おしえて魔女先生! ~錯誤魔法編~

午前10時55分。

「はぁ……これを消すのかぁ……」

 今日の日直だった柚木ミイコは、3時間目の板書でびっしりと埋まったホワイトボードの前で途方に暮れていた。

 数学担当の高杉先生は、若い上に180センチを超える身長の持ち主であり、女子からの人気も厚い。

 それ自体は大変結構なことであり、実のところ、ミイコもそんな高杉先生に密かに憧れている女子のうち一人だったのだが、ホワイトボードの上端ギリギリまで使って板書するのだけは正直勘弁してほしかった。

 150センチしかないミイコの背では、下から4分の3程度までしか手が届かないのだ。

 だが、自分の背の低さを嘆いていても始まらない。前の授業の板書を消すのは日直の仕事なのだ。

「よっ、と……ああもう……!」

 教壇の上でつま先立ちになり、精一杯腕を伸ばすがやはりわずかに届かない。結局ミイコは、ぴょんぴょんと教壇の上でジャンプしながら上の方の数式を消し始めた。

 4時間目の桃川先生の授業が始まるまでに、これを消してしまわないと。

 あまり考えられない話だが、板書の消し残しがあるとかいう理由で『実習』の対象に指名などされてはたまったものではない。

 ミイコは、先週の授業中にノートに小説を書いていた男子が桃川先生に見つかり、没入魔法の実習としてクラス全員の前で自作のファンタジー小説の主人公になりきり、「それでも、大切なこの世界を守るため、俺は何度でも立ち上がるんだ!」などとひとしきり恥ずかしいセリフを叫ばされたことを思い起こして身震いした。

 あんな恥ずかしい目に遭わされるリスクを考えれば、こうやって飛び跳ねながら板書を消すことなど屁でもない。

 

 しかし、目の前の板書を消すことに必死になっていたミイコは、自分の背後で悪戯っぽく目を光らせた女子が、小声で呪文を呟いたのに気付いていなかった。

「よいしょ、あとちょっと……!」

 ミイコが最上部に書かれた数式を消すために大きくジャンプすると、教室の中で思い思いに過ごしていた生徒たちの一部から、小さなざわめきが上がる。

 予習のために教科書に目を落としていた生徒や友達とのお喋りに興じていた生徒たちもその声を耳にして、不思議そうにホワイトボードの方に視線を向けると、思わず息を呑んだ。

「ふう、もう少し……ん?」

 板書の大半を消し終わって一息ついたミイコは、そこでようやく教室の様子がおかしいことに気が付いた。

 先ほどまで聞こえていたはずの談笑や、教科書のページをめくる音がぴたりと止んでいるのだ。不思議に思ってクラスメイト達の方を振り返ると、全員の視線がこちらの方に向いている。

 しまった。もしかして、まだみんな板書を写し終わっていないのに消してしまったのだろうか?

 一瞬そんな不安に駆られるが、それが単なる杞憂であることはすぐに気づいた。視線の集まっている先が、明らかにホワイトボードではなく、ミイコ本人に向けられていたからだ。

 もう少し具体的に言うならば、自分の下半身。

「みんな、何を見て──え?」

 集まった視線の先を追うように自分の下半身を見下ろしたミイコは、すぐにその理由に気付いた。

 ミイコのスカートのお尻の部分が何かに持ち上げられているかのようにふわふわと浮き上がり、その下に覆われていたはずの薄桃色の下着をクラスメイト達の衆目の元に晒していたのだ。

「き……きゃああああっ!?」

 甲高い悲鳴が2年C組の教室に響き渡った。

「──話をまとめると、こういうことね? 瀬口マリさんが、柚木ミイコさんのスカートに重量操作の魔法をかけて、教室の中でめくり上げた、と」

 教室に入るなり騒乱を目の当たりにした桃川先生は、一通りの事情を周囲の生徒たちから聞き出すと、呆れたように小さくため息を吐いた。

「一応、当人の口からも理由を伺っておこうかしら。瀬口さん、指定された授業以外で何故勝手に魔法を使ったのかしら?」

「ええー、だってー。プロテクタの力に頼らずに悪意ある魔法から身を守れなかった場合、警戒を怠っていた本人の自己責任だって先生が言ってたじゃないですかー」

「それ以上に、『プロテクタを解除した状態だからといって、許可なく他人に対して魔法を使ってはいけない』と何度も教えていたはずだけど?」

「そうだっけ? 私最近忘れっぽくてー。」

 瀬口マリと呼ばれた、幼い体つきのツインテール少女は、全く悪びれることなくとぼけて口笛を吹いた。反省の色が見られないその様子を、桃川先生は困った表情で睨み付ける。

 実のところ、マリがこうやって悪戯のために魔法を勝手に使うのは、これが初めてのことではない。というより、常習犯と言っても良かった。

 2年生に進級して暫くすると、卒業に向けての準備として、プロテクタの段階的な解除が進められる。

 プロテクタは、本人の魔法の行使を制限するとともに、外部からの悪意ある魔法による干渉をある程度無効化する装置である。そして、学生がこの装置を在学中に身に着けている理由は大きく分けて2つある。

 一つ目は、言うまでもなく『他人から魔法によって危害を加えられることの防止』。

 義務教育を卒業した生徒たちは、プロテクタなしで日常生活を送ることを義務付けられる。

 その際に、悪意ある他者によって魔法で危害を加えられる痛ましい事件が後を絶たない……というのは、桃川先生が常々生徒たちに教えている通りだ。

 だが実のところ、プロテクタを外すことによるリスクは、こういった事件の被害者となることだけではない。

 むしろ、逆のパターン──義務教育を卒業した生徒が、魔法によって他人に危害を加える事件の方が深刻とも言えた。

 魔法の力は行使者本人が考えている以上に強大である。魔法使いが街中を歩いている状態は、極端な言い方をすれば『いつでも振り回すことができる危険な武器を懐に入れて街中を歩いている』状態に等しい。

 だが、それを十分に教育せずに生徒を卒業させることで、魔法の危険性を自覚しないままで……あるいは逆に力に溺れ、人前でその威力を顕示するために人通りの多い場所で殺傷力の高い魔法を放ち、大事件にまで発展するケースもある。

 そのような凄惨な事件を子供たちが引き起こさないためにも、義務教育を卒業するまでは公衆の面前ではプロテクタを着用することが義務付けられているのだ。

 当然、ただ卒業の際に『これからはプロテクタ無しで生活してもらいますが、魔法で他人に危害を加えたらダメですよ』とだけ告げてポイと社会に放りだすような無責任な真似は教育者として許されるはずもない。

 だからこそ、魔法の力に振り回されない自制心を育て上げるために、在学中における『プロテクタの段階的解除』──即ち、一部の魔法の使用制限や干渉防止機能の無効化が実施されているのだ。

 もちろん段階的と言うだけあって、いきなり全てのプロテクタの機能を解除するわけではなく、いくつかの条件が存在する。

 1点目は、場所の制限。プロテクタの解除が認められるのは、学校の敷地内に限られる。これは、教師の目が届かい場所で学生が悪事を働かないためにも、また学外で生徒が魔法による危害を加えられないようにという配慮の観点からも当然の処置である。

 そして2点目は、使用可能な魔法の制限。特に初期段階においては、生徒が使用可能な魔法は殺傷力のない無害なものに限られる。直接危害を加えられる発火魔法などはもちろん、ほとんどの精神操作系魔法や肉体強化系魔法も使用できない。こういった魔法の使用が解禁されるのは、ある程度生徒の自制心が育っていると認められてからである。

 マリが今回使った重量操作の魔法は、そういった「無害な」魔法のうち一つだった。物体の重量を軽くするこの魔法は、日常生活において重い荷物を運んだり、普段よりも早く走ったりと活用の機会は多い魔法の一つであるため、ごく初期の段階から使用が許可されている。

 だが、無害な魔法だからといって悪用することが不可能というわけではない。今回マリがやってのけたのはそういった魔法の『悪用』の最たる例だ。

 魔法の活用方法を自分で模索する創意工夫の精神は結構だが、それ以前に「他人に危害を加えない」という最低限のルールを守れないようでは、卒業など認められるはずがない。

 桃川先生は深くため息を吐いた。どうやらこの生徒に対しては、口で説明するだけで理解して貰うのは無理のようだ。

「仕方ないですね……大事なルールを忘れるような子には、魔法で危害を加えられる側の気持ちをしっかりと体験してもらうために……今から瀬口さんには特別演習室での『実習』に付き合ってもらいましょうか」

 そう言って、懐から赤いタグのついた鍵を取り出す。

「……特別演習室? ここじゃなくて?」

 その言葉に、ぴくりとマリの眉が動く。周囲のクラスメイト達にも、一瞬にして張りつめた空気が流れる。

 それもそのはず、特別演習室というのは、教師であろうと通常は使用が制限されている、爆発や猛毒といった危険性の高い魔法を扱うための部屋なのだ。

 いくらなんでも授業の一環で命まで取られることはないだろうが、まさか殺傷力の高い魔法の実験台にされるのだろうか?

 ──いや、単なる脅しに違いない。

 教育上の指導とはいえ、実際に教師が生徒に怪我などさせてしまっては大問題だ。ここで怖気づいてしまえば、桃川先生の思う壺だろう。

「……ふん、望むところよ!」

 小さく鼻を鳴らすと、教室移動に備えてマリは筆記用具を纏め始めた。

 ──特別演習室。

 名前の仰々しさに反して、この教室の内装は他の一般的な教室とそこまで変わらない。規則的に並べられた机や椅子、そして前後に備え付けられたホワイトボード。だが、それはあくまでも生徒に威圧感を与えないための配慮であり、ここは実態的には他の教室と大きく異なる役割を担っていた。

 わざわざ生徒たちには説明していないことだが、この部屋は通常の空間では法令上扱うことができない特別指定魔法の使用が許されている、数少ない場所である。当然、その用途も「教育目的」という名目に限られる。

 危険な魔法を扱うという性質上、セキュリティの強さも校内で随一である。施錠管理は当然のこと、使用する場合は有資格者による事前申請が必要であり、かつ室内には複数の監視・警報・監禁といった機能が常時備え付けられている。

 その全貌は桃川先生ですら把握していないが、万が一特別指定魔法で生徒に肉体的な危害を加えようものなら、その瞬間に職員室や近傍の警察署に通報が飛び、教員免許は即時剥奪された上に実刑も免れないことは確かだ。

 そういった背景もあり、桃川先生でもこの特別演習室を実習に使うのはせいぜい年に1~2回といったところだ。

 そして、それは同時に本日の授業で扱う予定の魔法がいかに危険なものであるかを意味していた。

「──さて、今回の実習で扱う魔法に関してだけど……『錯誤魔法』については先週の授業で習ったわね。高橋君、錯誤魔法の概要を説明してくれる?」

「あ、はい。思考回路の一部を混乱させて、五感からの入力を変化させたり、判断ミスを引き起こさせる魔法です」

「その通り、よくできました。さて、錯誤魔法はその性質から、非常に悪用されるリスクが高い魔法でもあるの。それを今回は体験してもらおうと思います」

 懐からディスペラを取り出し、瀬口マリのプロテクタにかざして呪文を唱えると、プロテクタを普段包んでいる淡い光が消える。外部からの魔法に対する防護機能が解除された証だ。

「精神に悪影響を与える魔法全般は、魔法による防護を使わなくとも、心身ともに健康な人間ならば生体的な防護反応が働くことは前にも教えたわね。

錯誤魔法もその例にもれず、通常の精神状態では生体的な防護反応だけでもかなりの影響が軽減されるわ。

ただ、ここで気を付けてほしいことが2点あるの。

 一つ目は、健康な状態でも完全に防護できるわけではなく、あくまで影響を軽減するだけということ。だから、常日頃から適切な防護は絶対に怠らないでね。二つ目は、当然肉体や精神が弱っていれば防護機能はその分弱まるということ。だから、悪意のある人間は、そういった弱まった人間を狙ってくるか、あるいは自ら精神的に無防備にさせるための手を打ってくることが多いの。

 といっても、口で説明するだけでは分かりにくいと思うから、実際に精神的に無防備になった状態と、その状態で錯誤魔法を受けた場合の影響を見てもらいましょう」

 桃川先生は棚の鍵を開け、中からしっかりと梱包された小さなボールペン大の物体を取り出した。

 魔法を行使するための魔道具の中には、その機能によっていくつかの分類がある。

 多くの社会人が日常的に携行しているものは、日常生活を送るうえで必要な全般を円滑に行使することを補助するための汎用魔道具と呼ばれる。一方、この特別演習室に保管されている魔道具のうち多くは、一般的には行使できない魔法を発動するために使われる「専用魔道具」と呼ばれるものだ。

「さて……これは『精神待機』の魔道具といって、専用魔道具の中でも特に扱いに注意が必要なものに分類されるわ。使う前にいくつか注意事項を説明すると、この実習中、私以外の人間は決して瀬口さんに勝手に触れたり、瀬口さんに対して魔法を行使しようとしないこと。あとは言うまでもないと思うけど、この魔道具に触れることも絶対に禁止。精神待機の魔法は、今回のように教育目的で使用する場合を除くと、ほとんどが人命救助などの医療目的に限定されるわ。要するに、意図的に精神と肉体の抵抗力を失わせることで、治癒魔法の効果を増幅させたり、痛みによって患者が暴れるのを防止したりするの。

 ただし重要な注意点として、精神待機状態の人間は精神的にはもちろん、肉体が持つ本能的な防御反応も働かなくなるから、特別な資格を持っている人以外が触って万一にでも怪我なんかをさせてしまった場合、重罪に問われることもあることは絶対に覚えておいて。

 例えば立っている人間をそのまま待機状態に落とした場合、それだけで膝から崩れ落ちて怪我をすることになるから、まずは安全な場所に横にさせるか、椅子の上に座らせるみたいに、全身の力が抜けても安全な状態を確保すること」

 注意を促しつつ、慎重に周囲の生徒たちの反応をうかがう。何せ、特別演習室で指定魔法の行使中に生徒が何か危険行為を行って、万一の事態に発展した場合に最も重い処罰を受けるのは監督責任者である桃川先生なのだ。余談だが、『精神待機』の魔道具には資格者以外が扱えないように強力な制御魔法がかかっているため、仮に生徒が変な気を起こして掴みかかってきたところでこれが悪用される心配はない。

「というわけで……瀬口さん、その椅子に座ってくれる?」

 桃川先生が教壇の上に置かれた椅子を指差すと、マリは多少不安そうな表情を見せつつも、しぶしぶと言われた通りに腰を掛ける。もちろん、そのような無防備な状態になるのは嫌だが、わざわざこの場まで連れてこられた以上、ここで抵抗したところで事態は変わらない。だったら、弱みを見せないためにも大人しく従うほかない。

「さて、これから『精神待機』の魔法を使うから、みんな影響を受けないように1メートルくらい離れてね。瀬口さんは、あまり余計な力を入れないようにしながらこの先のライトをじっと見て……」

「う、うん……」

 桃川先生のかざした魔道具の先から、小さく赤い光がちかちかと明滅する。この光を近距離から一定以上の時間見つめることで、相手を待機状態に落とす、というのがこの効果だ。

 マリには知る由もないことだが、実のところ技術的な観点だけから言えば、精神待機状態に落とす上でわざわざ赤い光を見つめさせるという手順は必要ない。警戒色である赤い光を長い間見つめさせるなどという行為は、敵対している相手や疑っている相手同士で実現させることは非常に難しい。すなわち、「一定以上の信頼関係があり」かつ「魔道具の効果を受け入れる意思がある」という条件を満たしている場合にのみ、精神待機状態に落とすことができるという、いわば安全装置なのだ。

 

「……」

 10数秒も見つめた頃、マリの表情が消え、目から光が抜け落ちる。念のため数秒ほど魔道具をそのまま保持した後、桃川先生はスイッチを切って赤い光を消す。

 ひらひらと、マリの顔の前で手を広げてみるが、マリは目を半開きにしたまま、掌を目で追うこともしない。

「これでよし、と……さて、みんな見てくれていたと思うけど、これが『精神待機』と呼ばれる状態です。この状態では目は開いていても脳が完全に眠っている状態なので、今みたいに目の前で物を動かしたりしても反応することはありません。先ほど説明した通り、意識があれば反射的に行うような反応も完全に働かないから、決して資格を持たない人間が触ったりしないように。それだけ気を付けて守ってくれるなら、もう近づいても大丈夫よ」

 恐る恐る、まるで人形のように無反応になったマリの様子を見に集まってくる生徒たち。マリは、そんな状況でも眉一つ動かさず、目の前の何もない虚空をじっと見つめていた。

「さて、先ほど反応しないと説明したけれど、それだけならただ眠っているのとほとんど変わらないわね。この『精神待機状態』が普通の睡眠状態と大きく異なる点として……沢口さん、説明してくれる?」

「え、えっと……睡眠状態は脳が完全に眠っているけれど、待機状態では実際には起きていて、外部から魔法などで刺激を与えることで、精神状態に大きな影響を与えることが可能……っていうことですか?」

「はい、よくできました……人間って、眠っている時もある程度は脳は働いていて、外部からの刺激を受けることで見ている夢の内容なんかに影響があると言われているけれど、待機状態ではそれがより顕著な形で現れるの。十分に熟練している人間が扱えば、待機状態から覚醒した後でも思考や感覚をある程度操れる程度にね。

 ……と、言葉で説明してもピンとこないと思うから……せっかくの機会ですし、『錯誤魔法』を使って実演してみましょう」

 説明しながら、慎重に『精神待機』の魔道具を元あった場所に戻し、施錠する。実際のところ、ここまでの一連の流れはおおむね事前に立てていた計画の通りだった。

 特別演習室の使用は事前申請が必要であるため、1か月近く前から本日の『演習』に向けての準備として、授業の中で何度か『精神待機』や『錯誤魔法』について扱ってきたのだ。

 あとは、誰がこの『実習』の実験台となるかだけを、当日の流れで決める予定だったのだが──不運にも、そんなタイミングで目立った行動を起こしたマリに白羽の矢が立った、というわけだ。

「錯誤魔法──というのは先週も扱った通り、相手の五感や思考を操って『現実と本人の認識の間に乖離を生じさせる』というものですね。

 そういう意味では前に教えた『制御魔法』とも共通するところがあるんだけど……制御魔法の場合は『本人の認識』には影響を与えず、『五感のインプット』の方に影響を及ぼすことで現実とは異なる感覚を与えているのに対して、錯誤魔法はインプットそのものは正常なのだけれど、相手の脳内でそれを処理する工程の方を狂わせるの。

 制御魔法は実用面で有効利用されることが多いということは前にも教えたけど、『錯誤魔法』は文字通り錯誤……つまり『エラー』や『間違い』を引き起こす効果を持つから、悪意ある目的で利用されることがほとんどだということは覚えておいて。精神系の魔法の中で、最も優先して防御すべきものの一つだから、学校を卒業した後も、決して警戒を怠らないこと。

 では、悪意を持って使用された錯誤魔法によって具体的にどのような被害が引き起こされるか……それを、今回の『演習』を通じて皆さんに学んでもらおうと思います」

 すらすらと説明しながら、懐から使い慣れた小さな杖を取り出す。基本的に、咄嗟に魔法を使わなければならないシチュエーション等に対応できるようにするため、学内ではマジックアイテムを使わずに魔法を行使することが多い桃川先生だが、今回は例外だ。万一の魔法の失敗や暴走といった不慮の事故を防止するという観点から、待機状態の生徒に対して魔法を行使する際は常にマジックアイテムを使用することが義務付けられているのだ。 

 

「さて、一口に『錯誤魔法』と言っても千差万別で、例えば物の名前を間違えさせるとか、不注意によるミスを誘発させる程度の影響が軽いものであれば、ある程度のコツさえつかめば比較的簡単にかけることができます。

 そして、逆に影響力の大きいものとしては、現実そのものに対する認識を錯誤させたり、ありもしないルールを当然のように信じ込ませたりするものまで存在するけれど、そういったレベルの錯誤魔法ほど他人に対して掛けることが難しくなることは覚えておいて。

 そして、今回紹介した待機状態の危険なところは……さっき説明したような肉体的な防御反応だけではなく、精神的な防御反応もゼロになるために、本来ならば絶対に掛からないような大規模な錯誤魔法でさえも無抵抗で受け入れてしまうということなの」

 

 桃川先生はステッキを軽く摘まみ、マリの目線の高さで小さく振るう。

「分かりやすく、現実に対する認識を大きく錯誤させる例を紹介しましょうか。

 さて、今皆さんがいる場所は言うまでもなく『クラスメイトが大勢いる、特別演習室』ですね。

 では、瀬口さんに対して錯誤魔法を使って、例えば、そうね……

 『自分以外に誰もいないお風呂場の脱衣所』だと思い込ませたら、どうなるでしょう?」

 分かりやすく生徒たち、とりわけ男子がざわつき、期待に目を輝かせる。そんな反応に桃川先生は気付かないふりをして、マリの耳元で囁きかける。

 

「さて、瀬口さん。あなたが今いる場所は、自宅のお風呂場の脱衣所です……今日は暑かったからいっぱい汗をかいてしまいましたね。

 ちょうど、お風呂も沸いています。今すぐに汗を流してさっぱりしたいですよね?

 大丈夫、ここにはあなた一人しかいないので、誰にも見られる心配はありませんよ……」

 本来、かなり信頼関係の成立している間柄で、かつ相手側からの全面的な協力があったとしてもあっても、錯誤魔法によってこのレベルの認識を操作するのは至難の業だと言われている。本人が意識せずとも本能的に強い抵抗が働くほどに、錯誤魔法は危険性の高い技術なのだ。

 そういった本能的な抵抗を少しでも和らげるために、時間をかけて被術者との信頼関係を築いたり、何度か弱い錯誤魔法をくりかえし掛けることで警戒心を弱めたり、それらに加えて、目の前の光景を思い浮かべやすくするために、じっくりと時間をかけてイメージを形成させたりといった、非常に回りくどい手順が必要となるのだ。

 だが、相手が待機状態にある場合は話が大きく変わる。ある程度錯誤魔法の心得さえあれば、前述したような信頼関係や、長ったらしい言葉を使ったイメージ作りも必要ない。相手に受け入れさせたいイメージを簡単に言葉で説明するだけで、あっさりとそれが真実であるかのように信じ込ませることが可能なのだ。

「……ん……」

 桃川先生が簡単な錯誤魔法に乗せて言葉を囁きかけると、無表情で虚空を眺めていたマリの様子が変化する。

 目が光を取り戻すとともに、椅子からゆっくりと立ち上がり、きょろきょろと周囲を把握しようとするかのように教室内を見渡す。

「あれ……? そっか、私……テニス部が終わって……」

 まるで周囲の様子が見えていないかのように、一人で納得しているマリ。「何故」汗をかいたのかの細かい理由までは桃川先生は与えていないのだが、本人の中で納得がいくように辻褄を合わせているのだ。

 このようにある程度の情報不足や小さな矛盾があっても術者の意図を最大限に汲んでくれるというのが、待機状態時に錯誤魔法を用いて命令を与えた場合の特徴である。

 

「今日はいっぱい、汗かいちゃったな……」

 ブラウスの隙間からぱたぱたと風を送りながら、大勢のクラスメイトが見ている前でぷちぷちとボタンを順番に外していくマリ。徐々に露わになってくるブラジャーに引き寄せられるかのように、周囲の男子たちが身を乗り出す。

 そして全てのボタンを外し終えると、微塵も躊躇するそぶりを見せずに脱ぎ、近くの机の上に放り投げる。小ぶりながらも女子であることをしっかりと主張する二つの膨らみを覆うピンク色のブラジャーに周囲の視線も釘付けだ。ほどなくして、ファスナーを下ろす音とともに制服のスカートまでもがブラウスとともに無造作に机に置かれる。

「ふぅ……」 

 クラスメイト達が今か今かと固唾をのんで見守る中、マリの両手はその上半身を覆う最後の砦である、ピンク色のブラジャーのホックを自らの手で外すために背中に回る。程なく、ぷち、という音とともに、乙女の秘密の双丘を守る大事な布は他ならぬ本人の手によって取り払われる。

「ん~、すっきりしたぁ……♪」

 ふぁさりという音ともにブラジャーが教室の床に落下し、そのままマリは男子たちの方に正面を向けたまま大きく伸びをする。慎ましい大きさの双丘、そしてその先端に鎮座するピンク色の突起までもが、クラスメイト全員の前で丸見えだ。  

「ふふ……はい、それでは目を覚ましましょう♪」

「ふぇ、え……。──きゃあああああ!?」

 ぱん、と桃川先生が手を叩く音が教室に響き渡る。目をパチクリとさせたマリが、数瞬後にようやく悲鳴を上げ、胸を両腕で隠して座り込む。わずか数秒間の出来事とは言え、マリの可愛らしい胸部はクラスメイト全員の目に焼き付いてしまった。

「な、なんで、どうして……私、お風呂場にいたはずなのに……!?」

「はい、皆さん、よく覚えておいて下さいね。このように、強力な『錯誤』を与えれば、あたかも自分が全く別の場所にいるかのように思い込ませることまで可能になります。

 ちなみに、周囲の様子が全く『見えていない』わけではない、ということは理解しておいてね。例えば、瀬口さんはさっき脱いだブラウスを近くの机の上に置いたでしょう?

 つまり、机がそこにあることは目に入っているけれど、『錯誤』を与えられている状態では、それを脱衣所にある別のもの……例えば洗濯籠とかだと認識するというわけ。

 実際の瀬口さんの家とある程度のずれがあっても、人間の脳って結構柔軟にできてるから、不自然にならない程度に本人の中で補正をしてくれるわ。

 ただし、これも万能と言うわけじゃなくて、本人が注意深く周囲を観察したり、あまりにも筋が通らないほどの違和感があれば『錯誤』は解けやすくなるの。

 逆に言うと待機状態に陥っていなくても、ぼんやりしていたり、周りが見えなくなるほどのパニック状態の時とか、逆に安心して油断している時なんかは、『錯誤』に陥りやすいから気を付けてね」

 楽しそうに桃川先生が説明している横で、マリはうずくまってクラスメイトに対して必死で背中を向けていた。もちろん、桃川先生の説明などほとんど耳に入っていない。

「ただし、さっきちょっと説明したと思うけど、待機状態でない相手に対して『錯誤魔法』をかけるには、ある程度の『コツ』が必要になるわ。

 簡単に言えば、相手に『勘違い』させるための十分な理由付けが必要になるの。具体的な例で言えば……そうね、例えばエレベーターの『開ボタン』と『閉ボタン』みたいに形や配置が似ているものほど錯誤させやすいわね。これは余談だけど、車のアクセルとブレーキが両方とも足元のペダルに配置されていた頃は、錯誤魔法を使った傷害事件として『車のアクセルとブレーキを間違えさせる』というものが多発していたらしいわ。

 ところで瀬口さん──そんな姿勢でいて本当にいいの?」

「……ふぇ?」

 ちらりと桃川先生は、相変わらず背中を向けて丸まっているマリに声をかける。桃川先生はステッキをマリの背中に向けて伸ばし──

「だって……ほら、小さく膨らんだ二つの可愛らしい『おっぱい』が、みんなから丸見えになってるわよ?」

 ちょん、とマリの背中に並んだ二つの膨らみ──「肩甲骨」の先端をステッキの先で叩いた。

 その途端、マリの表情が一変する。まるで信じられないと言うように目を大きく見開き、甲高い悲鳴が教室に響き渡る。

「え……? きゃああああああ!? なんで、なんで私……いつから見せてたのっ!?」

 完全に慌てふためきながら、まるで肩甲骨を周囲の視線から必死に隠すかのように立ち上がり、背中を見られないように急いで壁側の方に向ける。

「み、見ないでっ! 私のおっぱい見ないでよ!」

 必死に両腕を背中側に回し、男子の視線から一生懸命隠そうとしている場所は、実際には反対側に位置する肩甲骨だ。

 つまり、本当にマリが隠そうとしているおっぱいは、むしろ自ら男子たちの視線に差し出すかのように正面に向けられていた。

 それだけではない。肩甲骨を頑張って隠そうと両腕を背中に回しているため、マリの体は弓なりに大きく反り、全力でそのなだらかな胸の曲線や、先端でふるふると震えるピンク色の突起を周囲に対してアピールしているかのような格好になっていた。ストリッパーも顔負けの大サービスだ。

 食い入るようにマリの胸に見入っているクラスメイト達を前に桃川先生は説明を続ける。

「というわけで、錯誤魔法を使えばこんな風に色んな勘違いをさせることができること、そしてそれによってどのような被害をもたらしうるか、実感してもらえたかしら?

 そうそう、一つ説明を忘れていたわ。先ほど紹介した『待機状態』の補足なんだけど、待機状態にある人間は精神系の魔法に対して抵抗力がゼロになるということは教えたわね。

 本来であれば待機状態を解除した時点で精神魔法への抵抗も通常通り働くようになるんだけど、例外もあるの。例えば、『トリガー型』の魔法を待機状態のうちに仕込んでおいた場合。

 待機状態を解除した後に『トリガー』の条件を満たすと、本来、意識が正常であれば働くはずの抵抗力が大幅に弱まることが知られているわ」

 ちなみに『トリガー型魔法』というのは、『指定した領域に侵入者が足を踏み入れた場合に攻撃魔法が発動する』というように、事前に条件を設定しておき、その条件が満たされた場合に発動するタイプの魔法のことだ。

「これを錯誤魔法に応用した場合、例えば瀬口さんが待機状態になっているうちにトリガー式の錯誤魔法を仕込んでおけば、待機状態を解除した後でも条件さえ満たせば普段ならば絶対にしないようなミスを誘発させられちゃう、っていうことね。

 口で説明してもあまり実感が湧かないだろうから、実際に──」

「だ、ダメぇっ!」

 再び棚から『精神待機』の魔道具を取り出す桃川先生を見て、マリが悲鳴を上げる。『実習』の時間中に恥ずかしい思いをさせられるだけでも懲り懲りなのに、さらにいつ発動するかも分からないトリガー型魔法まで埋め込まれたりしてはたまったものではない。それが分かっていて、誰が待機状態になどさせられるものか。

 そんなマリの叫びを無視して、桃川先生が『精神待機』の魔道具を向ける。

「そんなに嫌なら抵抗しても構わないけど、果たしてうまくいくかしら? くすくす……ほら瀬口さん、大人しくしなさい。しっかりと『目を閉じて』くれないと、精神待機の魔法がかけられないじゃない」

 

「ぜ……絶対やだっ!」

 いくら教育の一環とはいえ、これ以上桃川先生に好き放題させてたまるものか。マリは待機魔法をかけられないように、大きく目を見開いて、目の前の赤い光をしっかりと見つめた。

……

「くすくす……お疲れ様、瀬口さん。さて、仕込んでおいた錯誤魔法は明日になれば解けるようにしておいたから、今日いっぱいは恥ずかしい『ミス』をしてしまわないように気を付けてね。

 瀬口さんは普段から注意力が足りないから、いい訓練になると思うわよ。ああ、錯誤魔法のことはちゃんと学年の他の先生方にも伝えておくから安心してね」

「……くっ──!」

 まんまと桃川先生の罠にはまって精神待機状態に落とされてしまったマリは、予告通りにたっぷりとトリガー式の錯誤魔法を仕込まれる羽目になってしまった。いくら「錯誤魔法はしっかり注意していれば抵抗できる」と言われても、どのようなトリガーがいつ発動するかも教えられていないのでは、何をどう注意すればいいのかも分からない。

 結局、その日の放課後までに、マリは何度もありえない『勘違い』をしでかして赤っ恥をかかされる羽目になった。

 5時間目の体育の授業のために体操服に着替えるはずだったのだが、何故か下着姿なのに着替えが完了したと思い込み、更衣室を飛び出して廊下にいる大勢の生徒たちにあられもない姿を見られてしまった。

 体育が終わったら終わったで、今度はしっかりと制服に着替えることに集中していたあまり、女子更衣室と間違えて男子更衣室の真ん中で着替えを披露する羽目になってしまった。 

 6時間目の国語の時間に小説の音読のために指された時に読む教科書を間違え、保健体育の「思春期の心と体の変化について」のページを大声で読み上げてしまったこともあった。

 ようやく授業が全て終わったと安心していたら、掃除の時間に教室の窓を拭く際にあろうことか自分のスカートを雑巾と間違えてしまい、窓の向こうを行き交う大勢の生徒たちに対してスカートの中を長時間にわたって大公開してしまった。

「あううううううう……もうやだー!」

 今日一日で、もう一生分の恥をかいてしまった気分だ。正直、今すぐに帰ってふて寝したい。というより、下手にこれ以上人前にいては、どんな目に遭わされるか分かった物じゃない。マリは大急ぎで下校しようと靴箱の方へ向かった。

(靴箱を間違えさせられたりしないように、しっかり気を付けないと……)

 もはや、どこにどんな罠が潜んでいるかも分からない。玄関にたどり着き、できる限り慎重に周囲を観察するマリに、靴箱にテープで貼られたある文字列が目に入った。

<ここではきものをぬいでください>

 この学校は初等部からの一貫となっている影響もあり、このように多くの学年の生徒たちが通る場所では、「ろうかははしらないでね」「てをあらおう」といった低年齢向けの注意書きがあちこちに掲示されているのだ。マリにとっても既に見慣れたものであり、特に注意を払う対象ではなくなっていた。

「ええと、ここでは、きものを脱げばいいんだよね……」

 特に疑問に思うこともなく注意書きの内容に従おうと、ブラウスのボタンに手をかけてプチプチと外していくマリ。上から3つほど外し終わり、四つ目のボタンに手を伸ばした時──

 ──違う!

 何かがおかしい。小さな違和感に気付き、マリは手を止めて思考を巡らせる。桃川先生は、「錯誤魔法にかかりたくなければ、注意力を働かせろ」とアドバイスしていたはずだ。もしかしたらこれも……

 ……そうだ、この文章は、この前国語の時間に教わった『ぎなた読み』……つまり、区切る場所によって意味合いの変わってくる文だ。

 本来の意味合いは『ここでは、きものを脱いでください』ではなく、『ここで、はきものを脱いでください』が正しかったはずだ。

 周囲の生徒たちが不思議そうな表情で自分に注目していることに気付き、慌ててマリはブラウスのボタンを閉めなおす。危なかった、気付かなければ全校生徒の行き交う玄関でストリップを始めてしまうところだった。

 だが、最後の最後で自分は真相にたどり着くことができた。桃川先生の仕込んでいた錯誤魔法に打ち勝ったのだ。そう考えると、マリは自分自身が誇らしくなってきた。

「あははは! 防ぎ方さえわかっちゃえば錯誤魔法なんて、大したことないわね! そうよ、こんなのよく考えたら『ここで、はきものを脱いでください』に決まってるじゃない!」

 そう、こうやって注意さえしていればこんな錯誤魔法など何も怖くないのだ。

 マリは、意気揚々と自分の穿いていたパンツを脱いで靴箱に放り込み、風が強く吹きすさぶ校庭へと足を大きく踏み出した。

4件のコメント

  1. 読ませていただきましたでよ~。

    隙を突かれて桃川先生が操られてエッチな姿を披露してくれるかと思ったら、そのままの展開だった件。
    もちろん、瀬口さんが恥ずかしいミスをする姿も良いのだけれども、順当すぎて逆に肩透かしを食らってしまいましたでよw

    一休さんを見事パスしたかと思ったら、見事な二弾落ち。
    思わず違う、そうじゃないとツッコミを入れてしまいましたでよ。
    確かにはいてるけどさぁ・・・w
    でも、ここで脱いでるって事は靴も履かずに瀬口さんは外に出たという事でぅよね?
    はいてくださいって書いてないし、脱ぐアクションをしたからここでの行動は終了したし。

    であ

    1. >みゃふりん
      ありがとうございますー。
      そうですね、基本的に「日常の一幕」って感じのあんまりイレギュラーのないエロが書きやすいのでそういう番狂わせはあんまりないですね。
      あんまり順当すぎるのもなんなので、攻め役がミスをする系も考えてみます。
      いうても主人公が先生なので、教育者としてでっかい失敗をするのも問題ですが。

      肩甲骨のシチュエーションと、最後のオチがやりたくて書いたお話ですw
      ちなみに靴は履いていませんが、上履きは履いているので怪我とかの心配はないですね。
      まあ、翌日の登校の時とかに靴がなくて困ったことになりそうですが。
      (その前にノーパンで帰る方が困ったことになるだろ)

  2. 楽しく読ませて頂きました!
    私の勝手な整理の中では、今回のお話は「催眠小説」と言って良いかな、と思いました。
    催眠術ではないのだけれど、催眠術の小説に出てくる面白い要素(トランス状態、心の柔軟な解釈、トリガーで作動させる行動指示etc.)を抽出して、催眠術とは別の能力・技能・現象で描き出す。そうすることで、話のテンポを良くしたり、催眠術の限界を気軽に突破したり、よりポップな世界観に当てはめやすくする(お仕置きに催眠術をかける先生が受け入れられている学校について腹落ちさせるのはもっと工数がかかるなど。。。)今回の作品は、そんな「催眠小説」のお手本だと思います。

    肩甲骨がオッパイという暗示や、ラストのオチの切れ味も流石のティーカさん。前者の、「被術者が恥ずかしがって隠そうとすればするほど、ドツボにハマる」という状況の偏愛ぶりとか、最後の持って行き方とか、本当にティーカさんと私の好みが近くて、嬉しくなりました。「ここがお風呂だと思って服を脱ぐ」というMCも、これまでに何人に書かれたものか分からないほどの定番ですが、とても丁寧にエッチに書かれていて、こういうところも凄いなぁ、と感服します。

    あと細かい話ですが、魔法の解説について、先生と生徒のQAで進むのが、テンポ良くて楽しかったです。これを全部先生が話しているのとでは、小気味良さが全然違いますよね。。。

    長々とすみません。とても楽しく読ませて頂きました!

    1. >永慶さん
      わーい、ありがとうございます! 気に入っていただけて嬉しいです!

      >催眠小説
      ご指摘の通り、本作では「催眠」やそれに関する専門用語(ラポールの形成、深化、後催眠など)を一切使わないようにしていますが、実態としてはコテコテの「催眠術」を意識しています。「催眠術」という単語や概念がない世界で、魔法という切り口から「催眠」を再定義した、という感じですね。
      そしてその目的は仰る通り、「女の子を授業中に催眠術で脱がせることを正当化するため」ですw
      桃川先生の行為は完全な善意による学習指導であり、事前申請や他の先生への説明もしていることから分かる通り、この世界において「教育」の一環として受け入れられています。素敵ですね!
      (ふと、アキミチさんがこの世界にいたら教師として大活躍しそうだと思いました。まあアキミチさんは防御よりも「かける方」の技術に力を入れそうですが)

      >肩甲骨がオッパイという暗示や、ラストのオチ
      ありがとうございます! このシーンがやりたくて書いたお話です(それ上で言った)。
      永慶さんとも近しいところを感じますが、「催眠エロ」を書くときに「エロい催眠」という観点ではなく、
      「直接的にはエロくない暗示をピタゴラ装置のように組み合わせてエロい結果を導き出すプロセス」の方に興奮する、面倒なフェチの持ち主ですw
      今後も何かいい感じのネタが浮かべば書きたいと思います。

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