桜の園 第二話 落花狼籍

第二話 落花狼籍

 知的な美人女子大生の口腔に欲望の総てを注ぎ終えたヒロシは大いなる満足感とともに軽い疲労感を覚えた。

 膝立ちになっている香織をその場に正座させるとその背後に回り、しなやかな背中の上に尻を預けて椅子代わりに腰かける。

「涼子、ハンカチを水に濡らして持ってこい」

 ヒロシは両脚を大きく開き太腿の間に濡れたハンカチを持ってきた涼子を跪かせた。

「ハンカチで拭って綺麗にしろ。爪なんかたてるんじゃないぞ」

「はい、御主人様」

 涼子が精液と香織の唾液とが混じり合った一物を一心に拭い始めた。濡れたハンカチの冷たさが火照った体に心地好い。

 いいかげん拭い終わったところで涼子を止めた。

「もういいぞ。さてと……賞はこれでいいとして、次は罰だな……」

 ヒロシは一物をズボンにしまい込みながら呟いた。

「香織には賞を与えたから涼子からは何か奪うとするか……涼子ちゃんは何を奪って欲しいかな?」

 跪いた涼子を見下ろしながらまるで子供に話しかけるように聞くヒロシだった。

 涼子は無表情のまま何も答えない。どうやらこういう質問は催眠状態にあるときには反応しにくいらしい。やはり「はい」と「いいえ」で対応できる質問が適しているのだ。

「お返事がないようなのでこっちで決めてあげよう。さあ、立って」

 ヒロシは立ち上がった涼子の両肩に手を置いて軽く抱き寄せた。

「まずはファーストキッスから奪ってあげるからね。さあ、目を閉じて」

 目を閉じた涼子の顔を間近で見て、ヒロシは胸がときめくのを覚えた。

 せせらぎを渡る柔らかな風に長い黒髮をゆらめかせながら睫毛を閉じて立っている涼子の姿は、いかにもファーストキスを待つ清楚な乙女といった雰囲気である。

 ヒロシは涼子の頤(おとがい)に指をかけ気持ち顎を持ち上げると、そっと自分の頭を傾けた。唇を重ねるとすべやかで暖かな肉感が押し返してくる。そのまましばらくじっとしていたが、どうも面白くない。彼女にとっては大切なファーストキスを奪っているのに、何かこう、ときめくものが薄いとヒロシは思った。これは凉子が無抵抗というのが関係しているようだった。

 ヒロシは一度唇を離すと涼子を横抱きにしてシート上へ連れていった。仰向けに寝かせ、その左横に自分も寝そべる。涼子の胸を右手で揉みながら霞んだ美貌に話しかける。

「いいか涼子、これから僕が合図をする。そうしたら普段の君に戻るんだ。ただし勝手に起き上がってはだめだ。抵抗してもいいけど、決して逃げたり僕を傷つけたりはねのけたりしてはいけない。そうそう、大きな声を出すのも禁止だ。そして、もう一度合図をしたら今の人形のような状態に戻るんだ。分かったら返事をしてごらん」

「はい、涼子は御主人様が合図をしたら普段の私に戻ります。ただし勝手に起き上がったりしません。抵抗はしますが、決して逃げたり御主人様を傷つけたりはねのけたりしません。大きな声も出しません。もう一度合図をされたら今の人形のような状態に戻ります」

「それでいい。僕が指を鳴らすのが合図だよ」

「はい、御主人様」

 ヒロシは涼子の胸から離した右手を彼女の目の前で鳴らした。その瞬間、それまで霞んでいた涼子の瞳に生気が宿り大きく見開かれた。

「あっ……!?」

 ヒロシを見て恐怖を浮かべた涼子の表情は新鮮だった。今までのマネキン人形のような凍りついた表情とは違い、実に生々しい女の表情だ。

「ここは? ……ここはどこ!?」

 涼子は混乱しているようだった。無理もない、彼女の記憶では、朝方にいた大学の敷地内とこの山の中がタイムラグなしに繋がっているのだから。

「さあ、おとなしくキスしましょうね」

「いやーっ!」

 ヒロシが唇を尖らせて顔を近づけると、涼子は小さな悲鳴をあげながら両腕をつぱって押し返そうとする。気にせず前進すると、涼子の腕は暗示をかけた通りに弱々しく折り返されて行く。ヒロシは左腕で涼子の頭を、右手で細くくびれた腰を抱え込むように固定すると、そのまま唇を重ねていった。

「むっ……」

 涼子はもがいたが、それは軽いものでヒロシを跳ね返すほどの力はない。それをいいことにヒロシは子鳥がついばむように組み敷いた清純な乙女の穢れなき唇を吸い、舌で舐めあげた。

「んっ……んんっ!」

 ヒロシの体の下で涼子が弱々しくもがき続ける。そのはかない抵抗が清純な御嬢様のファーストキスを、今こうして奪っているのだという証しとしてヒロシの快感を倍増させていった。

 舌先を進めて朱唇を割り裂き唇の裏側を舐めあげる。さらに侵入しようとしたが涼子は歯をしっかりと閉じたままそれを許さない。

 ヒロシは右手を細腰から左の乳房へ移動させ、思いきり握り締めた。

「んーっ!」

 涼子は敏感な箇所を鷲掴みにされた痛みに、唇をふさがれたまま悲鳴をあげた。その隙にヒロシは開かれた歯の隙間に強引に舌先を潜り込ませた。ヒロシを傷つけないよう暗示をかけてあるので、噛まれる心配はなかった。

 ヒロシの舌先は口蓋の中を暴れまくるように蹂躙し、貪った。ついで脅えるように逃げようとする乙女の舌を絡め取る。

 処女に与えるファーストキスとは思えないような濃厚さで、ヒロシは涼子の舌を弄び唇を貪り続けた。

 涼子はすでに抵抗を諦め、時折わずかに体をよじるだけですっかりおとなしくなってしまった。

 思うさま乙女の唇を味わい蹂躙しつくしたヒロシが唇を離すと、涼子は顔を捻り閉じた長い睫毛の端に涙を滲ませた。

 肩を震わせて嗚咽する涼子の姿をヒロシは感無量の面持ちで眺めていた。人形のような無抵抗な女もときによっては悪くはないが、やはり生きた反応をする女の方が弄びがいがあるものだ。小学生のいじめっ子がついつい好きな女の子を泣かしてしまう心理と似たようなものなのだろう。

 ヒロシは辺りに落ちていたハンカチを拾い上げ、泣きぬれる涼子を抱き起こした。

「ほら、涙を拭いて上げるからこっちを向いてごらん」

 涼子は嗚咽したままいやいやをするように首を振っていたが、ヒロシは顎の先をつかんで強引にこちらを向かせた。軽く肩を抱いて頬を流れ伝う涙をやさしくハンカチで拭った。ついさっき人形状態の涼子がヒロシの股間を拭いたハンカチだったが、ヒロシはこの際気にしないことにした。

 涙を拭き取っているうちにヒロシは次の遊びを思いついた。

 指を鳴らして涼子を元の人形状態にすると、香織を呼び寄せた。二人を並んで立たせ新たな暗示を与える。

「これから僕が指を鳴らす合図をするから、そうしたら二人とも意識を回復させて普段通りに戻るんだ。そして、もう一度指を鳴らしたら元の人形状態に戻ること。分かったら繰り返して言ってごらん」

「はい、御主人様が指を鳴らす合図をしたら私逹は意識を回復させて普段通りにもどります。そして、もう一度指を鳴らしたら元の人形状態に戻ります」

「ただし、意識が戻ってもこれから僕が言うことに君達は従わなければならない」

「はい、意識が戻っても御主人様の言うことには従わなければなりません」

「まず、僕は君達の御主人様だ。僕の命令には従わなければならない。反論をしてもいいが命令は絶対だ」

「はい、御主人様は私逹の御主人様です。御主人様の命令には従わなければなりません。反論をしても命令は絶対です」

「僕には敬語を使わなければならない」

「はい、御主人様には敬語を使います」

「僕を傷つけてはいけない」

「はい、御主人様を傷つけません」

 ここまで言ってヒロシは、何だか中学時代に読んだSF小説作家アシモフのロボット三原則とほとんど同じだなと気がついた。やはり昔の人はいいことを思いつくものだとついつい感心してしまう。

「僕から逃げようとしてはいけない」

「はい、御主人様から逃げようとしません」

「僕の言うことは絶対に正しい」

「はい、御主人様の言うことは絶対に正しいです」

 まあ、こんなところかなとヒロシは思った。これだけ暗示を与えておけば意識を回復させても大丈夫だろう。そう考えたヒロシは右手を上げた。

「僕と君達との約束はこれだけだ。いいか約束を忘れるなよ」

「はい、御主人様。約束を忘れません」

 指を鳴らすと、二人は夢から覚めたように生気を取り戻した。

「やあ、お嬢さん方。お目覚めかな?」

 二人は戸惑いがちにヒロシを見、次に脅えた表情を浮かべた。ついさっきファーストキスを奪われた涼子は、思わず香織の背後に隠れてしまった。その涼子を庇うように気の強い香織が多少及び腰になりながらも前に出た。

「あの……ここはどこなんですか? どうして私逹はこんな所にいるんですか?!」

 辺りに目を配りながら質問した香織は油断なくヒロシを見据えた。その眼差しには挑みかかるような鋭さがある。

 暗示が不完全だったのだろうかと少々慌てたヒロシは、香織に質問した。

「あの……僕が誰か分かってる?」

「私の御主人様でしょう?」

 香織はあっさりと答えた。まるで何を分かりきったことを今さら質問するのかという顔をしている。

 とりあえず暗示がきいていることを確認したヒロシは安堵のため息をついた。

「どこにいるかなんてことは気にしなくてよろしい。ただピクニックに来ただけなんだから」

 気にするなと言われ香織は不承不承と言った感じで口をつぐんだ。

「二人ともお腹は減ってるかい?」

「ええ……少し」

 香織の背後で涼子も頷いた。

 無理もない。ここに来るまで相当体力を使った……いや、使わされた上、昼食も取らずに運動したのだから。

「でも君達は太りすぎを気にしてダイエット中だもんね」

 ヒロシの言うことは絶対に正しいという暗示を与えてあるので、二人は反論もせずに頷いた。

「ええ……そうです……ダイエット中です」

 戸惑いがちに香織が答える。

 二人とも太りすぎなんてことはなく、誰が見たってスマートな美女である。おそらく本人たちも自分はスタイルのいい方の部類に入るのだと思っているだろう。そんな自負心も暗示の前には簡単に砕けてしまう。

「それじゃあ、ダイエットのつづきとして午後の運動といきますか。そうだな……兎と狼っていう遊びはどうかな。なに、単純な鬼ごっこさ。僕が狼をやってあげるよ」

「鬼ごっこですか?」

 香織が不満そうに口を尖らせた。それはそうだろう大学生にもなって、いくらなんでもそんな子供じみた遊びをするのは恥ずかしすぎる。それでもヒロシは不満顔の香織をわざと無視してルール説明を始めた。

「ルールは兎役の君達が逃げて狼役の僕が追いかける。もし狼に捕まったら罰として兎は食べられちゃうんだ」

「食べられる?」

「犯されるってことさ」

 ヒロシの答えを聞いた二人は目を見開いた。香織は形の良い眉を逆立ててヒロシに盾突いた。

「そんなのひどすぎます! どうして鬼ごっこで捕まったからといって犯されなければならないんですか!? 何か別の罰にして下さい!」

 正論だったが、ヒロシはそれを受け入れるつもりはない。

「だって、逃げる兎を狼が捕まえるんだぜ。そうしたら捕まえた兎を狼が食べるのは当然じゃないか。そうだろ?」

 ヒロシはずけずけと言ってのける。さきほど与えた暗示で、御主人様の言うことは絶対に正しいと刷り込まれているので、香織は反論できなくなってしまう。

「犯されたくなかったら狼から逃げ切ればいいじゃないか。それに僕は歩いて追いかけるから。それならいいだろ?」

「ええ……それでしたら」

「それじゃあ約束だ」

 ヒロシは右手の小指を二人の前に突き出した。

「ほら、これに小指を絡ませて。指切りげんまんだ」

 二人はしかたなしに手を伸ばし、細くしなやかな小指を絡めた。

「じゃあ、大きな声で。指切りげんまん嘘ついたら針千本のーます」

 知的な女子大生を子供のように唱和させ、絡めた小指をわざと大げさに振る。

「指切った」、の声で小指を解放してやった。

「ちゃんと約束したからね。破ってはいけないよ」

 二人は気乗りしない感じで頷いた。

「じゃあろそろ始めようか。兎ちゃんはそこにしゃがんで。君達は兎跳びで逃げるんだ、こうやってね」

 ヒロシはその場にしゃがみこむと両の掌を頭の上で兎の耳のようにかざした。

 兎跳びでは逃げようにもたいしたスピードを出せるはずがない。涼子は気絶せんばかりに青ざめ、香織は色をなしてヒロシに食ってかかった。

「そっ、そんな! それじゃあ必ず捕まってしまいます!」

 香りの声は興奮のあまり裏返っていた。ヒロシは無視して立ち上がり、渓流とは反対側にある緩やかな坂道を指し示した。

「それから、あそこの道には出てはダメだ。それと水の中に入るのも禁止ね」

 ヒロシたちのいるところは周りが木々に囲まれた渓流沿いの崖になっているので、ハイキングコースに出れないとなるとそう遠くには行けない。

「その辺の茂みに隠れてもいいけど、名前を呼んだら大きな声でお返事するように」

 ヒロシの提案に二人の美人女子大生は絶望感に血の気を失っていった。

「じゃあ、始めようか。ほら、二人ともしゃがんで兎になりなさい」

 命令には逆らえず二人は渋々としゃがみこみ、両の掌を頭の上にかざした。

「それじゃあ手を鳴らしたらスタートだ。捕まりたくなかったら全力で一生懸命に逃げるんだね。はい、スタート!」

 ヒロシが柏手を打つように両手を叩くと、二人は弾けるように跳ね飛び始めた。少しでもヒロシから遠ざかろうと必死に逃げて行く。しかし足場がごつごつとした岩場なので、二人の跳ねる足どりは少々危なっかしい。立派な大人といっていい美しい女子大生が真面目に兎跳びを、しかも頭の上に兎の耳のよう両手をかざしてよろよろと跳ねる姿は、見ていてくすぐったくなるような不思議な光景だった。

 逃げるスピードは、見るからに深窓の令嬢の涼子に比べ、活動的な感じのする香織の方が早かった。おそらく高校時代に運動部で活動していたのかもしれない。また、香織はジーンズだが涼子はスカート姿だということもあるだろう。別々な方向に逃げれば捕まる可能性が分散するはずなのに、先を行く香織を凉子が無意識のうちに頼って追いかけてゆくのが微笑ましい。

 逃げる二人との間が二十メートルほど離れたところで、ヒロシは歩いて後を追い始め、さて、どちらから先にいただこうかと考えた。この渓流沿いの空き地にたどり着いてから、まず最初に香織の口に精を放ち、次に涼子のファーストキスを奪った。順序としては次は香織の番だった。さっき唇を穢したときに香織は無意識の人形状態だったので、今度は意識のある状態で弄んでやろうと決めた。

 早足で歩くとすぐに涼子に追いついた。スカートを乱し艶やかな大腿を露わにしながら必死に兎跳びをする涼子の横に並び駆ける。涼子は小さな悲鳴をあげ慌ててコースを変えてしまったが、ヒロシは目もくれずに先を行く香織を追った。

 背後に迫る男の足音を聞き取った香織が死物狂いで兎跳びのピッチを早めた。しかし、足もとの不安定さ故に速度は思うように上がらない。

 簡単に追いついたヒロシはわざと追い抜かないように歩く速度を調節し、必死に逃げる香織の表情を斜め後ろから観察した。

 男の魔の手から逃れようと全身のバネを使って前進する香織は、その一歩ごとに小さな悲鳴を洩らし、疲労と屈辱に美しい顔を歪めていた。その痛々しい姿を眺めていたヒロシはスピードをあげると香織の真横に並びかけ、ほほ笑みを浮かべた顔をぬっと突き出した。

「きゃっ!」

 香織は悲鳴をあげて方向を変える。ヒロシが足を早め、再び並びかけると、香織はさらに悲鳴をあげて方向を変えた。

「きゃあ! こ、こないで!」

 美女の悲鳴が男の快感中枢をいたく刺激するのだということにヒロシは気づいた。香織が甲高い声を出す度に、ヒロシの血は体中を焦がすかのように熱くたぎり、心臟の鼓動は戦いのドラムのように胸を叩く。

「い、いやっ! きゃーっ!」

 美女の悲鳴は男の中に潜む狩猟本能と性欲に火を点け油を注ぐ結果となった。

 結果の分かっているレースだが、ヒロシは香織を捕まえることをわざとせず、猫が鼠をいたぶるように追跡を楽しんでいた。何度も追いついてはその都度憐れな生贄に悲鳴をあげさせてわざと逃がす。ヒロシは獲物を追いつめる猟犬のように、香織を岸辺へと徐々に誘導していった。

「ほらほら、もっと一生懸命に逃げないと狼に食べられちゃうぞ」

「あっ、いやっ!」

 美人女子大生の悲鳴を心地好いBGMにしてヒロシはこの異様な鬼ごっこを楽しんだ。

 ヒロシはとうとう香織を岸辺に突き出た岩場に追いつめた。水に入るなと命令してあったので、後ろと左右を渓流に囲まれた香織に退路は残されていない。

 ヒロシは突き出した両手の指先を曲げ、まるで狼男のように身構えるとゆっくりと香織に接近していった。

「さあ、兎ちゃんはもう逃げないのかな? 逃げないのなら捕まえちゃうぞ」

「いやあっ! 来ないでーっ!」

 せっぱ詰まった悲鳴をあげ、しゃがんだままじりじりと後退して行く香織は目に涙さえ浮かべている。

「そろそろ終わりにしようか。それ以上行くと水に落ちちゃうからね」

 ヒロシはタックルするように襲いかかり、香織をその場に押し倒した。細くくびれた胴体に素早く馬乗りになり、両手で乳房を鷲掴みにする。香織は両の掌を頭の上にかざしたままなので男の腕を振りほどくことが出来ない。

「うっ!」

「ほら、捕まえたぞ。捕まった兎ちゃんはどうなってしまうのかなー?」

 ぐりぐりと乳房を揉みながら、いやいやをするようにもがく香織の顔を覗き込む。

「うっ……ううっ!」

「ほら、兎ちゃんはどうなるんだっけ? さっき約束しただろう」

「お、狼に食べられます」

「食べられるってどいういうことだったかな?」

「……」

 香織は眉根を寄せ硬く目を閉じ顔を背けて口をつぐんだ。

「言うんだ!」

 両手の指先に力を込めて乳房を握り締める。

「あっ! 言います! だからやめてください!」

 ヒロシは両手から力を抜いてやった。

「ほら、言ってごらん。狼に捕まった兎がどうなるのか」

「お、狼に捕まった兎は……狼に……お、犯されます」

 絞り出すように言いきった香織は両の掌を頭の上にかざしたまま肩に頭を埋め、唇を噛みしめて屈辱に呻いた。

「そう。それでいい」

 ヒロシは満足の笑みを満面に浮かべると香織の頬を掌でやさしく叩いて立ち上がった。

「ほら、頭から手をどけて。兎のポーズはもういいから立ちなさい」

 ヒロシは泣きじゃくる香織に手を貸して立ち上がらせた。そのまま背中と太腿に両手をかけて抱え上げる。

「あっ! は、離してください!」

「心配しなくていいから、おとなしくしていなさい」

 ヒロシは新婚の新妻を抱える夫のように香織を抱きかかえたまま、荷物を置いてあった場所へと歩いていった。香織は腕の中で多少暴れたが、暗示の通り持て余すほど烈しい動きではない。もがく肢体のしなやかな肉の感触を腕や掌に感じながら、ヒロシはこれから行う行為に思いをはせていた。

 レモンイエローのシートの上に香織を降し、ヒロシは荷物の中からリュックを引き出して中を探った。

「いいかい、そのまま座っていてね。このシートの上から絶対に出ちゃだめだよ」

 香織は両手で自分の肩を抱しめるような防禦姿勢をとると、シートの端ににじり下がった。端と言っても、シートは二メートル四方しかないので、ヒロシが手を伸ばせば簡単に届く距離でしかない。それでも少しでも男から遠ざかろうとする行為がいじらしい。

 ヒロシはリュックから包装された箱を取りだし、中を開けた。入っていたのは小型のデジタルビデオカメラだった。今週発売されたばかりの新製品だ。記録用ディスクが内蔵されているのでテープは必要ない。鼻歌混じりにリュックから電池を出してセットした。スイッチを入れレンズを香織に向ける。

「はい、こっちを向いて」

 カメラを向けられた香織は身を固くし、後ずさる。

「なんだか表情が硬いな。ほら、笑ってー」

 冗談めかしてヒロシが命令すると、香織は硬くぎこちない困ったような笑顔を作った。

「おっ、いいね! 今度は両手を降してごらん。そうそう、そのまま動かないで」

 ヒロシはリュックから取り出した三脚を手にすると、再び撮影を続けながら横座りになった香織の横に回った。時々ズームを使って丸みを帯びた腰もとや豊に張りだした胸、脅えた表情のアップを撮る。

「まあ使用前としてはこんなものでいいかな」

「使用前?」

 香織が不思議そうな顔を向ける。

「セックスの前ってこと。前だけじゃなく最中も終わった後でも撮ってあげるよ」

 ヒロシの台詞に香織は見ていておかしくなるくらいに狼狽した。

「そ、そんな! そんなのひどすぎます!」

 ヒロシは香織の抗議を聞き流して三脚にビデオカメラをセットした。ファインダーを覗きながらアングルを調整し、オート撮影モードにしてビデオカメラから離れた。

「それじゃあ、そろそろ始めようか」

「いやーっ!」

 思わず後ずさろうとした香織だったが、すでにシートの端にいたので退路はなかった。

 ヒロシは香織の肩を掴んでシートの中央に引きずり出すと、手で胸を突いて押し倒した。

「はい、兎のポーズになって」

 命令すると香織は弾かれるように、両手を自分の頭の上にかざした。抵抗の手段を奪っておいて、ヒロシは香織の膝の下辺りに馬乗りになり、女らしい曲線を覆うジーンズのベルトに手をかけた。

「い、いやっ!」

 ベルトを抜き臍のすぐ下にあるボタンを外す。

 香織は腰を捩って抵抗しようとしたが、力をセーブするように暗示されているのと、男の体重が膝下にかかっているので思うように動けない。

 ジッパーに指をかけ一気に引き下ろすと、ライトブルーのショーツが顏を覗かせた。

「あっ!」

 ジーンズの端に両手をかけ剥き降そうとしたが、ぴっちりと太腿に密着しているためかなかなか骨の折れる作業になった。

「いやっ! いやっ! いやっ!」

 脱がしている間中、香織は必死の表情でもがき続ける。

 香織の脚の上に乗せた尻をずらしつつ、なんとか膨ら脛まで下げることが出来たが。たるんだジーンズの裾が香織のテニスシューズに引っかかり、それ以上はなかなか下がってはくれなかった。

 面倒くさくなったヒロシは右手を香織の顔の前に持って行き、指を鳴らした。とたんに香織の表情が消え抵抗もなくなった。

「やれやれ、ジーンズは脱がすのが面倒なんだなあ……」

 ヒロシはぶつぶつと文句を言いながら人形状態の香織の足からソックスごと靴を外し、ジーンズを剥き降して抜き取った。ついでにこの後のことも考えて濃紺のシャツのボタンも外し、脱がしてしまう。香織は上着の下にブルーの薄いTシャツを着ていた。めくり上げてみるとショーツとおなじライトブルーのブラジャーが現われた。

 ブラも外してしまおうかと考えたが、やはり香織の反応を楽しみながらにしようと自分を押さえた。かわりに人形状態の香織に指示して四つん這いのポーズをとらせた。

「いいかい、意識が戻っても君はこのポーズを崩しちゃダメだ。動こうと思ってもこの場所から動けない。分かったら繰り返して言ってごらん」

「はい、御主人様。香織は意識が戻ってもこのポーズを崩しません。動こうと思ってもこの場所から動けません」

「よし、いいぞ」

 ヒロシはビデオカメラの側まで行くと、再びアングルを調整し直してから、四つん這いになった香織の背後に回った。

「じゃあ、撮影を再開するからしっかり演技してくれよ」

 ヒロシはにわかづくりの美しい素人女優に囁くと右手を上げた。

「カメラ用意。スタート!」

 指を鳴らすと、すぐさま香織が反応した。

「あっ! こ、これは!?」

「君があんまり抵抗するからこうさせてもらったよ」

 言いながらヒロシは香織のTシャツの中に右手を入れ、しなやかに反り返る背中からライトブルーのショーツに覆われたお尻までさっと手を滑らせた。

「ああっ! さ、触らないで!」

「それにこのポーズのほうが兎を食べる狼って感じだろう。獣のポーズってやつだものね」

「ああっ!」

 お尻を撫であげられても身動きひとつできない香織は絶望的な悲鳴を洩らした。

「まずはオッパイからいきますか」

 ヒロシは香織のTシャツを肩甲骨の上まで捲りあげ、ブラジャーのホックを外し始めた。

「あっ……い、いやあっ!」

 ホックがはずれると見事な乳房がぷるんと弾むように飛び出した。香織の背後に跪いたヒロシは上体を曲げ彼女の背中にのしかかるように両手を伸ばし、見事な紡錘形を描く乳房を鷲掴みにした。

「うっ!」

 容赦ない攻撃に香織は顎を仰け反らせる。

 ヒロシは若い女の健康的な弾力に感激しながらリズムをつけて揉み始めた。

「あっ! あっ! あっ!」

 この渓流沿いの空間にたどり着くまでさんざん弄んでいた香織の乳房であったが、あの時の香織は人形状態で無反応だった。今はひと揉みするたびに新鮮な反応が返ってくる。しかもシャツ越しではなく生の乳房であった。

 すべすべとして張りつめた乳房を、ときに優しくときに激しく揉む手のリズムに変化をくわえ始める。

「どう? 初めて男に揉まれる感想は?」

「あっ! あっ! か……感想なんて!」

 香織は屈辱に顔を赤くして耐えるばかりである。

「じゃあ、これなんかどう?」

 指先で乳首を探り当て、指の股で挾み締めつけてみる。

「うっ! い、痛いっ!」

「そうそう。今みたいにちゃんと感想を言ってくれないとね。これはどうかな」

 今度は指を立てて乳房を握り締める。

「いーっ! 痛いっ!」

「香織ちゃんは痛いしか言わないんだね。大学生にもなってその程度のボキャブラリーじゃ先が思い遣られるなあ。そんなんじゃ卒業できないぞ」

 ヒロシは揉む手の力を和らげて優しく乳房を包み込む。

「ほら、今度はどう? さっきのよりはいい感じだろう?」

「あ……は、はい……」

 俯いた香織の声は苦しさと切なさの混じり合ったような呟きに変わっていた。

 ヒロシは指先を乳暈の周りに這わせそろそろと撫でてみる。

「あんっ!」

 軟体動物が這いまわるような感覚に香織が思わず艶めかしい悲鳴を洩らした。

 乳首を探り当て軽く摘まみ、そっと爪を立ててみる。

「あっ……それ……痛い……」

「ごめんごめん。次は優しくするね」

 そう言いながら親指と中指で摘まんだ乳首をそろそろと揉みたて、人差し指で先端部分をさっと擦りあげた。

「あうっ……」

 香織は背中を震わせて頤を仰け反らせる。ヒロシの指の中でそれまで恥ずかしげに潜んでいた乳首がみるみるうちに頭をもたげてきた。

「あれ!? 香織ちゃん、ひょっとして感じているの?」

「か……感じてなんかいません……」

 香織は弱々しく頭を振って否定したが、その息づかいは切ない感じになっている。

「嘘をついてもすぐに分かるんだよね」

 ヒロシは右手を乳房から離すと、香織の腹を撫で伝いながら下腹部へと向かわせた。そのままショーツの端から中に指先を滑り込ませる。

「あっ! な、何をするんですか!?」

 ショーツの布地と下腹部の柔らかい肌に挾まれた右手を進めると、指先が繊毛を捕らえた。さりさりとした感触を楽しみながらさらに押し進める。

「ああっ、いやっ! さ、触らないで!」

 腰を振って男の指先をかわそうとする香織の上半身を、覆いかぶさったヒロシがしっかりと抱すくめて固定する。

 繊毛をかき分けながら進んで行くと秘所を包み込む肉の丘にたどり着いた。それを越えさらに進むとまだ男に触れられたことのない神聖な場所にたどり着く。そこは熱く、わずかに潤っていた。

「ほら、やっぱり感じているんじゃないか。こんなに濡れているよ」

「いやっ! う、嘘です!」

 開いた両脚をこわばらせ腰を揺する香織だったが、その行為は男の指先を秘所の奧へと導く手助けをしただけだった。

 ヒロシは指先を肉の亀裂に忍び込ませ、柔らかく湿った肉襞をそっとかき分けた。中指を伸ばしてゆっくりと押し進める。熱い肉壁が指をくるみ込むように締めつけてきた。内部はそれほど潤っていないようだった。

「ひっ! い、いたいっ! い、入れないでっ! あっ!」

 生まれて初めて肉の隘路を押し開かれる感覚に、香織は内股を突っ張らせ背中を硬直させた。

 脅えるように痙攣する外陰部の中にさらに中指を進めると、粘膜質のささやかな抵抗に突き当った。大切な処女の証しを指で傷つけるつもりはなかった。それ以上の侵入は控えてさっさと後退する。かわりに指先を肉の亀裂の頂上に差し向け、脅えたように萎縮している肉芽を探り当てると、なよなよと撫であげた。

「あっ……!」

 敏感な箇所を悪戯されて香織は背中を反らして悲鳴を洩らした。

「気持ちいいのかい?」

「そんな……き、気持ちなんかいいわけなんか……」

 屈服を拒む香織は唇を噛みしめて耐える。それでも男の淫靡な指の動きにもぞもぞと腰を振り始めた。

 ヒロシは指の刺激を加え続けていった。その優しく微妙なタッチに、萎縮していた肉芽はすくめていた頭を恥ずかしげにもたげ、その周りに徐々に蜜を滲ませ始めた。

「あ……あっ……」

 香織の唇から洩れる呻き声はしだいに熱く甘くなってゆく。

 ついさっきまで緊張しきっていた肉の亀裂も今はすっかりと柔らかくなっている。潤ったと言い切るにはほど遠いが、初めての愛撫でこの程度潤ったのであれば十分な成果といえるだろう。そう判断したヒロシは香織の内股から右手を引き抜いた。

 体を起こして両手をショーツの端にかけた。一気に剥き降すと、形良く張り出した真っ白な尻が露わになった。

「いやーっ!」

 悲鳴をあげる香織の艷やかな太腿にショーツを留めておいて、ヒロシは自分のベルトを素早く外しズボンとトランクスを膝まで脱ぎ降した。

 再び跪き直し、香織のくびれた細腰を伸ばした両手でがっしりと固定する。隆々と天を衝く怒張の先端を、双臀の間から顏を覗かせている纎毛に縁どられた花肉に向けた。

 そのままそっと腰を進め、花弁に触れる位置でわざと先端を押しとどめた。

「ひゃっ! い、いやっ! いやっ! いやっ!」

 亀頭の先端の熱い温もりを感じただけで香織は髪を振り乱しながら悲鳴をあげた。まだ挿入すらしていないのに、すごい取り乱し様だ。

「お、おねがい! い、挿(い)れないで!」

「だーめ。何のために今まで苦労して濡らしてあげたと思っているんだ。じゃあ、行くよ」

 ヒロシはぐっと腰を突き出し、瑞々しい肉の扉を力強く押し開いた。

「いっ! いたっ!」

「もうちょっとだから、がまんがまん!」

 ぐいぐいと押し込んだがその進路を阻む抵抗がすごい。香織が処女であり性行為になれていないせいもあるだろう。さらには香織が下腹部に力を入れているせいか、内部が恐ろしくきつく狭くなっている。さっきまで滲み出ていた蜜は恐怖と痛みのあまりにその分泌をやめてしまったようだ。

「お……お願いっ! もう……もうやめて!」

「まだまだ!」

 さらに前進するとかすかな抵抗感があった。ついさっき指で確かめた処女膜だ。

 この知的な育ちの良い美人女子大生の処女の証しを、今、自分が蹂躙しようとしている。ヒロシは感激に胸を震わせながら、ぐいっと腰を送り出した。粘膜を押し、開き、破った瞬間、ヒロシは全身が震えるような快感が股間から駆け上がってくるのを覚えた。さっき香織の口に抜いておかなかったら、とうに暴発していただろう。

「あーっ!」

 香織は粘膜を裂かれる激痛に息を呑み、背筋を反らして凍りつく。

 ヒロシは処女を奪った感激に浸りながら、怒張をさらに押し、肉の壁を擦りあげるように進めて行く。 子宮の底までたどりつき、そこでやっと一息ついた。腰を突き出したままだ静止し、熱くぬめぬめとした処女の肉壁の感触を怒張いっぱいに感じ取る。

 未開の処女地をこじ開けられた痛みに、香織は上半身を支えている両手の指を硬く握り締めながらシートに爪を立て、歯を食いしばって耐えるばかりだった。

「素敵な処女をありがとう」

 ヒロシは上半身を曲げ香織の耳元に、優しく、心の底から言った。

「僕は一生忘れないよ。だから君も忘れないでね」

 香織の返事を待たずに、ヒロシは注挿を開始した。柔らかな肉壁を擦りたて、大きくゆったりとしたストロークで抜き差しする。

「あっ……あっ……あっ」

 たいして濡れてもいない腟内を擦りあげられる痛みに、香織は首を振りながら弱々しい悲鳴を洩らす。

「どう僕のモノは?」

 激痛に悶え苦しむ香織は返事すら出来ないようだった。ただ荒く短い呼吸を繰り返すばかりである。

「僕のモノは君にあつらえたみたいにぴったりだろ」

「そっ……そんな……」

 香織がやっとの思いで反論した。処女の身でとうてい肯定などできるはずもない。

 ヒロシは子宮口に届くまで怒張を届かせると、ピタリと動きを止めた。

「ああっ! だ、出さないで!」

 射精されると勘違いした香織は髪を振り乱して絶叫した。

「まだ出さないよ。ほら、こうしているとよく分かるだろ。君には僕のモノがピッタリだって」

 御主人様の言うことは絶対に正しいという暗示を吹き込まれている香織は、ついに屈服した。

「は……はい。御主人様のモノは香織にぴったりです……」

「そうそう、やっと素直になったね。名刀には名刀用の鞘があるように、香織のここは僕を受け入れる運命にあったってわけだ」

「は……はい……運命です……」

「僕は香織の運命の男(ひと)っていうわけだね」

「はい……御主人様は……香織の運命の男です」

「じゃあ、腟内(なか)で出されても文句はないだろう?」

「そっ……それは!」

 ヒロシは再び注挿を開始した。

「いっ……いやっ……腟内はいやっ!」

 香織の悲鳴を聞き流しながら、ヒロシはピッチを上げていった。荒々しく腰を使い、処女膜の残滓をこそげ取るかのように怒張を往復させる。

 ヒロシが往復する度に香織は何度も短い悲鳴をあげた。一撃ごとに顎を上げ背中を反らすために、乳房が激しく前後に揺れる。

「いやっ! いやっ!」

「嫌なら逃げればいいじゃないか。ほら手を離すぞ」

 腰から手を離しても香織は逃げようとはしなかった。暗示でその場を動くなと命ぜられていた香織は、怒張をを呑み込んだままヒロシの卑猥なストロークに合わせて体を前後に揺らすばかりである。

「あっ……あっ……あっ」

「せっかく逃げるチャンスをあげたのに。逃げないということは腟内で射精(だ)してもいいってことだね」

「ち……違いますっ! いっ……いやっ!」

「嫌だと言っても射精させてもらうよ」

 ヒロシは再び香織の腰を両手で押さえると、以前に増して激しいストロークを加えていった。くびれた腰を抱き寄せながら深く怒張を押し進める。素早く腰を引き亀頭の笠で色鮮やかな花びらをめくりあげ、今度は強烈な圧力で突き進み、子宮口に亀頭をぶち当てる。

 ひと突きごとに香織は苦悶の悲鳴を洩らし、ヒロシの下で悶えのたうちまわった。

 心なしかさきほどより、怒張の滑りが良くなってきたような気がする。もだえ苦しむ香織が感じているはずはないので、破瓜の鮮血が愛液の代わりをしているのだろう。

 ひたすら獣のように処女肉を犯し蹂躙しているうちに、快楽中枢がピークの信号を発した。

「いくぞ!」

 ヒロシは香織の腰を支えていた指に力を込めると、思いきり怒張を柔肉の奧に突き入れた。

 子宮口をこじ開けるかのように亀頭を押しつけると同時に欲望を解放する。尿道の中を激しい快感と共に濁流のように駆け抜けた精液が、膣壁にぶちまかれた。

「ああっ!」

 男の情欲の迸りを体の奧に注ぎ込まれた香織は、顎を上げて絶叫しながら全身を硬直させた。

 狂ったように脈動する怒張が吐き出す精液は、いつ果てることなく迸り続けた。

 長い長い射精だった。体の奧底から精を集めてきたかのように、とめどもなく若い女の肉体に注ぎ込まれてゆく。

 総ての精の最後の一滴を注ぎきったヒロシは、やっと香織の肉壺から自分の一物を抜き出した。心地好い疲労感と満足感に満ちあふれた大きなため息をつき、シートの上に腰を下ろす。

 香織は心棒を抜かれた人形のように上体を突っ伏し、泣き崩れた。蹂躙されつくした花びらから、処女の鮮血と混じりあった汚濁のしたたりが溢れ出し、その艷やかな太腿に粘着質の糸を引いて垂れ落ちていった。

 ヒロシは身支度を整えるとジャケットから取り出したタバコをくわえた。火を点けて胸いっぱいに吸い込む。

 すすり泣く香織の背中を愛おしげに撫でてやりながら、煙を吐き出した。

「香織、なかなかよかったぞ」

 香織は肩を震わせて泣き続けた。か細いすすり泣きがやがて慟哭へと変わってゆく。

 その声に驚いた名も知れぬ野鳥が、桜の木々の間をどこかへ飛び抜けていった。野鳥の羽ばたきが散らした桜の花びらは渓流を渡る風に吹き上げられ、青空に千々と舞いあがった。

< つづく >

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