四神戦隊メイデン・フォース 第5話

第5話 追憶(後)

 ズプッズプッズプッ
「グヘヘ、上級退魔師サマの締め付けは中々のもんじゃねぇか」
「ああんっ、お、お願い、もうやめてぇ・・・」 
「あぁんっ?何を『やめて』欲しいんだ?こんなにビンビンにおっ勃てておいてよぉ!」
 シュッシュッシュッ
「やめて、チ、チンポ、擦らないでぇ!」 
「オラ、口がお留守だ。これでも銜えてな!」
 グボッ
「ふぐっ!?むぐぅっ・・・」
「ゲヘヘ、これが我が同族に殺戮の限りを尽くしていた女とは思えんな・・・淫売そのものじゃねぇか!」
 ジュプッジュプッ
「あひっ、妖魔のチンポが中で擦れ合ってる・・・ダ、ダメェッ、お腹が刮ぎ取られちゃぅっ!」
 下魔達は言葉で翡翠を責めながら、陵辱の限りを尽くす。
 秘穴を、口腔を、尻穴を、下魔の汚らわしい肉棒で塞がれた翡翠は抵抗する力もなく、ただその身を下魔の突き上げに委ねるしかない。
 だが彼女の中心にある肉棒は、その主の意志に抗うように固く、勃起するのだった。

 肉体を改造されてからの日々は翡翠にとって、ただ、地獄であった。

 邪謀の手による徹底的な肉体改造と、妖魔達による『調教』という名の陵辱を受ける毎日-
 邪謀の改造に加え、邪淫皇の精を浴び続けた結果、翡翠の肉体は妖魔化が進み、どんな過酷な責め、例え内臓を引きずり出されるような責めでも受け容れられるような浅ましいものになりつつある。

「オラッ、たっぷり吐き出してやるからしっかり飲み干しな!これがお前の餌なんだからよ!」
 翡翠の口内を犯していた下魔はそう叫ぶと、翡翠の喉奥深くへその醜い肉棒を突き入れた。
 ドピュッドピュッドピュッ
「ぐぶぅっ!?げぷっ・・・うげぇっ!」
 下魔の異臭を放つ粘ついた精液を喉奥へ大量に放たれ、翡翠は思わずそれを吐き出そうとする。
 だが、
「吐き出すんじゃねぇ!全部飲むんだよっ!」 
 尻穴を犯している下魔に頭を掴まれる。
「げぷっ、ごぶっ、ごぶっ!」
 翡翠は気道を確保するためやむを得ず、
 ゴクッゴクッ
 胃の腑へ大量の精液を流し込んだ。
 -これが、翡翠に与えられる唯一の『食事』。
 時折触手によって、腸から直接養分が翡翠に送り込まれるが、口にできるのは妖魔の精液だけだ。
 人としての尊厳すら奪われた翡翠の精神は、確実に磨り減らされていた。

 ズブッズブッズブッ
「グヘヘ、この女、マゾっ気があるんじゃねぇか?口の中にブチまけられて、急に締まりが良くなりやがった・・・グヘヘ、こっちにもそろそろブチまけてやるか」
 ジュブッジュブッジュブッ
「ゲヘヘ、それじゃぁ、こっちの穴にもたっぷり馳走してやるぜ」
 秘所と尻穴を犯している下魔も昂ぶりを感じ、翡翠への突き上げを早めた。
「ぷはっ、げふっ・・・お願い、もう、もう・・・」
 何とか口内の精液を飲み込んだ翡翠が、目の端に涙を浮かべ、必死にそう哀願する。
 だが2体の下魔はそれを無視すると、
「「たっぷり食らいな!」」
 ビュルッビュルッビュルッ 
 ドプッドプッドプッ
 秘所と尻穴に、ありったけの精液を叩き込む。
「あっ、はぁっ、アソコとお尻が熱いっ・・・もうダメ・・・イ、イクぅっ!」
 下魔の精液を両穴に注ぎ込まれた翡翠は絶頂に達すると、下魔に身を預けるようにして、ぐったりと四肢を弛緩させた。
 
「はぁはぁはぁ・・・」
 翡翠は絶頂後の余韻に、荒い息をつきながら打ち震えている。
 いつの間にか、彼女を犯していた下魔達は姿を消しており、今、彼女を拘束するものは何もない。
 だが、彼女は逃げようともせず、全身を覆う倦怠感にその身を浸らせているだけだ。
 邪謀の肉体改造後も翡翠は幾度となく逃亡を試みたが、その度に捕縛され、一層激しい責めを味あわされた。
 そもそもこの世界自体が閉じられており、巫女の力を失った翡翠が独力で脱出できるはずもない。
 そのことを嫌という程、肉体と精神で味あわされた翡翠はいつしか、逃亡する意志を失っていたのだった。
 
「うぅん・・・」
 鈍痛のような倦怠感を感じながら、翡翠はふと、己の体に目をやった。
 胸、腹、腿・・・体のあらゆる箇所は下魔の精液で白く汚れ、異臭を放ち、陵辱の凄まじさを物語っている。
 ビクッビクッ
 だがその中心には、この程度の悦楽ではまだ足りぬ、とばかりにイチモツが屹立を続けていたのだった。
「ここ、まだこんなに・・・」
 それを見た翡翠は吸い寄せられるように、未だ硬度を失わない肉棒に触れる。
 ゾクゾクッ
「んっ!?」
 軽く竿に触れただけで、全身の産毛をなぞられるような感覚が、翡翠の背筋を走った。
 翡翠はその強烈な感覚に思わず、肉棒から手を離すが、一度感じた快楽への誘惑に逆らえず、再び肉棒を手に取る。
「熱い・・・」
 肉棒を掴んだ手の平からは、灼けるような熱が伝わってくる。
「はぁんっ・・・」
 その熱に浮かされたように、
 シュッシュッ・・・
 翡翠はゆっくりと肉棒を擦り始めた。
「はっ、はっ・・・」
 手が竿を行き来する度に、電撃のような快楽が走り、目の中に火花が散る。
「あ゛っ、はっ、あ゛んっ・・・ダメぇ、こんなの、妖魔のチンポなんかで・・・」
 僅かに残った理性が、淫悦に溺れることを躊躇させる。
 しかしその躊躇いが皮肉にも翡翠に止めを刺す。
 ズルッ
 理性に狂わされた手許が亀頭に触れた時、
「あひぃっ!?」
 翡翠の視界と意識が、フラッシュアウトした。
 それが、限界だった。
「・・・いいのぉ、チンポ・・・もう、止められないっ!」
 シュッシュッシュッシュッシュッ
 それが発火点となり、手淫の虜となる翡翠。
 ニュルッニュルッニュルッ
 手と肉棒が奏でる音も、肉棒の先端から染み出した液で、粘液質なものへと変じてゆく。
「チンポ・・・妖魔のチンポ、気持ち良いよぉ・・・」 
 翡翠はそう譫言のように呟きながら淫悦に蕩けた表情で手淫に耽るのだった。

「ククク、淫らになったものだな、神凪の巫女よ」
「邪、淫皇・・・」
 手淫に耽る翡翠の前に、音もなく邪淫皇が姿を現した。
「ククク・・・さあ、我の前で淫らに果てるが良い。その姿、しかと見させてもらうとしよう。・・・クククッ!」
「だ、誰がお前の前でなんか・・・はんっ、でも、止められないよぉっ・・・み、見るなぁっ!」
 ニュル゛ッニュル゛ッニュル゛ッ
 翡翠は、邪淫皇に己の淫らな姿を見られている、という屈辱を感じながらも、手の動きを止めることができない。
 寧ろ調教が進んだ肉体は当人の意志とは裏腹に、その屈辱感さえも性のスパイスとして、例えようもない快楽を翡翠に送り込むのだ。
「ククク、神凪の巫女も所詮、『牝』ということか」
 邪淫皇は翡翠を見下ろしながら、そう嘲笑する。 
 だが、その嘲りの言葉さえも、淫欲に溺れた今の翡翠には届かない。
「あっ、はっ、はっ・・・」
 翡翠はだらしなく舌を出し、緩んだ頬を紅潮させながら、肉棒から伝わる快楽に身を委ねるのだった。

 ブルッ
 やがて翡翠は肉棒の根本に迸りを感じ、一つ身震いする。そして、
「かっ、はぁっ、出ちゃう・・・もう我慢できない・・・イ、イクぅっ!」
 ビュルッビュルッビュルッ!
「ああ゛っ!」
 一度、下魔に強制射精させられたとは思えぬほど大量の精液を、噴水のように吐き出すのだった。
 ビチャッビチャッ
 それは翡翠の体を汚すだけではなく、邪淫皇の足下に飛び散り、白い水溜まりを作る。
「あ゛っ、はっ、はぁぁっ・・・」
 ビュッビュッ
 恍惚の表情を浮かべ、射精の解放感に浸る翡翠。
 最早彼女の意識は、欲望を解放すること、それのみに占められている。
「気持ちいいよぉ・・・」
 そしてそう譫言のように呟きながら、肉棒を離すことはなかったのだった。

「どうだ、神凪の巫女よ。我が膝下に降る決心はついたか?」
 暫くして、邪淫皇はそう静かな声で翡翠に語りかけた。
 眼下の翡翠は白濁に塗れ、肉棒によってもたらされた絶頂の余韻に喘いでいる。
 だがそんな翡翠は荒い息をつきつつも、
「はぁ、はぁ・・・誰がお前なんかに降るものですか・・・私を、甘く見ないで」
 そう返すと、微笑すら浮かべるのだった。
 こんな会話を交わすのは何度目だろうか-
 翡翠の肉体は徹底的な改造と調教により、最早悦楽に対する抵抗力を失っている。 
 圧倒的な快楽を送り込んでやれば忽ちのうちに、性の奴隷に墜ちる-それは先程の彼女の姿からも明らかだ。
 だがそのような中にあっても、彼女が『邪淫皇の奴隷』に墜ちることは、決してない。
 踏まれた雑草が再び立ち上がるように、その強靱な精神力で反抗心を取り戻しては、淫獄に墜ちる。
 その繰り返しだった。

「流石だな、神凪の巫女よ。我の責めにここまで耐えたのは、お前が初めてだ」
「そう、それは光栄だわ」
 邪淫皇はこの状況下にあってもなお、抵抗の意志を失わない翡翠に、ただ感心していた。
 この女を攫った時は、
 『誇り高きこの花を、手折りたい。そしてその無様な姿を堪能したい』
 その程度の酔狂でしかなかった。
 だが今では、
 『この女を手に入れたい』
 そう強く思うようになっている。

「・・・何が、貴様をここまでさせるのだ?」
「さあね。お前の様な下衆には、解らないことだわ」
 今までと同様に、肉の責めを繰り返したところで、この女の心は自分の物にはならないだろう。
 この強靱な心を手折れるものは何か-
 邪淫皇の脳裏にそれを探るための、ある手段が浮かぶ。
 それは直接人の心を探る禁断の術。
 殆どの人間がその奥底に辿り着くまでに、廃人になってしまうような、そして廃人にさせてきた術だ。
 邪淫皇はじっ、と翡翠の顔を見つめた。
 その双眸には、強い意志の力が宿っている。
 『・・・この女の精神力であれば、よもやそのようなこともあるまい』
 敵である翡翠に、ある種の信頼を寄せた邪淫皇は、
「・・・よかろう。ならばその心の内、直接聞いてみるとしよう」
 そう言い、
 『ΘΞΨζξ・・・』
 短く呪を唱えると、右手を翡翠の左胸に当てた。
 そしてそのまま、
 ズブズブズブ・・・
 翡翠の中へと潜りこませる。
「ひいっ!?」
 それに、翡翠は短い悲鳴を上げた。
 しかし、血や肉が飛び散ることはない。
 文字通り、邪淫皇の手首は翡翠の中へ『潜り込んで』ゆく。
 そしてその掌を心臓にまで伸ばすと、やおらそれを握り締めた。
「ひぎいっっ!?」
「ククク、貴様の思念と記憶が流れ込んでくるぞ・・・」
 翡翠の心臓から邪淫皇の掌を通して、翡翠の思念と記憶が流れ込んでくる。
 修行、学校生活、退魔業・・・
 その記憶の大半は、瑠璃との思い出であった。
 翡翠の記憶には必ず、と言って良い程、微笑む瑠璃の姿がある。
「なるほど。貴様を支えているのは、妹の存在か」
「かっ、はぁっ・・・そうだったら、どうだと言うの?」
 心臓を握られる感覚に悶えながらも、翡翠はそう言って返す。 
 今更、隠し立てしたところで意味はない。
 翡翠は邪淫皇の問いに、そう開き直ってみせたのだった。
 だが、翡翠の表情の中に僅かな影が差したのを、邪淫皇は見逃さなかった。
「そうか。・・・ならば、その心の奥底、とくと見せてもらうとしよう」
 邪淫皇はそう言うと、
 ギュウゥッ
 翡翠の心臓を、より強く握り締めた。
「あがぁっ!?」
 すると彼の掌の中に、翡翠の或る日の思い出が流れ込んできたのだった。

-それは、高校2年の秋。

「やれやれ、遅くなっちゃったわね・・・」
 翡翠はそうぼやきながら、家路を急いでいた。
 生徒会の書記である翡翠は放課後、体育祭の準備会議に出席していたのだが、その会議が長引いてしまい、夕方の修練の時間に遅れてしまっていたのだった。
 修練では、翡翠、瑠璃、沙夜子の3人で、お互いを磨き合うことが日課となっている。
 故に普段であれば自分が居なくとも、瑠璃の相手は沙夜子がしてくれるのだが、こんな日に限って、沙夜子は実家に戻っていた。
 『自分が早く戻らねば、瑠璃も修練のしようがない』
 そう思った翡翠は、更に足取りを速めた。

「ただいま!」
 帰宅した翡翠は玄関先に鞄を投げ出すと、そのまま道場へと駆け出す。
「待たせちゃったかな・・・」
 道場の近くまで来ると果たして、瑠璃の声が聞こえてきた。
「瑠璃、ごめん・・・」
 翡翠はそう言いながら道場に飛び込んだ。
 そこでは、既に瑠璃が木刀で居合いの修練をしていた。
 翡翠の呼び掛けに気づかないまま、居合いを続ける、瑠璃。
 ヒュン、ヒュン
 その動きには一分の無駄もなく、鋭く空気を切り裂く音のみがする。
 それはまるで神楽を舞うような、華麗さすら感じるものであった。

 美しい。

 瑠璃が木刀を振るう姿を見た翡翠は単純にそう、感じた。
 だが次の瞬間、翡翠から出たのは嘆息ではなく、 
 ギリッ
 唇を噛み締める音だった。
 『今の、何?』
 その反応に、翡翠は困惑する。
 「あ、姉様!いつの間に?」
 「ちょっとぉ、ちゃんと声掛けたでしょ?」
 「ごめん、気づかなかったよ」
 無邪気な笑顔を向けてくる瑠璃に、翡翠は何事もなかったかのようにそう応じるが、その心中は風に揺れる蝋燭の如く、大きく揺らいでいたのだった。

「・・・ククク、なるほど、妹に嫉妬していたのか。それを隠すため、妹を慈しむ・・・醜いものだな」
「違う、違うっ!」
 『嫉妬』
 そう、瑠璃に対する感情の根源が何か、翡翠は十分過ぎるほど理解していた。
 だがそれを、己の醜さを、認めたくはなかったのだ。
 そしてそれ以上に、瑠璃にその事を悟られたくはない。
 だから自分は-
 いつしか翡翠の目からは、大粒の涙が零れていた。

 その翡翠の姿をじっと見つめていた邪淫皇は、
 ズプッ
 無言のまま、翡翠の胸の中に沈めていた右手を引き抜く。
 それと同時に、
 シュルシュルシュル
 蔦のような触手が邪淫皇から伸び、翡翠の胸に巻き付いた。
「さあ、我に心を開け、神凪の巫女よ」
 ズブズブズブッ!
「ひぃっ!?」
 それは翡翠の乳首から乳腺に潜り込み、その先端を針金のように細らせると、
 ギュルッ
 心臓へと巻き付く。
 そして、それと時を同じくして、翡翠の眼前に大きな姿見が2枚、姿を現したのだった。

 左の姿見には、
 高校3年の春、演武会で。
 大学2年の冬、初めて上級妖魔と相対した退魔業で。
 1週間前、会議の帰りで・・・
 瑠璃に嫉妬する、醜い自分の姿が次々と映し出される。
 心の中では、激しい嫉妬心を抱きながらもそれを隠そうと、笑って妹に接する己の姿。
 それは余りに空虚で、醜悪なものであった。
「お願い、もう止めて・・・もう止めてよっ!」
 今まで懸命に心の奥底に閉じこめていた真実を、白日の下に曝された翡翠は、泣き叫びながらそう邪淫皇に哀願した。

 グッ
 だがその姿を見た邪淫皇は翡翠の哀願に応える代わりに、翡翠を両腕で抱き締めると、
 ズブズブズブッ!
「ああっ!」
 翡翠の中にイチモツを深く突き入れたのだった。
「ククク、それにしても淫らな肉体になったのう。我のモノに食いついて離さぬわ」
「みんなお前のせい・・・あはぁっ!」
 ジュプッジュプッ
 本人の意思とは裏腹に、翡翠の肉体は貪欲に邪淫皇を受け容れ、快楽を貪ろうとする。
 最初に犯された時、激痛しか感じなかった肉体も今では、挿入されただけで軽い絶頂に達するまでに開発され尽くされていた。
「あっ、嫌ぁ、感じちゃう・・・感じちゃうっ!」
 邪淫皇が突き上げる度に、翡翠の肉体は快楽に飲み込まれてゆく。
 快楽に溺れ、喉を仰け反らせながらも翡翠は、視界の隅にもう1枚の姿見を捉えていた。

 右の姿見には、本来の『姿見』の役割通り、今の翡翠の姿がありのままに映し出されている。
 そこには、妖魔と変わりのない汚らわしい肉体に堕とされ、浅ましく肉の悦びに打ち震える己の姿が残酷なまでに、そして鮮やかに、映し出されていた。
「あっ、はっ・・・嫌ぁ、嫌ぁっ!」
 交互に映し出される『醜い』己の姿。
 邪淫皇の激しい突き上げに、目を閉じることもできない翡翠は、その醜い姿を強制的に見続けさせられる。
 -過去も今も、そしてその姿も心も、醜い自分。
 例えここから逃げだし、瑠璃の横に立てることができたとしても、己が醜悪な存在であることに変わりはない。
 そんな醜い自分が、あの瑠璃の横に居て良い筈がない-
 いつしか翡翠は、そう考え始めていた。
 すると左の姿見に、今度は別の角度から見た、日常生活の一コマが次々と映し出される。
 傘も差さず立ちつくす、雪の社での警護。
 自室で膝を抱えて蹲る姿・・・
 それは、『嫉妬』を抱えたまま苦悩する『孤独』な自分の姿を映したものであった。
 瑠璃への嫉妬心など、他人などに打ち明けられるはずもない。
 神凪の守人である身にとって、それは尚更の事である。
 そんな翡翠は、『嫉妬』という心の痛みを抱えながら、『孤独』に苦しんでいたのだ。
 
 醜く、それをさらけ出す相手さえいない自分。 

 私には、居るべき場所などない-
 やがてそう結論づけた翡翠の双眸から、涙が筋となって零れ落ちた。
 それを見た邪淫皇は、ニヤリと笑う。
 その時を、邪淫皇は待っていたのだった。

「・・・貴様の醜い心、その姿、そしてその孤独さえも、我ならば全て受け容れてやるぞ・・・『翡翠』」
 そう己の名を呼ばれた時、翡翠の中で、
 ピシッ
 何かが一つ、弾ける音がした。
 その音は、
 ピシッピシッ
 すぐに勢いを増し、
 ピシッピシッピシッピシッ
 彼女の中を、瞬く間に占領する。
「ああ・・・」
 そう呻きながら、翡翠は無意識のうちに虚空へと手を伸ばす。
 写真スタンドにヒビが入るように、記憶にある瑠璃の笑顔が全て、ひび割れてゆく。
 その音は、自分を、自分の心を支えていたものが脆く崩れ去りゆくことを告げる、心の断末魔だった。
 ヌルッ
 そして、その割れ目から染み出すように、どす黒く粘液質な闇の力が、瑠璃の笑顔を黒く塗り潰してゆく。
 だがそれは不快なものではなく寧ろ、翡翠の『孤独』という心の隙間を満たす、暖かさすら感じるものであった。
「はぁぁ・・・」
 それは元服してから十年の間、翡翠が感じることができなかった、心の平穏。
 母に抱かれるような温もりを感じながらいつしか翡翠は、邪淫皇に心の全てを開いていた。

 スッ
 闇が、最後に残った瑠璃の笑顔の口の端を塗り潰した時、 
 クッ
 翡翠の体から力が抜け、翡翠は気を失ったようにぐったりと頭を垂らした。
 邪淫皇はその翡翠の体を、無言で強く抱き締める。
 ビクッ
 すると翡翠は背を仰け反らせ、カッ、と目を見開いた。
 そして邪淫皇へゆっくりと振り向き、その視線を邪淫皇へと注ぐ。 
「・・・はむっ、むちゅっ、ちゅむっ」
 翡翠は奪うように邪淫皇の唇に己の唇を重ねると、舌を割り入れ貪るように、邪淫皇の舌と唾液を求める。
 邪淫皇はそれに応え、翡翠の舌に己の舌を絡め、唾液を翡翠の口内へと流し込んだ。
 二人はいつしか、恋人のように抱き合いながら、情熱的な接吻に没頭する。
 プハァッ・・・
 お互いの味を堪能したところで、どちらからともなく唇を離した。
 二人の間には粘液質な唾液の糸がひき、放物線を描いて落ちてゆく。
 翡翠は潤んだ瞳で邪淫皇を見つめると、その身を邪淫皇に預けた。 

 邪淫皇は翡翠の頬に手を添え、翡翠の顔をゆっくりと自分に向かせた。
「翡翠、我に絶対の忠誠を誓え。さすれば、貴様の全てを受け容れ、快楽も与えてやろう」
 その言葉に、翡翠はただ邪淫皇を見つめ続ける。
 だが、その瞳は、決意に満ちたものであった。 
「はい、邪淫皇様・・・私、神凪翡翠は、貴方様に絶対の忠誠を誓います。どうか斯様な私を、お側にお置きください」
 翡翠はそう、隷従の言葉を口にすると、再び邪淫皇の胸に顔を埋める。
 全てを曝し委ねる存在を得た翡翠の表情は、穏やかで幸福に満ちたものであった。

「よかろう。やっとお前を手に入れることができて嬉しいぞ、翡翠」
 邪淫皇は再び翡翠を抱き締めると、 
 ズチュッズチュッズチュッ
 再び抽送を始めた。
「あはぁっ!」
 翡翠はだらしなく口を開き、喜悦の表情を浮かべながら、その突き上げを全身で受け容れる。
「じゃ、邪淫皇様ぁっ!・・・もっと激しく、激しく犯してぇっ!」
「ククク、相わかった・・・魂まで犯してやろうぞ」
 ズブッズブッズブッ!
「あひぃっ!」
 先程までとは比較にならない程の荒々しい突き上げに、翡翠の豊かな胸は激しく揺れ、肢体からは汗が飛び散る。
 ゴリィッゴリィッ!
 そして膣奥深く突き刺さった邪淫皇の肉棒は、翡翠の下腹部をその形に歪めながら、子宮を抉らんばかりに責め立てた。
「しゅ、しゅごひぃっ!子宮がゴリゴリいって気持ちいいのぉっ!・・・もっと、もっと翡翠を壊してぇっ!」
 だが、邪淫皇に全てを捧げた翡翠には、その苛烈な責めも全て、強烈な快楽に変換される。 
 鼻水と涎を盛大に撒き散らしながら翡翠は、その快楽に身悶えるのだった。

「ククク、この肉、魂の味・・・素晴らしい、素晴らしいぞ、翡翠!」
 高貴な魂を汚し、美肉を食らう。
 そして何よりも、欲して止まなかった存在が今、己の手の中に墜ちた充足感。
 性欲と支配欲を同時に満たされた邪淫皇も翡翠に劣らず、例えようもない快楽を得ていた。
「ククク、翡翠、貴様の肉体と魂、存分に堪能させてもらったぞ・・・我が精、とくと味わうが良い!」
 グリッ
 邪淫皇は翡翠の子宮口に、その剛直を突き立てる。
 ドプッドプッドプッ!
 翡翠の子宮に邪淫皇の精液が放たれ、見る間に翡翠の腹は妊婦のように膨れあがってゆく。
「あはぁっ、邪淫皇様のせーえき、子宮にドクドクって・・・何かが、体の中に染みこんでくるぅ・・・もうだめ、イっちゃう、イ、イクゥッ!」
 瘴気の塊である邪淫皇の精液を体の中心に浴びた翡翠は、異質のものに侵される感覚を感じながら、絶頂へ達したのだった。
 その絶頂と共に、翡翠の肉体に劇的な変化が訪れる。
 それは、『神凪翡翠』の『死』であり、新たな『妖魔』の『誕生』であった。

 ドクン
 翡翠の心臓が一つ、大きく鼓動する。
 それが合図であったかのように、
 ・・・ビキ、ビキビキ、ビキビキビキッ!
 翡翠の肩口の皮膚を突き破り蝙蝠のような黒い翼が、そして尾てい骨からは、ムチのようにしなやかで漆黒の尻尾が生え始めた。
「あぁっ!」
 だがそれは痛みを伴うものではなく、翼が広がり尻尾が伸びる度に、身悶えるような快感が翡翠の体を走り抜ける。
 そして変化は、肉体だけに留まらなかった。 
「力が、力が体の底から湧いてくる・・・」
 翡翠は、体の奥底から今までとは異質の力が空の器を満たすように、その身へと漲るのを感じていた。 
 その力は、邪淫皇の発するものと同質のもの。
 ゾクゾクッ
 『素敵・・・この力、この感覚・・・今までこんな気分、味わったことがないわ』
 邪淫皇と一体化するような感覚を得ながら、翡翠の魂は闇に汚されてゆく。
 倫理観、正義感、使命感・・・その全てが反転する。
 それは、『神凪翡翠』の『魂』の『死』でもあった。

 ビキッ・・・バサッ!
 そして肉体と魂の変化が終わりを告げた時、漆黒の翼を広げ、『淫魔』となった翡翠の姿があった。
 その姿を邪淫皇は、満足気な表情で見つめる。
「翡翠、これで貴様は心身ともに我のモノとなった。・・・その証に、これを授けよう」
 チャリ
 邪淫皇の掌の中には、鎖付の黒革の首輪が握られている。
 それを邪淫皇は手にすると、
 カチャリ
 翡翠の首に嵌め込んだ。
 翡翠は、その嵌め込まれた首輪に人差し指を当てると、その感触を確かめるように、ゆっくりとなぞる。
 指先からは、冷たい革の感触が伝わってくる。
 そして翡翠は、首輪に繋がれた鎖の端を握る、邪淫皇の顔をじっと見つめた。 
 今、彼女の顔には、不安や恐れの色はない。
 ただ、この男の『所有物』になった、その安堵感があるだけであった。
「我が眷属となった貴様に、『邪水晶』の名を与えよう。これからは、我が奴隷として仕えるが良い」
「はい、邪淫皇様・・・」
 翡翠はゆっくりと目を瞑ると、そう言って再び邪淫皇の胸にしなだれかかった。

 斯くして『神凪翡翠』は、『邪水晶』となった-

「はむっ、れろっ、ちゅっ・・・」
 沙夜子は、精液で汚れた邪淫皇の肉棒を舌で清めてゆく。
 邪淫皇は膝下で肉棒に奉仕する沙夜子の姿に目を細め、ペットを慈しむようにその髪を撫でつけた。
 沙夜子はその愛撫を心地良さそうに受け容れ、一層奉仕に熱を入れる。
 その姿は正に、ペットそのものであった。
「ククク、邪水晶、良くやった。褒めてつかわす・・・邪水晶、如何した?」
 邪淫皇は邪水晶にそう労いの言葉をかけるが、邪水晶の反応がない。
「邪水晶」
「・・・はっ、申し訳御座いません、邪淫皇様・・・お褒めのお言葉を頂き、恐悦至極に存じます」
 再び邪淫皇に名を呼ばれた邪水晶は、珍しく慌てそう答えると、頭を垂れる。
 普段らしからぬ邪水晶の反応に、邪淫皇は訝しげな表情を浮かべた。
 だが、肉棒に奉仕していた沙夜子の頭を掴むと、
「・・・良い、下がれ」
 そう沙夜子に命じる。
「はっ」
 沙夜子はその命に従い肉棒から口を離すと、邪淫皇に一礼し、再び邪水晶の左後方へと下がった。
 邪淫皇はそれを見届けてから、居住まいを正し、邪水晶に相対した。

「して、邪水晶。これから、如何様にする気ぞ」
「はっ」
 パチン
 邪水晶が指を鳴らすと、ブラックのコスチュームが溶けるように消失し、沙夜子の体は新たな戦士のコスチュームを纏ってゆく。
 コスチュームの基本はメイデン・フォースの時のものと大きな変わりはない。
 だがその姿は、メイデン・ブラックが奴隷化したことを際立たせるものであった。
 胸部と局部は大きく切り開かれ、それを強調するようなデザインとなっており、局部は鈍い光沢を放つ金属の股当て-貞操帯で覆われている。
 また、股間にそそり立つイチモツは、バンドで固定されその存在感を誇示していた。
 そしてその首には、奴隷の証である革の首輪が嵌め込まれ、胸には邪水晶の所有物であることを示す、黒水晶の刺青が施されている。
 邪水晶は、その沙夜子の姿を確認するように一瞥すると、邪淫皇に向き直った。
「この者を使い、メイデン・フォースの者どもを篭絡し、女は性奴隷に、男は淫獣へ堕としてご覧にいれます。やがては、メイデン・フォースそのものが、我等の手駒となりましょう」
 その邪水晶の提言に、邪淫皇は鷹揚に頷いてみせ、邪水晶と沙夜子を見比べる。
 メイデン・フォースの隷属化-
 今までの戦歴を考えれば、荒唐無稽な話だ。
 だが、この女であれば、それも成し遂げられるかもしれない。
 その確たる成果の一部は、既にここにあるのだから-
「ククク、面白い・・・よかろう。今後の指揮は邪水晶、お前に任せる」
「はっ、有り難き幸せ。必ずや、メイデン・フォースを邪淫皇様の御手に」
 
 やはり、この女を手に入れて間違いはなかった。
 己の膝下で忠誠の意を示す邪水晶を眺めながら、邪淫皇はニタリ、と邪な笑みを浮かべる。
 最高の性奴隷にして、比類無き智将。
 いずれも得難い存在を、この女はその身一つで具現しているのだ。
 そしてその女によってもたらされた、新たなる奴隷-
 邪淫皇は、彼女の先に控える存在に目を遣る。
「メイデン・ブラックよ・・・貴様には、『淫亀(いんき)』の名を授ける。邪界の奴隷戦士として励み、かつての仲間を淫獄に堕とすが良い」
 沙夜子に性奴隷の名を授けた邪淫皇は、残る宿敵がこの女の如く墜ちる様を想像し、再び邪笑を浮かべた。

「はっ、膝下に加えて頂き、有り難き幸せ・・・淫亀、全力をもって邪淫皇様にお仕え致します」
 新たに邪界の奴隷戦士『淫亀』となった沙夜子は、歓喜に満ちた表情でそう服従の誓いを立てる。
 家名や使命に縛られていた過去の自分が、今の淫亀には愚かしい物に思えてならない。
 圧倒的な存在の前にひれ伏し、欲望のままに振る舞う-
 この素晴らしい世界こそ、あるべき世界。
 未だくだらぬ世界に囚われ、それを正義と信じて疑わないかつての仲間が汚辱に塗れ、堕落する姿を想像し、淫亀は肉棒を滾らす。

 新たな主従の誕生を前に、邪水晶は感慨に浸る。
 『漸くここまで辿り着いた・・・』
 淫魔と化してからは、邪淫皇の性奴隷を手始めとして、次に奴隷戦士、そして軍師と、徐々に邪淫皇の信頼を得ながら、己の腕を存分に振るえる地位にやっと辿り着いたのだ。
 そして彼女は、
「瑠璃、待っていて・・・貴女も、この淫獄に堕としてあげる・・・ふふふ・・・」
 誰に聞こえることもない声でそう呟くと、その内に秘めた想いを新たにするのだった。

 それぞれの思惑が交錯する中、
 『メイデン・フォースの隷属化』
 に向け、今歯車が回り出す-

< 続く >

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