第一話 「ダイアモンドの章」
―――町外れの廃工場。
こうこうと照る月明かりの下、複数の影がその広大な敷地を飛び交っている。
「くうう・・・おのれ・・・おのれぇ!!」
その影の中の一つが、息を切らせながら忌々しげに声を上げる。
それは、有機的な質感の気味の悪い鎧に身を包んだ長髪の青年だった。
額から血を流し、手にした剣を地面に突き立てて寄りかかっている。
「いける・・・!とどめよ、ソード!」
「まかせてっ!!」
彼を取り囲んでいた影のうちの一つが目にも止まらぬ速さで飛び出し、彼の胸に深々と剣を突き刺した。
「ぐ、ぐあああああ!!―――む、無念・・・っ」
男は目をカッと見開いて叫ぶと、力無く地面に崩れ落ちた。
「はあっ、はあっ・・・ふうう」
男の体から剣を抜くと、その影は大きく息をついた。
「やったあ!ついに倒したのね!」
「ああ、私たちの・・・勝ちだ」
「お手柄~、ソード!」
残りの影が口々に歓喜の声を上げ、集まってくる。
「ありがと。・・・でも、戦いはこれからが本番よ」
「ソードの言うとおりよ。私たちは、ディスタリオンの尖兵を倒したにすぎないのだから・・・」
月明かりが強さを増し、影の正体を照らし出す。
先ほど倒した男の亡骸を囲み、決意の目でお互いを見つめるのは―――様々なデザインの甲冑に身を包んだ、十二人の女たちだった。
そんな彼女たちの様子を、遙か彼方から見つめるまなざしがあった。
「ザイバが・・・負けたか」
地の底から響くような太く低い声の主はそうつぶやくと、肩肘をついた。
その目前にある球体には、廃工場の映像が映し出されている。
「ジュエルエンジェル・・・か。侮れんやつらだ」
瞬き一つせず、彼女たちを凝視し続けるその者は人間ではなかった。
5、6メートルはある灰色の巨体をした、は虫類を連想させる生物がマントを羽織り豪奢なイスに鎮座している。
彼こそが先の甲冑の女たちと敵対しあう異次元からの侵略軍ディスタリオンの首領、ゴーバであった。
ディスタリオンは、隣接世界からやってきた侵略軍である。
破壊と殺戮をくり返し、己の欲求を満たすために非道の限りをつくす。
彼らにとって、彼ら以外の物は欲を満たすための道具にすぎない。
そして彼らは、その強靱な肉体と圧倒的な数、そして異世界の科学を使いこの世界を侵略し始めた。
そこには何の不安要素もない―――はずだった。
彼らの存在が世に知れ渡った直後、突然彼らに刃向かう存在が現れたのだ。
宝石の加護を受けたという、天使を名乗る十二人の乙女。
彼女たちは自らを「ジュエルエンジェル」と名乗った。
その実力は凄まじく、ディスタリオンは多くの兵を失い、一旦侵略を停滞せざるをえなくなった。
彼女たちの隙を突いて侵略に手を出しては、それを阻止される―――。
そんなことを幾度かくり返しているうちに、ついにディスタリオンの幹部「七聖魔」の一人、ザイバが倒されてしまったのだ。
「ケケケ!まあ仕方ないね~!ザイバはこないだの作戦ドジっちまったからね~」
体のあちこちからプラグを垂れ下げた、機械の体をしたギョロ目の男がケタケタと甲高い声で笑う。
彼の名はドリーパ。機械を使った攻撃・作戦を得意とする幹部だ。
「ここにいても死刑、戦っても敗北。まあそういう運命だったのよ、アイツは」
切れ長の冷たい目をした、青紫のボンデージの美女幹部、ネーマが蔑みの顔で笑う。
他の幹部たちも同様の笑い声を漏らした。
「それで、次は誰がゴーバ様のために奴らを倒す任に就くのかしら?
誰も立候補がないなら私がやってあげてもいいけど」
ネーマが言うと、
「待て待て!ここはオレに任せな!!」
大柄で、筋肉のみで体が構成されているような男が立ち上がってネーマを制した。
七聖魔の一人、ボッグ。見た目通り、その圧倒的な力で全てを粉砕する力自慢だ。
「オレ様にかかればジュエルエンジェルなんざ一瞬でミンチだぜ!!がっはっはっは!!な、だからよお、オレ様にやらせろって!」
他の幹部をじろりと見渡すボッグ。
彼に決定か、という空気にその場がなりかけた、そのとき。
「ワシに任せてくれんかのう」
しゃがれた声が響いた。
ボッグを含めた幹部たちは、驚きの視線で声の主を見る。
異を唱えたのは、赤茶のローブに身を包んだ老人の幹部、ゲルバだった。
「おいおいおいおい!ゲルバのじいさん、何の冗談だ!?」
ボッグがわざとらしい大きなため息をつく。
「じいさんが出る幕じゃねえだろ。一体どうすればじいさんがあのジュエルエンジェルをぶっ殺せるってんだよ。大人しくいつもみたいに妙な薬を作ってなって」
「ひっひっひ、相手を殺すことだけが戦いじゃないわい。まあ、筋肉バカのオマエさんにはわかるまいがな」
「なっ・・・じじい、てめえ!!」
「―――やめろ」
ゲルバにつかみかかろうとするボッグを、ゴーバが止めた。
ボッグは舌打ちをし、ぶちぶちと小声で悪態をつきながらイスに座る。
「ゲルバよ、何か策があるのだな?」
「ひっひっひ、面白い趣向がございます、ゴーバ様。どうかこのゲルバめにおまかせを」
「ふむ・・・やってみるがいい」
「ネーマ。すまんが、お主の部下を一人貸してくれんかのう」
幹部会議が終わり、部屋に戻ろうとするネーマにゲルバが声をかける。
ネーマは主に潜入・諜報活動を受け持っている。
女性タイプの部下を数多く従え、人間社会に潜り込ませているのだ。
「イヤだね。アンタみたいな好色爺に貸したら、二度と使い物にならなくなるまで壊されるからね」
「ひひひ、まあそう言うな。今度の作戦に女の人手が欲しいだけじゃ。絶対に壊したりなどせんから。な?」
ゲルバはそう言いながら、ネーマの細くくびれた腰を舐めるような視線で見る。
「いやらしい目で見るんじゃないよ、ひひじじい!わかったよ、貸してやる。けど、もし自分のオモチャにしてたら命はないからねっ」
嫌悪の顔でそう吐き捨てて、ネーマは廊下の向うに消えた。
「ひひ、安心せい。もっともっと上物のオモチャが手に入るんでなあ」
ゲルバはそうつぶやくと、ニタリといやらしい笑みを浮かべた。
「ふう・・・日が暮れるのが早くなったわね」
そうつぶやきながら、灰色のブレザーの制服姿の少女は商店街の中を歩いていた。
微かにウエーブした柔らかな髪を腰まで伸ばした、落ち着いた雰囲気の少女である。
目鼻立ちがはっきりとした見栄えのある顔で瞳にはやさしい光が宿っている。
須藤玲香(すどう れいか)。それが彼女の名前だ。
落ち着いた物腰と、その持ち前の優しさで人気がある。
どんなことにでも真摯に対処してくれるので、彼女に悩みを打ち明ける友人も多い。
部活では新体操部に所属しエースをも務める、一見深窓の令嬢タイプだ。
実際はどうということのない一般家庭の出なのだが、それはどうでもいいことだろう。
彼女にはもう一つの顔がある。
ジュエルエンジェルの一人、ダイアモンドの加護を受けたジュエルガードとしての顔が。
―――そんな彼女に、魔の手は音もなく、しかし確実に忍び寄っていた。
「すいませーん、ちょっといいですか~?」
「はい?」
突然声をかけられた玲香は、びっくりして振り返った。
見ると、かわいらしいエプロンドレスに身を包んだ女性が、紙袋を持って微笑んでいる。
(あ、またティッシュかしら)
玲香は心の中でため息をつく。
どうもこういうのを断るのは苦手なのだ。手渡してくれてるのに、取らないのは悪い気がして・・・。
欲しくもないのに、玲香の鞄の中はティッシュでいっぱいなのだ。
(でも、特にあって困る物でもないし・・・)
「新製品のコロンでーす。試供品ですので、遠慮なさらずどうぞ」
「えっ!?」
てっきりティッシュだとばかり考えていた玲香は、思わず声を上げてしまった。
「コロン・・・?」
「はい。とってもいい香りですよ~」
そう言って女性は小さなガラス瓶を手渡して、さっさと次の女性めがけて走り去ってしまう。
「・・・・・・」
しばしポカンとしていた玲香は、それでもいつもの癖で鞄の中にコロンをしまった。
自分の部屋に戻ると、玲香はさっそくコロンを取り出してみた。
ガラス瓶の中には、透き通ったピンク色の液体が2~3回分くらいのわずかな量だけ入っている。
蓋を回して開けると、花畑に来たかのような香りが鼻をくすぐった。
「あ、本当にいい香り」
数滴垂らして、頬に付けてみる。
まるで、春の息吹を感じ取れるような―――心が安らぐその香り。
玲香はそのコロンをすっかり気に入ってしまった。
もう一度、鼻を瓶に近付け香りを吸い込む。
「はあ・・・本当に・・・いい・・・香り・・・」
自分の口元が緩み、目が濁ったものになっているのを玲香は気付くはずもなかった。
二日後。玲香は少しイライラとしていた。
何か落ち着かない。心に喪失感がつきまとっている。集中力も最近途切れがちだ。
今日の部活でも演技で凡ミスをくり返してしまい、それがまた玲香を苛立たせた。
「須藤先輩・・・具合でも悪いんですか?」
休憩をしていると、玲香のファンである部活の後輩たちが心配そうに寄ってくる。
「ううん、なんでもないのよ」
「でも、先輩があんなミスするなんて・・・」
「あ、わたしお茶持ってきましょうか?」
(―――うざったいわね、ほっといてよ)
眉を寄せた玲香は、自分がそう思ったことにゾッとした。
今まで、そんなことは一度も思ったことはなかった。
後輩たちが純粋に自分を慕ってくれていることはよく分かっているはずなのに。
それに感謝こそすれ、疎ましいなどと考えたことはないのに―――。
「せ、先輩、顔が真っ青ですよ!?」
「ごめんさい。・・・今日は、早退させてもらうわ」
夕焼けに染まる住宅街を、玲香はとぼとぼと歩き下校する。
覚えのない喪失感が、まだ胸につきまとっている。
その喪失感が、コロンを使い切ったときから続いていることに玲香は気付いていなかった。
暇さえあればガラス瓶に鼻を近付け、その香りを求めていたことも。
(わたし・・・どうしちゃったのかしら?)
そのとき、ふわっと風に乗ってかすかな香りが玲香に届いた。
「・・・!この香り・・・あのコロンの!!」
玲香は知らず知らずのうちに、風上を目指して走り出していた。
しばらく走ると、廃ビルに辿り着く。
「ここね」
確かに、このビルの中からコロンの香りが漂っている。
「・・・・・・」
普段なら絶対に怪しいと感じる事態にもかかわらず、玲香は引き寄せられるように廃ビルに入っていった。
「どこ・・・どこなの?」
ビル内のホールを、玲香はキョロキョロと見回す。
と、暗がりに誰かが佇んでいるのが目に入った。
「だ、誰!?」
「ひっひっひ、ようこそ」
そう言って暗がりから老人が姿を現す。
赤茶色のローブを来た、禿頭のスケベそうなその老人はゲルバだった。
「・・・な、何か用ですか!?」
その異様な雰囲気に玲香は思わず後ずさる。
「くくく、そうあからさまにイヤな顔をするな、ジュエルガード」
「なっ・・・!あなたはまさかディスタリオン!?」
「いかにも。七聖魔が一人、ゲルバじゃ」
「ノコノコとよく出てきたわね!覚悟!!」
玲香が天に手をかざす。
すると手の先から、透明に近い白色の閃光が発せられ玲香を包み込んだ。
次の瞬間、その閃光は結晶化しダイアモンドの形に変化、そして砕け散る。
その中から出てきた玲香の姿は、先ほどまでの制服のものではなかった。
サークレットと銀の甲冑を身につけ、手には女神のレリーフが施された大きな盾を持っている。
彼女は正義の戦士、ジュエルガードに変身したのだ。
その姿を見たゲルバは不敵に笑う。
「ジュエルガード・・・ダイアモンドの加護を受け、あらゆる攻撃を弾きかえす盾を持つ戦士か。ひひひひ、しかしワシの攻撃を防ぐことはできんぞ」
「何を戯れ言を!わたしの盾で防げない攻撃などありはしないわ!」
「ふん、では教えてやろう。ノコノコと出てきたのはオマエの方だということをな!」
ゲルバが指を鳴らす。
途端に、辺りに薄桃色の霧が立ちこめ始めた。
「何かしらそれは?そんな目くらまし・・・で・・・な・・・え?」
突然、玲香―――ガードは安堵感で胸がいっぱいになり、その場に立ちつくした。
思考が鈍り、自分が何をしていたのか、どういう状況なのかすら一瞬忘れてしまった。
「くくく、いかに強固な盾といえども香りまでは防げまいて」
ゲルバの言葉に、ガードはハッと我に返った。
(そう!この霧の香り―――あのコロンの!?)
「どうじゃ、心が満たされるじゃろう?あの薬品には常習性があるからのう。一度嗅いだら離れられんわい」
「く・・・よく・・・も・・・・」
必死で抵抗しようとするガードだが、罠だと気付くのがあまりにも遅すぎた。
幸福感で頭がぼんやりとし、その場にへたり込んでしまう。
「しばらく眠っておれ」
ゲルバの手から電撃のようなものが放出される。
無抵抗のままそれを喰らったガードは、為す術もなく意識を失った。
「ん・・・ここ・・・は」
まだはっきりとしない意識の中、ガードは目を覚ました。
目に映るのは、記憶にない模様をした床。
「・・・え・・・と」
ここがどこかわからないまま、とりあえず体を動かそうとしたガードは自分の異変に初めて気付いた。
「な、何これ!?」
両手は天井から伸びる鎖につながれ、両足もしっかりと床に固定されて動かない。
「おお、ようやく起きたか」
目の前のドアが開き、ゲルバが部屋に入ってくる。
ガードは歯ぎしりをしながら、ゲルバを睨んだ。
「あなた―――ゲルバ!ここはどこなの!わたしに何をするつもり!?」
「ここか?ここは幻界城じゃ」
「なっ・・・ここが!」
幻界城。ディスタリオンたちの本拠地となっている、次元移動のできる城だ。
普段は次元の隙間を縫うように飛び回っているため、ジュエルエンジェルたちも乗り込むことが出来ない。
いつかはここに来ることになるとは思っていたが、こんな形になってしまうとは・・・。
ガードは悔しさと情けなさに、うつむいてしまう。
しかし、次のゲルバの言葉にすぐに顔を上げた。
「オマエに何をするか、はじゃな。ワシの言うことなら喜んでなんでもする、かわいい人形奴隷になってもらうための洗脳を施すつもりじゃ」
「ば、バカなことを!わたしは絶対あなたみたいな老人の、ましてやディスタリオンなんかの思い通りなんかにはならないわ!」
「言うておれ。すぐにワシをご主人様と呼び、尻をいやらしく振るようになるわい」
ゲルバの下心丸出しの台詞を聞いたガードの顔が、羞恥と怒りで真っ赤になる。
「無駄よ!わたしは正義の戦士、ジュエルエンジェル!その心は絶対に砕けないわ!」
「ひひひひ、そう怒らずにこれを飲め」
そう言ってゲルバは懐から薬瓶を取り出す。
その中には、澱んだ沼のような緑色をした液体が入っていた。
「誰がそんな薄汚いものを飲むものですか!」
そういってガードは顔を背ける。
「そんなこと言わずに。ほれほれ」
ゲルバはガードの顔に薬瓶を近付ける。
と、ガードの首が動き、自ら薬瓶へと顔を近付け始める。
それに驚いたのは、他ならぬガード自身だった。
「いやっ、どうして顔が勝手に・・・・・・こ、この香り、また!?」
「ふひひ、そうじゃ。オマエの好きなコロンをたっぷりと縁に塗っておいた。たとえ心が嫌がっていても、体はもうこの香りから離れられんわ」
ガードの顔が薬瓶へとさらに近付く。
その口が僅かに開いた瞬間、ゲルバはガードに無理矢理薬を飲ませた。
「んっ!んんっ・・・んぐっ!ぐ・・・ケホッ、ケホッ」
ガードは咳き込みながらゲルバを再び睨む。
「一体、この薬は!?」
「ひひ・・・」
ゲルバはその質問には答えずに、いきなりガードの胸を両手でゆっくりと揉みはじめた。
悪寒が走り、ガードの全身に鳥肌が立つ。
「ひっ・・・や、やめなさい!なんてことをっ」
必死で身をよじらせるが、ゲルバの手は胸に吸い付くようにくっついて離れない。
「ひっひっひ、どうじゃ?触られると気持ちいいじゃろ」
「冗談じゃないわ!今すぐその手を離しなさいっ!」
(そうよ、こんなスケベなヤツに触られて気持ちいいはずが―――気持ち・・・いい・・・は・・・ず!?)
ゲルバの指先が乳首をかすめた瞬間、ガードの体にしびれるような感覚が走った。
「あ、あはああああっ!?」
自分の上げたその声の甘さに、ガードは取り乱した。
(な・・・何?今の・・・)
「ひひひ、感じたんじゃろう?」
「そ、そんなことは・・・んっ、あっ」
どういうわけか、先ほどまで嫌悪感しかなかったはずの愛撫に別の刺激が混じり始めた。
揉まれて胸が形をかえるたびに、全身に波のように快楽が押し寄せる。
しばらくの間、ガードはその感覚に飲まれた。
「ん、はっ、はああ・・・ん、いや、どうしてぇ・・・・・・」
やがて断続的に熱い吐息を吐きながら、力無くゲルバを見る。
「それはな、オマエが淫乱だからじゃ」
「ち、違う・・・わたし・・・淫乱なんか・・・じゃ・・・」
「ジュエルガード、オマエは淫乱じゃ」
ゲルバが急に、よく通る声で言い聞かせるように言った。
「わたしは・・・淫乱・・・?」
「そうじゃ。オマエはどんなときでも男を求める淫乱女じゃ」
「淫乱・・・女・・・」
困惑するガードの頭の中で、ゲルバの声だけがやけにはっきりと響く。
そしてその声はなぜか頭から離れず、むしろ鮮明に残る。
「ジュエルガード、オマエは何者じゃ?」
「わ、わたし・・・わたしは・・・正義の戦士・・・」
「ふむ。ではオマエは、正義のために戦うのか?」
「・・・はい」
(そうよ・・・わたしは正義の戦士・・・正義のために・・・)
ガードの言葉にゲルバはニタリと笑みを漏らし、とんでもないことを言い放った。
「よく聞け、ジュエルガード。正義とは、ワシのことじゃ」
「え・・・・・・」
(目の前にいる・・・この男が・・・正義・・・?)
「正義とは、ワシのことじゃ」
ゲルバがくり返す。
(・・・この男―――ゲルバが・・・正義・・・。ゲルバが・・・正義)
ガードの頭の中で、ゲルバの言葉が何度も何度も響き渡る。
(わたしは・・・正義のために戦う戦士・・・。ゲルバが正義・・・じゃあ・・・)
「オマエはワシのために戦うんじゃな?」
「・・・はい・・・そうです」
(そうよ・・・ゲルバが正義なら・・・わたしはゲルバのために戦わなくちゃ・・・)
通常なら絶対にありえないその思考を、今のガードはすんなりと受け止めていた。
ゲルバはその様子を見て、ますますいやらしい笑みを浮かべて言葉を続ける。
「正義は絶対に間違えない。正義はいつも正しい。そうじゃな?」
「・・・はい。正義は、絶対に間違えない・・・」
「なら、ワシの言うことに間違いはない。ワシの言うことはいつも正しいんじゃな?」
「はい。絶対に、正しいこと・・・です」
「よし、ならよく聞けジュエルガード。これからはワシのことをゲルバ様と呼べ」
「・・・はい、ゲルバ様」
「よろしい。オマエはワシに仕える忠実な人形じゃ」
「忠実な・・・人形・・・」
「そうじゃ。ワシの命令はオマエの悦び。ワシのために尽くすのがオマエの生きる意味じゃ」
「ゲルバ様に・・・尽くす・・・のが、わたしの生きる意味・・・」
「オマエのその身体は、ワシを喜ばせるためのもの」
「ゲルバ様を・・・喜ばせる・・・ための・・・ものです・・・」
―――こうしてゲルバは、ゆっくりと噛み含めるように様々なことを言い聞かせていった。
そして、数時間後。
ガードは相変わらず鎖でつながれ、立たされたまま眠らされていた。
ゲルバはぴくりとも動かないガードを見据える。
「さて・・・これで、わしのかわいい人形の完成じゃ」
ゲルバは満足げに頷くと、ガードの頬を軽く叩いた。
「起きろ、ジュエルガード」
数秒間を置いて、ガードの瞳がゆっくりと開かれる。
そしてゲルバの姿を確認すると、うっとりと目を潤ませた。
「おはようございます、ゲルバ様」
「気分はどうじゃ?」
「最高です。ゲルバ様のおかげで、本当の正義が何かを知ることが出来ました」
「ひっひっひ、そうかそうか。―――それで、オマエは何じゃ?」
「はい。わたしはゲルバ様のために存在する人形奴隷です。ゲルバ様の命令に従い、尽くすことがわたしの存在意義です」
「ワシはオマエの主人なんじゃな?」
「はい。ゲルバ様は逞しく聡明で誰よりも素晴らしい、わたしのご主人様です」
「ワシが殺せと言えば、赤子でも殺せるな?」
「はい。それがゲルバ様の望みならば」
「ワシが死ねと言えば死ぬな?」
「もちろんです。喜んでこの命を捧げます」
「ひひ・・・。なら、ワシが性欲を催したらどうする?」
「わたしの身体全てを使って、ご奉仕させて頂きます。わたしの身体は、ゲルバ様の性処理を行うためにあるものです。どうかご自由に弄んでください」
「なら、早速奉仕をしてもらおうかの」
ゲルバがローブをたくし上げると、下着すらつけていないガリガリにやせ細った下半身が露わになる。
そのなかで男性器だけが、異常な若々しさと大きさを保って屹立していた。
ガードはそれを見ても悲鳴をあげることもなく、むしろ最愛の人に会ったかのように目を細め頬を紅潮させる。
「ああ・・・ゲルバ様の逞しいペ○スが、ビクビク脈打ってます・・・。お願いします、どうかわたしにご奉仕させてください」
足を内股にし、ガードはもどかしそうに身をよじる。
「いいじゃろう」
両手足の戒めを解くと、ガードはゲルバの前に跪いた。
「しゃぶってもらおうかの」
「はい、口でご奉仕します。どうかこの淫乱な雌豚に、ゲルバ様の濃い精液をたっぷりと飲ませてください」
以前なら口が裂けても言わないような台詞を嬉々として口にすると、
ガードはゲルバのそそり立つペ○スを手に取り、何の躊躇もなく口に含んだ。
「んっ、くちゅ、あふぅ・・・」
2,3回浅く口の中を往復させ唾液をまぶすと、次は舌先で竿を舐め上げる。
玉袋の近くから亀頭への上下運動をくり返しつつ、外側から内側へと攻める。
「ぴちゅ、ちゅっ・・・ちゅく」
それが終わると、手で竿をしごきながら亀頭に舌を絡ませる。
ガードのピンク色の舌が、まるで軟体動物のようにウネウネと動いてどす黒いその先端部を包み込む。
「おお、これは・・・。ガードよ、フェラチオをするのはこれが初めてか?」
「ぬちゃっ、ぺちゃっ・・・は、はい。話に聞いたことはありますが、実際にしたのは初めてです」
奉仕の手を止めずに、ガードは上目遣いで答える。
「それにしてはなかなか上手いぞ。オマエには性奴隷としての才能があるようじゃな」
「あ・・・ありがとうございます!」
こぼれるような笑顔を浮かべると、ガードは再びペ○スを口に含んだ。
今度は口全体に頬張り、喉奥まで突き入れる。
「ん、んんん・・・じゅぷっ、じゅぼ、ちゅぷぷっ、ん、くちゅ」
「ほれほれ、片手がお留守じゃぞ。玉袋を転がしてみい。優しくな」
「ちゅく、くちゅちゅっ・・・ふぁい、もうひわけありふぁへん」
ストロークをしながら返事をし、ガードは左手でゲルバの陰嚢を優しく包み指先で玉を転がす。
「ひひひ・・・いい感じじゃ」
ゲルバは恍惚とした顔で、夢中で奉仕するガードの頭をつかむ。
「やはりワシの目に狂いはなかった。今までのオモチャなぞ足下にも及ばん上物じゃわい」
「じゅぷ、ちゅちゅっ、じゅぷ・・・んん・・・んっ」
自分のしていることに興奮したのか、ガードの腰が無意識のうちにくねりはじめた。
「ひひ、ワシの言ったとおりじゃろう?ワシをご主人様と呼び、尻をいやらしく振っておるわ。―――そろそろ出すぞ。残さず飲み干せ」
「―――んっ」
ガードは頷くと、フィニッシュに向けてさらにスピードを上げる。
口の端から唾液が飛び散り、じゅぷじゅぷと水っぽい音が部屋中に響き渡った。
「いくぞ・・・ふおおおおっ!」
ゲルバのペ○スが一瞬膨らみ、ガードの口内に大量の白濁液が放出される。
「んふうっ!?ん・・・んぷ・・・ゴク、んっ・・・ゴク・・・」
ガードは異臭を放つその粘液を、最上の飲み物であるかのように喉を鳴らして飲んでいく。
口内に放たれた全ての精液を飲み干すと、ガードはズルリと口からペ○スを出した。
「はあ、美味しい・・・!ゲルバ様の精液、最高のお味です」
「こりゃ、まだ終わりじゃないぞ」
「え・・・?―――きゃっ」
ゲルバのペ○スが再びビクンッと跳ね上がり、ガードに向けてまた精を放つ。
ガードの端整な顔が、一瞬にしてベトベトになった。
「あふ・・・ゲルバ様、すごい量です・・・。それに、熱い・・・」
ガードはうっとりとした顔つきで、舌を伸ばして垂れ落ちてくる精液を舐めとる。
「ふはあ・・・。ガード、初めてにしては上出来じゃったぞ」
「ありがとうございます、ゲルバ様。・・・汚れてしまいましたね。少しお待ちください」
そう言って、ガードは辺りをきょろきょろと見回す。
「あの、わたしの鞄は・・・」
「おお、ちゃんと持ってきておるぞ。ほれ、あの隅に置いてある」
ガードは鞄を持ってくると、その中からポケットティッシュを取りだした。
「では、ゲルバ様のペ○スをきれいにさせて頂きます」
ティッシュを2,3枚抜き取ると、ガードは丁寧な手つきでゲルバのペ○スを拭き始める。
「おお、準備がいいことじゃて」
(こんなところで役立つなんて・・・ティッシを貰うのも悪くはないってことね)
ガードは幸福感でいっぱいになりながら、さらにティッシュを抜き取ってゲルバの肉棒を掃除し続けた。
「ガードよ、むこうを向いて尻を突き出せ」
丹念な精液の拭き取りが終わると、ゲルバはガードにそう命じた。
「はい」
言われるがままにガードは、恥ずかしげもなく前屈みになる。
レオタードのような、肌に密着した白いスーツに覆われた尻がゲルバの目前に晒された。
「うむ、いい形の尻じゃ。手触りも心地いいわい」
無遠慮に尻を撫で回すゲルバ。しかしガードは嬉しそうに鼻を鳴らし、尻をさらに押しつける。
ゲルバはそれを見て小さく笑うと、しゃがみこんで顔を尻の割れ目に近付けた。
「おうおう、いやらしい匂いがプンプンするわい。濡れておるのか?」
「はい・・・。スケベなジュエルガードは、ゲルバ様のペ○スをしゃぶって感じてしまいました・・・」
「ふはは、モノをしゃぶって濡れるとは変態じゃなあ?」
「・・・はい、そうです。わたしはいつもペ○スのことしか頭にない、変態奴隷です」
「どれ、その変態のマ○コがどうなっているのか確かめてやるわい」
ゲルバが指先で股間の中心部を押すと、グチュッという音とともに愛液がスーツの端からこぼれ落ちる。
「あ、あふうううっ!」
「ひひひ、こんなに濡らしおって。ほれ!ほれ!」
「あんっ!あ!んっ、はああっ、うあんっ!」
指で責め立てるたびに、ガードは嬌声をあげて腰をくねらせる。
太ももに舌を這わせこぼれ落ちる愛液を舐めとると、ゲルバはスーツをたくし寄せてガードの性器を露出させた。
「今度はワシがオマエを悦ばせてやろう」
その薄いピンク色をしたまだ汚されていない秘部に口を付け、音を立てて啜り上げる。
「ひあああっ!ゲ、ゲルバ・・・様ぁっ・・・んはあっ」
ガードの声が一層高くなる。
舌でネチネチとしばらく舐めまわした後、ゲルバは口を離し代わりに指を突き入れた。
「―――!!はああああんっ!」
「ひっひっひ、熱くて火傷しそうじゃ。それによく締まるのう」
グリグリと膣内をかき回しながら指を出し入れする。
「あっ、やぁっ!だ、だめです・・・そん・・な・・・ことされたら・・・はあんっ!」
「ほれ!」
ジュブブッ!とゲルバが指を第二関節まで一気に挿入した。
「あ、あ、はああああああ―――っ!!」
背中を反り返して痙攣したかとおもうと、ガードは足を床について倒れ込んだ。
秘部から指を抜き、愛液を払うとゲルバは踵を返す。
「イキおったか。・・・少し休んだら、隣の部屋に来い。ゴーバ様に報告せねばならんのでな」
< 続く >