放送委員は目立たない ~学級改変編~

放送委員は目立たない ~学級改変編~

 学校への高品質音響設備導入から数日後。

 先日の集団スカートめくり騒動が発端となり、ワタルの所属する2年2組のクラスでは女子同士の悪戯が一気に激化していた。それも男子、とりわけ響ワタルの前に限ってだ。悪戯の内容も多岐にわたり、定番のスカートめくりに始まり、ブラ外しや、近くの男子の手を取って女子の胸を触らせるといったものまで様々。また、場所も教室内に限らない。更衣室で着替えていれば誰かが内側からカーテンを全開にするわ、体育の時間にはハーフパンツを下ろされたり、体操服の上をたくし上げられてブラを露出させられたりと、時と場所を選ばず女子の悲鳴と男子の歓声が絶えることはない。

 本来ならば女子も被害を恐れて対策を立てたり、あるいは教師が見かねて注意をしそうなものだが、不思議とそういった事態も生じなかった。教師たちは関わり合いになるのが面倒なのか、「生徒同士の問題だから」と見て見ぬふり──というよりも、まるで実際に見えていないかのようだ。生活指導の教員ですら、肝心の現場に出くわしそうになっても、靴紐が緩んでいる生徒やネクタイが曲がっている生徒の方に注意が逸らされてスルーしてしまう。

 そして女子たち本人に至っては、男子たちの前で下着を晒す羞恥を感じているにも関わらず「やられっぱなしは癪だから」「悪戯を受けないように対策するのは逃げるようで嫌」と自分に言い聞かせながら、騒動を止める方向ではなくやり返す方向に思考が働いてしまう。

 思考が攻撃面一辺倒に偏ってしまっている反動か、防御面に関しては目に見えて疎かになっていた。男子の目の前ではスカートをめくられる可能性が高いと分かっているにも関わらず、いざその時になると警戒するどころか、まるでめくって下さいと言わんばかりに手を大きく上げて伸びをしたり、スカートをめくられた後もパニックのあまり隠すことなど完全に頭から抜け落ちてしまう。また、注意力も散漫になっているのか、悪戯されたこと自体に気付かないこともしばしばある。例えば、椅子に座っている最中にスカートの後ろをそっとめくられて背もたれの上に乗せられたり、スカートの裾がめくれた状態でピンで留められたりといった類の悪戯を受けたまま、長時間男子の前に下着を晒してしまうのだ。場合によっては、スカートの正面がめくれた状態でピン留めされ、それに気付いたのは帰宅後だった、といった事態まで生じていた。

 また、学校に直用する下着も派手な色や際どいデザイン、可愛らしい装飾といった、男子の目を喜ばせることを目的としているようなものばかり。といっても、別に積極的に見せようとしているわけでも、見られることに羞恥心を感じていないわけではない。毎日のように下着を見られたことを自室で思い出しては身悶えするほどの恥ずかしさに襲われているにもかかわらず、登校時になるとついラッキーカラーがどうとか、暑い日だから涼しげな下着がいいとかばかりが頭に浮かんでしまい、結果的にいやらしい下着を選んでしまうのだ。

 そして、これらの異常事態を引き起こした張本人であり、事実上学園全体の支配者でもある響ワタルの学内での立ち位置は──特に何も変わるところはなかった。

 お昼の放送を放送室からリアルタイムで流す機会こそ減ったが、それ以外は概ね今までと同じように登校して授業を受け、学食で友達と駄弁り、授業が終われば帰宅する。支配者であることを振りかざしてクラスメイトに威張り散らしたり、無茶な命令を振ったりといったことはしない。そのような形での支配は、ワタルの望むところではないからだ。

 とはいえ、ワタルの周辺を取り巻く環境は自然と変わってきていた。特にクラスメイトの中でもエロに対するアンテナの高い一部の男子は、数々の恥ずかしいハプニングがワタルの周辺で特に発生しやすいことを鋭敏に察知したのだろう、その恩恵に少しでも預かるためかワタルの近くでつるむようになったり、さりげなく仲良くなろうと距離を詰める男子も少なからず発生していた。

 ただし、考えなしにワタルに関わることが男子にとって必ずしも喜ばしい結果をもたらすわけではなかった。顕著な例は、ワタルのクラスメイトの男子の中でも、騒動前から比較的ワタルと話す機会の多いコウスケだ。コウスケはワタルと座席が近いこともあり、音響設備導入直後の集団スカートめくりを間近で目撃した幸運な男子のうち一人であった。ワタルの近くにいれば多くの女子のあられもない姿を拝めることをいち早く察知したコウスケは、その後ことあるごとにワタルの近くを陣取るようになる。しかし、結果としてはそれがまずかった。

 決定的な失態は、ある日の休み時間に女子同士のスカートめくりを至近距離から見ようと思わず身を乗り出して、ワタルの視界を完全にブロックしてしまったことだった。2年2組の女子の中でもとりわけガードが固く、1日に2~3回程度しか見られない貴重なワカバちゃんのパンチラを見損ねたことに気を悪くしたワタルは、コウスケに対して一言「ねえコウスケ……見たい気持ちは分かるけど、こういう時は男だったら紳士的に目を逸らして見ないようにした方がいいんじゃない?」と呟いたのだ。

 それからというもの、コウスケの学園生活は一変してしまった。どれだけ女子のエッチな光景を見たいと強く念じていても、いざそういった光景に遭遇しそうな状況になると、不意に天井の模様とか自分の靴紐が気になってしまい、肝心な場面を必ず見逃してしまうようになったのだ。

「えいっ、隙ありーっ! やだ、アズサったらスケスケの下着なんて大胆ー!」

「きゃぁっ!? やだもうマナミってば、お返しっ! そっちこそほとんど紐じゃないの!」

 そんなきゃぴきゃぴした会話を耳にしながら、今日もコウスケは目に涙を浮かべながら空に浮かぶコッペパンみたいな雲を観察するのであった。

……

 音響設備を導入してからというもの、ワタルは主に自分のクラスを中心に催眠音波を通じた様々な命令を流し、その反応を観察するという実験を繰り返してきた。

 ワタルがここのところ夢中になっている実験は、前にも試した「深層意識」への命令を、さらに柔軟性を高める方向に発展させるというものだ。例えば音響設備を導入した日は、ワタルは催眠音波を使って直接深層心理に対して、「女子同士でスカートめくりをしてワタルに下着を見せつけろ」と命令を下し、見事にそれを実行させることに成功した。だが、与えられた命令をそのまま実行するだけならば機械でもできる。ワタルが新たに手を出したのはさらにその先……「深層意識レベルで、ワタルに直接命令を下されずともワタルの意図を汲んで実行に移させる」という実験だ。

 人間の脳というものは、高度にファジーな判断を下せるように設計されている。例えばAがBに対して「喉が渇いた」と発言した場合、その発言自体は単にAが喉の渇きを感じているという意味に過ぎないが、Aの「意図」はそれとは別のところにある。多くの場合、BはAの意図を「飲み物をくれ」という命令と受け取るであろう。その上でさらに、二人の関係性や周辺の環境、Bの知る限りのAの嗜好といった複雑な要素を全て加味したうえで、最終的にBは判断を下す──例えば、「熱いお茶を入れる」「近くの喫茶店に誘う」「『それくらい自分でやれ』と返す」といった具合にだ。

 こうした判断の多くは、当然無意識レベルで処理されているものだ。ならば、催眠音波によって深層意識に「ワタルの目を喜ばせるような行動を学習して実行したい」と刷り込んでやれば、この判断のプロセスを大きく捻じ曲げ、無意識のうちに「ワタルが喜ぶであろう行動」を自ら判断して行動させられるのではないか、というのがワタルの立てた仮説であった。そして、今のワタルの置かれた環境ならば、その仮説を検証するのは容易であった。

 この「深層意識の自己学習」に関する実験を進めるにつれて様々な興味深い事実が明らかになった。

 例えばワタルが周囲の女子に聞こえるように──この実験を開始してからというもの、ワタルの声が聞こえる範囲で多くの女子がたむろすようになった。おそらくワタルの命令を聞き逃すまいとする深層意識レベルでの判断が働いたためであろう──「今日は暑いなー」と独り言を発した場合。最初のうちは、ワタルのこの言葉を聞いても特に反応を起こす女子は少なく、ミドリを始めとした女子数人が戸惑いつつも「今日って暑くない?」とスカートの裾をぱたぱたさせたりブラウスを緩めたりする程度だった。しかし、日を重ねるにつれて、その行為によってワタルが喜ぶということを周囲の女子も学習していったのか、1週間後にはほぼ全員が同じようにスカートの裾をめくり上げるようになっていった。つまり、まるでPDCAでも回すかのように、自分がどのようにすればワタルが喜ぶ結果を得られるのか、深層心理が学習を深めていくことが確認されたのだ。

 さらに数日経つと、誰もが周囲と同じような行動をしていてはワタルの目を引けないということを学習したためか、一部の女子たちの反応に多様性が現れ始めた。さらに、連日ワタルを観察した結果から、自分から進んで見せるよりもハプニング的な露出の方が反応がいいことに気付いたのであろう。水筒の水を飲もうとして失敗し、胸元にこぼしてブラウスを透けさせてしまう女子や、窓を開けて風でスカートがめくれることを待つ女子が散見されるようになった。それはまるで、潜在意識が他人よりも多くの報酬を得るために個人レベルでの「競争」を行っているようだった。

 さらに日を重ねるにつれて、潜在意識の成長はワタルの予想のさらに上を行き始める。個人同士での競争では結局は同じことをしている他の女子との足の引っ張り合いになったり、スカートをめくってくれる風が吹いてくれる偶然頼りになってしまう。それよりも確実かつ効率的にワタルを喜ばせられるように複数人でチームを組む女子が現れ始めたのだ。例えば、下敷きを使って友達を扇いであげている最中に手が滑ってスカートに引っかけてしまったり、一人の女子が扇風機を床から上向きに風が起きるように設置し、他の女子がそれをまたぐように移動してしまったりといった具合だ。

 なお、念を押しておくとこれらの行為は潜在意識下の影響によって引き起こされているものであり、女子本人の認識ではあくまで全てが「事故」である。つまり、これらの流れるような連係プレーは全て、女子たちによる事前打ち合わせなど一切なく行われているのだ。全ての作戦を無意識下のアイコンタクトなどによって進めなければならない関係上、最初のうちはこういったチームプレーは互いを良く知る親友同士などでのみ見られる現象であった。しかし、こういった連係プレイを何度も目にするうちに少しずつながら、そこまで親しくない間柄の女子同士でもチームを組めるような関係性を築いていくようになり、実験開始から2週間も経過する頃には、ほとんどの女子が近くにいる手頃な女子と阿吽の呼吸で連係プレーを実践できる程度にまで成長したのだ。

 競争から、協調へ。もはや2年2組の女子は、潜在意識下では完全に一つの意識を共有しているのではないかと思えるほどに、全体としてのチームワークを臨機応変に発揮できるようになっていた。特筆すべきは、明確な意思疎通を行うことなく、状況に応じた「役割」を女子の間で瞬時に判断して分担していることだ。

 例えばワタルが女子更衣室の前の廊下を通りがかると、廊下で雑談していた女子が瞬時に『連絡要員』となり、何か用を思い出して「あ、ワタル」と更衣室内に聞こえるように声をかける。すると、着替えていた女子たちのうち下着姿やそれに近い格好の女子は『サービス要員』となり、何となく廊下側の窓から見やすい位置にポジション取りをする。そこからさらに過激な光景を提供するために『サービス要員』に対するブラ外しやパンツ下ろしを実行するのは、すっかり女子に対する悪戯が板についてきたマナミなどの『悪戯要員』の仕事だ。最後の仕上げに、更衣室のカーテンの近くにいた女子が『実行要員』となり、『悪戯要員』によるセクハラを止めようとした結果、足を滑らせて咄嗟に更衣室のカーテンを掴み、一気に全開にしてしまう。

 

 『連絡要員』がワタルを呼び止めてから、胸や股間を露わにした女子たちの姿がワタルの眼前に曝け出され黄色い悲鳴が響き渡るまでの時間は、実に5秒とかからない。統率が取れるように訓練を受けた部隊であっても、このピタゴラ装置のような一連の動作を事前の作戦会議無しに遂行するのは困難であろう。

 もはや潜在意識の自己学習に関する研究も、完全に成功したと判断して差し支えない。男子の目を喜ばせるという無自覚の目的を持った一つの生物として完成を見せた2年2組の女子たちを見て、ワタルは満足そうに微笑んだ。

……

「本日の美術の授業内容ですが、生徒たちの自主判断による自由課題とします。皆さんの話し合いによって課題の内容を決めて、実施してください」

 5時間目、美術の大村先生は教壇でそれだけ告げると、足早に教室から去っていった。音響設備を導入した少し後くらいから、「生徒の自主性と行動力を育む」という名目で、体育や芸術系の科目の時間の活動内容を生徒が自由に決めることが多くなった。そしてこの2年2組では、ワタルの発言を発端としてエッチな展開へと発展することが半ばお約束と化していた。

 そして今日も、ちらちらと多くの生徒たちが動向をうかがう中、議論の口火を切ったのはワタルだった。

「うーん、自由課題かぁ……僕としては女子の意見が聞きたいかな。どうせ男子に聞いても……『女子のヌードデッサン』とかくだらない意見しか返ってこないと思うし。……というわけで、ユキはどう思う?」

「へ……私!? え、えとっ」

 話を振られたユキは困惑する。尋ねられるまでもなく、ヌードデッサンなど嫌に決まっている。しかし、もともと大人しい性格の彼女は、こういった場で積極的に意見を出すタイプではなかった。できる限り強い主張はせず、角が立つような言い方はできるだけ避ける、いわゆる「ノーと言えない日本人」の典型である。最終的には却下するにしても、ここはなるべく波並を立てないようワンクッション置きつつ穏便に断ろう。そう考えながら慎重に言葉を紡ぐ。

「う……うん。そりゃ、その意見も一理あると思うよ。静物画とか風景画だと、どうしても誰が描いても同じ仕上がりになりがちだし、かといって人物画を描くにしたって学校の制服姿だと全員同じ格好だから、モデルごとの個性を出すことを考えたら、その……ヌードっていうのも、理にかなってはいるかな……」

 ちらちらと、ワタルや男子の表情を伺いながら、相手の顔を潰さないようなソフトな断り方を探る。男子からあまり悪印象を持たれないためにも、念のため、断る前にもうワンクッションくらい置いた方がいいかもしれない。

「それに、人間の体って関節とかが多いから、人体の構造を把握するためにも、関節とかシルエットが隠れちゃう制服は邪魔になると思うしね……実際、美術の資料集とかを見ると、裸婦画っていうのはメジャーな題材になってるから……流石にこれくらいの年齢になれば、いやらしい目的のものじゃないって、みんな理解してると思うよ」

 ツークッション、スリークッションと置きながらちらりと男子の様子を観察するユキ。ワタルは満足そうな笑顔でうんうんと頷き、男子たちも期待に満ちた目を輝かせている。ここでもし自分が「でも恥ずかしいからやめよう」などと言い出してしまったらどうなるだろう。もしかしたら、期待させるだけさせて梯子を外されてしまったと感じて、大勢の恨みを買ってしまうかもしれない。ユキは急に怖くなった。だからといって、このままヌードデッサンにする方向で話を進めるのはもっと嫌だ。迷った末に、ユキは一つの策を思いついた。そう、自分で決めたくないなら、他人に判断を丸投げしてしまえばいいのだ。

 ちょうど、すぐ近くの席では、いかにも不服そうな表情を浮かべながら自分のことを睨み付けている女子、アズサがいた。彼女ならば、きっぱりと断ってくれるだろう。

「ま、まあ私一人の意見で決めるのもどうかと思うし、ここは他の女子にも聞いてみた方がいいんじゃないかな。……ねえ、アズサはどう?」

「え? そ、そんなの、男子の前で裸になるなんて恥ずかしいし嫌──」

 一気に素直な気持ちを勢いよくまくし立てようとするアズサ。しかし、途中まで言葉を発したところで急に言葉が一瞬止まる。自分がここで発言しようとしている内容が、本当に責任ある個人の意見として相応しいものなのか。芸術的な観点から真面目な意見を述べたユキに対して、「恥ずかしい」なんていう自分個人の感情で反対するなんて、まるで駄々をこねる幼稚園児みたいに感じられてきたのだ。このまま発言を続けたら、絶対にいけない。アズサは、自分の心の奥底からそんな強烈な命令が聞こえた気がした。慌てて発言の方向を急遽修正する。

「……なんて子供みたいなこと、この年になって言うわけないじゃない。大体、教科書にも載ってるような裸婦画のモデルが、『恥ずかしいから嫌です』なんて言ったと思う? ヌードモデルは立派な芸術活動なんだから、誇りに感じることこそあれ、嫌なことなんてあるわけないわよ。……そ、そうよねサヤカ?」

 おかしい。口を開いた時には反対意見を言うつもりだったはずなのに、気が付けばヌードデッサンを推し進めるような意見ばかりがポンポンと口から飛び出してしまう。そして、賛成意見を口に出せば出すほど、どんどんヌードデッサンに反対するような意見を言い出しにくくなってしまうのだ。結局、アズサもユキと同じ末路を辿る──つまり、他の女子に発言を振って丸投げしてしまうのだ。

 その後も同様に、3人目、4人目と女子が発言していくが、何度やっても結果は同じ。ヌードデッサンに反対をするようなコメントを出そうとしても、余計な不安で頭がいっぱいになって言い出せなくなってしまうのに、賛成意見だけは逆にどんどん頭に浮かび、思いつくそばから口から飛び出してしまう。

 数分後には、15人の女子全員が、ヌードデッサンを推し進めるような意見を自分の口から述べてしまっていた。

「ふーん……これで、全員の意見が出揃ったかな? 今のところ、満場一致でヌードデッサンに賛成か……うーん。念のためもう一度聞くけど、反対意見のある女子はいない?」

 ワタルはわざとらしく発言しながら女子たちを見回す。彼女たちの顔は例外なく不安と困惑に真っ赤に染まっていた。当然だろう。何せ本心では、男子の前で裸など晒したくないに決まっているのだ。にもかかわらず、一度賛成してしまった手前、今更手を上げて「やりたくない」などと言い出せるはずもなかった。

「──といっても、他の生徒もいる手前、内心嫌がっていても言い出せないって人もいるだろうし……こういうのはどう? 女子全員で、今日の美術の時間にやりたい内容を無記名投票するんだ。もし満場一致で同じ内容に票が入ったら、みんなでその題材を描いてみようか。……でも、反対意見は尊重したいし、一票でも揃わない票があった場合は今まで通り、各自が自由に静物画とか風景画を描くようにしようか。それで問題ない場合は手を挙げてね」

 ワタルの提案に、女子たちはほっと胸を撫で下ろした。無記名投票ならば気兼ねなく反対できるし、一人でもヌードデッサン以外の内容に票を入れれば、自動的に却下されることになる。問題どころか、むしろ願ったり叶ったりだ。女子たちは明るい表情で無記名投票の実施に手を挙げた。

 ──5分後、15枚の投票用紙をクラス全員で開票して確認した結果、見事に満場一致で『女子のヌードデッサン』と書かれていた。

 余談だが、人一倍スケベなコウスケはヌードデッサンに決まったと聞いて期待に胸を膨らませながら美術室に向かっていたのだが、何もない廊下で転んでしまった結果、膝に小さな擦り傷を作ってしまった。この擦り傷から万一危険な雑菌などが入り込んで取り返しがつかない重症に発展したらどうしようと不安に駆られてしまったコウスケは、泣く泣く保健室に駆け込み、大事をとって1時間たっぷりと保健室で過ごしたのだった。

8件のコメント

  1. 返信が早めかもですが、一通り読ませてもらいました。
    改めて感じたのは、学校を「支配」するというよりは学校をあくまでも「ひとつの身近な実験実践場」みたいな感じですね。
    エロに対する思いも、やはり一般女性へのイメージとして「恥ずかしく思う(要は脳内に命令以外の邪念が入りやすい)もの」としか見ていないようにも思えます。
    今回も楽しく読まさせてもらい、ありがとうございます。

    ここからは少し無いように対する意見というか予想なのですが、
    まず、この小説はどの視点から描いたものでしょうか?
    ワタル君?それとも、神の視点(要は全てを分かっている第三者ということです)?はたまた別の人?
    そこは何となく一貫されてるみたいですが、正直どれか分かたないです。

    あと、憶測なのですが、後半のヌードデッサンの話は何かの伏線なのでしょうか?もし一人でも音波に耐性を持つ者が居たら…とかは考えないのでしょうかね?

    後半はものすごい茶々なので、失礼しました。

    また次回作も楽しみにさせてもらいます。

    1. >月さん
      感想ありがとうございます!

      >改めて感じたのは、学校を「支配」するというよりは学校をあくまでも「ひとつの身近な実験実践場」みたいな感じですね。
      ええ、割とワタルにとって学校を支配することそのものが目的というよりもスムーズに催眠音波の実験を進めつつ自分がおいしい思いをするためのプロセスといった方が近いですね。エロも、自分の性欲処理というより女の子が恥ずかしがるのが好きな悪戯っ子に近いです。

      >まず、この小説はどの視点から描いたものでしょうか?
      語り手の視点です。
      ……まあ、実際のところ視点の統一はあまり真面目に考えていないです。メインはワタルの視点ですが、必要に応じてワタルがいない場面も普通に出てきますし。MCものは操られる側の心理描写とかも必要になってくる関係上、視点を固定するのはちょっと難しいと思います。

      >後半のヌードデッサンの話は何かの伏線なのでしょうか?もし一人でも音波に耐性を持つ者が居たら…とかは考えないのでしょうかね?
      これはまあ、クラス内での一連の実験の結果から効果が出ていることを確認したり、ミドリを使ってさりげなく怪しんでいる生徒がいないか探りを入れたりはして、ある程度の確信をもってからエロに踏み出していると思います。
      ただし、実のところワタル本人も今までの実験結果から全員がかかっていると推測しているにすぎないため、完全な確信を持ってはいません。ただ保身よりも知的好奇心(とエロ)が強い子なので、万一失敗しても後悔はしないと思います。

  2. コウスケーーーーーーーーー!
    早まりやがって・・・

    学校が支配されて、なんか学校全体でリトさん生成装置になってるように見えてきたのでぅ(ただし、ワタルくん限定)
    意識外の行動により偶然に見えるけど必然的に破廉恥な姿をワタルくんに見せるようになってるのは笑えるのでぅ。

    もう大分学校の支配を完成させてきてる気がするのでぅが、この先はどうするんだろう?
    さらなるステップアップというのも浮かぶけど、ワタルくんが地域の拡大にそこまで乗り気じゃないからもうこの辺りで着地点を決めそうな気もするんでぅけれど、しっかりとしたキャラがミドリちゃんとアオイさんくらいしか出てきてないのが(マナミちゃんとかはまだそこまでキャラが立ってない)

    洗脳されきったキャラはあまり興味ないみゃふとしては新キャラが欲しいところなのでぅが・・・

    であ、次回も楽しみにしていますでよ~
    タグは成功してるだろうか・・・

    1. >みゃふりん
      太字になってる……!
      コウスケは犠牲になったのだ……催眠音波がきちんと男子生徒にも効果を発揮しているシーンを入れたかったため、可哀そうですがクラスの男子で唯一エロを目撃できない役回りになってもらいました。エロいハプニングに遭わされる女子と、それを決して目撃できないコウスケ、どちらが可哀そうなのかは分かりませんが。
      ちなみにワタルはリト君とは違って、比較的他の男子も楽しませてあげるタイプです……自分の邪魔をしなければ、ですが。

      >この先
      いいご指摘で、多分次回か次々回にはお話が一段落すると思います。
      もともと高音質のスピーカーが必要な関係上、支配領域を拡大するのにはあまり向いてないMCシステムなのですよね。
      キャラは……ええ、しっかりキャラを立てるのってなかなか苦手なので、どうしても単なる属性とか記号的になってしまいがちです。(結局学校が主戦場になるためアオイさんも今後活躍の機会なさそうですし)
      というわけで、新キャラが出るにしてもストーリーに関わる重要人物には恐らくならないと思います。

  3. 相手に喜んでもらえる恥ずかしい姿を無意識に自ら見せてしまうシチュエーションめっちゃ好きです
    本当にありがとうございます

    1. >あああさん
      感想ありがとうございます!

      良かった……! あまり見ないシチュなので正直かなりニッチな需要なのかと思っていました。喜んで頂けて嬉しいです。
      本人が気づいていないうちに潜在意識レベルまで洗脳されていて、自分の頭で考えて行動しているつもりなのに実は完全にあらかじめ仕込まれた暗示の通りに誘導されているのって大好きです。

  4. 初感想です。サイト自体はずっと昔から見ているのですが、今回の話があまりに好き過ぎていてもたってもいられず書かせて頂きます。

    放送委員シリーズ大好きです!
    音に入れ込むっていう回避不可能な方法で知らないうちに色々弄られているところ、意識的な催眠を逃れるための思考が尽く情けない方向に向かってしまうところ、それ含め主人公はあくまで完全な支配じゃなく実験場としてシチュエーションを楽しんでるところが特に好きです。

    シコ過ぎて読んでるうちに電車で致しちゃいました。本当にありがとうございます!

    1. >れいせんさん
      とりあえず、電車では絶対にしないでください。(真顔)

      ありがとうございます。
      嗜好の方向性自体を本人の自覚できないレベルで誘導する系のシチュは大好きなので、いずれどこかでまた書きたいなと思っています。

      でもすごく迷惑だと思うのでマジで電車では絶対にしないでください。(真顔)

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