暗殺指令

グサッ!

 人間というものはなかなか死なない物だ!
 何回も何回も刀で斬りつけられても死なない時はなかなか死なない。
 でも逆に急所という物が身体のあちらこちらにあるのも事実。
 今私がこの男に刺した左胸も急所のひとつである。
 こんなちっぽけな短刀でも簡単に息の根を止める事が出来るのだ。

「分かっていると思うけどあと少し突き刺すだけでお前はこの世のものでは無くなるわ」

 今この男の五臓六腑は燃えるように熱くなり激痛が全身をくまなく走っている筈。
 普通の人間なら間違いなくその痛みに耐えきれず身体を動かし即屍となる。
 しかし流石は厳しい修行に耐えてきた者だ。
 こんな状況でも身動きひとつせず私を見据えている。

「そうか!貴様は、くのいちだったのか!」

 『くのいち』という言葉を聞いた事があるだろうか?
 ほとんどの人は知っていると思うが女の忍者の事である。
 『くノいち』の一字一字を組み合わせると『女』という字になる事からついたらしい。
 女忍者!それが私に課せられた宿命なのだ。

「な、なぜひと思いに殺さない」

 男から恐怖は微塵も感じられない。
 しかし何処までも悲しい目をしている。
 俗世を捨て私と同じくお館様に忠義を誓い共に影として働きそして裏切った男。
 どうしてこんなあばら家に戻る事に命を懸けたのだろうか?

「お館様は聞いておられました。なぜ命を捨てるのかと」

「それは・・・・・・・」

スゥーー

 突然私の後方にある薄汚れた障子が開き一人の老婆が顔を覗かした。

(しまった!この男に気を取られて気づかなかった)

 一生の不覚!私は背後をとられてしまったのだ。
 背後をとられる事はもちろん死を意味する。
 しかしどうも様子が変だ。
 この老婆は殺気が無いばかりか気配すら感じさせないのである。

「政吉!誰か来てるのかえ?」

 老婆は濁った目をさまよわしながらか細い声を上げた。
 どうやらその目に光が入る事は無いみたいだ。

「政吉?・・・・・・・・」

 老婆はもう一度だけ男の名を呼ぶとふすまを再び閉め隣の部屋へと消えていった。

「あのとおり母は目が見えぬ」

 男の瞳は一層悲しみに満ちている。

「それに病を患っていて長くはもたない」

 この男が俗世に戻ったのはこういう理由だったようだ。
 目にはすでに枯れた筈の涙が浮かんでいる。

「頼む!つぐないは必ずする。この命も惜しくはない。だが母の命が尽きるまでは待ってくれ」

 男の心の臓は生きる為により激しく鼓動を打っている。
 母の存在がこの男の生への執念となっているのだ。

「待てない」

ズブッ!

 一瞬にして男の瞳からは力が失われていく。
 もう笑う事も泣く事も母親を慕う事も出来ない。
 今私の目の前にあるのは只の屍なのだ。

「言い忘れてたわ!お館様から最後の命令よ!・・・・・『死をもってつぐなえ』」

 あばら家を出る時私はもう一度男の屍を見た。
 俗世は捨てた筈!私達にとってはお館様が絶対の存在である筈!
 仮にお館様が生みの親を殺せと命じられたら何のためらいもなく実行する。
 それが我らの掟なのだ。

 もっとも任務は人により二手に分かれる事も事実である。
 私のように暗殺専門の者もいればこの男のように各藩の秘密を嗅ぎ回る密偵専門の者もいる。
 ただひとつ変わらないのはお館様への忠義だけである。

 里に戻った私を迎えるのもやはりお館様なのだ。

「かえで!よくぞ戻って来た」

 言葉とは裏腹にお館様の表情はいつも厳しい。

「はっ!ありがたきお言葉にございまする」

 私は深々と頭を下げた。
 その時お館様の右の手の平が閉じたり開いたりするのが見えのだ。
 これはお館様が何か考えている時の癖であった。

「どう考えてもお前しかいない・・・・・・」

 沈黙が続いた。
 その間もお館様は私の目を見つめ続けている。
 やがて意を決したかのようにゆっくりと口が開いた。

「お前は私の最高傑作じゃ!今のお前に消せない人間など居ない」

 手の動きが止まった。

「だからお前しか居ない。やつを消せるのはお前しか居ないのじゃ」

 いつもながらお館様の眼光は鋭く睨まれた者に断りを入れさせない迫力がある。

「次は誰を殺るのですか?」

 外様か?譜代か?それとも御三家なのか?

「美濃部狂八という素浪人だ」

 一瞬お館様の言葉が聞こえなかった。
 いや!聞こえなかったというよりは理解出来なかったという方が正解だろう。

「素浪人?」

「そうだ!素浪人だ」

 その美濃部狂八という素浪人にどういったいきさつがあり殺されるはめになったのかそんな事は私の知るところではない。
 しかし素浪人如きを殺るのに何故私が使われるのだろうか?

「それ程腕がたつのですか?」

「分からぬ!」

「何処の流派なのでしょうか?」

「おそらく何処にも属していない!ただ・・・・・・・・・」

「ただ?」

「かなり卑怯な手を使うらしい」

 結局のところ美濃部狂八については、ほとんど知る事は出来なかった。
 全てが謎に包まれている人物というわけだ。

「それにしても狂八って」

 親は自分の子にどういう意図があってそんなふざけた名前を付けたのだろう?
 どうやら今度の仕事は好奇心が半分程入りそうである。
 私は密偵方からの情報で早速狂八の居る上方に飛ぶ事にした。

「いらっしゃい!いらっしゃい!まいどおおきに」

 上方の町は江戸に負けぬ程賑やかである。
 きっとこの町の人々に元々ある資質がそうさせるのだろう。
 狂八はこの賑やかな町から少しそれた雑草の茂る河原に立っていた。
 彼の周りには三人の屈強な男が居る。
 どうやら穏やかな雰囲気では無さそうだ。

「きさま!大久保一家を敵に回しやがって」

 大久保一家と言えばたしか上方でも1,2を争うやくざと聞いた事がある。
 その大久保一家がなぜ狂八といざこざをおこしているのだろうか?

「回したつもりは無いんだけど・・・・・・・なんなら今から友達になる?」

 狂八への第一印象は『凄く軽薄そうな男』である。
 どう考えても強いとは考えられない。

「ふざけるな!親分の仇、・・・・・・覚悟しやがれ」

 正直なところ驚いた。
 どうやらあの男は大久保の首領を殺害したらしい。
 私が出るまでもなくあの男の命は長くはもたないようだ。

「でも三人とはえらく少なくない?」

「うるさい!てめえが組をぐちゃぐちゃにしやがったのを憶えてないのか?」

「うん」

 ひょっとしてあいつは凄い馬鹿なのだろうか?
 私には彼の態度は余裕とは感じられない。
 只の命知らずにしか見えないのである。

「ふざけやがって!刀を抜きやがれ」

 一番背の高い男が凄みを効かしている。
 彼はいったいどうでるのだろうか?

「馬鹿を言うな!こんなところで大事な刀を抜くわけにはいかないだろ」

 最低だ!はっきり言って最低である。
 こんな場面で狂八は股間を押さえながら最低な事を言っているのだ。
 どうやら彼には品格などと言う物は全く無縁らしい。

「あほ!誰がてめえの一物を出せって言った」

 お前だと言わんばかりに狂八は表情を変えず男を指さしている。
 よっぽどの命知らずだろうか?

「てめえの腰に差しているもんだよ!早くそれを抜いて勝負しやがれ」

 男の目は怒りに満ちている。
 しかし狂八は脇差しの柄の部分を眺めるだけでいっこうに抜こうとしない。
 ここにきて怖じ気づいたのだろうか?

「早く抜ききやがれ!」

 残りの二人も刀を抜き狂八に向けている。
 おそらく柄を握った時が狂八の最後になるのだろう!
 しかし次に狂八の口から出てきた言葉は思いもよらぬものだった。

「いやだ!」

「な、なんだと!」

「この前もお前達みたいにしつこく言うやつらが居たんで仕方なく抜いたら刃が指に当たって切れちゃったんだぞ」

 この男は何処までが本気だろうか?
 まさか刀の使い方ひとつ分からないとは思わないが。

「本当に痛いんだからな!もう絶対抜かない」

 狂八はあくまでだだをこねている。
 ただ他の三人を見ていると刀を抜こうが抜くまいが殺す事を進める決心がついたようで一歩一歩間合いをつめだした。
 それにしてもあの余裕はいったい何処から来るのだろうか?

「あっ!?」

 突然の狂八の大声に間合いをつめていた三人が一斉に大きく後ろに下がった。

「な、なんだ!急に大きな声を出しやがって」

「悪い!悪い!一つ言い忘れていた事があったもんで」

 狂八は右手を立て軽く謝罪した。
 全く緊張感の無い男とはこのような男の事を言うのだろう。

「いったい何なんだ?」

「大事な事だからよく聞いてほしんだけど、こんな事はあり得ないとかここがおかしいなんて苦情は一切聞かないからね」

 あの男もたまには良い事を言うみたいだ。
 苦情に傾ける耳など持ち合わせていないのだ。

(そのとおりよ!ええ!一切聞かないわ。)

「何をわけの分からない事を!夢おちじゃすまされないぞ!」

 男は素手の狂八目掛け一斉に斬りかかってきた。
 しかし刀は狂八をとらえる事が出来ず虚しく空を斬るだけだった。
 狂八の身体は既に間合いの外にあったのだ。
 いやこの場合逃げ出したと言う方が正しいだろうか。

「助けて~人殺し~」

 狂八は頭を抱えるといったなさけない格好をしながら逃げている。

「ま、待ちやがれ!卑怯者!」

 顔を真っ赤にしながら追いかける三人組と『いやだ!待たない』などとわめきながら逃げまどう狂八。
 こんな情けない決闘は正直初めてである。

ドテッ!ドテッ!ドテッ!

 次の瞬間狂八を追いかけてた三人は一斉に倒れだした。

「やった!やった!三人もかかった」

 三人の足元にはしっかり結ばれた草と草があった。
 子供がよくやる遊びのようだがどうやら三人はそれに引っかかったようだ。
 それにしても狂八は決闘をなんだと思っているのだろうか。

「もう許さねえ!」

 男達が起きあがり再び走りだした次の瞬間私は信じ難い光景を目にした。

グサッ!

「あ、あほ!狂八はあっちや!」

 これが三人組の一人の最後の言葉である。 
 なんと先頭を走っていた男の背中を残りの二人が斬りつけたのだった。
 二人はお互い顔を見合わした。

「な、何をやってんだ!お前は?」

「お前こそ」

グサッ!グサッ!

 今度は残る二人が互いに胸を突き刺した。

「ほんなあほな~」

バタッ!バタッ!

 上方が理解出来ないのだろうか、それとも狂八が理解出来ないのだろうか、いずれにしても今まで私が目にした事がない光景だ。
 結局狂八は生き残り三人はこの雑草が生い茂る河原で屍となりはてたのである。
 狂八は何喰わぬ顔で立ち小便なんかをしている。

「おい!そんなところに隠れてないで出て来いよ」

 放尿し続けたまま狂八は大声で叫んだ。
 私はおもわず懐の短刀を握りしめた。
 それにしても完全に気配は消している筈なのになぜ分かったのだろう?
 早さを増した私の鼓動が動揺を表している。

 しかしどうも様子が変なのだ!
 狂八はこちらとは逆の方向を向いて『出て来いよ~』と間延びした口調で言っている。

ガサガサガサ

 やがて雑草から娘が一人出てきた。

「うひょ~!やっぱり弥生ちゃん可愛いね~!お父さんに似なくて本当に良かったね」

 どうやらあの弥生という娘は大久保の娘らしい。
 どうしても父親を殺した人間が倒されるのを見たくてこんな血生臭い所に来たのだろう。

「うるさい!おとっつあんやみんなの仇!」

 娘は震える手で短刀を握りしめている。

「おいおい!今のを見てなかったのか?かかって来たのもこいつらなら勝手に斬り合いしたのもこいつらだぞ!しかも三人がかりで・・・・・」

 言われてみればたしかにそうだがこの男の醸し出す軽薄な雰囲気が全ての言葉を否定している。

「黙れ!覚悟!」

 娘はそう叫ぶと短刀を狂八に向けたが一向に足が出ない。

(あの娘、おじけついているの?)

 その時またもや私は信じ難い光景を目のあたりにした。

「あっ!・・・・・あっ!・・・・・あっ!・・・・・・あんっ!あんっ!あんっ!」

 身動きひとつしない娘から甘い吐息が流れてきたのだ。
 女の私だから分かる。・・・・・あれは欲情しているのだ。

「どうしたの弥生ちゃん?気分でも悪いの?」

 狂八は口元をいやらしく歪め憎たらしいまでの余裕を見せている。

「い、いったい私に何をしたの?・・・・・はぁはぁ」

 耐えきれなくなった娘はこともあろうか自分の手で胸や秘部をいじくり始めた。
 狂八はそれを見てにやにやと笑うばかりである。

「は~ん!もう駄目」

 娘はとうとう河原で着物を脱ぎ始めた。
 帯をほどくのがもどかしそうだ。

「う~ん!弥生ちゃん凄く綺麗だね!刀を抜くのは恥ずかしくて嫌だと言ってたけど弥生ちゃんに負けて思わず抜いちゃったよ!恥ずかしいな~」

 本当に品のない男である。
 狂八は一物をぶらぶらさせながらおおいに、はしゃいでいるのである。
 それにしても三体の屍の側で全裸の男女!
 どう考えても異常としか言いようのない光景である。

「あぁん!天国のおとっつあん見てる!狂八は耐えきれず抜きました!弥生は勝ちましたよ!・・・・・あぁぁん!入れて~」

 あの娘も何を言ってるのだろうか?
 いったいこの町(上方)の人の頭はどうなっているんだろうか?

「くそ!入れたくないのに入れてしまう。弥生ちゃんには手も足も出ないのか!」

ズボッ!ギシギシギシギシギシギシギシギシギシ

「はぁぁぁぁぁん!おとっつあん!みんな!仇は打ちましたよ!あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・・」

 それから二人はどれほどはてただろう。
 河原では男女の営みが幾度も行われていた。

「あ~堪能した!弥生ちゃんには完全に負けたな!・・・・・・・・ではついておいで」

 娘は『仇は打ちました』とつぶやきながら満面の笑みで狂八の後をついていった。
 狂八達が向かったのは遊郭だった。
 ちょうど江戸で言うところの吉原で娘達が男相手に春を売る所である。

「まいど!いつもおおきに」

 狂八は店の主人から大枚の小判を受け取ると大喜びでその場を去っていった。
 今売られたばかりの弥生がその後ろ姿を見ながら『尻尾を巻いて逃げていくわ』などと言っている。

 それにしても狂八には本当に呆れたものだ。
 今日私が見ただけでも十二人もの人間が襲いかかってきている。
 三人もの娘が遊郭に売り飛ばされ残りの男は全て不可解な死を遂げた。
 念操力などと言っていたが『あやかしの術』の一種と思われる。
 いずれにせよ私の相手ではない。
 狂八が好き勝手出来るのもあと僅かである。

「もうかりまっか!」

 上方の朝は早い。
 商人達は今日も金儲けの為少しでも早く店を開けるので朝から活気に満ち溢れているのだ。
 そこではぼりぼりと右顎の辺りを掻いている狂八の姿はあまりにも不釣り合いである。

(後はやつを何処で殺るかだわ)

 狂八の事は昨日でだいたい分かった。
 正面から行けばあの異常に早い逃げ足を使われるか卑怯な罠におちるだけ。
 やはりいつものように闇に葬りさるのが一番なのだ。

「んっ?」

 急に狂八が振り返り不覚にも目があってしまった。

(あっ!・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・しまった!ばれたのか)

 度重なる失態だが私は狂八と目があった時動揺のあまり頭が真っ白になってしまった。
 いぜん右顎を掻きながら狂八がこちらに近づいてくる。

(狂八がこっちに来る!どうすればいいの?)

 その時私の頭に名案が浮かんだ。

クチュ!クチュ!クチュ!

「んんっ!あうん!」

 狂八の目をくらます為の自慰行為!
 これを見破れるわけはない。

「おかしいな?この辺りで視線感じたんだけどな?」

 狂八は首を傾げている。

(まさかこんな朝早く目の前で自慰を始めだした女が自分を殺しに来た女だとは思わないでしょ)

「不審な者は居ないな!背筋が凍るような感覚があったんだけど」

 どうやら私とした事が殺気を悟られてたみたいだ。
 この男意外に鋭い所があるらしい。

「あふぅぅん!気持ち良い!かえでのあそこくちゅくちゅ鳴ってる」

(本当に気持ち良いわ!思わず没頭しそう!)

 でも私の目的は狂八を殺る事なのだ。
 この懐の短刀が狂八を突き刺すのはもう間もなくである。

「へえ!俺の命狙われているんだ。・・・・まっ!いつもの事だけどね」

 彼は何か独り言を言うと再び歩きだした。
 どうやら完全に私の存在が分からなかったみたいだ。
 その隙に私は高速に秘部に入っている指を動かしのぼり詰めた。

「はうっぅぅぅぅぅ!」

びくびくびくびくびくびくびくびくびくびくびくびく!

(あぁ!凄く気持ち良かったわ!)

 まだ私のあそこはひくひくしている。
 それにしてもなぜこんなに人が集まっているのだろうか?
 朝から何かあったと言うのだろうか。

「あっ!」

 自慰に没頭していた私は思わず狂八を見失ってしまった。
 辺りを探してみたがどうしても狂八は見つからない。
 朝からなんたる失態だろうか。
 それから狂八を探し回ったが上方はやはり広い。
 とうとう日は沈みかけてきた。

「もう夕方ね!このままじゃ寸止めだわ」

 賑やかな人混みの中私の周りだけ音が消えたようである。

「お姉さん!何を悩んでいるのでぅ?」

 途方に暮れていた私に声をかけてきたのは20歳ぐらいの若侍だった。

「あなたは?」

「みゃふと言う猫でぅ」

「ね、猫ちゃん・・・・・」

 そう言われれば見えなくもない。

「そうでぅ」

 私はおもいきってこの猫侍に聞いてみる事にした。

「実は狂八という侍を捜しているのだけど猫ちゃん知らない?」

「狂八なら大野屋という旅籠で見かけたでぅ」

 なんという偶然だろうか!
 この猫侍は狂八の居所を知っていたのだ。

「ありがとう猫ちゃん!恩に着るわ」

「いいでよ!では、みゃふは次の悪代官を倒しに行くでぅ!」

 猫侍は頭を下げると『世直しでぅ』などと叫びながら去っていった。

 ともかく地獄に仏とはこの事を言うのだろう。
 私はすぐに大野屋に向かった。
 大野屋はこの辺りの旅籠の中では決して立派な方では無かったが旅籠代が安いらしくそれなりに繁盛していた。

「あれは狂八!」

 狂八はその旅籠の二階から障子を全開にし外を眺めていたのですぐに見つける事が出来た。
 私は再び懐の短刀を握りしめた。

「・・・・・・・・・・・・・んっ?!」

 いったい私に何があったのだろうか。
 短刀を握りしめ狂八が居る2階を見上げたところまでは憶えている。
 なぜかその時頭の中が真っ白になり気がつくと先程とは全然違う場所に自分は立っているのだ。

「ここは?・・・・・・・・・・・・」

 おもわず右手で口をふさいだ。
 なんと横にはまだ外をぼんやり眺めている狂八がいるではないか。

(ふふ!狂八はまったく私に気づいていないようね)

 この機会を逃す手は無い。
 私は狂八の首に右手をまわすと熱い口づけを始めた。

「んん!ん!ん!ん!」

 狂八の舌が私の口の中に入ってくる。
 あぁ!もっともっと吸い尽くしたい。
 やがて彼の指は私の身体の上でやらしく曲線を描きながら少しづつ下半身へと伸びている。

(あんっ!私の思うつぼだわ。狂八はきっと今自分が何をしているのか混乱して分からない筈よ)

くちゅくちゅくちゅくちゅ!

「んっんっんっんっんん~」

 彼の指は私の秘部にしっかり飲み込まれている。
 逃げようとして必死に動かしているようだがもはやどうする事も出来ないだろう。

「あぁ!びっくりした。下は洪水状態になっていたのか」

 どうやら彼は私の下半身がすけべ汁でぬるぬるになっていたのを驚いているようだ。
 私は短刀を放り投げ着物を脱ぎ始めた。

「あぁぁん!もうたまんない」

 私は力の限り狂八の頭を胸の辺りで抱きしめてやった。

ぺろ!ぺろ!ちゅぱっ!ちゅぱっ!

 脳天までとろけそうである。
 この体勢になるとどうやら胸を嘗めたり噛んだりするしか無いようだ。

「はぁん!良い!良い!良いよ~」

 そう言えば私は男が大好きでおちんちんには目がないのである。
 狂八が私の乳首に歯をたてたちょうどその時思いっ切り足を正反対の方向に広げ彼を誘ったのである。

「うぅ!引き寄せられる。いったいどうしてだろう?」

 彼は叫びながらなんとか抵抗しようとしたらしいけれど結局は間抜けにも裸になり私の秘部にちんちんを突き刺した。

ぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎし!

 狂八は一心不乱に腰を動かしちんちんを上下に動かしている。
 なんと情けない姿だろう。

「あぁん!凄い!凄いわ!手足の先まで痺れちゃう」

 私は力の限り狂八のちんちんを締め付けた。

「あぁ!凄い!凄く締まっているよ」

 やはり狂八は私の相手では無かったようである。
 このまま私の身体の中にいっぱい白濁を出すのは時間の問題である。

「いくぅ!いくぅ!いくぅ!もう駄目!いっぱい!いっぱい!私の中で出して!」

どびゅー!どくどくどくどくどく!

「あっ!あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 あのあと狂八と何度やっただろうか?
 その度に狂八は白濁を私の身体の中や口、そして顔などに目掛けて発射した。
 私は幾度も勝利の美酒に酔いしれた。

 早いもので狂八を撃破してからすでに一週間が過ぎた。
 今日も私はお館様の命令を待っている。

「お前達いつまで飯を食っているんや!はよ働きなはれ!」

 私にとってお館様の命令は絶対だ。
 今では自然に股間を濡らす事が出来るようになった。
 疼きは止まらない。

「そこのお兄さん!あたしと遊んで行きなよ」

< 終 >

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