「全ての人に惜しみない愛を。私達が一切の見返りを求めずに愛を与え続ければ、それは私達自身を豊かにして自然に私達の生活は満ち足りたものへと変わっていくのです」
壇上の上でマイクを手にした一人の男が熱心にスピーチをしている。
その内容こそ美里にとっては現実から目を背けた甘い理想論で歯が浮きそうになったが、何故か自分の周りの人間は180度違った印象を受けているようで皆熱心に耳を傾けていた。
そんな彼らの熱い眼差しを受ける彼こそは、今爆発的なスピードで信者を増やし日本を騒がせている宗教集団”仁愛教”の始祖たる”武内心英”その人だった。
もちろん本名のまま教祖の名など語る筈も無く、調べた所彼の本名を藤原義輝ということが分かった。
出身地は北海道の、それもかなり寂れた村の出で、彼が村を出てから教祖と呼ばれる存在になるまでの経緯は生憎ながら不明だった。
だが仁愛教は不思議な魅力で老若男女問わず信者に引き込み、日に日にその力を強めるまでになっていた。
仁愛教がただの思想をかざしただけの宗教組織であるならば公安の私達が動く必要も無いのだけど、どうも仁愛教にはどこからともなくあちこちから黒い噂が囁かれている。
裏社会との繋がり、薬を使っての洗脳的な強制勧誘。
そして信者からの金の巻上げ、諸外国への危険物の取引。
物騒な話には違いなかったが、それらはあくまで噂にしか過ぎないし、力を付けていく様子を妬んだり又は面白がった人が流したデマも多少なりとも含まれているだろう。良くある事だ。
だが世の中には火の無いところに煙は立たないという言葉もある。
上層部の方も仁愛教には何か裏があると感じたのだろう。
仁愛教は捜査の必要ありと認識され、いつもの如く指令を受けた私達が秘密裏に潜入捜査を行う事になったのだ。
「~以上、今日の言葉を終わります。皆様の心に如何なる時も愛が満ち溢れている事を深くお祈りします」
スピーチを終え、心栄が深々と頭を垂れると同時に広い会場の所々から溢れんばかりの拍手が沸きあがる。
私もなるべく怪しまれないように満面の笑顔を浮かべ、周りと同じように盛大な拍手を送る。
・・・心の底ではここにいる人間達を思う存分に馬鹿にしながら。
「でさ、美里お姉ちゃんはどう思う?」
夜になり、教団内に用意された私の部屋の椅子に逆向きに腰掛けた雫が、身を乗り出すようにして私に尋ねた。
雫は私と同じく仁愛教に進入した捜査官仲間ではあるが、私とは違い非常に幼い顔立ちをしていため、今回は身分を学生を偽って入り込んでいる。
私と雫は別々の部屋なのだが、彼女は私と”偶然”仲良くなり、姉として慕って部屋を訪れる名目を作り出すことで周囲の目を誤魔化しながら度々私の部屋に上がりこんでいた。
元々、彼女が仁愛教に入ったのは他人とのコミュニケーションが取れず人間不信になりかけていた、という理由なので”姉”に依存する傾向を見せてもおかしくはなく、私と一緒にいることには誰も疑いの目を向けようとはしなかった。
「あのさ、二人でいる時はそのお姉ちゃんっていうの止めてくれない?」
「へへ。最近はそうでも無いけど、最初は人前でも嫌そうな素振り見せてたもんねぇ」
雫は真っ白な歯を見せて、意地悪そうにしししと笑う。
その仕草がやけにムカついたので、すかさず履いていたスリッパを雫の顔にぶつけてやった。
「ぎゃんっ」
「そういう態度を見せるから子供子供ってからかわれるのよ」
「痛たたた。何よぅ美里は大人ぶった態度ばっか見せるから固いとか年増とか言われて損するんじゃない・・・・・・私と同い年の癖に」
「ぐ・・・」
痛いところを突かれ、私は言葉を返すより先に押し黙ってしまう。
そう、雫の言葉通り外見容姿共に違う世代を感じさせる私達でも、実は同じ年齢だったりする。
私はどちらかと言うと実際の歳よりも高く言われる事が多い、女性としては損な顔つきをしているため、雫と休日に街を歩いていた日には”歳の離れた”姉妹に見られることも多々ある始末。
だけど雫が着る服だってずるい。若い子が着る服がぴったりと似合ってしまうので本人も恥ずかしげもなく堂々と可愛い服を身に付けている。
そんなのと隣り合わせになっていたら大概の人は実際より年上に見られても仕方が無い。だから私は被害者なのだ、悪くないと心の中で自分を慰めた。
「あはは、ごめんごめん。そんなに落ち込まなくっていいって。美里は代わりにスタイルが抜群にいいし、固いって言うより本当はクールビューティーって言われてるんだから、さ」
「そんなの聞いた事無いわよ」
「皆面と向かっては照れくさくて言えないだけだって。なんなら私が言ってあげちゃうっ」
「嬉しくないからパス」
「そう。じゃ、言ってあげなーい」
そう言ってまたからかう様にししし、と意地の悪い笑い方をする雫。
だが会話が次に続かずに、それが馬鹿話の切れ目だと言う空気を読むとその笑顔をすぐに払拭して真剣な顔つきに変えた。
口にこそ出していなかったけれど、私は雫のどんなにおちゃらけていても次の瞬間には態度を切り替えられる所が密かに気に入っていた。
「さて、と。本題に入りましょうか」
「ええ。怪しい所は見つかったか、ね」
「・・・美里の方はどんな感じ?」
「この一ヶ月間、私なりにかなり深い所まで探りを入れたつもりだけど・・・はっきりとした証拠は全く見つからないわ。雫はどう?」
「私も同じ感じ。打ち解けて話をするようになった演技をして結構な人数に聞き込みしてみたけど・・・お手上げ状態ね」
「じゃあ・・・シロだと思う?」
「まっさか。限りなく黒に近いグレーよ」
「うん、私も同意見。信者ののめり込みっぷり、特に心英に向ける態度は正気のものとは思えないもの」
「じゃあ・・・・・・いっそ私と美里の役割を交代してみる?」
「それは駄目よ。私がいきなり他人に接触しだしたら怪しまれるわ」
雫と私はお互いの足りない所をカバーできるためにコンビを組まされて捜査に当たることが多かった。
足りない所、と言っても雫の能力は私と負けず劣らずで見た目からは想像できないけれど立派に実力派に分類される捜査官である。
私とペアを組んだ時は今回同様、基本的には雫が聞き込みに回るが童顔であるために聞き込みの際に相手に不信感を与えてしまうケースも少なくなく、そういう時は私が聞き込みに雫が進入捜査へと立ち位置を逆転させる。
提案は断った理由は、ここに忍び込む時に私の身分については怪しまれないだけの理由付けで偽装はしていたものの、信者達とはあまり会話をしようとしてこなかったから。
あとは・・・私自身の手で確かな証拠を掴みたいと言う負けず嫌いな性分もあると思う。
「まぁいいけど。じゃあ当面の間はこのまま調査を続けるって事で」
「分かったわ。あんまり無茶はしないようにね」
「それはお互い様。・・・・・・じゃあ、そろそろ消灯の時間だから行くわ」
「うん、私は皆が寝静まってからまた動き出すから。おやすみ、雫」
「おやすみ、美里」
雫はまた笑顔を浮かべると椅子から降りて、足早にドアの前へと歩き出した。
ドアノブを捻り扉を開けて廊下へ出る、その直前に振り返った雫は今までに見せた事が無い不安そうな表情であんまり無理しないでね、と言葉を残していった。
―――ああ、何だ。
雫が役割を交代しようと言い出したのはけっして捜査が進んでいないからじゃない。単にパートナーの私の身を案じてからだったんだ。
それを、ただの負けず嫌いで突っ撥ねてしまった事に気付いて、胸の内になんだか分からない黒いもやもやしたものが生まれた。
せめてありがとうの一言でも言ってあげられたら良かったのに・・・。
「・・・雫」
心の中で最愛のパートナーにありがとう、と呟いて私はベッドに倒れこんだ。
黒いもやもやは消えなかったけれど不思議と悪い気分ではなかった。
私達が仁愛教に潜入してからまもなく二ヶ月目を迎えようとしていた。
あれからも捜査を続けていたにも拘らず、依然として満足の行く結果は出てこない。
それも今回はとにかく少人数での捜査という事もあり、慎重に慎重を重ねた行動を取っているためとも言い訳できるが、ここまで捜査が進まないのは初めてだった。
自然に胸の内には焦りの感情が見え始めている。
「全ての人に惜しみない愛を。私達が一切の見返りを求めずに愛を与え続ければ、それは私達自身を豊かにして自然に私達の生活は満ち足りたものへと変わっていくのです」
マイクに拾われた声が広い部屋の中に響き渡る。
二ヶ月の間毎日聞かされてきた定番の締め文句だ。
門前の坊主なんとやら、ここからなら私も空で言える位に覚えきってしまった。
試しにと心の中で続く言葉を呟いてみると、見事にぴったりと教祖サマと重なってしまい、なんだか悲しく虚しくなりすぐに止める。
雫の方は、と姿勢を崩さずにちらりと横目で様子を伺った。
すると目に入ったのは心英の言葉に熱心に耳を傾けながらうっすらと涙を浮かべた、驚くべき光景だった。
何かを押し殺したように口を塞ぎ、服の袖で目の淵に溜まった涙を拭い捨てる雫。
私はぎょっとして目を見開いた。
これではまるで、他の信者達と同じ―――。
・・・ああ、違う。ただの欠伸だ。
私の視線に気が付いた雫はアイコンタクトで、眠そうに目をしぱしぱ瞬かせた。
ここしばらくの睡眠不足も相まって雫のその気持ちは良く分かったが、お願いだから紛らわしい行動は止めて欲しい。
表には出さず、心の中で苦笑して私はまた武内の方へ視線を移した。
その時不意に頭の片隅で何か引っかかるものを感じたが、大音量のスピーチに思考を邪魔された事もあり結局それは何か分からなかった。
「隠し扉や仕掛けは・・・」
暗闇に包まれた部屋の中で私は音をなるべく出さないようにしながら、自分の目を頼りに壁や床を至る所まで慎重に手を伸ばしていく。
こういう時にこそ暗視ゴーグルが役に立つというものだが、敷地内に立ち入る時には必ず荷物を検閲に通さなければならずそんなものは持ち込めない。
人を疑っておいて、惜しみの無い愛なんてどの口が言うのだろう。
ああ、それにしても。
ただでさえ多い部屋を一つ一つ調べるには時間がかかるのに、次々に増設していかれるものだから堪ったものじゃない。
今潜り込んでいるこの立ち入り禁止エリアも私が調べつくす前にまた重要な証拠が別の館に移されてしまうかもしれないし。
「なら・・・その前に証拠を見つけるまで・・・ね」
私は小さく嘆息し、奥の壁に手を伸ばす。
その瞬間。
「・・・・・・・・・っ!?」
突如背後に現れた人の気配に冷水を浴びせられたように私の体から血の気が引いていく。
―――最悪。
まさか見張りもいる立ち入り禁止エリアに入り込んでいて”迷いました”じゃ済まされないだろうし、それ故に細心の注意を払っていたはずなのに、まんまと接近を許してしまうなんて。
最良の手段としては顔を見られないようにしながら暗闇に紛れて逃げ出す事だけど、この一件は必然的に組織の警戒を高める結果になるだろう。
あまりの悔しさに歯軋り一つし、私は頭の中のスイッチを切り替える。
悔しがる事はいつだって出来る。
今はまず、振り向きざまに相手を組み伏せる。それだけを考えよう。
そして仲間に知らされるよりも早く行動不能に陥らせる。
心を鎮めて・・・3、2、1・・・GO!!
「はい、残念でした~。敵じゃないよん☆」
「・・・・・・・・・っ!?」
「びびり過ぎだって美里」
「・・・・・・し、しずくぅぅ?」
臨戦態勢を取り、今まさに襲い掛かろうとした私の耳に入ったのは場違いとも思えるほど間の抜けた、馴染み深い声だった。
それが私にとってあまりにも意外だったために、行き場を無くした緊張感が一気に体の外へ抜けて、私の声も思わず上擦った情けないものになってしまう。
「ししし、びっくりした?」
「びっくりした? じゃないわよ。雫だなんて思うはずも無いでしょう。第一、あんたは聞き込み係じゃないのよ、こんな場所にいる事自体がおかしいでしょうが」
「いやぁ、私だって聞き込みばっかじゃなんだし。たまには体を動かさないとね」
そう言いながら雫は頭の後ろで腕を組む。
明かりが無いので雫の表情こそ見えなかったが、私の弱みをまた一つ掴んだ事で勝ち誇ったような意地の悪い笑みが浮かべられているだろうとは簡単に予測できた。
「私が気配を感じないなんておかしいと思ったのよ」
「ま、私も捜査のプロですから。気配を殺す事なら美里にも負けないよん」
「・・・もぉぉ、本当にびっくりしたのよ。心臓が止まるかとも思ったわよ」
「えへへへ、ごめんごめん。ちょっとした悪戯心だから許して・・・ね?」
「・・・ここを出たら散々奢って貰うからね」
「ん、そんな事でいいならOKOK。・・・・・・んで、調子はどうよ?」
「何にも出てこないわ」
私は先ほど調べようとした場所に手を伸ばし、首を振った。
「これからまだ他の場所を調べるの?」
「ええ、そのつもりだけど」
「そう、じゃあ私も一緒に探してあげちゃうっ」
場にそぐわない雫の明るい声を聞き、私は苦笑した。
本当は私一人でやりたいところだけど、ここは頼れる相棒に素直に甘えておこう。
もしかしたら、逆にこっちが奢らなきゃならなくなるような発見をしてくれるかもしれないしね。
と、雫の参戦を喜んだのはいいが、どうも何かが引っかかる。
何かを見落としているような、頭の奥底で確かな警告音が出ているにも拘らずそれが何に対してなのかが分からない。
「美里、行くよ?」
「あ、うん。分かってる・・・」
ぼんやりとした返事を返し、雫に続いて部屋を出る。
思いがけない雫の参戦に少々調子を乱されたけれど今夜はまだ捜査を行う時間は残されている。
雫も協力してくれるというので思ったよりも捗るかも知れないし。
「ちょっと、歩くの早すぎるって。あんまり焦っちゃ駄目だよ?」
長い廊下を音もなく歩いていると後ろで雫に呼び止められ、私はいつの間にか先行していた雫を追い抜いてしまった事に気付いた。
不思議な事に、自分が知らないうちに足早になっている事に我ながら驚きを見せる。
まるで、ここにいてはいけないように、すぐにこの場から逃げ出さなければいけないように。
「・・・・・・逃げる? 一体、何・・・から?」
冷静に考えろ。
呟いて私はあ、と小さな声を漏らした。
分かった。引っ掛かりが何なのか。
私は立ち止まり、振り返る。
そして、身に迫る危険に対して言葉を発しようとした。
が。
「くすくす。当然、私から・・・でしょ?」
振り返った先ではいつの間にか距離を詰めた雫が見たことも無い無機質な笑みを浮かべていて、それに気付いた時、目に真っ白な閃光が奔った。
一撃で行動不能に陥らせるために電圧を高めたスタンガンが無残にも私の腹部に突き刺さっていた。
「ごめんねぇ、美里。これも教祖様のためだから・・・許して、ね」
崩れ落ちる私の体を支えるように抱きしめた雫。
その身体は変わらずに温かく、だけど雫は最後の意識を断つために別人のような台詞を口にしながら手にしたスタンガンを私の背中に押し付けた。
その時私の目から零れ落ちた涙は痛みのせいだろうか。
それとも。
初めに疑問を感じたのは、集会で心英の演説を聞く雫の目に浮かんだ涙を見た時だった。
正確には雫が涙を見せた事に疑問を抱いたのではなく”紛らわしい事をしないで欲しい”と感じた自分の考えだった。
もし雫を信じていたのならばそんな考えは浮かぶはずもなく、その時には私はもうすでに雫の変調を頭のどこかで感じていたのだ。
そして決定打となったのは聞き込み係と決めた雫が自分の意思でルールを破った事。
冷静に考えてみれば、非常時ならばともかく体を動かしたいからと言う理由で勝手に担当を変える事は許されない行為だ。
だが、美里は雫が仁愛教の手先となっていた事を心の底から否定したかったし、その思いゆえに裏切りに気付く事が出来なかった。
自分にしか気付けない事だった。自分が気付いてあげていたら雫は・・・。
肝心な時に大切な事に気付けない自分を心底恨み、美里は意識の底で大切な相棒の名を呼んだ。
「呼んだ? 美里?」
聞き覚えのある声がすぐ近くで聞こえる。
これは・・・雫?
「・・・く・・・ぅ・・・ぅぅ」
体の痛みに呻き声を漏らしながら重い目蓋を開く。
目を開くとすぐに白い光が飛び込んできた。天井の明かりだ。
私はどこかの台の上に寝て・・・手足を拘束されている!?
「おはようございます。よく眠れましたか?」
男の声が耳に入った。聞いたことのある声だ。
頭の中が霞がかっていたせいで判断が遅れた。
これは、武内心英の声だ。
やっぱり、私達の考えは間違っていなかった。
もし、間違っていたものがあるとするなら私が私の心に素直に従わなかった事だろう。
はっきりと開いた目が心英の姿を視認した。
相も変わらず人当たりの良さそうな笑みを浮かべて目が合うと私に一つ会釈した。
「ボスのお出まし・・・ってわけ?」
連日の無理と雫の裏切りに肉体、精神とも弱りきってしまっている事を悟られないように私は心英を鋭く睨みつけながら、開口一番わざと憎まれ口を叩いた。
だが武内はそんな私の言葉を笑殺すると、見せ付けるように手元に雫の身体を引き寄せた。
雫は普段着を脱ぎ捨て、真っ白な教団の服に身を包み、武内に身体を触られる事に別段嫌がった素振りも見せずに頬をほんのり桜色に染めて武内の胸に大人しく身体を預けた。
「・・・何やってるのよ雫。いつものようにそいつに裏拳の一つでもかましてやりなさいよ」
すがるように声を出した私を雫が一笑する。
予想していた事だけど、親友の変貌振りをいざ目の当りにすると覚悟していた以上に心が痛んだ。
「・・・どうしてそんな酷いこと言うの?」
「どうしてって・・・その男は私達の敵でしょうっ!?」
「敵・・・教祖様が? ・・・・・・・・・く・・・・・・ふふ・・・ふふ、ふ・・・あははははははははははっ」
「し、雫?」
「あのねぇ、美里。そんなことあるわけ無いでしょう。教祖様の言う通りにしていれば幸せになれるのよ。教祖様は私達を導いてくれる最高の存在なの」
「なっ!?」
正気とは思えない言葉を、濁った目をしながら口にする雫を見て驚愕した。
武内を褒め称える中、胸を弄ばれていても全くの抵抗もなく、むしろ色に溺れた様に胸を押し付ける雫はまるで別人のようだった。
「雫に何をしたの・・・?」
「私の開発した自慢の機械を使っての”教育”ですよ」
「教育・・・ですって?」
「ええ。精神をリラックスさせ、高揚させるあのお薬を打ってから秘密のカプセルに入っていただきました・・・貴女が今入っている、ね」
「はぁ? まさかこれが洗脳装置とでも言うわけ?」
「ええ。よく分かりましたね」
「んで、特撮で出るヘルメットみたいなのを被って~ってヤツ?」
「ええ」
「・・・・・・・・・・・・」
武内を馬鹿にして言ったつもりが存外に軽く肯定されたため、こっちが思わず言葉に詰まってしまう。
はっ。冗談じゃない。
本当にそんな洗脳装置なんかあったら完全犯罪なんかすぐに成立してしまう。
心英の言う教育とは大方、被暗示性の強い精神高揚剤又は麻薬を利用した催眠暗示のようなものに違いない。
そういうことをどこかの国がやっているって話も聞いたことがあるし、ここを外部から切り離しているのも閉鎖空間を作り出して精神を疲労させ、望んだ暗示をかけやすくするためだろう。
と、なれば武内はきっと心理的なやり取りに精通した人間だ。
洗脳装置というのは大げさな表現で強い印象を相手に植え付けるため。
カプセルは閉じ込めることで相手を動揺させ、ヘルメットのようなもので目隠しをさせ効果を倍増させる。
そこに薬で精神を高揚させられているものだから対象の人間の被暗示性は高まっており、あとは言葉を使い分けて思想を刷り込ませていく。
なるほど、そう考えると言葉通り立派な洗脳装置だ。
まぁ、私は普段から耐性をつけているから薬の類はどれも大した効果が出ないんだけどね。
そんな人間―――特に私のように疑いを持って忍び込んできたような―――を言葉巧みに操ろうとしてもそれは土台無理な話だ。
とりあえず洗脳された振りをして、隙を見て私だけ先に逃げ出す。
それで仲間を大勢連れてきて武内を逮捕。
雫には悪いけれど捕まるような・・・馬鹿は後でゆっくりと療養ということにしてもらおう。正気に戻った彼女ならきっとそれがベストだったといってくれるだろうし。
「で、私も雫と同じように操ろうってわけね」
「いいえ。貴女は捜し求めていた理想の女性ですから、他の信者達とは別に私の秘書として活躍していただこうと思います」
「あはは・・・・・・死んでも嫌よ」
「じゃあ、一度死んでもらいましょうか。何、すぐに生まれ変われますから」
ぞっとするほど不気味な笑みを浮かべると、武内は私の頭の上に手を伸ばした。
何かを取り出す感じはしたが、視界の都合上私の目には入らなかった。
ようやくそれがヘルメットらしきものだと認識した時にはすでにそれが私の視界を遮っていた。
「・・・・・・ぁ」
ヘルメットが自分の視界を遮った瞬間、最悪の状況で何度も命を救った第六感とも言えるものが美里の中を走り抜けた。
―――駄目だ、違う。
この機械は、ヤバイ。逃げろ。
「うわぁああああああああああああああああああっ」
体が凍りつくような悪寒を感じるや美里は大声を上げて、手足を乱暴に動かした。
今すぐに抜け出さないと、取り返しの付かない事になってしまう。
「離せ、離せ、離せぇぇぇぇぇえええええええっ」
クールと称された自分のイメージを払拭するほど騒ぎ立て、手首が真っ赤になるまで拘束具を引きちぎろうと無茶苦茶に揺するが頑丈な金属でできたそれはびくともしない。
いきなり騒ぎ始めた事、美里の勘の良さに武内は感嘆の息を漏らしたが、すぐに残酷な笑みを浮かべて美里を見送った。
「もう、手遅れですよ」
美里の無駄な抵抗を嘲笑しながらカプセルの蓋を手に、ゆっくりと降ろしていく。
そして獣のように吠え立てた美里の声は、最後の最後まで部屋中に響き渡り、プシュゥと炭酸が抜けるような音と共に完全に遮断される。
最後に雫の名前を呼んだ気がしたが、雫は動こうともせずにただ冷静に美里が機械に飲み込まれる姿を見送っていた。
「頭は良いが・・・自分の知っている事を全てとする節があるようですね」
誰に語りかけるわけでもなく武内は一人ごちた。
その顔にはすでに勝利が決定したかのように、確信めいた満面の笑みが浮かべられている。
それもそのはず。
美里の考えは被暗示性を高めるというところから先が全くの的外れな意見だったからだ。
あり得ないという考えの基に切り捨てた考え、つまり洗脳機械は不完全ながらも人一人の人格を改変する事を可能としていた。
ただ完全にその人間を掌握するためには効果が薄まりかけた頃に再洗脳が必要とされたが、元よりここは閉鎖空間。
一度洗脳してしまえば逃げ出そうという概念が消え失せ、さらに数回にわたる洗脳でその人間の意識は修復不可能なほどに完全に改竄されてしまう。
美里の第六感は今回も正しかった。
「今回はご苦労様でした、雫」
労いの言葉を受け、武内への奉仕が最上の喜びとなった雫は感極まり身を震わせて喜ぶ。
見れば、その目にはうっすらと涙が浮かびだしてさえする。
「お力になれて幸せです教祖様。美里もすぐに私と同じようになれますか?」
雫の質問を受け、武内はカプセルの中を覗きこんだ。
中の音声は完全に遮断されているため聞き取れはしなかったが、人格そのものの書き換えに体が強い拒否反応を示しているのだろう。
容易に頭の中で叫び声を想像出来そうなほどに端整な口を大きく歪ませ、固定された手首の先では暴れた爪がガリガリと何度も金属に細い傷跡を作っている。
ヘルメットのせいで目元こそ見えないが、おそらく苦痛に目を剥き涙を流している事だろう。
美里のように美しい女性が悶絶して泣き苦しむ姿を想像し、武内は唇の端を歪ませた。
「ええきっと。美里さんほどに優秀な方ならばすぐに私の思想を学んでくれるでしょう」
武内は自分の子供を愛でる様にカプセルの淵をゆっくりと撫でた。
精神が犯され、もがき苦しむ美里の様子を同じく喘ぎ暴れ回っていた雫が、自分の身に起こった事を忘れてしまった風に教育が行われる様子をどこか他人事のように見つめていた。
それが武内には可笑しくて、美里の苦しむ姿を見ながら性欲を吐き出そうとカプセルの蓋に手を付くよう雫に命令する。
従順に手を付き、期待に満ちた目で武内を見つめる雫。
武内はその期待に答える様に頷くと、自分を待ち受ける美少女の身体にゆっくりと手を伸ばした――――――。
3時間後。
プシュッと同じ音がカプセルから鳴り、今度は蓋が開かれた。
美里の身体はカプセルの中で激しい悶絶から痙攣、そして体の弛緩も弱くなりとうとう停止した。
その一連の動きを飽きずにずっと見つめ続けていた武内は、心待ちにしていたように美里の身体に手を伸ばした。
スラリと伸びた足を、少し盛り出した股間部を、キュッと締まったくびれを、柔らかさが見て取れる豊満な二つの乳房を、女特有の色気をかもし出すうなじを。
もはや自分のものになった女神のような体の全てに手を伸ばし、好きなように弄びたくなる気持ちを抑えて、武内はヘルメットのこめかみ部分に付いた固定スイッチをオフにして美里の頭部からゆっくりとヘルメットを取り外す。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
ヘルメットが外されると誰に起こされるわけでもなく、自然に美里の瞳がすっと開かれる。
その顔は魂が抜けたように無表情で無感情。
手足の拘束具はすでに無く、美里はゆっくりと身を起こしてカプセルの外へ出た。
「気分はどうですか、美里さん?」
直立した美里は武内の質問を受け、何も映していないような空虚な瞳を無機的に武内へと移し、その姿を捉えると初めて美里の顔に感情が浮かびあがった。
目の前に立つ人間を知覚し、脳内で認識すると、にい、と唇の端を持ち上げ不気味に微笑み、瞳には心酔した様な激しく情熱的な火が灯る。
それは機械から出た人間が一人の例外も無く浮かべる表情と何一つ変わらないものだった。
「はい・・・素晴らしい気分です・・・教祖様」
丁寧に答える美里の低い声には確かな忠誠の意志が含まれていた。
抵抗などもう考え付く事は無い。
武内の言葉は神の言葉と等しく、どんな事も疑問なく受け入れる事ができる。
まさしく、洗脳だった。
「教育はどうでしたか?」
「はい、教祖様のお考えがよく分かる素晴らしいものでした」
「それが洗脳装置を使ったものだとしても?」
「? 教祖様の考えが分からないのならば使用するのは当然でしょう?」
美里は真剣に武内が何を意味してそんな質問をするのか分からない様子だった。
だがそれは機械に入った人間ならば誰もが持つ考えで、武内は気に入った女、とりわけ洗脳前に抵抗をした気の強い女、にその考えを述べさせる事に支配欲を満たす性的な喜びを感じていた。
「美里の人格を他の信者と違うように改竄したのは分かるね?」
「はい。私はこの先一生をかけて教祖様の秘書として、主に教祖様のお世話それから信者の”教育”を担当させていただきます」
淡々と自分がどのように書き換えられたかを説明する奇妙な光景。
武内はそれが楽しくて仕方ないという顔をしながら、おもむろに自分の指を美里の眼前に突き出した。
「・・・ん・・・は、ちゅぷ」
指が差し出されると美里は迷うことなく舌を伸ばし、口の中に含みだした。
目を細め、淫蕩な笑みを浮かべると指の根元まで一気に飲み込み、口内で唾液で熱くぬめった舌を絡みつかせる。
それは犬で言えば倒れ込んで腹を見せるのに等しい、屈服の行為に他ならなかった。
「・・・んちゅ・・・んんん・・・はふぅ・・・あむ、むぅぅん」
うっすらと引かれたルージュで鈍く光る、肉厚のある唇で指を強く挟んで扱き出したかと思うと、舌先でくすぐる様にちろちろと指をなぞる。
美里のうっとりと蕩けた瞳を見ると、まるでそれが男性器への奉仕であるようにさえ錯覚してしまいそうだ。
武内は美里が奉仕に夢中になっている間、空いたほうの手で美里の胸を鷲掴みにした。
服の上からでも十分な柔らかさと膨らみを感じさせるそれを好き勝手にこね回しても、美里は嫌がりもせずむしろ武内が喜ぶようにと手に自分の胸を押し付けた。
美里の価値観は、武内が喜ぶかどうかで判断するように作り変えられている。
もしも武内が不快に感じるなら美里は肉親さえ冷酷に殺す事を可能とするし、逆に武内が喜ぶのなら嬉々として自分の喉元にナイフを突き立てるだろう。
だから以前の美里が屈辱に感じる行為さえ、武内次第で魂を溶かすほどの幸福へと変わってしまうのだ。
武内は美里の変貌に満足したようで、しゃぶりつく口から指を離す。
美里は少しでも長く自分の主人の味を味わおうと舌を伸ばし舐めようとしたが、武内はすぐに自分の口を重ねる事で美里の口を塞ぎこんだ。
「んんんんっ・・・・・・・・・ん、はぁ・・・んむ・・・んちゅ、じゅ、じゅるるる」
武内のその行動に美里は一瞬驚いた表情を見せたが、すぐにまた顔を愉悦に蕩けさせて口内に侵入する武内の舌を同じく舌を絡みつかせる事で歓迎する。
じゅるじゅると音を立ててむしゃぶりつくような激しいキスが始まる。
お互いに口を大きく開いて舌を吸い上げ、口内を犯し、歯茎から歯の裏側まで至る所を舐めまわす。
武内が唾液を送り込むと美里はトロンとした目で極上の美酒を口にしたように一滴残さず喉を鳴らして飲み込み、空いた手でむっちりとした肉感のあるお尻を思うがままにいやらしく撫で擦ると、喉の奥から一層熱い桃色の吐息を吐いた。
「あ、はあ・・・・ふ」
美里の性感が高まっていくのを感じると次は自分の性欲を満たすために、背中に回された美里の手を取り、パンパンに膨らんだ自分の股間部に導いた。
彼女も手がそれに触れるや否や武内が何を求めているか悟ったようで、目に淫靡な輝きを灯すと自分の意思で武内のふくらみを擦り始めた。
大きさと、固さを確かめるように手の平全体でやわやわと揉みしだき、細い指先がズボンのチャックをゆっくりと下ろしていく。
「んじゅっ、ちゅ、ぱ、じゅ、じゅ、じゅる・・・んぐぅ」
口付けの激しさは残したまま白く、絹のように細かな手が直に熱い肉棒に触れ、イチモツを外気中に露出させる。
だが美里に手で男を導く経験は無く、まして満足させられるだけの知識は持ち合わせてはいなかった。
つまりのところこれが美里にとっての手コキデビューとなったわけだが、美里のしなやかな手はそれを感じさせないほどに巧みに肉棒を責め立てていく。
それもそのはず、先ほどの機械による脳の書き換えで美里には武内の感じるポイントと共に必要な情報を与えられている。
公私共に武内に付き従う秘書とはそういうことなのだ。奴隷となんら変わりはしない。
ただそんな非道理的な扱いでも、それが美里にとって最上の喜びとなるように書き換えられていることが唯一の救いかもしれない。
美里は手の平で竿を包み込んで強弱をつけながらゆっくりと扱き上げる。
そして親指の腹を肉棒に押し付けるようにしてリズム良く刺激を与えていく。
親指が亀頭部分まで上ると、綺麗に切り整えられた爪が先端部をカリカリと弱く引っかくので武内のペニスはピクピクと反応してその行為の気持ち良さを物語った。
やがてペニスの先から溢れ出したカウパー液を指で救い、美里は器用にそれを片手で手の平に伸ばして、剛直した肉棒になすりつけ始めた。
カウパー液がローション代わりとなるために美里の手の動きが大胆なものに変わり、クチュクチュと音を立てて肉棒が細い手に扱かれる。
陰茎に与えられる刺激も溜まりきった頃、美里は人差し指と親指で小さな輪を作るとそれを雁の一番広がった部分へ宛がった。
そしてギュッとやや強めに雁を握ると、締め付けながらまるで蛇口を捻る時のようにキュッキュと捻る。
バチン、と電気が武内の身体を走り、予想以上の強い刺激にキスに没我していた武内の口から呻き声が漏れた。
「っぅ・・・ああぁ、くぅ・・・で、出るっ」
美里は武内の声に合わせて射精を促そうと、カウパー液まみれでぬるぬるした手で竿を握り締めると素早く上下させた。
武内が陰茎に伝わる刺激に喘ぎ、悲鳴を漏らしたその瞬間、肉棒がビクンっと跳ね先端からびゅるびゅるっと精液が噴き出された。
すかさず美里の手がペニスを包み込み、何度も何度も勢い良く噴出する精液を手の平で受け止めた。
「ん、ちゅ・・・あぁ・・・教祖様の子種が・・・いっぱい・・・」
美里は手の平に溜まった精液を見るとうっとりとした声をあげて、徐にその精液を服の上に塗りたくった。
ストリップダンサーが見せるような淫蕩な手つきで、体に主人の臭いをマーキングするように自分の胸に、お腹に、太ももへとどろどろとした白濁を擦り付けると、美里の服は精液でてかてかと光り、身体にいやらしさが増した。
尿道に残った精液の一滴まで全て身体に擦り付けると、美里は挑発的な目を武内に向けながらスカートのジッパーを下ろし真っ黒な下着を見せた。
蟲惑的な笑みを浮かべた美里が見せ付けるように下着を脱いでいくと、透明な粘着が長い糸を引いた。
激しいディープキスや手淫で高揚していた美里の身体に手を伸ばすと、饐えたチーズのような淫臭を放つ秘所はすでにびっしょりと濡れそぼっていた。
軽く指で割れ目をなぞってやるとたちまち指先には温かい愛液が纏わり付いていやらしい糸が線を作った。
「んっ・・・んぅっ・・・あ、ぅぅ」
くちゅくちゅとわざと水音を響かせて媚肉を弄繰り回すと美里の肌がほのかに紅潮しだし、甘美な刺激を受けるたびに短い喘ぎ声を断続的に漏らす。
武内はいったん割れ目からその上で可愛らしく勃起する肉芽へと手を移し、手早く皮を剥くと掠る程度に爪先でピンッと弾いた。
「あ、ひっ、ひゃうっ」
弾くたびに高い声で鳴いて悩ましく腰をくねらせるのが面白く、武内は子供のように何度も何度も執拗に淫豆を爪の先で摘み、そして弾いた。
真っ赤に充血した肉芽が弾かれる度にぷしっ、ぷしっと透明な飛沫が幾度と無く肉壷から飛散し、快感に耐え切れなくなった美里の足がガクガクと震え始めた。
武内は更なる快楽を与えてやろうと思いクリトリスから手を離すとすぐに付き立てた人差し指を熱く火照った肉壷の中へと滑り込ませた。
つぷぅっ。
多量の愛液のおかげで武内の指はすんなりと根元まで入り込んで温かい肉壁に包み込まれた。
「んく・・・んはぁ、あ・・・んっ」
指の先を鉤状に曲げてぐにぐにと膣内を擦り上げられ、美里はビクビクと腰を痙攣させながらそれでも崩れ落ちないようにと必死に耐える。
強烈な快楽が長い時間を掛けて通っていくのはよほど苦しいらしく美里の額からは汗が噴き出し、顰められた眉の隙間を筋となって流れ落ちていく。
武内の顔をじっと見つめる切れ目の瞳は艶っぽく濡れて、何かを訴えるように小さく開かれた口から吐かれる甘い息が鼻をくすぐる。
「私のモノが欲しいですか?」
「は・・・はぃぃぃ、欲しい、ですっ・・・お願いしますぅ・・・どうか私のいやらしい、穴を、お使い下さいぃぃぃっ」
もし同僚が卑屈な言葉を吐き、浅ましくも男に媚び諂って尻を揺する今の美里の姿を見れば誰もが驚愕し自分の目を疑う事だろう。
美里に好意を寄せる男なら卒倒するかもしれない。
「はっはは。本当に可愛くなりましたねぇ」
「は・・・ぁああ、ありがとう・・・ございます・・・」
満足そうに頷いた武内に頬を撫でられ美里は快楽とは別に、歓喜に打ち震えてまたイッた。
従う事の喜びを体が覚えていく。
あの時雫が言っていた言葉こそ揺らぐ事の無い真実であり、この幸せは他のものでは絶対に味わう事ができない最上のものだと心から思った。
「じゃあ、貴女が生まれ変わる事ができたその機械に手を付いてこちらにお尻を向けなさい」
「は、はいっ。ありがとうございますっ、教祖様っ」
武内の指示通り美里はさっきまで自分が入っていたカプセルに手を付けると、嬉々として発情したお尻を高く突き出した。
むわっと淫気が立ち込めるまでに欲情したそこは鮮やかなピンク色で、蜜口から次々に零れ出す愛液がてかてかと光り男を誘う。
目の前の穴がヒクヒクと物欲しそうに蠢くのを見て、武内の方が堪らないといった風に肉棒の先を割れ目へ押しやった。
大きな桃尻を両手で掴むと、武内は淫肉をペニスで押し開きながら新しく誕生した信者の体を犯し始めた。
肉棒に肉を押し開かれて、まだこなれていない新品同様のお○んこが異物の進入に敏感に反応して、肉棒をきつく締め付ける。
しかし愛液の量が多すぎるために普通ならきつすぎる締め付けもむしろ気持ちが良く、性交に慣れていない膣内を思うがままに作り変えていくのは気味が良かった。
美里のそこは武内が睨んだ通り、締め付ける力もさながら、中の方も肉襞がやわやわとそれでいてむっちりと肉棒に絡みついてくる極上の一品だった。
この名器を自分好みに、そして自分専用のものに作り変えていくのはさぞかし愉快なものになるだろう。
毎日毎日自分の肉棒を咥え込ませて、まだ綺麗なままの肉ビラを自分の形通りに歪めて、膣内にもしっかり形と味を覚えこませる。
自分のモノを身体に埋めたまま、完全に慣れきった様子で腰を揺する近い将来の美里の姿を想像しただけでも肉棒が弾けてしまいそうだった。
「ほら、しっかり腰を振りなさい」
「は、はひぃっ・・・んっ、ううぅ・・・あ、あんっ」
美里は武内に促されるまま、懸命に腰を振り始めた。
だがその動きはぎこちなく武内の動きとのタイミングも合わず、ただ味わった事の無い快感だけが美里に襲い掛かっていた。
「ひ、ひぃ・・・あ、あぁあ、気持ち、いいっ。あぁぁ、ひぃああああっ」
パンパンと肉がぶつかり合う音に伴い、結合部からぶちゅぶちゅと濁った白い液が飛び散る。
突き上げる間に美里のそこがきゅうと引き締まり、肉棒が締め付けられた数はもう両手の指でも足りないほどだ。
快感に喘ぐ美里の理性が溶かされ、より強い快楽を得ようと肉欲への本能が腰の振り方を覚えていく。
波を迎え、自我を無くしていく内に段々と肉がぶつかるタイミングが合わされて行き、ようやく武内の方にも満足が行くだけの快楽が与えられた。
「うぐっ・・で、出ます。・・・受け取りなさい美里」
武内は美里のくびれた腰をしっかりと掴むと、止めとばかりに肉棒を膣道の最奥目掛けて突き上げた。
瞬間、痺れに似たむず痒さが腰の下を走り、溜まった精液が先端から迸り出た。
びゅく、びゅくとマグマのように熱い精液が何度も美里の子宮を打ち付け、美里の背筋がピンと伸びた。
「・・・・・・ああぁぁぁ、熱、熱いぃぃい、あはぁっ、ま、た・・・いぐ、いぐうううぅぅぅっ」
頭を振り、咽び泣く美里の目は濁りきっていてどこか遠い場所へと視線を飛ばし、頬に出来た涙の筋が受けた快感の強さを物語っていた。
絶頂を過ぎると喉の奥から声にならない呻き声を漏らし、美里の体から力が抜けていく。
「か、は・・・・・・あ、はぁぁぁ、ぁぁぁ・・・ぁぁ・・・」
ぐったりと倒れこんだ美里の虚ろな目が不意に例のヘルメットを捉えた。
人格を基底から改変させ、偉大な教祖様の教えを無理矢理に頭に刻み付けてくれる素晴らしい機械。
これから自分は教祖様の手足として、秘書として機械を操り一人でも多くの信者を増やすのだ。
その為ならどんな犠牲だって厭わない。
あらゆる手段を用いて教祖様を最上の存在へと歩ませていこう。
美里はこれから待ち受ける至福の生活を頭に思い描きながら、静かに意識を失わせた。
エピローグ
信者の教育が行われる例の部屋で、今日もまたプシュッと聞き慣れた音がカプセルから鳴り、蓋がゆっくりと持ち上がった。
美里は手馴れた仕草で”信者”の頭に付いたヘルメットのロックを解除すると丁寧に信者の頭から取り外して、元の場所の仕舞い込んだ。
カプセルの中で横たわっている、今度の新しい信者は全身から色気を漂わせる魅力的な大人の女性だった。
女の名前は新藤江津子。
歳は30代の折り返しを迎えた頃でちょうど女性としては熟していて食べ頃。
性格は真面目で固く、誰よりも自分に厳しい面を見せる、まだ捜査官だった頃の美里が憧れとしていた親愛なる上司だった。
彼女は10年に一人の逸材と言われるほどに有能で、本来ならば本部に身を置いたまま入ってくる情報を元に部下に的確な指示を与える立場にあった。
しかし、そんな彼女を舞台まで引きずり出せたのは美里が武内の秘書として手腕を発揮した結果であり、内部へと逆スパイとして潜り込んだ雫やその仲間達が偽の情報を流し、幾重に重なる罠を張ったおかげであった。
美里は憧れの上司を目の前にしても過去に抱いていた気持ちをおくびにも出さずに、淡々と作業を続けた。
クールビューティーの言葉が示す通りにあくまで冷静に美しく、起き上がった元上司に向けて冷たく言葉を投げかけた。
そこにはもう憧れも、尊敬も親愛の感情も何も無い。
「新藤江津子。貴女にはこれから本部長と言う立場を利用して、偉大なる教祖様のために働いていただきます」
夢から覚めた直後のように惚けていた江津子は元部下の言葉を受け、すぐさまその顔に感情を取り戻させた。
いつも張り詰めて、笑顔といえば困ったようなものしか見せた事が無かった。
そんな女が満面の笑みを浮かべ、カプセルから身を乗り出すと守ってきたプライドを全て失ってしまったかのように、羞恥心の欠片もなく元部下に向かってその場で土下座をすると躊躇せずに額を床にこすり付けた。
普通、教祖である武内かその右腕である美里に命令されない限り信者はここまでの行動を取りはしないのだが、中でも彼女は特別だった。
何故彼女がこんな態度を見せるかといえば、洗脳前に武内に対し思いつく限りの侮蔑の言葉と皮肉で、武内を第一とする美里にとっては耐え難いほどに貶したからである。
もちろん女性の落差を見る事を楽しみとする武内としてはむしろその反応は喜ばしいものだったが、それならと美里は江津子を自分達に対しては過剰なまでに卑屈な態度を見せるように書き換えたのである。
特に武内に対してはそれが顕著で、江津子には彼がお歓びになる態度や言葉しか口に出せないように念入りに修正しておいた。
「”教育”は終わりましたか?」
ノックの音もなく扉が開き、武内が顔を覗かせた。
ドアを開けてまず目にしたのは、つい数時間前まで自分に馬事雑言を投げつけた麗女の哀れな末路であり、敬愛の念を示していた上司を見下したように冷たく見据える部下の奇妙な取り合わせだった。
そしてそれは”教育”が行き届いた事を答えが無くても武内に悟らせるのに十分な光景だった。
「滞りなく完了致しました、これからは江津子を如何様にもお使い下さい教祖様」
使う、と言う言葉の響きが非常に良いなと感じながら武内は無言で頷いた。
「江津子、”教育”の方はどうでしたか?」
武内の声に江津子が顔を上げる。
心酔した表情から覗く瞳には、美里の向ける以上の熱意が溢れ出していた。
「はぁぁ・・・ぞくぞくするほどに・・・素晴らしいものでした。江津子は教祖様に出会えた幸せに胸が打ち震えております」
そう言って江津子はまた頭を下げ、奴隷にも劣る自分の立場を主人に自ら示した。
見ると、感動のあまり瞳からは涙が零れ落ちている。
「さて、江津子。分かっているとは思いますが、これからは貴女の力を存分に貸して頂きますよ?」
「はい、教祖様のために全てを投げ打ってでも尽力させていただきます」
再度顔を上げた江津子の顔からは普段見せる張り詰めた仮面が剥ぎ取られていて素直に美しく、彼女の持つ魅力が全面的に引き出されていた。
洗脳される事で魅力が生かされるというのは皮肉な話だったが、不自然に体裁を保とうともせずに曝け出したその自然な表情は本来の歳より優に5歳は若く見せている。
そして、何より特筆すべきは洗脳前と後の落差。
おそらく女性ながらにこの社会で叩き上がるには想像を絶する困難が待ち構えていたに違いない。
それも三十半ばという年齢もあって彼女は何よりも自分に厳しく、そしてその中で鉄の心を身に付けて行ったのだろう。
洗脳前に見せた高圧的な態度は美里の時にも見られたものだったが、江津子のそれに比べるとそれもまだ可愛らしいものだったように思う。
「今まで手に入れてきたものを裏切り、全て失う事になってもいいんですね?」
「構いません。私は教祖様の僕でございます。どんなご命令にも従いますので、どうかこの哀れな牝に何なりとご命令下さいませ」
その才女が今こうして自分の足元に跪き、極めて卑屈な態度で忠誠の言葉を口にする。
けなげさを身に付けたことで江津子の体から漂う色香は、未亡人が放つ憂いのフェロモンと同じく何とも男の支配欲を刺激する艶っぽいものを感じさせて、今すぐにでも服を剥ぎ良い声で鳴かせてやりたい気持ちが溢れてくる。
服の下に隠れた果実は熟していて、しゃぶりつけばさぞかし甘い味わいを与えてくれることだろう。
だが、美里に褒美を与える方が先だった。
江津子という公僕の切り札を引きずり出し、見事に従順な下僕にしてしまった功績は高い。
「美里」
短く呼び声に反応した美里は途端に氷の表情を溶かし、忠犬の様に武内の側に歩み寄った。
その顔に浮かべる笑みは以前よりいささか色っぽさが出たように思われる。
「これで私も格段に動きやすくなります。よくやりましたね」
美里の働きに満足し、笑みを浮かべる武内。
労いの言葉は今までに何度となく与えられてきたがどの瞬間も美里にとっては新鮮で、美里は声を震わせてあぁぁ、と言葉にならない声を漏らした。
武内は胸が一杯になっている美里の背後に回ると、後ろから手を回して美里の服の隙間に手を滑り込ませた。
信者に与えられる服は丁度首から足を包むくらいに伸びた真っ白な服で、喉元から等間隔に股の下の方まで大きなボタンが付いている。
生地は厚めものが使われており、大体の体のラインまで隠してしまうほどなので傍から見る分には下着をつけているかどうかは分からない様になっている。
その事を利用して機械にかけられ、武内に盲従するようになった女性の信者はいつでも武内を迎える事ができるようにと全員下着を付けない事になっていた。
その規則は美里にとっても例外ではなく、服の隙間に入れた手はすぐに柔らかな膨らみを掴む事ができた。
武内が大きな胸を握り締めると、手の隙間からは弾力を持った柔らかな肉が零れ落ち、面白いように形を変えていく。
「・・・んん・・・あっ、はあぁっ」
美里を気遣う様子もなく、乱暴にぐにぐにと乳房を握りつぶしてはピンク色の尖った突起をギュッと強く捻りあげる。
だが美里は別段痛がり抵抗するわけでもなく、身悶えしながら嬌声を上げて悦に入っているだけである。
「美里、準備をしなさい」
「ふあ、あ・・・んん、かしこまりました・・・あぁんっ」
胸を揉まれながら美里は頷くと、服のボタンを上から順番に外していく。
やはり服の下は何も着用されておらず、はらりと白い服が地面に落ち真っ白な裸体が姿を現した。
武内に抱かれ続けて、女としての魅力を十分に身に付けたいやらしい体。
美里はその淫らな肉体を惜しむことなく武内へと捧ぐ。
白雪のような手が武内の剛直を引きずりだし、股間を寄せ亀頭の先端を武内のペニスのサイズに歪んでしまった女唇にあてがった。
美里は入り口がペニスに触れる、それだけではぁぁ、と声を至福の声をあげ、愛液をペニスに纏わり付かせた。
ほんの少しの間その余韻に浸っていたが更なる快楽を、そして主人に喜んでもらおうと手にしたペニスをずぶずぶとゆっくり体の中に沈めていく。
ペニスを根元まで咥え込むと、美里は虚ろな目を遠くに向け口を小さく開けて放心していた。
きゅうきゅうと肉棒に膣壁の収縮が伝わる。達しているのだ。
「ほらほら、いつまでも惚けててはいけません・・・よっ」
武内は一端腰を引いて美里の片足を持ち上げると、また奥目掛けてペニスを突き刺した。
重力で体が沈む勢いに合わせてずん、と胎内に埋まっていく肉棒の先に子宮口を小突かれて、また美里は声を上げてあっけなく絶頂を迎えた。
美里がこうまでイきやすい体質になったのは、最初に武内に抱かれた時に慣れない身体に強い快楽を与えたのが原因だった。
性の楽しみを覚えてしまった今の方がその体質を顕著に見せるようになり、美里の身体は武内に触れられただけでも股を濡らすほどに快感を覚えきってしまった。
「ひっ、あ、あぁあっ、申し訳っ、ありま、せんっ・・・はぐぅぅっ、ん、あ、ああん」
イッてしまわないようにと美しい顔を歪ませて懸命に堪える美里。
だが身体は快感から逃げようとせずに武内を喜ばせるために尻を振りたくり、肉棒を締め付ける。
そうすると武内に開発されきった極上の蜜肉が触手のように肉棒に絡みつき、咥え込んだ膣壁がぎゅうぎゅうと締め付けて離さない。
その気持ちよさに武内の方が呻き声を漏らした。
美里に飲み込まれないようにと武内はもう片方の足も持ち上げて美里の身体を持ち上げた。
駅弁スタイルで美里を突き上げるたびバチン、バチンと激しい音が鳴り雁首が淫液をほじくり出して結合部から溢れて飛び散っていく。
「んんぅああん、あ、ああ、あひっ・・・きょ、教祖様ぁぁ、教祖様ぁあっ」
ふわりと宙を浮いてはまた激しく肉を抉られる。
膣内を激しく掻き回され、頭は真っ白になったり正常になったりの繰り返しで狂いそうだった。
「ひ、あああああ、穴、私の穴、気持ちいいです、かあ、んあぅぅ、教祖様ぁあぁ」
美里が息も切れ切れに尋ねると、武内は答えとばかりに美里のGスポットを擦り上げた。
「あ、ああ・・・す、すごぃぃ、また、いっちゃいますっ」
エクスタシーに達した美里の膣道がうねり、一際強く肉棒を締め付けた。
どろどろの肉壷の柔突起が意思を持ったように亀頭を擦り、快感の波が脊髄に流れ込んだ。
「うううぅ・・・ぐ、ああ・・・出しますよっ」
「は、はひぃっ、ああはぁっ、ど、どうぞ、いっぱい・・・んひぃ、教祖様の熱い精液をお出し下さいぃぃっ」
肉棒がビクン、と大きく跳ねて射精の瞬間を膣内でダイレクトに美里に伝えた。
一滴残さず種を注ごうと武内は太ももをガッチリと掴み肉棒が深い所に刺すと盛大に射精を開始し、濃い精液を狭い袋の中に満足するまで流し込んだ。
「は、はああああ・・・んくっ・・・気持ち、いいぃ・・・」
舌を突き出して快楽に溺れた声を上げながら、美里は幸せそうに微笑みながら夢の世界へと意識を飛ばした。
武内の背中に絡みついた腕からも力が抜け、腕がぶらんと垂れ下がると同時にぐったりと項垂れた。
しかし、気をやってなお肉棒を咥え込んだ肉だけは力を失わずに武内のペニスを力強く締め付けて残った精液を搾り出す。
そんな芸当が出来るのも幾度となく武内の手によって教え込まれた調教の成果であった。
武内は堕ちきった美里の姿に満悦し、したり顔で微笑んだ。
美里はこれからも有能な奴隷秘書として満足の良く働きをしてくれる事だろう。
足元に跪いたまま元部下との情事をどこか虚ろな目をしながら陶酔した表情で見つめている江津子も、各業界に忍び込ませた愛すべき信者達と同じくこれからは自分の手となり足となって力を尽くす。
恐れるものは何も無い。
約束された未来に思いをはせながら、武内は美里の蜜壷の中で肉棒がむくむくと大きくなっていってるのに気付き、気を失ったまま荒い吐息を付く美里の桃尻にまた腰を打ちつけた――――――。
< 終 >