ここは、エムシー新薬研究所。
別に怪しい場所ではない。ごく普通の研究所である。
ここでは、様々な分野にわたる新薬の開発と研究が日々行われていた。
例えば、こんな風に……。
「よし、ついに完成したぞ、高木くん」
「やりましたね、所長!」
「うむ……」
白衣を着たふたりの中年男の前には液体の入ったフラスコがいくつか並んでいた。
所長と呼ばれた男が、そのうちの1本を取り上げる。
そこには、薄いピンクの液体が入っていた。
「これが今回抽出に成功した一種の快楽物質だ」
「快楽物質というとドーパミンやセロトニンのようなものですか?」
「うむ。私はこれをアヘニンと名付けた」
「アヘニン……ですか?」
「そうだ。私は、人間がセックスをしているときにアヘニンが大量に分泌されることを突き止めた。そして、アヘニンはいやらしいことをする時の快感を全身に伝達する物質であることもだ」
「ということは、つまり……」
「そうだ。いやらしいことをしているとアヘニンは大量に分泌される。そして、アヘニンが分泌されると人はいやらしい快感を感じるようになる。結果、アヘニンが大量に分泌されるほど人は快楽を求めるようになり、いやらしい欲求が高まってくる」
「ということは、このアヘニンこそが我々が探し求めていた媚薬というわけですね!」
「まあ、理屈はそう言うことにはなるのだが……。しかし、たしかにアヘニンを投与すると一時的にいやらしい欲求が高まるが、その持続時間はごくわずかなのだ。そのままでは媚薬としてほとんど役にも立たんほどにな」
「では、どうすれば?」
「そこでさっき完成したのがこの薬じゃ。いわば、アヘニン分泌促進剤。これを飲むと脳内から大量にアヘニンが分泌され続ける体になり、アヘニンの効果を維持することができる」
「つまり、それこそが真の媚薬だと?」
「うむ。そういうことだ」
薄いオレンジ色の液体の入ったフラスコを手にとって胸を張る所長。
所長自らそのような薬品を開発しているくらいだから、この研究所の品位も知れようというものだ。
「そこでだ、この薬の実験をしてみようと思うのだが、この研究所で誰か心当たりはあるかね?」
「そうですね……前川くんなんかはどうでしょう?」
高木が名前を挙げたのは前川麻美(まえかわ あさみ)。
この研究所でも随一の美貌を誇る女性研究員である。
「なるほど、前川くんか……」
「はい、実験が上手くいけば……」
所長と高木は、互いに顔を見合わせて、ニタリ、と笑う。
ふたりとも、完全にスケベオヤジの顔であった。
「よし、では早速準備に取りかかるか。前川くんの研究はなんだったかな?」
「薬の食味の研究です。より飲みやすい薬を開発するための」
「よし、では、その線で行こう。その前に高木くん、このアヘニン分泌促進剤をアンプルに入れてくれ。それともうひとつ……こっちの薬品も」
「はい」
「準備ができたら前川くんを呼び出すぞ」
「了解です」
そして10分後。
「お呼びですか、所長。あら?高木さんも呼び出されたんですか?」
所長の研究ラボに、前川麻美が入ってきた。
長くカールした茶色の髪に、長い睫毛と大きな瞳、すらりと高い鼻を持つほっそりとした美貌。
相変わらず研究者離れした、というか日本人離れした顔立ちだ。
それに、ゆったりした白衣をきちんと前で留めているので全体の体型はわかりにくいが、それでも大きな胸のふくらみはわかる。
「うむ、君たちを呼んだのは他でもない。新しく開発した栄養剤の試飲をして欲しくてな」
「新しい栄養剤ですか?」
「うむ。実は、効果に関してはほぼ間違いない自信はある。どんな疲れも吹っ飛んで、元気が湧いてくるのは私が自分で飲んで確認しておる。ただ、味に少々難点があってな。そこで君たちに味を見てもらって意見を聞かせて欲しいのだ」
そう言うと所長は、前川と高木にオレンジ色の液体の入ったアンプルを渡す。
もちろん、前川に渡したのはアヘニン分泌促進剤で、高木に渡したのは似たような色をした無害の液体である。
「特に前川くんは薬品の食味が専門だから、どうすれば飲みやすくなるか忌憚のない意見を聞かせて欲しい」
「はあ……」
前川は首を傾げて、しげしげと中身を眺めている。
そんな彼女の態度に、所長は少し焦った表情を浮かべる。
「それではまず私が飲んでみます」
高木が機転を効かせて、まず率先してアンプルの液体を飲んでみせる。
「……たしかに少し薬品臭いですが、特に嫌な味ではないですし、甘みをつけるとかなり飲みやすくなると私は思いますが。……前川くんはどう思う?」
無論、高木が飲んだのはダミーなので無味無臭なのだが、当たり障りのない意見を言って高木は前川に意見を求める。
それに促されるように、前川もアンプルの薬品を口に含む。
「……そうですね。なんというか、喉に引っ掛かるような独特の青臭い匂いと味がしますね」
自分の専門ということもあって、前川は何度も確かめるように味わってから飲み込み、味の感想を述べ始める。
「でも、私はこの味は嫌いではないですね。そう、ザーメンの味に似ていて私は飲みやすいです」
「はい???」
しれっとした顔をして、彼女はとんでもないことを言い始めた。
所長と高木は、ぽかんと口を開けて聞き返す。
「いえ、本当にそっくりですよ。……そうですね、やっぱり本物の味と比べてみたいですから、おふたりのを飲ませていただけませんか?」
そう言って前川はにっこりと微笑む。
(こんなに早く効果が出るものなのですか?)
(いや、効果が出るには、飲んでから10分はかかるはずだ)
(では、これはどういうことなんでしょうか?)
(私にもわからんよ)
所長と高木は、驚いた顔で互いに目配せし合う。
「もう、何をひそひそ話をしてるんですか?ふたりともここに並んでください」
「うわっ」
「ま、前川くん!?」
唖然としている所長と高木を並んで立たせると、前川はそれぞれのズボンのファスナーを降ろして中のものを引っぱり出す。
「もう、どっちのチンポもこんなに固くなってるじゃないですか。じゃあ、ザーメンを搾らせてもらいますね。……ぺろっ、れろろっ!」
2本のペニスを握ると、前川は交互に舌を伸ばして、ペロリン、と舐め始める。
「ぺろっ、ぺろろ、えろっ、れろ……ん、おいし……次は、高木さん……べろろろっ、れるっ、れろっ」
「ああっ!」
「うああっ!」
「あふ、じゅるっ、んふふ、もう、ふたりとも、もうこんなにカウパー出しちゃって。ちゅる、れるっ、ああ……堪らないわ、この味、ぺろ……」
前川は、ちらちらと嬉しそうに上目遣いでふたりを見上げて、片方のペニスをしゃぶってはもう片方に舌を伸ばすのを繰り返す。
その唇からカウパーの糸を引きながら、2本のペニスの先を舌先で掬う。
「ひあああっ!」
「おうっ、これはっ!」
「あららぁ?もう出そうなんですか?しょうがないですね。じゃあ、まず所長から……ん、はむ、ん、んっ、んぐっ、んっ、んんっ」
所長のペニスを口に含むと、くりくりっとカールした髪をふわふわ揺らして頭を振っていく。
唇でペニスを締めつけ、口をすぼめて吸い込むようにさせながら、高速で扱きあげていく、まさに唇、口腔、頭の動きの三位一体の技だ。
一方で、高木のペニスを握った手で扱くこともちゃんと忘れていない。
「んむっ、しゅぼっ、んぐっ、じゅぼっ、んむっ、んっ、んぐう、じゅるるっ!」
「く、くおおおおおっ!ま、前川くんっ!わ、私はっ!」
「んんんっ!?んぐぐぐっ!んっ、あふうんっ!」
前川の圧倒的なフェラテクの前に、所長のペニスはあっけなく音を上げた。
所要時間1分27秒、前川の鮮やかなるKO勝ちだった。
「あふう……くちゅ、んむ……こくん……ああ、おいしい。所長のザーメン、結構濃いですね。木村くんよりかは薄いけど、山本さんや竹野くんよりは濃いですよ。ちょっとしょっぱいかしら?でも、男臭くてなかなかそそる匂いですよ」
前川は、いったん口の中で転がした精液を喉を鳴らして飲み込む。
その端正な顔にこぼれた白濁液をこびりつかせて、所長の精液の感想を述べた。
しかも、薬品と精液の味を比べたいと当の本人が言っていたことすらどこ吹く風と、他の研究員の名前を引き合いに出しながら、まるで精液の品評会のようにテイスティングしている。
「というか、前川くん、彼らの精液を飲んだことがあると言うことかね?」
「もちろんですよ。さあ、次は高木さんですね……あむ、んむ、ん、むふふぅ……んっ、んっ、んっ、んっ、んっ、んっ、んっ、んっ」
今度は高木のペニスを口に咥えて、いったん鼻で大きく息をすると、ものすごいスピードで頭を振ってピストン運動させ始めた。
「あっ、あああっ!うわああああっ!」
「んっ、んっ、んっ、んっ、んっ!」
「うああっ!もうっ、もうだめだぁ!」
「ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛っ!?」
その前から舌先で弄られ、手扱きされていたとはいえ、高木、前川の超速フェラの前にあえなく陥落。
その所要時間、56秒。
「んぐ、んくっ、ん……ごきゅ……。すごい……高木さんのザーメン、ドロッとしてまるでゼリーみたい。喉に引っ掛かって一気に飲み込めないくらい。うん、濃さだけなら細川くんを超えてるわね。加藤さんと比べるとどうかしら……?」
と、前川は真剣な顔で高木の精液の論評を始める。
それとは対照的に、茫然と突っ立っているふたり。
所長が、おずおずと口を開いた。
「あのー、前川くん、他に誰の精液の味を知っているのかね?」
「そうですね、ここだと……朝倉さんに河野さん、竹本くん、明石くん、山田くんに……」
結果、彼女がこの研究所に所属している男のほとんど全員を相手にしていたことが判明したのだった。
「あのー、なんで今まで私たちには何もなかったのかな?」
「えー、でも、今までも何度かアピールしてたんですよぉ。それなのに、おふたりがなにか大切そうな研究に忙しそうで気づいてくれなかったんじゃないですか」
「あ、そう……」
衝撃の事実と、自分たちがこれまで彼女とやれるチャンスを見逃していたことに、所長と高木はがっくりと肩を落とす。
「そんなことよりも、私、たっぷりザーメン飲んだからもっと欲しくなっちゃった」
「と、いいますと?」
「もうっ、わっかてるでしょ。所長と高木さんのチンポで、私のアソコをいっぱい突いて欲・し・い・の♪」
最後の、「欲しいの」にアクセントをつけて、前川は白衣を一気にはだける。
白衣の下の彼女の格好に、所長と高木の目が完全に点になった。
目の覚めるような真っ赤なタンクトップに、下着の見えそうな超ミニスカート。
想像に違わず、服からはみ出しそうな大きな胸にくびれた腰、これまた日本人離れした見事なダイナマイトボディーだ。
「うっ!」
「ううっ!」
短く呻いていきなり前屈みになる所長と高木。
なんのことはない。前川の格好を見てまた勃起しただけである。
「まあっ、ふたりとも準備万端なのね!うれしいわ」
「うおっ!」
「あうっ!」
前川がしゃがみ込んで、玩具でも弄るようにふたりの屹立したペニスを指先で摘んだり撫でたりしたものだから、またもやふたりは情けない声をあげる。
「でもね……私ももう準備万端なのよ」
そう言って立ち上がると、前川はにっこり微笑んでショーツに指をかけ、片足を上げてショーツを脱いでいく。
「ほら、ね?」
ふたりの手を取ってアソコに押し当てさせると、まず最初に、じゅわっと濡れたヘアの感触がした。
「ねえ、もっと触ってもいいのよ……ん、んふふ、あ、あん……」
その言葉に、所長と高木は興奮してまさぐりはじめる。
時々敏感なところに当たるのか、前川が小さく喘ぎ声をあげた。
「ああっ、んっ、そこぉっ!」
ヌルッと手が滑った弾みで、所長の指が前川の膣に滑り込む。
これ幸いと、所長は指でその中を掻き回す。
と、ヒクッと体を震わせて前川がその指を締めつけてきた。
「ああんっ!やんっ、こんなに早くGスポット見つけられちゃった。もう、所長ったら積極的なんですから……。いいわ、じゃあ、まず所長のから入れてくださいね」
「まっ、前川くん!?うわっ!」
所長の体を押し倒して、前川がその上に馬乗りになった。
片手でペニスを握って、萎えないように扱き上げている。
「前川くん?」
「ああん……なんだか、欲しくて欲しくて仕方ないの。きっと、さっきの栄養剤が効いて元気になったからだわ」
栄養剤が効いたのではない。
アヘニンが分泌されていやらしい気持ちになっているだけだ。
というか、さっきの彼女の発言を聞くと、別に薬を飲まなくても年中アヘニンが分泌されているんじゃないだろうか。
とか言ってる端から前川は所長のペニスを宛うと、腰を沈めて膣の中にねじ込んだ。
「んっふうううううううんっ!イイっ、所長のチンポ、固くてごつごつして、すごくイイですわっ!」
腰を沈めたまま円を描くように回転させて、感極まった声をあげる前川。
そのまま、今度は前後スライドさせるように腰を動かし始める。
「ああっ、すごいっ!所長のチンポでズポズポされて、マンコ気持ちいいっ!」
とても公然とはできない言葉を口にしながら、前川はずんずんと腰を振っている。
言っておくが、まだ真っ昼間、しかも彼女の職場である研究所のラボの中である。
「はあんっ、本当にすごいわっ、すっごく固くて、奥まで押し広げられちゃう!ああんっ、そこっ、イイっ!」
「くううううっ、まっ、前川くん!激しすぎるんじゃないかね!?」
「あんっ、まだまだですわっ!もっとっ、もっと欲しいのっ!あんっ、たっ、高木さん!」
その傍らであんぐりと口を開けたまま突っ立っていた高木のペニスを、いきなり前川がむんずと掴んだ。
「え?えええっ!?前川くん!?」
「ああんっ!ほっ、欲しいわっ、高木さんのっ、濃いいのっ!んっ、んぐっ、んんんっ!」
器用にバランスをとって腰を振りながら、前川が高木のペニスにしゃぶりつく。
「あっ、ああっ、前川くん!?」
「んっ、んぐっ、ぐむっ、んんっ!……ああ、おいしいっ!ああんっ、所長の固チンポにズボズボされてっ、高木さんのチンポしゃぶって、もう最高だわ!んぐっ、ぐっ、きゅっ、んくっ、んっ、んぐっ!」
がに股になるような格好で所長の上に跨って、高木のペニスを頬張っている前川。
と、仰向けになっている所長の動きが早くも怪しくなってきた。
「おおおっ、前川くん!私はもうっ!」
「んぐぐっ!えっ、ええっ!?所長ったらもうイキそうなんですかぁっ?しっ、しかたないですわねっ……いいわっ、出してっ、こんな時のために薬を飲んでますから、避妊はバッチリです!だからっ、中にっ、中にどうぞっ!」
とか言いながら所長の手を握ると、前川はさらに力強く腰を上下させていく。
というか、いつも避妊はばっちりってどういうことだ、前川?
「くうううっ、前川くんっ!」
「あっ、所長のチンポが中で膨らんでっ、出そうなんですね!?ああっ、くるっ、ビクビクッて!ああああああーっ!」
どん、と所長の上に腰を落として前川が体を反らせた。
自分の体重で奥深くまでペニスを咥え込んで、ひくひくと体を震わせている。
「ふうううん……ああん、所長がすぐイっちゃったから高木さんのザーメン飲み損ねちゃったじゃないですかぁ……」
体を前に倒して、前川が所長の耳元で拗ねたように囁く。
というか、文句つけるのはそこなのか。
「でもぉ……おかげで高木さんのチンポはいい感じでビンビンね。じゃあ、今度は高木さんのチンポで気持ちよくさせてもらうことにしますね」
今度は高木の方を振り向いて、前川がニタリといやらしい笑みを浮かべた。
結局、その日わかったことは、前川がとんでもないやりマンだったということと、アヘニン分泌促進剤の研究に没頭していた所長と高木が彼女のセックスアピールに気づいていなかったということだけだった。
* * *
翌日。
「昨日の実験は失敗でしたね、所長」
「いや、失敗したのではない。被験体が不適切だっただけだ」
「まあ、そういうことですが……」
「次はもっと結果がよくわかる相手で実験するぞ」
「はい、所長」
昨日、さんざん前川に搾り取られたのにも懲りずに、所長のラボで新たな実験の相談を始めるふたり。
「そうだ!事務の藤村くんはどうでしょうか、所長?」
「藤村くん?誰だったかな、それは?」
所長が首を傾げるのももっともだった。
この研究所の事務職員の藤村夕子(ふじむら ゆうこ)はおとなしく地味な性格で、いたって影が薄い。
我ながらよく名前が出てきたものだと高木ですら思ったくらいだ。
下手をすると研究員の半分以上は彼女の存在にすら気づいていないかも知れない。
「事務の子でいるんですよ。分厚い眼鏡をかけた、真面目そうな女の子が。あの子ならきっと前川みたいなことはありませんよ」
「そうか、きみがそう言うのなら。よし、その藤村とかいう子を呼びたまえ」
そして、10分後、呼び出しに応じて藤村夕子がラボにやってきた。
やってきたのは、細身で、黒髪を後ろでまとめた、フレームもレンズも分厚い眼鏡をかけた典型的な眼鏡っ娘だった。
たしかに高木の言うとおり真面目そうで、影の薄い雰囲気を漂わせている。
部屋に入ってきた彼女は、突然の所長の呼び出しに、見るからにおどおどとしていた。
「あの……お呼びでしょうか……?」
少し下を向いて、不安そうに訊ねてくる。
「うむ、よく来たね、藤村くん。まあ、気を楽にしてこちらに座りたまえ」
「は、はい……」
所長に勧められるままに藤村は椅子に腰掛けるが、いかにも落ち着かない様子だ。
「さあ、藤村くん。今日は暑いからね、アイスコーヒーでもどうぞ。ミルクとガムシロップは入れてあるから」
「そっ、そんなっ!わざわざ……すみません……」
高木にコーヒーの入ったグラスを差し出されて、藤村はすっかり恐縮する。
もちろん、そのコーヒーにはアヘニン分泌促進剤が混ぜてあった。
わざわざガムシロップ入りのコーヒーにしたのは、薬の味と風味をごまかすためだ。
「いや、実は今日きみを呼びだしたのはほかでもない。そこにいる高木くんから、きみが実に真面目でよく働く事務員だと聞いてね」
「い、いえっ、そんなことありません!」
「いやいや、謙遜することはないよ。そこで今度、事務職員の指導役をお願いしようと思ってね」
優しそうな笑顔の下にスケベな下心を隠して、所長は有ること無いこと言って藤村を持ち上げる。
「そんなっ!私に指導役なんて……とても、そんなこと……できません……」
藤村は俯いて、消え入りそうな声でやっとそれだけ言う。
「いや、きみだからこそ任せられるんだよ。まずは、みんなを集めてその前できみに話をしてもらうとするかな?」
「みみみ、みんなの前で、わたしが、話をですか?」
驚いて上を向いた彼女の顔はすっかり青ざめて、唇が小さく震えていた。
「いや、きみがいつもどうのようにして仕事をしているのか、それを話してもらうだけだから」
「そそそ、そんな……わ、私、そんなたいそうなことはしてませんし……そ、そんな……み、みんなの前で、は、話すことなんて……」
可哀想に、泣きそうな顔をして、すっかり舌がもつれている。
よほど緊張していたのか、彼女はコーヒーの入ったグラスを手に取ると一気に飲み干した。
その瞬間、高木がニヤッと笑みを浮かべたが、もちろん彼女にはそんなことに気づく余裕もない。
「そんなに難しく考えることはないよ。普段きみがしていることをそのまま話してくれたいいんだから」
「で、でも……私、いつも失敗ばかりですし……そんな、人にお話しできることなんて……」
「いやいや、こうして面と向かって話していてもきみの誠実さはよくわかる。そんなきみだからこそ」
「そんなっ……わ、私は、ただ……」
藤村夕子は、所長の顔すらまともに見ることができずに下を向いている。
緊張で、その体が小さく震えていた。
そんな彼女を、所長はひたすら持ち上げ、宥める。
全ては、薬の効果が現れるまでの時間稼ぎだ。
それにしても、こうしてみると10分という時間は短いようで案外長い。
だが、そうこうしているうちに、藤村の様子に少し変化が表れてきた。
緊張のあまりガタガタと椅子を揺らしていた震えが収まっている。
それでも体を震わせているように見えるのは、ふとももをもじもじと擦り合わせているからだった。
「ん、藤村くん?話を聞いているのかい?」
「えっ!?あっ、いえっ、はいっ!」
所長の声に藤村が慌てて顔を上げる。
さっきまでは緊張で真っ青だったのに、頬が真っ赤になっていた。
しかも、眼鏡が曇るくらいに湯気を立てている。
それじゃ前が見えないだろうに。
「どうしたのかね?大丈夫かな、藤村くん?」
「あっ、いえっ、大丈夫です。あふ……ふああん……」
そう言って手を振っているが、上体がふらついていてどう見ても大丈夫じゃない。
「熱でもあるんじゃないのかね?」
「いいへっ!ほっ、ほんろうにっ、なんろもないれふからっ!」
というか、すでに呂律も回っていない。
「んふうううん……なんらかほわんろしれ、しゅっごくきもひいいんですよぉ……」
トロンとした目をして、体をゆらゆらと揺らせている。
まるで、酒にでも酔っているような感じだ。
と、藤村の身体が大きくよろめいた。
「あっ!危ないよ!」
椅子から転げ落ちそうになった藤村の腕を高木が掴んで支えようとした。
「あんっ、ふわああああああっ!」
「ひええええ!?」
彼女が大きな声をあげたものだから、高木も間の抜けた悲鳴を上げて手を離す。
「ひゃああうん!」
おかげで、藤村はバランスを崩して床に倒れてしまった。
「だ、大丈夫かい、藤村くん!?えっ、えええっ!?」
驚いて近づいた高木の腕を、藤村がむんずと掴む。
高木は腕を引っ込めようとしたが、ぎゅうっと掴んで離さない。
その細い体からは想像もできないくらいの馬鹿力だ。
「ちょ、ちょっと、藤村くん?」
「いやああああっ!はなひゃないでくらひゃいいい!」
舌っ足らずに喚きながら、高木の腕を抱きしめて藤村はイヤイヤと首を振る。
「ふあああんっ!おっぱいにあらっれ、きもひいいれすううぅ!」
藤村は、抱きしめた腕に胸を押しつけて擦り付け始めた。
「だ、大丈夫かね、藤村くん?」
「ふぁい、だいひょうぶれすううぅ。こんなに、きもひいいんれすからぁ」
貧弱ながらも、藤村の胸が腕に当たる感触に高木は股間が突っ張って来るのを感じていた。
小さなおっぱいでもやっぱりゆさゆさ揺れるんだなぁ、と妙に感心する高木。
そんなことを考えながら、なにげなく藤村の腰に目を遣る。
「……て、ええっ!?」
別に、藤村の胸が揺れていたわけではない。
やたらと揺れている感じがしたのは、藤村が両足で机の脚を挟み込んで、全身を使ってそれを股間に押しつけて擦り付けていたからだったのだ。
と、所長が藤村の股間を覗き込む。
藤村の真っ白いショーツの、机の脚に食い込むくらいに押しつけられた辺りにはもう染みができていた。
「ん?どうしたのかね、藤村くん!?」
「あふううん。あ、アソコがあぁ、ムズムズするんれすうううぅ。しゅっごくあづくでムズムズするんれすううっ!」
「うん?この辺かね?」
「ひゃうううん!そこっ、そこれすっ!そこっ、きもひいれすううぅ!」
所長がスカートの中に手を入れると、藤村は身をよじって喜んでいる。
というか、当の本人が喜んでいなかったらすでにセクハラを通り越して完全な犯罪である。
大胆な所長の様子に驚く高木。
そこで、薬が効いてきたのだとハッと気づく。
今まで、そのことを忘れて藤村の胸に腕を押しつけていたのだからいい気なものだ。
「じゃあ、私も……。ここはどうかね、藤村くん?」
高木が、空いている方の手で乳房を掴んでやる。
もっともらしい顔をしているが、鼻の下がすっかり伸びていることに本人は気づいていない。
「んふうううっ!これえぇ!おっぱいっ、おっぱいしゅごくいいれすううぅ!」
高木の腕から手を離すと、藤村は乳房に当たっている方の手を上からぎゅうぎゅう抑えつけてきた。
両手が空いたのを幸いに、高木は彼女の服をはだけさせて両方の乳房をじかに揉み始める。
「こうかな、藤村くん?」
「はいいいいぃ!おっぱい、きもひいいれすうううっ!」
「藤村くん、こっはどうかね?」
「ふわいいいいぃ!しょちょおのゆびが、アソコのなかにはいっれ、びゅくびゅくしれますうううぅ!ふあああっ、いいっ、しゅごくいいれすうううっ!」
所長も高木も、すっかりスケベオヤジの顔になって藤村の胸と股間を弄り回している。
ふたりとも、昨日とはうって変わって本当に楽しそうだ。
それを言うと、藤村の方も実に楽しそうだった。
体をビクビクと震わせ、派手に頭を振り回して一見嫌がっているように見えるが、その実、口許は笑っていて、涎すら垂らしている。
「ひゃあああああんっ!しゅごい!しゅごくきもひいいれすううううっ!きもひよくて、わらし、わらしっ!ふあああああああああああっ!」
大きく体を震わせたかと思うと、藤村の体がきゅっと弓なりになった。
薄手のブラウス越しでも、上を向いた乳首が、つん、と立っているのがわかる。
「んふうううぅ!ふああぁ……あっ、ひゃぁああああぁーっ」
がっくりと体から力が抜けたかと思うと、藤村が情けなさそうな悲鳴を上げた。、
その股間のあたりから、次第に水たまりが広がっていく。
「ああっ、これはいけませんねっ!」
高木が慌てて拭くものを取りに走った。
一方、所長は藤村の体をそこから退かせる。
「むうっ、これは大変だっ!服が濡れてしまうぞ!」
そう言うと、所長は藤村の服を脱がせ始めた。
ただ単に服を脱がせたいだけなのに、これは大変だもへったくれもないものである。
「よし、これで一安心だ!」
藤村を素っ裸にすると、所長は腕を組んで胸を張った。
いったい何が一安心なのか全く意味不明である。
「大丈夫か、藤村くん?」
高木が、藤村の傍らに立って声をかけた。
服を脱がされても胸すら隠そうとしない彼女の姿を見下ろすその目尻は下がり、鼻の下が伸びている。
と、そこに鼻血が一筋流れた。
……マンガか、おい。
「んん、ふあいぃ……あっ……」
上半身を起こした藤村の視線が、高木の股間に釘付けになる。
高木のズボンのそこがもこっと膨れ上がっていた。
「どうしたのかね、藤村くん」
「ああんっ、いえっ、んっ、そのおおぉ……」
さすがに恥ずかしそうに口ごもるが、視線は盛り上がったところを見つめたままだ。
真っ赤な顔をして眼鏡のフレームをくいっと持ち上げ、高木の股間を凝視している。
はっきり言えないのは、もともとが地味で真面目な性格だからだろうか。
それとも、そういう経験がないからなのかもしれない。
どちらにしろ、昨日の前川とは大きな違いだ。
素っ裸で、しかもいやらしい表情をしながら羞じらっている藤村の姿が新鮮で、高木の股間のふくらみがさらに盛り上がってくる。
「そうか、これが欲しいんだね」
「きゃ!……あ、ああ」
高木は急いでベルトを外すと、いきり立ったイチモツをさらけ出した。
悲鳴を上げると藤村は一瞬、両手で顔を覆った。
しかし、指の隙間からしっかりと覗いていたりする。
「ほーら、欲しいんだろう」
悪ノリして、高木は藤村の目の前でイチモツをぶらぶら揺らして見せる。
鼻血を流した中年男にそんなことをされると、普通の女がとる行動は、悲鳴を上げて突き倒すか、その場から逃げ出すか、警察を呼ぶかのどれかだろう。
「あんっ、いえっ……でもっ、わらし、やり方がわからないれすうぅ……」
もちろん、アヘニン分泌しまくりの今の藤村は普通の女ではなかった。
というか、どこまでオクテなんだ?
「よしよし、それなら私がやり方を教えてあげよう」
なんだかそれだけだと優しそうに聞こえるが、イチモツをギンギンにおっ立てた中年男がニタニタ笑いながら言うとかなり気色悪い。
「はいっ、ありがとうございましゅううぅ!」
裸の女が笑顔でそう返すんだから、藤村の方もかなりおかしくなっているのは間違いない。
「じゃあ、まずは立ち上がって」
「はいぃ」
「で、ここをこうして……と」
藤村の片足を抱え上げて股間を広げさせると、高木はぐしょ濡れのそこにイチモツの先を当てた。
そのままぐっと力を入れると、少し入ったところで鈍く跳ね返されるが、高木はかまわずにイチモツを押し込んでいく。
「はんくくくくっ、んんっ、いっ、痛いっ!大きいのがっ、痛いいいっ!でもっ、痛いけどっ、これっ、きもひいいれすううぅ!」
一瞬、処女喪失の痛みに歯を食いしばったものの、藤村はすぐに高木を力強く抱き返してきた。
「はああっ、しゅごいっ、しゅごくいいれすっ!あっ、ありがとうございましゅ!はじめれのわらしにこんなにしゅごいの教えれくれれっ、ありがとうございましゅうううぅ!」
呂律が回っていないので良く聞き取れないが、藤村はとりあえず感謝しまくっている様子だ。
「はうううっ、いいっ!おちんぽっ、しゅごいおおきいのっ、わらしのなかにしゅぼっしゅぼっれはいっれましゅううぅ!いいれすっ、しゅごくきもひいれすううぅ!はああああんっ、もっろ、もっろおおおぉ!」
「うんっ!こっちもかなりいいよ、藤村くん!すごい締めつけだ!」
高木は、藤村の両足を持ち上げるようにしてその体を抱え上げた。
いわゆる、駅弁というやつだ。
「はうううん!おっ、おくまれっ、ずんずんきれましゅううううっ!」
膝のバネを使って揺すってやると、藤村は髪を振り乱して喘ぐ。
「むう、いけないなぁ、高木くん。普通、こういう時は上司を立てるものだろうが」
と、少し憮然とした様子で所長が話しかけてきた。
「す、すみません、所長。つい、勢いで……」
「まあいいまあいい。どれ、私はこっちの方に入れさせてもらおうかな。」
そう言って所長は藤村の背後に回ると、その尻に手をかけていきり立ったイチモツを尻の穴に突き入れた。
「ぐっ、きっ、きつい!」
「ふええぇ!?ふあっ、ふああああああっ!」
「ど、どうかねっ、藤村くん!?」
「しょっ、しょちょおのおちんぽっ、おしりにはいっれきれましゅうううっ!んんんっ、ぐっ、ぐるじいけど、きもひいれすううぅ!」
「くうっ、藤村くんのこっちもかなりきつくていい感じだぞ!」
きゅっ、と後ろに倒れそうなくらい仰け反った藤村の体を背後から支えながら、所長も体を揺すって下から突き上げる。
「ふぁああああ!あっ、ありがろうごひゃいましゅ!わらしっ、はじめれなのにっ、2つもおちんぽいれれもらっれ、うれしいれしゅううっ!」
もう、完全に呂律が回ってないのでよく聞き取れないが、どうやら藤村も喜んでいる様子だ。
高木と所長に前後から腰を突き上げられて、藤村の体がガクガクと揺れる。
その口はだらしなく開いて快感の喘ぎ声と大量の涎を洩らし、曇った眼鏡の奥で蕩けた涙目が夢でも見ているように宙を見つめている。
どこから見ても申し分のないアヘ顔だった。
きっと、今、彼女の脳内では大量のアヘニンが分泌され続けているのだろう。
アヘニンとは所長もよく名付けたものだと、高木は妙に感心する。
しかもそれは顔だけじゃなかったりもする。
さっきから、アソコの穴も尻の穴もきついくらいにイチモツを締めつけ続けてくるものだから、腰を突き上げながらふたりとも口を半開きにして昇天間近の表情になっていた。
「ふあああんっ、あふうっ!わらしのなかっ、おちんぽでいっぱいになっれ、しゅごくきもひいいっ、ああっ、んふううっ!」
「うんっ、いいよっ、藤村くん!」
「おうっ、これはきついっ!」
ラボの中に響くのは、藤村の緩みきった喘ぎ声と男ふたりの呻く声。
それと、ふたりのイチモツが入っているところから聞こえるいやらしい音が少し。
「くうううっ、これはたまらん!」
先に音を上げたのは高木だった。
「ひゃあああっ!なかでっ、びゅくびゅくって!くらさいっ、わらしのはつじゅしぇい、くらさいっ!」
中で暴れるイチモツに反応して、藤村も嬉しそうに悲鳴を上げる。
というか、なんなんだ、”初受精”って。
「くうううっ!わっ、私ももうだめだあっ!」
続けて、所長も情けない声をあげた。
「ひゃふううううっ!ふ、ふたつ、いっしょにひいいいいいいいいっ!」
藤村が、高木にぎゅっと抱きついて体を強ばらせた。
抱えられた両足もピンと伸びて固まり、つま先が反り返ってピクピクと震えている。
「ひゃうううううううん!ふああ……なかで、あづいの、いっぱい、しゅごいれすうううぅ……」
何度か体を痙攣させて、藤村はそのままぐったりとなる。
そんな彼女の肩越しに目を見合わせて、所長と高木はニタァ、と笑う。
今度こそ、アヘニン分泌促進剤の実験は成功したとふたりは確信していた。
* * *
1ヶ月後。
「ねぇ、今夜あたりどう、細川くん?」
朝っぱらから男を誘っている藤村夕子を脇目に見ながら、出勤してきた高木は研究所の奥へと歩いていく。
デスクの上に、しかもモニターの前に腰掛けているものだから、可哀想に細川は全く作業ができない。
「ねぇ、いいでしょ、細川くん……」
そう言って眼鏡をクイッと上げると、藤村は組んでいた足を組み替える。
事務職員の制服を着てはいるものの、以前は膝下まで丈があったスカートがいつの間にか膝上15センチくらいの超ミニになっているので、足を組み替えると下着が丸見えだろう。
……いや、ひょっとしたら下着は穿いていないかも知れない。
あのアヘニン分泌促進剤の実験の後、藤村夕子は毎日のように男を誘うようになった。
地味でおとなしかった彼女の変貌っぷりに驚く者が研究所職員全体の2割ほど。
残りは、大胆な事務職員が新たに入ってきたのだと思っている。
要は、その存在が気づかれていなかったほど以前の彼女は影が薄かったということなのだが。
ただ、いずれにしても総じて男性からは好意的に受けとめられて、さして大きな騒ぎになっていないのは以前から同じ様なことを前川麻美がやっていたからだろう。
研究所のモラルの低下もはなはだしいと嘆きたくもなるところだが、なにしろ、研究所内のモラル崩壊を引き起こしているのがここの所長自身なのだからどうしようもない。
「ね、細川くん。今夜は私がたっぷりサービスしてあ・げ・る♪」
指先で細川の顎を弄りながらシナを作っている藤村。
なんかもう、男を誘うときの口調まで前川に似てきているのは気のせいだろうか。
とりあえず、アヘニン分泌促進剤の実験は成功した。
ただ、ひとつ問題があった。
アヘニンが分泌しまくっていやらしい体質になった藤村夕子の誘う相手が、若くていい男ばかりなのは理の当然というか、いたし方のないことであるといえよう。
そのためこの1ヶ月の間、所長と高木は一度もおいしい目に遭ったことはなく、こうやって男を誘う藤村を横目で眺めるだけなのであった。
そのことは彼らをいたく傷つけていたが、今日まではどうしようもなかった。
……そう、これまでは。
ふっ、この屈辱の日々も今日で終わる。
藤村に自分が誘われないのは彼がこれといって魅力のない中年男であるせいなのは棚に上げて、高木は妙に格好つけて扉を開けると所長の研究ラボに入る。
先日、ふたりは全てを解決する新たな物質を開発したばかりだった。
そして、今日、新たな薬の試作品が完成するのだ。
*
*
*
「よしっ、できたぞ、高木くん!」
「いよいよ指向性アヘニン分泌促進剤の完成ですね、所長!」
互いに顔を見合わせて会心の笑みを見せるふたり。
今の状況を打開すべく、彼らが新たに開発した物質こそ指向性アヘニンであった。
指向性アヘニンは、最初に分泌された時の効果は普通のアヘニンと同じである。
ただし、いったん指向性アヘニンが分泌されると、それから最初に快感を得た相手にアヘニンの効果が固定される性質を持つ。
そして、分泌される指向性アヘニンによって、アヘニンの効果はその相手のみに限定されるようになるのだ。
……平たく言うと、指向性アヘニンが分泌されて最初にエッチをした相手を求めるようになるのである。
そして、その指向性アヘニンを分泌させる薬が、今、彼らの目の前にある。
「こ、これで世の中の女は私たちの思いのままですね、所長」
「うむ」
世の中の女全てが対象とは大きく出たものだが、所長も満足そうに頷いている。
「使い方は普通のアヘニン分泌促進剤と一緒でいいんですか?」
「うむ、こちらのドリンク剤の方はな」
「と、言いますと?」
「考えてもみたまえ。こんな怪しげな薬をほいほいと飲んでくれる相手がそうそういるわけがないだろうが。だから、この吸飲タイプも作ってみた」
「なるほど、吸飲タイプですか……」
「うむ、本当なら噴霧して吸わせるのが手っ取り早いが、それだと私たちも吸い込んでしまうおそれがあるのでな。とりあえずは布かなんかに染み込ませて相手の口と鼻に押しつけて使うのがいいだろう」
「なんだか、犯罪者みたいですね」
高木は、腕を組んで難しい顔をする。
というか、自分たちのしようとしていることが犯罪以外の何ものでもないという自覚はないのか、高木。
「だが、今のところそれが一番確実なやり方だろう。薬が効いてしまえばこちらのものだ。少量の吸引でも効果があるように濃度はかなり濃くしてあるし、前回の経験も踏まえて薬の効果が出るまでの時間もかなり短くしてある。おそらく、2分くらいで効いてくるはずだ」
「2分ですか……その間に騒がれると厄介ですね」
「そこだな。くれぐれも警察沙汰にならんようにしてくれよ」
「わかっています」
「では、早速実験だ。指向性アヘニンの性質上、今回はきみと私、別行動でやるとしよう」
「了解です」
「では、これはきみの分だ」
そう言って、所長は高木に吸引用の薬が入ったノズル付きボトルと、数本のドリンク用アンプルを手渡す。
「繰り返すが、警察沙汰になるようなことはするなよ」
「所長こそ気をつけてください」
「ふん、私はそんなヘマはせんよ」
妙に気取っているが、ふたりともすっかり顔が半笑いになっている。
だが、急に真面目な表情を作って指向性アヘニン分泌促進剤を懐に入れると、ふたりはラボから出ていったのだった。
* * *
その夜。
「……薬が効けばこっちのものとはいえ、使いどころが難しいな、これは」
夜の街を歩きながら、高木はひとりぼやいていた。
薬の効果を試そうにも、人目につく場所では周囲に騒がれたらおしまいだ。
かといって、人気のない場所でいい女とふたりきりになれるチャンスもそうゴロゴロしていない。
よく考えたら、結構使い方が難しい。
そんなことをしているうちに、自宅のあるマンションまで帰ってきてしまった。
部屋の前でポケットに手を突っ込んで鍵を探る。
と、隣の部屋の鍵が開く音がした。
「あー、なんだ、隣のおっさんかよ」
出てきたのは隣に住んでいる女。
たしか、名字は宮原とかいった気がする。もちろん、下の名前までは知らない。
20才前半くらいで、髪を金髪に染めていて少しヤンキーぽいが、少し丸みがあって愛嬌のある顔立ちは悪くない。
ただし、口は無茶苦茶悪い。
ちょっとコンビニにでも行くつもりだったのか、ジーパンにトレーナー、サンダル履きという格好でこちらを胡散臭そうに見ている。
ひょっとしたら、これってチャンスじゃないのか?
ふと、高木の脳裡にそんな思いがよぎった。
今、周囲には他に人はいない。
薬さえ吸わせることができたら、効果が出るまでなら何とかなりそうだ。
「なんだよ、おっさん。あたしの顔になんか付いてんのかよ、おい」
すでに半分ケンカ口調の宮原に怪しまれないように懐に手を入れる。
いつでも使えるように、吸引用のボトルにはハンカチを巻き付けていた。
そっとノズルを数回押して、ハンカチに薬を染み込ませる。
「何とか言えよ、おっさん。……うわっ、むぐぐぐ!」
高木、一世一代のダッシュであった。
一気に相手の懐に飛び込むと、その口にハンカチを押し当てた。
「んむむっ、んぐっ、ぐぐっ!」
きっと、もう吸い込んだ量は充分だとは思ったが、大声を出されないようにそのまま口を押さえ続ける。
「んぐぐぐぐっ!」
「おわっ、ぐふっ!」
その時、強烈な膝蹴りが鳩尾を襲った。
「がほっ、げほっ!う、うわっ!」
体をくの字に曲げて咳き込む高木の胸ぐらを宮原が掴む。
「てめー、なにしてやがんだよっ!」
そのまま高木の体を引きずり起こして凄む宮原。
とても堅気の女とは思えないくらいの馬鹿力だ。
「今なにしようとしやがったんだよ!」
「いやっ、あのっ、それは……」
「言えよ、ほら!このヘンタイ親父が!」
ものすごい剣幕に高木の顔面が蒼白になる。
もちろん宮原が恐ろしいのもあるが、薬が効いてないんじゃないかと思うとさらに恐ろしい。
「あたしに何しようとしたのか言えよ、てめー!」
もう、薬を吸わせてから優に2分は過ぎているはずだった。
本当だったら、藤村の時のような変化があってもいいのに、宮原には何も変わったところがない。
「なんだよっ、言えないのかよ!」
「あっ、いえ、その……」
「だったら、あたしが言ってやるよ!」
「……はい!?うわあっ!」
宮原は、高木の胸ぐらを掴んだまま自分の部屋に引っ張り込むとガチャリと鍵を掛けた。
そして、すぐ目の前まで顔を近づけてくる。
「あたしとセックスしようとしてたんだろうが、このエロ親父!」
「ひえええ!?」
なまじ図星なだけに高木は度肝を抜かれる。
「はっきり言えよ、てめーのチンポで、あたしのマンコズボズボしたかったんだろーがって言ってんだろーがっ!」
「え?い、いや……」
だが、宮原の様子は少しおかしかった。
しかし、それ以上に高木も戸惑っていた。
「なんだよ、ヘンタイのエロ親父のくせになにモタモタしてんだよ。とっととあたしのマンコに入れたらどうなんだよ!?」
「はいいいいい!?」
「てめーこらっ!てめーのチンポ入れて欲しくて、もうさっきからあたしのマンコぐしょりしてんだよ!」
そう言うと、宮原は大きく股を広げて高木の顔の前に押しつける。
目の前にアップになったそこは、染みになったショーツからこぼれるくらいにトロトロと汁が滴り落ちていた。
……効いていた。いつから効果が現れていたのかはわからないが、ヤンキーのままで宮原にはたしかに薬が効いていたのだった。
よく見たら、宮原の顔はほんのり赤くなって、はあはあと大きく喘いでいるではないか。
「わかったか!?わかったら早くてめーのチンポ入れろってんだよ!」
「ひ、ひえええっ!」
「……て、なんだよ、勃ってねーのかよ!」
こちらにのし掛かるようにしてズボンをずらせると、宮原は剥き出しになったそれを見て呆れたような声を出す。
というか、さっきまであんなに怯えていて勃起しているはずがない。
「まったく、しかたねえなエロ親父のくせに。よしっ、あたしが勃たせてやるよ!」
高木の萎えた代物を見てぼやいていた宮原は、トレーナーを脱いでブラのホックを外すと、露わになった胸を高木の顔に押しつけた。
「ぐむっ、ぐむむむ!」
「ほら、あたしって結構いい胸してんだろ?」
そう言われても、顔面に胸を押しつけられていて言葉が出るわけがない。
「なあ、どうなんだよ、このエロ親父?」
「むぐぐぐ……」
両手で胸を挟んで、ぐいぐい押しつけてくる宮原の前に窒息寸前の高木。
それでもたいしたもので、萎びていたイチモツが持ち上がってきて、宮原のももに当たった。
「おっ、やっと勃ってきたじゃねえか!」
「ぐほっ!ふううううううううう!」
宮原が嬉しそうに押しつけていた胸を離したので、高木はようやく大きく深呼吸する。
「でも、まだこんなんじゃダメだって。もっとでかくしろよ、このスケベ!」
「あうっ!」
今度はイチモツをぐっと握られて、深呼吸もそこそこに悲鳴を上げる高木。
彼も何かと忙しい。
「ほらっ、ほらっ!……おっ、すげえじゃないか、このエロ親父!こんなにでかくしやがって!」
手で扱きあげられて、イチモツがぐんぐん膨らんでいく。
「よしっ、こんなもんかな……じゃあちょっと待ってろよ……」
そう言って立ち上がると、宮原はジーパンを脱いでいく。
「ふう……手間かけさせやがってこのやろー。これでやっとチンポ入れられるじゃねえか」
裸になった宮原は高木を跨ぐようにして立ち、両手で壁を突いて体を支える。
「じゃあ、いくぜ」
「は、はい……」
ことここに及んでは、素直に頷くしかない。
「……んっ、くうっ、やっぱっ、でかいな、おいっ!くううううっ!」
宮原がゆっくりと体を沈めて、イチモツがきつくて温かい感触に包まれていく。
「くふううううっ!すっ、すげえっ!でかくて、マンコ広がりそうだよ!くううっ、やるじゃねえか、このエロ親父!あうっ、くああっ!」
少し苦しそうに、それでいて嬉しそうに宮原はゆっくりと腰を上下させていく。
なんだか褒められている気がしないが、それでも大きいと言われるのはまんざらでもない。
「あふうううっ!すげえっ、すげえよっ、これ!マンコの中っ、持ってかれそうなくらい擦ってるじゃねえか!ああっ、ああううんっ!」
宮原の腰の動きがだんだん大きくなっていって、高木の目の前で胸がゆさゆさと揺れている。
「これっ、ホントすげえよっ!奥にズンズン当たってっ!ふあああああああっ、ちっ、力が入らねえっ!……あうんっ!」
がくりと体を落として高木にしがみつき、宮原ははぁはぁと大きく息をしている。
ひょっとしたら、軽くイったのかもしれない。
「くそううううぅ……おっさんのでかチンポにマンコ突かれて、ユリ、もうメロメロだよおぉ……」
そう囁く宮原の顔は、さっきまでとは全然違ってトロンと緩んでいた。
というか、そのしゃべり方でユリなんて可愛らしい名前だったのか。
「ああっ!やあっ、今動いたらだめだようっ!あうっ、ああんっ!だめえっ、イったばかりなのにいいぃ!あっ、はああんっ!」
ようやくペースを取り戻した高木が下から突き上げると、宮原は今までのヤンキー節が嘘のように甘い声で喘ぎまくる。
「あんっ、やんっ!こんなすごいの知っちゃったら、もう他の男じゃ満足できないようっ!あんっ、ふあんっ、あっ、あふうんっ!」
もう宮原は、必死に高木にしがみついて喘ぐだけになっていた。
さっきから、イチモツへの締めつけがますますきつくなっていたが、だいぶ馴染んできたのか中はどろりと温かくて気持ちいい。
それが、高木を射精へと促していく。
「ふええええっ!?まだっ、まだ大きくなるのっ!?ああっ、やだっ、あたしっ、もうダメっ!またイクっ!あっ、あああああああーっ!」
ちょうど宮原がイったところで高木も限界に達した。
「ちょっ!やだっ、イってるのに!ふああああああああっ!熱いのどぴゅって出てるっ!ああああんっ、だめえっ!イってるのにっ、またっ、またいくううううううううっ!」
高木にぎゅうっとしがみついて仰け反ったまま、宮原の体が何度も痙攣する。
「すげえ……まだっ、まだ出てる……あうっ、やっ、また来るっ!くふううううっ……」
もう一度軽くイった後、ようやく宮原はぐったりとなる。
「ふううぅ……やるじゃねえか、エロ親父。こんなの、あたし初めてだよおぉ……」
高木の胸に頬ずりしながら、宮原は蕩けた声で言う。
はじめはどうなるかと思ったが、高木もすっかり満足していた。
と、その時高木の携帯が鳴った。
「はい、なんでしょうか、所長?」
かけてきた相手は所長だった。
「どうかね、指向性アヘニンの実験はしてみたかね?」
「はい、成功です」
「そうか、それは良かった。こちらも大成功だよ。この娘ときたら、もうさっきから私のに食いつて離れんのだよ、これが」
「そうですか」
何のことはない。
所長は自分が上手くいったのを自慢したかったらしい。
というか、どういう状況で電話してきてるんだ?
と、宮原がまた高木を抱きしめてきた。
「なに電話してるんだよぉ、このエロ親父」
「い、いや、ちょっとだな……」
「あたし、もう1回したいんだよぉ。なあ、いいだろ、エロ親父?」
そう言って、宮原は涙で潤んだ瞳で見上げてくる。
それは彼女の若さゆえなのか、それとも、今、彼女の脳で大量に分泌されている指向性アヘニンのなせる業なのか。
「ん?どうしたね、高木くん?」
「いえ、こちらもこれから第2ラウンドに入るところです」
「そうか。では健闘を祈る」
そこで所長からの通話は切れた。
というか、何が健闘を祈る、だ。
「なぁなぁ、早くやろうよぉ」
「わかったわかった」
「やった!じゃ、今度はベッドの上でやろうな!」
満面にいやらしい笑みを浮かべると、さっき脱いだ服は玄関先に散らかしたまま、素っ裸で宮原は高木を部屋の中へと連れていく。
彼女に手を引かれながら高木はそっと内ポケットのボトルに手をやって、その効果にひとり感動していたのだった。
* * *
2週間後。
所長の研究ラボ。
「ねぇ、まだぁ?」
「そうよぉ、お仕事なんかいいから早くいいことしましょうよぉ」
「高木のおじさま、私、いつでも準備はできてるんですよぉ」
「なんだ、学生にまで手を出したのか、高木くん?」
「そう言う所長こそなんですか、その婦警さんは?」
「うむ、職務質問されかけてな、美人だったからつい……」
「なんなんですか、所長こそ警察沙汰になりかけてたんじゃないですか」
「もうっ、なにをひそひそ話してるの?はやくエッチしてくれないと公務執行妨害で逮捕するわよぉ」
OLや学生、婦人警官まで、大勢の女に囲まれて必死にデータの分析をしている所長と高木。
「ねぇ、いつまでお仕事してるのよぉ?」
「もうー、私のアソコもうぐしょぐしょなんだからぁ」
「それにしても高木くん、2週間で8人とは少しやりすぎではないのかね?」
「所長だって7人でしょう。そんなに変わらないじゃないですか」
「ねぇ。早くぅ」
「所長さん、まだぁ?」
「本当に、毎日この人数を相手するのは大変なんですからね。こんなのが続くと身が持ちませんよ」
「なにかね。それは、自分は8人の相手をできますという自慢かね。私はもう粉も出そうにないというのに、まったく羨ましい……いや、ゴホン。……と、とにかく、早くデータ分析を進めたまえ」
半分裸になりかけた女たちがまとわりつく中、ふたりは計器とパソコンとにらめっこして解析を進める。
「高木さぁん、早くお仕事すませてくださいね……」
「なんだよう。こんなに人数が多かったらあたしの分が少なくなるじゃねーかよう、このエロ親父!」
「なんだい、随分と口の悪いのがいるな」
「もう、そんなことはいいですから早く分析を進めましょうよ!」
指向性アヘニンの分泌を抑える薬の開発。
目下のところ、それが彼らの緊急の課題である。
< 終 >