、完全に人が変わっちゃってるぞ。
咲姫ちゃんは邪魔そうに葉子さんのブラを剥ぎ取ったと思ったら乳首をチュウチュウと吸ったり時には舌で転がしたりしている。
それだけじゃなくさらに開いてる方のおっぱいは手で激しく揉み扱いている、流石にそこまでやるとはおもわなんだ。
「ああんっ……咲姫……どう……んっ……しちゃったのぉ……」
「んちゅ……ぺろっ……何言ってるのよお姉ちゃん、おっぱいの日だよ。今日は一日中離さないから! ……あむっ」
流石の葉子さんも困ってるみたいだな、まあ当然か。
最後の仕上げだ、助け舟を出してあげよう。
「どうしたんですか葉子さん、今日はおっぱいの日ですよ、別に恥ずかしがる必要はありません。あなたはおっぱいが大きいんですから責任持って妹さんに吸わせてあげないと駄目じゃないですか。」
「あ……そう……でしたねー、んんっ……咲姫、いつもありがとう、満足するまでたくさん吸ってね」
「うん!」
不安もなくなって葉子さんの方にも余裕が出てきたみたいだ。こうやって見てるとやっぱり姉妹より親子だな。
それにしてもありがとうって……おっぱいの日は感謝する日だったのか?
とにかく、葉子さんのほうも後始末してかねば。
「それでは私はもう帰ります。今まで私が言った事は全部冗談なんで気にしないで明日からは普段通り営業してください、それと今日はもう店は閉めたほうがいいですよ。」
こんなもんかな、俺が花屋を出た途端に準備中の看板を出してしまった。
店の景気は上がらないだろうけどこれで姉妹の仲はもっと良くなるだろう。
結果的に良い事した……わけないか。
花屋を出ると商店街はさっきより賑わっている。
俺も良く働いたし(?)腹減ったな、飯でも食べるとしよう。
どこかいいとこないものか……むう、この辺りは喫茶店とファミレスしかない。
仕方ない、定食屋がよかったがファミレスで我慢するか。
近くの店に入るとウェイトレス……ではなくウェイターが迎えてくれた。
「いらっしゃいませ、一名様で宜しいですか?」
「ああ、禁煙席で」
「かしこまりました、こちらへどうぞ」
案内されて奥の席に座る。もう昼なので当然人がたくさんいるはずなのだが喫煙席ばかり賑っていてなぜか禁煙席には人が少ない。
俺の近くにはスーツでヒゲを生やしたオッサンが一人いるだけだ。
奥まで案内されたせいで死角が多い、喫煙席の方は完全に見えなくなってしまっている。
「ごゆっくりどうぞ」
ウェイターが去っていく。それにしてもこういう時って普通可愛いウェイトレスなのがお約束のはずじゃないのか?
愚痴ってる間にウェイターも見えなくなってしまった、俺の位置からはもうオッサンしか確認できない。……寂しい昼食だ。
とにかく何か食べよう。
ふう、食った食った、環境はアレだったがこのオムライスはなかなか旨いじゃないか。
ちなみにあの後メニューを取ったのも飯を運んできたのもあのウェイターだった、他にいないのかこの店は。
そして暫らく休憩してると……ここにはあるはずのない、あってはならない俺の大嫌いな物が運ばれてきた。
「げほっげほっ!」
油断してたせいで思いっきり吸ってしまった。
けむい、なんだ? なんでこんな奥の禁煙席にタバコの煙が飛んで来るんだ?
俺は驚いて煙の軌跡を追ってみると原因はすぐ近くだった。
あのオッサン、禁煙席にも拘らずタバコ吸ってやがる!
「げふぇんっげふぇんっ!」
俺はわざと大袈裟に咳き込んでみせた。
おかげで気付いてくれたのか携帯灰皿に押し付けて火を消してくれた。
……と思ったら当たり前のようにもう一本吸い始めやがった!
くそっ! 仕方ない、ここは一つ俺がガツンと言ってやるしかないか。
そう思って席を立とうとしたら再びさっきのウェイターがオッサンに気付いたみたいだ。
「お客様、こちらは禁煙席ですので喫煙はおやめください」
「ああ? うるせーよ、喫煙席が満席なのが悪いんだろ」
「そう言われましても、他のお客様のご迷惑となりますので」
「あいつしかいねーんだから別にいいだろ、客に命令する気なのか?」
「そ、そういう問題では……」
あのしっかりしてそうなウェイターが押されている。
っていうかあのオッサンこっそり俺を馬鹿にしてるじゃねーか!
もう許せん、野郎には使いたくなかったが……
「こっちはちゃんと金払うんだからお前らはおとなしく注文受けてりゃいいんだよ!」
メモリー5に登録完了。
それにしても凄いことになってきたな、ここからじゃ喫煙席側は見えないがさっきまでの賑わいが無くなってるあたり向こうの人達もこっちが気になってるみたいだ。
もっとも、今からこれ以上の事をさせてやるんだけどな。俺は変心機を構えてまだ口論しているオッサンにあることを吹き込んでやった。
……これでよし、後はここから傍観でもしてようか。
「もういいです、お代は結構ですので帰ってください。お願いします……」
店には悪いが帰るようには仕向けてないんだなこれが。
オッサンはウェイターの発言で完全に頭に血が上ってるみたいだ。
「バイト風情がうるせーんだよ! あんまり調子に乗ってると店の真ん中で裸踊りするぞ!?」
「……は?」
ぷっ……だ、駄目だ、こらえるんだ。
オッサンが大声で怒鳴ったせいで、ウェイターは呆気にとられ、店内は完全に静まり返っている。
おそらく誰もが最後の言葉を聞き間違いだと思ってるに違いない。
今の状況を理解してるのは俺だけだ、だがここで噴出したら俺まで怪しまれてしまう……いやしかし、流石にこれはちょっと……
「ちょ、何してるんだあんた!?」
「うるせえ! こんな店こうしてやる!!」
俺が笑いと格闘してる間にオッサンは服を脱ぎだしていた。
ウェイターは驚きのあまり素が出てしまってる、まああんなことされちゃ仕方ないが。
オッサンはあっという間に全裸になるとそのままの喫煙席の方まで走っていってしまう。
「きゃあああああああああああっ!!」
「おい! 誰か警察呼べ!」
すぐに向こうから悲鳴が聞こえた、俺も追いかけてみると……オッサンが怒った顔はそのままにドジョウすくいの様な動きをしながら裸で踊っていた。
ぶはははっ! 流石にこれは耐えられん!
ざまーみろ、今日に限って俺を怒らせるからこういう事になるんだ!
騒然としてる中俺だけ笑っているとどうやら警察が来たみたいだ。凄い勢いでオッサンが取り押さえられていくぞ。
しかも連行されてる間も無理矢理踊ろうとしているから凄い、おかげで俺の笑いは暫く治まらなかった。
いやー笑った笑った、あんなに笑ったのはハカセの笑わせ機以来かもしれないな。……あれはただのくすぐり機だったが。
笑い疲れたし席に戻って改めて休憩する事にしよう。
店のほうも暫くはまともに機能していなかったが、警察が帰っていく頃には日常を取り戻していた。
笑ったら少し小腹がすいたな、デザートでも食べるか。
メニューを決め、俺は店員を呼んだ。
「いらっしゃいませ、ご注文をお伺いします♪」
あれ? ウェイターってこんな可愛い声だったか? ってそんなはずないか。
俺はてっきり今回もあのウェイターが来ると思ってたので驚いて声の主を見入ってしまった。
そこには可愛らしい声に引けをとらない可愛らしい顔をしたウェイトレスが抜群の営業スマイルで注文を待っていた。
なんだ、ちゃんといるじゃないか。さっきはオッサンの裸なんて見ちゃったし(俺がやらせたんだけど)目の保養をしとこう。
そんな事を考えながら見入ってたせいでウェイトレスは勘違いしたのか少し表情が曇ってしまった。
「あれ……もしかして私、間違えちゃいました?」
「あ、いや大丈夫だ、コーヒーゼリー1つ」
「はい! かしこまりました♪」
俺はすかさず周りを確認する。
オッサンもいなくなって禁煙席側は俺一人、さっきの騒動のせいで新しく客も入らなさそうだ。
これを利用しない手はないよな?
「ご注文を繰り返します、コーヒーゼリーがお1つ。以上で宜しいですか? それではすぐにお持ちいたします♪」
メモリー6に登録、それにしても良い声してるな。思わずボイスチェンジャーの方で遊びたくなるが今は我慢だ。
早速遊んであげたいところだが先にデザートも食べておきたい、とりあえず変心機で次もちゃんとこの子が持ってくるように仕込んでおこう。
『このお客様には私が率先して接客しなきゃ』
俺はそれだけ言っておいて彼女を見送る、まあこんなもんで大丈夫だろう。
さて、今のうちにトイレにでも行っておこう。 ……っておいおい、あの子もう戻ってきたぞ。
「お待たせしました♪ コーヒーゼリーになります」
全然待ってないが逆に怪しい、作り置きなのがバレバレじゃないか。
まあ仕方ない、その分の代償はこの子に払ってもらおう。
「それではごゆっくりどうぞ♪」
「ああ、その前に」
「はい!」
仕込みのお陰か、急に呼び止めても嬉しそうに答えてくれる。
しかし変心機を構えたはいいが、人が来ない保証はないよなあ……
あまり大それた事はしないでおこう。
「デザートの『オプション』を追加で頼むよ」
まず普通に言ってその後すぐに変心機を使う。
『オプションって言ったら口移しの事だよね、このお店の目玉だし特におかしい事じゃないよね』
「かしこまりました♪」
多少ラグはあったが笑顔で了承してくれた。
「失礼します」
一言断って隣に座ってくる、俺は流れに身を任せておくとしよう。
スプーンでゼリーを口に含むと租借はせずに目を閉じて口を近づけてきた。
そのままキスをすると催促するかのように舌を押し付けてくる、それに応じて口を開くと舌とともにゼリーが押し込まれてきた。
うーん、美味かな。これなら作り置きだろうとコンビニの安物だろうと誰でも満足できそうないいサービスだ。
その後も同じ様に食べさせてもらった。
「ぬちゅ……んむ……ぷはぁ、ご満足いただけたでしょうか?」
「ああ、良かったよ」
食べ終わってそう答えると彼女はとても嬉しそうだった。
こんな顔されるとこれからもちょくちょく来てあげたくなっちゃうじゃないか。
とりあえず今日のところは店を出るとしよう。
ああその前に、トイレトイレ……ってどこだ?
「お会計ですか?」
「いや、先にトイレ行っておきたいんだけどどこにあるんだ?」
「お手洗いでしたらそこの角を曲がってまっすぐいったところにございます。よろしければご案内しましょうか?」
「そうだな、お願いするよ」
折角だ、断る理由はないな。
というわけで連れられてトイレの前まで来た。どうやら男女区別のない個室タイプのようだ。
そこで俺はあることを思いつく。
どうせだからもっと『案内』してもらおう。
『他にもお客様にわからないことがあったら、どんなことでも恥ずかしがらずちゃんと案内してあげなきゃ』
変心機でそれだけ言っておいて、彼女に尋ねる。
「ところで、このトイレどうやって使うんだ?」
「はい、それではまずこちらにどうぞ♪」
早速『案内』してくれるようだ、彼女は先にトイレに入って中から招いてくれた。
俺が中に入ると静かに扉を閉めてくれる、なんだか俺専用のメイドみたいだな。
流石に元々一人用の個室トイレに二人は少し狭いが、不自由と言うほどでもない。
「こちらが便器になります♪ 用を足したらこのレバーを引くと水で流すことができます、手を洗う場合はこちらの洗面所をお使いください」
元気よくトイレを紹介してくれる彼女を見て色々させたくなってくるが、まずはこの尿意を何とかしとこう。
「ああ、ありがとう。まだよくわからないかもしれないからちょっと見ておいてくれないか?」
「ちょっと男の人のはよくわかりませんが……そんな私でもよければ見守らせていただきます♪」
彼女の殊勝な心がけにちょっと感動しながらも俺はとりあえず用を足した、その脇で彼女がしゃがみながら笑顔で見守ってくれている。
自分でやっておいてなんだが小便を笑顔の女の子に見られてるってのは凄いシチュエーションだな、癖になるかもしれん。
……用は足し終わったがつい大きくなってしまった。まあ、ここまできたらやる事やっておかないと男じゃないな!
幸いここはトイレだ、問題ないだろう。
「ふう、どうだった?」
「あ、はい! 大丈夫だったと思います!」
まじまじと俺の股間を見ながら彼女は言った。
正確には大丈夫じゃないんだ、ちゃんと彼女に処理してもらわなきゃな。
「用は足せたけどちょっと興奮しちゃってね、精液便所はどこにあるのかな?」
「せ、せいえきべんじょ……ですか? えーっと……」
言葉に詰まってしまう、だが引いてるわけじゃなく単純にそんな物は無くて困ってるみたいだ。
じゃあ早速『思い出させて』あげるとしようか。
『なんで忘れてたのかしら、精液便所って私の事じゃない。頼まれたらいつでもどこでも性欲処理をしてあげるのが精液便所の役目よね』
変心機を使うと彼女は『思い出した』みたいだ、顔色が一気に明るくなる。
「失礼しました、精液便所でしたら私でございます♪」
「なんだそうだったのか、じゃあ早速お願いするよ」
「かしこまりました! お口で宜しいですか?」
「ああ、頼む」
許可を出すといきなり咥え込まれてしまった。
まだすこし尿で汚れていたが、彼女は気にしてないどころかまず最初に舌で全体的に舐めとってくれた。
どうやら彼女なりにも色々世話してくれるみたいだな、仕事熱心で本当に良い子だなあ。
今日はフェラだけで終わっとこうと思ってたけど少し気が変わってきた。
「んちゅっ……んちゅっ……」
「ちょっといいかな、やっぱり下も使わせてくれ」
「じゅる……ちゅ……ぱぁっ、かしこまりました、少々お待ちください」
彼女はそう言うと制服のスカートのなかに手をいれスルスルとショーツだけ抜き取ってしまった。
その格好のまま便器に座ると膝を持ち上げ足を左右に開く、所謂M字開脚の体制でさらに手でスカートを思いっきり捲り上げてこれまた可愛らしいアソコを丸見えする。
正直俺がそうさせるつもりだったのだが、それを見透かしたかのように望みどおりの格好をしてくれて驚いた。
きっとこれが接客業の賜物ってやつかもしれないな。
「お待たせしました♪ それではお好きなだけご使用ください」
スカート捲りながら抜群のスマイルでそんな事言われたら我慢なんてできるわけがないじゃないか、するつもりもないが。
俺は返事もせずに物を突っ込み一心不乱に腰を振る。
少し乱暴すぎたかと思ったが気にしていないようで笑顔で受け入れてくれた。
しばらくそうしていたが、彼女は一向に乱れる気配は無い。
突く度に少し声は漏れるが笑顔を絶やそうとはしなかった。
少し気になるので聞いてみるとしよう。
「どう?」
「はい! お客様のおちんぽは激しくてとても素敵です♪」
「その割には落ち着いてるね」
「私は精液便所ですから、お客様に気持ちよくなって頂くのが第一なんです。そのためにも私が勝手に乱れるわけにはいきません。」
「ふーん、そういうもんなのか」
「あ、 もちろんお客様がご希望でしたら我慢なんてしませんがどうしましょう?」
「いや、今のままでいいよ」
「かしこまりました、それでは引き続き私のオマンコをお楽しみください♪」
うーむ、一言吹き込んだだけでここまでなるものなのか?
もしかしたら彼女の仕事に対する頑張りが暗示との相乗効果を生んだのかもしれないな……
それにしてもこの誠実さとやってる事のギャップがエロ過ぎる……もう出そうだ!
「だ、だすぞ!」
「はい、好きなだけ出してくださいね♪ それとお客様、ぶしつけかもしれませんがいちいち確認などとる必要はありませんよ? 私はただの便器なんですから、気にせずお好きなように使ってください♪」
……俺はその台詞を聞いて果ててしまった。
あの後、後片付けをして先に彼女をトイレから出し仕事に戻した。
俺は流石に同時に出てくるのは拙いと思ったので数分ずらしてからトイレを脱出しレジに向かう。
会計もあの子がやってくれた、このファミレスにも少々長居しすぎたがこれでお別れだ。
「ありがとうございましたー!」
可愛らしい声に見送られて店をあとにした。
さて、休憩もたっぷり取ったし残り4人分張り切っていくとしよう!
……とは言ったものの充ては無いんだよな、結局町をフラフラするしかないから悲しい。
「ちょっと、そこのあなた」
歩いていると不意に声を掛けられた。
振り向いてみるとキレ目のクールっぽい婦警がこっちに向かって歩いてきている。
まさか変心機がばれたのか? いやそんな事は無いはずだが……とにかく答えないとまずいな。
「婦警さんがどうしたんですか? こんなところで」
「最近このあたりで不審者の出没が多くなっているのでパトロールを強化しています。失礼ですが、あなたの身分を証明するものなどをご掲示願えないでしょうか?」
つまり俺が疑われてるって事か。
それにしても不審者……ってもしかしてさっきのオッサンのせいか? あの野郎、どこまで俺の邪魔をする気だ!
「私なら、こういう者ですが」
そう言って俺は仕事用の名刺を見せる。
「江藤探偵事務所所長……江藤新二……さん、ですか。探偵の方がこんなところで一体何を?」
まさか研究所の手伝いで人を操ってましたなんて言える訳無いしな……適当にごまかさなくては。
「いや、その……依頼で色々調べ事をしてただけですよ」
「その割にはフラフラ歩いてるだけのように見えましたけれど?」
うげ、ずっとマークされてたのか、俺としたことが気付けないとは。
婦警は完全に俺を怪しいと踏んでるみたいだ。
「いやいや少し休憩してただけで、別に怪しい者じゃありませんって」
「……どうやら少し署の方でお話を聞かせてもらった方が良さそうですね」
おいおい勘弁してくれ、今それは流石にまずい。こうなったらアレを使うしかないか。
「ほら、これについて調べてたんです」
「なんですかそれは?」
ささっとメモリー7に登録、とりあえず疑いを晴らしておこう。
「変わった形をしてますがただのボイスチェンジャーですよ。ほら、こんな風に」
『たしかに全然怪しくないわね、私の勘違いだったかしら』
「そうでしたか、それは失礼しました」
使い方を見せる振りして思考を吹き込んでおいた。
こうなってしまえばこっちの物だ、色々悪戯してやりたいが……ここは長居は無用だな。
さっさとずらかるとしよう。
「わかってくれたみたいですね、それじゃ私はこれで」
「……待ちなさい! やっぱりおかしい、あなた私に何かしたわね?」
なんだ……!? まさか変心機が効いてないのか!?
「い、いきなり何を言い出すんですか?」
「私はこんな軽率な事を考える人間じゃない……あなたが何かしたとしか考えられないの」
す、鋭い……だがまだ変心機自体がバレた訳ではなさそうだ。
なんとか切り抜けなければ……
「それが何故私のせいになるんですか、それに私が何かする暇だって無かったでしょう?」
「さっきのボイスチェンジャー、もう一度見せなさい」
ごめんなさい完全にバレてました。
どうする、どうすればいい? これじゃ変心機を使う暇すらないぞ!?
いやそれ以前に変心機が効いてなかったんだ、暇があっても意味があるかどうか・・・
考えるんだ、このIQ120(平凡)の頭脳を使って考えるしかない!
「どうしたの? やっぱり私の考えを一瞬でも変えたのはさっきのアレが原因なのね?」
……そうか! そう言えば思考を吹き込んだとき確かに彼女はその通りにしていた。
その後すぐに元に戻っていたが完全に効かなかった訳じゃない、一瞬だとしても効果はあったんだ!
そうとわかればまだ手はあるはずだ、今はそれをするしかない。
「流石ですね、婦警さんの仰るとおりです」
「認める暇があるならさっさとそれを渡しなさい、言っておくけど使う暇なんて与えないわよ」
認めれば少しは気を緩んでくれるかと思ったが、こいつなかなかやるな。
だが彼女が変心機に集中してるなら……まだ勝機はある。
「もちろん」
そう言って俺は取り出そうとする。
そして……
ババババッ!!
「きゃっ!?」
俺がポケットから取り出したものは変心機ではなく大量の白い鳩、ハカセの発明品でいわゆるビックリアイテム、原理は俺に聞かないでくれ。
流石の婦警も驚いてたじろいだ、その一瞬を見逃さず俺はダッシュする。
「ッ! 待ちなさい!!」
待てと言われて待つ奴なんていない! 走力には自信あるんだ、追いつけると思うなよ!!
「私から逃げられると思わないで!」
スタートダッシュこそ俺のが速かったがそれ以降一向に引き剥がせる気配は無い、それどこか徐々に追いつかれていた。
この女化け物か!? くそっ、このままじゃいずれ追いつかれる!
予期してなかったわけじゃないが女に負けるのはちょっと悲しい……
仕方ない、本命を使おう。
『私走るの苦手なのよね』
俺は走りながら変心機で思考を吹き込む。
「なっ!? そんなはず、ない! 今まで何度も記録を出してきたのよ!」
必死に否定して振り払ったみたいだが間違いなく速度は一瞬落ちた。
『そろそろ疲れてきた』
「はあっ……はあっ……まだ……いけるわ!」
彼女の息が切れてきた。だがあいにく俺はまだまだいけるぜ?
ここで一気に畳み掛けてやる!
『暑い、疲れた、足が痛い、休みたい』
「っくう!!」
ついに彼女の足が止まる、どうやら心身的な思い込みは結構効果があったみたいだ。
「ふっふっふ、どうやら今回は俺の勝ちみたいだな!」
「はあっ……はあっ……江藤新二! こんなことで逃げ切れたと思わないで!!」
こうしてなんとか俺は婦警を振り切った。
それにしても俺、これじゃ探偵じゃなくて怪盗みたいだ……
「ふむう、確かにそれは面倒な事になったな」
あの後俺は研究所に戻ってきていた、流石にあんな事があったんじゃ変心機の実験も出来ないしな。
「悪いな。隠密にって約束だったのに」
「おきた事を悔やんでも仕方あるまい、とりあえず状況を打開できる物を早急に作ろう」
「え? そんな簡単にできるのか?」
「わしを誰だと思ってるんだ? 任せておけ。それにこのままじゃわしまでとばっちりを食う羽目になりそうだからな」
「すまない、じゃあ頼むよ」
とばっちりって、作った張本人が何か言ってるが今の俺はそんな事言える立場じゃないな。
とりあえず今日は疲れた……もう家に帰ろう。
「ん? どこに行く気だ?」
「今日はもう帰るよ、後はよろしく頼む」
「いや、無理だろう。それは」
「は? なんでだ?」
外に出るとまずいのか? そう言えばさっきからなんか外が騒がしいような……
「……お前まさか自分で気付いてないのか?」
「なんのことだ?」
「外ではおそらく警察がお前の事務所に押しかけてるところだろう」
「な!? もう俺の場所がばれたのか!?」
いくらなんでも早すぎだろ……?
婦警とのやり取りを知り合いにでも見られてたのか?
周りに誰かいるとは思ってなかったんだが……
「一体なんだってこんな……」
「お前は婦警との会話の時に名刺を見せたんだろう? 一瞬だとしてもそれで住所も覚えられたんだろう」
「……あ」
そう言えばそうだった、なんで俺はあの時名刺なんて見せてしまったんだ!
と言っても不可抗力か……
「今日はここに泊まっていけ、空き部屋があるから好きに使うといい」
「そうさせてもらうよ」
探偵の俺が逃亡生活とは……これじゃ本当に怪盗じゃないか。
そんな事を考えながら俺は一日の疲れで深い眠りについた……
< つづく >