四神戦隊メイデン・フォース 第2話

第2話 濫觴

 フオォォンッ

 長距離輸送の冷凍車の合間を縫い、一台のバイクが光の矢のように走り抜けてゆく。
 沙夜子は深夜の首都高を、愛車で疾走していた。

『ちょっと、沙夜子、いくらなんでも単独行動が過ぎるんじゃないの?』
 先日の朱美の言葉が、頭の中をかすめる。
 そんなことは朱美に言われるまでもなく、沙夜子には十分理解できていた。
 だが妖魔を目の前にすると怒りがマグマのように沸々と込み上げ、自分を抑えきれないのだ。

 -翡翠姉ちゃん-
 その名と共に、一人の女性の顔が沙夜子の中に浮かんだ。

 沙夜子の家は瑠璃の家の分家筋にあたる。
 退魔師の潜在能力に優れていた沙夜子は早くから、瑠璃やその双子の姉の翡翠と修行や私生活を共にしていた。
 特に、姉の翡翠には実の妹のように可愛がられ、それに応じるように沙夜子も翡翠を姉として慕い、その背中を追うように精進を重ねていたのだった。
 だが、2年前の冬。

「・・・早く、早く医者を呼べ!」
「ん?」
 本家の一室に居室を与えられていた沙夜子は、その怒声に目を覚ました。
「何なのよ、一体・・・」
 そうぼやきながらも夜着を正し、廊下に面する障子を開ける。
 すると、神官達が慌しく行き来している様子が目に入った。
「本当に、何なの?」
 そのただならぬ光景に沙夜子は、半纏を羽織ると部屋を出、騒ぎのもとへと向かっていった。

 騒ぎの中心は、玄関の方角であった。
 そこへ近づくほど人数も増え、様々な怒号が飛びかっている。
「どけっ、道をあけろ!」
 その中を、二人の神官が担架を持って現れた。
「・・・瑠璃姉ちゃん!」
 その上に横たわる血塗れの人物を見て、沙夜子はその担架に駆け寄った。

 瑠璃の巫女装束は至るところが破れ、そこからは、悉く赤く血を滴らせた裂傷を覗かせている。
 また、額からも夥しく流血しており、息も絶え絶えの様子であった。
「瑠璃姉ちゃん、瑠璃姉ちゃん!」
「沙、夜、ちゃん?」
 沙夜子の呼び掛けに、瑠璃は僅かに目を開けそう尋ねた。
「そうよ、沙夜子よ。瑠璃姉ちゃん、しっかりして!」
 沙夜子は瑠璃の手を握って、そう励ました。
「ごめんね、ごめんね・・・」
 だが何故か瑠璃は、そう謝罪の言葉を口にすると、目の端から涙を零したのだった。
「え?」
「邪魔だ、どけっ!」
 瑠璃の予想外の反応に、一瞬呆然とした沙夜子は、担架を運ぶ男に弾き飛ばされ、床に尻餅をついた。
 だが沙夜子は立ち上がることもできずただ、瑠璃の『ごめんね』の意味を図りかねていたのだった。

 だが、その『ごめんね』の意味はその後、瑠璃の家の者から聞かされた事実で明らかとなる。
 聞けば、瑠璃と翡翠は敵の大将格と戦い、敗退したのだという。
 そしてその戦いで、瑠璃を守った翡翠は命を落としてしまった、と。
 その夜、沙夜子は涙が枯れ果てるまで泣き明かした。
 沙夜子はそして誓ったのだ。
 瑠璃に屈辱を味あわせ、翡翠を死に追いやった妖魔を必ず討ち滅ぼす、と。
 それ以来沙夜子は、翡翠の仇を討つべく、退魔業に没頭するようになったのだが、妖魔に対する恨みと怒りが、沙夜子を過剰なまでに戦闘へと駆り立てるのだった。

「くそっ・・・!」
 誰にともなく、悪態をついた沙夜子は、更にスピードをあげ、ビルの谷間へと走り去っていった。

 コツコツコツ・・・
 沙夜子はバイクをマンションの駐車場に置きヘルメットを小脇に抱えながら、自宅に戻ろうとエレベーター・ホールの方向へ歩いていた。
 その前方を、一つの影がすっと横切った。

「!!」
 ゴンッ
 思わず沙夜子はヘルメットを投げ出して、その影の去った方向へ走り出す。
 その影には、確かに見覚えがあった。
『まさか・・・』
 そう思いながらも沙夜子は、その影を追う。

 フッ
 その影を、沙夜子は屋上に向かう階段の下で見失った。
「どこに・・・」
 沙夜子は必死になって辺りを見回した。
 バタンッ
 その時、屋上の方で扉が閉まる音がした。
 沙夜子は迷わず階段を駆け上ると、
 バンッ
 開けるのももどかしいほどに勢い良く、屋上へと続くドアを開け放ったのだった。

 薄雲に遮られ、満月が弱々しい月明かりで照らすだけの深夜の屋上。
 その手摺の上には、よく見知った、そして想い焦がれていた女性が、そのぼんやりとした光に照らされながら腰掛けていた。
「・・・翡翠姉ちゃん!」
 その姿を見た沙夜子は、思わず走り出そうとした。
 だが、退魔師としての本能が、それを留めさせる。
 ぐっと拳を握りながら、沙夜子はドア口に立ったまま、翡翠の姿を見つめた。

 翡翠は長い黒髪を風に靡かせながら、微笑みを浮かべている。
 だがそれは、幼少から見慣れた、慈愛に満ちた笑顔ではなく、どこか『女』を感じさせる妖艶な微笑であった。
 それに翡翠は月明かりを吸い込んでしまいそうな漆黒のマントで身を包んでおり、かつて慣れ親しんだ翡翠の雰囲気とは、異質のものを放っている。
 だが翡翠は、そのような沙夜子の気持ちを知らずか、
「お久しぶり、沙夜ちゃん」
 まるで旅からでも帰ってきたかのように、気軽な口調で沙夜子にそう語りかけてきたのだった。

 それを聞いた沙夜子は理性を保ちながらも、感情が昂ぶることを抑え切れなかった。
「翡翠姉ちゃん・・・死んだって・・・」
 辛うじてそう搾り出すように言葉を紡ぎ出すと、涙を浮かべ、口元を押さえる。
「そう、私、死んだことになっているのね。」
 その言葉を聞いた翡翠は、悲しそうな表情でポツリ、とそう言った。
「一体、今まで何を?」
 すると翡翠は、
「今まで?そうね・・・今の、私の姿を見せてあげる」
 そう言うと、両腕を中空に広げた。

 バッ
 一瞬、月明かりが遮られ、翡翠の姿が霞む。
 沙夜子はその時、翡翠が纏っていたマントを脱ぎ捨てた、と思った。
 バサッ
 だが翡翠はあろうことか、マントと共に中空へと舞い上がったのだった。
 いつの間にか雲が晴れ、満月が、そのシルエットを浮かび上がらせた。
 翡翠は満月を背に、蝙蝠のような翼を広げ、中空を舞っていた。
 そしてすぐに、沙夜子の傍へと降り立ったのだった。

「!!」
 眼前に現れた翡翠の姿に、沙夜子は言葉を失った。
 かつての翡翠は女性らしさを感じさせながらも、均整が取れ、引き締まったプロポーションをしていた。
 だが今の彼女は、熟れた女の色香を全身から放ち、放恣な肉体を持つ『牝』へと変貌していたのだった。
 胸はメロンのように膨らみ、その乳首は子供のペニス大に肥大している。
 それに加え、股間には男性にあるはずべき器官を、大きくそそり立たせていた。
 そしてその背には蝙蝠のように、大きく黒い翼があり、尻からは黒く長い尻尾を覗かせている。
 それは既に、翡翠が人間ではないことを如実に示していた。

「ふふふ、今の私はね、邪淫皇様の忠実な僕、『邪水晶』。『翡翠』という名は、もう捨てたわ」
「どうして・・・」
 厳然たる事実を見せ付けられながらも、『翡翠』を信じたい、その思いの一片から沙夜子は『翡翠』にそう尋ねたのだった。
「どうして?・・・ふふ、邪淫皇様に真の姿に目覚めさせて頂いたの。とっても素敵なのよ、この体は」
「嘘だ・・・」
 『邪水晶』の信じ難い回答を沙夜子は受け容れることができず、そう呟いた。
 だが『邪水晶』は、
 コシュコシュ
「あんっ、ほらこうやってこれを擦るだけでとっても気持ちいいのよ」
 そう言って己の肉棒を扱き、沙夜子を挑発したのだった。

 見るに耐えない、最愛の姉の『翡翠』の変貌振りに、
「やめろ・・・やめろぉっ!」
 沙夜子は頭を振りながらそう絶叫する。
 そして、腕に装着されている時計型の変身バンドを頭上に翳した。
「チェンジ、ブラック!」
『Yes, master.』
 その言葉に変身バンドは反応し、変身シークエンスを開始させる。
 肌に固着化された戦闘スーツの上に、戦闘装備が装着されてゆく。
 そして数瞬の後には、メイデン・ブラックとなった沙夜子の姿があった。

「やっぱり沙夜ちゃんは、メイデン・フォースの戦士だったんだね。もしそうでなかったら、工作の手駒にしかならないと思っていたのだけれど。・・・私の見立て通り。嬉しいよ」
 メイデン・ブラックとなった沙夜子の姿に、邪水晶はそう言って嬉しそうに目を細めた。
「・・・破ぁっ!」
 だが沙夜子は邪水晶の言葉が終わるのを待たず、二刀流の小太刀を振り上げると一気に邪水晶へ突進していった。

 雷撃のように鋭く、苛烈な剣技が次々と繰り出される。
 並の、いや上級妖魔であっても、この攻撃をかわしきることは難しいであろう。
 だが沙夜子の攻撃は全て柳のように、邪水晶に受け流されしまうのだった。
「強くなったわね、沙夜ちゃん」
 かつて姉として接してくれた時のように、慈しむような微笑を浮かべながらも、邪水晶は流麗な動きで、沙夜子の攻撃を次々と交わし続ける。

「くっ・・・!」
 沙夜子の剣術の師匠は翡翠であり、その動きを読むことは容易いことだ。
 それに沙夜子の剣術が上達したとは言え、邪水晶との力の差は明白であった。
 それが痛いほど解る沙夜子に、徐々に焦りと疲労が蓄積してゆく。

 戦闘を開始してから数分が経過した。
 致命的なダメージを受けてはいないが、沙夜子の体力と気力は着実に削られていた。
「はぁはぁはぁ・・・」
 既に息は上がり、剣の冴えも、鈍さを増しつつある。
 その一方で、邪水晶には疲れの一欠けらも見出すことはできない。
 沙夜子と同様に、小太刀を二刀流に構えた彼女は、追い詰めた獲物を狩るように、ゆっくりと沙夜子との間合いを詰めつつあった。

『活動限界まであと82秒』
 ヘルメットの内部に表示されるインジケーターが、非情な数値を示している。
 メイデン・フォースの装備性能は、装着者の精神状態に大きく左右される。
 既に精神的限界を迎えつつある沙夜子と同様に、『メイデン・ブラック』そのものも限界に達しつつあった。
『このままじゃ・・・必ず負ける。それならば・・・!』
 そう判断した沙夜子は、一瞬の勝負に賭けた。
「たぁっ!」
 沙夜子は一直線に突進しながら、
 ヒュンッ
 左手の小太刀を邪水晶に投げつけた。
 カキィンッ
 それを反射的に邪水晶は弾き返し、構えをやや上段へと移す。
 その瞬間を、沙夜子は待っていた。
「どりゃぁぁっ!」
 右手に残った小太刀で邪水晶の胴を薙ぎ払うように、横一文字に剣を振り払う。
 沙夜子の持てる力を全て込めた必殺の一撃。

 ガキィンッ
 だが沙夜子の渾身の一撃は、それを遥かに上回る速さで反応した、邪水晶の太刀に受け流されてしまった。
 カァンッ
 それとともに甲高い音を立てながら、沙夜子の手から小太刀が弾き飛ばされた。
 その衝撃でバランスを崩した沙夜子は、
 ドガッ
 邪水晶の膝蹴りを正面から食らい、背中からコンクリートの床に叩きつけられた。
 「ぐはっ!?」
 背中からコンクリートの床に叩きつけられた沙夜子は、その衝撃で肺の中の空気が押し出され、一瞬動きを止めざるを得なくなってしまったのだった。そしてそれとともに、活動限界を迎えたメイデン・ブラックのプロテクターは消失し、レオタード状の戦闘スーツのみの姿となる。

 ニュルニュルニュル
「!!」
 その一瞬の隙をつくように、どこからともなく湧き出す肉の触手。
 沙夜子は忽ちのうちに、その触手に四肢を拘束されてしまったのだった。
 スタッ
 その拘束された沙夜子の元に邪水晶は歩み寄ると、膝をついて屈み、沙夜子の下腹部に顔を近づけた。
 スーッ・・・
 そして邪水晶は、拘束された沙夜子の股間に顔を近づけるとその匂いを嗅ぎ、
「・・・ちゃんと処女は守っているのね。ふふふ、流石は四神の巫女、ということかしら?」
 そう言うと、今度は沙夜子の顔の至近に、その顔を近づけた。
 彼女が息をする度に、強烈な瘴気が沙夜子の顔に触れる。
 それは翡翠を姉と慕う沙夜子にとって、陵辱にも近い行為であった。

「お願い、翡翠姉ちゃん、正気に帰って!」
「私は至って正気よ。私は自分の意思で、邪淫皇様にこの身を捧げたの。沙夜ちゃんにも、この悦びをたっぷりと教えてあげる。・・・そして私の奴隷になりなさい」
 邪水晶は、そう言って涙ぐむ沙夜子に折り重なると、
 ムチュッ
「むぐっ!?」
 その唇で沙夜子の唇を塞ぎ、包み込むように沙夜子の頭を抱きかかえた。
「んむっ、んふっ、ふっ!」
 邪水晶の蛇のようにくねる舌に、沙夜子はただ口内を蹂躙され、唾液を流し込まれる。
 最初は頭を振って邪水晶の口撃から逃れようとしていた沙夜子だったが、
「・・・んっ、んっ・・・」
 邪水晶の巧みな責めにただ翻弄されるだけの沙夜子は、徐々に抵抗する力を奪われていった。

 チュルンッ
「ふはぁっ・・・沙夜ちゃんの唇、美味しかったわよ」
 沙夜子の味を堪能した邪水晶は、うっとりとした表情で唇を離した。
 二人の間には唾液の糸がひき、ゆっくりと放物線を描いて床に落ちてゆく。
 だが沙夜子は、それを呆けたように、焦点の半ば合わない目で見送るだけであった。

 そんな沙夜子を邪水晶は満足気に見つめると、短い呪を一つ唱えた。
 すると、
 ビクッビクッ
 芋虫のような醜い生物がその手の中に現れた。
 邪水晶はそれを人差し指で一撫ですると徐に、
 ベチャッ
 沙夜子の足元にそれを投げつけたのだった。
 それは透明な粘液を吐き出しながら、踝、脛、腿と、沙夜子の体を這い上がってくる。
「ひぃっ!?」
 その見た目の醜悪さと、粘着質の何かに這いずりまわられる感触の気色悪さに、沙夜子は正気を取り戻し、思わず悲鳴を上げた。

 「この『猿性戯』はね、知性もない低級な妖魔なのだけれど・・・」
 邪水晶がそう言葉を止めると、猿性戯は、沙夜子のある一点で動きを止めた。
 ニュウゥゥ
 そしてその一端を針のように尖らせると、
 プッ・・・ズブブッ!
「宿主のクリトリスに寄生すると、その身を同化させるの。」
「ひぎぃっっっ!?」
 沙夜子のクリトリスを刺し、その身を潜り込ませていった。

 ビキビキビキッ
 猿性戯は沙夜子のクリトリスに潜り込みながら、神経の根を周囲に癒着させてゆく。
 それはとてつもない激痛を伴うものであった。
「ひぎぃっ、嫌ぁっ、やめてぇっ!」
 沙夜子は激痛と、妖魔に潜りこまれるおぞましさに、半狂乱になってそう泣き叫ぶ。
 だが、触手で固定された腕や足は動かすことができず、丘に上がった魚のように、背中をわずかにバタバタさせるだけであった。
 そんな沙夜子を尻目に、猿性戯はひたすらに、沙夜子の奥に潜り込み、根を張っていった。

 クッ・・・
 やがて猿性戯は死んだように一瞬動きを止めた。
 沙夜子はそれにほっと安堵する。
 だが、
 グッ
「な、何っ!?何か、何かが来るっ!」
 そう沙夜子が叫ぶのと同時に、
 ムクムクムクッ
 クリトリスが膨張し、急速に成長を始めた。
「ひぃっ、い、嫌ぁ!クリトリスが、クリトリスが!」
 沙夜子がそう叫ぶ間に、膨張したクリトリスの先端が割れ、カリの形を形成してゆく。
 そして数秒後には、沙夜子の中心に巨根と言うのに相応しい、立派なイチモツがそそり立っていたのだった。
「こんなの、こんなの嫌ぁ・・・」
 醜く変わり果てた己の姿に沙夜子は、くしゃくしゃに顔を歪ませて、幼子のようにさめざめと泣きじゃくるのだった。

 スッ
 そんな沙夜子を、邪水晶は背後から優しく抱きしめる。
「無事に癒着したようね。・・・フフフ、沙夜ちゃん、嫌がることはないわ・・・だってこれは、こんなに素敵なのよ。」
 そして邪水晶はそう言って、沙夜子のペニスを掴むと、
 コシュコシュ
 僅かに扱きあげた。
 ドピュッ!
 すると、ペニスの先端から本物の男根のように、白い粘液が射精されたのだった。
「ああっ!」
 それだけで、沙夜子の頭の中は真っ白になってしまう。
「この『猿性戯』の名前の所以はね、マスターベーションを覚えた猿がそれに耽るように、寄生された女が、オナニーの虜になるところから来ているの。感度も普通の男根の数十倍はあるのよ。どう、素敵でしょう?それに、射精すれば射精するほど、宿主はその虜になっていくの。沙夜ちゃんは、何回耐えられるかしら?」
 射精の快楽に呆然とする沙夜子に邪水晶はそう言うと、魔の手淫を施していった。

「はぁ、はぁ、はぁ・・・」
 何度も何度も邪水晶の手管でイカされた沙夜子の頭は既に、性欲に占められつつあった。
 それに応じるように、イチモツも硬度を失わず屹立し続けている。
 邪水晶の手がイチモツに触れる度に次なる快楽を求めて、沙夜子はどこか、期待の混じった眦を彼女に向けるまでになってしまっていたのだった。
 それを感じた邪水晶は、ぎゅっと沙夜子のイチモツを握り締めると、
「沙夜ちゃん、私に忠誠を誓いなさい。私の奴隷になれば、いつでも快楽を与えてあげるわ」
 そう言って沙夜子に隷従を求めた。
「・・・奴隷・・・」
 快楽に蕩けた沙夜子の頭の中で、その言葉がリフレインされる。
『奴隷奴隷奴隷・・・』
 だがその屈辱的な言葉は急速に、誇り高き沙夜子の、理性をクールダウンさせた。

 ペッ
 沙夜子が吐き出した唾が邪水晶の頬にかかる。
「・・・わ、私は、決して奴隷になんか、なりはしない。四神の巫女として、最後まで戦い続けるわ。」
 沙夜子は快楽に身を震わせながらも、四神の巫女としての誇りを糧に、毅然としてそう言い放ったのだった。
『そう、私は四神の巫女。快楽に流されて邪界の軍門に降るなど、あってはならないこと。この誇りにかけて、私は戦い抜く!』
 そう心に誓い、邪水晶に先程までとは異なる、強い眼差しを向けたのだった。

 だが邪水晶は、そんな沙夜子を冷たい瞳で見つめると、頬についた沙夜子の唾を人差し指でなぞり、口元へ運んだ。
「ふふふ、あくまでも私に逆らう、というわけね。そういうの嫌いじゃないわ。・・・でも、そんな悪い妹には、お仕置きが必要ね」
 邪水晶がそう言うと、沙夜子のペニスの根元に細い触手が巻き付き、
 ギュウゥゥゥ
 肉棒を引きちぎりそうな程、強く締め上げた。

「ひぎぃぃぃっ!?」
「沙夜子・・・地獄を味わいなさい」
 そう一言冷たく言い放つと邪水晶は、
 チュブッチュルッ
 沙夜子のイチモツを口内に飲み込むと、執拗な愛撫を始めたのだった。
 長い舌を亀頭の割れ目に差込み、尿道を刺激しては中の粘液を啜り取る。
 沙夜子のペニスはその巧みな責めに堪らず、精液を吐き出そうとした。
 だが、
 ギュウゥゥゥッ
「あがぁっ、ぎゃひぃっ!?」
 精液を吐き出す先を失ったペニスはパンパンに腫れあがり、根元に巻きついた触手がギュウギュウと締め付ける。
 その一方で絶え間ない快楽が、邪水晶の舌によってもたらされ続けるのだ。
 それは例えようもない苦痛と焦燥感を、沙夜子に与えるのだった。
「お願い、出させて、ださせてぇっ!」
 だが邪水晶はその哀願を無視して、沙夜子への肉棒へ執拗に愛撫を加えてゆく。
 そうして、苦痛と快楽の二重奏に、沙夜子の理性は著しく削られていった。

「はぁっ、はぁっ、はぁっ・・・」
 数え切れないほどの射精を、強制的に遮られたイチモツの根元は極限までに膨れ上がり、巻きついた触手を引きちぎらんばかりとなっていた。
『ダ、ダメェッ、このままじゃ、このままじゃおかしくなっちゃうっ』
 沙夜子の意識は抵抗の意思よりも、欲望を吐き出したい、ただその一念に塗りつぶされつつあり、磨り減らされた理性は既に、肉体的欲求に敗北しつつあったのだった。
 そして無意識のうちに、沙夜子は舌をだらしなく出し、涎を零しながら
「もうどうなってもいいから、出させてぇ・・・」
 かすれるような、聞き取ることすら難しいような声ではあったが確かに、沙夜子はそう呟いてしまったのだった。
 それを邪水晶が見逃すはずもない。

 チュルンッ
 邪水晶は沙夜子への責めをやめ、沙夜子の瞳をじっと見据える。
 そして、
「・・・もう一度言うわ。私に忠誠を誓うなら、出させてあげる」
 心の臓まで射抜くような視線を沙夜子を向けながら、そう促した。
「『私は邪水晶様の奴隷として、永遠の忠誠を誓います』そう言えば、全て楽にしてあげる。・・・さあ、沙夜子」
 更にそう、隷従と解放の呪詛を沙夜子に塗りこめながら、
 レロォッ
 沙夜子への視線を逸らさず、肉棒への苛烈な責めを再開したのだった。

「あひぃっ!」
 沙夜子は再び襲い来る快楽に地獄の苦しみを味わいながら、欲望に濁った目で、邪水晶の瞳を見つめた。
 彼女の血のように紅い瞳を見つめていると、自分の全てが、吸い込まれてしまいそうな気がしてしまう。
 巫女としての誇り、四神の戦士としての使命・・・それすらも吸い込んでしまうほど、深い瞳。
 朦朧とし始める意識の中で沙夜子はいつしか、
 『地獄の苦しみを与え続ける肉棒への責め苦を考えれば、そんなものはどうでもいいのではないだろうか?』
 という、甘い誘惑に駆られていた。
 
 一度、屈服の甘さを知覚してしまった『理性』が、肉欲に流されるのにさほど、時間はかからなかった。

「・・・お願い、出させて・・・」
 半ばうわ言のように、沙夜子はそう邪水晶に哀願した。
 だが彼女は何事も聞かなかったかのように、反応を示さない。
 ただ沙夜子に視線を向けながら、肉棒への責めを続けるだけだ。
 その瞳は『言葉が足りない』と、沙夜子に語りかけている。
 沙夜子はその邪水晶の焦らしに、最早自分を抑えることができなかった。

「・・・ち、誓います!誓うから・・・誓うから出させてぇっ!・・・『私は邪水晶様の奴隷として、永遠の忠誠を誓います』・・・だから、だからっ!」
 遂に沙夜子は、涎と鼻水を撒き散らしながらそう絶叫し、唯一動く頭を伏せて恥じらいもなく、邪水晶にそう哀願したのだった。
 もう沙夜子の頭には、ただこの責め苦から解放されたい、それだけしかなかった。

 その言葉を聞いた邪水晶は笑みを浮かべると、沙夜子への愛撫をやめた。
 そして、沙夜子から体を離し、尻餅をつくような体勢を取ると、
「良く言えたわ、沙夜ちゃん。ご褒美に、私の中に出させてあげる。・・・さあ、いらっしゃい」
 そう言って邪水晶はM字に開脚すると、人差し指と中指で秘所を開き、沙夜子を誘う。
「ああ・・・」
 いつの間にか触手から解放された沙夜子は、花に蜜蜂が吸い寄せられるかのように、ふらふらと邪水晶のもとへと近づいていった。

「ふふふ、沙夜ちゃん、これからは奴隷として可愛がってあげるわ」
 そう邪水晶は囁くと、折り重なってきた沙夜子を優しく抱き締め、胸にかい抱くと、優しく頭を撫でつけた。
「ああ・・・」
 沙夜子は、その心地良さに思わず目を細める。
 それは幼き日、翡翠に優しく抱きしめられた心地良さと同じものに感じられた。
「さあ、私の中へいらっしゃい・・・」
 邪水晶はそう言うと、沙夜子の肉棒を掴んで、己の秘所に宛がう。
 邪水晶の秘所はすでに愛液でぐしょぐしょになっており、沙夜子を迎える準備は万端であった。
 導かれるまま、沙夜子は邪水晶の尻を掴みイチモツを一気に差し入れた。
 ズブズブズブッ!
「ああっ、スゴイっ!」
 ビクッビクッ
 それだけで、沙夜子は軽い絶頂に達してしまう。
「なんて、なんて翡翠姉ちゃんの中、気持ちいいの・・・チンコ溶けちゃいそうっ!」
 だらしなく口の端を緩めさせ、沙夜子は喜悦に満ちた表情でそう叫ぶと、
 ズチュッズチュッズチュッ
 今度は荒々しく邪水晶を突き始める。まさにその姿は性欲を貪る猿そのものであった。

「ああんっ、沙夜ちゃんったら、そんなにがっついて・・・あむっ」
 邪水晶は沙夜子と唇を重ねると、舌を沙夜子の口内へ侵入させた。
「あぷっ、はむっ、むふぅっ・・・」
 今度は沙夜子も積極的に邪水晶の舌に己の舌を絡め、邪水晶との交合を堪能しようとする。
 ムチュッムチュゥッ
 二人は舌を蛇のように絡めあい、唾液を交換する。
 そして、
 グッチュッグッチュッグッチュッ
 互いの性感を高めようと、沙夜子は邪水晶の腰を掴み、邪水晶は沙夜子の腰に脚を絡め、互いの体を貪ろうと、動きを合わせていた。
 ビチャッビチャッ
 二人の間からは、どちらのものの体液とも取れない白濁液が飛び散り、床には大きな水溜りを作っている。

「翡翠姉ちゃん、翡翠姉ちゃん、翡翠姉ちゃん!」
 激しく腰を打ちつけながら、沙夜子は『翡翠』の名を呼び続けた。
 今彼女にとって、犯している相手は、『邪水晶』ではなく『翡翠』であった。
 姉であり、師であり、恋慕にも近い感情の対象であった翡翠の胸に抱かれながら、その彼女を犯している。
 その充足感と背徳感に、沙夜子は例えようもない昂ぶりを感じていた。
 それは既に限界に達していた沙夜子の性感を、追い詰めるのには十分なものであった。
「だ、ダメぇっ、イ、イクぅっ!」
 ブチブチブチッ
 沙夜子のイチモツを拘束していた触手が、イチモツの膨張に合わせて引きちぎられる。
 そして、限界まで貯留され、一気に解放された精液は、
 ドピュッドピュッドピュッドピュッドピュッ
「あ、イクッ、イクッ、イクゥッ!」
 沙夜子の絶頂とともに、邪水晶の中へ大量に放出されたのだった。

「ああっ、イイっ、イイのぉっ!」
 堰きとめられていたものが、全て自分の中から流れ出してゆく。
 それは精液だけではなく、巫女としての誇り、戦士の使命・・・
 これまでの自分を支えていたもの全てが流れ出してゆくのを、全身を弛緩させながら沙夜子は感じていた。
 だがそれは決して不快なものではない。
 むしろ、他者に自分の全てを委ねる、例えようもない至福を感じるものであった。

 邪水晶も沙夜子に射精された精液を子宮に飲み込み、
 ゴボゴボゴボッ
 腹をパンパンに膨らませながら、
「ああんっ、いいわぁっ!沙夜ちゃんの魂が、私の中に流れこんでくる!」
 そう、快楽に打ち震えていた。
 淫魔になってから数多の女を犯してきたが、これほど極上の快楽と魂を、自分に与えられた者はいなかった。
 文字通りの『絶頂』を味わった邪水晶は恍惚の表情で、沙夜子からの奔流を受け続けたのだった。

 沙夜子は、恍惚の表情を浮かべ、射精の余韻に浸っていた。
「はぁぁぁ・・・」
 ドピュッ
 そして自分の中から文字通り全てを出し切った時、邪水晶の体から流れ出る闇の瘴気が自分の中へ染み渡るように、己の魂を汚してゆくのを感じるのだった。
「あぁぁぁ・・・・」
 だが、今の沙夜子にはそれすらも心地良いものに感じられる。
 自分の空の器を満たすもの。
 それは圧倒的で、自分の卑小な存在など、軽く飲み込んでしまうもの。
 沙夜子はその心地良さに身を委ね、目を閉じる。
 そしてゆっくりと、その意識を闇へと沈めていったのだった。

-気を失った沙夜子の左胸には、黒い水晶の文様が浮かんでいた。

< 続く >

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