グノーグレイヴ2 第一話

―第一話 救済天使ヒルキュア―

[0]

「報告します、依然として対象者の行方は不明。もうしばらく時間がかかるかと思います」

 捜索から帰ってきたブリュンヒルドがボスに報告を終える。雲ひとつない青空の下、神保市を望める神保スカイタワーの最上階でボスはブリュンヒルドに問う。

「しばらく、とは何分だ?」

「えっと、あの、それは……」

 答えられるはずがない。人口二万人の神保市を隈なく探しても見つからなかったのだ。いや、そもそも二万人の内一人だけを探すことは、砂漠の中で指輪を探すくらい難しいことだ。ましてや道具ではなく、探すのは人間。動く生物。探した場所に戻ってきていてもおかしくないし、知識があるため隠れていた可能性もなきにしもあらず。

「すぐに見つけ出せ。奴だけは新世界に居てはいけないんだ」

「はっ」

 ブリュンヒルドが空に舞う。落ちていく細身の身体が風に舞い空高く羽ばたいていくのを眺めると、ボスは一人事を漏らした。

「……信念ではなく執念か。生き続けたいと言うお前の欲が俺の『力』すらすり抜けたのか」

 新世界―トラディスカンティア―へ行けるのは存在を認めた者だけのはずだった。しかし、悪魔は想像を超えるほどの執念深さで付いてきてしまったのだ。

 悪魔の名前は握出紋。人の皮を被る上級悪魔。

「だが、見つけたら最後だ。俺の使者が必ず仕留める」

 ボスが用意した正義の使者――

 ――救済の天使ヒルキュア、

 追撃剣士ポリスリオン、

 制裁戦士ジャッジメンテス、

 孤狐魔術師フォックステイル

 予兆の魔導師センリ

 千の弓使いメタモルフォーゼ

 採魂の女神ブリュンヒルド――

 ……

 …………

 ………………

 顔を覆っていた布が風に舞う。表情が以前と全く変わった、千村拓也が新世界を見つめていた。

「握出、紋」

[プロローグ]

 世の中には望むことすら叶わぬ者が居る。

 毎日を必死に生きている人たちに、未来を問うほど残酷なことはない。

 上を見ることがむなしく、

 高みへ昇ることが苦痛でしかない。

 身動きの取れない厚い殻。他者が作り出した足枷と杭。

 どんなに足掻いても殻を破けぬ者達の――絶望を知れ

 ――絶望をすべて活力に変えよう。

 私は絶望を希望に変える、救済の天使―ヒルキュア―

[1]

「まったく、酷い話ですよ」

 握出はつまらなそうに一人言を漏らした。

「じぇんじぇん思い通りにならない」

 観覧席に座って優雅に舞台を眺めようと思ったら、まさか客いじりとして舞台の上に引っ張り出されるとは思わなかった。

 グノーグレイヴに包まれた神保市は、握出の期待を裏切り、何事もない日常を繰り返していた。学校に行く生徒、ぎゅうぎゅうの電車に乗って会社に向かうサラリーマン。

 握出もまた『営業』として猛暑の中、スーツを着て飛びまわっていた。汗が背中を伝う、顔面が火照る、肌に貼りつく。気持ち悪い。室内で冷房をガンガン浴びていたい。

 しかし、それも出来ない。

「さて、私は何をしたらいいのでしょうか?」

 おかしなことを言う。しかし、握出の言葉は間違っていない。

 エムシー販売店はなくなったのだ。潰れたのではない。

 本当に、なくなったのだ。

 握出と供に消え、物静かな場所で再建しようとした矢先の出来事だ。握出の知らない所でエムシー販売店は忽然と消えたのだ。会社が行方不明なんて聞いたこともないが、働く握出だけが残った。社長もいない、仲間もいない、一体どんな拷問だろうか?辞めたいにも関わらずエムシー販売店の扱う商品、グノー商品と供に生きる握出にそれだけは絶対に出来ない。つまり、今の握出にとって営業とは何の役にも立たない。会社もないのに営業など意味がない。

 永遠に続く拷問。

 握出は退屈していた。

「それもこれも、彼の功績ですか――」

 千村拓也。握出の望んだ完璧な理想郷に、待ったをかけた張本人。何をしたか覚えていないが、彼が世界を中途半端にしたことだけは分かっている。

 世界は分裂などしない。青い惑星一つしかない。それを彼の好きなキャラクターを呼び、今やエルフやオーク、プリンセスまで顔を見る始末。魔法使いがファイヤーを唱え、電子回路は全てショート。

「がっかりの連続ですよ」

 現在社会はメチャクチャ。SF、ノンフィクション、ライトノベル並みのつまらない世界に変わってしまった。

 一度彼と会ってキツイお仕置きをしなければいけない。

 現在が嫌いだった訳じゃないが、ここまでくだらなくもなかったと握出は思う。

「……まあいいでしょう。放っておいても人は出会うのです。今はこの退屈を紛らわせることを探しましょう」

 そういう楽観的な所は握出の強みである。だが、明らかに握出は怒っていた。営業をやらなければならないことでも、世界を中途半端にしたわけでもない。

 退屈なことが一番嫌いなのだ。

 生きるのがつまらない。何か楽しみはないだろうか。握出は楽しみを探していた。

「この世の中に宇宙人、未来人、超能力人のモノなど簡単に見つかるでしょう。今を楽しむためなら歩き続けましょう」

[2]

「すみません。献血をお願いします!」

 歩いている傍ででかい声で呼びかける元気な少女がいた。

「うおおっ!」

 握出は少女を見て驚いてしまった。

 白をベースにした羽の生えたコスチューム。貧乳なのに身体のラインがくっきりと映るレオタードを着ているせいか、男性の目をくぎ付けにさせる。

 エロゲ?魔界天使ジブ○ール?

 ……そういうものも握出は押さえている。

「救済天使ヒルキュア。今日も悲しんでいる君たちを救いに来たよ」

 少女がポーズと台詞で決める。漫画ならキュピンという星マークが瞳から飛び出してくるような可愛い笑顔だ。だが、救済はいいとして天使って…………

 献血センターで働いているバイトだろうか……

「イタタタタタタタ……」

 思わず顔を背けてしまう。

 コスプレで表に出られるなんて恥ずかしくて見てられない。だが、世間では評判が良いのかわからないが、成人になったばかりの若い男性が次から次へと献血センターみたいな場所に入っていく。

 入る際に「ありがとうございます!」なんて声を掛けられているのをみると、いわゆるファンという者たちではないだろうか?

 そういう売り方もあるのか、可愛いは罪とはまさにこのことだ。だが、これ以上近づく気はしなかった。

 握出は少女に背を向けた。

「あっ。待って、お兄ちゃん!」

 足を止めた。握出が振り向くと、握出以外に少女を無視した男性がいたようだ。少女は彼に向けてなにかを向けていた。

 注射針だ。しかもやけにでかい。両手剣くらいありそうだ。

 ――それを、

 ――男性に、

「おや、何故気付かないのでしょう?」

 ――ブッ刺した。

[3]

「うっ」

 男性がうめき声をあげた。そのくらいで済んでいる方が凄いだろう。でも、違った。段々彼の表情が蕩けてきたように高揚としてきた。

「ほらっ、最初はチクッと来るけど、だんだん気持ち良くなってくるでしょう?『何も考えられなくなるでしょう?』」

「……はい」

「『お兄ちゃんの血で、貧困の子供が救われるんだよ。お兄ちゃんんもこの気持ちよさを味わっていたいよね?』」

「……はい、はい」

 妖しく笑う少女を尻目に男性は二度返事を頷いた。少女は満足そうに注射針を抜いた。「ああっ」なんて男が喘ぎ声をあげた。

「じゃあ、入ってくれるよね?」

「あぁ………はい」

「ありがとうございます」

 少女の笑顔に迎えられながら男性は献血センターの中へ消えていった。

[4]

 なんですか、今のは……?

 催眠?媚薬?

 男性の態度が急変し、彼女の言う通りに行動した。それを目の当たりにしてしまったら――

 ――楽しくなっちゃうじゃないか――

 握出は満面の笑顔だった。

 ――まさか、私と同じ『力』を持つ奴がいるなんて!

 歩くスピードを早めて少女に近づく。でかい注射器は少女にはやはり不釣り合いだが、少女はまったく気にしていないように注射器を背負って次のお客を探していた。

「こんにちは、御嬢ちゃん」

 少女が握出に気付き顔を上げた。三つ網にしている髪の毛がちょろっと揺れた。不審な表情を浮かべたのは一瞬、すぐに握出に負けないくらい眩しい笑顔で握出を覗いた。

「お兄ちゃんも献血をしてくれるの?」

 少女が握出に献血をしてくれることを期待しているのだ。握出は笑顔を崩さずに答えた。

「いいえぇ。おじちゃんはそんな偽善に興味ないんだ。興味あるのは――」

「偽善じゃありません!世界には困っている人々がいます。餓死している子供がたくさんいます!」

 握出の声を覆う高い声で、少女は否定をする。

「ああ、だから、きみはその子を知っているの?海外いったことあるの?」

「知りません。でも、居ることは知っています」

「それは何処から知ったの?目で確認してないってことは、誰かの話を聞いたってことだよね?でもそれが、『もし作り話だったら』、どうするの?」

「そんなはずがありません!私は困っている子供たちの為に――!!」

「困っているのでしたら私の方がお金やら時間やらなくて困っています!まず世界にいる子供なんかより、此処にいる私を助けてください!!」

「な、なにその理屈……」

 少女が一歩退いた。大人気ないと言わんばかりに笑顔が消えて侮蔑の表情を浮かべていた。握出は少女の表情が気に入ったのか、更に調子を良くする。

「助けてくれないんでちゅか?そのピッタンコで貧しい乳房からお乳を分けて頂けたら、今日も元気100%で乗り切って見せます!」

 握出が一歩を強く踏み込んだ。

「し、信じられない!この変態!!」

 次の瞬間、バチンと握出は少女に平手打ちを喰らわした。ふいうちを受けた少女は地面に転がった。

「黙りなさい、偽善者!変態でも嘘偽りなく生きる私の方がよっぽど善者ですよ」

 子供の喧嘩に見えるが、やはり少女の方が先に我慢の限界が来たようだ。

「偽善者ですって……もう許さない!」

 背中にある四つの翼が大きく広がり、天使の輪―エンゼル・ハイロゥ―まで少女の頭に浮かんで見えた。これが少女の戦闘態勢というものだろうか、少女が先程見せた大きな注射器を取り出した。

「私は救済天使―ヒルキュア―。正義の為に戦っているのよ!私が頑張れば難民、貧民が救われる。その為に、裕福な家庭に育った『ゆとり』を倒さなければならないの!全ての民は平等に生きる権利があるから!」

「おうおう、政治家さんが聞いたら喜びそうな台詞ですね、でも、聞いていたのはただの営業部長。その台詞になんの感銘も受けません」

「結構です。あなたのその自分勝手の思考、私が変えて見せる!!」

 たあああああ!!!という声で駈け出した少女に握出は避ける間もなく、

 ――ぶすぅ、

「ぬあああああ!!!」

 注射針は心臓へ突き刺さり、次第に握出の表情が蕩けてきた。

「どう、気持ち良くなってきたでしょう?『たゆたう快楽の調合薬―ナース・エクスポートレーション―』に打たれた者は骨抜きになっちゃうんだから。そして私のいいなりに成るの。あなたも私にメロメロよ」

「あぅあぅ……」

 涎を垂らし、だらしない表情になった握出にヒルキュアは満足そうだった。

「効いてきたようね。『じゃああなたも私に血をくれるかしら?』」

 ヒルキュアが顔を覗く。握出の答えをワクワクという効果音付きで待っているようだ。握出は頷いた。

「うん。あげる」

「ありがとう!」

 ヒルキュアが喜んでいる最中、握出はヒルキュアの頭を掴むと、一気に下半身の逸物を咥えさせた。

「ゴフッ!?」

 自分の身に何が起こったか追いついてない。握出を上目使いで見る。蕩けた表情の僅かの隙に、ニヤリと歪に嗤った表情が見えた。

「どうぞ、白濁の精子汁だ」

「ブブッ!!」

 奥まで咥えこんだ瞬間、握出の逸物から精子が飛び出す。ヒルキュアの喉の奥まで吐きだされた精子は当分違和感として付き纏う。ヒルキュアはむせながらも反感を抱く。

「ごほっ、ごほごほ……、な、なにをするの!!?」

「ぷはあ。気持ち良かった。まるで湯上りのビール一杯を喉から通し、下から出すまでの過程のように気持ちが良かった」

 けろっとしている態度。『たゆたう快楽の調合薬―ナース・エクスポートレーション―』は全く効果を露わしていない。

「あなた、なんで効いてないの?」

「効いていますよ?私の逸物が見るも無残な姿じゃないですか」

 可哀想にと、握出は自分の逸物をナデナデする。

「もう一発!」

 ヒルキュアが再び『たゆたう快楽の調合薬―ナース・エクスポートレーション―』を手にもつ。が、握出は一瞬で差を詰めると、ヒルキュアの首を掴んで絞めあげた。油断したようにヒルキュアは『たゆたう快楽の調合薬』を落としてしまった。苦しさから必死に解放されようと握出の腕を掴むが、決して握出の手は離れない。

「やめましょうね。子供の言い分に耳を聞くつもりはありません。正義だ、悪だなんて人によって変わります。あなたにとって私が悪でも、私にとって私は正義です。ですからあなたの攻撃は私には聞きません」

「そんな、私が悪と決め付けたのなら、あなたは私にとって悪じゃない!」

 その言葉を聞いた瞬間、握出は大喜びで笑った。

「ほらっ、平等を望むくせに正義だ、悪だと決めつける矛盾。あなたが正義なら私も正義です」

 平等なら全員が正義。貧民、難民も富民も『ゆとり』もいない平民のはずなのに、少女の中には上下関係がある矛盾の指摘。結局、救済天使―ヒルキュア―は偽物だ。喋り方も、年齢も、行動も、男を喜ばすための偽善行為。

 だから、握出が本物を与えてやる。地面に転がる『たゆたう快楽の調合薬』を拾うとヒルキュアに向けて注射針を突き出した。途端にヒルキュアは焦りだす。

「私に『たゆたう快楽の調合薬』は効いております。さて、問題です。もしこれをあなたに打った場合、効果は出るでしょうか?出ないでしょうか?」

 少し押しただけでピュッと針先から出る液に、恐怖を抱く。

「や、やめて!」

「おやっ、自分の理念を信じているんでしょう?まさか、他人には大量に注射針を刺しているにもかかわらず、自分には一度も刺したことがないなんてことありませんよね?……あらあら?まるで寄付してくださいといいながら豪邸に住んでいる自称フェニミストと同じじゃないですか?それじゃあ――」

「――あなたは悪です」

 と、握出はヒルキュアに『たゆたう快楽の調合薬』をブッ刺した。

[5]

「きゃああああああああ!!!!!!」

 中に入っている液を注入する度にヒルキュアの身体はビクンビクンと震える。やがて全ての液体が体内に入ると、握出はようやく少女を解放した。

 ぐしゃっと崩れ落ちる身体。起き上がることも出来ないのか、

「はぁ……はぁ……あつい、あつい」

 弓なりに身体を逸らして身体中を掻き毟っている。ぴったり張り付いたレオタードも逆に痒いらしく、隙間から手を入れて細い身体を掻き毟っている。汗か分からないものが服を濡らしている。

「私も手伝ってあげますからね」

 握出が全身をくすぐるようにヒルキュアを触り始める。想像できないくらいに柔らかい手つきに痒さとはまた別の快感が植えつけられる。

「やあ!!……気持ちわるい」

「気持ち悪い?気持ち良いの間違いでしょう?まだ身体が快感に慣れていないだけですから、この気持ちに素直になればいいのです」

 サワサワ、と擦る握出のゴツゴツした手が、ヒルキュアの初々しい肌をくすぐる。

 握出の言われたとおりにヒルキュアは誰かに全身をなでられたことがなかった。込み上げてくる気持ちを何て言うかわからないのかを知らなかった。気持ち悪いというのは間違いだったかもしれない。

 気持ち良い……

 そう問われるだけで心が熱くなってさらに身体の内から感情が込み上げてくる。

 気持ちいいという感情が変化していく。

 もどかしい……

 ヒルキュアの表情は何かを期待しているように高揚していた。まるで風呂をあがったばかりの女性の表情だ。

 つぶらな瞳が何かを訴えかける。

(『たゆたう快楽の調合薬』の効果はすさまじいですね)

 握出がうっすら生地の上から浮かんでいる乳首に爪を立てた。

「ひぅ!!」

 一瞬にしてヒルキュアの身体に電流が流れたように痺れた。媚薬によって全身が性感帯になっているのだろうか、ヒルキュアにとって一度も感じた事のない乳首からの甘美を味わった。

 逃げようにも逃げられない。握出のしたいように触られるダッチワイフ。

 時々与えられる快感をもう一度味わいたくて、ヒルキュアはされるままになっていた。

「大変ですね。もう下半身ビチャビチャジャないですか。濡れるの早すぎですよ。これは、お注射が必要ですね」

 注射という言葉に少女が反応した。

「頂戴、おちゅうしゃ、ちょうだい」

 涎を垂らして悦びを露わにする少女に、先程の正義の姿は微塵もない。天使の輪も翼もない、そこには大人の階段を上った少女がいるだけだ。

「いいですね。先程と違って快楽に溺れたきみは魅力がありますよ。これなら私も楽しめそうです」

 握出が服を脱がそうと触っただけでヒルキュアは逃げる様に身体をよじらせる。それが面白くて握出はヒルキュアを上から押さえ付けて服を脱がす。触ったり、時々無意識に肌同士が当たっただけでヒルキュアは喘ぎ声をあげた。服を脱がすだけで大変だったが、握出の下半身だけは反比例して元気になっていった。脱ぎ終わった時には逸物は立派にそそり立ち、ヒルキュアのおまんこはびしょ濡れで、全ての準備は整った状態だった。

 挿れるか挿れないかの状態でおまんこに擦りつけている。それだけでヒルキュアは喘いで自ら咥えこもうと腰を動かすが、握出が気付いてあと少しで挿れられない。

「挿れてよ!もう駄目なの!」

「んー?どこに挿れてほしいんでちゅか?」

「ここ!私のおまんこに!!」

「そんな大きな声で喘いじゃって、あなたの方が変態ですね」

「お願いします!挿れてください!!わたしのこと、変態って呼んでいいから!!」

 天使の堕ちた声を聞き、握出も大満足だった。

「いいでしょう。おらあ!!」

 ぶちゅっと、体内の何かが付き破られた感覚と、今まで未使用だった蠢く触手の同時の快楽が襲いかかる。狭いながらも気持ちよさは他の誰よりも負けない。

「ああ、あっ、ああああん!」

 連結部分から赤い血が滴り落ちる。少女も涙を見せながら喜んでいる。今まで我慢していた快楽を味わってしまった以上、もう二度と元に戻れないと握出は悟った。

 これは握出なりの御褒美。新たな自分―きゅうさい―の発見と、次の自分―てんし―へ進化する瞬間。

 膨張した逸物から精子を発射する。

「逝きますよう!!」

 体内に流れる感覚。精子を吸うおまんこの締まり具合。

「ああん!イクイクイクイク、イクウ――――――!!!!!」

 逃がさないように吸いつく吸盤を振り切り、逸物を外に出す。その時に壁に擦れて少女は連続で絶頂に迎えてしまった。ぐったりしているヒルキュアだが、それでも握出は、

「んん、まだいけそうですね。どんどんいきましょう。快楽に身を任せるのです」

 少女に笑いかける。少女もまた握出に微笑んだ。

 そこに先程献血センターに入った男性が外に出てきた。

「あーいてえ。どうして入っちまったのかな?」

 と、握出と目を合わし、続いてその横で転がっているヒルキュアを見た。

「おい、救済天使―ヒルキュア―がやられているぞ」

 男性の言葉で、他の男子もやってきた。握出はそんな状況に臆することなく、

「何を見ているのです?『一緒に楽しみましょう』」

 むしろ果敢に男性に働き掛ける。握出の声に耳を傾けた男性は一斉に下半身を露出させた。それを見たヒルキュアは微笑んだ。

「きて。きて。もっと、おちゅうしゃちょうらい」

 呂律の廻ってない声で喜び、そしてまた注射を打たれる。

「あああああああああああああああんんん!!!」

 快楽にたゆたう少女はもはや溺れたも同然だった。

[エピローグ]

 全てを終え、失神している少女。握出は楽しんだ後にこう告げたのだ。

「さて。愛だ、正義だと名乗っていた天使も私の僕です。もう絶対逃がしません。あなたを束縛する名前を差し上げましょう」

 握出が『名刺』を取り出す。何も書かれていない無字の紙に、ヒルキュアは吸い込まれていった。目の前から消え、代わりに白紙の名刺には『ヒルキュア』の人物像が描かれていた。

 正義ではなく小悪。奴隷ではなく掌握。

 契約のもと、少女に第二の人生を。

 ヒルキュアの名刺に新たな名前が刻まれていく。

 目を覚ませ。己が名を思い出せ。次に目が覚めた時、おまえの名前は――

「――『吸血鬼―ツキヒメ―』」

 名刺に描かれた人物像が、悪魔のごとく肖像と暗黒カードとなった。

 『名刺』とは本人を映す鏡。正義もまた、人によって悪に変わる。

「表と裏は紙一重、なんてちょっと面白いじゃないですか。クッ、クケケ……一体この物語の正義とはどなたなんでしょうね?……千村くん!こんな世界、私が修正して差し上げますからね!!」

 全てのものが正義になりたいのなら、拒絶不可能の『絶対の王―ガストラドゥーダ―』を誕生させるしかないのだ。その為なら、世界を敵に回してでも、私は生き抜いて見せますよ。

< 続く >

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