石のチカラ おとずれ

おとずれ

 ペンダントを渡された翌日、はるかはいつもの通勤電車で会社に向かっている。 真っ白に洗ってアイロンをかけられたシャツの胸元には、当たり前のようにペンダントが揺れている。 昔からつけていたかのように。

 電車の中は、隣の人と触れ合わないといられないほどに混み合っていて、体の向きも変えられないほどだ。 いつもこの時間は混んでいるので、はるかもあきらめきって目を閉じ、すこしうとうとする。

 ふと目が覚めたとき、なにか異変を感じる。 はじめはよくわからない変化が、だんだん明らかになっていく。 体が火照っているのだ。

 時々はるかは、夜中寝付けない時なんかに自分で自分の体を慰めるときがあるのだが、いま体に起こっている異変は、その時の火照りと同じものだった。

 こんな状況で体が勝手に火照りだすのは初めてで、はるかは戸惑う。 なんとか冷静になろうとしてみるが、火照りはとまることなく続く。 それに伴い、股間が湿り気を帯びてくるのを感じる。

「だめ、こんなところで…どうしたの 私…」

 ショーツが湿り、うずいてくる。 手を伸ばして、たしかめるわけにもいかず、太ももをすりあわせてもじもじするしかない。

「あぁ、どうしよう…」

 どうすることもできないはるか。 そんなときに、股間へと伸びてくる手を感じる。

「はっ!」

 予想もしていなかった出来事に、はるかは身を縮めて動きが止まる。 おそるおそる横目で回りを見渡してみるが女性だけで、痴漢をするような人は見当たらない。

 どうしようとおもっているはるかをよそに、誰かの手はどんどん股間へとすすみ ショーツの上から、湿っている部分に到達する。

「あぁっ…」

 火照り湿った股間におとずれた刺激に、思わず体がびくっと反応する。

「だめ…」

 もう一度回りを見渡してみるが、やはり女性しかいない。 一人見覚えのある人に気づくが、誰なのか思い出せない。

 股間を触る手は、その動きを増し、獲物をとらえるように 指ではるかの幼いクリトリスを刺激し始める。

「あん…だめ。おねがい、やめて…」

 声を出す訳にもいかず、その動きをとめようと手を動かそうとするが なぜか手が固まったように動かない。

「なんで!手が…うごかない…」

 抵抗することもできないはるかは、誰のかわからない指でさわられるままになっている。

「あん…こんなのだめ。…きもちいい…」

 初めての体験にとまどいながらも、誰かの手で触られるということに、すこしずつ感じ始める。 どんどんクリトリスを刺激されて、声を殺して感じるはるか。その指の動きもどんどん強くなっていく。

「あん、だめ…いっちゃう…」

 逝きそうになるはるかの高まりを知っているのか、快感をあたえていたその指がすっとしまわれ はるかは取り残されてしまう。

「あれ…どうしたの…」

 もうすこしで逝けそうだったのに、もうすこし感じていたかったのに。そんな思いを感じながら 次第に冷静さを取り戻すと、急にいまの自分の状況に気がつき恥ずかしさを感じる。

「わたし、何考えてるんだろ!こんな恥ずかしいことになっているのに!!」

 ちょうど電車は、会社のある駅に到着する。

 ドアが開くと同時に、はるかは逃げるように電車をでて、足早に会社に向かう。 いま起こったことが、夢であることを祈るように。

 慌てて電車をでていくはるかを怪しく見送る女性。 それは、はるかにペンダントを渡した女性だった。

< つづく >

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