Love Station

性に溺れた未来人/0

 まさか現実にタイムマシンやらパラレルワールドがあるなんて思いもしなかった。

 だってそうだろう? タイムマシンが出来ちゃったら未来へ行って自分の将来を見ることだってできるし、過去へ行って歴史を改竄だって出来る。そんなことあったらたまらない。だいいち、タイムマシンができていれば今現在、未来から来た未来人がいるハズだ。それがいないのならタイムマシンがないのだろう……とかなんとか、どっかの偉そうな学者が言った。
 パラレルワールドなんてもってのほか。誰か性格の違う自分や趣味の違う自分に会ったことはあるかい? 例えそんな人がいても互いが互いを知覚するなんて不可能だ。
 まぁ数十年前まではSF小説の題材の一つでしかなかった宇宙旅行なんかが、もう可能になりつつあるあたり、タイムマシンなんかは夢ではないかもしれない。けれどしたいか? 時間跳躍なんてしたいかい? 未来へ行った。さて何をする? することなんてないだろう。それに自分のいた時間に帰って来れる保証すらない。じゃあ過去へ行こう。過去はもっとツライ。歴史改竄したら自分がいた世界が崩れるどころか自分がいない世界になるかもしれない。そうしないためにも、過去へ旅行しに行ったにも関わらず、指名手配中の凶悪犯の如く隠れながら過ごさなきゃならない。

 なんかSFちっくな事象を否定してばっかだな、俺。あぁいや待ちたまえ諸君。何も俺はSFが嫌いなわけではない。むしろ好きだ大好きだ。部屋を見渡せば本棚の半分はSF関係の本だし、好きな教科は物理や天文学だ。むしろ嫌いなのはSMである。ちょっとしたSM、たとえばセックスしたがっている女の子を焦らして楽しんだりとか、言葉責めしたりとか放置したりとか……その程度なら俺も好きだ。許せて放尿プレイ、までだ。だがな、俺が毎号買っているエロ本で以前特集を組んでやっていたSM特集……ああいうのはダメだ。クリトリスにピアスをしたりフィストファックしたり排便させて食べさせたり…………あぁ思い出すだけで吐き気がする。
 話が逸れた。つまり俺が大好きなのはSFとえっちである。っていうか宇宙の無重力空間でセックスとかしてみたくない? 今俺が一番やりたい(もといヤりたい)プレイが、無重力プレイ。

 とにかく、だな。SFは好きだがそれが実現されるとは思っていなかったのだ。そう、思ってなど『いなかった』のである。そう、過去形だ。どうして過去形なのだろうか。決まってる、目の前でそういうことが起きてしまったからだ。単刀直入に言えば…………今俺の前に未来人がいた。しかも超科学力を持った、超露出度の高い服を着た美少女が。

「はじめましてっ! 立川大佐さんですね? わたし、NH494-200CH有末ちひろ、っていいますっ」

 ゴメン、名前の前の英数字の意味がわかんない。

 とりあえず……その彼女──ちひろが現れるまでの経緯はこうである。

◇    ◇    ◇

「た~だいまっと」

 退屈だった授業を終え、早々と帰路についた俺は、道草を一切食わない模範的帰宅をした。クソな一日で疲れたからすぐに寝たいから、という理由。一限の物理は面白かったけど、それ以外がクソなので今日一日の感想が『クソ』になってしまうのである。
 物理……面白いよなァ物理。ロマンがあるよ、ホント。SFに最も近い学問だもんなぁ……。今日やった万有引力、あれなんか絶対時空にも応用できるよね。前々からそう思ってたけど、今日改めて思ったよ。えぇとどこだったかな、教科書教科書…………お、これだよキミィ。この図! 第二宇宙速度に達すれば地球の重力圏を脱出できる……これを応用すれば現在の時空を脱出したりできると思うんだけど。

「はぁ……でもやっぱり無理だよな」

 教科書を持ったまま、ベッドにごろりと仰向けに寝ころがった。
 実際俺が考えているようなことよりも、きちんとした理論に則って考え出されているタイムマシンでさえ、問題がありすぎて不可能なのだ。しかもそのタイムマシンは基本的に未来への一方通行。過去へ行こうとしたらさらに大がかりで、より不可能に近くなる。万一出来たとしても、歴史に関する問題や道徳問題、その他普通では考える必要もないような問題が多々発生する。

「宇宙論……勉強しようかな」

 あとは理論物理とか。あー、確か来週に進路提出しなきゃいけないんだっけ? どこの大学にしようかな……宇宙論とか理論物理ならもっぱら東大が最高レベルの授業受けられるんだよなぁ。

 ブツブツと独り言を言いながら本棚に手を伸ばす。俺は一人暮らしをして二年近いが、どうも独り言は年々増えている気がするぞ。

「ん? これ読んだっけ……?」

 見慣れない表紙を見つけ、それを引き出す。
 あれ? ケースに入ってる……ボックス型の本なんて滅多に買わないのに……

「ってこれ中身がエロ本だ……」

 松下のヤロウだな? まったく……遊びに来るといつもこうやっていたずらしやがる。やつは本当に女なのか?
 でもこいつぁ…………

「いいな、これ」

 最初は、表紙にしては少し過激な写真だからどんな内容かと疑った。修正はかかっているものの、秘部が丸出しでなのある。俺が持っているのは普通のエロ本であり、俺的に普通というのは世間の男にとって少し物足りない程度なのである。だって俺はエロさを求めてないもん。えっちなほうがいいのさ。わかるかい?
 中身は、というと……インモラルな日常をテーマにした写真集。だから表紙もインモラルなのね、と無理矢理納得。セックス描写は……ないな。テーマがテーマだけあって、非日常的な日常を見事に描いている。少女が起床すると登校前に全裸で犬の散歩。帰ってくると朝食を摂り、制服に着替える。その制服だが到底制服と呼べるような代物ではなく、ノーパンに前部に幅20cm程のスリットがあるスカート、上は細長いネクタイのようなものを首にかけて乳首を隠しているだけ。下は黒い茂みに覆われた陰部丸出し、上は風が吹くだけで飛びそうな意味のない紐で覆った少し大きめの胸。それを着た少女は、鏡を見て満足そうな笑みを浮かべている。そして颯爽と登校し、女子校なのだろうか女子しかいない教室で授業を受け…………とまぁとにかくインモラル。普通じゃ絶対ありえない。

 俺こういうの好きなんだよなァ……ただエロいだけじゃなくえっち。別に女の子とセックスできなくてもいいのさ。性欲処理なら自分で出来るし、セックスだって恋人とすればいい。だけどね、こういうことは恋人とできないでしょ? こういう普通じゃできないような、イヤラシイことしたいわけよ。

「…………マインド・コントロール、か」

 俺の秘蔵小説での俺的ランキングベスト2の小説……『BD』というMC系小説もこんな話だった。主人公が女の子の心を操り、ひたすらアブノーマルなことをさせるお話…………
 俺にもそんな力があればできるのだろうか。気に入った少女を自らの思うまま作り替え、狂わせるようなことが…………

「未来ではそういう機械とかあるようか気もするね」

 そんなことを考えているうちにもう夕飯時になっていた。結構長い間ぼうっとしてたみたいだな。
 他の家ではどうか知らないけど、俺は18時頃には夕食にする。何故かって腹が減るからだ。それ以外に何がある? まぁ食欲を満たせば、今の俺の元気な息子も黙るだろう。……まったく松下のヤロウ、よけいなもん置いていきやがって……嬉しいじゃねぇか。お、息子よ、やっぱりおまえも嬉しいか。ビクビクしやがってっ。
 ……自分の性器と会話する学生…………気持ち悪いな。

 ……………………
 ………………
 …………
 ……

 んー、やっぱり生姜焼き飽きてきたな……今度は塩コショウ風味にするか。

「さて、いちお予習しとくか。明日物理あるしな」

 よいこらせと腰を上げ、物理の教科書とルーズリーフを取り出し机に向かう。

「あー、明日で万有引力終わりだっけ? 次は何だ……? 電磁気か?」

 高校物理じゃもの足りねぇなぁ……相対性理論とかやらねぇもんなぁ……
 相対性理論と言えばやっぱり光を絶対のものとして扱った画期的な考えが魅力だな。アインシュタインは天才だよ、うん。光量子説なんかもうスバラシイよねっ。

「アインシュタインで有名なのは……E=mc^2の式か。何せ文系の英語入試に出たくらいだからな」

 この式も惚れ惚れするくらい美しい…………エネルギーと質量の互換性を表してるんだよ? 俺的にはオイラーの等式よりもこっちの方が好きなんだよな。
 そういえば質量と光速を表すmとc……Mind Control(マインド・コントロール)の頭文字でもあるな。びっくり。

「ってことはエネルギーをマインド・コントロールに変換できるってか? まさかなぁっ」

 そうなれば面白いな。でもコントロールの二乗って何だよって話。

 一向に予習が進まない俺。好きなことに一度ハマると中々抜け出せず他のことが疎かになる癖……俺の悪いところだ。
 だがその時ばかりは現実に意識を引き戻された……

 ──その瞬間。俺は奇蹟の一瞬を目にする。

 目映い光と共に俺の部屋の中央に球状のモノが浮かび上がる。それは一瞬かそれとも一時間か。そこだけ時間の流れが変わったように、俺の目にその光景がいつまでも焼きついていた。だが壁に掛かっている時計の針は、球状の輝きはすぐに消えたことを示している。
 しかし消えたのは光だけで、中身は消えなかった。そこにいたのは人。しかもえらく可愛い少女。一体何事か。

 俺はしばらく呆然としていた。普通部屋の中央が突然光ったりする? しかも消えたと思ったら人がいる。美少女。なにこれ。ってかなにその服。えっちだよ。さっきの写真集ほどじゃないけど……ある意味水着よりえろいよ、それ。胸なんて、比喩じゃなく乳首しか隠れてないジャン。
 露出少女はキョロキョロとあたりを見回し、カレンダーを見つける。自らの腕に巻いた何か──恐らく腕時計だとは思うが、後で考えると何か別のものだったのだろう──とカレンダーを交互に見比べ、うんっと頷くと、世間を揺るがすトンデモナイ発言をボソリと、微かに聞こえるかどうかくらいの声でのたまった。

「よし、きっかり1210年前だねっ」

 ──俺は悟った。

 あぁ、今俺は世紀の大スクープを目の前にしているんだ。……彼女、未来人か。

 だって彼女今そう言ったじゃん。1210年前が今年なら、彼女は3217年にいたんでしょ? 未来人じゃん。っていうか何取り出してんの、それ?
 ピピっと電子音が聞こえてきそうな、けれど実際は聞こえない操作盤みたいなものを取り出していじくる少女。なんか怖ぇよ。何すんの?
 と思ったのも束の間。操作が終わったのかと思った刹那……現代では考えられないデザインの彼女の服が、一瞬の内に現代っぽく変わった。
 あー、あれどうなってんのかな。分子レベルまで分解して一気に構成すんのかな。それにしてもよく落ち着いていられるなぁ、俺。きっと心臓が鋼鉄性で針ネズミの如く針でトゲトゲなんだろうな。すげーよマイ心臓。

 なぁんて観察して色々考えていたら…………

「はじめましてっ! 立川大佐さんですね? わたし、NH494-200CH有末ちひろ、っていいますっ」

 意味不明な自己紹介をされた。

◇    ◇    ◇

 ……とりあえずすべてを聞かせて頂こう。

「……誰?」

「NH494-200CH有末ちひろというものです」

「名前の前の英数字は何?」

「あれ? 確か21世紀にはすでにこのシステムが導入されて……」

 ピコピコ(脳内効果音)と何かを操作する少女──ちひろ。

「そっか、これ2097年からだっけ。ごめんなさい、勘違いしてました。名前は有末ちひろ、です」

 一人置いてけぼりの俺。まあ二人しかここにいないけど。勝手に自己完結するのは勘弁こうむりたい。

「……君、ちひろちゃんだっけ?」

「ちゃん、とは?」

 未来ではみんな呼び捨てなのだろうか。

「名前に付ける接尾辞、みたいな? 初対面で呼び捨てじゃ失礼でしょ」

「初対面では、NH494-200CH有末と呼ばれるので……」

 めんどくさいなぁ……

「あれ? でもさっき俺のこと”さん”づけで……」

「あぁ、そういうことですねっ! ならばその……ちゃん、ですか? それでも結構です」

 つまりは”ちゃん”は廃れた、ということらしいな。

「なるほど。”さん”や”たん”の他に、大昔は”ちゃん”があったんだ……すごぉーい。こんなの歴史で習わなかったよぉ。こっち来てよかったぁ」

 ……なんか物凄い発言をしたような気がするけど、2007年が大昔と呼ばれていることの方が今重要である。

「じゃあ、ちひろ。めんどくさいからちひろで」

「あ、はい」

 何やらまた操作していたのか。人と話すときはそういうのいじっちゃダメでしょーに。

「君は未来から来たの?」

「え? そうですよ」

 なんでそんな当たり前そうに言うんだろう。

「3127年から?」

「えぇ」

「何のために?」

 そう、これ重要。

「えぇっとですね……ちゃんとすべて話しますから、わたしに協力してくれますか?」

 おいおい……何をされるかわかったもんじゃないぞ。少なくとも俺の科学力はもちろん、現代の科学力総出でも彼女一人に敵わない気がする。断ったら確実に死ぬぞ、たぶん。
 なんだ、何をされるんだ……? 人体実験か? それとも普通に過去の文化を教えろ、とか?

「……聞いてから協力するかどうかを決める、ってのはダメ?」

「断られたら……その、話した内容が漏れた場合困りますので……」

「漏れた場合どうなるの?」

「えと……大佐さんの脳をすべて抜き取ります」

「なんでぇっ!?」

 なんて暴力的なんだ、未来人は! もっと他の方法があるだろうに!

「記憶だけ消すとかできないの!? 未来から来たんだろっ? それくらいの科学力あるだろ!」

「あ、そか」

 おいおい頼むよ……俺の命を粗末にしないでおくれ……
 未来人ってのはこんなもんなのか? 俺のイメージが崩れていく……いや、きっと俺の理想が綺麗すぎたんだな。あるいはこのちひろって未来人が、未来すぎるところから来たせいだ。今の考えと1210年後の考えに齟齬がありすぎるんだ。そうに違いない。

「じゃあ先に話します。大佐さんがそれを望むなら」

「まあ……先にOKだして、あとからヤバイ内容だったら困るしな……」

「わかりました。少し長くなりますけど……いいですか?」

「んーと……」

 時計を確認する。今は19時半。

「大丈夫」

「それでは……
 わたしのいた時代……今から見れば1210年も先の未来。そこでは長年悩み続けているある病があります」

 ちひろは、そんな絶望的なくだりから話を始めた。

「その病のせいで人口は、この時代とは比べ物にならないほどのスピードで減少し、今では……わたしがいたその時では、世界の人口は1億に満ちていません。5年間で生まれた子供の数は1000万人です」

「その出生人数は日本だけで?」

「いえ、世界で、です」

 おいおいマジか……地球滅亡も近いな。地球温暖化がどうのこうの言ってる場合じゃないのかもしれない……こいつの口ぶりじゃ、それで人類が苦しんでるわけじゃないし……何よりちひろが存在するという時点で、1000年以上未来の地球では温暖化などとっくに解決しているのだろう。

「数百年前に人類は危機を感じ、人間の住める星を探して宇宙へと飛び立ちました。そして人類の生きることができる新たな惑星を発見。病のない人々だけ移住を始めます。そうして種を存続させようとしたのです」

「なんで病人だけを残したんだ? 逆でもいいじゃんか」

「地球自体がすでに病気なのです。ですから宇宙船の船体内部を消毒・洗浄し、病気のかかっていない人だけを、病気のかかっていない星へと移住させたのです。
 そして……地球は言わば巨大な病院へとなりました。患者数1億人の」

「ちなみに正常な人間の数は?」

「6000万人ほどです。男女比はほぼ1:2。二倍近く女性の方が多いです」

 そっちも生き残れるかどうか怪しいな……

 よいしょと足をくずす。いつの間にか正座して聞いていたようだ。

「ちなみにわたしは正常者です。ですから大佐さんにとってわたしは、未来から来た人間であり宇宙人でもあるわけです」

 上手いこと言う。そういやそうだな。

「地球はもう滅びます。ですが我々も元は地球人。地球の血が通っているのです。地球を救いたい……そう思った我々は、もはや末期である今の地球を捨て、過去の地球を救うことにしました。つまり予防をしておこうというわけです」

「なるほど……ところでなんでちひろが?」

「わたし以外にもいます。ですが……他の人はもう少し未来へ行きました。今から500年後くらいの世界でしょうか」

 ってことは……2507年前後、26世紀初頭くらいか。

「なんで? みんなこの時代にくればいいのに」

「……怖いんですよ」

「は?」

「この時代の男性が」

「えぇと……みんな女性なの?」

「はい。しかも連邦政府による教育方針で歴史を丹念に学ばされた女性たちです」

 よくわからないが……未来の移住した星は、連邦国家らしいな。
 っていうか何がよくわからないって、その病だ。いったいどんな病気なんだ……? それ以外にもちひろはまだ伏せている部分がある。まあ本来なら未来のことを話すは禁止されているだろうから、これでも充分だけど。

「つまり……未来の女性にとって、今この21世紀の男性は……危険なわけ?」

「はい」

「どこが……?」

 ちひろはうつむき、何故か自らの股間を手で抑えた。その様はまるで自慰をしているようでもあった。

 俺は困惑する。だってこんな美少女が俺の目の前でオナニーまがいのことをしてるんだよ? 顔だってほのかに火照ってるし……

「あなたたち男性にも、我々の時代の女性は脅威かもしれません」

 話を逸らされた。

「実は女性は病にかからないのです。かかるのは男性のみ……。そのせいで女性は……」

 するとちひろは俺の目を見つめ出した。相変わらず頬は赤い。火照っている。心なしか目が潤んできて……それはどこか、そう、発情している女性の表情…………発情っ!? ちょっ、マジか!

「ちょっと……ちひろ? おいおい、大丈夫か……」

「あ、す、すみません……」

 慌てた様子で取り繕うちひろ。だが未だその表情には発情の色が浮かんでいる。胸の頂点には、何故かブラをしていないため、興奮したように勃起した突起が見えた。

「そ、それで……あの……その……。ごめんなさい……もう我慢できませんっ!!!」

「うぉっ、ちょっ!」

 突如ちひろが俺に飛び掛かってきた。そしてそのまま無理矢理口づけをされ……口内に舌が侵入してくる。

 甘い香りと共に女性の性的な興奮を誘う薫りが漂う。それだけで俺のイチモツは硬くなっていた。

「ん……ちゅ……」

「んー!」

 そしてちひろの服がすべて消え去り……綺麗な胸と整った陰毛が見え…………俺の意識は途絶えた。

 ……………………
 ………………
 …………
 ……

「ちゅ、んっ……これが、男の人の……はむっ、んん、おいひい……くちゅ……

 んぁ? なんだこの腰が砕けるような快感は……

「ってぇ! なんだおまえはっ!!」

「あ、おひまひた? ほへんなはい……」

 えらい美少女が全裸で俺の息子を口に含んでいた。

「っつーかおまえ……ちひろか。なんだこの状況は……」

 呆れて素直に快感に身を委ねることもできない……実際のところは、久しぶりのフェラチオに頭の中が真っ白になるくらい気持ちがいいのだが。

 そしてこの状況に関しては、ちゅぽ、と俺のイチモツから口を離したちひろ曰く、

「ごめんなさい……我々の時代の女性は……この時代に比べて極端に性欲が強いんです」

 ということらしい。なんだそれは。

「その……大佐さんの目を見てたら……男の人の、その……おちんちんが欲しくなって……」

 ということはやはり、さっき発情していたのかこいつは。

「いや、いいんだけどね……気持ちいいから。でもできれば今は話を先に……」

「いえ、申し訳ないんですけど、こちらを……わたしの昂りを治めてからでもいいですか? もう……わたしのおまんこに入れて欲しいんです……」

 おいおい……男としちゃ嬉しいシチュエーションだが……こんな初対面の美少女が淫らに俺のイチモツをねだる、こんなことが現実にあるのだろうか。夢か、夢なのか? いやでもこの快感はホンモノで……
 っていうかさっきからこいつはやたらと淫語を使うな……

「って言ってる側から入れてるよっ!」

 ずぷ、と淫らな水音を立てながら静かに沈んでいく肉棒。それを飲み込むちひろの綺麗な性器。ソコは鮮やかな色で、到底淫乱な女のモノとは思えない。こんなに淫らな様子を見ると、ヤリまくっていたに違いないのだが……黒ずんでる様子はまったくない。そういう体質なのか?

「っくぅ……!」

 だが突如ちひろの顔に浮かんだのは、苦悶の表情。快楽のそれとは大きく掛け離れていた。

「おまえ……処女なのか……?」

「は、はい……」

 ……信じられない。こんないやらしい女が……美少女が処女? いや、俺にとっては嬉しい誤算だ。だが、女性のほうが性欲が強い未来において、男性経験のない女がいるのだろうか。
 だが苦しんでるちひろを見るとそれは事実に違いない……未来は一体どうなってるんだ……?

「く、っぁは……ああぁ……」

 ……しょうがないな。

「ちひろ」

「うぅ……え? んんっ!」

 無理矢理こちらを向かせ、その唇をついばむようにむさぼった。その様は親鳥に餌をねだる雛のよう。

「ん……ちゅ、ん……れろ、くちゅ……」

 そのまま右手を彼女の胸へと持っていき、優しく揉みしごく。

「んんっ……ぷはっ、はぁっあん!」

 手にすっぽりと納まるちょうどいいサイズ。それを丹念に揉んでいき、ときに先端の突起を触れるか触れないかくらいの距離で撫でる。

「ふぁ……ぁは……」

 トロンと気持ちよさそうな表情を浮かべるちひろ。そろそろいいかな。

「最後まで入れるぞ、ちひろ」

「ぁふ……ふぁい……」

 返事を聞き届けると、そのまま間髪を容れず肉棒を子宮口まで押し込んだ。

「あああぁあああああっ!!」

 ……………………
 ………………
 …………
 ……

 そんなこんなで、未来人ちひろの処女は俺がさっさと貰い、今は未来の事情が気になるのでセックスを短時間で終わらせ、ちひろにとって初めての精子を子宮に注ぎ込んだ。

「もういいか?」

「あ、はい……申し訳ありません。思わず……」

 思わずで異性を襲っていいなら強姦罪なんてなくなる。
 そう思いつつ、事が終わって服を着たちひろと対面した状態で座り、話の続きを促す。今までずっと憧れてきた未来の話だ……いつでもできるセックスで中断されたらたまらないっつーの。あとでヤろう、あとで。

「はい、えぇと……どこまで話しましたっけ?」

 てへっ、と舌をチロリと出して困り顔。チクショウ……可愛いじゃねぇか。

「あー、女性は病にかからないとかなんとか」

「そこまででしたっけ。すみません……」

 謝るならさっさとして話して頂きたいのが本音である。だがここは建前として

「いや、いいよ。気持ちよかったし」

 とでも言っておこう。うん素晴らしくフェミニストな俺。どこか間違ってる気もするけど。

「や、やっぱり……気持ちよかったんですか? 興奮しました?」

 だがどこか間違ってるのはちひろも同じだった。なんか的外れな質問をしている。

「そりゃあ……ちひろみたいな可愛い女の子とえっちできたし……締まりもよかったし……」

 何を言っているんだろう俺は。

「そう、ですか…………こんなにも……」

「?」

 話がまったく見えないぞ。

「それならもうまったく問題はありません。単刀直入にお願いします。我々の科学力によって創り出されたこの……」

 そう言いながら懐から取り出した携帯電話のようなもの。だが幅が大きく、どちらかと言うとPDAのようなものである。

「SSDC……マインド・コントローラのようなものですが、これを使ってできるだけ多くの女性から性欲を取り出してください」

「……は?」

 イマコノオンナハナントイッタノカ?

「大丈夫です。取り出すとは言っても、対象者の性欲が無くなるわけではありません。それをコピーするだけです」

「いやいやいや! 俺が問いたいのはそこじゃない!!!」

 話が急展開すぎるだろ! 病はどうした!? 話関係ないジャン!! だいたい……マインド・コントロール!? 都合よすぎじゃない!? さっき俺が考えてた通りじゃねぇかっ!

「何のためにそんなことするんだっ? どうして? っていうか何ソレマインド・コントロールできんの?」

「ちょ……いっぺんに聞かないでくださいよ……」

 おまえが説明を省きまくったんだっ!!!

「じゃあ少し話を戻しまして……」

 す、っと表情を引き締め、今までで一番真剣な顔つきになった。

「これが一番重要であり、1210年後の未来では深刻な問題であり、なにより……あなた方男性にとっても大切な話でもあります」

「……つまり?」

 あぁ、俺は絶対にそんな世界は嫌だと思ったね。ちひろの話が本当ならば。

「約700年後、突如として世界中の男性の…………性欲がなくなる病気が蔓延します」

< つづく >

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